実施の形態1.
以下、図面を参照しながら本発明の加熱調理器の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の構成を示す模式図、図2は図1の加熱調理器のII−II断面を示す断面図である。図1の加熱調理器1は、略直方体の筐体である調理器本体2と、調理器本体2の上部に設けられ、被加熱物を投入した調理容器が載置されるトッププレート3と、使用者が加熱ユニット20への加熱の指示等を行うための操作部30と、加熱調理器1の動作状況等を表示する表示部40とを有する。
調理器本体2の内部には、トッププレート3上に載置された調理容器を加熱するための誘導加熱コイル4と、誘導加熱コイル4を制御する図示しない制御装置とが配置されている。誘導加熱コイル4は、例えばコイルケースに収納された状態で3つ配置されており、各誘導加熱コイル4にはそれぞれ電源回路から高周波電力が供給される。誘導加熱コイル4上にトッププレート3が配置されている。トッププレート3は、例えばステンレスなどの金属からなる上枠を骨格となるフレームに板状の結晶化ガラスが嵌め込まれた構造を有している。トッププレート3の表面には、調理器本体2内の誘導加熱コイル4が配設される位置を示す目的で円形の設置位置標識4aが印刷されている。
また、調理器本体2の内部には、例えば魚等の被加熱物を加熱するための加熱室10が形成されている。加熱室10は略直方体の空間であって、前方に前方開口部が形成されており、後方に後方開口部が形成されている。加熱室10の前方開口部には、グリル扉11が開閉可能に取り付けられている。グリル扉11には、水もしくは油受けになる受け皿12が取り付けられており、グリル扉11の開閉動作とともに、受け皿12は加熱室10内をレールに沿ってスライドする。また、受け皿12の上部には被加熱物を載置する棚網13が配置されている。
加熱調理器1は、加熱室10内に収容された被加熱物を加熱する加熱ユニット20を有し、加熱ユニット20は、加熱室10の上部から被加熱物を加熱するヒーター21と、加熱室10の背面側に設けられ、加熱室10の内部に対流を起こして熱を循環させることにより被加熱物を加熱する熱風供給部(コンベクションユニット)22を備える。
ヒーター21は、加熱室10内の被加熱物を上方から輻射熱で加熱するものであり、例えば抵抗発熱体であるシーズヒーターからなっている。ヒーター21は、図示しない電源回路に接続されており、電源回路から電力が供給されることにより発熱する。ヒーター21は、加熱室10の幅方向及び奥行き方向に複数回折り曲げられた形状を有しており、加熱室10内の幅方向及び奥行き方向において広範囲に加熱することができる。なお、ヒーター21は、シーズヒーターからなる場合について例示しているが、例えば遠赤外線ヒーター、近赤外線ヒーター、又はカーボンヒーター等を用いてもよい。
熱風供給部22は、加熱室10内の空気を吸い込んで加熱し、加熱した空気を再び加熱室10に循環させるものである。熱風供給部22は、ハウジング22aと、ハウジング22a内に収容され、コンベクションヒーター22dにおいて加熱された空気を加熱室10内に送風するコンベクションファン22bと、コンベクションファン22bを回転させるモーター22cと、ハウジング22a内に収容され、ハウジング22a内の空気を加熱するコンベクションヒーター22dとを備える。
ハウジング22aは、加熱室10との間で空気の循環(対流)が行われるように、加熱室10と連通した構造を有している。加熱室10の上部には加熱室内の空気を吸入する吸入口2aが設けられており、加熱室10の背面の下部にはハウジング22a内の加熱空気を供給する供給口2bが設けられている。また、加熱室10の上部には、吸入口2aから吸入した空気をハウジング22aまで導く吸入ダクト2cが設けられており、ハウジング22aには、吸入ダクト2cに通じる開口が形成されている。また、ハウジング22aの上部には、調理器本体2の背面側の排出口2xに通じる排気ダクト2dが接続されており、排気ダクト2dから加熱室10内の空気が排気される。
コンベクションファン22bは、吸入口2aから加熱室10内の空気をハウジング22a内に吸い込み、供給口2bからハウジング22a内の空気を加熱室10内に供給するものである。コンベクションファン22bは、モーター22cの回転軸と固定され、モーター22cの動作により回転する。モーター22cは、DCモーター又は誘導モーターであり、コンベクションファン22bが取り付けられている。
