JP6408328B2 - ダイカストマシンの射出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ダイカストマシンの射出装置に関する。
ダイカストマシンにはコールドチャンバー方式とホットチャンバー方式の二通りがある。
このうちコールドチャンバー方式では、ひけ巣や、ガス欠陥等が生じやすい。このため、高品質なダイカスト製品を生産する場合は、ホットチャンバー方式を採用することが好ましい。
その一方で、融点が比較的低い亜鉛合金やマグネシウム合金を溶湯金属とする場合にはホットチャンバー方式が広く用いられているが、溶湯金属がアルミニウム合金の場合は、ダイカストマシンの構成部品の溶損を抑制するためにコールドチャンバー方式が主流である、という事情もある。
ダイカストマシンの射出装置は、例えば、プランジャを摺動案内するプランジャスリーブを有している。このプランジャスリーブの耐熱性と耐摩耗性を向上させるために、鋼製のプランジャスリーブの内面にセラミックス製のライナを嵌合することが行われている。しかし、この場合は、鋼製のプランジャスリーブとセラミックス製のライナとの熱膨張係数の差からセラミックス製のライナにクラックが発生することがある。そこで、鋼製のプランジャスリーブとセラミックス製のライナとの間に、鋼製のプランジャスリーブよりも変形し易い応力緩和層を介挿することが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1の技術はコールドチャンバー方式の射出装置であり、ひけ巣やガス欠陥等の問題を根本的に克服することは困難である。仮に、特許文献1のような構成の射出装置をホットチャンバー方式のダイカストマシンに適用すると、鋼製のプランジャスリーブをアルミニウム合金の溶湯中に浸漬するために、鋼製のプランジャスリーブの外周部は激しく溶損する。さらには、応力緩和層にも溶損が進行し、結果として鋼製のプランジャスリーブはその内側と外側の両方から溶損してセラミックス製のライナを適正に保持することが出来なくなると考えられる。
そこで、ホットチャンバー式のダイカストマシンの射出装置において、溶湯と接触する箇所全てをセラミックス製の部材で構成し、それらセラミックス製の部材を金属製の部材で保持するにあたり、両者の熱膨張係数差に起因するクリアランスを調整するためのクリアランス調整機構を設けることも提案されている(特許文献2)。
特開平5−50204号公報 特開2012−223794号公報
しかしながら、特許文献2のダイカストマシンでは、装置が複雑でかつ大掛かりなためコストが嵩み、部品交換等のメンテナンス作業が困難であるという問題がある。また、セラミックス製の部材同士を組み付ける箇所では、射出時に発生する衝撃や外力が作用することによってセラミックス製の部材が破損する可能性が高い。
本発明は、上記問題を解決するものであり、耐熱性、耐摩耗性を維持しながら、簡素な構成で部品交換も容易な、ホットチャンバー方式のダイカストマシンを提供することを目的とする。
本発明は、
アルミニウム合金の溶湯内に浸漬され、溶湯を吸入および加圧して金型へと射出するダイカストマシンの射出装置であって、
プランジャを内周面でガイドするスリーブと、
前記スリーブを収容する収容部を有するホルダと、
前記ホルダが内壁の底部に嵌合されるグースネックと、
前記ホルダの上面より突出した前記スリーブの上面を下方に押圧することにより前記スリーブおよび前記ホルダを前記グースネックに固定するクランプと、
を備え、
前記スリーブはセラミックス製であり、
前記グースネック、前記ホルダおよび前記クランプの各々は、耐アルミニウム溶損性を有する金属製であり、
前記スリーブの外面と、前記ホルダの前記収容部の内面との間には、クリアランスが設定されているダイカストマシンの射出装置を提供する。
本発明は、
アルミニウム合金の溶湯内に浸漬され、溶湯を吸入および加圧して金型へと射出するダイカストマシンの射出装置であって、
プランジャを内周面でガイドするスリーブと、
前記スリーブを収容する収容部を有するホルダと、
前記ホルダが内壁の底部に嵌合されるグースネックと、
前記ホルダの上面より突出した前記スリーブの上面を下方に押圧することにより前記スリーブおよび前記ホルダを前記グースネックに固定するクランプと、
を備え、
前記スリーブはセラミックス製であり、
前記グースネック、前記ホルダおよび前記クランプの各々は、耐アルミニウム溶損性を有する金属製であり、
前記ホルダは、
前記収容部と、
前記グースネックと嵌合する嵌合部と、
を有し、
