JP6406344B2 - 固体活物質の製造方法及びこれを用いた電解液の製造方法 - Google Patents
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Description
この点は、化学電池の一種であるレドックスフロー電池などのバナジウム電池においても同様である。そして、レドックスフロー電池用の電解液については、種々の製造方法が開示されている(例えば、特許文献参照)。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、電池の材料として好適な活物質の製造方法を提供することを課題とする。
ところが、電解液について鋭意研究を重ねていく中で、析出に着目する発想が生じる機会があり、さらに研究を重ねた末、上記のような本発明に想到するに至った。
本発明によれば、これまで回避の対象であった析出を利用することで、バナジウム電池用の活物質として適した固体活物質を容易且つ低コストで製造することができる。また、製造された固体活物質は、液体の電解液と比べて、品質劣化し難くしかも搬送しやすいなど、取扱い性に優れる。従って、例えば、本発明の固体活物質をあらかじめ電池設置場所に搬送しておき、必要に応じてその場で電解液を製造することができる。この場合、固体活物質よりも重量がかさみ、しかも酸性で取り扱いにくい電解液を搬送する必要がなく、搬送コストを低減できる。また、必要に応じてその場で電解液を製造するので、フレッシュな電解液を常に供給することができる。
また、バナジウム含有硫酸溶液を電解して2価のバナジウムイオンを含む前記硫酸溶液を生成する電解工程をさらに含む。
また、前記電解工程は、隔膜によって負極側と正極側とに分離された電解槽の負極側のバナジウム含有溶液と正極側の硫酸溶液との間の通電によって、前記負極側に2価のバナジウムイオンを含む硫酸溶液を生成する工程である。
また、前記固形物に有機還元剤を含浸させる工程、又は前記固形物の少なくとも一部を被覆する工程のうち、少なくともいずれか一方の工程をさらに含む。
この発明は、より具体的には、5価のバナジウムイオンを含む前記硫酸溶液の硫酸濃度を調整する工程を、さらに含む。
そして、この発明では、析出したバナジウム硫酸塩を前記一方の乾燥工程で乾燥して、バナジウム電池の負極側の固体活物質として用いられる固形物を得ていると共に、析出した硫酸バナジウム(V)を前記他方の乾燥工程で乾燥して、バナジウム電池の正極側の固体活物質として用いられる固形物が得られる。
つまり、本発明は、バナジウム電池の負極液用固体活物質及び正極液用固体活物質の両方が製造される、固体活物質の製造方法である。
このように、バナジウム電池の負極液用固体活物質及び正極液用固体活物質の両方が製造される、固体活物質の製造方法である。
このようにして製造された固体活物質は、バナジウム電池の負極液用の固体活物質及び正極液用の固体活物質として好適である。
また、負極液用固体活物質及び正極液用固体活物質の両方が製造される製造方法で製造された負極液用固体活物質を溶解して負極側電解液を得ると共に、正極液用固体活物質を溶解して正極側電解液を得る、レドックスフロー電池用の負極側電解液及び正極側電解液の製造方法である。
この発明は、より具体的には、前記電池製造過程として、電池正極側に5価のバナジウム電解液を供給する工程を含む。
バナジウム電池用の活物質としては、バナジウム硫酸塩(2価の活物質である硫酸バナジウム(II)・nH2O)の固形物や、硫酸バナジウム(V)(5価の活物質である硫酸バナジウム(V)・nH2O)の固形物を挙げることができる。
また、バナジウムレドックスフロー電池の負極活物質としては、例えばバナジウム(II)の硫酸溶液を挙げることができ、正極活物質としては、例えばバナジウム(V)の硫酸溶液を挙げることができる。なお、電池が充電状態から放電状態になると、バナジウム(II)の硫酸溶液はバナジウム(III)の硫酸溶液に変化し、バナジウム(V)の硫酸溶液はバナジウム(IV)の硫酸溶液に変化する。
次に、用意した硫酸溶液中にバナジウム硫酸塩を析出させる(析出工程)。
次に、析出したバナジウム硫酸塩を乾燥する(一方の乾燥工程)。これにより、固形物すなわち負極用の固体活物質が得られる。
