以下、図1〜図8を用いて、本発明に係る電源装置1を含む画像形成装置を説明する。画像形成装置としてプリンター100を例にあげて説明する。但し、本実施の形態に記載されている構成、配置のような各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
(画像形成装置の概要)
まず、図1に基づき、実施形態に係るプリンター100を説明する。図1は、実施形態に係るプリンター100の一例を示す図である。
プリンター100は、主制御部2(主制御基板)を有する。主制御部2は、装置全体の動作を統括しプリンター100の各部を制御する。そして、主制御部2には、中央演算処理装置としてメインCPU21が設けられる。又、主制御部2は、ASIC10(デバイスに相当)や、制御用プログラムやデータを記憶するROM22、RAM23のような回路を実装する。ASIC10は、印刷に必要な画像処理や通信処理を行う。ASIC10の詳細は後述する。
又、プリンター100は、HDD24のような大容量記憶装置を含む。HDD24に代えてSSDを用いてもよい。主制御部2は、HDD24と通信可能に接続される。主制御部2は、HDD24に記憶された画像データ、プログラム、各種制御用データのうち必要なものを読み出してRAM23に記憶させる。
又、主制御部2は、操作パネル3と通信可能に接続される。操作パネル3は、設定用の画面やプリンター100の状態やメッセージを表示する。また、操作パネル3は、操作パネル3に設けられたタッチパネルやハードキーへの使用者の操作を受け付ける。そして、主制御部2は、操作パネル3になされた設定操作内容を認識する。そして、主制御部2は、使用者の設定どおりに動作するように、プリンター100を制御する。
又、プリンター100は、印刷部4を含む。印刷部4は、エンジン制御部40、給紙部4a、搬送部4b、画像形成部4c、中間転写部4d、定着部4eを含む。エンジン制御部40は、給紙、用紙搬送、トナー像の形成、転写、定着のような印刷関連処理を実際に制御する。エンジン制御部40と主制御部2は通信可能に接続される。主制御部2は、印刷指示、印刷ジョブの内容、印刷に用いる画像データをエンジン制御部40に与える。この受信内容に基づき、エンジン制御部40は、給紙部4a、搬送部4b、画像形成部4c、中間転写部4d、定着部4eを制御する。具体的には、給紙、搬送、画像形成、転写、定着に関する各種回転体を回転させ、印刷に関しての制御を行う。
エンジン制御部40は、用紙を一枚ずつ給紙部4aに供給させる。エンジン制御部40は、供給された用紙を、画像形成部4c、中間転写部4d、定着部4eを経て排出トレイ(不図示)まで搬送部4bに搬送させる。エンジン制御部40は、搬送部4bより搬送される用紙にのせるトナー像を画像形成部4cに形成させる。プリンター100はカラー印刷可能であり、露光装置42と複数の画像形成ユニット41を含む(図1では、便宜上、画像形成ユニットを1つのみ図示)。各画像形成ユニット41は、感光体ドラム、帯電装置、現像装置のような部材、装置を含む。各画像形成ユニット41は、形成するトナー像の色が異なる。露光装置42は、画像データに基づき、各感光体ドラムを走査、露光する。エンジン制御部40は、各画像形成ユニット41、露光装置42の動作を制御する。
中間転写部4dは、各画像形成ユニット41の感光体ドラムに形成された各色のトナー像の1次転写を受ける中間転写ベルトを含む。エンジン制御部40は、中間転写部4dに中間転写ベルトを回転させ、中間転写ベルトに1次転写されたトナー像を搬送される用紙に2次転写させる。また、エンジン制御部40は、用紙に転写されたトナー像を定着部4eに定着させる。搬送部4bは、トナー像が定着された用紙を排出トレイに排出する。
又、プリンター100は、通信I/F25含む。通信I/F25は、ネットワークに接続するためのインターフェイスである。主制御部2は、通信I/F25と接続される。これにより、主制御部2は、ネットワークを介し、通信できる。通信I/F25は、コンピューター200から画像データのような印刷内容を示すデータと印刷に関する設定を示すデータを含む印刷用データを受信する。主制御部2は、印刷用データに基づく印刷を印刷部4に行わせる。
(電力供給系統)
次に、図2を用いて、実施形態に係るプリンター100での電力供給系統の一例を説明する。図2は、実施形態に係るプリンター100の電力供給系統の一例を示す図である。
プリンター100は、1次電源部5と2次電源部6を含む。1次電源部5は、電源ケーブル(不図示)により商用電源と接続される。1次電源部5は、整流回路、トランス、スイッチング素子、平滑回路を有するスイッチング電源である。1次電源部5は、商用電源が接続されると直流電圧を出力する。1次電源部5は、例えば、モータ駆動用のDC24Vを生成する。なお、モータ駆動用電圧の配線については、便宜上、図示を省略する。
