A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態の電圧測定方法を実行する電圧測定装置20の構成を示す説明図である。電圧測定装置20の測定対象の電池セルユニット10は、n個(nは2以上の整数)の電池セルCLを直列に接続して構成された電池、例えば、二次電池や燃料電池等である。電圧測定装置20は、n個の電池セルCLをm組(mはn以下の整数)のチャネルChに区分し、区分したチャネルCh単位で電圧を測定する電圧測定装置である。1つのチャネルChは、k個(kはn/mで表される整数)の電池セルCLで構成されている。但し、n=mの場合にはk=1であり、1つのチャネルChは1つの電池セルと等価となる。なお、以下では、チャネルChを区別する場合には、直列接続の一端側(図1の上側)を1番目として並びの順に「Ch1」、「Ch2」、「Ch3」、…「Chm」のように番号を添え字として付し、チャネルChを区別しない場合には、単に「Ch」とする。
電圧測定装置20は、第1のスイッチ回路22と、コンデンサCfと、第2のスイッチ回路24と、電圧測定部26と、電圧測定制御部28と、を備えている。
第1のスイッチ回路22は、チャネルCh1〜Chmの中の測定対象のチャネルChと、フライングキャパシタとしてのコンデンサCfとの接続(ON)と切断(OFF)とを切り替えて、測定対象のチャネルChのチャネル電圧をサンプリングするサンプリングスイッチとして機能する回路である。
第1のスイッチ回路22は、奇数番目のチャネルCh1,Ch3,…の正極(又は偶数番目のチャネルCh2,Ch4,…の負極)の端子に一方端が接続される奇数側チャネルラインLh1,Lh3,…と、奇数側チャネルラインLh1,Lh3,…の他方端が接続されると共にコンデンサCfの一端に接続される奇数側共通ラインLhc1と、を有している。また、第1のスイッチ回路22は、偶数番目のチャネルCh2,Ch4,…の正極(又は奇数番目のチャネルCh1,Ch3,…の負極)の端子に一方端が接続される偶数側チャネルラインLh2,Lh4,…と、偶数側チャネルラインLh2,Lh4,…の他方端が接続されると共にコンデンサCfの他端に接続される偶数側共通ラインLhc2と、を有している。さらにまた、第1のスイッチ回路22は、チャネルラインLh1,Lh2,Lh3,Lh4,…のそれぞれに設けられたチャネルスイッチSWh1,SWh2,SWh3,SWh4,…を有している。ここで、チャネルラインの「Lh」及びチャネルスイッチの「SWh」に続く添え字は、正極が接続されているチャネルChの添え字に対応している。なお、m番目のチャネルChmの負極には、m+1番目のチャネルラインLhm+1が接続されており、このチャネルラインLhm+1にはm+1番目のチャネルスイッチSWhm+1が設けられている。従って、m個のチャネルCh1〜Chmに対して、m+1個のチャネルラインLh及びチャネルスイッチSWhが設けられている。なお、図1では、mは奇数であり、m番目のチャネルラインLhmは奇数側チャネルラインとして奇数側共通ラインLhc1に接続され、m+1番目のチャネルラインLhm+1は偶数側共通ラインLhc2に接続されている。但し、mを偶数として、m番目のチャネルラインLhmは偶数側チャネルラインとして偶数側共通ラインLhc2に接続され、m+1番目のチャネルラインLhm+1は奇数側共通ラインLhc1に接続されていてもよい。
第1のスイッチ回路22は、チャネルスイッチSWh1〜SWhm+1のONとOFFを切り替えることによって、チャネルCh1〜Chmの中から測定対象となるチャネルChをコンデンサCfに対して並列に接続する。例えば、1番目のチャネルCh1を測定対象とする場合には、1番目及び2番目のチャネルスイッチSWh1,SWh2をONとし、その他のチャネルスイッチSWh3〜SWhm+1をOFFとする。また、2番目のチャネルCh2を測定対象とする場合には、2番目及び3番目のチャネルスイッチSWh2,SWh3をONとし、その他のチャネルスイッチSWh1,SWh4〜SWhm+1をOFFとする。なお、偶数番目のチャネルCh2,Ch4,…をコンデンサCfに接続する場合のコンデンサCfの両端子の正負は、奇数番目のチャネルCh1,Ch3,…をコンデンサCfに接続する場合に対して反転することになる。
第2のスイッチ回路24は、コンデンサCfの両端子と、電圧測定部26の2つの入力端子との接続(ON)及び切断(OFF)を切り替えて、コンデンサCfの両端子間の電圧を電圧測定部26に伝達するトランスファスイッチとして機能する回路である。
第2のスイッチ回路24は、コンデンサCfの奇数側共通ラインLhc1に接続された一方の端子と、電圧測定部26の一方の入力端子とを接続する第1のトランスファラインLs1と、第1のトランスファラインLs1に設けられた第1のトランスファスイッチSWs1と、を有している。また、第2のスイッチ回路24は、コンデンサCfの偶数側共通ラインLhc2に接続された他方の端子と、電圧測定部26の他方の入力端子とを接続する第2のトランスファラインLs2と、第2のトランスファラインLs2に設けられた第2のトランスファスイッチSWs2と、を有している。第2のスイッチ回路24は、第1及び第2のトランスファスイッチSWs1,SWs2をONとすることによってコンデンサCfと電圧測定部26とを接続し、第1及び第2のトランスファスイッチSWs1,SWs2をOFFとすることによってコンデンサCfと電圧測定部26との接続を切断する。
電圧測定部26は、コンデンサCfの両端子間の電圧を測定し、測定対象のチャネルChのチャネル電圧の電圧値として電圧測定制御部28に出力する。電圧測定部26としては、例えば、コンデンサCfの電圧を増幅器により増幅し、AD変換器によりデジタル値に変換して出力する電圧測定回路等の種々の一般的な電圧測定回路を用いることができる。