コンベクションヒーター22dは、ハウジング22a内の空気を加熱するものであり、例えばシーズヒーターからなっている。コンベクションヒーター22dは、図示しない電源回路に接続されており、電源回路から電力が供給されることにより発熱する。コンベクションヒーター22dは、コンベクションファン22bを囲むように設けられている。コンベクションファン22bが回転駆動することにより、加熱室10にはコンベクションヒーター22dにより加熱されたハウジング22aの空気が供給口2bから加熱室10へ供給される。なお、コンベクションヒーター22dはシーズヒーターを用いる場合について例示しているが、セラミックヒーター、ニクロム線ヒーター、ハロゲンランプヒーター、カーボンヒーター等のガラス管ヒーターを用いてもよい。
ハウジング22a内の空気は、コンベクションヒーター22dにより加熱され、コンベクションファン22bの駆動により加熱室10の下方から供給される。加熱室10内に供給された熱風は、受け皿12に沿って加熱室10の背面から前面に向かって流れ、加熱室10の前面側において上昇し吸入口2aから吸入される。吸入口2aから吸入された空気は、吸入ダクト2cを介して再びハウジング22a内に供給され、ハウジング22a内の一部の空気は排気ダクト2dから排気され、一部の空気は加熱され加熱室10に供給される。このように、熱風供給部22は、加熱室10内の空気を吸い込んで加熱し、加熱した空気を再び加熱室10に循環させる。
図1の操作部30は、加熱調理器1における加熱動作の設定を受け付けるための操作ボタンやスイッチ、エンコーダー等で構成されている。操作部30は、トッププレート3上に設けられた上面操作部30aと、調理器本体2の右側前面に設けられた前面操作部30bとを有している。表示部40は、トッププレート3の前側に設けられており、加熱調理器1の動作状態、操作部30に対する入力内容等を表示するとともに、使用者に加熱調理器1の状態等を報知する。なお、表示部40は、例えば静電容量スイッチを用いたタッチパネルからなっており、表示部40として機能するとともに、操作部30として機能するものであってもよい。
図3は、図1の加熱調理器における制御装置の一例を示す機能ブロック図である。上述した加熱調理器1の動作は制御装置50により制御されている。制御装置50は、マイコン又はDSP等からなっており、記憶手段(図示せず)を内蔵したものである。また、加熱調理器1は、各種センサを有しており、制御装置50は、各種センサにおいて検知された情報に基づいて加熱調理器1の動作を制御する機能を有している。
特に、制御装置50は、上述した加熱室10における被加熱物の加熱調理が正常に行うことができる状態であるか否かを、各種センサからの情報に基づいて自動的に判定するメンテナンスモードを実行する機能を有している。具体的には、加熱調理器1は、加熱室10内の温度を検知する温度検知部61と、加熱ユニット20に供給される電源電圧Vを検出する電源電圧検出部62と、電源電圧Vの電源周波数fを検出する電源周波数検出部63とを備える。
温度検知部61は、例えば加熱室10内の背面側に設置されたサーミスタ等からなっており、加熱室10内の温度を検知するものである。なお、温度検知部61は、加熱室10の温度を検知するものであればその構成を問わず、例えば赤外線センサ等の公知の技術を適用しても良いし、温度検知部61の設置場所についても加熱室10の前面側もしくはハウジング22a内に設置されてもよい。
電源電圧検出部62は、電源回路に供給される電源電圧Vを検出するものであり、電源周波数検出部63は、電源回路に供給される交流電源の電源周波数f(例えば50Hzもしくは60Hz)を検出するものである。なお、電源回路に供給される電源電圧Vに変動が生じた場合、加熱ユニット20(ヒーター21及びコンベクションヒーター22d)に供給される電力に変動が生じる。また、電源回路に供給される交流電源の周波数fが高くなるほど、コンベクションファン22bの出力は大きくなる。
制御装置50は、上述した温度検知部61、電源電圧検出部62及び電源周波数検出部63において検知された情報に基づいて、加熱室10において被加熱物の加熱調理が正常に行うことができる状態の良否を判定する。例えば、加熱ユニット20に不具合があり、加熱室10での加熱が不十分になる場合には、被加熱物の加熱調理が正常に行うことができないとして、加熱室10に異常が生じていると判定する。また、温度検知部61の取付不良もしくは検知性能の異常等により、加熱室10の状態が正確に検知できない場合、もしくはコンベクションファン22bが正常に駆動しない場合又は排出口2xが塞がれている等の空気の流れに異常が生じた場合においても、被加熱物の加熱調理が正常に行うことができないとして、加熱室10に異常が生じていると判定する。
制御装置50は、駆動制御部51、温度判定部52、良否判定部53、電圧判定部54、表示制御部55等を備えている。駆動制御部51は、加熱ユニット20の駆動を制御するものであり、メンテナンスモードの実行開始とともに加熱ユニット20の駆動を開始するように制御する。この際、駆動制御部51は、例えば予め定められた所定の火力になるように、ヒーター21及び熱風供給部22の双方を駆動するように加熱ユニット20を制御する。なお、駆動制御部51は、ヒーター21及び熱風供給部22の双方を駆動する場合について例示しているが、ヒーター21と熱風供給部22とをそれぞれ別々に良否判定を行うために、いずれか一方のみを駆動するようにしてもよい。
