JP6409621B2 - セラミックス基板とアルミニウム板との接合体の製造方法 - Google Patents
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Description
このようなセラミックス基板とアルミニウム板との接合体を製造する方法において、例えば特許文献1では、接合不良を誘発する酸化被膜等を除去することを目的として、マグネシウムを含む材料からなるろう材を用い真空雰囲気中でろう付け接合する方法が開示されている。
また、特許文献2ではセラミックス基板とアルミニウム板との接合においてアルミニウム板とろう材層との接合界面或いはその近傍にマグネシウムを偏在させた接合方法が開示されている。
一方、特許文献3では、アルミニウムまたはアルミニウム合金板と窒化アルミニウム板との接合に、Al−Mg−Cu系合金、Al−Mg−Ge系合金、Al−Mg−Si系合金等からなる箔を用いて窒素、水素、不活性ガスによる低酸素雰囲気下で接合することが開示されている。
また、このようなセラミックス基板とアルミニウム板との接合において、セラミックス基板とアルミニウム板とでマグネシウムの必要量に違いがあり、各々の最適値に調整することができないという問題もあった。
また、両面ろうクラッド材を介在させ非酸化性雰囲気中において接合することで、真空雰囲気中での接合に比べ短時間で昇温でき接合することができるので、製造コストを削減できる。
さらに、接合対象に合せてマグネシウム含有量を適切に調整することで、良好な接合性を維持することができる。
なお、上述の非酸化性雰囲気とは窒素ガス雰囲気やアルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気をさすものとする。
マグネシウム含有量が3.0質量%を超えるろう材層は製造が困難である。
そこで、セラミックス基板側のマグネシウム含有量とアルミニウム板側のマグネシウム含有量とを各々上記最適値に調整することで、良好な接合性を維持することができる。
特に製造コストが重視される傾向にあるヒートシンク付きセラミックス基板は、本発明の製造方法で製造することで製造コストの削減を図ることできる。
第1実施形態のセラミックス基板とアルミニウム板との接合体であるパワーモジュール用基板50は、図1に示すように、セラミックス基板10の一方の面に両面ろうクラッド材20を介して回路層40が接合され、セラミックス基板10の他方の面に両面ろうクラッド材20を介して金属層30が接合されている。
芯材21は本実施形態ではアルミニウム合金A3003が用いられ、厚さは0.05mm〜0.6mmの範囲内に設定される。
ろう材層22,23はAl−Si−Mg系ろう材が用いられ、厚さは5μm〜100μmの範囲内に設定される。
この場合、両側のろう材層22,23のマグネシウム(Mg)含有量は、セラミックス基板10側に当接される側のろう材層22にはマグネシウム(Mg)が0.01質量%〜1.5質量%の範囲で含有され、回路層40及び金属層30側に当接される側のろう材層23にはマグネシウム(Mg)が0.5質量%〜3.0質量%の範囲で含有されている。
また、セラミックス基板10側のマグネシウム(Mg)含有量が1.5質量%を超えた場合には、回路層40及び金属層30に使用される金属のセラミックス基板10近傍が硬化し、セラミックス基板10に割れが生じるおそれがある。
例えば、セラミックス基板10をSi3N4(窒化珪素)、回路層40及び金属層30をアルミニウム合金A3003で形成する場合、マグネシウム(Mg)の最適な含有量は、セラミックス基板10側が0.05質量%で回路層40及び金属層30側が1.5質量%とするとよい。
なお、本発明においてろう材として両面ろうクラッド材20を用いていることにより、単一の箔に比べて、両側のろう材層22,23のマグネシウム含有量を多くすることが可能であるが、マグネシウム含有量が3.0質量%を超えると、クラッド材製造工程において圧延性が極端に悪くなるため、クラッド材製造が困難となる。
図1(a)に示すように、セラミックス基板10の一方の面に両面ろうクラッド材20を介して回路層用アルミニウム板40´を積層し、セラミックス基板10の他方の面に両面ろうクラッド材20を介して金属層用アルミニウム板30´を厚さ方向に積層する。この場合、両面ろうクラッド材20は、セラミックス基板10側にマグネシウム量が少ないろう材層22が当接される向きで積層する。