電解工程では、例えば、イオン交換膜(隔膜)によって負極室側と正極室側とに分離された電解槽を用いてバナジウム含有硫酸溶液を電解する。より具体的に説明すると、用意したバナジウム含有硫酸溶液を負極側に流通させると共に、別途用意した希硫酸を正極側に流通させ、この状態で負極室内の溶液と正極室内の溶液との間に通電して電解を行う。これにより、負極側にはバナジウム4価の硫酸溶液が生成される。その後、さらに電解を進めると、バナジウム3価の硫酸溶液が生成され、最終的には負極側にバナジウム2価の硫酸溶液が生成される。なお、正極側の溶液については、電解工程の途中で必要に応じて、新たな希硫酸を供給して流通させるようにしてもよい。
そして、この電解工程において、正極室内に、バナジウム5価の硫酸溶液を生成してもよい。バナジウム5価の硫酸溶液を生成する場合は、電解工程の途中で負極側にバナジウム4価の硫酸溶液が生成されたとき、この溶液を必要量取り出しておくことが考えられる。そして、その後の電解で負極側の硫酸溶液がバナジウム3価の硫酸溶液になったときに、正極側の溶液を、先ほど取り出しておいたバナジウム4価の硫酸溶液に入れ替えて、電解を行う。この電解を進めると、最終的に、負極側にバナジウム2価の硫酸溶液が生成されると共に、正極側に5価のバナジウムイオンを含む硫酸溶液が生成される。生成したバナジウム2価の硫酸溶液及びバナジウム5価の硫酸溶液は、バナジウム硫酸塩及び硫酸バナジウム(V)の両方を製造する後述の製造方法で用いることができる。
濃度調整工程とは、硫酸の濃度を高めたり、低めたりして調整する工程である。この工程を行う時期としては、低温化析出処理前が好ましい。濃度調整は、例えば70%希硫酸、90%硫酸又は純水を微量ずつ添加する操作によって行うことができる。濃度調整後の硫酸濃度としては、1モル/リットルから10モル/リットルが好ましい。
温度低下後の硫酸溶液の温度としては、−20℃から30℃が好ましく、−20℃ 〜20℃がより好ましく、−20℃から10℃がさらに好ましい。
ところで、バナジウム硫酸塩を得る従来の方法としては、バナジウム2価の硫酸溶液を乾燥(例えば減圧乾燥)させる方法がある。ところが、この方法で得られたバナジウム硫酸塩は、バナジウム電池の電解液用の固体活物質としては必ずしも最適ではない。また、この方法によると、乾燥エネルギーとして比較的大量のエネルギーが必要であり、製造コストが問題になる場合があることがわかった。この点、本実施形態の製造方法のように、析出工程(及び必要に応じて用いられた後述のろ過工程)を経て得られた析出物を減圧乾燥すれば、画期的に少ない乾燥エネルギーで、乾燥された固体活物質を得ることができる。さらに、この固体活物質は、純水や希硫酸などの溶液への溶解性に優れている点でもバナジウム電池の電解液用の固体活物質として好適である。つまり、この固体活物質があれば、レドックスフロー電池の電解液を、より容易かつ迅速に調製することができる。
固形物に有機還元剤を含有させると、これらを溶解して電解液を製造したときに、より酸化しにくい電解液を容易に製造することができる。また、固形物を有機還元剤で被覆すると、これらの物質の酸化を防止することができる。酸化が防止されたものは、長期保存に好適である。
含浸工程は、例えば、有機還元剤の飽和純水あるいは希硫酸溶液に2価のバナジウム固体活物質を浸漬し、濾過する操作によって行われる。また、被覆工程は、例えば、有機還元剤の飽和純水あるいは希硫酸溶液に2価のバナジウム固体活物質を噴霧し混合する操作によって行われる。
有機還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、シュウ酸などを挙げることができる。
なお、これらの硫酸溶液を製造する工程については既に説明しているので、ここではその説明を省略する。また、バナジウム2価の硫酸溶液から負極用の固体活物質を製造する方法についても既に説明しているので、ここではその説明を省略する。
次に、バナジウム5価の硫酸溶液から硫酸バナジウム(V)を析出させる(析出工程)。なお、硫酸バナジウム(V)とは硫酸バナジウム(V)・nH2Oのことである。
