JP6414190B2 - 蛍光体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、蛍光体の製造方法、蛍光体及び発光装置に関する。
光源と、この光源からの光で励起されて、光源の色相とは異なる色相の光を放出可能な波長変換部材とを組み合わせることで、光の混色の原理により多様な色相の光を放出可能な発光装置が開発されている。特に、発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下「LED」という。)と蛍光体とを組み合わせて形成した発光装置は、照明装置、液晶表示装置のバックライト、小型ストロボ等へと盛んに応用されており、普及が進んでいる。例えば、青緑色、緑色、黄緑色の短波長に発光する蛍光体と、橙色、赤色の長波長に発光する蛍光体とを組み合わせることで、液晶表示装置の色再現範囲や照明装置の演色性の改善が可能である。
これらの蛍光体のうち、緑色発光の蛍光体としてEuで活性化されたカルシウムマグネシウムクロロシリケート(Ca8Mg(SiO4)4Cl2)が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
特表2003−535477号公報
クロロシリケート蛍光体の発光効率は高いが、高温高湿の環境で劣化する傾向があり、クロロシリケート蛍光体を使用した発光装置の耐久性の改善が求められていた。 そこで、本発明の一態様は、耐久性に優れた発光装置とすることができるクロロシリケートの組成を有する蛍光体の製造方法、蛍光体及び発光装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りであり、本発明は、以下の実施形態を包含する。
本発明の第一の実施形態は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Mg及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Siと、Oと、Clを含むクロロシリケートの組成を有する焼成物を準備し、前記焼成物とフッ素含有物質とを接触させ、不活性ガス雰囲気中、200℃以上450℃以下で熱処理することを含む、蛍光体の製造方法である。
本発明の第二の実施形態は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Mg及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Siと、Oと、Clを含むクロロシリケートの組成を有する蛍光体コアと、フッ素含有化合物とを含む表面層を含む、蛍光体である。
本発明の第三の実施形態は、前記蛍光体と、励起光源とを備える発光装置である。
本発明の一実施形態によれば、耐久性に優れた発光装置が得られるクロロシリケートの組成を有する蛍光体の製造方法、前記蛍光体及び発光装置を提供することができる。
図1は、発光装置の一例を示す概略断面図である。 図2は、実施例1から4及び比較例1、3、4、6に係る蛍光体と、参考例としてCaMg(SiOClと、CaFの回折角度(2θ)に対する回折強度を示すX線回折(XRD)パターンである。 図3は、本発明の実施例と比較例の蛍光体について、波長に対する相対発光強度を示す発光スペクトルである。 図4は、実施例2に係る蛍光体の2次電子像のSEM写真である。 図5は、比較例1に係る蛍光体の2次電子像のSEM写真である。 図6は、実施例3に係る蛍光体の一粒子(実施例3−1)及び他の粒子(実施例3−2)の断面の反射電子像のSEM写真である。 図7は、実施例6に係る蛍光体の一粒子(実施例6−1)断面の反射電子像のSEM写真である。 図8は、比較例1に係る蛍光体の一粒子(比較例1−1)の断面の反射電子像のSEM写真である。
以下、本開示に係る蛍光体の製造方法、蛍光体及び発光装置を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の蛍光体の製造方法、蛍光体及び発光装置に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
蛍光体の製造方法
本開示に係る蛍光体の製造方法(以下、「本製造方法」と呼ぶ場合がある。)は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Mg及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Siと、Oと、Clを含むクロロシリケートの組成を有する焼成物を準備し、この焼成物とフッ素含有物質とを接触させ、不活性ガス雰囲気中、200℃以上450℃以下で熱処理することを含む。
焼成物を準備する工程
焼成物は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Mg及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Siと、Oと、Clを含むクロロシリケートの組成を有する。
焼成物は、下記式(I)で表される組成を有することが好ましい。
Eu SiCl (I)
(式(I)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Mは、Mg及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、v、w、x、y、及びzは、それぞれ6.5≦v≦8.0、0.01≦w≦2.0、0.8≦x≦1.2、14.0≦y≦18.0、1.0≦z≦2.0を満たす数である。)
上記式(I)において、Mは、蛍光体の発光強度を高める観点から、Ca及びSrの少なくとも一方を含むことが好ましい。MがCa及びSrの少なくとも一方を含む場合、Mに含まれるCa及びSrの総モル比率は、例えば85モル%以上であることが好ましく、90モル%以上がより好ましい。また、Mは、結晶構造の安定性の観点から、少なくともMgを含むことが好ましい。MがMgを含む場合、Mに含まれるMgのモル比率は、例えば80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上がより好ましい。式(I)において、Euの一部は、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と置き換わっていてもよい。
式(I)におけるv、w、x、y、zは、それぞれ前記数値範囲を満たす限り特に制限されない。vは、結晶構造の安定性の観点から、好ましくは6.5≦v≦8.0、より好ましくは7.0≦v≦8.0を満たす数である。wは、Euの賦活量を表し、所望の特性を達成できるように、wの範囲は適宜選択すればよい。wは、好ましくは0.01≦w≦2.0、より好ましくは0.02≦w≦1.8を満たす数である。xは、結晶構造の安定性の観点から、好ましくは0.8≦x≦1.2、より好ましくは0.9≦x≦1.1を満たす数である。yは、結晶構造の安定性の観点から、好ましくは14.0≦y≦18.0、より好ましくは14.0≦y≦17.0を満たす数である。
原料
焼成物を形成するための原料は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Mg及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Siと、Oと、Clを含むクロロシリケートの組成を有する焼成物を得ることができれば、特に制限されない。