2次電源部6は、レギュレーターやDCDCコンバーターのような電力変換回路を複数含む。なお、実施形態に係る電源装置1は、2次電源部6に含まれる電力変換回路の一部である(図3参照)。なお、2次電源部6は、各基板に分散する形態で設けてもよい。2次電源部6は、1次電源部5が生成した電圧に基づき、複数種の直流電圧を生成する。メインCPU21ASIC10、ROM22、RAM23、その他の素子のような各デバイスでは、入力(供給)されるべき電圧値の範囲は、定められている。2次電源部6は、入力(供給)すべき電圧値の範囲内の電圧を生成し、各デバイスに供給する。
2次電源部6は主制御部2のメインCPU21、ROM22、RAM23、ASIC10、エンジン制御部40内のCPU、メモリー、操作パネル3に設けられる表示パネル(不図示)や操作パネル3内の表示用画像データの記憶用メモリー(不図示)のような各種デバイスに駆動に必要な電圧を供給する。
ここで、異常動作が生じないようにするため、各デバイスへの電圧の印加(電力供給)、及び、電圧遮断(電力供給の停止)の順番が予め定められる。また、1つのデバイスに複数種の電圧を印加する場合、印加する電圧の順番が決まっていることもある。例えば、CPUのような回路では、電圧を印加するとき、コア用の電圧を印加してからI/O用の電圧を印加するというような決まりがある。つまり、2次電源部6に含まれる各種電力変換回路の動作の開始順や停止順が予め定められる。
そこで、プリンター100内には、電源シーケンス回路60(電源シーケンス回路)が設けられる。電源シーケンス回路60は、プリンター100内の各基板、各デバイスへの電圧印加を予め定められた順番で開始させる。また、電源シーケンス回路60は、プリンター100内の各基板、各デバイスへの電圧印加を予め定められた順番で停止させる。このため、電源シーケンス回路60は2次電源部6に含まれる電力変換回路(電源装置1を含む)のON/OFFを制御する。
(通常モードと省電力モード)
次に、図1、図2を用いて、実施形態に係るプリンター100(電源装置1)での通常モードと省電力モードを説明する。
プリンター100(電源装置1)は、通常モードと省電力モードを有する。省電力モードでは、予め定められた供給停止部分への電力供給が停止される。具体的に、省電力モード中、電源シーケンス回路60は、2次電源部6のうち、供給停止部分に電力供給を行う電力変換回路を停止させる。プリンター100では、供給停止部分には、操作パネル3、印刷部4が含まれる。図2のうち、省電力モードでは、エンジン制御部40(エンジン基板)、操作パネル3(パネル基板)内のデバイスへの電力供給が停止される。一方、通常モードは、供給停止部分への電力供給がなされる。言い換えると、通常モードは、プリンター100を印刷できる状態で保つモードである。なお、主電源投入時、プリンター100(電源装置1)は、通常モードで起動する。
主制御部2のうち、メインCPU21、ROM22、RAM23、通信I/F25には、省電力モードでも電力が供給される。主制御部2のASIC10のうち、省電力モードで電力供給を停止すると予め定められた部分には電力供給が停止され、省電力モードで電力供給を続けると予め定められた部分には電力供給が継続される(詳細は後述)。
主制御部2(メインCPU21)は、通常モードで予め定められた省電力モードへの移行条件が満たされたことを認識する。このとき、主制御部2は、プリンター100(電源装置1)を省電力モードに移行させる。省電力モードに移行するとき、主制御部2からの省電力モード移行の指示を受け、電源シーケンス回路60は、供給停止部分への電力供給を停止する(供給停止部分に電力を供給する電力変換回路を停止させる)。
省電力モード中、主制御部2(メインCPU21)は、予め定められた復帰条件が満たされたことを認識する。このとき、主制御部2は、プリンター100(電源装置1)を通常モードに復帰させる。通常モードに復帰するとき、主制御部2からの通常モードへの復帰の指示を受け、電源シーケンス回路60は、供給停止部分への電力供給を再開する(供給停止部分に電力を供給する電力変換回路を動作させる)。
ここで、移行条件は適宜定められる。主制御部2(メインCPU21)は、通常モードとなってから、あるいは、印刷ジョブが完了してから、通信I/F25に次の印刷ジョブの入力がないまま、数分のような予め定められた時間が経過したとき、移行条件が満たされたと判断する。また、主制御部2は、操作パネル3に省電力モードの移行の指示入力がなされたとき、移行条件が満たされたと判断する。尚、移行条件は上記に限られない。
