本発明は、がん被験体の予後を決定する方法であって、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定する工程と、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定する工程と、を含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量又は同量のメチル化ゲノムDNA又は断片は被験体に追加のがん治療が必要であることを示す、方法を提供する。実施の形態では、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量のメチル化ゲノムDNA又は断片は、がんが侵攻性であるか若しくは転移能を有すること又は被験体の生存時間の低減を示す。好ましい実施の形態では、本発明の方法は、がん被験体の予後を決定する方法であって、a)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定する工程と、b)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定する工程と、c)メチル化DNAの測定された治療後レベルと測定された治療前レベルとを比較する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量又は同量のメチル化ゲノムDNA又は断片は予後不良であること、及びそのため被験体に追加のがん治療が必要であることを示す、方法を提供する。この方法の好ましい実施の形態では、方法は下記のようなc)メチル化DNAの測定された治療後レベルと、測定された治療前レベルとを比較する工程と、d)工程c)の比較の結果に基づきがん被験体の予後を決定する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量又は同量のメチル化ゲノムDNA又は断片は予後不良であること、及びそのため被験体に追加のがん治療が必要であることを示す。
メチル化ゲノムDNAの安定したレベル、又は更には、増加レベルは、好ましくは、選択された治療ではメチル化DNA断片を放出するがん細胞を取り除くことができなかったこと、又は治療したにもかかわらずがん細胞の数が増大した、すなわちがんが更に成長したことを示す。これに対して、メチル化ゲノムDNAのレベルの低下は好ましくは、がん細胞の数が低下した、すなわち治療によって患者の腫瘍細胞量の低下に成功したことを示す。特に、検出レベル未満のレベルへの低下は、全てのがん細胞が患者から根絶していること、すなわちがんの治癒を示す。通常、治療に対する応答性が低いがんを侵攻性とみなす。
適用されるがん治療が局所治療である場合、メチル化ゲノムDNAのレベルの検出限界未満のレベルへの低下は好ましくはがんの治癒を示す。臨床研究の結果に応じて、患者の「治癒」を規定する他の閾値レベルを規定することができることが当業者に理解される。かかる閾値レベルの確立は、(医学)統計の分野で慣行の統計的方法によって達成することができる。
しかしながら、局所治療後に測定されたメチル化ゲノムDNAのレベルが検出レベルを超える場合、このことは好ましくは、局所治療が完治を達成するには不十分であったことを示す。これは通常、がんが既に局所治療が及ぶ領域を超えて拡散している場合に当てはまる。このため、メチル化ゲノムDNAのレベルが低下した場合であっても、検出可能なレベルのメチル化ゲノムDNAが引き続き存在していることは、原発巣を越えて拡散するがんは通常、治療が極めて困難であるため、予後不良を示す。
がん患者の更なる治療の選択は患者の予後に応じて決まる。予後が良好である場合、その後の治療は予後不良の場合ほど積極的なものでなくてもよい。患者の予後はがん患者の更なる治療の選択に重要なパラメータであるため、本発明は、がん被験体の薬物治療を決定する方法であって、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定する工程と、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量又は同量のメチル化ゲノムDNA又は断片は被験体に追加のがん治療が必要であることを示す、方法を提供する。好ましい実施の形態において、本発明は、どの種類の薬物治療ががん被験体に適しているかを判定する方法であって、a)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定する工程と、b)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定する工程と、c)メチル化DNAの測定された治療後レベルと測定された治療前レベルとを比較する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量又は同量のメチル化ゲノムDNA又は断片は被験体に追加のがん治療が必要であることを示す、方法も提供する。この方法の好ましい実施の形態では、方法は下記のようなc)メチル化DNAの測定された治療後レベルと、測定された治療前レベルとを比較する工程と、d)工程c)の比較の結果に基づきどの種類の薬物治療ががん被験体に適しているかを判定する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量又は同量のメチル化ゲノムDNA又は断片は被験体に追加のがん治療が必要であることを示す。
好ましくは、検出レベル未満に低下したメチル化ゲノムDNAの治療後レベルは、更なる薬物治療が必要でないことを示す。これらの場合、再燃に関する患者のモニタリングが十分であるとすることができる。しかしながら、メチル化ゲノムDNAの治療後レベルが低下していないか又は更には増加している場合、追加の薬物治療が必要となり得る。メチル化ゲノムDNAレベルの増加が治療の失敗を示すことから、この状況は好ましくは異なる種類の治療へと切り替える必要があることを示す。
単一の室内検査の結果に基づくだけではがん患者の好適な治療を選択することはできないことが当業者に理解される。この決定は患者の病態の医学的判断に基づいて行うのが好ましい。上記判断には好ましくは、本発明の方法を適用することで得られる結果に加えて、画像化方法等の従来の診断法の結果、及び特定の患者の全身の健康状態(state)が含まれる。