電圧測定制御部28は、第1のスイッチ回路22、第2のスイッチ回路24、及び、電圧測定部26の動作を制御して、各チャネルCh1〜Chmのチャネル電圧の測定を一定の制御周期(以下、「計測周期」とも呼ぶ)毎に繰り返し実行し、測定結果を上位の制御装置へ出力する。電圧測定制御部28は、不図示のCPU、ROM、RAM、インターフェース等を有するコンピュータで構成され、あらかじめROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、上記制御を実行する。
電圧測定装置20は、電池セルユニット10の電圧を、チャネルCh単位で測定し、異常の有無をチャネルCh単位で監視する。なお、1チャネルChに含まれる電池セルCLの個数は、2以上とすることが好ましい。この理由は、電池セルCLの単位での電圧測定とした場合、フライングキャパシタであるコンデンサCfへの接続ライン及び接続スイッチの個数が多数必要となって装置が大型化するとともに、電池セルCLの数に応じて全電池セルCLの1回の測定に要する時間が長くなるからである。そこで、複数の電池セルCLを含むチャネルCh単位での電圧測定とすることにより、接続ライン及び接続スイッチの個数の低減により装置の小型化を図るとともに、全電池セルCLの1回の測定に要する時間の短縮化を図ることができる。
図2は、電圧測定装置20によるチャネルCh単位の測定の基本的な動作について示すタイミングチャートである。チャネルCh1〜Chmの測定は、一定の計測周期Tpごとに実行される。計測周期Tpは、1番目のチャネルCh1からm番目のチャネルChmまでの測定が順に実行される計測期間Teと、その後の次の計測周期Tpまでの期間であって測定が実行されない非計測期間Tueに区分される。但し、非計測期間Tueは省略可能である。計測期間Teにおける各チャネルの測定は、1番目のチャネル周期Tc1からm番目のチャネル周期Tcmで順に実行される。基本動作において、各チャネル周期Tc1〜Tcmは、計測期間Teをチャネル数mで等分した基準チャネル周期Tcrとされる。各チャネル周期Tc1〜Tcmは、各チャネルの充電時間Tj1〜Tjmと、各チャネルに共通な測定時間Tsと、に区分される。以下で説明するように、各充電時間Tj1〜Tjmは、それぞれ対応するチャネルCh1〜Chmの出力電圧(以下、「チャネル電圧」とも呼ぶ)に対応する電荷をコンデンサCf(図1)に充電することによって、そのチャネル電圧をサンプリングする期間である。各測定時間Tsは、各充電時間Tj1〜Tjmにおいてサンプリングされたチャネル電圧を電圧測定部26(図1)に伝達して測定する期間である。
図2のスイッチタイミング波形SCh1〜SChmは、各チャネルCh1〜ChmがコンデンサCfに対して接続(ON)とされる充電時間Tj1〜Tjmを示している。具体的には、1番目のスイッチタイミング波形SCh1のONの期間はチャネルスイッチSWh1,SWh2(図1)がONとされる期間、2番目のスイッチタイミング波形SCh2がONの期間はチャネルスイッチSWh2,SWh3がONとされる期間、3番目のスイッチタイミング波形SCh3がONの期間はチャネルスイッチSWh3,SWh4がONとされる期間、…、m番目のスイッチタイミング波形SChmがONの期間はチャネルスイッチSWhm,SWhm+1がONとされる期間である。充電時間Tjは、コンデンサCfに接続されたチャネルChのチャネル電圧をサンプリングするために、チャネル電圧に相当する電荷をコンデンサCfに充電するのに要する充電時間である。充電時間Tjは、通常、チャネルChの端子とチャネルラインLhとの間の接触抵抗、チャネルラインLhの配線抵抗、及び、チャネルスイッチSWhのオン抵抗等を含む抵抗(以下、単に「接触抵抗」とも呼ぶ)の標準値RとコンデンサCfの容量値Cに対応する時定数RCに基づいて決定される充電所要時間(例えば3RC)に比べて十分長い時間に設定される。なお、本例では、基本動作において、各充電時間Tj1〜Tjmは、基準充電時間Tjrに設定されている。
図2の電圧波形Vcfは、コンデンサCf(図1)の端子間電圧を示している。図2のスイッチタイミング波形SSWsは、測定時間Tsにおいて、トランスファスイッチSWsSWs1,SWs2(図1)がONとされて、コンデンサCfの端子間電圧Vcfが電圧測定部26へ伝達されるトランスファ期間Ttを示している。トランスファ期間Ttは、電圧測定部26にコンデンサCfの端子間電圧Vcfが伝達されて電圧測定部26が端子間電圧Vcfの測定を実行可能な時間に設定される。従って、トランスファ期間Ttは、トランスファスイッチSWsの応答時間や電圧測定部26を構成する回路の動作速度に依存する。また、測定時間Tsのうちトランスファ期間Ttが経過後の期間は、トランスファスイッチSWsの遮断の応答時間を考慮した遷移期間である。なお、トランスファ期間Tt及び測定時間Tsは、通常、充電時間Tjに比べて十分短い時間であるが、図示を容易にするため、誇張して示している。以下の図においても同様である。
1番目のチャネル周期Tc1では、チャネル周期の開始タイミングt11から始まる1番目の充電時間Tj1において、1番目のチャネルCh1のコンデンサCfへの接続がONとされて、1番目のチャネルCh1からコンデンサCfへのチャネル電圧に相当する電荷の充電が実行される。この結果、コンデンサCfの端子間電圧Vcfは、正方向(図1では、奇数側共通ラインLhc1側が+で偶数側共通ラインLhc2が−となる向きを正とする)に増加し、1番目のチャネルCh1のチャネル電圧が発生する。
1番目の充電時間Tj1の終了タイミングt12において、1番目のチャネルCh1のコンデンサCfへの接続はOFFとされて、コンデンサCfには1番目のチャネルCh1のチャネル電圧が保持される。また、スイッチタイミング波形SSWsに示すように、この終了タイミングt12で、トランスファスイッチSWsをONとすることにより、トランスファ期間Ttにおいて、コンデンサCfに保持された1番目のチャネルCh1のチャネル電圧が伝達されて、チャネル電圧の測定が実行される。