温度判定部52は、駆動制御部51の制御により加熱ユニット20が加熱室10を加熱した際に、庫内温度tmpが設定温度になったか否かを判定するものである。ここで、温度判定部52には2つの設定温度が設定されており、2つの設定温度のうちいずれか一方の設定温度を満たしているか否かを判定する。図4は図3の温度判定部において設定される設定温度の一例を示すグラフである。図4に示すように、温度判定部52には、初期加熱期間T1(例えば6分)を経過した後の温度t1に設定温度上昇量Δtを加算した温度t1+Δtと、加熱制限温度である判定開始温度t3との双方が設定温度として設定されている。そして、温度判定部52は、庫内温度tmpが温度t1+Δtに達するか、もしくは判定開始温度t3に達するかのいずれか一方を満たしているか否かを判定する。
このように、初期加熱期間T1を経過した後の設定温度上昇量Δtに基づいて設定温度を設定することにより、加熱調理器1の個体差によらず、精度良く良否の判定を行うことができる。すなわち、加熱調理器1の個体差により、温度検知部61において検知される庫内温度tmpは例えば20℃前後ばらつく。このため、所定の温度閾値を用いた場合には判定基準の設定が難しくなり、精度良く良否の判定を行うことができない場合がある。一方、設定温度が初期加熱期間T1の加熱による加熱室10の温度t1に設定温度上昇量Δtを加算した温度t1+Δtに設定された場合、温度t1が加熱調理器1の個体差によりばらつくときであっても、温度t1から設定温度上昇量Δtだけ温度が上昇するまでの時間を用いて良否判定が行われることになる。これにより、加熱調理器1の個体差によらず、精度良く良否の判定を行うことができる。
さらに、温度判定部52は、交流電源の電源周波数fに応じて設定温度上昇量Δtの値を変更する機能を有している。温度判定部52には電源周波数f(例えば50Hz、60Hz)毎に設定温度上昇量Δtが記憶されており、温度判定部52は電源周波数検出部63において検出された電源周波数fに応じて設定温度上昇量Δtを設定する。このように、電源周波数fが大きいほどコンベクションファン22bの出力が大きくなることを考慮し精度良く良否判定を行うことができる。なお、設定温度として温度t1+Δt及び判定開始温度t3が設定されている場合について例示しているが、いずれか一方のみ設定されていてもよい。
図3の良否判定部53は、温度判定部52において庫内温度tmpが設定温度になったと判定された場合、加熱の開始から設定温度になるまでの経過時間TIに基づいて、加熱室10が正常に動作しているか否かを判定する。良否判定部53は、操作部30においてチェックモード開始が入力されたとき、駆動制御部51による加熱ユニット20の駆動に同期して経過時間TIの計測を開始する。良否判定部53には設定時間範囲Tc〜Tdが予め設定されており、良否判定部53は、初期加熱期間T1経過後において、庫内温度tmpが設定温度になったときの経過時間TIが設定時間範囲Tc〜Td(例えば6分〜10分)に収まっている場合、加熱室10は正常に動作していると判定する。一方、経過時間TIが設定時間範囲Tc〜Tdの範囲外である場合、加熱室10に異常が生じていると判定する。また、良否判定部53による判定が行われたとき、駆動制御部51は加熱ユニット20の駆動を停止させる。経過時間TIが設定時間範囲Tc〜Tdの範囲外で庫内温度tmpが加熱制限温度である判定開始温度t3となった場合も同様に、駆動制御部51は加熱ユニット20の駆動を停止させる。
さらに、制御装置50は、サービスマン等の使用者の操作によりチェックモードが選択された場合、チェックモードが実行できる状態であるか否かを判定する機能を有している。具体的には、制御装置50は、メンテナンスモードの選択時に電源電圧Vが設定電圧範囲a×E〜b×E(a、bは所定の係数、Eは交流電源の定格電圧であって例えば200V)内にあるか否かを判定する電圧判定部54を有している。また、温度判定部52は、メンテナンスモードの選択時の庫内温度tmpが基準温度tref(例えば40℃)よりも小さいか否かを判定する機能を有している。
そして、電圧判定部54において電源電圧Vが設定電圧範囲内にあると判定され、温度判定部52において庫内温度tmpが基準温度trefよりも小さいと判定された場合に、駆動制御部51は、メンテナンスモードの実行を許可するようになっている。一方、電源電圧Vが設定電圧範囲の範囲外にある場合、もしくは庫内温度tmpが基準温度tref以上である場合のいずれかを満たす場合、駆動制御部51は、メンテナンスモードの実行を不許可にし、メンテナンスモードが実行できないようにする。このように、電源電圧V及び庫内温度tmpが上述した所定の条件を満たさない場合には、メンテナンスモードの実行を不許可にすることにより、メンテナンスモードの開始時の条件がばらつくことによる良否判定の精度の劣化を抑制することができる。