復帰条件も適宜定められる。主制御部2(メインCPU21)は、省電力モード中に通信I/F25(ASIC10)に印刷ジョブ(印刷用データ)の入力があったとき、復帰条件が満たされたと判断する。また、主制御部2は、操作パネル3が操作されたとき、復帰条件が満たされたと判断する。そのため、省電力モードでも操作パネル3の操作を受け付ける部分には、電力が供給される。尚、復帰条件は上記に限られない。
(電源装置1とASIC10への電力供給)
次に、図3を用いて実施形態に係る電源装置1と電源装置1によるASIC10への電力供給を説明する。図3は、実施形態に係るASIC10への電力供給を説明するための図である。
まず、主制御部2には、ASIC10が設けられる(図1参照)。図3に示すように、ASIC10は、第1処理回路11(処理回路に相当)と第2処理回路12(別の処理回路に相当)を含む。第1処理回路11は、通常モードでのみ使用する回路(機能)を、複数種をまとめた回路である。第2処理回路12は、通常モードと省電力モードの両方で使用する回路(機能)を複数種まとめた回路である。
第1処理回路11は、第1演算部11aと画像メモリー11bを含む。第1演算部11aは、RAM23やHDD24から画像メモリー11bへの画像データの読み出し、画像メモリー11bに記憶される画像データのRAM23やHDD24への書き込みを行う回路を含む。また、第1演算部11aは画像データに画像処理を施すための回路も含む。第1演算部11aは、画像データの圧縮や解凍を行う回路や、画像データの拡大、縮小を行う回路や、画像データの形式変換回路のようなプリンター100でなされる画像処理の実行に必要な回路を含む。また、画像メモリー11bは、第1演算部11aの処理前、処理中、処理後の画像データを一時記憶する。
画像データの処理は、ジョブの実行の際に行われるので、通常モードでのみ行われる。このように、第1処理回路11は、通常モードで動作させ、省電力モードでは動作させない回路を複数種まとめた回路である。
一方、第2処理回路12は、第2演算部12aを含む。第2演算部12aは、通信処理用の回路や、ROM22やRAM23の制御用回路を含む。第2演算部12aのうち、通信処理用の回路は、通信I/F25が受信した信号の内容を認識する。また、通信処理用の回路は、受信したネットワークからの要求に対しての応答処理を行う。
ROM22やRAM23へのアクセス制御や通信処理は、省電力モードでも行う必要がある。特に、省電力モード中、コンピューター200から印刷用データを受信したとき、復帰条件が満たされたと判断される(省電力モードが解除される)。そのため、第2演算部12aは、通常モードと省電力モードで動作させる。
そして、ASIC10に電力供給を行うための電源装置1がプリンター100内に設けられる。電源装置1は、制御回路7、第1電源回路8、第2電源回路9を含む。本実施形態のプリンター100では、第1電源回路8、第2電源回路9の何れもDCDCコンバーターである。第1電源回路8は、ASIC10(デバイス)内に設けられた第1処理回路11に電力を供給する。第2電源回路9は、第1処理回路11が設けられた同じデバイス(ASIC10)内の第2処理回路12に電力を供給する。
第1電源回路8の出力電圧である第1出力電圧V1の大きさは、ASIC10の仕様に基づき設定される。言い換えると、第1電源回路8は、ASIC10の仕様上供給すべき電圧の範囲内で予め定められている設定電圧を第1出力電圧V1として出力する。第2電源回路9は、第1出力電圧V1と同じ大きさ又は第1出力電圧V1との差が許容範囲内となる電圧が設定電圧(第2出力電圧V2)として設定される(詳細は後述)。
そして、電源装置1もプリンター100と同様に通常モードと省電力モードを有する。プリンター100と同様、電源装置1は、通常モードで所定の移行条件が満たされたとき省電力モードに移行し、省電力モードで所定の復帰条件が満たされたとき通常モードに復帰する。
第1処理回路11は、通常モードでのみ利用され、省電力モードでは利用されない。そのため、第1電源回路8は、通常モードで第1処理回路11に電力を供給し、省電力モードで第1処理回路11に電力を供給しない。具体的に、電源シーケンス回路60は、主電源ONからOFFまでの間のうち、通常モードのとき、第1電源回路8を動作させる。一方、電源シーケンス回路60は、省電力モードのとき及び主電源OFFのとき、第1電源回路8を停止させる。
一方、第2処理回路12は、通常モードと省電力モードの両方で利用される。そのため、第2電源回路9は、通常モードと省電力モードで第2処理回路12に電力を供給する。具体的に、電源シーケンス回路60は、主電源ONから主電源OFFまでの間、第2電源回路9を動作させる。電源シーケンス回路60は、主電源OFFにより第2電源回路9を停止させる。
