JP2012223794A - ホットチャンバー式ダイカスト装置 - Google Patents

ホットチャンバー式ダイカスト装置 Download PDF

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好之 増田
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Abstract

【課題】高品質,高機能な鋳造品成形が可能であり、耐久性にも優れたアルミニウム鋳造用のホットチャンバー式ダイカスト装置を提供する。
【解決手段】ホットチャンバー式ダイカスト装置10は、シリンダー14Aと送出ブロック14Bからなる主筒部14と、溶湯供給路44及び溶湯送出路46がセラミックスにより形成されている。主筒部14は、金属製のホルダー部30内に可動ブロック34,36と共に収納されている。可動ブロック34,36は、テーパ面34A,36A,36Bを備え、可動ブロック36には、連結ロッド86を介して油圧シリンダー80が接続されている。高温下での鋳造工程において、主筒部14とホルダー部30の間に、熱膨張係数差に起因して大きなクリアランスが生じる場合であっても、可動ブロック34,36を介して主筒部14を押圧することで、主筒部14をホルダー部30に固定できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ホットチャンバー式ダイカスト装置に関し、更に具体的には、アルミニウム又はアルミニウム合金用のホットチャンバー式ダイカスト装置に関するものである。
アルミニウム鋳造では、鍛造等の他の工法に比べて複雑形状の製品が得られやすく、軽量化を実現するための製品形状最適化(無駄な部分をそぎ落とすこと)が可能であるため、より高度な鋳造技術による適用部品(例えば、自動車部品等)への拡大が期待されている。現在のアルミニウムのダイカスト鋳造法として主流となっているコールドチャンバー方式では、凝固収縮巣(ひけ巣),ガスや潤滑剤の巻き込みによるブリスター,湯温低下による湯流れ不良等の品質問題,ビスケットと呼ばれる余肉部の冷却過程に起因する生産性及びエネルギー消費の問題,潤滑剤に起因する工場環境の問題等の解決が非常に困難となっているが、ホットチャンバー方式ではこれらの諸問題が大幅に軽減されることが期待できる。ホットチャンバー方式は、亜鉛合金,マグネシウム合金のダイカスト鋳造で広範囲に使用されており、コールドチャンバー方式に比べて製品品質,生産性ともに優れ、加えて、低資源・省エネルギー・低公害と多くの利点を有している。しかしながら、アルミニウム合金は、亜鉛合金やマグネシウム合金とは異なり、ほとんどの金属元素と親和力があり、反応して化合物を作る特性があり、特に、機械構造や要素部品の材料として一般的な鉄合金とは反応し、脆い化合物を出現させたり、溶かし込む等の特性がある。この材料特性により、鉄系合金を主にして機械要素を構成している現状のホットチャンバー装置にはアルミニウム合金の適用は困難である。そのため、コールドチャンバー方式が広く採用されているが、この場合は溶湯との接触時間が短く、射出スリーブにも潤滑剤を塗布し、アルミニウム合金溶湯との直接接触を防ぐ等の工夫を行っている。
現在、知られているアルミニウム用ホットチャンバー装置としては、例えば、下記特許文献1に示す技術がある。当該特許文献1には、セラミックスにより形成された溶湯射出主筒部と該主筒部の側面に連結した金型に注湯する注入筒部とを有する射出部体を外筒部体に支持せしめ、該外筒部体をアルミニウム溶湯を収容する溶湯槽および炉体の外に設けられた支持部体に対し金属またはサーメット製フランジを介して取り付けたことを特徴としている。また、下記特許文献2には、溶湯流路にセラミックス又は黒鉛材を鋳ぐるみしたグースネック部と、外周に耐熱鋼製の補強スリーブが嵌合されたセラミックス製の射出スリーブを有するホットチャンバー形ダイカストマシンの射出ポンプが開示されている。
特開平10−296420号公報 特許第2967156号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、セラミックス製の消耗部品が多数必要であり、かつ、構造上セラミックス部品の破損が発生しやすく、頻繁な交換が必要となるため、このことに起因するコスト高及び装置自体の信頼性が低いために、広く市場に普及していないのが実状である。また、特許文献2に記載の技術では、セラミックス部分と金属部分に緩衝材を組み込んだ上で一体に構成されているため、セラミックス部品のみが摩耗、破損した場合でも、全ての構成部品を交換する必要があり、消耗部品のコストが膨大なものになるという不都合がある。