前記嵌合部は、前記収容部の下端より下方に突出しており、
前記ホルダの前記収容部と前記グースネックの内壁との間には溶湯が満たされる隙間が形成されているダイカストマシンの射出装置を提供する。
本発明によれば、耐熱性、耐摩耗性を維持しながら、簡素な構成で部品交換も容易な、ホットチャンバー方式のダイカストマシンを提供することができる。
実施形態に係るダイカストマシンの射出装置の断面図である。 実施形態に係るダイカストマシンの断面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
図1は実施形態に係るダイカストマシンの射出装置100の断面図である。図2は実施形態に係るダイカストマシンDの断面図である。
本実施形態に係るダイカストマシンの射出装置100(以下、単に射出装置100)は、アルミニウム合金の溶湯M内に浸漬され、溶湯Mを吸入および加圧して金型(図示略)へと射出するものである。
この射出装置100は、スリーブ(プランジャスリーブ)11と、ホルダ13と、グースネック1と、クランプ17と、を備えている。
スリーブ11は、プランジャPlを内周面11aでガイドする。
ホルダ13は、スリーブ11を収容する収容部14を有している。
グースネック1は、当該グースネック1の内壁2の底部にホルダ13が嵌合される。
クランプ17は、ホルダ13の上面より突出したスリーブ11の上面を下方に押圧することによりスリーブ11およびホルダ13をグースネック1に固定する。
スリーブ11はセラミックス製である。
これに対し、グースネック1、ホルダ13およびクランプ17の各々は、耐アルミニウム溶損性を有する金属製である。
以下、詳細に説明する。
ダイカストマシンDは、溶湯Mを貯留したポットPoと、射出装置100と、を備えている。射出装置100は、ポットPo内の溶湯Mに浸漬された状態で、図示しない公知の固定構造によりポットPoに固定されている。
ポットPoには図示しない公知の加熱装置が設けられており、当該加熱装置によってアルミニウム合金を加熱し溶融させることによって溶湯Mを生成する。
射出装置100において、図1および図2に示される部分は、射出装置100全体のうちグースネック1に関連する主要部分である。
射出装置100の上方にはプランジャPlを前後方向(図中上下方向)に駆動する公知のプランジャ駆動装置が設けられている。
また、グースネック1は、後述するノズル装着口8を有している。ダイカストマシンDは、グースネック1のノズル装着口8に装着される図示しない公知のノズルおよび金型を備えている。
グースネック1は、全体が略円筒形状に形成されている。グースネック1の中心軸まわりには、内壁2、底面3および保持部4により画定される収容空間が形成されており、当該収容空間に他の部材(具体的には、ホルダ13、スリーブ11及びクランプ17)を収容するようになっている。
内壁2は、円柱形状の第1内部空間の外周囲を画定している。
内壁2の下方には、保持部4が配置されている。保持部4は、内周面4aと底面4bとを有する。
内壁2の下端位置と、保持部4の内周面4aの上端位置とは、上下方向における位置が互いに一致している。
保持部4の内周面4aは、第1内部空間よりも小径の円柱形状の第2内部空間の外周囲を画定している。
第1内部空間と第2内部空間とは相互に連続している。
底面3は、内壁2の下端と内周面4aの上端とを繋ぐ平面視ドーナツ状の平坦面であり、例えば水平に配置される。
保持部4の下方には、保持部4内の第2内部空間よりも小径の第1流出孔6が、第2内部空間と連続して形成されている。
保持部4の底面4bは、内周面4aの下端と第1流出孔6の上端とを繋ぐ平面視ドーナツ状の平坦面であり、例えば水平に配置される。
グースネック1には、更に、第2流出孔7とノズル装着口8とが形成されている。
ノズル装着口8は、グースネック1の上部に配置されて側方に向けて開放している。
第2流出孔7は、第1流出孔6とノズル装着口8とを相互に接続している。第2流出孔7は、第1流出孔6から側方に向けて延びた後、内壁2の外方において上方に向けて立ち上がっている。
グースネック1の側壁には、グースネック1の側方の空間と内壁2内の第1内部空間とを相互に連通させる流入孔5が形成されている。
グースネック1の上部にはフランジ部9が設けられており、フランジ部9の前側(図中右方)下部には切欠部10が形成されている。
スリーブ11は、全長がL1(不図示)の中空円筒形状をなしている。