次に、析出した硫酸バナジウム(V)を乾燥する(他方の乾燥工程)。これにより、固形物すなわち正極用の固体活物質が得られる。
濃度調整工程とは、硫酸濃度を低下させる工程である。
そして、後述するように、製造された負極用及び正極用の固体活物質を基にして、安定した品質のレドックスフロー電池用の負極側電解液及び正極側電解液を容易に製造することができる。
つまり、本実施形態の製造方法によって固体活物質を製造すれば、固体の活物質をレドックスロー電池の設置場所に搬送し、その後、電解液を製造することができる。
これまでのように、予め製造された電解液をレドックスフロー電池の設置場所まで搬送して電池内に供給する場合、酸性で取り扱い難い電解液を特別なタンクローリーなどを用いて搬送する必要があるなど、搬送に手間がかかる。これに比べて、本実施形態の固体活物質は、固体であり搬送容易である。
また、後述するように、レドックスフロー電池の設置場所に搬送した固体の活物質を、その場で用意した純水に溶解させて電解液を製造できるので、電解液の主要成分であるバナジウムの搬送効率が格段に向上する。つまり、搬送容易性に優れるだけでなく、搬送効率の点でも極めて優れている。さらに、常に調製直後のフレッシュな電解液を供給することができる。なお、硫酸や希硫酸が用意できる場合は、搬送してきた固体の活物質を希硫酸に溶解させ、これにより得られた溶液と用意した純水とを混合することによって、フレッシュな電解液を調製してもよい。
そして、これらの電解液を用いてレドックスフロー電池を製造すれば、製造完了後、充電をする前に放電可能なレドックスフロー電池を製造することができる。
まず、五酸化バナジウムを溶解させた硫酸溶液と、隔膜によって負極室と正極室に分離された電解槽を用意した。硫酸溶液の量は100リットルであった。また硫酸濃度は4.5モル/リットルであり、溶液温度は25℃であった。なお、硫酸溶液としては、調製用の容器内の上澄み液など、五酸化バナジウムが完全に溶解した状態の硫酸溶液が好ましい。
続いて、ろ過を行った。ろ過は、酸化を防ぐ目的で窒素ガスを流しつつ、5Cのろ紙(JIS P 3801に規定の5種Cのろ紙)を用いて吸引濾過により行った。
そして、次に乾燥を行った。これにより負極用の固体活物質を得た。得られた固体活物質には、一部として粉状物が含まれていた。窒素雰囲気で50℃に加熱し、10mmHgの減圧乾燥であった。
続いて5Cのろ紙を用いてろ過を行った。ろ過方法は吸引濾過で行った。
そして、乾燥を行い、正極用の固体活物質を得た。室温における減圧乾燥であった。
さらに、乾燥により得られた固形物の一部を取り分け、取り分けた固形物を粉砕した。ここでは、得られた固形物を乳鉢に入れ、刺激を与えず慎重に粉砕した。
まず、25℃である100ミリリットルの純水に29.4グラムの負極用固体活物質を徐々に投入し2時間撹拌して負極用電解液を調製した。なお、負極側の固体活物質の溶解では、窒素バブリングを実施して酸化を防ぎながら溶解を行った。
また、25℃である100ミリリットルの希硫酸に58.2グラムの正極用固体活物質の粉体を徐々に投入し2時間撹拌して正極用電解液を調製した。
その結果、いずれの場合とも、全ての活物質が溶解し、水溶性は良好であった。このように、本実施形態の固体活物質の製造方法によれば、水溶性に優れた固体活物質を製造することができる。そして、これらの活物質を用いれば、良好なバナジウムレドックスフロー電池用の電解液を製造することができる。
従って、このような構成のバナジウムレッドクスフロー電池の負極室側に負極側電解液を供給すると共に正極室側に正極側電解液を供給することで、レドックスフロー電池を製造することができる。製造されたレドックスフロー電池は、電池完成後、充電をすることなく、すぐに放電運転を開始することができる。つまり、予備充電のみならず、太陽電池パネルや風力発電機などの発電手段で発電された電力の供給を受けて充電運転することなく、放電を開始することができる。これまで、レドックスフロー電池を運転する場合は、運転開始の前提として、まず最初に充電が必要であった。この点、本実施例のレドックスフロー電池では、まず最初に放電運転することが可能であり、運転開始条件がほとんどないという利点がある。