本発明は、以上のような点に着目したもので、セラミックス素材の使用量を減らしてコストの低減を図りながら、ホットチャンバー方式が有する本来の高品質,高機能な鋳造品の成形が可能であって、耐久性にも優れたアルミニウム鋳造用のホットチャンバー式ダイカスト装置を提供することを、その目的とする。
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の溶湯が貯留されるポットと、金型へ前記溶湯を導くノズルと、前記ポットから供給された溶湯を加圧して前記ノズルに送出する射出部とを備えたホットチャンバー式ダイカスト装置であって、前記射出部が、シリンダーと送出ブロックが底部側で接続するように形成された主筒部,駆動手段によって前記シリンダー内を上下動し、該シリンダー内の溶湯を加圧する射出プランジャー,前記主筒部と別体として構成されており、前記主筒部を収納する収納部を備えた金属製のホルダー部,該ホルダー部を貫通し、前記ポット内の溶湯を前記シリンダー部へ導く溶湯供給路,前記ホルダー部を貫通し、前記送出ブロックから前記ノズルへ溶湯を導く溶湯送出路,を備え、前記主筒部,溶湯供給路,溶湯送出路がセラミックス製であるとともに、前記主筒部と前記ホルダー部の熱膨張係数差により生じるクリアランスを調整するためのクリアランス調整機構,を設けたことを特徴とする。
主要な形態の一つは、前記クリアランス調整機構が、前記ホルダー部の収納部内に前記主筒部とともに収納されており、前記収納部内を移動可能であって、前記主筒部の側面に対して押圧される一つ以上の可動ブロック,該可動ブロックを前記主筒部方向に移動させる駆動手段,を備えたことを特徴とする。他の形態は、前記可動ブロックが、垂直方向又は水平方向の断面において、テーパ形状ないし斜面を有することを特徴とする。更に他の形態は、前記駆動手段が、前記可動ブロックと前記収納部の内側面の間に配置された耐熱性を有する弾性体,あるいは、耐熱性を有し熱膨張する緩衝材のいずれかであることを特徴とする。
更に他の形態は、前記シリンダーから前記溶湯送出路に至るまでの溶湯経路に、該溶湯経路を開閉するための弁機構を一つ以上設けたことを特徴とする。更に他の形態は、前記射出プランジャーが射出戻り位置にある状態で、該射出プランジャーと前記シリンダー内の溶湯表面との隙間に相当する位置から、前記射出部の上面に達する位置まで貫通形成されたエア抜き通路,を備えたことを特徴とする。更に他の形態は、前記ホルダー部は、前記溶湯送出路と前記ノズルが接続する部位に、該ノズルを受けるサーメット製のコニカル部を有することを特徴とする。
更に他の形態は、前記射出部が、前記ポットの外部に配置されるとともに、前記射出部を加熱する加熱手段を設けたこと,あるいは、前記射出部が、前記ポットの内部に配置されるとともに、前記ホルダー部の外面に、グラファイト層あるいはセラミックス層を設けたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
本発明によれば、シリンダーと送出ブロックからなる主筒部をセラミックス製とし、該主筒部を金属製のホルダー部に収納するとともに、該ホルダー部と前記主筒部の熱膨張係数差に起因して生じるクリアランスを調整する機構を設けることとした。このため、アルミニウム溶湯が通過する部分のみをセラミックス製とし、他の部分を金属製とすることで大幅なコスト低減を図りながら、耐久性に優れ、かつ、ホットチャンバー方式が有する本来の高品質,高機能な鋳造品成形が可能になるという効果が得られる。また、射出部全体を高温雰囲気下に置くことで、溶湯ポット外に射出部を配置可能となり、あるいは、射出部のホルダー部の周囲にグラファイト層あるいはセラミックス層を設けることで、溶湯ポット内に配置することも可能となる。
本発明の実施例1を示す主要断面図である。 (A)は、前記図1を矢印F1方向から見た概略の平面図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。 前記実施例1のクリアランス調整機構の作用を示す図である。 前記実施例1のシャットバルブの作用を示す図である。 本発明の実施例2を示す主要断面図である。 前記図5を矢印F5方向から見た概略を示す平面図である。 本発明の他の実施例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