本発明は、がん被験体由来の腫瘍が、該腫瘍が侵攻性であるか若しくは転移能を有すること又は該被験体の生存時間の低減を示すかを判定する方法であって、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定することと、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定することと、を含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量又は同量のメチル化ゲノムDNA又は断片は、がんが侵攻性である若しくは転移能を有すること又は被験体の生存時間の低減を示す、方法を提供する。好ましい実施の形態では、本発明は、がん被験体由来の腫瘍が、該腫瘍が侵攻性である若しくは転移能を有すること又は被験体の生存時間の低減を示すかを判定する方法であって、a)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定することと、b)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定することと、c)メチル化DNAの測定された治療後レベルと測定された治療前レベルとを比較することとを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量又は同量のメチル化ゲノムDNA又は断片は、腫瘍が侵攻性である若しくは転移能を有すること又は被験体の生存時間の低減を示す、方法を提供する。この方法の好ましい実施の形態では、方法は下記のようなc)メチル化DNAの測定された治療後レベルと、測定された治療前レベルとを比較する工程と、d)工程c)の比較の結果に基づき、がん被験体由来の腫瘍が、該腫瘍が侵攻性である若しくは転移能を有すること又は被験体の生存時間の低減を示すかを判定する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量又は同量のメチル化ゲノムDNA又は断片は、腫瘍が侵攻性である若しくは転移能を有すること、又は被験体の生存時間の低減を示す。
さらに、本発明は、がん被験体由来の腫瘍が侵攻性である及び/又は転移能を有するかを判定する方法であって、a)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定する工程と、b)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定する工程と、c)メチル化DNAの測定された治療後レベルと測定された治療前レベルとを比較する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量又は同量のメチル化ゲノムDNA又は断片は、腫瘍が侵攻性である及び/又は転移能を有することを示す、方法を提供する。この方法の好ましい実施の形態では、方法は下記のようなc)メチル化DNAの測定された治療後レベルと、測定された治療前レベルとを比較する工程と、d)工程c)の比較の結果に基づき、がん被験体由来の腫瘍が侵攻性である及び/又は転移能を有するかを判定する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量又は同量のメチル化ゲノムDNA又は断片は腫瘍が侵攻性である及び/又は転移能を有することを示す。
本発明は、被験体において侵攻性のがんを検出する方法であって、a)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定することと、b)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定することとを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量のメチル化ゲノムDNA又は断片は、がんが侵攻性であることを示す、方法を提供する。好ましい実施の形態では、本発明は、被験者において侵攻性のがんを検出する方法であって、a)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定することと、b)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定することと、c)メチル化DNAの測定された治療後レベルと測定された治療前レベルとを比較することとを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量のメチル化ゲノムDNA又は断片は、がんが侵攻性であることを示す、方法を提供する。この方法の好ましい実施の形態では、方法は下記のようなc)メチル化DNAの測定された治療後レベルと、測定された治療前レベルとを比較する工程と、d)工程c)の比較の結果に基づき、被験者において侵攻性のがんを検出する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の増加量のメチル化ゲノムDNA又は断片はがんが侵攻性であることを示す。
本発明は、がん治療に対してがん被験体を選別する方法であって、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定することと、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定することとを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNAの量の増加は、追加のがん治療が必要であることを示す、方法を提供する。好ましい実施の形態では、本発明は、追加のがん治療に対してがん被験体を選別する方法であって、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定することと、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定することと、メチル化DNAの測定された治療後レベルと、測定された治療前レベルとを比較することとを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA若しくはその断片の量の増加又は同量の上記DNA若しくはその断片は追加のがん治療が必要であることを示す、方法を提供する。この方法の好ましい実施の形態では、方法は下記のようなc)メチル化DNAの測定された治療後レベルと、測定された治療前レベルとを比較する工程と、d)工程c)の比較の結果に基づき、追加のがん治療に対してがん被験体を選別する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA若しくはその断片の量の増加又は同量の上記DNA若しくはその断片は、追加のがん治療が必要であることを示す。
