JP6400648B2 - 電気自動車の回生制御装置 - Google Patents
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Description
このような電気自動車では、モータを回生制御することにより発電機として作動可能なため、例えば降坂路での走行時などでは、駆動輪側からの逆駆動によりモータに発電させて発電電力をバッテリに充電している。これにより降坂路で得られる車両の位置エネルギを電力エネルギとして回収でき、その後のモータによる走行時にバッテリからの放電電力を利用している。
降坂路では、車速を維持するために必要な制動力として負側の要求トルクが設定され、この要求トルクを常に達成するようにモータの回生制御や車速増加制御が実行される。図3の例は、要求トルクに対してモータの最大出力時の回生トルクが不足する場合を示しており、その不足分は車両に装備された制動装置、例えばリターダ、エンジンの圧縮開放ブレーキ、排気ブレーキなどにより補われる。
この例のオートクルーズ制御では、目標車速Vtgtが85km/hに設定され、上限速度VHiが90km/hに設定されている。例えば85km/hで降坂路に到達して車速増加制御を開始した場合には、85km/hから90km/hまでの5km/h増加分を運動エネルギとして回収可能となる。
モータの回生制御では、要求トルクに対する不足分が制動装置により熱エネルギとして無駄に消費されてしまうが、車速増加制御によれば、全ての位置エネルギを運動エネルギとして回収できるため効率面で有利である。また、この点は、車速増加制御の実行中に全ての要求トルクが運動エネルギとして回収されるため、同時にモータの回生制御を実行できないことを意味する。そして、降坂路がどこまで続くか明らかでないため、先に効率面で優れる車速増加制御により5km/h増加分(図3中にハッチングで示す)を運動エネルギとして回収しておき、その後にモータの回生制御を実行しているのである。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、オートクルーズ制御により目標車速を維持しながら、降坂路での走行中にモータの回生制御と車速増加制御とを適切に実行して、車両の位置エネルギを電力エネルギ及び運動エネルギとして高い効率で回収することができる電気自動車の回生制御装置を提供することにある。
この場合には、要求制動エネルギの不足により電力エネルギ及び運動エネルギを全て回収できないため、モータの回生トルクと車速の増加との何れかを制限する必要がある。電力エネルギはバッテリの充放電時の損失により減少してしまうが、運動エネルギはそのまま後の車両走行に利用できる。よって、モータの回生トルクを制限することにより、降坂路で得られる車両の位置エネルギを最大限に利用することができる。
図1は本実施形態の回生制御装置が搭載されたハイブリッド型トラックを示す全体構成図である。
ハイブリッド型トラック1はいわゆるパラレル型ハイブリッド車両として構成されており、以下の説明では、車両と称する場合もある。車両1には走行用動力源としてディーゼルエンジン(以下、エンジンという)2、及び例えば永久磁石式同期電動機のように発電機としても作動可能なモータ3が搭載されている。エンジン2の出力軸にはクラッチ4が連結され、クラッチ4にはモータ3の回転軸を介して自動変速機5の入力側が連結されている。自動変速機5の出力側にはプロペラシャフト6を介して差動装置7が連結され、差動装置7には駆動軸8を介して左右の駆動輪9が連結されている。
また、車両ECU13には、図示はしないがクラッチ4を断接操作するアクチュエータ、及び自動変速機5を変速操作するアクチュエータなどが接続されると共に、エンジン制御用のエンジンECU22、インバータ制御用のインバータECU23、及びバッテリ11を管理するバッテリECU24が接続されている。
また、バッテリECU24は、バッテリ11の温度、バッテリ11の電圧、インバータ10とバッテリ11との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ11のSOCを算出し、このSOCを検出結果と共に車両ECU13に出力する。