原料として、アルカリ土類金属元素であるMg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む化合物は、例えば、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むハロゲン塩、酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩又はアンモニウム塩等を使用することができる。これらの化合物の代わりに、Mg、Ca、Sr又はBaの単体や、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む窒化物を、原料として使用してもよい。具体的には、原料は、MgF、MgCl、MgO、MgCO、CaF、CaCl、CaCO、SrN、SrN、Sr、SrF、BaF、BaCl、BaO、BaCO、Baを挙げることができ、これらかなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。
また、原料として、クロロシリケートの組成に含まれるSi及びZnは、酸化物又は水酸化物を使用することが好ましいが、酸窒物化合物、窒化物化合物、イミド化合物、アミド化合物などを使用することもできる。具体的には、原料は、SiO2、ZnO、Zn(OH)を使用することができ、それ以外の原料としてSi、Si(NH22を使用することができる。Si又はZnの単体を使用して、安価で結晶性の良好なクロロシリケートの組成を有する焼成物を形成してもよい。原料として使用するSi又はZnを含む化合物は、高純度であるものが好ましいが、Li、Na、K、B、Cu等のSi又はZnとは異なる元素が含有されていてもよい。更に原料として使用するSiを含む化合物は、Siの一部Ge、Sn、Ti、Zr、Hf、Al、Ga、In及びTlからなる群から選択される少なくとも1種の元素で置換された化合物であってもよい。
Eu、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素は、賦活剤である。原料として、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む化合物を使用することができ、中でも、Euを含む化合物を使用することが好ましい。
Euを含む化合物を使用する場合、例えば、Euを含むハロゲン塩、酸化物、炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩等を使用することができる。また、Euを含む化合物のうち、Euの一部が、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等で置換されていてもよい。Euの一部が他の元素で置換されていることにより、他の元素は、共賦活剤として作用する。共賦活剤を用いることにより、蛍光体は、色調を変化させることができ、また、発光特性の調整を行うことができる。また、Eu単体又はEuを含む化合物として、具体的には金属ユウロピウム、酸化ユウロピウム(Eu)、窒化ユウロピウム(EuN)等を使用することができる。また、Euを含むイミド化合物、アミド化合物等を使用することもできる。また、Euを必須とする複数の化合物を含む混合物を原料に使用する場合、各原料の配合比率を変更することにより、目的とする組成比を有する焼成物を得ることができる。
また、各々の原料は、平均粒径が約0.1μm以上15μm以下、より好ましくは約0.1μmから10μmの範囲であることが、他の原料との反応性、焼成時及び焼成後の粒径制御などの観点から好ましい。原料が、前記範囲を超える粒径を有する場合は粉砕を行うことで、前記範囲内の平均粒径を有する原料を使用することができる。
また、原料は精製されたものであることが好ましい。精製された原料を用いることにより、原料の精製を必要としないため、蛍光体の製造工程を簡略化でき、蛍光体を安価に製造することができる。
原料となる目的とする焼成物の組成に含まれる各元素の単体、焼成物の組成に含まれる少なくとも1種の元素を含む酸化物、炭酸塩あるいは窒化物は、各原料が焼成物の目的の組成比となるように秤量する。
式(I)で表されるクロロシリケートの組成を有する焼成物を得る場合には、具体的に、原料の混合物中のM量、Eu量、M量、Si量、Cl量が、M:Eu:M:Si:Cl=(6.5〜8.0):(0.01〜2.0):(0.8〜1.2):4:(1.0〜2.5)の各モル比を満たすように各原料を秤量する。
秤量した原料は、混合機を用いて湿式又は乾式で混合し、原料混合物を得る。混合機は工業的に通常用いられているボールミルの他、振動ミル、ロールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いることもできる。原料は、粉砕することによって比表面積を大きくすることができる。また、原料は、粒子の比表面積を一定範囲とするために、工業的に通常用いられている沈降槽、ハイドロサイクロン、遠心分離器等の湿式分離機、 サイクロン、エアセパレータ等の乾式分級機を用いて分級することもできる。
原料混合物
各原料を混合して原料混合物を得る。
フラックス
原料混合物は、フラックスを含んでいてもよい。原料混合物がフラックスを含むことで、原料間の反応がより促進され、更には固相反応がより均一に進行するために粒径が大きく、発光特性により優れた蛍光体を得るために用いる焼成物を製造することができる。これは例えば、焼成物を得るための熱処理が1000℃以上1250℃以下で行われ、この温度がフラックスとしてハロゲン化物等を用いた場合には、ハロゲン化物の液相の生成温度とほぼ同じであるためと考えられる。フラックスとして用いるハロゲン化物としては、セリウム、ユウロピウム等の希土類金属、アルカリ金属の塩化物、フッ化物等を利用できる。フラックスは、フラックスに含まれる陽イオンの元素比率を得たい焼成物の組成になるように調節して蛍光体の原料の一部としてフラックを加えることもできるし、得たい焼成物の組成になるように各原料を加えた後、更に添加する形でフラックスを加えることもできる。
原料混合物がフラックスを含む場合、フラックス成分は反応性を促進するが、多すぎると、得られる蛍光体の発光強度が低下する虞がある。そのため、フラックスの含有量は、原料混合物中に例えば10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
焼成
原料混合物は、SiC、石英、アルミナ、BN等の坩堝やボートに載置して、炉内で焼成する。原料混合物を焼成することによって、焼成物の粉末が得られる。
原料混合物の焼成は、還元性を有する窒素雰囲気中で行うことが好ましい。焼成雰囲気は還元性のある水素ガスを含む窒素雰囲気であることがより好ましい。焼成雰囲気は、大気雰囲気中で固体カーボンを用いた還元雰囲気等であってもよい。
水素及び窒素を含む還元雰囲気のように還元力の高い雰囲気中で焼成することで、高い発光強度を有する緑色を発光するクロロシリケートの組成を有する蛍光体を得るための焼成物が製造される。還元力の高い雰囲気中で焼成された焼成物は、焼成物に含まれる全てEuに対してEu2+の含有割合が増大するために高い発光強度を有する。2価のEuは酸化されて3価のEuとなりやすいが、水素及び窒素を含む還元力の高い還元雰囲気で原料混合物を焼成することにより、Eu3+がEu2+に還元される。このため、焼成物に含まれる全てのEuに対してEu2+の含有割合が増大し、高い発光強度を有する蛍光体を製造することができる。
焼成は、一次焼成を行った後に二次焼成を行ってもよく、複数回の焼成を行ってもよい。焼成温度は1000℃以上1250℃以下であることが好ましく、1100℃以上1250℃以下がより好ましい。焼成温度が低いと、得たい組成を有する焼成物が形成されにくく、また、焼成温度が高いと焼成物が分解し、焼成物を用いて得られる蛍光体の発光特性を損なうからである。