結果として、本発明は、被験体においてがんに対する治療の成功を決定する方法であって、a)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定する工程と、b)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定する工程と、c)メチル化DNAの測定された治療後レベルと測定された治療前レベルとを比較する工程とを含み、(i)治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の量の低下は治療が成功したことを示し、(ii)治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA若しくはその断片の量の増加又は同量の上記DNA若しくはその断片は治療が成功しなかったことを示す、方法を提供する。この方法の好ましい実施の形態では、方法は下記のようなc)メチル化DNAの測定された治療後レベルと、測定された治療前レベルとを比較する工程と、d)工程c)の比較の結果に基づき、被験体においてがんに対する治療の成功を決定する工程とを含み、(i)治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の量の低下は治療が成功したことを示し、(ii)治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA若しくはその断片の量の増加又は同量の上記DNA若しくはその断片は治療が成功しなかったことを示す。
好ましくは、「成功した」治療によって、以下の効果:がんの寛解、がんの再発までの時間の増加、腫瘍進行までの時間の増加、がんの症状の緩和、腫瘍量の低減及び腫瘍数の減少の少なくとも1つが達成された。より好ましくは、「治療の成功(successful treatment)」は、がんの治癒、すなわち検出可能な腫瘍細胞及び検出不能な腫瘍細胞の完全な根絶を特徴とするものであった。がんの治癒の好ましい指標は少なくとも5年間、又はより好ましくは少なくとも10年間の患者の無再発生存である。
「成功しなかった」治療によっては好ましくは、上記の目的のいずれも達成することができなかった。
本発明は、被験体における腫瘍細胞量又はがん量を決定する方法であって、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定することと、被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定することとを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNAの量の増大は、被験体が増大した若しくは同量の腫瘍細胞量若しくはがん量を有すること、又は腫瘍細胞量若しくはがん量が治療によっては減少していないことを示す、方法を提供する。好ましい実施の形態では、本発明は、被験体において腫瘍細胞量又はがん量の進展を決定する方法であって、a)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療前レベルを測定することと、b)被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを測定することと、c)メチル化DNAの測定された治療後レベルを測定された治療前レベルと比較することとを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA若しくはその断片の量の増加又は同量の上記DNA若しくはその断片は、被験体が、増加した若しくは同量の腫瘍細胞量若しくはがん量を有すること、又は腫瘍細胞量若しくはがん量が治療によって減少していないことを示す、方法を提供する。この方法の好ましい実施の形態では、方法は下記のようなc)メチル化DNAの測定された治療後レベルと、測定された治療前レベルとを比較する工程と、d)工程c)の比較の結果に基づき被験体において腫瘍細胞量又はがん量の進展を決定する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA若しくはその断片の量の増加又は同量の上記DNA若しくはその断片は、被験体が、増加した若しくは同量の腫瘍細胞量若しくはがん量を有すること、又は腫瘍細胞量若しくはがん量が治療によって減少していないことを示す。
本発明は、被験体における腫瘍細胞量又はがん量を決定する方法であって、該被験体から得られた生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片の治療後レベルを、該遺伝子のメチル化ゲノムDNA又は断片の治療前レベルと比較することを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNAの量の増大は、被験体が、増大した若しくは同量の腫瘍細胞量若しくはがん量を有すること、又は腫瘍細胞量若しくはがん量が該治療によっては減少していないことを示す、方法を提供する。この方法の好ましい実施の形態では、方法は下記のようなc)メチル化DNAの測定された治療後レベルと、測定された治療前レベルとを比較する工程と、d)工程c)の比較の結果に基づき被験体において腫瘍細胞量又はがん量を決定する工程とを含み、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNAの量の増加は、被験体が、増加した若しくは同量の腫瘍細胞量若しくはがん量を有すること、又は腫瘍細胞量若しくはがん量が治療によって減少していないことを示す。
本発明の遺伝子のメチル化DNAのレベルは、概して侵攻性又は腫瘍細胞量等のがんの特性のマーカーとして有用である。したがって、異なる時点で採取されたメチル化DNAのレベルの比較は、継続中の治療とは独立してがんの特性がどのように経時的に進展しているかを示す。
そのため、本発明は、腫瘍細胞量、がん量、がんの侵攻性及びがん被験体の予後からなる群から選択されるがんの特性をモニタリングする方法であって、a)がんを患う被験体から得られた第1の生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片のレベルを測定する工程と、b)被験体から得られた更なる生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片のレベルを測定する工程と、c)更なるサンプルで測定されたメチル化DNAのレベルと、第1のサンプルで測定されたメチル化DNAのレベルとを比較する工程とを含み、更なるサンプル中の遺伝子のメチル化DNA又はその断片のレベルの増大は、腫瘍細胞量、腫瘍量若しくはがんの侵攻性が増大しているか、又は患者の予後が悪化していることを示し、(ii)更なるサンプル中の遺伝子のメチル化DNA又はその断片のレベルの低減は、腫瘍細胞量、腫瘍量若しくはがんの侵攻性が低減しているか、又は患者の予後が改善していることを示す、方法を提供する。
この方法の好ましい実施の形態では、方法は下記のようなc)更なるサンプルで測定されたメチル化DNAのレベルと、第1のサンプルで測定されたメチル化DNAのレベルとを比較する工程と、d)工程c)の比較の結果に基づき腫瘍細胞量、腫瘍量若しくはがんの侵攻性が増大しているか若しくは低減しているか、又は患者の予後が悪化しているか若しくは改善しているかを判定する工程とを含む。
第1のサンプル及び第2のサンプルは、第2のサンプルが第1のサンプルの後に採取されていればどのような時間で採取してもよい。好ましくは、第2のサンプルは第1のサンプルの少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月又は少なくとも12ヶ月後に採取する。