また、車両ECU13はオートクルーズ制御を実行する。運転者により図示しないオートクルーズ制御の実行スイッチが操作されて目標車速Vtgtが設定されると、車両ECU13は目標車速Vtgtの上下に上限速度VHi及び下限速度VLoを設定し、車両1の走行中にはエンジン2やモータ3の駆動力を適切に制御して車速Vを上限速度VHiと下限速度VLoとの間に保つ。
そこで、実際に自車が降坂路を走行する以前に、自車の道路上の前方に存在する降坂路の情報を取得しており、そのために図1に示すように、車両ECU13にはナビゲーション装置31(降坂路情報取得手段)及び通信装置32(降坂路情報取得手段)が接続されている。
通信対象となる情報は多岐にわたり、例えば自車が保有しない地図情報、或いは道路情報(道路のカーブや勾配など)や交通情報(渋滞情報、事故情報、工事情報など)、或いは地域情報(観光スポットの案内など)を路側通信システムや他車から取得したり、逆にこれらの情報を他車に供給したりする。
まず、ステップS2でナビゲーション装置31及び通信装置32を利用して自車の前方に存在する降坂路の情報を取得する(降坂路情報取得手段)。以下に述べるように、取得した降坂路の情報は他の情報(例えば車両重量、車両1の転がり抵抗、車両1の空気抵抗、モータ3の最大出力、バッテリ11の容量、バッテリ11の現在のSOCなど)と共に、ステップS4以降の算出処理に利用される。
その後、ステップS8で次式(1)に従って要求制動エネルギEbrkを算出する、要求制動エネルギEbrkは、降坂路の走行中に車速Vを維持するために必要な制動エネルギ、換言すれば、車両1が降坂路の走行中に回収可能な最大のエネルギを意味する。
Ebrk=Epos−Eres ……(1)
Ebrk≧Emot+Ekine ……(2)
しかしながら、降坂路の走行中に回収可能な最大エネルギ(要求制動エネルギEbrk)が回収運動エネルギEkineと回収電力エネルギEmotとの和に満たない場合には、第2エネルギ回収制御を実行したとしても要求制動エネルギEbrkを回収できず、当該制御を実行するメリットがない。
車両1が降坂路に到達すると、まず車速増加制御を開始し、クラッチ4を切断してモータ3のトルクを0に保つ(図3のポイントa)。なお、このときクラッチ切断に代えて変速機5をニュートラルに切り換えてもよい。車両1は路面勾配により惰性走行しながら増速し、車速Vが上限速度VHiとして設定されている90km/hまで増加した時点で車速増加制御を終了し、モータ3を最大出力で回生制御し始める(図3のポイントb)。これと共に制動装置33の作動を開始して要求トルクに対する不足分を補い、この作動状態を降坂路の終了地点まで継続する(図3のポイントc)。
また、この場合には要求制動エネルギEbrkの不足により回収運動エネルギEkine及び回収電力エネルギEmotを全て回収できない。このため、車速増加制御による車速Vの増加とモータ3の回生トルクとの何れかを制限する必要がある。モータ3により発電された電力エネルギはバッテリ11の充放電時の損失により減少してしまうが、車速増加による運動エネルギはそのまま後の車両走行に利用できる。よって、この場合にはモータ3の回生トルクを制限することにより要求トルクを達成することが望ましく、これにより降坂路で得られる車両1の位置エネルギを最大限に利用することができる(エネルギ回収制御手段)。
まず、ステップS22で、車両1が降坂路に到達した今現在の車速V、上限速度VHi、及び降坂路の長さLに基づき、降坂路の開始地点から終了地点まで略一定の変化率で車速Vを増加させ、且つ終了地点で上限速度VHiに到達させることが可能な目標車速Vtgt(車速増加指標)を算出する(車速増加指標設定手段)。即ち、このときの車速Vは、図3に示すように降坂路の開始地点の車速Vと降坂路の終了地点の上限速度VHiとを結ぶラインL上を、車両1の走行に伴って変位する。そこで、降坂路の開始地点から終了地点までの各地点毎に、目標車速Vtgtをライン上に位置するようにそれぞれ設定しておく。
