JP2017085723A - 電気自動車の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】GPSや通信手段による情報の取得及び処理を必要とせずに、簡便な方法でエネルギの回収効率を向上させることができる電気自動車の制御装置を提供すること。
【解決手段】オートクルーズ制御部(40)は、予測制御不可能である場合に(S1がYes)、走行履歴等に基づき自車両前方の降坂路を検出し(S2)、当該降坂路の勾配θn及び距離Ln並びに必要距離Lk算出して(S3、S4)、この降坂路の距離Lnが必要距離Lk以下の場合には(S5がYes)、惰性走行による運動エネルギの回収を先に行い(S6)、距離Lnが必要距離Lkよりも長い場合には(S5がNo)、モータ(3)の回生による電気エネルギの回収を先に行う(S7)。
【選択図】図3
【解決手段】オートクルーズ制御部(40)は、予測制御不可能である場合に(S1がYes)、走行履歴等に基づき自車両前方の降坂路を検出し(S2)、当該降坂路の勾配θn及び距離Ln並びに必要距離Lk算出して(S3、S4)、この降坂路の距離Lnが必要距離Lk以下の場合には(S5がYes)、惰性走行による運動エネルギの回収を先に行い(S6)、距離Lnが必要距離Lkよりも長い場合には(S5がNo)、モータ(3)の回生による電気エネルギの回収を先に行う(S7)。
【選択図】図3
Description
本発明は、電気自動車の制御装置に係り、詳しくは、オートクルーズ制御により降坂路を走行する際のエネルギ回収制御に関する。
従来からの走行用動力源としてエンジンを搭載したエンジン車両の効率を改善するために、エンジンに加えて走行用動力源としてモータ(電動機)を搭載したハイブリッド電気自動車、或いはエンジンに代えてモータを搭載した電気自動車など(以下、電気自動車と総称する場合もある)が実用化されている。
このような電気自動車では、モータを回生制御することにより発電機として作動可能なため、例えば降坂路での走行時などでは、駆動輪側からの逆駆動によりモータに発電させて発電電力をバッテリに充電している。これにより降坂路で得られる車両の位置エネルギを電力エネルギとして回収でき、その後のモータによる走行時にバッテリからの放電電力を利用している。
また、降坂路での車両の位置エネルギは電気エネルギとして回収できるだけでなく、車速増加の形態で運動エネルギとしても回収できる。即ち、降坂路での走行中に駆動力を発生させることなく(即ち、惰性走行)、車速を増加させることで運動エネルギとして回収可能となる。そして、降坂路が終了した後の走行中に車速を次第に低下させて運動エネルギを消費することにより、モータやエンジンの負担を軽減して燃費を節減できる。
一方、近年では運転者の負担軽減などを目的として、運転者が任意に設定した目標速度を維持して走行を行うオートクルーズ機能を備えた車両が普及している。
例えば特許文献1には、電気自動車におけるオートクルーズ制御において、自車両前方の降坂路を予測し、この降坂路の走行期間全体に亘って車速を徐々に増加させて位置エネルギの一部を運動エネルギとして回収するのと同時に、位置エネルギの残存分をモータの回生制御による電気エネルギの回収に利用することが開示されている。特許文献1では、このように車速増加制御とモータ回生制御を同時に並行して行うことで、例えばモータ回生制御を行った後に車速増加制御を行うというように順次これらの制御を行うよりもエネルギの回収効率が向上することを見出している。
しかしながら、特許文献1では、自車両前方の降坂路の勾配や全長が正確に予測できることを前提としている。つまり、特許文献1では、GPS情報や道路交通情報、路車間通信情報、車々間通信情報等を取得して処理することで、自車両前方の降坂路の長さを予測し、その長さに合わせて車速を略一定の変化率で増加させ且つ降坂路終了地点で上限速度に到達させることができている。
このため、車両がGPSや通信手段を備えていない場合や、機器の故障又は地理的な問題等により、GPSや通信手段が外部から情報を正常に取得できない場合には、自車両前方の状況を正確に予測できず、特許文献1の技術を適用することはできない。