スリーブ11の内周面11aは、プランジャPlのヘッドを摺動させてガイドする摺動面となっている。なお、内周面11aとプランジャPlのヘッドとの間には、若干のクリアランスが設定されており、プランジャPlがスリーブ11内においてスムーズに摺動できるようになっている。
スリーブ11には、当該スリーブ11をその外周面11bから内周面11aに亘って貫通する複数(例えば4つ)の流入孔12が形成されている。これら流入孔12は、例えば、スリーブ11の中心軸周りに等角度間隔で配置されている。スリーブ11の軸方向において、これら流入孔12の位置(高さ位置)は、例えば、互いに一致している。
ホルダ13は、当該ホルダ13の上部を構成する収容部14と、当該ホルダ13の下部を構成していてグースネック1と嵌合する嵌合部16と、からなる。
より具体的には、嵌合部16は、収容部14の下端より下方に突出しており、収容部14と嵌合部16とは上下方向で互いに区画されている。
収容部14は、中空円筒形状をなしており、内周面14a、外周面14b、底面14cおよび端面14dを有している。
内周面14aと外周面14bとは、互いの上端の高さ位置が一致しているが、外周面14bの下端位置の方が、内周面14aの下端位置よりも下に位置している。
嵌合部16は、収容部14よりも小径の中空円筒形状をなしており、内周面16a、外周面16bおよび先端面16cを有している。
内周面16aと外周面16bとは、互いの下端の高さ位置が一致しているが、外周面16bの上端位置の方が、内周面16aの上端位置よりも下に位置している。
底面14cは、収容部14の内周面14aの下端と嵌合部16の内周面16aの上端とを繋ぐ、平面視ドーナツ状の平坦面であり、例えば、水平に配置される。
端面14dは、収容部14の外周面14bの下端と嵌合部16の外周面16bの上端とを繋ぐ、平面視ドーナツ状の平坦面であり、例えば、水平に配置される。
先端面16cは、嵌合部16の下端面であるとともに、ホルダ13の下端面でもあり、嵌合部16の内周面16aの下端と外周面16bの下端とを繋ぐ、平面視ドーナツ状の平坦面であり、例えば、水平に配置される。
収容部14の内周面14aと底面14cとにより画定される収容部14の内部領域の深さ(収容部14の軸方向における収容部14の長さ)は、L2(不図示)である。前述のスリーブ11の全長L1と収容部14の内部領域の深さL2との関係は、L1>L2を満たす。
収容部14には、当該収容部14をその外周面14bから内周面14aに亘って貫通する複数の流入孔15が形成されている。これら流入孔15の各々は、スリーブ11の各流入孔12と1対1で対応する位置に配置され、且つ、スリーブ11の流入孔12よりも大径に形成されている。
ホルダ13の嵌合部16は、グースネック1の保持部4と嵌合している。より具体的には、嵌合部16の外周面16bが保持部4の内周面4aに対して接するとともに、嵌合部16の先端面16cが保持部4の底面4bに対して突き当たる状態で、嵌合部16が保持部4と嵌合している。
また、ホルダ13の収容部14は、グースネック1の内壁2で画定される第1内部空間の内部に収容されている。
スリーブ11の外径(外周面11bの径)は、ホルダ13の収容部14の内径(内周面14aの径)よりも小径となっており、収容部14の内部には、スリーブ11が収容されている。
ここで、スリーブ11の外径(外周面11bの径)は、ホルダ13の嵌合部16の内径(内周面16aの径)よりも大径となっている。このため、スリーブ11の下端面が収容部14の底面14cに突き当たるようになっている。
また、スリーブ11の内径(内周面11aの径)は、ホルダ13の嵌合部16の内径、並びに、第1流出孔6の内径と同等の径に設定されている。
また、上記のように、スリーブ11の全長L1と収容部14の内部領域の深さL2との関係は、L1>L2を満たすため、スリーブ11が収容部14に収容された状態で、スリーブ11の上端はホルダ13の上端よりも上方に突出した状態となっている。
ここで、スリーブ11がセラミックス製、ホルダ13が耐アルミニウム溶損性を有する金属製であることから、スリーブ11の外周面11b(外面)とホルダ13の収容部14の内周面14a(内面)との間には、スリーブ11とホルダ13との熱膨張係数の差に起因する寸法の変動(変形)を許容し吸収できるようにクリアランスが設定されている。
このため、スリーブ11に作用する応力を抑制することができる。
なお、図1では、スリーブ11と収容部14との間のクリアランスを誇張して示している。
グースネック1の内壁2とホルダ13の収容部14の外周面14bとの間から、グースネック1の底面3と収容部14の端面14dとの間にかけて、間隙Sが形成されている。