一回の焼成時間は、1時間以上30時間以下であることが好ましい。一回の焼成時において、温度を段階的に変化させて焼成することも可能である。例えば800℃以上1000℃以下で一段階目の焼成を行い、徐々に昇温して1000℃以上1300℃以下で二段目の焼成を行う二段焼成(多段階焼成)を行なってもよい。
焼成後の後処理
焼成物は、粉砕、分散、固液分離、乾燥等の後処理を行ってもよい。固液分離は濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心分離、デカンテーションなどの工業的に通常用いられる方法により行うことができる。乾燥は、真空乾燥機、熱風加熱乾燥機、コニカルドライヤー、ロータリーエバポレーターなどの工業的に通常用いられる装置により行うことができる。
焼成物は、粒子の大部分に結晶構造を有していることが好ましい。例えばガラス体(非晶質)はルーズな結晶構造を有するため、焼成物中の成分比率が一定ではなく、焼成物を用いた蛍光体が色度ムラを生じる虞がある。したがって、これを回避するために焼成物の製造工程における反応条件を厳密に一様に管理する必要が生じる。粒子の大部分に結晶構造を有する蛍光体は、加工しやすく、発光装置を製造しやすい。また、粒子の大部分に結晶構造を有する蛍光体は、樹脂に均一に分散することが容易であるため、発光性プラスチック、ポリマー薄膜材料等を調製することが容易にできる。具体的に、クロロシリケートの組成を有する蛍光体に用いる焼成物は、結晶相を例えば50質量%以上有し、より好ましくは結晶相を80質量%以上有している。これは、焼成物を用いて製造されたクロロシリケートの組成を有する蛍光体の発光性を有する結晶相の割合を示し、焼成物が結晶相を50質量%以上有していれば、実用に耐え得る発光が得られるクロロシリケートの組成を有する蛍光体を製造することができるため好ましい。焼成物に含まれる結晶相の量が多いほど高い発光強度を有する蛍光体を製造することができる。これにより、結晶相が多い焼成物を用いて製造された蛍光体の発光強度をより高くすることができ、かつ加工を行い易くすることができる。焼成物又は蛍光体の結晶相の有無は、例えばX線回折スペクトルから分析することができる。測定対象が、高い割合で結晶相を有している場合にはX線回折スペクトルにおいてシャープな回折ピークが出現し、非晶質の場合にはブロードな回折ピークが出現する。このシャープな回折ピークとブロードな回折ピークの比率によって、結晶相の割合を分析することができる。また、クロロシリケート以外の他の化合物の結晶相が形成されている場合には、クロロシリケートの組成を有する結晶相を示す回折ピークとは異なる位置に回折ピークが出現する。
焼成物の熱処理
本製造方法は、クロロシリケートの組成を有する焼成物とフッ素含有物質とを接触させ、不活性ガス雰囲気中、200℃以上450℃以下で熱処理することを含む。得られる蛍光体の劣化を抑制し、発光装置の耐久性を向上させる観点から、熱処理の温度は、250℃より高く、400℃より低いことが好ましい。
焼成物は、フッ素含有物質と接触させ、不活性ガス雰囲気中、200℃以上450℃以下で熱処理することによって、焼成物の表面又は表面近傍の少なくとも一部にフッ素含有化合物を含む表面層が形成される。得られた蛍光体は、焼成物から構成される蛍光体コアの表面又は表面近傍の少なくとも一部にフッ素含有化合物を含む表面層を含有する。このフッ素含有化合物を含む表面層が、保護膜として作用すると考えられる。熱処理の温度が200℃より低いと、焼成物の表面又は表面近傍にフッ素含有化合物を含む表面層が形成され難くなる。一方、熱処理の温度が450℃を超えると、焼成物が有するクロロシリケートの組成に含まれる元素とフッ素が過剰な反応を起こし、分解するおそれがある。得られた蛍光体は、温度や湿度が比較的高い環境下においても色調の変化が少なく、耐久性に優れる。本蛍光体を用いて耐久性に優れた発光装置を製造することができる。
フッ素含有物質
フッ素含有物質は、フッ素元素を含む物質であれば特に限定されず、フッ素ガス(F)やフッ素化合物が挙げられる。フッ素化合物としては、CF、CHF、NHHF、NHF、SiF、KrF、XeF、XeF、NF等が挙げられる。フッ素含有物質は、常温で固体のものでもよく、液体のものでもよい。
フッ素含有物質は、F、CHF、CF、NH、NHF、SiF、KrF、XeF、XeF及びNFからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。フッ素含有物質は、焼成物に均一に接触させて熱処理し易く、得られる蛍光体の劣化を抑制し発光装置の耐久性を向上させ易い点で、より好ましくはF(フッ素ガス)又はNHFである。
フッ素含有物質が、常温で固体又は液体のものである場合は、焼成物とフッ素含有物質の合計量100質量%に対して、フッ素元素量で1質量%以上25質量%以下のフッ素含有物質を、焼成物に接触させることが好ましい。焼成物とフッ素含有物質の合計量100質量%に対して、焼成物に接触させるフッ素含有物質は、フッ素元素量で、好ましくは2質量%上22質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上20量%以下である。これにより、焼成物の表面又は表面近傍の少なくとも一部にフッ素含有化合物を含む膜が形成されやすくなると推測される。クロロシリケートの組成を有する蛍光体は、高温高湿の環境下では高温の水蒸気により変質して劣化すると考えられている。得られた蛍光体は、フッ素含有化合物を含む表面層が保護膜として機能するので、発光装置に用いたとき、クロロシリケートの組成を有する蛍光体の内部が外部環境の影響を受けにくくなり、発光装置の耐久性を向上することができる。
また、フッ素含有物質が気体である場合には、フッ素含有物質を含む不活性ガス雰囲気中に焼成物を配置して接触させてもよい。フッ素含有物質が気体である場合には、フッ素含有物質を含む不活性ガス雰囲気中に焼成物を配置し、フッ素含有物質を含む不活性ガス雰囲気中で、焼成物を200℃以上450℃以下で熱処理を行なう。フッ素含有物質がF(フッ素ガス)であり、Fを含む不活性ガス雰囲気中で焼成物を200℃以上450℃以下で熱処理する場合には、不活性ガス雰囲気中のF濃度は、好ましくは2体積%以上25体積%以下であり、より好ましくは5体積%以上22体積%以下である。不活性ガス雰囲気中のF濃度が所定量以下であると、所望の耐久性が得られない虞がある。一方、F濃度が所定量以上であると、蛍光体の母体までフッ素化されることにより発光強度が大きく低下する虞があるためである。
接触温度
焼成物とフッ素含有物質とを接触させる環境の温度は、室温(20℃±5℃)でもよく、熱処理温度でもよい。具体的には、20℃以上200℃未満の低い温度でもよく、上述した熱処理の温度でもよい。焼成物と常温で固体状態のフッ素含有物質とを接触させる環境の温度が20℃以上200℃未満の場合は、焼成物とフッ素含有物質とを接触させて、200℃以上450℃以下の熱処理を行なう。熱処理の温度は、得られる蛍光体の劣化を抑制し、蛍光体を用いた発光装置の耐久性を向上させ易い点で、250℃より高く、400℃より低いことが好ましい。
熱処理雰囲気