上記のがんの特性をモニタリングする方法は、以前に既にがんを治療したことのある患者を、がんの再発及び/又は進行に関してモニタリングするのに特に適している。このため、本発明の特に好ましい実施の形態では、患者は治療によってがんが見かけ上治癒されたがん患者である。治療後の異なる時点で採取された少なくとも2つのサンプルにおける本発明の遺伝子のメチル化の決定を用いて、がんの再発を検出することができる。治療が見かけ上効果的であり得る、すなわち治療によって、利用可能な診断法、特に画像化方法で検出可能なレベル未満まで患者の腫瘍量が低減することは、がん療法の分野で一般的な問題である。しかしながら、見かけ上治療が成功したにもかかわらず、幾つかのがん細胞が残存している場合がある。見かけ上治療が成功して数年経っても、これらの細胞が増殖し、がんの再燃が起こる場合がある。そのため、治療後の或る一定期間、治療した患者を経過観察することは、出来る限り早期に再燃を検出するのに良好な医療行為である。本発明の方法は、高感度であり(特にSeptin 9は早期結腸癌を検出するのに使用することができる)、実施が容易であり、かつ非侵襲性であることから、治療したがん患者を経過観察の間、モニタリングするのに特に適している。
本発明の方法の一態様では、遺伝子がSEPTIN9(配列番号1)又はRASSF2a(配列番号16)である。
本発明の方法の別の態様では、遺伝子がSEPTIN9(配列番号1)である。
本発明の方法の別の態様では、遺伝子がRASSF2A(配列番号16)である。
本発明の更なる好ましい実施の形態では、上記の方法はSEPTIN9及びRASSF2Aの両方のメチル化DNAのレベルの測定に基づくものである。
本発明の方法の別の態様では、がんが結腸がん及び結腸直腸がんからなる群から選択される。一実施の形態では、がんの病期が第I期結腸直腸がんである。別の実施の形態では、がんの病期が第II期結腸直腸がんである。別の実施の形態では、がんが第III期結腸直腸がんである。別の実施の形態において、がんが第IV期結腸直腸がんである。
本発明の方法の別の態様では、治療が、外科手術又は切除、免疫療法、放射線療法、化学療法、固形腫瘍を標的とする治療法、軟部組織腫瘍を標的とする治療法、及び血液細胞を標的とする治療法からなる群から選択される。
本発明の方法の別の態様では、治療が被験体におけるがん/腫瘍の領域に限定するものである。本発明の方法の別の態様では、治療が被験体におけるがん/腫瘍の領域に限定するものではない。
「局所治療」という用語は好ましくは、腫瘍の外科的切除及び/又は放射線療法を指す。「非局所治療」という用語は全身治療と同義であり、好ましくは化学療法及び/又は免疫療法を指す。
本発明の方法の別の態様では、生体サンプルは組織、血液、糞便、尿及び肺洗浄液、乳房、前立腺、結腸、直腸、又はこれらの組織の組合せからなる群から選択される。一実施の形態では、サンプルは血清又は血漿である。血清又は血漿の使用が好ましい。
本発明の方法の別の態様では、メチル化ゲノムDNA又はその断片が、定量的に又は一部定量的に測定される。本発明の方法の別の態様では、メチル化ゲノムDNA又は断片が、定性的に又は一部定性的に測定される。本発明の方法の別の態様では、メチル化ゲノムDNA又は断片が、一部定量的かつ一部定性的に、又は半定量的に測定される。
本発明の方法の別の態様では、メチル化ゲノムDNA又は断片の測定が、生体サンプル由来のゲノムDNAを、該ゲノムDNAの少なくとも1つの標的領域内でメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別する少なくとも1つの試薬又は試薬群に接触させることを含み、該標的領域が、配列番号1、2、3又は16の少なくとも9個、少なくとも16個又は少なくとも25個の連続したヌクレオチドの配列を含むか、又はストリンジェントな条件下で該配列とハイブリダイズし、該連続したヌクレオチドが、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む。一実施の形態では、b)におけるゲノムDNA又はその断片の接触が、重亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩及びこれらの組合せからなる群から選択される試薬の使用を含む。
本発明の方法の別の態様は、a)生体サンプルからゲノムDNA又はその断片を抽出するか又は別の方法で単離することと、b)抽出又は単離したゲノムDNA又はその断片を1つ又は複数の試薬で処理することであって、その5位でメチル化していないシトシン塩基をウラシル又はハイブリダイゼーション特性に関してシトシンと検出可能に異なる別の塩基に変換することと、c)処理ゲノムDNA又は処理断片を、増幅酵素、及び該処理配列若しくはその相補体に相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下で該処理配列若しくはその相補体とハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも11ヌクレオチド、少なくとも12ヌクレオチド、少なくとも13ヌクレオチド、少なくとも14ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド又は少なくとも50ヌクレオチドの連続した配列を含む少なくとも1つのプライマーに接触させることであって、該処理ゲノムDNA又はその断片が少なくとも1つの増幅産物を産生するように増幅するか、又は増幅しないことと、d)上記増幅産物の有無又は量又は特性に基づき、遺伝子の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態若しくはメチル化レベル、又は遺伝子の複数のCpGジヌクレオチドの平均メチル化状態若しくはメチル化レベル、若しくはそれを反映する値を決定することと、を含む。上記で言及される処理ゲノムDNAは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号19及び配列番号20からなる群から選択されるのが好ましい。
本発明の方法の別の態様は、a)生体サンプルからゲノムDNA又はその断片を抽出するか又は別の方法で単離することと、b)抽出又は単離したゲノムDNA又はその断片を1つ又は複数のメチル化感受性制限酵素で消化することと、c)b)のDNA制限酵素消化物を、増幅酵素、及び遺伝子の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む配列の増幅に適した少なくとも2つのプライマーに接触させることと、d)増幅産物の有無又は種類に基づき、遺伝子の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態又はメチル化レベルを求めることと、を含む。