この間隙Sに溶湯Mが満たされることにより、ホルダ13の収容部14の均熱性が保たれるようになっている。
このように、ホルダ13の収容部14とグースネック1の内壁2との間には、溶湯Mが満たされる隙間(間隙S)が形成されている。
クランプ17は、中空円筒形状に形成されており、当該クランプ17の上端部にフランジ部18を有している。
クランプ17の内周面17aは、その上端から下端に亘って内径が一定に形成されている。
一方、クランプ17におけるフランジ部18よりも下側の部分の外周面は、上部17bの外径の方が、下部17cの外径よりも大きく設定されている。
クランプ17の下端面は、平坦で且つ水平に配置される先端面17dとなっている。
クランプ17は、そのフランジ部18が、図示しないねじ等の締結部材によってグースネック1のフランジ部9に対して固定されることによって、グースネック1に固定されている。
クランプ17の内径(内周面17aの径)は、スリーブ11の内径(内周面11aの径)よりも大径に設定されている。これにより、プランジャPlのヘッドをクランプ17内に容易に挿通できるようになっている。
クランプ17におけるフランジ部18よりも下側の部分は、グースネック1の内壁2で画定される第1内部空間の上部に収容されている。
クランプ17の外周面の上部17bとグースネック1の内壁2との間には、クランプ17をグースネック1の第1内部空間の略中心軸に位置決めできる程度の僅かなクリアランスが設定されており、クランプ17の外周面の上部17bはグースネック1の内壁2と接している。
一方、クランプ17の外周面の下部17cとグースネック1の内壁2との間には、間隙が形成されている。
スリーブ11の外径(外周面11bの径)は、クランプ17の内径(内周面17aの径)よりも大きく、且つ、クランプ17の外周面の下部17cの径よりも小さい。このため、クランプ17の先端面17dがスリーブ11の上端面に対して突き当たっている。
上記のように、クランプ17は、フランジ部18が締結部材によってグースネック1のフランジ部9に対して固定されることによってグースネック1に固定されているため、締結部材によって下方に押圧されている。
従って、クランプ17は、ホルダ13の上面より突出したスリーブ11の上端面(上面)を下方に押圧することにより、スリーブ11およびホルダ13をグースネック1に対して固定している。
グースネック1、ホルダ13およびクランプ17の材料である耐アルミニウム溶損性を有する金属は、SKD61を基材として当該基材にコバルトとタングステンを添加した母材金属と、この母材金属の表面に形成された酸化物層と、からなり、酸化物層の一部が母材金属の結晶粒界に繊毛状に伸長しているものである。
このような金属の詳細については、特開2012−157880号公報に記載されている。
母材金属層は、表層部側に結晶構造がフェライト構造であるフェライト領域を備え、フェライト領域の下(内部側)に結晶構造がパーライト構造であるパーライト領域を備える。
母材金属層は、熱間金型の素材として一般的な合金工具鋼のSKD61をベースとして、タングステンとコバルトを添加した合金から構成される。その組成は表1の通りである。
Figure 0006408328
酸化物層は、その一部である繊毛状酸化物が、母材金属層の結晶粒界(フェライト結晶粒界)に繊毛状に伸びている。繊毛状酸化物はフェライト結晶粒界に植物の根のように侵入している。
このように繊毛状酸化物がフェライト結晶粒界に伸びているので、耐溶損性に優れる酸化物層は母材金属層と強固に結合しており剥離が抑制されている。したがって、良好な耐溶損性が得られる。
次に、上記のように構成された射出装置100を組み立てる手順の例を説明する。
先ず、スリーブ11をホルダ13の収容部14に挿入する。このとき、スリーブ11および収容部14のそれぞれに形成された流入孔12、15の位置が合うように、ホルダ13に対するスリーブ11の中心軸回りのスリーブ11の角度を調整する。
次に、ホルダ13の嵌合部16をグースネック1の保持部4に挿入して嵌合させ、グースネック1、ホルダ13およびスリーブ11を組み付ける。
ここで、上記のようにスリーブ11の全長L1がホルダ13の収容部14の内部領域の深さL2よりも大きいので、スリーブ11の上端面がホルダ13の上端面よりも上方に突出した状態となる。
次に、クランプ17をグースネック1の内壁2に挿入すると、スリーブ11の上端面にクランプの先端面17dが当接する。そして、図示しない締結部材を用いてクランプ17のフランジ部18とグースネック1のフランジ部9とを締結することにより、射出装置100の各構成部材の組付けは完了する。