最初に、図1〜図4を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例のホットチャンバー式ダイカスト装置を示す主要断面図,図2(A)は、前記図1を矢印F1方向から見た概略を示す平面図,図2(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。図3は、本実施例のクリアランス調整機構の作用を示す図,図4は、本実施例のシャットバルブの作用を示す図である。本実施例のホットチャンバー式ダイカスト装置は、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下「アルミニウム系金属」という)を鋳造するための装置である。図1及び図2に示すように、ホットチャンバー式ダイカスト装置(以下「ダイカスト装置」とする)10は、アルミニウム系金属の溶湯98が貯留されるポット92と、固定プレート55に支持された金型56へ前記溶湯98を導くノズル50と、前記ポット92から供給された溶湯98を加圧して前記ノズル50に送出する射出部12により構成されている。
通常、アルミニウム系金属のホットチャンバー式ダイカスト装置では、溶湯との反応を避けるために、プランジャー,グースネック,ノズル等の溶湯と接触する部分には鉄ではなく、高価なセラミックス素材を使用していることが特徴である。しかしながら、プランジャーやプランジャースリーブが異形に摩耗する速度が速く、これらの部品の交換によりコスト高になるという問題がある。また、セラミックス素材では、靭性の不足に起因する耐久性の低さに問題があり、現状では数百ショットでノズルが破断する場合もあり、製品コスト低減の妨げとなっている。これに対し、本実施例は、プランジャーや送出ブロック等の主要構成部品を含む射出部12を、前記溶湯98の外,すなわち、ポット92の外側に配置する構成とすることにより、射出部12の構成部品の一部を金属で製作し、溶湯98が通る経路部分にのみセラミックス素材を使用する構成とした。これにより、強度と耐久性を向上させ、かつ、セラミックス素材の使用量を大幅に低減して、設備消耗品費の大幅な削減とメンテナンスの容易化を図っている。
以下、本実施例の詳細な構成について説明する。なお、前記ポット92は、図2(A)に示すように、上方から見た時に略コ字状ないし略U字状となるように、溶湯98を貯留する本体部92Aに、2つの延長部92B,92Cが連続した形状となっている。そして、前記本体部92Aが射出部12に近接し、かつ、前記2つの延長部92B,92Cの間に前記射出部12を挟むように配置することで、溶湯98の熱を利用して射出部12を保温している。また、前記射出部12とポット92は、全体が、図1に示すカバー90によって覆われており、所定温度(650〜750℃程度)の加熱雰囲気下に置かれている。前記射出部12の加熱は、図示しないカートリッジヒーター等により行う。なお、射出部12の加熱は、前記ヒータ単独で行うようにしてもよいが、本実施例では、前記ヒータ等による加熱に加えて、射出部12の周囲をポット92で囲むことにより、一層の保温効果を図ることとしている。
前記射出部12は、シリンダー14Aと送出ブロック14Bが連接し、溶湯経路14Cによって底部側で接続するように形成された主筒部14と、図示しない駆動手段によって前記シリンダー14A内を上下動し、該シリンダー14A内の溶湯98を加圧する射出プランジャー16と、前記主筒部14と別体として構成されており、前記主筒部14を収納する収納部32を備えたホルダー部30と、該ホルダー部30を貫通し、前記ポット92内の溶湯を前記シリンダー14A内に導く溶湯供給路44と、前記ホルダー部30を貫通し、前記送出ブロック14Bから前記ノズル50へ溶湯98を導く溶湯送出路46を備えている。以上の各部のうち、溶湯98の経路ないし接触部分であるシリンダー14A,送出ブロック14B,射出プランジャー16,溶湯供給路44,溶湯送出路46,ノズル内面50Aが、セラミックス素材により形成されている。また、ホルダー部30は金属製であって、本実施例では、一般構造用圧延鋼材製とした。このほか、射出部12には、前記主筒部14とホルダー部30の間に生じるクリアランスを調整するためのクリアランス調整機構,溶湯経路の開閉を行ってシリンダー14A内への空気の進入を防止するための弁機構,シリンダー14A内のエア抜き機構,主筒部14の変形を防止するための変形防止機構などが設けられている。
以上のような射出部12は、固定台70の上面72に設置され、固定金具73A及び73Bにより固定されている。また、前記シリンダー14Aの底面には、後述するシャットバルブ84が昇降するため駆動スペース20が、前記底面を貫通して形成されている。同様に、前記送出ブロック14Bの底面には、後述するシャットバルブ82が昇降するための駆動スペース24が、前記底面を貫通して形成されている。更に、前記シリンダー14Aの側面には、前記射出プランジャー16が射出戻り位置にある状態で、該射出プランジャー16と前記シリンダー14A内の溶湯表面との隙間に相当する位置から、斜め上方へ向けてエア抜き通路18が貫通形成されている。