熱処理は、不活性ガス雰囲気中で行なう。不活性ガス雰囲気とは、アルゴン、ヘリウム、窒素等を雰囲気中の主成分とする雰囲気を意味する。不活性ガス雰囲気は、不可避的不純物として酸素を含むことがあるが、本明細書において、雰囲気中に含まれる酸素の濃度が15体積%以下であれば不活性ガス雰囲気とする。不活性ガス雰囲気中の酸素の濃度は、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下、更に好ましくは1体積%以下である。酸素濃度が所定値以上であると、蛍光体の粒子が酸化され過ぎる虞があるからである。フッ素含有物質が気体の場合は、熱処理は、フッ素含有物質単独の雰囲気中で行うよりも、安全性を考慮して、不活性ガスとフッ素含有物質とを含む雰囲気中で行なうことが好ましい。
熱処理温度
焼成物とフッ素含有物質とを接触させ、不活性ガス雰囲気中で熱処理する温度は、200℃以上450℃以下である。熱処理する温度は、より好ましくは250℃以上400℃以下である。熱処理する温度は、更に好ましくは250℃より高く、400℃よりも低い温度である。熱処理する温度は、より更に好ましくは300℃以上350℃以下である。これらの範囲とすることにより、より得られるクロロシリケートの組成を有する蛍光体の耐久性が向上するからである。
熱処理する温度が所定の温度未満であると、焼成物の表面又は表面近傍にフッ素を含む化合物が形成されにくく、耐久性を有する蛍光体を製造することができない。一方、熱処理する温度が所定の温度を超えると、特定の組成を有する焼成物の結晶構造が破壊されやすくなると考えられるので、得たい色調が維持されたクロロシリケートの組成を有する蛍光体を製造することができない。熱処理の温度は、発光装置の耐久性を向上させ、相対発光強度を低下させることが少ない点で、250℃より高く、400℃より低いことが好ましい。
熱処理時間
熱処理時間は、特に制限されないが、好ましくは1時間以上10時間以下、より好ましくは2時間以上8時間以下である。熱処理時間が1時間以上10時間以下であれば、焼成物とフッ素含有物質とを接触させ、不活性ガス雰囲気中で熱処理することにより、焼成物の表面又は表面近傍にフッ素含有化合物を含む表面層が形成される。
後処理工程
蛍光体の製造方法において、熱処理後に、得られた蛍光体を解砕処理、粉砕処理、分級処理等を行う後処理を行ってもよい。
蛍光体
本開示に係る蛍光体(以下、「本蛍光体」と呼ぶ場合がある。)は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Mg及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Siと、Oと、Clを含むクロロシリケートの組成を有する蛍光体コアと、フッ素含有化合物を含む表面層とを含む。本蛍光体は、クロロシリケートの組成を有する蛍光体コアと、フッ素含有化合物を含む表面層とを含むことによって、表面層が、蛍光体コアを保護し、温度や湿度が比較的高い環境下においても耐久性に優れる。
本蛍光体の表面層に含まれるフッ素含有化合物は、蛍光体コアの組成に含まれるCa、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Mg及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Siと、Oと、Clと、さらにF(フッ素)を含む組成を有する。蛍光体コアの結晶構造を構成する元素の一部とフッ素が置き換えられて、温度や湿度に対して耐久性の高い表面層が形成されると考えられる。
本蛍光体のフッ素含有化合物を含む表面層は、蛍光体コアの表面の少なくとも一部に配置されていればよく、蛍光体コアの表面の全面に配置されていることがより望ましい。本蛍光体の表面層は、後述する実施例において説明するように、本蛍光体粒子を樹脂に埋設し、樹脂を硬化後、本蛍光体粒子の断面が露出するように切断し、蛍光体粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することによって確認することができる。後述する実施例において説明する図6又は図7に示すように、蛍光体粒子の断面の反射電子像を示したSEM写真において、蛍光体粒子は、蛍光体コアの表面に、蛍光体コアとは別に、蛍光体コアとは濃淡の差がある表面層を含むことを確認することができる。
本蛍光体の表面層に含まれるフッ素の量は、蛍光体コアを構成する結晶構造と反応するフッ素の量によって変化すると考えられる。蛍光体コアを構成する結晶構造と反応するフッ素の量は、蛍光体コアの表面の状態や、蛍光体コアを構成する結晶構造の状態、例えば、格子欠陥等の存在やその量によって変化する。本蛍光体の表面層に含まれる各元素の組成比(モル比)において、ケイ素(Si)の組成比(モル比)を4とした場合に、本蛍光体の表面層に含まれるフッ素の組成比(モル比)は、例えば0.0を超えて12.0以下であるか、0.1以上11.0以下であるか、0.2以上10.0以下である。本蛍光体の表面層に含まれるフッ素の組成比(モル比)が、前記範囲内であると、表面層によって、温度や湿度に対して耐久性に優れた蛍光体となる。
本蛍光体の表面層の厚みは、0.05μm以上0.80μm以下であることが好ましい。本蛍光体の表面層の厚みは、より好ましくは0.06μm以上0.75μm以下、さらに好ましくは0.07μm以上0.70μm以下、よりさらに好ましくは0.08μm以上0.65μm以下である。本蛍光体の表面層の厚みが前記範囲内であると、励起光源からの光の反射を抑制し、所望の発光強度を維持しながら、蛍光体コアを保護し、温度や湿度が比較的高い環境下においても、色調の変化を抑制し、耐久性を向上することができる。
本蛍光体の表面層の厚みは、後述する実施例において説明するように、蛍光体粒子を樹脂に埋設し、樹脂を硬化後、蛍光体粒子の断面が露出するように切断し、蛍光体粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、得られた画像から表面層の厚みを測定することができる。後述する実施例において説明する図6又は図7に示すように、蛍光体粒子の断面の反射電子像を示したSEM写真において、表面層は、平均厚みが0.2μmから0.3μm程度である。本蛍光体は、フッ素含有化合物を含む表面層の平均厚みが0.05μm以上0.8μm以下であることが好ましい。
本蛍光体に含まれる蛍光体コアは下記式(I)で表される組成を有することが好ましい。蛍光体コアは、焼成物とほぼ同じ組成を有することが好ましい。
Eu SiCl (I)
式(I)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Mは、Mg及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、v、w、x、y、及びzはそれぞれ、6.5≦v≦8.0、0.01≦w≦2.0、0.8≦x≦1.2、14.0≦y≦18.0、1.0≦z≦2.0を満たす数である。
本蛍光体の表面層に含まれるフッ素含有化合物は、蛍光体コアが有するクロロシリケートの組成を構成する各元素を含有し、さらにフッ素を含有することが好ましい。
本蛍光体の表面層に含まれるフッ素含有化合物は、蛍光体コアが有するクロロシリケートの組成を構成する各元素を含有する場合、フッ素含有化合物中に含まれる各元素の量は、蛍光体コアに含まれる各元素の組成比(モル比)とは異なる場合がある。また、本蛍光体の表面層には、一部にクロロシリケートの組成を有する化合物とは異なる組成を有する化合物が含まれていてもよい。
本蛍光体は、1.0質量%以上20.0質量%以下のフッ素元素を含むことが好ましい。本蛍光体は、2.0質量%以上15.0質量%以下のフッ素元素を含むことがより好ましく、2.5質量%以上12.0質量%以下のフッ素元素を含むことが更に好ましい。本蛍光体に含まれるフッ素元素は、主に表面層に含まれるフッ素含有化合物に含まれるフッ素元素であると推測される。本蛍光体のフッ素元素の含有量が前記範囲内であると、フッ素含有化合物を含む表面層が保護膜となり、蛍光体コアが温度又は湿度等の外部環境の影響を受け難いと考えられ、温度や湿度が比較的高い環境下においても色調の変化を抑制し、耐久性を向上することができる。