表示制御部55は、表示部40に表示される表示画面の内容を制御するものであり、良否判定部53による判定結果を表示部40に表示させるものである。具体的には、使用者が操作部30を操作してチェックモードを選択した場合、表示制御部55は、上述した温度判定部52及び電圧判定部54の判定結果に応じてチェックモードを開始できるか否かの情報を表示部40に表示させる。
図5は、図3の表示制御部においてチェックモードの開始の可否を表示した表示部の一例を示す模式図である。図5に示すように、温度判定部52及び電圧判定部54の判定結果に基づきチェックモードの開始が可能な状態であると判定された場合、表示制御部55は、庫内温度tmpを示す「GRL−TH:30」、電源電圧を示す「VOLT:200V」を表示する。一方、温度判定部52及び電圧判定部54の判定結果に基づきチェックモードの開始ができない状態であると判定された場合、不許可である旨を表示する。
例えば、電源電圧Vが規定電圧範囲よりも高い場合、表示制御部55は表示部40に「VOLT:HIGH」を表示させ、電源電圧Vが規定電圧範囲よりも低い場合、表示部40に「VOLT:LOW」を表示させる。また、庫内温度tmpが基準温度tref以上である場合、表示部40に「GRL−TH:HIGH」を表示させる。このように、チェックモードの開始が不許可の状態である場合に、どのパラメータが異常であるかを表示することにより、使用者はどの部分に異常が生じているかを把握することができる。
また、図3の表示制御部55は、チェックモードを開始できる状態であって、使用者が操作部30を操作してチェックモードが開始された場合、チェックモード実行時の状態を逐次表示部40に表示させる。図6は図3の表示制御部の制御により表示部に表示される画面遷移の一例を示す模式図である。図6(A)に示すように、表示制御部55は、加熱室10のチェックモードが実行可能な状態である場合(図5(A)参照)、経過時間TIを示す「TIME:」、庫内温度tmpを示す「GRL−TH:30」、電源電圧を示す「VOLT:200V」、良否判定の結果を示す「GRL:」を表示部40に表示させる。
そして、使用者が操作部30を介してチェックモードの開始を選択した場合、図6(B)に示すように、表示制御部55は、「TIME:」に経過時間TIを表示させ、「GRL−TH:30」に庫内温度tmpを逐次表示させる。その後、良否判定部53による良否判定が終了した際、図6(C)〜図6(E)に示すように、表示制御部55は良否判定の結果を「GRL:OK」もしくは「GRL:NG」として表示させる。
さらに、図3の制御装置50は、良否判定部53における判定結果の履歴を記憶する履歴記憶部56aを有し、表示制御部55は、履歴記憶部56aに記憶された判定結果を表示する機能を有する。良否判定部53は良否判定の結果を履歴記憶部56aに記憶させるものであり、履歴記憶部56aには所定の回数分(例えば10回)の過去の良否判定の結果が記憶されている。表示制御部55は、履歴記憶部56aに記憶された判定結果の履歴を呼び出して表示部40に表示させる。図7は図3の表示制御部により判定結果の履歴が表示された表示部の一例を示す模式図である。図7に示すように、使用者が操作部30を操作したときに、表示制御部55は、判定結果の履歴を操作部30の操作に従い表示を切り替えながら表示していく。これにより、使用者は履歴を閲覧して加熱調理器1の故障の傾向等を把握することができる。
また、制御装置50は、良否判定部53における判定結果と判定結果の解説内容とが関連付けて記憶された解説記憶部56bを有している。そして、表示制御部55は、良否判定部53における判定結果とともに、解説記憶部56bに記憶された解説内容を表示部40に交互に表示させる。図8は図3の表示制御部により解説内容が表示された表示部の一例を示す模式図である。図8に示すように、解説記憶部56bには、OK判定の場合の解説内容と、NG判定であって経過時間TIが設定時間範囲の下限値Tcよりも小さい場合の解説内容と、NG判定であって経過時間TIが設定時間範囲の上限値Tdよりも大きい場合の解説内容とが記憶されている。そして、表示制御部55は、良否判定部53の判定結果に基づいて、解説記憶部56bから表示する解説内容を取得し、表示部40に判定結果と解説内用途を交互に表示させる。これにより、使用者は、チェックモード実行完了時に判定結果の具体的な内容を把握することができる。