前記主筒部14は、前記ホルダー部30の収納部32内に、可動ブロック34,36とともに収納されている。該可動ブロック34,36は、前記収納部32内を移動可能であって、一方の可動ブロック34は、前記主筒部14の側面(本実施例では、断面略方形状のシリンダー14Aの外面)に対して押圧される。該可動ブロック34は、一方の側面34Aがシリンダー14Aの外面と接触し、他方の可動ブロック36と接触する側面がテーパ面34Bとなっている。また、前記側面34A側の上方には、前記シリンダー14Aのエア抜き通路18の上端と通じ、シリンダー14A内の空気を射出部12の上方へ抜くためのエア抜き通路35が、垂直方向に形成されている。他方の可動ブロック36は、対向する側面が双方ともテーパ面36A,36Bとなっており、該テーパ面36Bと接触する収納部32の側面も、テーパ面32Aとなっている。なお、前記可動ブロック36の底面と、前記収納部32の内側底面の間には、予め所定の隙間96(図3(A)参照)を形成しておく。これら主筒部14,可動ブロック34及び36を収納した収納部32の底面には、前記駆動スペース24,20に対応する位置に、前記シャットバルブ82,84が貫通する貫通孔38,40が形成されている。このほか、前記収納部32の底面には、前記可動ブロック36の底面に連結した連結ロッド86が貫通する貫通孔42が形成されている。
一方、以上のような射出部12が設置された固定台70の上面72には、前記貫通孔38,40,42に対応する位置に貫通孔72A,72B,72Cが形成されており、これら貫通孔の下には、それぞれ油圧シリンダー76,78,80が設けられている。前記油圧シリンダー76のロッド76Aは、前記貫通孔72Aを貫通するシャットバルブ82に接続しており、同様に、前記油圧シリンダー78のロッド78Aは、前記貫通孔72Bを貫通するシャットバルブ84に接続している。また、前記油圧シリンダー80のロッド80Aは、前記貫通孔72Cを貫通する連結ロッド86に接続されている。
次に、図3を参照しながら、本実施例のクリアランス調整機構について説明する。上述したように、本実施例では、主筒部14をセラミックス製とし、ホルダー部30及び可動ブロック34,36を一般構造用圧延鋼材製としているため、射出部12はポット92の外側に配置されており、射出部12自体は、カバー90内で650〜750℃の雰囲気中に置かれている。該射出部12が700℃程度に加熱されると、主筒部14のセラミックスとホルダー部30の鋼との熱膨張係数の差によって、主筒部14とホルダー部30の間に大きなクリアランスが生じてしまう。図3(A)には、シリンダー14Aと可動ブロック34の間に、隙間94が生じた状態が示されている。そこで、本実施例では、前記油圧シリンダー80を駆動し、連結ロッド86を介して可動ブロック36を、図3(A)に矢印F3aで示すように引き下げ、該可動ブロック36のテーパ面36Aと、他方の可動ブロック34のテーパ面34Bの接触によって、可動ブロック34を図3(A)に矢印F3bで示す方向に移動させることにより、図3(B)に示すように、前記隙間94をなくして、主筒部14をホルダー部30に固定させることとしている。また、可動ブロック34によって一方向(矢印F3b方向)に押圧することにより、部品接続箇所(すなわち、シリンダー14Aと送出ブロック14Bの接続箇所)の溶湯経路からの湯漏れを防止することもできる。
次に、図4を参照しながら、前記シリンダー14Aから前記溶湯送出路46に至るまでの溶湯経路に、該溶湯経路を開閉するために設けた弁機構について説明する。該弁機構は、シリンダー14A内への空気の進入を防止するためのものである。射出が終了して射出プランジャー16が上昇限位置に戻る時、ノズル50の出口から空気を吸い込むが、本実施例では、この空気をシリンダー14A内に進入させないように遮断するシャットバルブ82,84を溶湯経路中に設けている。一方のシャットバルブ82は、前記送出ブロック14Bの駆動スペース24,ホルダー部30の貫通孔38,固定台70の貫通孔72Aを貫通する位置に設けられ、前記ロッド76Aを介して油圧シリンダー76に接続されており、該油圧シリンダー76の駆動により、前記駆動スペース24内を昇降して、溶湯経路の開閉を行う。前記シャットバルブ82の上方は、径が小さく設定された縮径部82Aとなっており、該縮径部82Aの内側には、前記溶湯経路14Cと前記送出ブロック14B内の溶湯経路を連通させるための溶湯経路83が略L字形状に形成されている。該溶湯経路83の一方の接続口83Aは前記溶湯経路14Cに接続可能であり、他方の接続口83Bは送出ブロック14Bの溶湯経路に接続可能となっている。該シャットバルブ82は、シリンダー14Aが溶湯98で充満するまでは、図4(A)に示すように下降させておくことにより、溶湯経路14Cと送出ブロック14Bを遮断し、シリンダー14Aが溶湯98で充満したら、図4(B)に示すように上昇させて経路を開く。