2番目のチャネル周期Tc2では、2番目のスイッチタイミング波形SCh2に示すように、チャネル周期の開始時刻t21から始まる2番目のサンプリング周期Tj2において、2番目のチャネルCh2のコンデンサCfへの接続がONとされて、1番目のチャネルCh1と同様に、2番目のチャネルCh2のチャネル電圧の測定が実行される。但し、上述したように、2番目のチャネルCh2は、1番目のチャネルCh1とは正負反対向きにコンデンサCfに接続されるので、2番目のチャネルCh2に対応する端子間電圧Vcfは、1番目のチャネルCh1の場合とは正負が反対となる。
以降3番目のチャネル周期Tc3〜m番目のチャネル周期Tcmにおいて、奇数番目のチャネル周期Tc3,Tc5,…では、1番目のチャネル周期Tc1と同様に、対応するチャネルCh3,Ch5,…のチャネル電圧の測定が実行され、偶数番目のチャネル周期Tc4,Tc6,…では、2番目のチャネル周期Tc2と同様に、対応するチャネルCh4,Ch6,…のチャネル電圧の測定が実行される。
図3は、基本的な電圧制御動作により測定されるチャネル電圧について示す説明図である。図3は、横軸を時間tとし、縦軸をコンデンサCfの端子間電圧Vcfとするグラフで示している。但し、端子間電圧Vcfは、奇数番目のチャネルCh1,Ch3,…か、偶数番目のチャネルCh2,Ch4,…か、で正負が反転するので、符号を無視した絶対値として示している。
標準的な基準充電時間Tj(=Tjr)の経過時において、チャネルChが正常な場合の端子間電圧Vcfは正常な電圧範囲Vw内の電圧となる。これに対して、チャネルCh自体が異常な異常チャネルの場合の端子間電圧Vcfは、そもそも、電圧範囲Vwの下限よりも低い電圧となる。なお、チャネルChが異常な状態とは、チャネルChに含まれる少なくとも1つの電池セルCLが異常な状態である。また、チャネルChは正常であるが接触抵抗が増大した接触抵抗増大チャネルの場合の端子間電圧Vcfも、正常な電圧範囲Vwの下限よりも低い電圧となる場合がある。これは、接触抵抗の増大量に応じてコンデンサCfへの充電の応答が遅くなって、基準充電時間Tjrの経過時において、正常な電圧範囲Vwの下限の電圧まで到達しない場合があるからである。なお、電池セルCLの正常な電圧は、その充電状態や温度に依存して変化する。従って、チャネルChの正常な電圧範囲Vwは、例えば、複数のチャネルCh1〜Chmの平均電圧Vavから決定される。この場合に、正常な電圧範囲Vwの下限は、複数のチャネルCh1〜Chmの平均電圧Vavから、予め設定した偏差許容値Vstを引いた値Vav−Vstに設定される。
基準充電時間Tjrの経過時において端子間電圧Vcfが正常な電圧範囲Vwの下限よりも低い場合は、チャネルCh自体が異常な異常チャネルの場合と、接触抵抗が増大した接触抵抗増大チャネルの場合があり、このままでは、チャネルCh自体の異常を切り分けることができない。このようなチャネルCh自体の異常を切り分ける方法としては、充電時間Tjを基準充電時間Tjrよりも長い時間に延長させることが考えられる。充電時間Tjを延長させることによって、充電時間の不足による端子間電圧Vcfの低下をキャンセルすることができるので、接触抵抗増大チャネルの場合には、端子間電圧Vcfを正常な電圧範囲Vw内の電圧として測定することができる。そして、充電時間Tjを延長させても、端子間電圧Vcfが正常な電圧範囲Vw内の電圧とならない場合には、チャネルCh自体が異常な異常チャネルであると考えることができる。すなわち、充電時間Tjを基準充電時間Tjrよりも長い時間に延長させて測定することにより、チャネルChの異常を切り分けることができる。そこで、以下では、充電時間Tjを延長させる方法を利用した異常検出制御を含む電圧測定制御動作について説明する。
図4は、第1実施形態における電圧測定制御処理の手順を示すフローチャートである。ここでは、基準電圧Vrefと、測定したチャネル電圧Vchの偏差(Vref−Vch)が偏差許容値Vst以下のチャネルを正常チャネルとし、偏差許容値Vstよりも大きいチャネルを非正常チャネルとする。これは、図3において、正常な電圧範囲Vwの下限を(Vref−Vst)とした場合に相当する。なお、基準電圧Vrefとしては、全チャネルの平均電圧Vavを用いてもよく、あるいは、平均電圧Vav以外の基準電圧、例えば、電池セルユニット10のSOC(残充電容量)及び温度に対応する標準的なチャネル電圧、を用いてもよい。後者の場合には、電池セルユニット10のSOC及び温度と、標準的なチャネル電圧との関係を、予めマップやルックアップテーブルの形式で電圧測定装置20内の不揮発性メモリに格納しておくことが好ましい。
電圧測定制御部28は、ステップT110において、設定した充電時間Tjで全チャネルChの電圧測定を実行し、ステップT120において、Vref−Vch>Vstの非正常チャネルが有るか否か判断する。このとき、非正常チャネルが無い場合には、ステップT110に戻って、次の計測周期Tp(図2)において全チャネルChの電圧測定を実行する。一方、非正常チャネルが有る場合には、ステップT130において、非正常チャネルの充電時間Tjを延長し、正常チャネルの充電時間Tjを短縮した上で、ステップT110に戻って、次の計測周期Tpにおいて全チャネルChの電圧測定を実行する。すなわち、電圧測定制御部28は、非正常チャネルが有る間は、計測周期Tpごとに、非正常チャネルの充電時間Tjの延長及び正常チャネルの充電時間Tjの短縮(ステップT130)と、全チャネルChの電圧測定(ステップT110)と、を繰り返す。これに対して、非正常チャネルが無い場合には、計測周期Tpごとに、全チャネルChの電圧測定(ステップT110)を繰り返す。但し、ステップT120からステップT110に戻る場合において、その直前の計測周期Tpにおいて1つ以上のチャネルに関して充電時間Tjを延長した電圧測定が行われた場合には、次の計測周期Tpでは、充電時間Tjを元の基準充電時間Tjrに戻しても良く、充電時間Tjを延長した状態のまま維持しても良い。なお、上記したように、基準充電時間Tjrは標準の充電所要時間に比べて十分長い時間に設定されているので、正常チャネルについては、充電時間Tjを基準充電時間Tjrから短縮しても所要充電時間以上であれば基本的には測定可能である。