図9は図3の制御装置によるメンテナンスモード時の動作例を示すフローチャートであり、図1〜図9を参照して加熱調理器のメンテナンスモード時の動作例について説明する。まず、使用者により操作部30が操作され、チェックモードが選択される。すると、温度検知部61において庫内温度tmpが検出され、温度判定部52において庫内温度tmpが基準温度trefよりも小さいか否かが判定される(ステップST1)。
例えば加熱室10の使用直後等で庫内温度tmpが基準温度tref以上である場合(ステップST1のNO)、表示部40に庫内温度tmpが高い旨が表示される(ステップST2、図5参照)。この状態で使用者からチェックモード開始の操作がなされた場合(ステップST3)、チェックモードの開始を不許可であると判断し(ステップST4)、駆動制御部51及び良否判定部53によるチェックモードは実行されない。庫内温度tmpが基準温度trefより小さくなるまで、チェックモードの開始が不許可の状態になる(ステップST1〜ステップST4)。
庫内温度tmpが基準温度trefよりも小さい場合(ステップST1のYES)、表示部40に庫内温度tmpが表示される(ステップST5、図5参照)。その後、電源電圧Vが、設定電圧範囲内(a×E〜b×E)にあるか否かが判断される(ステップST6)。電源電圧Vが設定電圧範囲内から外れている場合(ステップST6のNO)、表示部40に電源電圧Vが高いもしくは電源電圧Vが低い旨の表示がなされる(ステップST7〜ST9、図5参照)。この状態で使用者からチェックモード開始の操作がなされた場合であっても(ステップST110)、電源電圧Vが所定の範囲内になるまで、駆動制御部51及び良否判定部53によるチェックモードが不許可の状態になる(ステップST1〜ステップST11)。なお、図9において、庫内温度tmpの判定が行われた後に電源電圧Vの判定が行われる場合について例示しているが、電源電圧Vの判定が行われた後に庫内温度tmpの判定が行われるようにしてもよい。
一方、庫内温度tmpが基準温度trefよりも小さく、電源電圧Vが設定電圧範囲内に収まっている場合(ステップST6のYES)、チェックモードの実行が可能な状態になり、表示部40に電源電圧Vが表示される(ステップST12、図6(A)参照)。使用者の操作により操作部30からチェックモードの開始が入力されたとき(ステップST13のYES)、チェックモードが開始される(ステップST14)。このとき、加熱ユニット20による加熱室10内の加熱が開始されるとともに、良否判定部53において経過時間TIの計測が開始される。また、表示部40にはチェックモード開始からの経過時間TIが表示される(図6(B)参照)。
その後、経過時間TIが初期加熱期間T1だけ経過したとき(ステップST15のYES)、加熱室10を初期加熱期間T1だけ加熱した際の庫内温度tmp=t1が記憶される(ステップST16)。そして、庫内温度tmpが、判定開始温度t3以上になったか(ステップST17)、もしくは庫内温度tmpが庫内温度t1+Δtになったか否かが判断される(ステップST18)。庫内温度tmpが設定温度(判定開始温度t3もしくは温度t1+Δt)になるまで、加熱が継続される(ステップST17、ST18)。
庫内温度tmpが設定温度(判定開始温度t3もしくは温度t1+Δt)になったとき(ステップST17のYES、もしくはステップST18のYES)、経過時間TIが、設定時間範囲Tc〜Td内に収まっているか否かが判断される(ステップST19)。経過時間TIが設定時間範囲Tc〜Td内に収まっている場合(ステップST19のYES)、表示部40に正常である旨の表示が出力される(ステップST20、図6(C)参照)。一方、経過時間TIが所設定時間範囲の下限値Tcよりも短い、もしくは所設定時間範囲の上限値Tdよりも長い場合(ステップST19のNO)、表示部40に異常である旨の表示が出力される(ステップST21、図6(D)、(E)参照)。
上記実施の形態1によれば、庫内温度tmpが設定温度になるまでの加熱の開始から設定温度になるまでの経過時間TIに基づいて、加熱室10が正常に動作しているか否かを判定することにより、加熱調理器1の機器側の異常に起因する問題であるのか、ユーザーの使用の仕方に起因する問題であるのか確認することができ、効率良く加熱室10の良否の判定を行うことができる。すなわち、ユーザーが加熱室10の不調を訴えている際に、メンテナンスモードにおいて加熱室10は正常であると判定された場合、ユーザーの使用の仕方に起因するものであると判断することができる。一方、メンテナンスモードにおいて加熱室10は異常であると判定された場合、加熱ユニット20もしくは温度検知部61等の機器の異常に起因するものであると判断することができる。