ここで、スリーブ11は、その軸方向における両端が、ホルダ13の収容部14の底面14cとクランプ17の先端面17dとによって加圧および拘束されるのに対し、径方向については、前述した通り、スリーブ11の外周面11bと収容部14の内周面14aとの間には、スリーブ11とホルダ13との熱膨張係数の差に起因する寸法の変動を許容し吸収可能なようになっている。よって、スリーブ11に応力が作用することが抑制される。
ホルダ13とグースネック1については、ホルダ13の嵌合部16とグースネック1の保持部4とが相互に嵌合するので、両者は強固に結合した状態となっている。一方で、ホルダ13とクランプ17の間に接触する箇所がないので、ホルダ13の収容部14は、クランプ17およびグースネック1により直接的には拘束されていない。このため、収容部14は、その内外で発生する衝撃や外力に対して、当該収容部14の弾性変形の範囲で移動および変形することができるため、それらの衝撃や外力を吸収したり受け流したりするのに好適な構造となっている。
次に、ダイカストマシンDを組み立てる手順の例を説明する。
先ず、上記のように組み立てられた射出装置100に対し、プランジャPlと、図示しないプランジャ駆動装置とを組み付ける。プランジャPlは、当該プランジャPlのヘッドをクランプ17の内周面14aの内部に挿入する。
更に、ノズル装着口8に図示しないノズルおよび金型を組み付ける。
これにより、ダイカストマシンDの組み立てが完了し、ダイカストマシンDが稼働可能な状態となる。
ダイカストマシンDを用いた射出成形は、以下のようにして行うことができる。
先ず、ポットPo内のアルミニウム合金の溶湯Mは、予め、流入孔5、間隙S、流入孔15および流入孔12をこの順に通して、射出装置100内に流入している。すなわち、溶湯Mは、予め、スリーブ11内、嵌合部16内、第1流出孔6および第2流出孔7内に満たされている。
次に、プランジャ駆動装置によりプランジャPlを下方に移動させることにより、プランジャPlのヘッドがスリーブ11内の溶湯Mを金型側へ加圧する。これにより、溶湯Mは、スリーブ11、嵌合部16、第1流出孔6、第2流出孔7およびノズルをこの順に介して、金型に注入される。
その後、金型内に注入された溶湯Mを冷却および固化させることによって成形品を形成し、金型から成形品を取り出す。こうして、射出成形による成形品が得られる。
また、プランジャ駆動装置によりプランジャPlを上方に移動させることにより、射出装置100の内部が負圧になるため、ポットPo内のアルミニウム合金の溶湯Mは、流入孔5、間隙S、流入孔15および流入孔12をこの順に通して、射出装置100内に流入する。
上記の動作を繰り返し行うことにより、複数の成形品を繰り返し製造することができる。
以上説明した通り、本実施形態に係るダイカストマシンの射出装置100では、プランジャPlとの摺接箇所にセラミックス製のスリーブ11を用いるので、耐熱性および耐摩耗性が優れている。また、スリーブ11以外の部材(少なくともグースネック1、ホルダ13およびクランプ17)は耐アルミニウム溶損性の金属により構成されているので、アルミニウム合金の溶湯M中に浸漬しても溶損が進行して支障を来すことが抑制される。そして、セラミックス製のスリーブ11を金属部材で保持する構造なので、セラミックス製のスリーブ11が衝撃や外力で破損することも抑制することができる。
さらに、本実施形態に係るダイカストマシンの射出装置100は、簡素な構成であるのでコストを抑えることが可能であり、部品交換等のメンテナンス作業が非常に容易である。
以上、本発明を実施形態を例に説明したが、射出装置100およびダイカストマシンDの各構成は発明の主旨を逸脱しない範囲で変更しても構わない。
以下、参考形態の例を付記する。
1. アルミニウム合金の溶湯内に浸漬され、溶湯を吸入および加圧して金型へと射出するダイカストマシンの射出装置であって、
プランジャを内周面でガイドするスリーブと、
前記スリーブを収容する収容部を有するホルダと、
前記ホルダが内壁の底部に嵌合されるグースネックと、
前記ホルダの上面より突出した前記スリーブの上面を下方に押圧することにより前記スリーブおよび前記ホルダを前記グースネックに固定するクランプと、
を備え、
前記スリーブはセラミックス製であり、
前記グースネック、前記ホルダおよび前記クランプの各々は、耐アルミニウム溶損性を有する金属製であるダイカストマシンの射出装置。