なお、この電圧測定制御処理において、全チャネルChの電圧測定を行なう計測期間Te(図2)の長さは変更しても良いが、全チャネルの電圧測定を繰り返し行う計測周期Tpは一定に維持される。但し計測期間Teを一定に維持すれば、制御動作がより容易になる点で好ましい。
図5は、図4で説明した電圧測定制御処理の詳細手順の一例を示すフローチャートである。電圧測定制御部28は、まず、ステップS102において全チャネルChの充電時間Tjを基準充電時間Tjrに設定し、ステップS104において、各チャネルCh1〜Chmのチャネル電圧Vch1〜Vchmを測定し、ステップS106において、測定結果を上位制御装置へ出力する。各チャネルChのチャネル電圧Vchの測定は、図2に示したように、計測周期Tpの計測期間Teにおいて、各チャネル周期Tc1〜Tcmで順に実行される。
次に、電圧測定制御部28は、ステップS108において、測定済みの全チャネルChのチャネル電圧Vchの平均値Vavを算出する。この平均値Vavは、図4の基準電圧Vrefとして使用される。ステップS110では、各チャネルChのチャネル電圧Vchについて、それぞれ、平均値Vavに対する偏差Vd(=Vav−Vch)を算出する。そして、電圧測定制御部28は、ステップS112において、各偏差Vdを、偏差許容値Vstと比較する。このとき、偏差Vdが偏差許容値Vstよりも大きいチャネルChが無い、すなわち、全てのチャネルChが正常チャネル(以下、「OKチャネル」とも呼ぶ)の場合には、ステップS102に戻る。一方、偏差Vdが偏差許容値Vstよりも大きいチャネルChがある場合には、ステップS114に進む。この場合のチャネルChは、チャネル自体が異常な異常チャネルと、接触抵抗が増大したチャネルとのいずれかの可能性がある非正常チャネル(以下、これらを「NGチャネル」とも呼ぶ)に相当する。
ステップS112からステップS102に戻った場合、電圧測定制御部28は、次の計測周期Tpにおいて、ステップS102〜ステップS110の処理を再度行なう。すなわち、電圧測定制御部28は、全てのチャネルChが正常チャネルである間は、図2に示した基本的な電圧測定制御動作により、計測周期Tpごとに、各チャネルChのチャネル電圧Vchの測定を繰り返し実行する。
或るv番目の計測周期Tp(v)における測定の結果、ステップS112からステップS114に進んだ場合、電圧測定制御部28は、次のv+1番目の計測周期Tp(v+1)のために、v番目の計測周期Tp(v)で偏差Vdが偏差許容値Vstよりも大きかったNGチャネルCh(NG)の充電時間Tj(v+1)を下式(1)に従って延長する。また、偏差Vdが偏差許容値Vst以下のOKチャネルの充電時間Tj(v+1)を下式(2)または下式(3)に従って設定する。すなわち、OKチャネルのうち、それまでのv回の計測周期Tpの間にNGチャネルからOKチャネルに変化したチャネルCh(NG→OK)の場合は、下式(2)に示すようにOKチャネルに変化した時点における充電時間Tj(OK)を維持する設定とする。また、v回の計測周期TpにわたってOKチャネルであるチャネルCh(OK)の場合は、下式(3)に示すように、充電時間Tj(v+1)を下式(3)に示すように短縮する設定とする。
Ch(NG):Tj(v+1)=Tj(v)+te …(1)
Ch(NG→OK):Tj(v+1)=Tj(OK) …(2)
Ch(OK):Tj(v+1)=Tj(v)−q・te/(m−q) …(3)
ここで、teは単位延長時間、qはNGチャネルの数、mはチャネルChの総数である。すなわち、[q・te]は、NGチャネルの数qに応じて次の計測周期Tpにおいて設定される総延長時間を示しており、[q・te/(m−q)]は、次の計測周期Tpの計測期間Te(図2)を一定に維持するように、総延長時間[q・te]をキャンセルするために、各OKチャネルの測定において充電時間Tjを短縮する短縮時間を示している。
そして、ステップS116において、電圧測定制御部28は、上限充電時間Tuよりも大きくなった充電時間TjのチャネルChがあるか否か判断する。上限充電時間Tuは、異常チャネルを切り分ける閾値(「異常判定閾値」に相当する)であり、正常チャネルの短縮可能な充電時間と、接触抵抗の増大量に応じて想定される最大の延長時間と、を考慮して設定される。
ステップS116においてTj>TuのチャネルChが無い場合には、電圧測定制御部28は、ステップS118において、次の計測周期Tpにおいて各チャネルChのチャネル電圧Vchの測定を実行する。ただし、各チャネルChの測定において用いられる充電時間Tjは、ステップS114で設定した充電時間である。そして、電圧測定制御部28は、ステップS118における各チャネルChのチャネル電圧Vchの測定、ステップS120における測定結果の上位制御装置への出力、ステップS122における平均値Vavの算出、ステップS124における偏差Vdの算出、及び、ステップS126における各偏差Vdと偏差許容値Vstとの比較、を順次実行する。ステップS126において、Vd>VstのチャネルChが無く、全てのチャネルがOKチャネルとなっている場合には、ステップS102に戻る。一方、Vd>VstのチャネルChがあり、NGチャネルが存在している場合には、ステップS114に戻る。
ステップS114に戻った場合、電圧測定制御部28は、Tj>TuのチャネルChが発生する(ステップS116)か、Vd>VstのチャネルChが無くなる(ステップS126)まで、計測周期Tpごとに、各チャネルChの充電時間Tjの延長、維持及び短縮の設定の処理(ステップS114)を行なって、各チャネルChのチャネル電圧Vchの測定(ステップS118)を繰り返し実行する。なお、ステップS114において、NGチャネルからOKチャネルに変化したチャネルCh(NG→OK)の充電時間TjをOKチャネルとなった時の充電時間Tj(OK)に維持させるのは、残りのNGチャネルの充電時間Tjを延長させるためである。