また、図4に示すように、良否判定部53が、加熱開始から初期加熱期間T1を経過した後の庫内温度tmp=t1に設定温度上昇量Δtを加算した温度を設定温度として設定する場合、加熱調理器1の個体差による温度のばらつきが生じている場合であっても、精度良く庫内温度tmpに基づく良否判定を行うことができる。また、庫内温度tmpの上昇量が小さすぎる、もしくは大きすぎる等を判定することにより、大まかな異常の原因を特定することができる。このとき、制御装置50が加熱ユニット20を駆動する交流電源の電源周波数fを検出する電源周波数検出部63をさらに備え、温度判定部52は、交流電源の電源周波数fに応じて異なる設定温度上昇量Δtを設定するとき、電源周波数fの違いによりコンベクションファン22bの出力が異なることを考慮して、精度良く良否判定を行うことができる。
また、温度判定部52には、判定開始温度t3が設定温度として設定されており、温度判定部52は、庫内温度tmpが判定開始温度t3に達したか否かを判定する場合、例えば排気口もしくは吸気口が塞がれている場合のような庫内温度tmpの異常な上昇も検知することができ、良否判定するだけでなく異常の原因を特定することができる。
なお、温度判定部52が経過時間TIの経過後に庫内温度tmpが判定開始温度t3に達したか否かを判定する場合について例示しているが、経過時間TIの経過前に判定開始温度T3に達した場合も異常であると判断し、加熱ユニット20の駆動を停止させるようにしてもよい。
さらに、図7に示すように、表示制御部55は、履歴記憶部56aに記憶された判定結果を表示する機能を有するとき、使用者は操作部30の図示しない操作ボタンを操作入力することで、過去にどのような故障があったかを確認することができる。また、図8に示すように、表示制御部55は、良否判定部53における判定結果とともに、解説記憶部56bに記憶された解説内容を表示部40に交互に表示させるとき、判定結果に基づいて異常が生じている場所等を特定することができる。
実施の形態2.
図10は、本発明の実施の形態2に係る加熱調理器の制御装置の一例を示すブロック図であり、図10を参照して制御装置150について説明する。なお、図10の制御装置150において、図3の制御装置50と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図10の制御装置150が図3の制御装置50と異なる点では、電源電圧が設定電圧範囲内に収まっていない場合であっても、チェックモードを実行する点である。
図10の制御装置150において、良否判定部153は、電源電圧Vの値に関連付けて設定電圧範囲内が記憶された時間設定テーブル153aを有している。良否判定部153は、電源電圧Vの値に応じて判定閾値を変更して良否判定を行う。図11は、図10における時間設定テーブルの一例を示す模式図である。図11に示すように、電源電圧Vが設定電圧範囲の下限値a×E〜b×Eよりも小さい場合、設定時間範囲がTa〜Tbに設定される。電源電圧Vが設定電圧範囲(a×E〜b×E)内にある場合、設定時間範囲がTc〜Tdに設定される。電源電圧Vが設定電圧範囲の上限値b×Eよりも大きい場合、許可時間範囲がTe〜Tfの間に設定されている。ここで、電源電圧Vが小さいほど加熱ユニット20による時間当たりの加熱量は小さくなるため、上述した設定時間範囲は、電源電圧Vが小さいほど大きくなるように設定されている(例えばTa>Tc>Te及びTb>Td>Tf)。
図12は図10の制御装置によるメンテナンスモード時の動作例を示すフローチャートであり、図10〜図12を参照してチェックモード時の動作例について説明する。まず、使用者により操作部30が操作され、チェックモードが選択される。すると、電源電圧検出部62において電源電圧Vが検出され表示部40に表示される(ステップST31)。次に、温度検知部61において庫内温度tmpが検出され、温度判定部52において庫内温度tmpが基準温度trefよりも小さいか否かが判定される(ステップST32)。
庫内温度tmpが基準温度tref以上である場合(ステップST32のNO)、表示部40に庫内温度tmpが高い旨が表示される(ステップST33、図5参照)。この状態で使用者からチェックモード開始の操作がなされた場合(ステップST34のYES)、チェックモードの開始を不許可であると判断し(ステップST35)、駆動制御部51及び良否判定部53によるチェックモードは実行されない。庫内温度tmpが基準温度trefより小さくなるまで、チェックモードの開始が不許可の状態になる(ステップST31〜ステップST35)。
庫内温度tmpが基準温度trefよりも小さい場合(ステップST32のYES)、チェックモードの実行が可能な状態になり、表示部40に庫内温度tmpが表示される(ステップST36)。使用者によりチェックモードの開始が操作されたとき(ステップST37のYES)、チェックモードが開始される(ステップST38)。このとき、加熱ユニット20による加熱室10内の加熱が開始されるとともに、良否判定部53において経過時間TIの計測が開始される。また、表示部40にはチェックモード開始からの経過時間TIが表示される(図6(B)参照)。その後、経過時間TIが初期加熱期間T1だけ経過したとき(ステップST39のYES)、加熱室10を初期加熱期間T1だけ加熱した際の庫内温度tmp=t1が記憶される(ステップST40)。