なお、プリンター100には主電源スイッチ61が設けられる(図2参照)。主電源スイッチ61をONする操作がなされたとき、主電源スイッチ61からの信号が電源シーケンス回路60に入力される。電源シーケンス回路60は、電源装置1を含む2次電源部6を動作させ、通常モードでプリンター100を起動させる。主電源スイッチ61をOFFする操作がなされたとき、主電源スイッチ61からの信号が電源シーケンス回路60に入力される。電源シーケンス回路60は、電源装置1を含む2次電源部6の動作を停止させ、プリンター100を電源OFF状態とする。
(電源装置1)
次に、図3、図4を用いて実施形態に係る電源装置1を説明する。図4は、実施形態に係る電源装置1の一例を示す図である。
図3、図4に示すように、電源装置1は、制御回路7、第1電源回路8、第2電源回路9、電位差検知部74、フィードバック電圧生成部75を含む。
制御回路7は、CPUやマイコンのような素子である。制御回路7は、処理部71、DAコンバーター72、制御メモリー73を含む。処理部71は、電源装置1の制御や演算を行うための回路である。
制御回路7は、2次電源部6に含まれる電源装置1以外の電力変換回路から電力供給を受け、第2電源回路9の起動前に起動し動作を開始している。つまり、電源シーケンス回路60は、2次電源部6に含まれる電源装置1以外の電力変換回路であって、制御回路7を動作させる電力変換回路を第2電源回路9よりも早く動作させる。
このように、第2電源回路9の動作開始時、既に、制御回路7は起動している。処理部71は、第2電源回路9の動作開始時にはDAコンバーター72に出力すべき電圧の大きさを示すディジタル値(初期値及び初期調整値、詳細は後述)を、第2電源回路9の第2出力電圧V2の調整時には電位差検知部74の出力に応じたディジタル値をDAコンバーター72に入力する(基準電圧Vrefの大きさの指示)。DAコンバーター72は、別途用意された電源(不図示)からの電力を変換し、入力されたディジタル値に応じた電圧を基準電圧Vrefとして出力し、第2電源回路9に入力する。第2電源回路9は、基準電圧Vrefの大きさに準じた電圧を生成し、出力する。言い換えると、基準電圧Vrefによって第2出力電圧V2が設定される。なお、第2電源回路9は省電力モードでも動作するので、省電力モードでも基準電圧Vrefを第2電源回路9(後述の出力監視部93)に入力する必要がある。そのため、制御回路7には省電力モードでも電力が供給される。例えば、制御回路7は、2次電源部6内の電源装置1以外の電力変換回路から電力の供給を受ける。また、制御回路7は、メインCPU21で実現できる。
制御回路7は、ASIC10(第1処理回路11と第2処理回路12)と通信可能に接続される。制御回路7は、ASIC10に命令を与えることができる。ASIC10は、命令に沿って動作する。
電位差検知部74は、第1電源回路8が出力する第1出力電圧V1と、第2電源回路9が出力する第2出力電圧V2の電位差を検知するための回路である。例えば、電位差検知部74は、第1出力電圧V1と第2出力電圧V2の大小関係と、第1出力電圧V1と第2出力電圧V2の電位差の絶対値を制御回路7に通知する。なお、電位差検知部74を設けず、第1出力電圧V1と第2出力電圧V2を制御回路7のAD変換ポートに入力し、制御回路7が大小関係や電位差の絶対値を認識してもよい。
フィードバック電圧生成部75は、第1抵抗R1と第2抵抗R2からなる直列回路を含む。具体的に、第1抵抗R1の一端と第2抵抗R2の一端が接続される。第1抵抗R1の他端は、第2電源回路9の出力と接続される。第2抵抗R2の他端はグランドに接続される。そのため、直列回路には、第2出力電圧V2が印加される。第1抵抗R1と第2抵抗R2の間に設けられた接続点の電圧(第2出力電圧V2を第1抵抗R1と第2抵抗R2で分圧した電圧)がフィードバック電圧FBとして第2電源回路9に入力される。
(第2電源回路9)
次に、図5を用いて実施形態に係る第2電源回路9を説明する。図5は、実施形態に係る第2電源回路9の一例を示す図である。
第2電源回路9は、DCDCコンバーターである。第2電源回路9は、出力平滑部91、スイッチング部92、出力監視部93、コントローラー94を含む。
出力平滑部91は、出力コイルL1と出力コイルL1の一端に接続された出力コンデンサーC1を含む。出力コンデンサーC1の他端は、グランドに接続される。出力コイルL1と出力コンデンサーC1の間の電圧が第2出力電圧V2として出力される。スイッチング部92は、出力平滑部91への電圧印加のON/OFFを行うスイッチング素子を含む。スイッチング部92は、出力平滑部91と接続される。