本蛍光体は、好ましくはユウロピウム(Eu)で賦活され、近紫外線ないし青色光を吸収して緑色に発光する。本蛍光体は、紫外線から可視光の短波長側領域である430nm以上500nm以下の波長範囲の光を吸収して、発光ピーク波長が505nm以上530nm以下の波長範囲にある蛍光を発する。当該波長範囲の励起光源を用いることにより、本蛍光体を効率よく励起することができ、蛍光体の発光強度を高くすることができる。特に、400nm以上480nm以下に主発光ピーク波長を有する励起光源を用いることが好ましく、420nm以上460nm以下に主発光ピーク波長を有する励起光源を用いることがより好ましい。
本蛍光体の発光スペクトルは、発光ピーク波長が505nm以上530nm以下の範囲にあることが好ましい。本蛍光体の発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長は506nm以上529nm以下の範囲にあることが好ましい。また本蛍光体の発光スペクトルおける発光ピークの半値幅は、特に制限されないが、例えば、75nm以下であり、70nm以下が好ましい。本蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅は、例えば45nm以上である。
本蛍光体は、希土類であるユウロピウム(Eu)が発光中心になることが好ましい。ただし、本蛍光体の発光中心は、ユウロピウムのみに限定されず、その一部を他の希土類金属の元素に置き換えて、この元素とEuとを共賦活剤として使用することもできる。2価の希土類イオンであるEu2+は適切な母体結晶を選ぶことにより、母体結晶中に安定に存在し、発光する。
本蛍光体の平均粒径は、好ましくは2.0μm以上であり、より好ましくは4.0μm以上であり、更に好ましくは5.0μm以上であり、好ましくは30.0μm以下、より好ましくは25.0μm以下、更に好ましくは20.0μm以下である。
蛍光体の平均粒径を所定値以上とすることにより、蛍光体への励起光の吸収率及び発光強度がより高くなる傾向がある。このように、発光特性に優れた蛍光体を後述する発光装置に含有させることにより、発光装置の発光効率が高くなる。また、平均粒径を所定値以下とすることにより、発光装置の製造工程における作業性を向上させることができる。
本明細書において、蛍光体の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(製品名:MASTER SIZER(マスターサイザー)2000、MALVERN(マルバーン)社製)により測定される小径側からの体積累積頻度が50%に達する粒径(メジアン径)である。
発光装置
次に、本蛍光体を波長変換部材の構成要素として利用した発光装置について説明する。本開示に係る発光装置(以下、「本発光装置」と呼ぶ場合がある。)は、本蛍光体と、励起光源とを備える。本発光装置は、クロロシリケートの組成を有する蛍光体コアとフッ素含有化合物とを含む表面層とを含む蛍光体と、350nm以上500nm以下の波長範囲の光を発する励起光源とを備えることが好ましい。
励起光源には発光素子を用いることができる。発光素子は350nm以上500nm以下の波長範囲の光を発する。発光素子の発光ピーク波長は400nm以上480nm以下の波長範囲にあることが好ましい。本蛍光体を効率よく励起することができるからである。発光素子を励起光源として用いることにより、発光素子からの光と蛍光体からの蛍光との混色光を発する発光装置を構成することが可能となる。
発光素子の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅は、特に制限されず、例えば、30nm以下とすることができる。発光素子には半導体発光素子を用いることが好ましい。光源として半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。半導体発光素子としては、例えば、窒化物系半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた半導体発光素子を用いることができる。
本蛍光体は、350nm以上500nm以下の波長範囲の光で励起され、発光ピーク波長が505nm以上530nm以下の波長範囲にあるものであることが好ましい。発光装置は、本蛍光体を第一蛍光体とし、この第一蛍光体とは発光ピーク波長の範囲が異なる第二蛍光体を含むことが好ましい。
第一蛍光体は、例えば、励起光源を覆う蛍光部材に含有されて発光装置を構成することができる。励起光源が第一蛍光体を含有する蛍光部材で覆われた発光装置では、励起光源から出射された光の一部が第一蛍光体に吸収されて、緑色光として放射される。350nm以上500nm以下の波長範囲の光を発する励起光源を用いることで、放射される光をより有効に利用することができる。蛍光部材は、樹脂と、第一蛍光体及び必要に応じて第二蛍光体を含む。
発光装置に含まれる第一蛍光体の量は特に制限されず、最終的に得たい色に応じて適宜選択することができる。例えば第一蛍光体の含有量は、蛍光部材に含まれる樹脂100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下であり、2質量部以上70質量部以下であることが好ましい。
発光装置は第一蛍光体とは発光ピーク波長が異なる第二蛍光体を含むことが好ましい。例えば、発光装置は、青色光を放出する発光素子と、これに励起される第一蛍光体及び第二蛍光体を適宜備えることにより、広い色再現範囲又は高い演色性を有することができる。
第二蛍光体としては、例えば、500nm以上580nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する下記式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)のいずれかで表される組成を有する蛍光体、580nm以上650nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する下記式(IVa)、(IVb)、(IVc)、(IVd)のいずれかで表される組成を有する蛍光体を挙げることができる。第二蛍光体は、式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IVa)、(IVb)、(IVc)及び(IVd)からなる群から選択される少なくとも1つの式で表される組成を有する少なくとも1種の蛍光体を含むことが好ましい。例えば、高い演色性を有する発光装置が得られる点で、第一蛍光体と、第二蛍光体を組み合わせて用いることが好まし。第一蛍光体と組み合わせて用いる第二蛍光体は、特に式(IIIa)で表される組成を有する蛍光体及び/又は式(IVa)で表される組成を有する蛍光体を用いることがより好ましい。
(Y,Gd,Tb,Lu)(Al,Ga)12:Ce (IIIa)
(La,Y)Si11:Ce (IIIb)
Si6−pAl8−p:Eu(0<p≦4.2) (IIIc)
(Sr,Ca)AlSiN:Eu (IVa)
(Sr,Ca)LiAl:Eu (IVb)
(Ba,Sr,Ca)Si:Eu (IVc)
(Si,Ge,Ti)F:Mn (IVd)