その後、電源電圧Vが設定電圧範囲内(a×E〜b×E)にあるか否かが判断される(ステップST41)。電源電圧Vが設定電圧範囲内にある場合(ステップST41のYES)、良否判定部153において、時間設定テーブル153aから設定時間範囲Tc〜Tdが読み出される。そして、庫内温度tmpが、判定開始温度t3以上になったか(ステップST42)、もしくは庫内温度tmpが庫内温度t1+Δtになったか否かが判断される(ステップST43)。庫内温度tmpが設定温度(t3もしくはt1+Δt)になるまで、加熱が継続される(ステップST42、ST43)。
庫内温度tmpが設定温度(t3もしくはt1+Δt)になったとき(ステップST42のYES、もしくはステップST43のYES)、経過時間TIが、設定時間範囲Tc〜Td内に収まっているか否かが判断される(ステップST44)。経過時間TIが設定時間範囲Tc〜Td内に収まっている場合(ステップST44のYES)、表示部40に正常である旨の表示が出力される(ステップST45)。一方、経過時間TIが所設定時間範囲の下限値Tcよりも短い、もしくは所設定時間範囲の上限値Tdよりも長い場合(ステップST44のNO)、表示部40に異常である旨の表示が出力される(ステップST46)。
一方、電源電圧Vが設定電圧範囲内から外れている場合(ステップST41のNO)、電源電圧Vが設定電圧範囲の上限値b×Eよりも大きいか否かが判定される(ステップST47)。電源電圧Vが設定電圧範囲の上限値b×Eよりも大きい場合、(ステップST47のYES)、良否判定部153において、時間設定テーブル153aから設定時間範囲Te〜Tfが読み出される。そして、庫内温度tmpが、判定開始温度t3以上になったか(ステップST48)、もしくは庫内温度tmpが庫内温度t1+Δtになったか否かが判断される(ステップST49)。庫内温度tmpが設定温度(t3もしくはt1+Δt)になるまで、加熱が継続される(ステップST48、ST49)。
庫内温度tmpが設定温度(t3もしくはt1+Δt)になったとき(ステップST48のYES、もしくはステップST49のYES)、経過時間TIが、設定時間範囲Te〜Tf内に収まっているか否かが判断される(ステップST50)。経過時間TIが設定時間範囲Te〜Tf内に収まっている場合(ステップST50のYES)、表示部40に正常である旨の表示が出力される(ステップST51)。一方、経過時間TIが所設定時間範囲の下限値Teよりも短い、もしくは所設定時間範囲の上限値Tfよりも長い場合(ステップST50のNO)、表示部40に異常である旨の表示が出力される(ステップST52)。
電源電圧Vが設定電圧範囲の上限値b×Eよりも小さい場合、(ステップST47のNO)、すなわち電源電圧Vが設定電圧範囲の下限値a×Eよりも小さい場合、良否判定部153において、時間設定テーブル153aから設定時間範囲Ta〜Tbが読み出される。そして、庫内温度tmpが、判定開始温度t3以上になったか(ステップST53)、もしくは庫内温度tmpが庫内温度t1+Δtになったか否かが判断される(ステップST54)。庫内温度tmpが設定温度(t3もしくはt1+Δt)になるまで、加熱が継続される(ステップST53、ST54)。
庫内温度tmpが設定温度(t3もしくはt1+Δt)になったとき(ステップST53のYES、もしくはステップST54のYES)、経過時間TIが、設定時間範囲Ta〜Tb内に収まっているか否かが判断される(ステップST55)。経過時間TIが設定時間範囲Ta〜Tb内に収まっている場合(ステップST55のYES)、表示部40に正常である旨の表示が出力される(ステップST56)。一方、経過時間TIが所設定時間範囲の下限値Taよりも短い、もしくは所設定時間範囲の上限値Tbよりも長い場合(ステップST55のNO)、表示部40に異常である旨の表示が出力される(ステップST57)。
上記実施の形態2によれば、良否判定部153がメンテナンスモードの実行時に電源電圧検出部62において検出された電源電圧Vに基づいて、時間設定テーブル153aから設定時間範囲を選択し、選択した設定時間範囲Ta〜Tb、Tc〜TdもしくはTe〜Tfを用いて加熱室10が正常に動作しているか否かを判定することにより、電源電圧Vが設定電圧範囲外にある場合であっても、加熱室10の良否判定を行うことができる。また、実施の形態2の場合であっても、実施の形態1と同様、手間を掛けることなく効率良く加熱室10の良否の判定を行うことができる。
実施の形態3.