具体的に、スイッチング部92は、第1トランジスタFET1と第2トランジスタFET2の2つのトランジスタを含む。図5では、MOSトランジスタを用いる例を示している。第1トランジスタFET1のソースは、電源Vcc(例えば、1次電源部5の出力電圧)と接続される。第1トランジスタFET1のゲートは、コントローラー94と接続される。第1トランジスタFET1のドレインは、第2トランジスタFET2のドレインと接続される。第1トランジスタFET1と第2トランジスタFET2の間に設けられた接続点に出力コイルL1の他端が接続される。第2トランジスタFET2のソースはグランドに接続される。第2トランジスタFET2のゲートはコントローラー94と接続される。コントローラー94は、第1トランジスタFET1と第2トランジスタFET2の両方を同時に導通状態としない。
コントローラー94が第1トランジスタFET1をON状態とし、第2トランジスタFET2をOFF状態とすると、出力平滑部91に電圧が印加され第2出力電圧V2が上昇する。一方、コントローラー94が第1トランジスタFET1をOFF状態とし、第2トランジスタFET2をON状態とすると、出力平滑部91はグランドに接続され、第2出力電圧V2が下がる。出力平滑部91は電源Vccとグランドに交互に接続され、出力コイルL1と出力コンデンサーC1で平滑された電圧が第2出力電圧V2となる。コントローラー94は、第1トランジスタFET1と第2トランジスタFET2のスイッチングを制御し、第2出力電圧V2の大きさを制御する。
出力監視部93は、基準電圧Vrefとフィードバック電圧FBが入力される。図5の例では、コンパレーターCOM1を出力監視部93として用いる例を示している。出力監視部93は、フィードバック電圧FBが基準電圧Vrefを超えている時間に応じた出力状態信号S1を生成する。図5の例では、コンパレーターCOM1は、基準電圧Vrefがフィードバック電圧FB以上のときHighを出力し、未満のときLowとなる信号を出力状態信号S1として出力する。
例えば、フィードバック電圧FBが基準電圧Vref未満のとき、コントローラー94は、スイッチング部92を制御し、出力平滑部91に電圧を印加させる(第1トランジスタFET1ON、第2トランジスタFET2OFF)。一方、フィードバック電圧FBが基準電圧Vref以上のとき、コントローラー94は、出力平滑部91への電圧印加を停止させる。このように、基準電圧Vrefの大きさに基づき、第2電源回路9の出力(第2出力電圧V2)の大きさを設定することができる。例えば、基準電圧Vrefのデフォルトの値に対して第2出力電圧V2(設定電圧)を抵抗R1、R2で定めることができる。なお、第2電源回路9の出力監視部93には、エラーアンプ(誤差増幅回路)とPWMコンパレーターを用いてもよい。
(出力調整処理)
次に、図5〜図7を用いて、実施形態に係る電源装置1の出力調整処理の流れを説明する。図6は、実施形態に係る電源装置1の出力調整処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7は、実施形態に係る温度対応データD2の一例を示す図である。
図6のスタートは、プリンター100の主電源ONによって第1電源回路8と第2電源回路9が動作を開始する時点である。また、図6のスタートは、省電力モードから通常モードへの復帰によって第1電源回路8の動作開始する時点でもよい。
制御回路7の処理部71は、第2電源回路9の起動時に自動的に選択される基準電圧Vrefの初期値(予め定められた設定値、デフォルト値)を示すディジタル値をDAコンバーター72に入力し、ひとまず初期値に対応する大きさの基準電圧VrefをDAコンバーター72に出力させる(ステップ♯11)。これにより、第1電源回路8は電圧生成を開始するとともに、第2電源回路9は、基準電圧Vrefの初期値に基づき電圧生成を開始する(ステップ♯12)。
第2出力電圧V2が立ち上がった後、処理部71は、温度センサー26(図5参照、詳細は後述)の出力により現在温度を認識し、基準電圧Vrefの初期値を温度に応じた初期調整値に調整する。そこで、処理部71は、温度対応データD2(図7参照)に基づき基準電圧Vrefの初期調整値を定め、基準電圧Vrefの初期調整値を示すディジタル値をDAコンバーター72に入力し、初期調整値に対応する大きさの基準電圧VrefをDAコンバーター72に出力させる(ステップ♯13)。なお、省電力モードから通常モードへの復帰時では、第2電源回路9は既に起動し、電圧を生成しているので、ステップ♯11〜13はスキップすればよい。