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、GPSや通信手段による情報の取得及び処理を必要とせずに、簡便な方法でエネルギの回収効率を向上させることができる電気自動車の制御装置を提供することにある。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
本適用例に係る電気自動車の制御装置は、車両の駆動源であり回生して発電することでバッテリへの充電も可能な電動機を含む駆動手段と、前記車両を制動する制動手段と、前記駆動手段及び前記制動手段を制御して、設定された車速範囲内で車速を保ちながら前記車両を走行させるオートクルーズ制御を実行するオートクルーズ制御手段と、自車両前方の降坂路を検出し、前記降坂路の勾配及び距離を推定する降坂路推定手段と、前記降坂路推定手段により検出された降坂路に前記車両が到達した時点の車速から、惰性走行により前記車速範囲の上限速度に到達するまでに必要となる前記降坂路の必要距離を算出する必要距離算出手段と、を備え、前記オートクルーズ制御手段は、前記降坂路推定手段により検出された前記降坂路の距離が前記必要距離算出手段により算出された前記必要距離以下である場合は、前記車両が前記降坂路に到達した時点から惰性走行を行うよう前記駆動手段及び前記制動手段を制御し、前記降坂路推定手段により検出された降坂路の距離が前記必要距離算出手段により算出された前記必要距離より大である場合は、前記降坂路の未走行距離が前記必要距離となるまでは前記電動機を回生させ、前記未走行距離が前記必要距離に到達した後は惰性走行を行うよう前記駆動手段及び前記制動手段を制御する。
上記手段を用いる本発明によれば、GPSや通信手段による情報の取得及び処理を必要とせずに、簡便な方法でエネルギの回収効率を向上させることができる。
以下、本発明をハイブリッド型トラックの制御装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の制御装置が搭載されたハイブリッド型トラックを示す全体構成図である。
ハイブリッド型トラック1はいわゆるパラレル型ハイブリッド車両の電気自動車であり、以下の説明では、車両又は自車両と称する場合もある。車両1には走行用動力源(駆動手段)としてディーゼルエンジン(以下、エンジンという)2、及び例えば永久磁石式同期電動機のように発電機としても作動可能なモータ3(電動機)が搭載されている。エンジン2の出力軸にはクラッチ4が連結され、クラッチ4にはモータ3の回転軸を介して自動変速機5の入力側が連結されている。自動変速機5の出力側にはプロペラシャフト6を介して差動装置7が連結され、差動装置7には駆動軸8を介して左右の駆動輪9が連結されている。
自動変速機5は一般的な手動変速機をベースとしてクラッチ4の断接操作及び変速段の切換操作を自動化したものであり、本実施形態では、前進12速後退1速の変速段を有している。当然ながら、自動変速機5の構成はこれに限るものではなく任意に変更可能であり、例えば手動式変速機として具体化してもよいし、2系統の動力伝達系を備えたいわゆるデュアルクラッチ式自動変速機として具体化してもよい。
モータ3にはインバータ・コンバータ(以下、単にインバータという)10を介してバッテリ11が接続されている。バッテリ11に蓄えられた直流電力はインバータ10により交流電力に変換されてモータ3に供給され(力行制御)、モータ3が発生した駆動力は自動変速機5で変速された後に駆動輪9に伝達されて車両1を走行させる。また、例えば車両1の減速時や降坂路での走行時(回生走行時)には、駆動輪9側からの逆駆動によりモータ3が発電機として作動する(回生制御)。モータ3が発生した負側の駆動力は制動力として駆動輪9側に伝達されると共に、モータ3が発電した交流電力がインバータ10で直流電力に変換されてバッテリ11に充電される。