その積層体Sを図4に示す加圧装置110を用いて積層方向に加圧した状態とする。
この加圧装置110は、ベース板111と、ベース板111の上面の四隅に垂直に取り付けられたガイドポスト112と、これらガイドポスト112の上端部に固定された固定板113と、これらベース板111と固定板113との間で上下移動自在にガイドポスト112に支持された押圧板114と、固定板113と押圧板114との間に設けられて押圧板114を下方に付勢するばね等の付勢手段115とを備えている。
固定板113および押圧板114は、ベース板111に対して平行に配置されており、ベース板111と押圧板114との間に前述の積層体Sが配置される。積層体Sの両面には加圧を均一にするためにクッションシート116が配設される。クッションシート116は、カーボンシートとグラファイトシートの積層板で形成されている。この加圧装置110により加圧した状態で、加圧装置110ごと図示略の加熱炉内に設置し、常圧の窒素ガス(N2)雰囲気下で接合温度に加熱してセラミックス基板10に回路層40と金属層30とを接合する。この場合の加圧力としては例えば0.01MPa〜0.6MPa、接合温度としては640℃以下好ましくは610℃〜620℃の範囲に加熱して接合する。
この製造方法のように、両面ろうクラッド材20を用いてセラミックス基板10とアルミニウム板30´,40´とを接合してパワーモジュール用基板50を製造するので、両面ろうクラッド材20の両面のろう材層22,23のマグネシウム(Mg)含有量を同一に設定しておくこともできるし、異なる含有量に設定しておくこともでき、セラミックス基板10側のマグネシウム(Mg)含有量と回路層40及び金属層30側のマグネシウム(Mg)含有量とを各々最適値に調整して、セラミックス基板10とアルミニウム板30´,40´とを良好に接合することができる。
また、非酸化性雰囲気中で接合することで、真空引き工程が不要なことや昇温時間の短縮など真空雰囲気中の接合に比して接合時間が短縮され製造コストが削減できる。
第2実施形態のヒートシンク付きセラミックス基板70は、セラミックス基板10の一方の面に両面ろうクラッド材20を介してヒートシンク60が接合されている。
このヒートシンク付きセラミックス基板70は、図3(c)に示すように、例えばセラミックス基板10の上面にパワーモジュール80をグリスを介して押圧して保持することにより、パワーモジュール80の冷却器として使用される。
ヒートシンク60は、天板部61とこの天板部61から垂設された放熱フィン62とを有しており、アルミニウム合金例えばA6063やA3003が用いられ、両面ろうクラッド材20との接合面である天板部61は平滑な面に形成されている。
芯材21はアルミニウム合金A3003が用いられ、厚さは0.05mm〜0.6mmの範囲内に設定される。
ろう材層22,23はAl−Si−Mg系ろう材が用いられ、厚さは5μm〜100μmの範囲内に設定される。
この場合、両側のろう材層22,23のマグネシウム(Mg)含有量は、セラミックス基板10側に当接される側のろう材層22にはマグネシウム(Mg)が0.01質量%〜1.5質量%の範囲で含有され、ヒートシンク60側に当接される側のろう材層23にはマグネシウム(Mg)が0.5質量%〜3.0質量%の範囲で含有されている。
図3(a)に示すように、セラミックス基板10とヒートシンク60とを両面ろうクラッド材20を介して積層する。この場合、ヒートシンク60は天板部61と放熱フィン62とを鍛造、鋳造、押出成形等で形成しておく。また、両面ろうクラッド材20は、セラミックス基板10側にマグネシウム(Mg)の含有量が少ないろう材層22が当接される向きで厚さ方向に積層する。
その積層体を、図4と同様の加圧装置110を用いて放熱フィン62を避けて積層方向に加圧した状態で、加圧装置110ごと窒素ガス(N2)雰囲気下で加熱して接合する。
このヒートシンク付きセラミックス基板70においても、セラミックス基板10側のマグネシウム(Mg)含有量とヒートシンク60側のマグネシウム(Mg)含有量とを各々最適値に調整することができるので、良好な接合を確保しつつ製造コストを削減して製造することができる。
(実施例1〜14)