第1電源回路8と第2電源回路9の少なくとも一方の動作開始後、第2電源回路9の初期調整を含めた各電源回路の出力電圧が立ち上がり安定するまでの時間として予め定められた待ち時間が経過したとき、制御回路7は、電位差検知部74の出力に基づき、第1出力電圧V1と第2出力電圧V2の電位差を認識する(ステップ♯14)。そして、制御回路7は、電位差が予め定められた許容範囲内か否かを確認する(ステップ♯15)。制御回路7は、電位差の絶対値が許容範囲に基づく許容値を超えているか否かにより許容範囲内か否かを確認してもよい。例えば、許容範囲の上限値と下限値の絶対値のうち、小さい方の値を許容値と定めることができる。
第1電源回路8と第2電源回路9の電力供給先は、ASIC10である。つまり、第1電源回路8と第2電源回路9の電力供給先は同じデバイスである。同一デバイス内の回路に電力供給するとき、異常な動作を防ぐため(ASIC10の内部回路間の電圧値の差が大きくなりすぎないようにするため)、本実施形態のASIC10でも、第1処理回路11に入力する電圧(第1出力電圧V1)と第2処理回路12に入力する電圧(第2出力電圧V2)を同じ電圧とすることが理想的である。しかし、第1電源回路8と第2電源回路9に完全に同じ大きさの電圧を生成させることは難しい。第1処理回路11と第2処理回路12の動作に問題がない第1出力電圧V1と第2出力電圧V2の電位差の許容範囲が予め定められる。例えば、−α≦ΔV(電位差)≦βというように定められる。この場合、βが許容範囲の上限値となり、−αが許容範囲の下限値となる。
電位差が許容範囲となるように第1電源回路8と第2電源回路9は設計、設定される。しかし、各電源回路の特性は、理想的とは限らず、多少バラツキがある。また、温度の影響や使用に伴って特性が変化する場合もある。そのため、第1出力電圧V1と第2出力電圧V2の差が許容範囲を超える可能性がある。そこで、電源装置1では、第2出力電圧V2を調整できるようにしている。
許容範囲内のとき(ステップ♯15のYes)、第2出力電圧V2を調整する必要はないので、本フローは終了する(エンド)。許容範囲外のとき(ステップ♯15のNo)、制御回路7は、出力調整処理を開始する(ステップ♯16)。
出力調整処理の開始時、正確な調整の準備として、制御回路7は、調整終了までの間、静止状態で保つべき旨の命令を第1処理回路11と第2処理回路12に入力する(ステップ♯17)。これにより、回路規模がそれぞれ異なる第1処理回路11と第2処理回路12の消費電流を近づけることができる。言い換えると、制御回路7は、消費電流のレベルを第1処理回路11と第2処理回路12を同様のレベルとする。
そして、制御回路7は、電位差が許容範囲内となるように第2出力電圧V2を調整する(ステップ♯18)。具体的には、出力調整処理のとき、制御回路7の処理部71は、ステップ♯14において電位差検知部74の出力に基づき、第1出力電圧V1と第2出力電圧V2の電位差を認識している。そして、処理部71は、電位差が許容範囲内の値、または、ゼロとなるような基準電圧Vrefを示すディジタル値をDAコンバーター72に入力する。DAコンバーター72は、受信したディジタル値の大きさの基準電圧Vrefを生成する。DAコンバーター72の出力電圧(基準電圧Vref)の大きさを調整し、第1出力電圧V1に第2出力電圧V2を合わせる。
制御回路7内の制御メモリー73には、電位差に応じて基準電圧Vrefを変化させる量(調整量)を定めた調整用データD1が記憶される(図4参照)。第2出力電圧V2が第1出力電圧V1よりも小さいほど、基準電圧Vrefが大きくなるように調整量が定められる。また、第2出力電圧V2が第1出力電圧V1よりも大きいほど、基準電圧Vrefが小さくなるように調整量が定められる。
調整後、制御回路7は、電位差検知部74の出力に基づき、第1出力電圧V1と第2出力電圧V2の電位差を再認識する(ステップ♯19)。そして、制御回路7は、電位差が予め定められた許容範囲内か否かを再確認する(ステップ♯110)。
許容範囲外のとき(ステップ♯110のNo)、まだ第2出力電圧V2を調整する必要がある。そこで、この場合、フローは、ステップ♯18に戻る。一方、許容範囲内のとき(ステップ♯110のYes)、第2電源回路9の出力をこれ以上、調整する必要はない。そこで、制御回路7は、静止状態の解除通知を第1処理回路11と第2処理回路12に入力する(ステップ♯111)。これにより、第1処理回路11と第2処理回路12の静止状態が解除され、第1処理回路11と第2処理回路12は、要求された演算、処理を行う。