このようなモータ3が発生する駆動力は上記クラッチ4の断接状態に関わらず駆動輪9側に伝達され、これに対してエンジン2が発生する駆動力はクラッチ4の接続時に限って駆動輪9側に伝達される。従って、クラッチ4の切断時には、上記のようにモータ3が発生する正側または負側の駆動力が駆動輪9側に伝達されて車両1が走行する。また、クラッチ4の接続時には、エンジン2及びモータ3の駆動力が駆動輪9側に伝達されたり、或いはエンジン2の駆動力のみが駆動輪側に伝達されたりして車両1が走行する。
車両ECU13は車両全体を統合制御するための制御回路である。そのために車両ECU13には、アクセルペダル14の操作量を検出するアクセルセンサ15、ブレーキペダル16の踏込操作を検出するブレーキスイッチ17、車両1の速度Vを検出する車速センサ18、エンジン2の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ19、及びモータ3の回転速度を検出するモータ回転速度センサ20などの各種センサ・スイッチ類が接続されている。
また、車両ECU13には、図示はしないがクラッチ4を断接操作するアクチュエータ、及び自動変速機5を変速操作するアクチュエータなどが接続されると共に、エンジン制御用のエンジンECU22、インバータ制御用のインバータECU23、及びバッテリ11を管理するバッテリECU24が接続されている。
車両ECU13は、運転者によるアクセル操作量等に基づき車両1を走行させるために必要な要求トルクを算出し、その要求トルクやバッテリ11のSOC(State Of Charge)(充電量)などに基づき車両1の走行モードを選択する。本実施形態では走行モードとして、エンジン2の駆動力のみを用いるE/Gモード、モータ3の駆動力のみを用いるEVモード、及びエンジン2及びモータ3の駆動力を共に用いるHEVモードが設定されており、その何れかの走行モードを車両ECU13が選択するようになっている。
車両ECU13は選択した走行モードに基づき、要求トルクをエンジン2やモータ3が出力すべきトルク指令値に換算する。例えばHEVモードでは要求トルクをエンジン2側及びモータ3側に配分した上で、その時点の変速段に基づきエンジン2及びモータ3のトルク指令値を算出する。また、E/Gモードでは要求トルクを変速段に基づきエンジン2へのトルク指令値に換算し、EVモードでは要求トルクを変速段に基づきモータ3へのトルク指令値に換算する。
そして、車両ECU13は選択した走行モードを実行すべく、EVモードでは上記クラッチ4を切断し、E/Gモード及びHEVモードではクラッチ4を接続した上で、エンジンECU22及びインバータECU23にトルク指令値を適宜出力する。また、車両1の走行中において車両ECU13は、アクセル操作量や車速Vなどに基づき図示しないシフトマップから目標変速段を算出し、この目標変速段を達成すべく、アクチュエータによりクラッチ4の断接操作及び変速段の切換操作を実行する。
一方、エンジンECU22は、車両ECU13から入力された走行モード及びトルク指令値を達成するように噴射量制御や噴射時期制御を実行する。例えばE/GモードやHEVモードでは、正側のトルク指令値に対してエンジン2に駆動力を発生させ、負側のトルク指令値に対してエンジンブレーキを発生させる。また、EVモードの場合には、燃料噴射の中止によりエンジン2を停止保持する、またはアイドル運転状態とする。
また、インバータECU23は、車両ECU13から入力された走行モード及びトルク指令値を達成するように、インバータ10を駆動制御する。例えばEVモードやHEVモードでは、正側のトルク指令値に対してモータ3を力行制御して正側の駆動力を発生させ、負側のトルク指令値に対してはモータ3を回生制御して負側の駆動力を発生させる。また、E/Gモードの場合には、モータ3の駆動力を0に制御する。
さらに、インバータECU23は、モータ3からの入出力される電力、即ちモータ3での消費電力及びモータ3による発電電力、バッテリ11から入出力される電力、即ちバッテリ11からモータ3への供給電力及びモータ3の発電により受ける充電電力をそれぞれ検出する。