上記繰り返しの実行中において、ステップS112においてVd>VstのチャネルChが無いと判断された場合には、全てのチャネルChが正常チャネルとして測定されたことになるので、電圧測定制御部28は、ステップS102に戻って、充電時間Tjを基準充電時間Tjrに戻して、各チャネルChの測定を最初から繰り返す。
ここで、充電時間Tjを延長して測定している際に、測定したチャネルChのチャネル電圧Vchが正常な範囲となるのは、時間を延長することにより接触抵抗の増大に応じた充電時間で測定を行なうことができた場合と、接触抵抗の増大が解消された場合と、が考えられる。接触抵抗の増大が解消された場合は、以下のような場合に発生し得る。すなわち、電池セルCLの端子とチャネルラインLhとの接続の安定性が低く、接触抵抗が変動しやすい場合には、接触抵抗の増大が発生した後、接触抵抗の増大が解消されるということが発生し得る。これは、例えば、電池セルユニット10が移動体に搭載されている場合等に頻繁に発生する。このように、接触抵抗が変動しやすい場合には、NGチャネルに対して充電時間Tjを延長して測定を行なった結果、全てのチャネル電圧が正常な電圧となったときに、次の計測周期Tpでは全てのチャネルChの充電時間Tjを基準充電時間Tjrに戻してもよい。なお、接触抵抗の変動が少なく、接触抵抗の増大としては、劣化による増大のみを考慮すればよい場合も存在する。このような場合が想定されるときには、上記繰り返しの最中において、ステップS126でVd>VstのチャネルChが無いと判断された場合に、ステップS102に戻って充電時間Tjを基準充電時間Tjrに戻すのではなく、設定した各チャネルChの充電時間Tjを維持するようにしてもよい。
ステップS116においてTj>TuのチャネルChがあると判断された場合には、そのチャネルChを異常チャネルと判断し、電圧測定制御部28は、ステップS128において、上位制御装置へ異常フラグを出力する。異常フラグを受け取った上位制御装置は、受け取った異常フラグのチャネルChが異常チャネルであることを検知することができる。そして、電圧測定制御部28は、ステップS102に戻って、上位制御装置から割り込みによる停止の指示があるまで、各チャネルの測定を最初から行なう。なお、異常フラグを出力した時点で、処理を停止するようにしてもよい。
図6は、図5に示した電圧測定制御処理による各チャネルChのチャネル周期Tcの変動の一例を示すタイムチャートである。なお、Tp,Te,Tc,Tjの後に付された()内の番号は、計測周期Tpの順番を示す番号であり、添え字は測定対象のチャネルChに対応する番号を示している。また、スイッチタイミング波形Sch1〜Schmは、各チャネルCh1〜ChmがコンデンサCfに対してONとされる充電時間Tj1〜Tjmを示している。
図6(A)は、図2と同様に、1番目の計測周期Tp(1)の計測期間Te(1)において、各チャネルChの充電時間Tj(1)を基準充電時間Tjrに設定し、チャネル周期Tc(1)を基準チャネル周期Tcrに設定した基本動作の状態を示している。
図6(A)の状態で各チャネルChの測定を行なった結果、2番目のチャネルCh2がNGチャネルであったとする。この場合、図6(B)に示すように、2番目の計測周期Tp(2)の計測期間Te(2)において、2番目のチャネルCh2の充電時間Tj2(2)及びチャネル周期Tc2(2)は、単位延長時間teだけ延長される。また、他の(m−1)個のチャネルChの充電時間Tj(2)及びチャネル周期Tc(2)は、それぞれ、短縮時間[te/(m−1)]だけ短縮される。但し、全体の計測期間Te(2)及び計測周期Tp(2)は、1番目の計測期間Te(1)及び計測周期Tp(1)と同じに維持される。
2番目の計測周期Tp(2)における測定においても、まだ、2番目のチャネルCh2がNGチャネルであった場合には、図6(C)に示すように、3番目の計測周期Tp(3)の計測期間Te(3)において、2番目のチャネルCh2の充電時間Tj2(3)及びチャネル周期Tc2(3)は、さらに、単位延長時間teだけ延長される。すなわち、2番目のチャネルCh2の充電時間Tj2(3)及びチャネル周期Tc2(3)は、1番目の計測周期Tp(1)における充電時間Tj2(1)及びチャネル周期Tc2(1)に対して単位延長時間teの2倍分だけ延長される。また、他の(m−1)個のチャネルChの充電時間Tj(3)及びチャネル周期Tc(3)は、それぞれ、さらに、短縮時間[te/(m−1)]だけ短縮される。すなわち、他の(m−1)個のチャネルChの充電時間Tj(3)及びチャネル周期Tc(3)は、それぞれ、1番目の計測周期Tp(1)における充電時間Tj(1)及びチャネル周期Tc(1)に対して短縮時間[te/(m−1)]の2倍分だけ短縮される。但し、全体の計測期間Te(3)及び計測周期Tp(3)は、1番目の計測期間Te(1)及び計測周期Tp(1)と同じに維持される。
図6(B),図6(C)に示すように、NGチャネルがあった場合には、計測周期Tpごとに、NGチャネルの充電時間Tjを単位延長時間teで徐々に延長させて測定を行なうことにより、接触抵抗の増大が要因となってNGチャネルとなったチャネルの電池セルCLが正常であることを確認することができる。そして、延長した充電時間Tjが上限充電時間Tuを超えてしまう場合には、チャネル自体が異常な異常チャネルと判断し、上位制御装置へ通知することにより、上位制御装置において、異常チャネルの発生を検知することができる。これにより、NGチャネルの要因が、接触抵抗の増大によるものか、電池セルCL自体の異常によるものか、を切り分けることができ、測定精度を向上させることができる。また、単位延長時間teで徐々に充電時間Tjを延長させることにより、過度に充電時間を長くすることを防止することができる。