メチル化ゲノムDNAのレベルを測定する好ましい方法に関する更なる情報が本願の下記に更に見ることができる。本発明の特に好ましい実施の形態では、ゲノムDNAのメチル化レベルを測定する方法はMethyLight(商標)、HeavyMethl(商標)又はメチル化特異的PCRである。
別の態様では、本発明は、がん被験体の予後の決定に使用される、メチル化ゲノムSEPTIN9核酸又は該核酸及びそれに相補的な配列の少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも25個又は少なくとも50個の連続したヌクレオチドを含む断片を提供する。本発明の別の実施の形態は、がん被験体の予後の決定に使用される、メチル化ゲノムRASSF2A核酸又は該核酸及びそれに相補的な配列の少なくとも9個、少なくとも16個、少なくとも25個又は少なくとも50個の連続したヌクレオチドを含む断片を提供する。一実施の形態では、被験体が結腸直腸がんを有する。
本発明の別の態様では、がん被験体の予後の決定へのメチル化ゲノムSEPTIN9核酸又は該核酸及びそれに相補的な配列の少なくとも9個、少なくとも16個、少なくとも25個又は少なくとも50個の連続したヌクレオチドを含む断片の使用を提供する。一実施の形態では、被験体が結腸直腸がんを有する。
別の態様では、本発明は、がん被験体の予後を決定するのに使用される、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも25個又は少なくとも50個の連続したヌクレオチド又はその相補体を含む、バイサルファイト処理ゲノムSEPTIN9若しくはRASSF2A DNA核酸を提供する。好ましくは、バイサルファイト処理SEPTIN9又はRASSF2A DNAの配列は配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号19又は配列番号20によって規定される。一実施の形態では、連続した塩基配列が少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列、TpGジヌクレオチド配列又はCpAジヌクレオチド配列を含む。
別の態様では、本発明は、がん被験体の予後の決定、がん被験体に合った薬物治療の決定、がん被験体由来の腫瘍が、腫瘍が侵攻性であるか若しくは転移能を有すること若しくは該被験体の生存時間の低減を示すかの判定、被験体における侵攻性のがんの検出、がん治療に対するがん被験体の選別、又は被験体における腫瘍細胞量若しくはがん量の決定用のキットであって、a)遺伝子又はメチル化ゲノムDNAの転写産物とストリンジェントな条件又は適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと、b)ハイブリダイゼーションを検出する手段と、を備える、キットを提供する。一実施の形態では、遺伝子又はメチル化ゲノムDNAがSEPTIN9である。一実施の形態では、遺伝子又はメチル化ゲノムDNAがRASSF2Aである。
別の態様では、本発明は、がん被験体の予後の決定、がん被験体に合った薬物治療の決定、がん被験体由来の腫瘍が、腫瘍が侵攻性であるか若しくは転移能を有すること若しくは該被験体の生存時間の低減を示すかの判定、被験体における侵攻性のがんの検出、がん治療に対するがん被験体の選別、又は被験体における腫瘍細胞量若しくはがん量の決定用のキットであって、(a)バイサルファイト試薬と、(b)それぞれの場合で配列がSEPTIN9配列又はRASSF2A遺伝子の少なくとも9ヌクレオチド長、少なくとも10ヌクレオチド長、少なくとも11ヌクレオチド長、少なくとも12ヌクレオチド長、少なくとも13ヌクレオチド長、少なくとも14ヌクレオチド長、少なくとも15ヌクレオチド長、少なくとも16ヌクレオチド長、少なくとも17ヌクレオチド長、少なくとも19ヌクレオチド長、少なくとも20ヌクレオチド長、少なくとも25ヌクレオチド長又は少なくとも50ヌクレオチド長のセグメントと同一であるか、これに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする2つのオリゴヌクレオチドを含有する少なくとも1組のオリゴヌクレオチドと、を備える、キットを提供する。
他の態様では、本発明はがん被験体の予後の決定への本明細書に記載の方法、本明細書に記載の核酸及び/又は本明細書に記載のキットの使用を提供する。
本発明は、被験体においてがんを有する被験体の予後を決定する方法であって、少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の発現レベルを決定することを含み、ゲノム配列ががんにおいてメチル化されており、非がん組織においてメチル化されていない、方法を提供する。遺伝子をコードするゲノムDNAのメチル化又は特にそのプロモータ領域のメチル化が上記遺伝子の発現を低減する。結果として、対象の遺伝子のメチル化によって、その低発現に類似した診断情報が与えられる。このため、上記被験体から単離された生体サンプル中の遺伝子のメチル化及び/又は発現のレベル又は量は上記被験体の予後の指標となる。本発明の様々な態様では、遺伝子マーカーが提供され、該マーカーの発現分析によって、がんを有する被験体の予後の決定が可能となる。一実施の形態では、上記発現レベルが、上記遺伝子から転写されるmRNAの有無又はレベルを検出することによって決定される。更なる実施の形態では、上記発現レベルが、上記遺伝子又はその配列によってコードされるポリペプチドの有無又はレベルを検出することによって決定される。
本発明は、被験体において結腸直腸がん(CRC)又は結腸がんを有する被験体の予後を決定する方法であって、上記被験体から単離された血漿中のSeptin 9(Septin9)又はRASSF2A DNAメチル化レベルを決定することを含み、原発腫瘍を切除した後のメチル化状況が上記被験体の予後の指標となる、方法を提供する。一実施の形態では、切除が治癒的である。
本明細書に記載の例では、原発腫瘍を切除した後、Septin9バイオマーカーが、調査した第II期のCRCのおよそ73%及び第III期の患者の僅か20%で低減することが示された。治癒的(curative intention)治療後のCRC患者でのSeptin9の存在を疾患の再発の早期予後指標として使用することができる。Septin9が原発腫瘍を切除した後でも検出可能であることは、Septin9によって高感度に検出することができる腫瘍細胞(例えば微小転移)が患者の体内に依然として存在している危険性が高いことを示す。