他方のシャットバルブ84は、前記シリンダー14Aの底面の駆動スペース20,ホルダー部30の貫通孔40,固定台70の貫通孔72Bを貫通する位置に設けられており、前記ロッド78Aを介して油圧シリンダー78に接続されている。そして、該油圧シリンダー78の駆動により、前記駆動スペース20内を昇降して、溶湯経路の開閉を行う。前記駆動スペース20には、前記ポット92から溶湯98を供給するための溶湯供給路44と接続する接続口22が設けられており、前記シャットバルブ84の昇降によって前記接続口22を開閉することで、シリンダー14A内への溶湯98の供給及びその停止を制御することができる。該シャットバルブ84は、射出プランジャー16の上昇中に下降させることで弁が開き(図4(A)の状態)、溶湯98がシリンダー14A内に入る。そして、溶湯98がシリンダー14A内に充満したらシャットバルブ84を上昇させて、弁を閉じ、接続口22を閉鎖する。
以上のようにシャットバルブ82,84を駆動させることにより、シリンダー14Aへの空気の進入を効果的に防ぐことが可能となるが、仮に、若干の空気がシリンダー14A内に入ったとしても、本実施例では、前記弁機構とともに、エア抜き通路18及び35からなるエア抜き機構を設けているため、溶湯98をシリンダー14Aへ供給する時に、前記エア抜き経路18,35へ向けて溶湯98が空気を追い出す。更に、射出開始時の10mm区間は、射出プランジャー16の速度を遅くストロークさせるため、空気がシリンダー14A内に残っていたとしても、前記エア抜き通路18,35から、空気を外部に追い出すことが可能となる。
次に、前記主筒部14Aの変形を防止するための変形防止機構について、図1を参照しながら説明する。本実施例では、セラミックス製の主筒部14Aを用いているため、その寿命を向上させるためには、主筒部14Aに横方向の荷重をかけないようにして、シリンダー14Aの内面の偏った摩耗を防ぐ必要がある。そこで、本実施例では、前記ホルダー部30の側面上方であって、前記ノズル50と溶湯送出路46が接続する部位に、前記ノズル50を受けるためのサーメット製のコニカル部48を設けている。また、前記ノズル50を介して溶湯98が射出される金型56(図1に固定型のみを記載)は、前記固定プレート55に設けられたノズル押さえ60を、射出部12側の適宜位置に設けられたマシンサドル部58のノズル出口側66に対して、ノズル押さえ固定ブロック62及びボルト64を介して接続することで、所定の向きで固定される。すなわち、図示しない可動型によって固定型が加圧されたときに、ノズル50に係る荷重を、前記サーメット製のコニカル部48で受けることができる。サーメットは、セラミックスの耐摩耗性・耐熱性と、金属の靭性とを併せもっており、該サーメット製のコニカル部48でノズル50を受けることにより、金属製のホルダー部30で荷重を受けてセラミックス製の主筒部14に荷重が掛かるのを防止することができる。これにより、シリンダー14Aの内面と射出プランジャー16とのクリアランスが均一に保たれ、射出中、溶湯98がシリンダー14Aの内面の射出プランジャー16の間を高速で走ることがなくなり、シリンダー14Aの内面が摩耗しにくくなる。なお、前記ノズル50は、前記カバー90の内側においてはヒーター52により加熱され、カバー90の外側においてはヒーター54により加熱される。
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)セラミックス製の主筒部14が、別体構造の金属製のホルダー部30に収納された射出部12を、溶湯98のポット92の外側に配置し、前記射出部12を所定温度下に置くとともに、前記主筒部14とホルダー部30の間に熱膨張係数差により生じるクリアランスを調整する機構を設けて、主筒部14をホルダー部30に固定することとした。このため、アルミニウム系金属の溶湯98が通過する部分のみをセラミックス製とし、他の部分を金属製とすることで大幅なコスト低減を図りながら、耐久性に優れ、かつ、ホットチャンバー式が有する本来の高品質,高機能な鋳造品成形が可能になる。
(2)前記シリンダー14Aからノズル50へ至る溶湯経路に、該溶湯経路の開閉を行うためのシャットバルブ82,84を設けることとしたので、シリンダー14A内へ空気の進入を防止し、次回鋳込み時の空気の巻き込みを防止できる。
(3)前記シリンダー14Aの内面から、射出部12の上面に向けてエア抜き通路18,35を設けることとしたので、前記シャットバルブ82,84の動作によって進入を防止しきれなかった空気があっても、前記エア抜き通路から18,35から外部に排出できる。
(4)主筒部14の横方向に荷重をかけないようにノズル50を配置・固定し、該ノズル50を受ける部分として、サーメット製のコニカル部48をホルダー部30の適宜位置に設けることとした。これにより、セラミックス製の主筒部14の変形が防止され、射出プランジャー16との間にクリアランスが生じることなく、シリンダー14Aの内面の摩耗を抑制できる。