また、NGチャネル以外のOKチャネルの充電時間Tj及びチャネル周期Tcを短縮することにより、全チャネルChの測定の計測期間Teを一定に維持し、計測周期Tpを一定に維持することができるので、計測期間Teの変動に応じて計測周期Tpが変動する場合に比べて、電圧測定制御が容易となる。
なお、図6に示した動作例は、2番目のチャネルCh2のみがNGチャネルとなっている場合を例に説明したが、複数のチャネルChがNGチャネルの場合においては、NGチャネルのすべての充電時間Tjをそれぞれ延長させ、OKチャネルの充電時間Tjを計測期間Te及び計測周期Tpを一定に維持するように短縮させればよい。また、複数のNGのチャネルのうち、NGからOKに変化したOKチャネルについては、その充電時間Tjを維持させ、NGチャネルについて充電時間Tjの延長を行ない、最初からOKのままのOKチャネルについてのみ充電時間Tjの短縮を行なうようにすればよい。
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態における電圧測定制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、この電圧測定制御は、第1実施形態と同じ電圧測定装置20(図1)の電圧測定制御部28によって実行される。また、図4の説明と同様に、偏差(Vref−Vch)が偏差許容値Vst以下のチャネルを正常チャネルとし、偏差許容値Vstよりも大きいチャネルを非正常チャネルとする。
電圧測定制御部28は、ステップT210において、設定した充電時間Tjで、選択した1チャネルChの電圧測定を実行し、ステップT220において、測定したチャネルChがVref−Vch>Vstの非正常チャネルか否か判断する。このとき、非正常チャネルであった場合には、ステップT230において、充電時間Tjを延長した上で、同一の計測周期Tp(図2)内でそのチャネルChの電圧測定を再度実行する。なお、この再測定を行なった場合、このチャネルChの次以降のチャネルChの充電時間を短縮する。一方、正常チャネルであった場合には、ステップT240で次のチャネルChを選択し、ステップT210に戻って、選択したチャネルChの電圧測定を実行する。なお、このとき、ステップT230の処理によって充電時間Tjが短縮されている場合には、ステップT110における電圧測定は、短縮した充電時間Tjで実行される。すなわち、電圧測定制御部28は、測定したチャネルChが正常チャネルの間は、選択した1チャネルChの電圧測定(ステップT210)を1チャネルChごとに繰り返す。これに対して、測定したチャネルChが非正常チャネルとなった場合には、充電時間Tjを延長してそのチャネルの再測定(ステップT230)を繰り返す。そして、非正常チャネルが正常チャネルとなった後のチャネルChについては、選択した1チャネルChの電圧測定(ステップT210)を、短縮した充電時間Tjで、1チャネルごとに繰り返す。
なお、この電圧測定制御処理において、全チャネルChの電圧測定を行なう計測期間Te(図2)の長さは変更しても良いが、全チャネルChの電圧測定を繰り返し行う計測周期Tpは一定に維持される。但し計測期間Teを一定に維持すれば、制御動作がより容易になる点で好ましい。
図8は、図7で説明した電圧測定制御処理の詳細手順の一例を示すフローチャートである。電圧測定制御部28は、第1実施形態のステップS102〜S106(図4)と同様に、各チャネルChの充電時間Tjを基準充電時間Tjrとして(ステップS202)、1番目の計測周期Tpにおいて、各チャネルChのチャネル電圧Vchの測定(ステップS204)、及び、測定結果の上位制御装置への出力(ステップS206)を実行する。
次に、電圧測定制御部28は、2番目の計測周期Tpにおいて、以下で説明する処理を実行して、各チャネルChの測定を実行する。
まず、電圧測定制御部28は、ステップS208において、測定対象のチャネルChを示すパラメータiを「0」に設定し、延長時間の総和を示す総延長時間SMを初期値「0」に設定する。そして、電圧測定制御部28は、ステップS210において、パラメータiに「1」を加算する。
次に、電圧測定制御部28は、ステップS212において、i番目のチャネルChiの充電時間Tjiを基準充電時間Tjrに設定して、ステップS214において、そのチャネルChiのチャネル電圧Vchiを測定し、ステップS216において測定結果を上位制御装置へ出力する。そして、電圧測定制御部28は、ステップS218において、全チャネルChのチャネル電圧Vchの平均値Vavを算出し、ステップS220において、i番目のチャネルChiのチャネル電圧Vchiの偏差Vdi(=Vav−Vchi)を算出する。なお、平均値Vavの算出において、i番目のチャネルChiについては、ステップS214における測定結果が使用され、それ以外のチャネルについては、それまでに得られた最新の測定結果が使用される。そして、電圧測定制御部28は、ステップS222において、偏差Vdiと偏差許容値Vstとを比較する。
ステップS222においてVdi≦Vstの場合、すなわち、i番目のチャネルChiが正常チャネル(OKチャネル)の場合には、電圧測定制御部28は、ステップS224に進み、i=mとなるまで、ステップS210〜S224の処理を繰り返し実行する。そして、i=mとなってm番目のチャネルChmまでの測定が終了した場合には、2番目の計測周期Tpにおける全てのチャネルChのチャネル電圧Vchが正常チャネルとして測定されたことになるので、電圧測定制御部28は、ステップS202に戻り、各チャネルChの測定を最初から繰り返す。
一方、Vdi>Vstの場合、すなわち、i番目のチャネルChiが非正常チャネル(NGチャネル)である場合には、電圧測定制御部28は、ステップS230に進み、以下で説明するように、i番目のチャネルChiの充電時間Tjiを延長して再測定を行なう。
まず、ステップS230において、電圧測定制御部28は、NGチャネルであるi番目のチャネルChiの充電時間Tjiを下式(4)に示すように延長する。
Tji=Tji+te …(4)