ここで、プリンター100には、温度センサー26(図1、図5参照)が設けられる。温度センサー26は、第2電源回路9付近に設けられる。また、温度センサー26として、機外温度検知のために外装カバーの近傍に設けられる温度センサーを用いてもよい。温度センサー26の出力は、主制御部2に入力される。主制御部2は温度センサー26の出力に基づき温度を認識する。主制御部2は、検知された温度を制御回路7に通知する。あるいは、図5に示すように、制御回路7に温度センサー26の出力を入力し、主制御部2を介さずに制御回路7が温度を認識するようにしてもよい。
そして、制御回路7は、温度センサー26の出力に基づき温度を測り、温度対応データD2を更新する(ステップ♯112→エンド、出力調整処理の終了)。温度対応データD2は、第2電源回路9の基準電圧Vrefの初期調整値を定めるために用いるデータである。温度対応データD2は、制御メモリー73に不揮発的に記憶される。温度対応データD2は、出力調整処理を行ったときの調整後の基準電圧Vrefと温度センサー26に基づき検知された調整時の温度の組合せを1又は複数含むデータである(図7参照)。
出力調整処理を行ったとき、制御回路7は、検知された温度と調整後の基準電圧Vrefの組合せを温度対応データD2として制御メモリー73に記憶させる。今回の出力調整処理で検知された温度が温度対応データD2内に無いとき、制御回路7は、今回の出力調整処理での検知温度と調整後の基準電圧Vrefの組合せを温度対応データD2に追加する。なお、今回の出力調整処理で検知された温度と同じ温度と基準電圧Vrefの組合せが既に温度対応データD2に含まれているとき、制御回路7は、今回の調整後の基準電圧Vrefを以前の調整後の基準電圧Vrefに上書きする。このように、温度対応データD2の更新が行われる。
(第2電源回路9の動作開始時の基準電圧Vrefの初期調整値の設定)
次に、図8を用いて、実施形態に係る第2電源回路9の動作開始時の基準電圧Vrefの初期調整値の設定の流れを説明する。図8は、実施形態に係る第2電源回路9の動作開始時の基準電圧Vrefの初期調整値の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
第2電源回路9の動作開始時、制御回路7の処理部71は、第2電源回路9の起動時に自動的に基準電圧Vrefの初期値を示すディジタル値をDAコンバーター72に入力し、ひとまず初期値に対応する大きさの基準電圧VrefをDAコンバーター72に出力させる。その後、制御回路7は、温度を測り、温度対応データD2に定義され、測った温度に対応する基準電圧Vrefの初期調整値を定める。そのため、図8のスタートは、第2電源回路9の動作開始後、基準電圧Vrefの初期値に基づき電圧生成を開始して第2出力電圧V2が立ち上がった後、制御回路7が初期調整値に対応する基準電圧Vrefを第2電源回路9に入力しようとする時点である。
まず、制御回路7は、温度センサー26の出力又は主制御部2からの通知に基づき、現時点の温度を認識する(ステップ♯21)。そして、制御回路7は、温度対応データD2を参照し、温度対応データD2に含まれる各温度のうち、現時点の温度と最も近い温度のデータを選択する(ステップ♯22)。
続いて、制御回路7は、選択した温度と組み合わせられている(選択した温度に対応する)基準電圧Vrefを読み出す(ステップ♯23)。そして、制御回路7は、読み出した基準電圧Vrefの大きさの電圧を基準電圧Vrefの初期調整値と定め、初期調整値を示すディジタル値をDAコンバーター72に入力し、初期調整値に対応する大きさの基準電圧VrefをDAコンバーター72に出力させる(ステップ♯24→エンド)。つまり、制御回路7は、第2電源回路9の動作を開始するとき、温度対応データD2のうち、温度センサー26に基づき検知された現時点の温度に対応する基準電圧Vrefを第2電源回路9の出力監視部93に入力する。
このように、基準電圧Vrefの初期調整値を定める。つまり、以前の出力調整処理で定めた基準電圧Vrefであって、現時点の温度と同じ又は近い温度で定められた基準電圧Vrefを動作開始時の初期調整値として用いる。これにより、動作開始当初から第1電源回路8の第1出力電圧V1と第2電源回路9の第2出力電圧V2の差が許容範囲内に収まりやすくなる。従って、出力調整処理を実行せずに速やかに第2電源回路9を立ち上げる(起動処理を完了させる)ことができる。
このようにして、実施形態にかかる電源装置1は、デバイス内に設けられた処理回路(第1処理回路11)に電力を供給する第1電源回路8と、処理回路(第1処理回路11)が設けられたデバイス内の別の処理回路(第2処理回路12)に電力を供給する第2電源回路9と、第2電源回路9の出力電圧を制御し、出力調整処理を行う制御回路7と、を含む。制御回路7は、第1電源回路8の出力電圧である第1出力電圧V1と第2電源回路9の出力電圧である第2出力電圧V2の電位差を認識し、電位差が予め定められた許容範囲外のとき出力調整処理を開始し、出力調整処理では電位差が許容範囲内となるように第2電源回路9の出力電圧値を調整する。