更なる実施の形態では、上記発現は上記遺伝子内のCpGメチル化の有無又は量を検出し、それからがんを有する上記被験体の予後を推定することによって決定される。上記方法は、i)被験体から得られた生体サンプルから単離されたゲノムDNAを、ゲノムDNAの少なくとも1つの標的領域内でメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別する、少なくとも1つの試薬又は試薬群に接触させる工程であって、上記標的領域のヌクレオチド配列が、少なくとも1つの遺伝子又はこの遺伝子群のゲノム配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む工程と、ii)がんを有する被験体の予後を決定する工程とを含む。標的領域は、少なくとも16個、少なくとも25個又は少なくとも50個の連続したヌクレオチドの配列を含むか又は該配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするのが好ましい。
上記の遺伝子の使用は、遺伝子の発現の任意の分析、mRNA発現分析又はタンパク質発現分析によって可能となり得る。一実施の形態では、がんを有する被験体の予後の決定は、アイソフォーム、断片、プロモータ又は調節要素を含む、がん組織ではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列、及びそのアンチセンス型のメチル化状況の分析によって可能となる。
本発明は、がんの進行に関連する特徴に関して生体サンプルを分析する方法であって、核酸又はその断片をゲノム配列内でメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別することが可能な試薬又は試薬群に接触させることを特徴とする、方法を提供する。一実施の形態では、遺伝子はSEPTIN9又はRASSF2Aである。
SEPTIN9の配列は配列番号1、配列番号2又は配列番号3で規定されるのが好ましい。SEPTIN9の配列は配列番号2又は配列番号3で規定されるのがより好ましい。RASSF2Aの配列は配列番号16で規定されるのが好ましい。
本発明の好ましい実施の形態では、SEPTIN9及び/又はRASSF2Aのプロモータ領域のメチル化状況が決定される(isdetermined)。より好ましい実施の形態では、配列番号32及び/又は配列番号34によって規定されるゲノム配列に含まれる少なくとも1つのシトシンのメチル化状態が決定される。本発明の更により好ましい実施の形態では、配列番号32の21位、28位、30位、37位及び39位、並びに配列番号34の25位、29位、46位、52位、58位、70位、74位、79位及び89位のシトシンからなる群から選択される少なくとも1つのシトシンのメチル化状況が決定される。最も好ましい実施の形態では、配列番号32及び/又は配列番号34の上述の全てのシトシン位置のメチル化状況が決定される。
本発明はがんの発生に関連するゲノムDNAのエピジェネティックパラメータを確認する方法を提供する。
試験サンプルの供給源が組織又は体液、例えば組織、血液、血漿、血清、尿、肺洗浄液、糞便、肺、乳房、結腸、直腸、腸及びそれらの組合せからなる群から選択される組織及び体液等である。
とりわけ本発明は、予後診断ツールへの使用に適した、がんを有する被験体の予後を決定する方法であって、ゲノム核酸(複数の場合もある)を含む生体サンプルを得ることと、核酸(複数の場合もある)又はその断片を、被験体の核酸の標的配列内でメチル化CpGジヌクレオチド配列と非メチル化CpGジヌクレオチド配列とを識別するのに十分な試薬又は複数の試薬に接触させることであって、標的配列が、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む、遺伝子の少なくとも16個、少なくとも25個若しくは少なくとも50個の連続したヌクレオチドを含む配列を含むか、又は該配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることと、上記識別に少なくとも一部基づいて、少なくとも1つの標的CpGジヌクレオチド配列のメチル化状態、又は複数の標的CpGジヌクレオチド配列の平均メチル化状態、又は平均メチル化状態を反映する値を決定することとを含む、方法を提供する。
標的配列内でメチル化CpGジヌクレオチド配列と非メチル化CpGジヌクレオチド配列とを識別することには、少なくとも1つのかかるCpGジヌクレオチド配列の遺伝子のバイサルファイト変換されたセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる群から選択される配列内の対応する変換又は非変換ジヌクレオチド配列、及び標的配列に対応するその連続領域へのメチル化状態依存的な変換又は非変換が含まれる。
更なる実施の形態では、がんを有する被験体の予後を決定する方法であって、被験体のゲノムDNAを有する生体サンプルを得ることと、ゲノムDNAを抽出することと、ゲノムDNA又はその断片を1つ又は複数の試薬で処理することであって、5位のメチル化していないシトシン塩基をウラシル又はハイブリダイゼーション特性に関してシトシンと検出可能に異なる別の塩基に変換することと、処理ゲノムDNA又はその処理断片を、増幅酵素、並びにそれぞれの場合でバイサルファイト変換されたセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる群から選択される配列に相補的であるか、又は該配列と適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の連続した配列及びその相補体を含む少なくとも2つのプライマーに接触させることであって、処理DNA又はその断片を増幅させて、増幅産物を産生するか、又は増幅させないことと、上記増幅産物の有無又は分類又は特性に基づき、ゲノム配列の少なくとも1つ、但しより好ましくは複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態、又はメチル化レベルの平均又はメチル化レベルの平均を反映する値を決定することとを含む、方法が提供される。
本明細書に記載の方法は、i)バイサルファイト変換されたセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる群から選択される配列に相補的であるか、又は該配列と適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長、少なくとも25ヌクレオチド長又は少なくとも50ヌクレオチド長の連続した配列及びその相補体を含む少なくとも1つの核酸分子をハイブリダイズすることと、ii)バイサルファイト変換されたセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる群から選択される配列に相補的であるか、又は該配列と適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長、少なくとも25ヌクレオチド長又は少なくとも50ヌクレオチド長の連続した配列及びその相補体を含む、固相に結合した少なくとも1つの核酸分子をハイブリダイズすることと、iii)バイサルファイト変換されたセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる群から選択される配列に相補的であるか、又は該配列と適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長、少なくとも25ヌクレオチド長又は少なくとも50ヌクレオチド長の連続した配列及びその相補体を含む少なくとも1つの核酸分子をハイブリダイズするとともに、少なくとも1つのヌクレオチド塩基によって少なくとも1つのかかるハイブリダイズされた核酸分子を伸長することと、iv)増幅産物をシークエンシングすることとからなる群から選択される少なくとも1つの方法の使用を含む。