第二蛍光体の平均粒径は、2μm以上35μm以下であることが好ましく、5μm以上30μm以下であることがより好ましい。平均粒径を所定値以上とすることにより発光強度を大きくすることができる。平均粒径を所定値以下とすることにより、発光装置の製造工程における作業性を向上させることができる。
第二蛍光体の含有量は、例えば蛍光部材に含まれる樹脂100質量部に対して、1質量部以上200質量部以下であり、2質量部以上180質量部以下であることが好ましい。
蛍光部材に含まれる第一蛍光体と第二蛍光体の質量比(第一蛍光体/第二蛍光体)は、例えば、0.01以上5以下とすることができ、0.05以上3以下とすることが好ましい。
第一蛍光体及び第二蛍光体(以下、併せて単に「蛍光体」ともいう)は、封止樹脂とともに発光素子を被覆する蛍光部材を構成することができる。蛍光部材を構成する樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。
蛍光部材中の蛍光体の総含有量は、例えば、樹脂100質量部に対して5質量部以上300質量部以下とすることができ、10質量部以上250質量部以下が好ましく、15質量部以上230質量部以下がより好ましく、15質量部以上200質量部以下が更に好ましい。蛍光部材中の蛍光体の総含有量が、上記範囲内であると、発光素子から発した光を蛍光体で効率よく波長変換することができる。
蛍光部材は、樹脂及び蛍光体に加えて、フィラー、光拡散材等を更に含んでいてもよい。例えば、フィラーや光拡散材を含むことで、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。フィラーや光拡散材としては、例えばシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、アルミナ等を挙げることができる。蛍光部材がフィラーや光拡散材を含む場合、フィラーや光拡散材の含有量は、例えば、樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下とすることができる。
発光装置の形式は特に制限されず、通常用いられる形式から適宜選択することができる。発光装置の形式としては、ピン貫通型、表面実装型等を挙げることができる。
発光装置の一例を図面に基づいて説明する。図1は、発光装置の一例を示す概略断面図である。
発光装置100は、凹部を有するパッケージ40と、発光素子10と、発光素子10を被覆する蛍光部材50とを備える。発光素子10は、パッケージ40に形成された凹部内に配置されており、パッケージ40に配置された正負一対のリード電極20、30に導電性ワイヤ60によって電気的に接続されている。蛍光部材50は、蛍光体70を含む封止樹脂が凹部内に充填されることで形成されており、発光素子10を被覆している。蛍光部材50は、例えば、封止樹脂と発光素子10からの光を波長変換する蛍光体70を含む。更に蛍光体70は、第一蛍光体71と第二蛍光体72とを含む。正負一対のリード電極20、30は、その一部がパッケージ40の外側に露出されている。これらのリード電極20、30を介して、外部から電力の供給を受けて発光装置100が発光する。
蛍光部材50は、波長変換部材としてだけではなく、発光素子10、第一蛍光体71及び第二蛍光体72を外部環境から保護するための部材としても機能する。図1では、第一蛍光体71、第二蛍光体72は蛍光部材50中で偏在している。このように発光素子10に接近して第一蛍光体71、第二蛍光体72を配置することにより、発光素子10からの光を効率よく波長変換することができ、発光効率の優れた発光装置とできる。なお、第一蛍光体71、第二蛍光体72を含む蛍光部材50と、発光素子10との配置は、それらを接近して配置させる形態に限定されることなく、第一蛍光体71、第二蛍光体72への熱の影響を考慮して、封止部材50中で発光素子10と、第一蛍光体71、第二蛍光体72との間隔を空けて配置することもできる。また、第一蛍光体71、第二蛍光体72を蛍光部材50の全体にほぼ均一の割合で混合することによって、色ムラがより抑制された光を得るようにすることもできる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
製造例1
Ca、Mg、Eu、Si、O、及びClを含むクロロシリケートの組成を有する焼成物を準備した。具体的には、一般式(I)のM Eu SiClを有する焼成物として、MをCa、MをMgとし、CaCO、CaCl、Eu、MgO、SiOを各原料として用いた。これらの原料を仕込み量としてのモル比がCa:Eu:Mg:Si:Cl=7.5:0.5:1:4:2.5になるように、秤量し、混合して原料混合物を得た。Clは焼成時に飛散することから、目的とする組成比(モル比)の値よりも多めに配合した。原料混合物をアルミナボートに充填した後、水素窒素雰囲気中で1170℃、10時間の焼成を行い、Ca7.5Eu0.5MgSi16Clで表されるクロロシリケートの組成を有する焼成物を得た。得られた焼成物は、粒子同士が焼結等しているので、アルミナビーズで分散し、その後、粗大粒子や微粒子を取り除くふるい分級を行って、焼成物1の粉末を得た。
実施例1
フッ素ガス(F)と不活性ガスとして窒素ガス(N)とを含み、フッ素ガス濃度が20体積%、窒素ガス濃度が80体積%である雰囲気中、温度250℃、処理時間8時間で、焼成物1をフッ素ガス(F)と接触させて熱処理を行い、クロロシリケートの組成を有する蛍光体コアと表面層とを有する蛍光体の粉末を得た。
比較例1
焼成物1を比較例1のクロロシリケートの組成を有する蛍光体の粉末とした。
実施例2
熱処理の温度を300℃にする以外は、実施例1と同じ条件でクロロシリケートの組成を有する蛍光体コアと表面層とを有する蛍光体の粉末を得た。
実施例3
熱処理の温度を350℃にする以外は、実施例1と同じ条件でクロロシリケートの組成を有する蛍光体コアと表面層とを有する蛍光体の粉末を得た。
実施例4
熱処理の温度を400℃にする以外は、実施例1と同じ条件でクロロシリケートの組成を有する蛍光体コアと表面層とを有する蛍光体の粉末を得た。
比較例2
比較例1で得られたクロロシリケートの組成を有する蛍光体を大気中で、温度350℃、処理時間を8時間として熱処理を行ない、クロロシリケートの組成を有する蛍光体コアと表面層とを有する蛍光体の粉末を得た。
比較例3
熱処理の温度を25℃にする以外は、実施例1と同じ条件でクロロシリケートの組成を有する蛍光体の粉末を得た。
比較例4
熱処理の温度を150℃にする以外は、実施例1と同じ条件でクロロシリケートの組成を有する蛍光体の粉末を得た。
比較例5
比較例4で得られた蛍光体を大気中で、温度350℃、処理時間を8時間として熱処理を行い、クロロシリケートの組成を有する蛍光体の粉末を得た。
比較例6
熱処理の温度を500℃にする以外は、実施例1と同じ条件でクロロシリケートの組成を有する蛍光体の粉末を得た。
比較例7
比較例1で得られた蛍光体を、窒素ガス濃度が99.9体積%である窒素ガス雰囲気中、温度350℃、処理時間8時間で熱処理を行い、クロロシリケートの組成を有する蛍光体の粉末を得た。
実施例5
焼成物1とフッ化アンモニウム(NH4F)を、焼成物1とフッ化アンモニウムNHFの合計量に対して、フッ素元素量で5質量%となるように秤量し、混合して混合粉末を得た。この混合粉末を窒素ガス濃度が99.9体積%である窒素ガス雰囲気中、温度350℃、処理時間8時間で、焼成物1とフッ化アンモニウム(NH4F)を接触させて熱処理を行い、クロロシリケートの組成を有する蛍光体コアと表面層とを有する蛍光体の粉末を得た。
実施例6
フッ化アンモニウム(NH4F)をフッ素元素量で10質量%となるように秤量し、焼成物1と混合した混合粉末を用いる以外は実施例5と同じ条件で処理を行い、クロロシリケートの組成を有する蛍光体コアと表面層とを有する蛍光体の粉末を得た。