バッテリECU24は、バッテリ11の温度、バッテリ11の電圧、インバータ10とバッテリ11との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ11のSOCを算出し、このSOCを検出結果と共に車両ECU13に出力する。
車両ECU13にはナビゲーション装置31、通信装置32が接続されている。ナビゲーション装置31は自己の記憶領域に記憶されている地図データ、及びアンテナを介して受信されるGPS情報やVICS(登録商標)情報などに基づき、車両1の走行中に地図上の自車位置を特定する。通信装置32は、路側に適宜設置されているデータセンタの路側通信システムとの間で路車間通信を行うと共に、周囲を走行中の他車との間で車々間通信を行う。
通信対象となる情報は多岐にわたり、例えば自車が保有しない地図情報、或いは道路情報(道路のカーブや勾配など)や交通情報(渋滞情報、事故情報、工事情報など)、或いは地域情報(観光スポットの案内など)を路側通信システムや他車から取得したり、逆にこれらの情報を他車に供給したりする。
また車両ECU13には、自車両が走行している道路勾配を検出する勾配センサ33等の各種センサも接続されている。
さらに、車両ECU13には、車両1に装備された制動装置34(制動手段)が接続されている。制動装置34は、具体的には、例えばリターダ、エンジン2の圧縮開放ブレーキ、排気ブレーキ等のうちの一つ又は複数である。車両ECU13は、制動装置34を任意に駆動制御して走行中の車両1に制動力を作用させる。
そして、車両ECU13は、オートクルーズ制御を実行するオートクルーズ制御部40(オートクルーズ制御手段)を有している。運転者により図示しないオートクルーズ制御の実行スイッチが操作されて目標車速Vtgtが設定されると、オートクルーズ制御部40は目標車速Vtgtに対して上限速度VHi及び下限速度VLoからなる車速範囲を設定し、車両1の走行中にはエンジン2やモータ3の駆動力及び制動装置34の制動力を適切に制御して車速Vを設定された車速範囲内に保つ。
そして、オートクルーズ制御部40は、オートクルーズ制御による降坂路の走行中には車速を維持するために負側の要求トルクを設定し、その要求トルクを達成しながら車両1の位置エネルギを運動エネルギ及び電気エネルギとして回収すべく、車速増加制御及びモータ3の回生制御を実行する。
オートクルーズ制御部40は、ナビゲーション装置31及び通信装置32から正常に各種情報を取得できる場合には、実際に自車両1が降坂路を走行する以前に、自車両1の前方に存在する降坂路の情報を取得する。そして、車両1が降坂路に到達した時点(降坂路の開始地点)の車速Va、及び降坂路の長さLを予測して、当該降坂路の長さLで、車速を略一定の車速増加割合で上限速度VHiまで増加させるように車速増加制御を実行し、これと並行してモータ3の回生制御を実行する。
一方でオートクルーズ制御部40は、機器の故障や地理的な問題等により、ナビゲーション装置31及び通信装置32から正常に各種情報を取得できずGPS等を用いた正確な予測制御が不可能な場合には、降坂路において電気エネルギの回収よりも効率の良い運動エネルギの回収を確実に行うようにエネルギ回収制御を行う。
ここでの運動エネルギの回収制御は惰性走行により車速を増加させる制御であり、電気エネルギの回収制御はモータ3を回生駆動させてバッテリ11に充電を行う制御である。
車両ECU13には、GPS等を用いた正確な予測制御が不可能な状態での降坂路におけるエネルギ回収制御を行うため、勾配センサ33により検出された道路勾配情報等、ナビゲーション装置31及び通信装置32により取得する外部情報以外の情報に基づいて自車両1前方の降坂路を検出し、当該降坂路の勾配θn及び距離Lnを推定する降坂路推定部41、降坂路に到達した時点の車速Vaから、惰性走行により前記車速範囲の上限速度VHiに到達するまでに必要となる降坂路の必要距離Lkを算出する必要距離算出部42(必要距離算出手段)を有している。
