JP6853979B2 - プラスマローゲン含有水性液 - Google Patents
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Description
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、プラスマローゲン及びポリエチレングリコールを含有する水性液を提供するものである。
まず、本発明の水性液に使用するプラスマローゲンについて述べる。
プラスマローゲンとは、上述のように1−アルケニルアシル型リン脂質ともいい、グリセロリン脂質のうち、グリセロール骨格のsn−1位にビニルエーテル結合のアシル鎖を有し、且つsn−2位にアシル鎖、sn−3位に塩基の結合したリン酸をもつ脂質である。
天然に存在するプラスマローゲンの主たるオレフィニル鎖(ビニルエーテル結合)の炭素数は16〜18であり、主たるアシル鎖は炭素数16〜22の脂肪酸であり、sn−2位アシル鎖は、アラキドン酸やドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸が主である。また、そのリン酸に結合する主たる塩基は、コリンとエタノールアミンである。
プラスマローゲンを抽出、分離する天然物としては、各種の動物、植物、微生物を挙げることができる。本発明においては、プラスマローゲンを抽出、分離する天然物は動物が好ましい。プラスマローゲンを抽出、分離する動物としては、例えば、ウシ、ブタ等の哺乳類、カツオ、マグロ、イワシ等の魚類、ホタテ、カキ、ハマグリ等の貝類、タコ、イカ等の頭足類、カニ、エビ等の甲殻類等が挙げられ、これらの動物の動物組織を使用することができる。本発明で使用することができる動物組織としては、動物の個体そのものでもよく、その筋肉組織や、脂肪組織、あるいは脳などの神経組織、腸などの内臓組織、更にはその卵でもよいが、プラスマローゲンの含有量、あるいは入手の容易性や価格などの点から、ウシ若しくはブタの心臓あるいは脳を用いることが好ましい。
本発明においてプラスマローゲン含有脂質及びプラスマローゲン含有脂質濃縮物は、原料によって異なるものの、プラスマローゲンの含有量が0.1〜99質量%の脂質を意味する。プラスマローゲン含有脂質やプラスマローゲン含有脂質濃縮物中のプラスマローゲンの含有量は、例えば、ヨウ素付加による吸光検出法(E.L.Gottfried, J. Biol. Chem., 237, 329(1962))、p-ニトロフェニルヒドラジン法(C.Pries, Biochim. Biophys. Acta, 38, 340(1960))、HPLC分析法(S. Mawatari, Anal. Biochem., 370, 54(2007))、LC-MS分析法(K. A. Zemski, J. Am. Soc. Mass Spectrom, 15, 149(2004))などにより測定することができる。
例えば、ホスホリパーゼA1(三菱化学フーズ)を用い、ジアシル型リン脂質及びプラスマローゲンの混合脂質1gに酵素0.1〜2.0U、酢酸緩衝液pH4.0〜6.0を2〜20%、好ましくは5〜10%添加し、30〜60℃で、2〜100時間、攪拌しながら反応させる。反応溶液にヘキサン/エタノール/水の混合溶媒、例えばヘキサン65〜90に対し、エタノール5〜20、水4〜10、好ましくはヘキサン75〜85、エタノール8〜16、水8〜16の比の混合溶媒を加え、上層のヘキサン層を採取してプラスマローゲン含有脂質濃縮物を回収する。この抽出処理により、ホスホリパーゼA1反応で生じた1−リゾリン脂質は水層に溶解するために分画されうる。
得られたプラスマローゲン含有脂質濃縮物は更にアセトン沈殿法やカラムクロマトグラフィーによって中性脂質を分画して濃縮できる。
本発明では水性液として水中油型乳化物とする場合の製造が容易な粘度となる点、水中油型乳化物の乳化安定性や酸化安定性に優れる点で、加配する油脂として、パーム油の分別軟部油、及び/又は、パーム油の分別軟部油のエステル交換油を使用することが好ましい。
本発明の水性液は、プラスマローゲンと共にポリエチレングリコールを含有することにより、プラスマローゲンの分解が抑制され、保存安定性に優れるものとなる。特に、プラスマローゲンの含有量が、例えば、5質量%と高濃度な場合であっても、プラスマローゲンの分解が抑制される。本発明で使用することのできるポリエチレングリコールは特に制限されないが、プラスマローゲンの分解防止の効果が極めて高い点で、重量平均分子量が3000〜50000のポリエチレングリコールを使用することが好ましく、より好ましくは重量平均分子量15000〜40000のポリエチレングリコールを使用する。重量平均分子量3000未満のポリエチレングリコールを使用するとプラスマローゲンの分解防止効果が低く、重量平均分子量50000超のポリエチレングリコールは水への溶解性が低いため水性液の製造が困難になることに加え、水性液を長期保管した場合にプラスマローゲンが分離しやくすく、その場合酸化安定性が悪化しやすい。本発明の水性液中に含まれるポリエチレングリコールの重量平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準物質としてポリエチレングリコールによる検量線を作成することにより測定することができる。