実施例7
フッ化アンモニウム(NH4F)をフッ素元素量で20質量%となるように秤量し、焼成物1と混合した混合粉末を用いる以外は実施例5と同じ条件で処理を行い、クロロシリケートの組成を有する蛍光体コアと表面層とを有する蛍光体の粉末を得た。
評価
発光特性
得られた蛍光体について、発光特性を測定した。蛍光体の発光特性は分光蛍光光度計(製品名:QE−2000、大塚電子株式会社製)で励起光の波長を450nmとして測定した。得られた発光スペクトルのエネルギー(相対発光強度:%)を求めた。結果を表1及び表2に示す。なお、相対発光強度は、比較例1の蛍光体を100%として算出した。
X線回折スペクトル
得られた蛍光体について、X線回折スペクトル(XRD)を測定した。測定は、試料水平型多目的X線回折装置(製品名:UltimaIV、株式会社リガク製)を用い、CuKα線を用いて測定を行った。得られた回折角度(2θ)に対する回折強度(XRD Intensity)を示すX線回折(XRD)パターンの例を図2に示す。図2は、上から順に、比較例1、3、4、実施例1から4、比較例6の蛍光体と、参考例としてCaMgSi16Cl(CaMg(SiOCl)とCaFのICDD(登録商標)(国際回折データセンター:International Centre for Diffraction Data)に登録されているXRDパターンを示す。
得られた蛍光体について、組成分析を行った。蛍光体中の塩素については、電位差滴定法により定量分析を行った。蛍光体中のフッ素(F)元素について、蛍光体中にフッ素を1.0質量%以上含有する場合には、紫外可視分光光度計(HITACHI社製)を用いて、UV−Visスペクトル法を用いて定量分析を行い、蛍光体中にフッ素を1.0質量%未満含有する場合には、イオンクロマトグラフィー法(DIONEX社製)を用いて定量分析を行った。
イオンクロマトグフラフィー法の分析条件は、以下の通りである。
カラム:IonPack AS12(4mm)
溶離液:2.7mM NaCO、0.3m NaHCO
サプレッサー:有
カラム温度:35℃
検出:電気伝導検出器
結果を表1及び表2に示す。
組成分析2
得られた蛍光体について、エネルギー分散型X線分光器(EDS)(HITACHI社製)を用いて、ICP発光分析法により、実施例3の蛍光体の一粒子(実施例3−1)と他の粒子(実施例3−2)の蛍光体コアと表面層、実施例6の蛍光体の一粒子(実施例6−1)の蛍光体コアと表面層、比較例1の蛍光体の一粒子(比較例1−1)の中心部分(コア部分)と表面部分の組成分析を行ない、各部分に含まれる元素の組成比(モル比)を測定した。その結果を表3に示す。なお、各元素の組成比(モル比)は、Siの組成比(モル比)4を基準として算出した値である。
保管試験
得られた蛍光体を用いて発光装置をそれぞれ作製した。各実施例及び比較例の蛍光体を第一蛍光体とし、赤色蛍光体として、650nmに発光波長を有するEuで賦活されたCaAlSiNを第二蛍光体として、シリコーン樹脂に分散した蛍光体で、主波長451nmの窒化物系半導体発光素子を封止して、色度(x,y)=(0.345,0.355)付近となる表面実装型発光装置を作製した。この発光装置を温度が85℃、相対湿度が85%で500時間保管した後、色度yを測定し、保管試験前の色度yに対する変化量(絶対値:Δy)として求めた。
SEM画像−2次電子像
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、実施例2の蛍光体と比較例1の蛍光体の2次電子像のSEM写真を得た。図4は、実施例2の蛍光体のSEM写真であり、図5は、比較例1の蛍光体のSEM写真である。
SEM画像−反射電子像
得られた蛍光体粒子をエポキシ樹脂に包埋し、樹脂を硬化させた後、蛍光体粒子の断面が露出するように切削し、表面を紙やすりで研磨した後、クロスセクションポリッシャー(CP)で表面を仕上げ、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、蛍光体粒子の断面の反射電子像のSEM写真を得た。図6は、実施例3−1の蛍光体粒子1及び実施例3−2の蛍光体粒子2を含む蛍光体粒子の断面の反射電子像のSEM写真である。図7は、実施例6−1の蛍光体粒子3を含む蛍光体粒子の断面の反射電子像のSEM写真である。図8は、比較例1−1の蛍光体粒子4を含む蛍光体粒子の断面の反射電子像のSEM写真である。
平均粒径
得られた蛍光体について、レーザー回折式粒度分布測定装置(製品名:MASTER SIZER(マスターサイザー)2000、MALVERN(マルバーン)社製)により測定した小径側からの体積累積頻度が50%に達する粒径(メジアン径)を平均粒径とした。
表1に実施例1から4及び比較例1から6の焼成物とフッ素含有物質との接触条件及び熱処理条件を記載した。比較例2は焼成物とフッ素含有物質とを接触させておらず、付加的な熱処理を行なった。比較例5は、焼成物とフッ素含有物質の接触と、それとは別の付加的な熱処理の両方を行った。表1中にその条件を記載した。
表1に示すように、実施例1から3の蛍光体は、比較例1の蛍光体と比べて、ほぼ同等の相対発光強度を有しており、フッ素ガスとの接触により蛍光体は劣化していないことが分かる。また、実施例1から4の蛍光体は、温度85℃、相対湿度85%の環境下で500時間保管後も、色度yの変化量(Δy)が比較例1よりも小さく、発光装置の耐久性が改善されていることが確認できた。これは、実施例1から4の蛍光体は、不活性ガス雰囲気中、焼成物とフッ素ガスとを接触させて、不活性ガス雰囲気中、所定の温度で熱処理することにより、焼成物(蛍光体コア)の表面又は表面近傍にフッ素含有化合物を含む表面層が形成されたためと考えられる。実施例1から4の蛍光体の表面層は、外部環境から蛍光体コアを保護する膜として機能しており、高温高湿の環境下での蛍光体コアの劣化を抑制していると考えられる。実施例4の蛍光体の相対発光強度が、比較例1の蛍光体と比べて若干低下しているのは、焼成物をフッ素ガスと接触させて熱処理した際の温度が高く、焼成物(蛍光体コア)の結晶構造が変化したためと考えられる。
表1に示すように、実施例1から4の蛍光体及び比較例1から6の蛍光体は、いずれも平均粒径が14.3μmから14.8μmであり、熱処理によって平均粒径が大きく変化していないことが確認できる。
図4は、実施例2の蛍光体の2次電子像のSEM写真であり、図5は、比較例1の蛍光体の2次電子像のSEM写真である。図4に示される実施例2の蛍光体と、図5に示される比較例1の蛍光体では、粒子形状や粒子表面状態において、外観上の相違がないことが確認できる。図4のSEM写真と、図5のSEM写真とを観察する限りでは、フッ素ガスを接触させながら行う熱処理が蛍光体の粒子形状や粒子表面状態に大きな影響を与えていないことが分かる。
図2のXRDパターンに示すように、比較例3、4、6の蛍光体及び実施例1から4の蛍光体は、比較例1のCa7.5Eu0.5MgSi16Clで表されるクロロシリケートの組成を有することが確認できた。また、これらの蛍光体は、CaMg(SiOClで表される化合物に特徴的なピークを有していた。また、実施例1から4の蛍光体のXRDパターンは、シャープな回折ピークを有し、50質量%以上の結晶相を有していると推測された。また、特に実施例3、4及び比較例6の蛍光体は、XRDパターンにおける回折角度(2θ)が25°から30°の間と、45°から50°の間に示される、CaFの化合物に特徴的なピークを有することが分かる。