また、総延長時間SMを(4)式で得られた充電時間Tjiに基づいて下式(5)に示すように増加させる。
SM=SM+Tji+Ts …(5)
ここで、Tsは測定期間である。
そして、電圧測定制御部28は、ステップS232において、ステップS230で延長した充電時間Tjiが上限充電時間Tuuを超過する否か判断する。上限充電時間Tuuは、第1実施形態の上限充電時間Tuと同様に、異常チャネルを切り分ける閾値(異常判定閾値)であり、正常チャネルの短縮可能な充電時間と、接触抵抗の増大量に応じて想定される最大の延長時間と、を考慮して設定される。
ステップS232においてTji≦Tuuである場合には、電圧測定制御部28は、ステップS234において、ステップS230で延長した充電時間Tjiでi番目のチャネルChiのチャネル電圧Vchiを再測定し、ステップS236において、測定結果を上位制御装置へ出力する。そして、電圧測定制御部28は、ステップS218〜S222と同様に、ステップS238において平均値Vavを測定し、ステップS240において偏差Vdiを算出し、ステップS242において偏差Vdiと偏差許容値Vstとを比較する。
ステップS242においてVdi>Vstの場合、すなわち、i番目のチャネルChiがNGチャネルのままである場合には、電圧測定制御部28は、ステップS230に戻って、Tji>Tuuとなる(ステップS232)か、Vdi≦Vstとなる(ステップS242)まで、i番目のチャネルChiの再測定を繰り返し実行する。
一方、Vdi≦Vstの場合、すなわち、i番目のチャネルChiがNGチャネルからOKチャネルとなった場合には、電圧測定制御部28は、ステップS244において、パラメータiに「1」を加算し、測定対象を次のチャネルChiに変更する。
そして、電圧測定制御部28は、ステップS246において、次に測定対象となるi番目のチャネルChiの充電時間Tjiを下式(6)に示すように短縮し、総延長時間SMを下式(7)に示すように減少させる。
Tji=Tjr−SM/(m−i+1) …(6)
SM=SM−SM/(m−i+1) …(7)
ここで、[SM/(m−i+1)]は、次に測定対象となるi番目のチャネルChi以降の全てのチャネルChがOKチャネルであると仮定して、総延長時間SMをキャンセルするために、各OKチャネルにおいて単縮する短縮時間を示している。
次に、電圧測定制御部28は、ステップS248において、ステップS246で短縮させた充電時間Tjiでi番目のチャネルChiのチャネル電圧Vchiを測定し、ステップS250において、測定結果を上位制御装置へ出力する。そして、電圧測定制御部28は、ステップS218〜S222と同様に、ステップS252において平均値Vavを算出し、ステップS254において偏差Vdiを算出し、ステップS256において偏差Vdiと偏差許容値Vstとを比較する。
ステップS256においてVdi≦Vstの場合、すなわち、i番目のチャネルChiが正常チャネル(OKチャネル)の場合には、電圧測定制御部28は、ステップS258に進み、i=mとなるまで、ステップS244〜S258の処理を繰り返し実行する。そして、i=mとなってm番目のチャネルChmまでの測定が終了した場合には、2番目の計測周期Tpにおける全てのチャネルChのチャネル電圧Vchが正常チャネルとして測定されたことになるので、電圧測定制御部28は、ステップS202に戻って、各チャネルChの測定を最初から繰り返す。なお、ステップS208に戻るようにしてもよい。
一方、Vdi>Vstの場合、すなわち、i番目のチャネルChiがNGチャネルに変化した場合には、電圧測定制御部28は、ステップS230に戻って、Tji>Tuuとなる(ステップS232)か、Vdi≦Vstとなる(ステップS242)まで、i番目のチャネルChiの再測定を繰り返し実行する。
ステップS232においてTji>Tuuと判断された場合には、そのチャネルChiは異常チャネルの可能性があるので、電圧測定制御部28は、ステップS260において、上位制御装置へ異常フラグを出力する。異常フラグを受け取った上位制御装置は、受け取った異常フラグのチャネルChiの異常チャネルであると判断することができる。そして、電圧測定制御部28は、ステップS244へ戻って、上位制御装置から割り込みによる停止の指示があるまで、次のチャネルChを対象とする処理を継続する。なお、異常フラグを出力した時点で、処理を停止するようにしてもよい。
図9は、図8に示した電圧測定制御処理による各チャネルChのチャネル周期Tcの変動の一例を示すタイムチャートである。図9は、図6と同様に、2番目のチャネルCh2がNGチャネルであった場合を例に示している。また、図6と同様に、Tp,Te,Tc,Tjの後に付された()内の番号は計測周期Tpの順番を示す番号であり、添え字は測定対象のチャネルChに対応する番号を示している。また、スイッチタイミング波形SCh1〜SChmは、各チャネルCh1〜ChmがコンデンサCfに対してONとされる充電時間Tj1〜Tjmを示している。
まず、1番目の計測周期Tp(1)の計測期間Te(1)においては、図9(A)のスイッチタイミング波形SCh1〜SChmに示すように、充電時間Tj1(1)〜Tjm(1)及び測定時間Tsで構成されるチャネル周期Tc1(1)〜Tcm(1)で、各チャネルCh1〜Chmの測定が順に実行される。なお、充電時間Tj1(1)〜Tjm(1)は基準充電時間Tjrに設定されている。
次に、2番目の計測周期Tp(2)の計測期間Te(2)においては、以下で説明するように、各チャネルCh1〜Chmの測定が順に実行される。まず、図9(B)のスイッチタイミング波形SCh1に示すように、充電時間Tj1(2)=Tjrのチャネル周期Tc1(2)=Tjr+Tsで、1番目のチャネルCh1の測定が実行される。1番目のチャネルCh1はOKチャネルであるので、次の2番目のチャネルCh2の測定が実行される。