次に、図5及び図6を参照しながら本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする。図5は、実施例2を示す主要断面図であり、図6は、前記図5を矢印F5方向から見た概略の平面図である。上述した実施例1では、主筒部をセラミックス製とし、その外側のホルダー部30を金属製としたので、射出部12の全体を溶湯のポット92内に配置することができなかったが、本実施例は、前記ホルダー部の外面に所定の厚みのグラファイト層を設けることで、射出部をポット内に配置した構成となっている。
図5及び図6に示すように、本実施例のホットチャンバー式ダイカスト装置100は、溶湯98のポット130内に、射出部102が配置されている。前記射出部102は、シリンダー104Aと送出ブロック104Bが溶湯経路104Cで連通した主筒部104をセラミックス素材により形成し、該主筒部104が、金属製のホルダー部110の収納部112内に収納されている。また、前記シリンダー104Aには、射出部102の上面に向けてエア抜き通路106が設けられている。本実施例では、前記射出部102をポット130内に浸漬し、溶湯供給路44及び接続口22を介してシリンダー104A内に溶湯を供給するが、ポット130の内側への設置にあたり、金属製のホルダー部110が溶湯98で浸食されないように、ホルダー部110の外側を所定の厚さのグラファイト層126で覆っている。また、本実施例では、前記ホルダー部110は、外側のみでなく、前記溶湯供給路44や後述する押圧ロッド136,142が貫通する部分の周囲にも、浸食を防止するためにグラファイトが所定の厚さで設けられている。なお、必要に応じて、ポット130の内側や、前記押圧ロッド136,142が前記ポット130を貫通する部分の周囲にも、グラファイト層128を設けるようにしてもよい(図5参照)。
また、本実施例では、図6に示すように、ホルダー部110の収納部112には、前記主筒部104とともに、可動ブロック114,116,118が収納されている。前記可動ブロック114は、断面略長方形であって、前記主筒部104の長辺側に配置されており、該主筒部104との間に、熱膨張係数差に起因して隙間120が生じる。前記ポット130の外側には、固定ブロック134によって締め付けナット132Aが支持された押しボルト132が設けられており、該押しボルト132の締め付けナット132Aに接続された押圧ロッド136の先端が、前記可動ブロック114の一方の側面114Aに固定されている。また、前記可動ブロック116は、断面略台形であって、前記主筒部104の一方の短辺側に配置されており、該主筒部104と一方の側面116Bとの間には、熱膨張差係数差に起因する隙間122が生じる。前記可動ブロック116は、前記側面116Bと対向する側の側面116Aが傾斜しており、該側面116Aと接する収納部112の側面112Aも同一勾配の傾斜を有している。
更に、前記可動ブロック116の一方の短辺側の側面116Dは、収納スペース112との間に、該可動ブロック116を矢印F6c側へ移動させるための隙間124を有している。また、前記可動ブロック118は、断面略正方形であって、一方の側面118Bが前記可動ブロック116の側面116Cに接触可能となっている。また、前記ポット130の外側には、固定ブロック140によって締め付けナット138Aが支持された押しボルト138が設けられており、該押しボルト138の締め付けナット138Aに接続された押圧ロッド142の先端が、前記可動ブロック118の他方の側面118Aに固定されている。なお、前記押圧ロッド136,142は、ポット130内の溶湯98によって浸食されないように、セラミックス製となっている。
以上のような構成とすることにより、高温の鋳造工程において、主筒部104とホルダー部110の間に、クリアランスが生じたとしても、隙間120については、可動ブロック114を押しボルト132のネジの締め付けによって押圧ロッド136を介して移動させることにより主筒部104を矢印F6a方向に押し付けて固定することができる。また、隙間122については、押しボルト138の締め付けによって押圧ロッド142を介して可動ブロック118を矢印F6b方向に移動させることにより、該可動ブロック118に押された可動ブロック116が傾斜した側面112Aに沿って移動することで、結果的に、可動ブロック116が矢印F6c方向に移動し、前記隙間122をなくして主筒部104をホルダー部110に固定することができる。