例えば、要求トルクが小さくてモータ3の最大出力時の回生トルクを僅かに上回っているだけの状況では、車速増加制御により車速増加のためのトルクが発生すると要求トルクを上回ってしまうため、回生トルクを制限する必要が生じる。車速増加のためのトルクは空気抵抗の影響を受け、空気抵抗が大であるほど車速増加のために要するトルクが増加し、必然的に回生トルクをより大きく制限する必要が生じる。よって、降坂路の走行中の空気抵抗が少ない第2エネルギ回収制御の方が、このような状況においてもモータ3の回生制御でより多くの電力エネルギを回収できるという利点もある。
また上記実施形態では、第2エネルギ回収制御の実行時に目標車速Vtgtに基づき制動装置33を駆動制御したが、本発明の車速増加指標は目標車速に限定されるものではない。例えば目標車速Vtgtに代えて、図2のステップS22では、降坂路の開始地点の車速Vを終了地点までに上限速度VHiに到達させることが可能な車速Vの変化率を車速増加指標として設定し、その変化率に基づきステップS28で制動装置33を駆動制御するようにしてもよい。
9 駆動輪
11 バッテリ
13 車両ECU(モータ回生制御手段、制動力調整手段、降坂路情報取得手段、
車速増加指標設定手段、エネルギ回収制御手段、エネルギ判定手段)
23 インバータECU(エネルギ回収制御手段)
33 制動装置
31 ナビゲーション装置(降坂路情報取得手段)
32 通信装置(降坂路情報取得手段)
Claims (3)
- モータの駆動力を駆動輪に伝達して走行し、オートクルーズ制御による走行中に目標車速を中心とした上限速度及び下限速度の間に車速を維持する一方、降坂路の走行中にはモータ回生制御手段によりモータを回生制御して回生電力をバッテリに充電する電気自動車において、
車両の走行中に該車両に装備された制動装置を駆動制御して制動力を調整可能な制動力調整手段と、
上記車両の前方に存在する降坂路の情報を取得する降坂路情報取得手段と、
上記降坂路情報取得手段により取得された降坂路の情報に基づき、該降坂路を上記車両がオートクルーズ制御により走行する際に車速を増加させ、且つ該降坂路の終了地点で上記上限速度に到達させることが可能な車速の増加指標を設定する車速増加指標設定手段と、
上記車両が降坂路に到達して該降坂路をオートクルーズ制御により走行するときに、該降坂路の走行期間全体に亘って上記モータ回生制御手段に上記モータを回生制御させると共に、これと並行して、上記車速増加指標設定手段により設定された車速の増加指標に基づき上記制動力調整手段に上記制動装置を駆動制御させて該車速を増加させるエネルギ回収制御手段と
を備えたことを特徴とする電気自動車の回生制御装置。 - 上記降坂路の走行中に車速を維持するために必要な要求制動エネルギが、該降坂路の走行中に上記モータの回生制御により回収可能な電力エネルギと、上記車速を上記上限速度まで増加させることにより回収可能な運動エネルギとの和以上であるか否かを判定するエネルギ判定手段を備え、
上記エネルギ回収制御手段は、上記エネルギ判定手段により上記要求制動エネルギが上記電力エネルギと上記運動エネルギとの和以上であると判定されたときに、上記降坂路の走行期間全体に亘って上記モータの回生制御と上記車速の増加指標に基づく上記制動装置の駆動制御とを並行して実行する一方、上記要求制動エネルギが上記電力エネルギと上記運動エネルギとの和未満であると判定されたときには、上記降坂路での走行開始と共に上記モータのトルクを0に保って車速を急増させ、該車速が上記上限速度まで増加した時点で上記モータの回生制御と上記制動装置の作動とを開始することを特徴とする請求項1記載の電気自動車の回生制御装置。 - 上記エネルギ回収制御手段は、上記エネルギ判定手段により上記要求制動エネルギが上記電力エネルギと上記運動エネルギとの和未満であると判定されたときに、上記モータの回生トルクを制限することを特徴とする請求項2記載の電気自動車の回生制御装置。
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