詳しくは、降坂路推定部41による降坂路推定は、勾配センサ33や他のセンサにより検出される情報を図示しない記憶部に蓄積し、当該記憶部に記憶された過去の走行履歴情報等に基づき、自車両1が走行している道路における降坂路の傾向を把握し、次に来る降坂路の勾配θn及び距離Lnを算出する。
なお、降坂路を推定する手法はこれに限られず、例えば記憶部に自車両1が走行する道路の勾配及び距離等の道路情報を含むマップを予め記憶させておき、当該マップに基づき、次に来る降坂路の勾配θn及び距離Lnを算出してもよい。又は、車両1にレーダやカメラ等、車両前方の情報を取得可能な機器を備えている場合には、当該機器を用いて次に来る降坂路の勾配θn及び距離Lnを算出してもよい。さらには、ナビゲーション装置31によるGPS情報の取得が不可能であっても、通信装置32による車々間通信が可能であれば、前方車両から取得した情報に基づき、次に来る降坂路の勾配θn及び距離Lnを取得してもよい。
また、必要距離算出部42により算出される必要距離Lkは、自車両1前方の勾配θnの降坂路を惰性走行した場合に、運動エネルギとして回収できる最大距離に相当する。図2には必要距離の算出手順の説明図が示されており、同図に基づき、必要距離算出部42による必要距離Lkの算出手順を詳しく説明する。
まず降坂路開始地点における車速Vaから、惰性走行により増速可能な上限の速度、即ちオートクルーズ制御における上限速度VHiまでの車速増加量ΔV(=VHi−Va)を算出する。
車両重量をm、重力加速度をgとすると、惰性走行により車速VaをΔV上昇させることにより得られる運動エネルギEkは、次式(1)で表される。
Ek=1/2×m×{(Va+ΔV)2−Va2}・・・(1)
Ek=1/2×m×{(Va+ΔV)2−Va2}・・・(1)
また、車速VaがΔV増加するのに必要な移動距離を必要距離Lkとすると、勾配θnの降坂路において得られる位置エネルギEpは、次式(2)で表される。
Ep=m×g×Lk×sin(θn)・・・(2)
Ep=m×g×Lk×sin(θn)・・・(2)
このときの車両1に対して制動方向にかかる車両抵抗(タイヤの転がり抵抗、及び車両1が受ける空気抵抗等)によって車速VaがΔV増加するまでに失う損失エネルギElを考慮すると、次式(3)が成り立つ。なお、損失エネルギElは、車重、走行抵抗、車速等の既知の情報から求められる。
Ep=Ek+El・・・(3)
Ep=Ek+El・・・(3)
これら式(1)〜(3)に基づくと、必要距離Lkは次式(4)のように算出可能である。
Lk=[1/2×m×{(Va+ΔV)2−Va2}+El]/{m×g×sin(θn)}・・・(4)
Lk=[1/2×m×{(Va+ΔV)2−Va2}+El]/{m×g×sin(θn)}・・・(4)
なお、次式(5)に示すように、位置エネルギEpから損失エネルギElとモータ3以外のブレーキペダル16によるブレーキや制動装置34により失う制動エネルギEaを引いた分のエネルギが運動エネルギEkと電気エネルギEeに分配可能である。
Ep−El−Ea=Ek+Ee・・・(5)
Ep−El−Ea=Ek+Ee・・・(5)
当該式(5)の電気エネルギEeは、車両1の制動時の機械的エネルギ(モータ3が発電するエネルギ)での値を示しており、実際に回収エネルギとして使用するときにはモータ3とバッテリ11との間の充放電を全て含めた総合効率η(<1)を乗算した値となり、再使用できる回収エネルギ全体としては、Ek+η×Eeとなる。
従って式(5)で機械的エネルギの存在を考慮すると、電気エネルギは使用時に目減りするため、運動エネルギの回収方がエネルギの回収効率に優れている。ただし、惰性走行による運動エネルギの回収を実行すると、車速が増加するため、車両1に対する空気抵抗が増加し、式(5)での損失エネルギElが増大していくため、増速した状態ではエネルギ回収量全体が目減りすることとなる。
そこで本実施形態におけるエネルギ回収制御では、限られた位置エネルギを持った一つの降坂路で運動エネルギによるエネルギ回収を確保しながら、車速が高くなる時間を最小に抑えることとする。