本実施例によれば、射出部102の外側部分を構成する金属製のホルダー部110の外側を、所定の厚みのグラファイト層126で被覆することにより、射出部102をポット130内に配置することができる。その他の基本的な作用及び効果は、上述した実施例1と同様である。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)前記実施例1で示した可動ブロック34,36や、実施例2で示した可動ブロック114,116,118も一例であり、同様の効果を奏するものであれば、その配置,形状,数量は必要に応じて適宜変更してよい。
(3)前記実施例2では、グラファイトコーティングした射出部102をポット130の内側に配置することとしたが、射出部102の交換やメンテナンスの作業性を考慮して、ポット130の外側に配置することを妨げるものではない。
(4)実施例1で示した弁機構やエア抜き通路も一例であり、同様の効果を奏するように適宜設計変更してよい。
(5)前記実施例2では、ホルダー部110の外側や、押しボルト132,138がホルダー部110を貫通する部分などにグラファイト層126を設けることとしたが、これも一例であり、例えば、セラミックス材料の溶射によりセラミックスの被膜(セラミックス層)を形成して、同様の効果を得るようにしてもよい。
(6)実施例1で示した油圧シリンダー80や、実施例2で示した押しボルト132,138による可動ブロックの移動も一例であり、同様の効果を奏するものであれば、駆動手段は適宜変更してよい。例えば、実施例1の可動ブロック36であれば、油圧シリンダー80に代えて、又は油圧シリンダー80とともにバネを利用してもよいし、おもりやバネを利用して可動ブロック36を常時下方に向けて付勢するような構成としてもよい。あるいは、図7(A)に示す例のように、前記実施例2で示した押しボルト132,138に代え、耐熱性(例えばセラミックス製)のバネを利用する構成としてもよい。バネは、コイルバネ,板バネなど、各種のタイプとしてよい。同図7(A)に示す例では、可動ブロック114の側面114Aと、ホルダー部110の収納部112の間に、セラミックス製のバネ150A,150Bを配置することで、前記隙間120が生じないように常時可動ブロック114を主筒部104へ向けて付勢する。また、前記実施例2の可動ブロック116,118に代え、断面略長方形の1つの可動ブロック154を用意し、該可動ブロック154の側面154Aと収納部側面112Aとの間に、セラミックス製のバネ152A,152Bを設けることで、前記隙間122が生じないように、可動ブロック154を主筒部104へ向けて常に付勢する構成としてもよい。
あるいは、図7(B)に示す例のように、前記可動ブロック116,118の駆動手段として、可動ブロック118の側面118Aと収納部112の間に配置したセラミックス製のバネ156を用いてもよい。テーパ面を有する可動ブロック116の側面116Bの全面で主筒部104を押圧することで、均一な力で主筒部104を押圧することができる。むろん、前記セラミックス製のバネ150A,150B,152A,152B,156も一例であり、図7(A)及び(B)に示したスプリング状のバネのほか、皿バネや板バネを利用してもよいし、高温に耐える金属の緩衝材を使用し、温度上昇による体積膨張を利用して、主筒部104へ向けて可動ブロック114,116,118,154等を付勢する構成としてもよい。前記実施例1の可動ブロック34,36の付勢についても同様である。
本発明によれば、シリンダーと送出ブロックからなる主筒部をセラミックス製とし、該主筒部を金属製のホルダー部に収納するとともに、該ホルダー部と前記主筒部の熱膨張係数差に起因して生じるクリアランスを調整する機構を設けることとした。このため、溶湯が通過する部分のみをセラミックス製とし、他の部分を金属製とすることで大幅なコスト低減を図りながら、耐久性に優れ、かつ、ホットチャンバー方式が有する本来の高品質,高機能な鋳造品成形が可能になるという効果が得られるため、アルミニウム又はアルミニウム合金を鋳造するためのホットチャンバー式ダイカスト装置の用途に適用できる。
10:ホットチャンバー式ダイカスト装置
12:射出部
14:主筒部
14A:シリンダー
14B:送出ブロック
14C:溶湯経路
16:射出プランジャー
18:エア抜き通路
20,24:駆動スペース
22:接続口
30:ホルダー部
32:収納部
34,36:可動ブロック
32A,34B,36A,36B:テーパ面
34A:側面
35:エア抜き通路
38,40,42:貫通孔
44:溶湯供給路
46:溶湯送出路
48:コニカル部
50:ノズル
50A:内面
52,54:ヒーター
55:固定プレート
56:金型
58:マシンサドル部
60:ノズル押さえ
62:ノズル押さえ固定ブロック
64:ネジ
66:ノズル出口側
70:固定台
72:上面
72A〜72C:貫通孔
73A,73B:固定金具