2番目のチャネルCh2も、図9(C)のスイッチタイミング波形SCh2に示すように、充電時間Tj2(2)=Tjrのチャネル周期Tc2(2)=Tjr+Tsで、測定が実行される。2番目のチャネルCh2はNGチャネルであるので、2番目のチャネルCh2の再測定が実行される。
2番目のチャネルCh2の再測定は、図9(D)のスイッチタイミング波形SCh2に示すように、充電時間Tj2(2)が[Tjr+te]に延長され、チャネル周期Tc2(2)が[Tjr+te+Ts]に延長されて、実行される。この再測定によっても、まだ、2番目のチャネルCh2がNGチャネルであった場合には、再度、充電時間Tj2(2)及びチャネル周期Tc2(2)が延長されて、再測定が実行される。そして、この再測定は、図8のステップS232において説明したように、充電時間Tj2が上限充電時間Tuuを超過するまで繰り返し実行され、超過する場合には、異常フラグが上位制御装置へ出力される。ここでは、この再測定の結果、2番目のチャネルCh2はOKチャネルとなったものとし、次の3番目のチャネルCh3の測定が実行される。
3番目のチャネルCh3の測定は、図9(E)のスイッチタイミング波形SCh3に示すように、充電時間Tj3(2)が[Tjr−SM/(m−2)]に短縮され、チャネル周期Tc3(2)が[Tjr−SM/(m−2)+Ts]に短縮されて、実行される。この測定の結果、NGチャネルとなった場合には、上記の2番目のチャネルCh2と同様に、充電時間Tj3(2)及びチャネル周期Tc3(2)が延長されて、3番目のチャネルCh3の再測定が実行される。ここでは、3番目のチャネルCh3はOKチャネルであるので、次の4番目のチャネルCh4の測定が実行される。
また、4番目〜m番目のチャネルCh4〜ChmもOKチャネルであるので、3番目のチャネルCh3と同様に、充電時間Tj4(2)〜Tjm(2)及びチャネル周期Tc4(2)〜Tcm(2)が短縮されて、4番目〜m番目のチャネルCh4〜Chmの測定が順に実行される。なお、図9(F)に示すスイッチタイミング波形SChmは、m番目のチャネルChmにおける充電時間Tcm(2)が[Tjr−SM/(m−2)]に短縮され、チャネル周期Tcm(2)が[Tjr−SM/(m−2)+Ts]に短縮された状態を示している。但し、測定の結果NGチャネルとなった場合には、4番目〜m番目のチャネルCh4〜Chmも、同様に、充電時間Tj4(2)〜Tjm(2)及びチャネル周期Tc4(2)〜Tcm(2)が延長されて、再測定が実行される。
図9(E),図9(F)に示すように、OKチャネルである3番目〜m番目のチャネルCh3〜Chmの測定においては、2番目のチャネルCh2の再測定によって延長された総延長時間SMをキャンセルするように、充電時間Tj3(2)〜Tjm(2)が総延長時間SMを(m−2)等分した短縮時間[SM/(m−2)]分だけ短縮されている。これにより、2番目の計測期間Te(2)及び計測周期Tp(2)は、1番目の計測期間Te(1)及び計測周期Tp(1)と同じに維持される。
図9(D)に示すように、測定チャネルChがNGチャネルであった場合には、充電時間Tjを単位延長時間teで徐々に延長させて繰り返し再測定を行なうことにより、接触抵抗の増大が要因となってNGチャネルとなったチャネルの電圧を確認することができる。そして、延長した充電時間Tjが上限充電時間Tuuを超えてしまう場合には、チャネル自体が異常な異常チャネルと判断し、上位制御装置へ通知することにより、上位制御装置において、異常チャネルの発生を検知することができる。これにより、NGチャネルの要因が、接触抵抗の増大によるものか、電池セルCL自体の異常によるものか、を切り分けることができ、測定精度を向上させることができる。また、単位延長時間teで徐々に充電時間Tjを延長させることにより、過度に充電時間を長くすることを防止することができる。また、NGチャネルとなったチャネルの再測定を行なうことにより、NGチャネルであったチャネルが電池セルCL自体の異常によるものか、接触抵抗の増大等の接続回路の異常によるものかの切り分けを優先して実行することができる。
また、延長した充電時間Tjで測定を行なうチャネルよりも後の正常チャネルの充電時間Tjを短縮することにより、全チャネルChの測定の計測期間Teを一定に維持し、計測周期Tpを一定に維持することができるので、計測期間Teの変動に応じて計測周期Tpが変動する場合に比べて、電圧測定制御が容易となる。
なお、図9に示した動作例は、2番目のチャネルCh2のみがNGチャネルとなっている場合を例に説明したが、複数のチャネルChがNGチャネルの場合においては、NGチャネルのすべての充電時間Tjをそれぞれ延長させ、NGチャネルの後のOKチャネルの充電時間Tjを、計測期間Te及び計測周期Tpを一定に維持するように短縮させればよい。
C.変形例:
(1)変形例1
上記第1実施形態の電圧測定制御の手順(図4,図5)は一例であって、この手順に限定されるものではない。但し、計測周期Tpごとに、NGチャネルについては充電時間を延長し、OKチャネルについては充電時間を短縮して、全チャネルの計測周期Tpを一定に維持するように制御しつつ、全チャネルの測定を行なうことが好ましい。また、第2実施形態の電圧測定制御の手順(図7,図8)も一例であって、この手順に限定されるものではない。ただし、ある計測周期Tpにおいて、NGチャネルについては充電時間を延長して再測定を行い、その後のOKチャネルについては充電時間を短縮して、全チャネルの計測周期Tpを一定に維持するように制御しつつ、全チャネルの測定を行なうことが好ましい。
(2)変形例2
第1及び第2実施形態においては、OKチャネルの充電時間を短縮するようにしているが、一部のOKチャネルの充電時間を一定としてもよい。但し、この場合にも、NGチャネルの充電時間の延長量と、OKチャネルの充電時間の短縮量の合計が、非計測期間Tue(図2)以下となるように設定されることが好ましい。このようにすれば、計測期間Teは変動するが、計測周期Tpは一定に維持することができる。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。