更なる実施の形態では、がんを分析する(すなわち疾患の進行及び/又は患者の予後を決定する)方法であって、被験体のゲノムDNAを有する生体サンプルを得ることと、ゲノムDNAを抽出することと、ゲノム配列又は該配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からなる群から選択される1つ又は複数の配列を含むゲノムDNA又はその断片を、1つ又は複数のメチル化感受性制限酵素に接触させることであって、それによりゲノムDNAが消化され、消化断片を産生するか又はそれによっては消化されないことと、少なくとも1つのかかる断片の有無又は分類又は特性に基づき、ゲノム配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態、又はその複数のCpGジヌクレオチド配列の平均メチル化状態、又は平均メチル化状態を反映する値を決定することとを含む、方法が提供される。消化された又は消化されないゲノムDNAを上記決定前に増幅することができる。更なる実施の形態では、ゲノム配列内のシトシンのメチル化パターンの分析に対する新規のゲノム核酸配列及び化学的に修飾された核酸配列、並びにオリゴヌクレオチド及び/又はPNA−オリゴマーが提供される。
定義
「実測値/期待値の比(Expected Ratio)」(「O/E比」)という用語は、特定のDNA配列内のCpGジヌクレオチドの頻度を表し、それぞれの断片に関して[CpG部位の数/(C塩基の数×G塩基の数)]/バンド長に対応する。
「CpG島」という用語は、(1)0.6を超えた「実測値/期待値の比」に対応するCpGジヌクレオチド頻度を有し、かつ(2)0.5を超える「GC含量」を有するという基準を満たすゲノムDNAの連続した領域を表す。CpG島の長さは、いつもというわけではないが、通常約0.2KB〜約1KB又は約2kbである。
「メチル化状態」又は「メチル化状況」という用語は、DNA配列内の1つ又は複数のCpGジヌクレオチドでの5−メチルシトシン(「5−mCyt」)の有無又は種類を表す。DNA配列内の1つ又は複数の特定のCpGメチル化部位(それぞれが2つのCpGジヌクレオチド配列を有する)でのメチル化状態としては、「非メチル化」、「完全メチル化」及び「ヘミ−メチル化」が挙げられる。
「ヘミ−メチル化」又は「ヘミメチル化」という用語は、1つの鎖だけがメチル化している二本鎖DNAのメチル化状態を表す。
本明細書で使用される場合、「AUC」という用語は、曲線下面積の略語である。特に、AUCは、受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic)(ROC)曲線下面積を表す。ROC曲線は、診断検査の異なり得る切点に関する、偽陽性率に対する真陽性率のプロットである。このプロットは、選択された切点に応じた感度と特異度との間のトレードオフを示す(任意の感度増大は、特異度の減少を伴う)。ROC曲線下面積(AUC)は、検査の正確性の評価基準である(面積が大きければ大きいほど良好であり、最適値は1であり、無作為検査は、面積が0.5の対角線上に位置するROC曲線を有する。J.P. Egan. Signal Detection Theory and ROC Analysis, Academic Press,New York, 1975を参照されたい)。
「マイクロアレイ」という用語は、当該技術分野で認識されるように、広く「DNAマイクロアレイ」と「DNAチップ(複数の場合もある)」との両方を表し、当該技術分野で認識される固体支持体を全て包含し、またその固体支持体に核酸分子を付加する方法、又はその固体支持体上で核酸を合成する方法を全て包含する。
「遺伝的パラメータ」は、その調節に更に必要となる遺伝子及び配列の突然変異及び多型である。突然変異と規定されるものは、特に挿入、欠失、点突然変異、反転及び多型、特に好ましくは一塩基変異多型(SNP)である。
「エピジェネティックパラメータ」は特に、シトシンのメチル化である。しかし、更なるエピジェネティックパラメータには、例えば記載の方法を使用して直接分析することはできないが、同様にDNAメチル化と相関するヒストンのアセチル化が含まれる。
「バイサルファイト試薬」という用語は、本明細書に開示されるようにメチル化CpGジヌクレオチド配列と非メチル化CpGジヌクレオチド配列とを識別するのに有用である、重亜硫酸塩、二亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、又はこれらの組合せを含む試薬を表す。
「メチル化アッセイ」という用語は、DNAの配列内の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態を決定する任意のアッセイを表す。
「MS.AP−PCR」という用語(メチル化感受性任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(Methylation-Sensitive Arbitrarily-Primed Polymerase Chain Reaction))は、CpGジヌクレオチドを含有する可能性が最も高く、かつGonzalgo et al., Cancer Research 57:594-599, 1997に記載の領域に焦点を当てるのに高CGプライマーを使用して、ゲノムの広域精査を可能にする当該技術分野で認識される技術を表す。
「MethyLight(商標)」という用語は、Eads et al., Cancer Res. 59:2302-2306, 1999に記載の当該技術分野で認識される蛍光ベースのリアルタイムPCR法を表す。
本明細書で実施される、その実施形態における「HeavyMethyl(商標)」アッセイという用語は、増幅プライマー間のCpG位置をカバーする、又は増幅プライマーによってカバーされる、メチル化特異的な遮断プローブ(本明細書でブロッカー(blockers)とも称される)によって、核酸サンプルのメチル化特異的な選択増幅が可能になるアッセイを表す。
本明細書で実施される、その実施形態における「HeavyMethyl(商標)MethyLight(商標)」アッセイという用語は、MethyLight(商標)アッセイを、増幅プライマー間のCpG位置をカバーするメチル化特異的な遮断プローブと組み合わせたMethyLight(商標)アッセイの変法である、HeavyMethyl(商標)MethyLight(商標)アッセイを表す。