ここで図3には、予測制御不可能である場合に、車両ECU13において実行される降坂路でのエネルギ回収制御ルーチンがフローチャートで示されており、図4には当該エネルギ回収制御を行った場合の車速変化の例を示す説明図が示されており、以下図4を参照しつつ図3のフローチャートに沿って説明する。
まず、車両ECU13はステップS1として、予測制御が可能であるか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合、即ちナビゲーション装置31及び通信装置32が正常に各種情報を取得できる場合は、降坂路において予測制御に基づく車速増加制御及びモータ3の回生制御を行うべく当該ルーチンを終了する。一方、当該判別結果が偽(No)である場合、即ちナビゲーション装置31及び通信装置32が正常に各種情報を取得できない場合は、ステップS2に進む。
ステップS2において、降坂路推定部41が自車両1の前方の降坂路を検出する。そしてステップS3では、降坂路推定部41が、検出した降坂路の勾配θnと距離Lnを算出する。
続くステップS4において、必要距離算出部42が、上述した手順にて必要距離Lkを算出する。
ステップS5において、オートクルーズ制御部40は、上記ステップS3において算出した降坂路の距離Lnが、ステップS4において算出した必要距離Lk以下であるか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合、即ち自車両1の前方の降坂路の距離Lnが必要距離Lkよりも短い場合は、ステップS6に進む。
ステップS6において、オートクルーズ制御部40は、自車両1が降坂路を走行する際に運動エネルギ回収制御を先に行うようエンジン2、モータ3、及び制動装置34を制御して、当該ルーチンを終了する。
つまり、これは例えば車両1が図4の道路aのように必要距離Lkより短い距離Laの降坂路を走行するような場合であり、この場合オートクルーズ制御部40は、降坂路に到達した時点から車両1を惰性走行させ、降坂路が終了するまで車速を増加させる。この場合の降坂路の距離Laは必要距離Lkより短いため、降坂路推定が正確であれば車速は上限速度VHiに到達しないが、推定した距離よりも実際の降坂路の距離が長く車速が上限速度VHiにまで到達した場合には、慣性走行からモータ3の回生制御に切り替える。なお、バッテリ11のSOCが上限に到達した場合にはモータ3の回生制御も終了し、通常の走行を行う。
一方、上記ステップS5の判別結果が偽(No)である場合、即ち自車両1の前方の降坂路の距離Lnが必要距離Lkよりも長い場合は、ステップS7に進む。
ステップS7において、オートクルーズ制御部40は、自車両1が降坂路を走行する際に電気エネルギ回収制御を先に行うようエンジン2、モータ3、及び制動装置34を制御して、当該ルーチンを終了する。詳しくは、この場合、オートクルーズ制御部40は、降坂路における未走行距離が必要距離Lkに到達するまではモータ3の回生制御を行い、未走行距離が必要距離Lkに到達した後は車両1を惰性走行させる。
つまり、これは例えば車両1が図4の道路bのように必要距離Lkより長い距離Lbの降坂路を走行するような場合であり、この場合オートクルーズ制御部40は、降坂路に到達した時点からモータ3を回生させ、電気エネルギの回収を行う。そして、道路bの降坂路の残りの距離が必要距離Lkとなった時点から、オートクルーズ制御部40は、車両1を惰性走行させ、運動エネルギの回収を行う。オートクルーズ制御部40は、降坂路が終了するまで、又は車速が上限速度VHiに到達するまで車速を増加させる。なお、道路bの降坂路の残りの距離が必要距離Lkとなる前に、バッテリ11のSOCが上限に到達した場合には、その時点から惰性走行に切り替える。
なお、降坂路の終了は、例えば勾配センサ33により検出される道路勾配から判定してもよいし、他の情報に基づき判定してもよい。
このように、本実施形態におけるハイブリッド型トラックにおけるオートクルーズ制御では、予測制御が不可能である場合、走行履歴等から降坂路を推定し、当該降坂路の距離Lnが必要距離Lkより短い場合には、運動エネルギの回収を先に行うことで、比較的エネルギの回収効率の良い運動エネルギ回収の機会を確保することができる。