本発明の水性液における酸化防止剤の含有量は、酸化防止剤の種類にもよるものの、好ましくは0.00001〜5質量%、より好ましくは0.0001〜0.1質量%、更に好ましくは0.01〜1質量%である。特に、EDTA類の含有量としては0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%が更に好ましい。
また、トコフェロールの含有量としては、0.00001〜1質量%が好ましく、0.0001〜0.1質量%がより好ましい。上記範囲で含有させることにより、本発明の効果をより高めることができる。酸化防止剤の含有量は公知の方法で測定することができる。
本発明の水性液における上記その他の成分の含有量は特に制限されないが、合計して10質量%以下となるように配合するのが好ましく、より好ましくは5質量%以下となるように配合するのが好ましい。
なお、粒径及び粒径分布は用途に応じて適宜設計すればよい。
このようにして得られた本発明の水性液は、そのまま、健康食品、医薬品、分析用試薬等に広く使用することができる。
ウシの心臓から筋肉部分6kg(水分含有量80質量%)を切り出し、ホモジナイザーを用いてペースト状にした組織に、ヘキサン:エタノール=60:40で混合した混合溶媒18Lを加え、10分間攪拌した。その後、吸引濾過により得たろ液の上層であるヘキサン層を脂質抽出液として回収した。続いて、ろ液下層と濾過残渣を合わせ、それに新たにヘキサン10Lを加え、10分間攪拌して脂質画分を抽出後、上記同様に抽出液を回収した。更に、ろ液下層と濾過残渣に同一の操作をもう1回繰り返し、回収した合計3回分の抽出液を併せ、エバポレーターを使用して混合溶媒を除去し、残渣としてプラスマローゲン含有脂質181gを得た。得られたプラスマローゲン含有脂質は、総リン脂質含量は98質量%であり、プラスマローゲンを24質量%含有するものであった。
上記プラスマローゲン含有脂質0.15mgを0.2Mグリシン−NaOH緩衝液(pH7.4)10mlに分散する際に、緩衝液に水溶性高分子として、分子量400のポリエチレングリコール[PEG−400/Mw約400、ADEKA社製](実施例1)、分子量4,000のポリエチレングリコール[PEG−4000/Mw約4000、ADEKA社製](実施例2)、分子量8,000のポリエチレングリコール[PEG−8000/Mw約8000、和光純薬工業社製](実施例3)、分子量20,000のポリエチレングリコール[PEG−20000/Mw約20000、和光純薬工業社製](実施例4)、分子量35,000のポリエチレングリコール[PEG−35000/Mw約28000、メルク社製](実施例5)をあらかじめそれぞれ140mg溶解したものを使用した。また、ポリエチレングリコール無添加の上記緩衝液10mlに上記プラスマローゲン含有脂質0.15mg分散したものも準備した(比較例1)。実施例1〜5の水性液におけるプラスマローゲンの含有量は0.00036質量%であり、ポリエチレングリコールの含有量は1.4質量%であった。
プラスマローゲンの安定性を評価する方法としては、各サンプル300μlを10ml試験管に採り水溶性ラジカル開始剤(AAPH)を50mMとなるように添加した後、37℃で2時間インキュベートし、定法により脂質を抽出し、HPLCを使用してプラスマローゲン含量を測定し、安定性試験前のサンプルのプラスマローゲンの含有量に対する残存率で評価を行った。
上記プラスマローゲン含有脂質2.16mgを、分子量20,000のポリエチレングリコール50mg及び酸化防止剤としてEDTA0.3mg/mlとなるよう溶解させた0.2Mグリシン−NaOH緩衝液(pH7.4)10mlに分散させ、水性液を調製した(実施例6)。また、酸化防止剤として、EDTAに代えてミックストコフェロール1.8μg/mlを用いた以外は実施例6と同様にして水性液を調製した(実施例7)。また、酸化防止剤として、EDTAに加えミックストコフェロール1.8μg/mlとなるよう溶解させた以外は実施例6と同様にして水性液を調製した(実施例8)。更に、酸化防止剤を未添加とする以外は実施例6と同様にした水性液を調製した(実施例9)。
実施例6〜9の水性液におけるプラスマローゲンの含有量は0.0052質量%であり、ポリエチレングリコールの含有量は0.5質量%であった。
一方、上記プラスマローゲン含有脂質2.16mgを、0.2Mグリシン−NaOH緩衝液(pH7.4)10mlに分散させ、水性液を調製した(ポリエチレングリコール及び酸化防止剤は無添加、比較例2)。また、酸化防止剤としてEDTA0.3mg/mlとなるよう溶解させた緩衝液を使用した以外は比較例2と同様にして水性液を調製した(比較例3)。
評価結果について、表2に記載した。表2から、実施例6〜9の水性液は、比較例2及び3の水性液に比べて、プラスマローゲンの残存率が上昇していることが分かる。また、酸化防止剤を含有する実施例6〜8の水性液は、酸化防止剤を含有しない実施例9の水性液に比べてプラスマローゲンの残存率が上昇していることが分かる。特に、EDTAとトコフェロールを併用した実施例8の水性液は特に残存率が優れていることが分かる。
Claims (3)
- プラスマローゲン及びポリエチレングリコールを含有する水性液であって、ポリエチレングリコールの分子量が3000〜50000であり、且つポリエチレングリコールの含有量が0.3〜3質量%である、水性液。
- 更に酸化防止剤を含有する請求項1記載の水性液。
- 上記酸化防止剤が、EDTA類、アスコルビン酸、及びトコフェロールから選択される1種又は2種以上の酸化防止剤である請求項2記載の水性液。
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