74:内側
76,78,80:油圧シリンダー
76A,78A,80A:ロッド
82,84:シャットバルブ
82A:縮径部
83:溶湯経路
83A,83B:接続口
86:連結ロッド
90:カバー
92:ポット
92A:本体部
92B,92C:延長部
94,96:隙間
98:溶湯
100:ホットチャンバー式ダイカスト装置
102:射出部
104:主筒部
104A:シリンダー
104B:送出ブロック
104C:溶湯経路
106:エア抜き通路
108:固定部
110:ホルダー部
112:収納部
112A:側面
114,116,118:可動ブロック
114A,114B,116A〜116D,118A,118B:側面
120,122,124:隙間
126,128:グラファイト層
130:ポット
132,138:押しボルト
132A,138A:締め付けナット
134,140:固定ブロック
136,142:押圧ロッド
150A,150B,152A,152B,156:バネ
154:可動ブロック
154A:側面

Claims (9)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金の溶湯が貯留されるポットと、金型へ前記溶湯を導くノズルと、前記ポットから供給された溶湯を加圧して前記ノズルに送出する射出部とを備えたホットチャンバー式ダイカスト装置であって、
    前記射出部が、
    シリンダーと送出ブロックが底部側で接続するように形成された主筒部,
    駆動手段によって前記シリンダー内を上下動し、該シリンダー内の溶湯を加圧する射出プランジャー,
    前記主筒部と別体として構成されており、前記主筒部を収納する収納部を備えた金属製のホルダー部,
    該ホルダー部を貫通し、前記ポット内の溶湯を前記シリンダー部へ導く溶湯供給路,
    前記ホルダー部を貫通し、前記送出ブロックから前記ノズルへ溶湯を導く溶湯送出路,
    を備え、前記主筒部,溶湯供給路,溶湯送出路がセラミックス製であるとともに、
    前記主筒部と前記ホルダー部の熱膨張係数差により生じるクリアランスを調整するためのクリアランス調整機構,
    を設けたことを特徴とするホットチャンバー式ダイカスト装置。
  2. 前記クリアランス調整機構が、
    前記ホルダー部の収納部内に前記主筒部とともに収納されており、前記収納部内を移動可能であって、前記主筒部の側面に対して押圧される一つ以上の可動ブロック,
    該可動ブロックを前記主筒部方向に移動させる駆動手段,
    を備えたことを特徴とする請求項1記載のホットチャンバー式ダイカスト装置。
  3. 前記可動ブロックが、垂直方向又は水平方向の断面において、テーパ形状ないし斜面を有することを特徴とする請求項2記載のホットチャンバー式ダイカスト装置。
  4. 前記駆動手段が、
    前記可動ブロックと前記収納部の内側面の間に配置された耐熱性を有する弾性体,あるいは、耐熱性を有し熱膨張する緩衝材のいずれかであることを特徴とする請求項2又は3記載のホットチャンバー式ダイカスト装置。
  5. 前記シリンダーから前記溶湯送出路に至るまでの溶湯経路に、該溶湯経路を開閉するための弁機構を一つ以上設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のホットチャンバー式ダイカスト装置。
  6. 前記射出プランジャーが射出戻り位置にある状態で、該射出プランジャーと前記シリンダー内の溶湯表面との隙間に相当する位置から、前記射出部の上面に達する位置まで貫通形成されたエア抜き通路,
    を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のホットチャンバー式ダイカスト装置。
  7. 前記ホルダー部は、前記溶湯送出路と前記ノズルが接続する部位に、該ノズルを受けるサーメット製のコニカル部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のホットチャンバー式ダイカスト装置。
  8. 前記射出部が、前記ポットの外部に配置されるとともに、
    前記射出部を加熱する加熱手段を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のホットチャンバー式ダイカスト装置。
  9. 前記射出部が、前記ポットの内部に配置されるとともに、
    前記ホルダー部の外面に、グラファイト層あるいはセラミックス層を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のホットチャンバー式ダイカスト装置。
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