これにより、第1電源回路8の第1出力電圧V1と第2電源回路9の第2出力電圧V2を1つのデバイスに入力し、かつ、各出力電圧が同じ又はほぼ同じ電位であることか必要な場合、各出力電圧の差が条件(仕様)を満たさない状態になったとき、電位差の条件を満たすように第2出力電圧V2を調整(補正)することができる。従って、各電源回路の特性にバラツキ、誤差があっても、電位差の条件を容易に満たすことができる。
また、実施形態に係る電源装置1は、第2出力電圧V2が入力され第2出力電圧V2の大きさを確認するためのフィードバック電圧FBを生成するフィードバック電圧生成部75を含む。また、第2電源回路9は、出力コイルL1と出力コイルL1に接続された出力コンデンサーC1を含み別の処理回路(第2処理回路12)に電圧を出力する出力平滑部91と、出力平滑部91と接続され出力平滑部91への電圧印加のON/OFFを行うスイッチング部92と、基準電圧Vrefとフィードバック電圧FBが入力されフィードバック電圧FBが基準電圧Vrefを超えている時間に応じた出力状態信号S1を生成する出力監視部93と、スイッチング部92を制御し出力状態信号S1に基づき出力平滑部91への電圧印加のON/OFFを制御するコントローラー94を含むDCDCコンバーターである。制御回路7は、DAコンバーター72を含みDAコンバーター72の出力を基準電圧Vrefとして出力監視部93に入力し、出力調整処理のとき電位差が許容範囲内の値、または、ゼロとなるようにDAコンバーター72の出力電圧の大きさを調整する。
これにより、DCDCコンバーターに入力する基準電圧Vrefの大きさを調整することができる。従って、第2出力電圧V2の調整を行うだけで、簡易、迅速に電位差の条件を満たすことができる。
また、実施形態に係る電源装置1は、出力調整処理を行ったときの調整後の基準電圧Vrefと温度センサー26に基づき検知された調整時の温度を対応付けた温度対応データD2を記憶するメモリー(制御メモリー73)を含む。制御回路7は、第2電源回路9の動作を開始するとき、温度対応データD2のうち、温度センサー26に基づき検知された現時点の温度に対応する基準電圧Vrefを出力監視部93に入力する。
これにより、過去の調整結果に基づき現時点の温度で電位差の条件を満たす可能性が高い電圧値を第2電源回路9の動作の開始当初から第2電源回路9に出力させることができる。また、認識タイミングで認識された電位差の絶対値が許容値以下となりやすくなり、出力調整処理をせずにすますこともできる。従って、第2出力電圧V2を速やかに異常のない状態にすることができる。
また、電位差が予め定められた許容範囲外のとき、制御回路7は、出力調整処理中、静止状態で保つべき旨の命令を処理回路(第1処理回路11)と別の処理回路(第2処理回路12)に入力する。これにより、第1電源回路8と第2電源回路9の出力電流(電圧)が安定した状態とすることができる。従って、第1電源回路8と第2電源回路9の出力の電位差を正確に把握することができる。
また、電源装置1は、通常モードと省電力モードを有する。通常モードで予め定められた移行条件が満たされたとき省電力モードに移行し、省電力モードで予め定められ復帰条件が満たされたとき通常モードに復帰する。第1電源回路8は通常モードで処理回路(第1処理回路11)に電力を供給し、省電力モードで処理回路に電力を供給しない。第2電源回路9は通常モードと省電力モードで別の処理回路(第2処理回路12)に電力を供給する。これにより、省電力モードでも電圧を生成するため使用による特性変化が生じやすい電源回路(第2電源回路9)の出力電圧を調整することができる。
また、実施形態に係る画像形成装置(プリンター100)は、上述の電源装置1を含む。画像形成装置は、各電源回路の特性にバラツキ、誤差があっても、電位差の条件を容易に満たすことができる電源装置1を含むので、動作が安定し異常が生じない画像形成装置を提供することができる。
なお、上述の実施形態では、第1電源回路8が第1処理回路11に電力を供給し、第2電源回路9が第2処理回路12に電力を供給する例を説明した。しかし、電源回路と処理回路の組合せを入れ替えてもよい。つまり、第2電源回路9が第1処理回路11に電力を供給し、第1電源回路8が第2処理回路12に電力を供給するようにしてもよい。
又、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。