また、4価のバナジウム電解液については、実施例1において得られた負極用の固体活物質98グラムと、五酸化バナジウム121グラムと、硫酸3.3モルとを用意し、これらを常温の純水に徐々に投入し撹拌して、最終的に1リットルの電解液を調製した。
この結果、良好な3価のバナジウム電解液及び4価のバナジウム電解液が製造された。
そして、製造した3価の電解液をレッドクスフロー電池の負極室側に供給し、4価の電解液を正極室側に供給することでレドックスフロー電池を製造することができる。製造されたレドックスフロー電池は、製造後、すぐに、太陽電池パネルや風力発電機などの発電手段からの電力供給を受けて、充電運転を開始することができる。つまり、予備充電運転の必要がないので、レッドクスフロー電池製造後、すぐに、本格運用を開始することができる。
この結果、良好な3.5バナジウム電解液及び4価のバナジウム電解液が製造された。
この電解液は、バナジウムレドックスフロー電池製造時に最初に供給する一般的な電解液として用いることができる。このように、実施例1の製造方法で製造した負極用の固体活物質があれば、五酸化バナジウムを用意しておくことで、従来の電解液も製造することができる。
Claims (11)
- 2価のバナジウムイオンを含む硫酸溶液を温度低下させてバナジウム硫酸塩を析出させる工程と、析出したバナジウム硫酸塩を乾燥して固形物を得る一方の乾燥工程とを有する、バナジウム電池用の固体活物質の製造方法。
- 2価のバナジウムイオンを含む前記硫酸溶液の硫酸濃度を調整する工程を、さらに含む請求項1に記載の固体活物質の製造方法。
- バナジウム含有硫酸溶液を電解して2価のバナジウムイオンを含む前記硫酸溶液を生成する電解工程をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の固体活物質の製造方法。
- 前記電解工程は、隔膜によって負極側と正極側とに分離された電解槽の負極側のバナジウム含有溶液と正極側の硫酸溶液との間の通電によって、前記負極側に2価のバナジウムイオンを含む硫酸溶液を生成する工程である、請求項3に記載の固体活物質の製造方法。
- 前記固形物に有機還元剤を含浸させる工程、又は前記固形物の少なくとも一部を被覆する工程のうち、少なくともいずれか一方の工程をさらに含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の固体活物質の製造方法。
- 前記電解工程は、正極室内に5価のバナジウムイオンを含む硫酸溶液を生成する工程であり、
5価のバナジウムイオンを含む硫酸溶液の温度を上昇させて硫酸バナジウム(V)を析出させる工程と、析出した硫酸バナジウム(V)を乾燥して固形物を得る他方の乾燥工程とを、さらに有する、請求項4に記載の固体活物質の製造方法。 - 5価のバナジウムイオンを含む前記硫酸溶液の硫酸濃度を調整する工程を、さらに含む請求項6に記載の固体活物質の製造方法。
- 析出したバナジウム硫酸塩を前記一方の乾燥工程で乾燥して、バナジウム電池の負極側の固体活物質として用いられる固形物を得ていると共に、析出した硫酸バナジウム(V)を前記他方の乾燥工程で乾燥して、バナジウム電池の正極側の固体活物質として用いられる固形物を得ており、
バナジウム電池の負極液用固体活物質及び正極液用固体活物質の両方が製造される、請求項6又は請求項7に記載の固体活物質の製造方法。 - 請求項1から請求項5に記載された製造方法で製造された固体活物質のうちの少なくともいずれかが含まれている固体活物質を溶解して電解液を得る、レドックスフロー電池用の負極側電解液の製造方法。
- 請求項8に記載の製造方法で製造された負極液用固体活物質を溶解して負極側電解液を得ると共に、請求項8に記載の製造方法で製造された正極液用固体活物質を溶解して正極側電解液を得る、レドックスフロー電池用の負極側電解液及び正極側電解液の製造方法。
- 請求項1から請求項5に記載された製造方法で製造された固体活物質のうちの少なくともいずれかが含まれている固体活物質を溶解して得た電解液に五酸化バナジウム及び硫酸を溶解させて3価及び/又は4価の電解液を製造する、バナジウム電池の電解液の製造方法。
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