図3に示すように、実施例1から3の蛍光体の波長に対する相対発光強度の発光スペクトルは、比較例1の蛍光体の発光スペクトルとほぼ同等の発光強度を維持している。また、実施例1から3の蛍光体の発光スペクトルのピーク形状は、比較例1の蛍光体の発光スペクトルのピーク形状とほぼ変化がないことから、熱処理温度が250℃より高く、400℃よりも低いと、蛍光体の結晶構造が変化せず、結晶構造が安定していると推測される。実施例4の蛍光体の発光スペクトルは、比較例1の蛍光体の発光スペクトルよりも発光強度が低下していることから、熱処理の温度が400℃以上になると、結晶構造が若干変化すると推測される。
表1に示すように、比較例2の蛍光体は、フッ素ガスと接触させることなく、焼成物を大気中、350℃で熱処理したものであるが、比較例1の蛍光体と比べて相対発光強度が低下しており、色度yも変化した。比較例2のように、単なる大気中の熱処理では焼成物の表面に表面層が形成されず、蛍光体の耐久性が劣っていた。比較例3は25℃でフッ素ガスと接触させて得られた蛍光体であり、比較例4は150℃でフッ素ガスと接触させた得られた蛍光体である。比較例3の蛍光体及び比較例4の蛍光体は、いずれも相対発光強度が比較例1の蛍光体とほぼ同等であるものの、色度yの変化が大きく耐久性が改善されていない。
比較例5は150℃でフッ素ガスと接触させた後、大気中、350℃で熱処理して得られた蛍光体であるが、相対発光強度が比較例1の蛍光体よりも劣っており、色度yの変化も比較例1から5の蛍光体の中で最も大きいことから、大気中の熱処理によりフッ素含有化合物を含む表面層の代わりに、焼成物の表面又は表面近傍に酸素含有化合物を含む層が形成され、耐久性が悪化したと推測される。
また、比較例6はフッ素ガスと接触させて500℃で熱処理して得られた蛍光体であるが、熱処理温度が高すぎて、結晶構造が変化し、比較例1の蛍光体と比べて相対発光強度がかなり劣っていた。
表2に実施例5から7及び比較例7の焼成物とフッ素含有物質との接触条件及び熱処理条件を記載した。比較例7は焼成物とフッ素含有物質とを接触させることなく、窒素ガス雰囲気中で熱処理を行なった。表2中にその条件を記載した。
表2に示すように、実施例5から7の蛍光体は、焼成物とフッ化アンモニウムを接触させ、不活性ガス雰囲気である窒素ガス雰囲気中で熱処理することにより、比較例1及び比較例7と比べて色度変化が小さく、相対発光強度も維持され、比較例7よりも耐久性が大きく改善されていた。特に、表2に示される実施例5及び6の蛍光体は、比較例7の蛍光体と比べて色度yの変化量が小さく、その変化量は、表1に示される実施例1と同程度である。表2に示す結果により、フッ化アンモニウムと焼成物を接触させて熱処理することによって得られた蛍光体は、フッ素ガスと焼成物を接触させての熱処理することによって得られた蛍光体と同様に、耐久性が改善されていることが確認できた。
比較例7の蛍光体は、焼成物とフッ化アンモニウムとを接触させることなく、不活性ガス雰囲気中で焼成物を熱処理して得られた蛍光体であり、比較例1と比べて、相対発光強度が低下し、色度yの変化量が大きく、耐久性が悪化した。
表3に示すように、実施例3−1の蛍光体粒子1の蛍光体コア1a、実施例3−2の蛍光体粒子2の蛍光体コア2a、実施例6−1の蛍光体粒子3の蛍光体コア3aいずれもフッ素を含有しておらず、いずれも式(I)で表される組成を有していた。実施例3−1の表面層1b、実施例3−2の表面層2b、実施例6−1の表面層3bは、いずれもフッ素が含有されていた。
比較例1−1の蛍光体粒子の中心部分(蛍光体コア)4aは、フッ素を含有しておらず、式(I)で表される組成を有していた。しかし、比較例1−1の蛍光体粒子4の表面部分4bは、フッ素を含有しておらず、カルシウム(Ca)が少なく、酸素(O)が多くなっており、蛍光体の表面が酸化されていると推測できる。
図6のSEM写真に示されるように、実施例3−1の蛍光体粒子1は、蛍光体コア1aと表面層1bと含む。図6のSEM写真に示されるように、表面層1bは、蛍光体コア1aと比べて、色の濃淡に差があり、蛍光体コア1aの表面に表面層1bが形成されていることが確認できる。実施例3−1の蛍光体粒子1は、SEM写真で示される部位において、蛍光体コア1aの表面にほぼ均一の厚みの表面層1bが形成されていた。また、実施例3−2の蛍光体粒子2も、蛍光体コア2aと表面層2bとを含む。実施例3−1の蛍光体粒子1の表面層1b厚みは、実施例3−2の蛍光体粒子2の表面層2bの厚みよりも大きい。これは、実施例3−2の蛍光体粒子2よりも実施例3−1の蛍光体粒子1の方が、蛍光体コア1aとフッ素の反応が促進したためと考えられる。図6のSEM写真から、実施例3−1の蛍光体粒子1の表面層1bの厚みは、0.2μmから0.3μm程度であり、実施例3−2の蛍光体粒子2の表面層2bの厚みは、0.05μm程度である。
図7のSEM写真に示されるように、実施例6−1の蛍光体粒子3は、蛍光体コア3aと表面層3bと含む。図7のSEM写真に示されるように、表面層3bは、蛍光体コア3aと比べて、色の濃淡に差があり、蛍光体コア3aの表面に表面層3bが形成されていることが確認できる。実施例6−1の蛍光体粒子3は、SEM写真で示される部位において、蛍光体コア3aの表面にほぼ均一の厚みの表面層3bが形成されていた。実施例6−1の蛍光体粒子3の表面層3bの厚みは、0.2μmから0.4μm程度である。
図8のSEM写真に示されるように、比較例1−1の蛍光体粒子4は、蛍光体コア部分(蛍光体の中心部分)4aと、蛍光体の表面部分4bに、色の濃淡の差が無く、表面層が存在していない。
本開示の蛍光体は、発光装置に用いることができ、本開示の発光装置は、優れた耐久性を有し、照明用の光源として好適に利用できる。特に発光ダイオードを励起光源とする発光特性に極めて優れた照明用光源、LEDディスプレイ、液晶用バックライト光源、信号機、照明式スイッチ、各種センサ、各種インジケータ、及び小型ストロボ等に好適に利用できる。
1、2、3,4:蛍光体粒子、1a、2a、3a:蛍光体コア、1b、2b、3b:表面層、4a:蛍光体コア(蛍光体の中心部分)、4b:蛍光体の表面部分、10:発光素子、40:パッケージ、50:蛍光部材、71:第一蛍光体、72:第二蛍光体、100:発光装置。

Claims (4)

  1. 下記式(I)で表される組成を有する焼成物を準備し、
    前記焼成物とフッ素含有物質とを接触させ、不活性ガス雰囲気中、200℃以上450℃以下で熱処理する、蛍光体の製造方法。
    Eu Si Cl (I)
    (式(I)中、M は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M は、Mg及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、v、w、x、y、及びzはそれぞれ、6.5≦v≦8.0、0.01≦w≦2.0、0.8≦x≦1.2、14.0≦y≦18.0、1.0≦z≦2.0を満たす数である。)
  2. 前記熱処理の温度が、250℃より高く、400℃より低い、請求項1に記載の蛍光体の製造方法。
  3. 前記フッ素含有物質が、F及び/又はNHFである、請求項1又は2に記載の蛍光体の製造方法。
  4. 前記フッ素含有物質が、F であり、
    前記熱処理が、前記焼成物を、前記F を含む前記不活性ガス雰囲気中で熱処理することであり、
    前記不活性ガス雰囲気中のF 濃度が、2体積%以上25体積%以下である、請求項1又は2に記載の蛍光体の製造方法。
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