実施例1〜14として、表1記載のアルミニウム板(平面サイズ:40mm×40mm)を、両面ろうクラッド材を介してセラミックス基板(窒化珪素Si3N4(平面サイズ:40mm×40mm、厚さ:0.32mm))の一方の面及び他方の面に積層した。これらの積層体を図4の加圧装置で加圧して窒素ガス(N2)雰囲気下で表1に示す接合温度(積層体表面温度)に昇温し、温度維持時間の間、接合温度に維持して接合した。
両面ろうクラッド材は、芯材をアルミニウム合金A3003(平面サイズ:40mm×40mm、厚さ:0.2mm)とし、ろう材層はAl−Si−Mg(平面サイズ:40mm×40mm)とし、ろう材層のMg含有量、Si含有量及び厚さは表1の通りとした。
比較例1として、表1記載のアルミニウム板(平面サイズ:40mm×40mm)を、Al−10.5Siろう材(平面サイズ:41mm×41mm、厚さ:0.02mm)を介してセラミックス基板(窒化珪素Si3N4(平面サイズ:40mm×40mm、厚さ:0.32mm))の一方の面及び他方の面に積層した。これらの積層体を図4の加圧装置で加圧して窒素ガス(N2)雰囲気下で表1に示す接合温度(積層体表面温度)に昇温し、温度維持時間の間、接合温度に維持して接合した。
比較例2として、芯材をアルミニウム合金A3003(厚さ:0.2mm)、ろう材層をAl−Si−Mgとし、ろう材層のMg含有量、Si含有量及び厚さを表1の通りとした両面ろうクラッド材を製造しようとしたが、両面ろうクラッド材を製造することはできなかった。
100個のサンプルに対し、超音波画像測定機にてセラミックス基板と両面ろうクラッド材の芯材との接合界面、及びアルミニウム板と両面ろうクラッド材の芯材との接合界面(比較例1はセラミックス基板とアルミニウム板との接合界面)を観察して、これらの接合界面におけるボイド(空孔)の面積を測定し、接合すべき面積に対するボイドの合計面積をボイド率として算出し、その平均を平均ボイド率とした。いずれの接合界面も平均ボイド率が2%未満であったものを接合性◎、いずれかの接合界面の平均ボイド率が2%以上5%以下のものを接合性○、いずれかの接合界面の平均ボイド率が5%を超えるものを接合性×とした。
また、セラミックス割れについても、100個のサンプルに対して−40℃から150℃の液槽冷熱サイクルを1000サイクル実施し、超音波画像測定機を用いてセラミックスの割れ有無を判定し、割れ確率が0%であったものを◎、5%以下(0%除く)であったものを○、5%を超えたものを×と評価した。
また、図5に実施例2(接合性◎)のセラミックス基板と両面ろうクラッド材の芯材との接合面の超音波測定画像、図6に比較例1(接合性×)のセラミックス基板とアルミニウム板との接合面の超音波測定画像を示す。図5は均一に接合されており、図6はボイドが認められる。このように、比較例1ではボイドが多いため、部分的に接合された状態であり、このため、セラミックス基板の表裏からの応力が不均一にかかることから、セラミックス基板に割れが生じる。
20…両面ろうクラッド材
21…芯材
22,23…ろう材層
30…金属層
40…回路層
50…パワーモジュール用基板
60…ヒートシンク
70…ヒートシンク付きセラミックス基板
110…加圧装置
Claims (3)
- セラミックス基板とアルミニウム板との接合体を製造する方法であって、前記セラミックス基板と前記アルミニウム板との間に接合材としてアルミニウム合金からなる芯材の両面にマグネシウムを3.0質量%以下含有するろう材層が形成された両面ろうクラッド材を介在させ、非酸化性雰囲気中で接合温度に加熱し、
前記両面ろうクラッド材のマグネシウム含有量は、前記セラミックス基板側と前記アルミニウム板側とで異なることを特徴とするセラミックス基板とアルミニウム板との接合体の製造方法。 - 前記両面ろうクラッド材のマグネシウム含有量は、前記セラミックス基板側が0.01質量%〜1.5質量%、前記アルミニウム板側が0.5質量%〜3.0質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス基板とアルミニウム板との接合体の製造方法。
- 前記アルミニウム板がヒートシンクであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセラミックス基板とアルミニウム板との接合体の製造方法。
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