2. 前記スリーブの外面と、前記ホルダの前記収容部の内面との間には、前記スリーブと前記ホルダとの熱膨張係数の差に起因する変形を許容するクリアランスが設定されている1.に記載のダイカストマシンの射出装置。
3. 前記ホルダは、
前記収容部と、
前記グースネックと嵌合する嵌合部と、
を有し、
前記嵌合部は、前記収容部の下端より下方に突出している1.または2.に記載のダイカストマシンの射出装置。
4. 前記ホルダの前記収容部と前記グースネックの内壁との間には溶湯が満たされる隙間が形成されている3.に記載のダイカストマシンの射出装置。
5. 前記耐アルミニウム溶損性を有する金属は、
SKD61を基材として当該基材にコバルトとタングステンを添加した母材金属と、
前記母材金属の表面に形成された酸化物層と、
からなり、
前記酸化物層の一部が前記母材金属の結晶粒界に繊毛状に伸長している1.〜4.の何れか一つに記載のダイカストマシンの射出装置。
1 グースネック
2 内壁
3 底面
4 保持部
4a 内周面
4b 底面
5 流入孔
6 第1流出孔
7 第2流出孔
8 ノズル装着口
9 フランジ部
10 切欠部
11 スリーブ
11a 内周面
11b 外周面
12 流入孔
13 ホルダ
14 収容部
14a 内周面
14b 外周面
14c 底面
14d 端面
15 流入孔
16 嵌合部
16a 内周面
16b 外周面
16c 先端面
17 クランプ
17a 内周面
17b 外周面の上部
17c 外周面の下部
17d 先端面
18 フランジ部
100 射出装置
D ダイカストマシン
M 溶湯
Pl プランジャ
Po ポット
S 間隙

Claims (6)

  1. アルミニウム合金の溶湯内に浸漬され、溶湯を吸入および加圧して金型へと射出するダイカストマシンの射出装置であって、
    プランジャを内周面でガイドするスリーブと、
    前記スリーブを収容する収容部を有するホルダと、
    前記ホルダが内壁の底部に嵌合されるグースネックと、
    前記ホルダの上面より突出した前記スリーブの上面を下方に押圧することにより前記スリーブおよび前記ホルダを前記グースネックに固定するクランプと、
    を備え、
    前記スリーブはセラミックス製であり、
    前記グースネック、前記ホルダおよび前記クランプの各々は、耐アルミニウム溶損性を有する金属製であり、
    前記スリーブの外面と、前記ホルダの前記収容部の内面との間には、クリアランスが設定されているダイカストマシンの射出装置。
  2. 前記クリアランスは、前記スリーブと前記ホルダとの熱膨張係数の差に起因する変形を許容する請求項1に記載のダイカストマシンの射出装置。
  3. 前記ホルダは、
    前記収容部と、
    前記グースネックと嵌合する嵌合部と、
    を有し、
    前記嵌合部は、前記収容部の下端より下方に突出している請求項1または2に記載のダイカストマシンの射出装置。
  4. 前記ホルダの前記収容部と前記グースネックの内壁との間には溶湯が満たされる隙間が形成されている請求項3に記載のダイカストマシンの射出装置。
  5. 前記耐アルミニウム溶損性を有する金属は、
    SKD61を基材として当該基材にコバルトとタングステンを添加した母材金属と、
    前記母材金属の表面に形成された酸化物層と、
    からなり、
    前記酸化物層の一部が前記母材金属の結晶粒界に繊毛状に伸長している請求項1〜4の何れか一項に記載のダイカストマシンの射出装置。
  6. アルミニウム合金の溶湯内に浸漬され、溶湯を吸入および加圧して金型へと射出するダイカストマシンの射出装置であって、
    プランジャを内周面でガイドするスリーブと、
    前記スリーブを収容する収容部を有するホルダと、
    前記ホルダが内壁の底部に嵌合されるグースネックと、
    前記ホルダの上面より突出した前記スリーブの上面を下方に押圧することにより前記スリーブおよび前記ホルダを前記グースネックに固定するクランプと、
    を備え、
    前記スリーブはセラミックス製であり、
    前記グースネック、前記ホルダおよび前記クランプの各々は、耐アルミニウム溶損性を有する金属製であり、
    前記ホルダは、
    前記収容部と、
    前記グースネックと嵌合する嵌合部と、
    を有し、
    前記嵌合部は、前記収容部の下端より下方に突出しており、
    前記ホルダの前記収容部と前記グースネックの内壁との間には溶湯が満たされる隙間が形成されているダイカストマシンの射出装置。
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