一方、降坂路の距離Lnが必要距離Lkより長い場合には、先に電気エネルギの回収を行い、後に運動エネルギの回収を行うことで、運動エネルギの回収期間を確保しつつ、車速が増加する期間を短くすることができる。これにより、空気抵抗による損失エネルギの増大を最小限に抑えることができ、当該降坂路の位置エネルギを最大限の回収することができる。
このようにして本実施形態では、GPSや通信手段による情報の取得及び処理を必要とせずに、簡便な方法でエネルギの回収効率を向上させることができる。
以上で本発明に係る電気自動車の制御装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
上記実施形態の車両1は駆動源としてエンジン2及びモータ3を備えたハイブリッド型トラックであるが、本発明を適用可能な電気自動車はこれに限られるものではない。例えば、駆動源としてモータのみを備えた電気自動車であってもよい。また本発明は、トラックではなく乗用車に適用することもできる。
また上記実施形態では、勾配センサ33により道路勾配を検出しているが、道路勾配の検出はセンサによる検出ではなく他の情報から算出してもよい。
また上記実施形態における車両1はGPSを含むナビゲーション装置及び通信装置を備えているが、このようなナビゲーション装置や通信装置を備えおらず、そもそも予測制御を実行不可能な車両にも本発明を適用することができる。
また、上記実施形態では、降坂路が長いか短いかの判断の指標として、式(4)により算出される必要距離Lkを用いているが、必要距離Lkの算出は式(4)により逐次計算する方法に限られるものではない。
例えば、予め実験等により降坂路の勾配θn及び距離Lnに応じた必要距離Lkを算出し、その結果に基づくマップを記憶部等に記憶しておき、必要に応じて当該マップから必要距離Lkを算出してもよい。
1 車両
2 エンジン
3 モータ(電動機)
13 車両ECU
31 ナビゲーション装置
32 通信装置
33 勾配センサ
34 制動装置(制動手段)
40 オートクルーズ制御部(オートクルーズ制御手段)
41 降坂路推定部(降坂路推定手段)
42 必要距離算出部(必要距離算出手段)
2 エンジン
3 モータ(電動機)
13 車両ECU
31 ナビゲーション装置
32 通信装置
33 勾配センサ
34 制動装置(制動手段)
40 オートクルーズ制御部(オートクルーズ制御手段)
41 降坂路推定部(降坂路推定手段)
42 必要距離算出部(必要距離算出手段)
Claims (1)
- 車両の駆動源であり回生して発電することでバッテリへの充電も可能な電動機を含む駆動手段と、
前記車両を制動する制動手段と、
前記駆動手段及び前記制動手段を制御して、設定された車速範囲内で車速を保ちながら前記車両を走行させるオートクルーズ制御を実行するオートクルーズ制御手段と、
自車両前方の降坂路を検出し、前記降坂路の勾配及び距離を推定する降坂路推定手段と、
前記降坂路推定手段により検出された降坂路に前記車両が到達した時点の車速から、惰性走行により前記車速範囲の上限速度に到達するまでに必要となる前記降坂路の必要距離を算出する必要距離算出手段と、を備え、
前記オートクルーズ制御手段は、
前記降坂路推定手段により検出された前記降坂路の距離が前記必要距離算出手段により算出された前記必要距離以下である場合は、前記車両が前記降坂路に到達した時点から惰性走行を行うよう前記駆動手段及び前記制動手段を制御し、
前記降坂路推定手段により検出された降坂路の距離が前記必要距離算出手段により算出された前記必要距離より大である場合は、前記降坂路の未走行距離が前記必要距離となるまでは前記電動機を回生させ、前記未走行距離が前記必要距離に到達した後は惰性走行を行うよう前記駆動手段及び前記制動手段を制御する電気自動車の制御装置。
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