図13は、本発明の実施の形態3に係る加熱調理器の制御装置の一例を示すブロック図であり、図13を参照して制御装置250について説明する。なお、図13の制御装置250において、図10の制御装置150と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図13の制御装置250が図10の制御装置150と異なる点では、駆動制御部251が電源電圧Vに応じて通常加熱時の設定に補正を加える点である。
図13において、駆動制御部251は、加熱室10内の被加熱物を加熱する通常動作時において加熱ユニット20の動作を制御する。駆動制御部251は、調理モード毎に予め設定調理時間もしくは設定通電率が記憶された駆動テーブル251aを有しており、調理モードに従い加熱ユニット20の動作を制御する。そして、駆動制御部251は、交流電源の電源電圧Vに応じて調理モードの調理時間もしくは通電率を補正する機能を有している。電源電圧Vが設定電圧範囲の下限値a×Eよりも小さい場合、加熱ユニット20の出力が低下するため、被加熱物の焼き色が全体的に薄くなる傾向がある。電源電圧Vが設定電圧範囲の上限値b×Eよりも大きい場合、加熱ユニット20の出力が高くするため、被加熱物の焼き色が全体的に濃くなる傾向がある。そこで、駆動制御部251は、電源電圧Vが設定電圧範囲外にある場合に、調理時間もしくは通電率を補正し、加熱ユニット20の出力が、電源電圧Vが設定電圧範囲内にある場合とほぼ同等の出力になるように補正する。
図14は、図13の駆動制御部の駆動テーブルにおいて調理時間を補正する際の表示部の表示の一例を示す模式図である。図14に示すように、表示部40には、調理時間の補正度合いとして、「LOW」、「NORMAL」、「HIGH」の3種類の中から選択できるようになっている。そして、「LOW」が選択された場合、調理モードの設定調理時間×α1(α1>1)が設定され、調理時間が設定調理時間に比べて長くなるように補正される。「NORMAL」が選択された場合、補正を行わず、駆動テーブル251aに設定された設定調理時間により調理モードが実行される。「HIGH」が選択された場合、調理モードの調理時間×α2(α2<1)が設定され、調理時間が設定調理時間に比べて短くなるように補正される。
図15は、図13の駆動制御部の駆動テーブルにおいて通電率を補正する際の表示部の表示の一例を示す模式図である。図15に示すように、表示部40には、通電率の補正度合いとして、「LOW」、「NORMAL」、「HIGH」の3種類の中から選択できるようになっている。そして、「LOW」が選択された場合、調理モードの設定通電率×β1(β1>1)が設定され、調理通電率が設定通電率に比べて高くなるように補正される。「NORMAL」が選択された場合、補正を行わず、駆動テーブル251aに設定された設定通電率により調理モードが実行される。「HIGH」が選択された場合、調理モードの設定通電率×β2(β2<1)が設定され、通電率が設定通電率に比べて低くなるように補正される。
上記実施の形態3によれば、電源電圧Vの判定結果に応じて、駆動テーブル251aに記憶された調理モードの設定調理時間又は設定通電率を補正することができ、電源電圧Vに変動が生じた場合であっても、加熱調理に及ぼす影響を抑制することができる。また、実施の形態3の場合であっても、実施の形態1と同様、手間を掛けることなく効率良く加熱室10の良否の判定を行うことができる。
本発明の加熱調理器の実施の形態は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で例えば以下のように種々変形実施可能である。例えば、上記実施の形態の加熱調理器は、調理器具を電磁誘導によって加熱するものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば電熱ヒーターやガスバーナー等であってもよい。また、加熱調理器1が天面に加熱コイルを具備せず加熱室を有するものであってもよい。
さらに、加熱ユニット20が、ヒーター21及び熱風供給部22を有する場合について例示しているが、これに限定するものではなく、例えば輻射熱で加熱する下ヒーターを有するものであってもよいし、ヒーター21もしくは下ヒーターのみを有するものでもよいし、熱風供給部22のみを有するものでもよい。