「Ms−SNuPE」(メチル化感受性単一ヌクレオチドプライマー伸長)という用語は、Gonzalgo & Jones, Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997で記載された当該技術分野で認識されるアッセイを表す。
「MSP」(メチル化特異的PCR)という用語は、Herman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9821-9826, 1996及び米国特許第5,786,146号で記載された当該技術分野で認識されるメチル化アッセイを表す。
「COBRA」(複合バイサルファイト制限分析)という用語は、Xiong & Laird, Nucleic Acids Res. 25:2532-2534, 1997で記載された当該技術分野で認識されるメチル化アッセイを表す。
「MCA」(メチル化CpG島増幅)という用語は、Toyota et al., Cancer Res. 59:2307-12, 1999、及び国際公開第00/26401号で記載されたメチル化アッセイを表す。
「ハイブリダイゼーション(hybridisation)」という用語は、オリゴヌクレオチドと、二本鎖構造を形成するサンプルDNAにおいて一連のワトソン−クリック塩基対合に沿った相補的な配列との結合と理解される。
本明細書で規定される場合、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、5×SSC/5×デンハート溶液/1.0%SDS中、68℃でハイブリダイズすること、及び0.2×SSC/0.1%SDS中、室温で洗浄することを伴うか、又は当該技術分野で認識されるその等価物(例えば、2.5×SSCバッファー中、60℃でハイブリダイゼーションを行った後に、低いバッファー濃度における37℃での幾つかの洗浄工程を行い、安定状態を保つ条件)を伴う。本明細書で規定される場合、適度にストリンジェントな条件は、3×SSC中、42℃での洗浄、又は当該技術分野で認識されるその等価物を含むことを伴う。塩濃度及び温度のパラメータを変更し、プローブと標的核酸との間に最適な同一性レベルを達成することができる。このような条件に関するガイダンスが、例えばSambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, ColdSpring Harbor Press, N.Y.、及びAusubel et al.(eds.), 1995, Current Protocols in MolecularBiology,(John Wiley & Sons, N.Y.)at Unit 2.10によって当該技術分野で利用可能である。
「メチル化特異的制限酵素」又は「メチル化感受性制限酵素」という用語は、その認識部位のメチル化状態によって選択的に核酸を消化する酵素を意味するものとする。認識部位がメチル化又はヘミメチル化されないと特異的に切断するこのような制限酵素の場合、切断が起こらないか、又は認識部位がメチル化されると効率は大幅に低減する。認識部位がメチル化されると特異的に切断するこのような制限酵素の場合、切断が起こらないか、又は認識部位がメチル化されないと効率が大幅に低減する。メチル化特異的制限酵素が好ましく、その認識配列は、CGジヌクレオチド(例えばcgcg又はcccggg)を含有する。シトシンがこのジヌクレオチドにおいて炭素原子C5でメチル化されても切断しない制限酵素が幾つかの実施形態では更に好ましい。
「非メチル化特異的制限酵素」又は「非メチル化感受性制限酵素」は、効率がほぼ同一であるメチル化状態に関係なく核酸配列を切断する制限酵素である。これらは、「メチル化非特異的制限酵素」とも呼ばれる。
複合アレイ配列に関して、「連続したヌクレオチド」という語句は、複合アレイの任意の個々の連続した配列の連続した配列領域を表すが、本明細書中の上記で規定されるように、「ノード」を含む複合アレイ配列領域は含まない。
がんの予後指標としてのがんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていないバイオマーカーという記載はその全ての転写変異体と、その全てのプロモータ及び調節要素とを含むように解釈する。さらに、バイオマーカー又は遺伝子内で複数のSNPが知られていることから、この用語はその全ての配列変異体を含むように解釈する。
概説:
本発明は、がんを有する被験体の予後を決定する方法であって、上記被験体から単離された生体サンプルにおいて、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つのバイオマーカーのメチル化及び/又は発現レベルを決定することを含み、メチル化及び/又は発現状況ががんを有する上記被験体の予後の指標となる、方法を提供する。
予後を決定する方法、並びにしたがってがん患者を治療する方法及び作用物質は、様々な基準に基づき腫瘍の病期を決定することを含む。多くの場合この決定は、組織形態の組織学的変化と、腫瘍の隣接組織への浸潤及び転移のレベルとを観察する侵襲的手法を含む。様々ながんの病期診断法又は分類法を使用して、標準的な分類基準を用いてがんの進行又は状況を評価する。
結腸直腸がんでは、これらの病期診断法は、米国がん合同委員会(American Joint Committee on Cancer)により開発された腫瘍リンパ節転移(TNM)病期診断システム(第I期〜第IV期)(AJCC Cancer Staging Manual, 6th Edition, Springer-Verlag, New York,2002)(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)及び改訂デュークス病期診断システム又はアストラ−コラー病期診断システム(第A期〜第D期)(Astler V B, Coller F A., Ann Surg 1954; 139:846-52)の2つである。両方法とも、腫瘍進行を評価するための結腸壁又は直腸壁の層を通じた原発腫瘍の隣接器官、リンパ節及び遠位部位への拡散の測定に関するものである。結腸がんでの再発リスクの推定及び治療決定は現在のところ、主に腫瘍病期診断に基づくものである。
本発明は、がん被験体の予後の決定、がん被験体に合った薬物治療の決定、がん被験体由来の腫瘍が、腫瘍が侵攻性であるか若しくは転移能を有すること若しくは該被験体の生存時間の低減を示すかの判定、被験体における侵攻性のがんの検出、がん治療に対するがん被験体の選別、又は被験体における腫瘍細胞量若しくはがん量の決定用の方法及びキットであって、上記被験体から単離された生体サンプルにおいて、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つのバイオマーカーのメチル化及び/又は発現レベルを決定することを含み、メチル化及び/又は発現状況ががんを有する上記被験体の予後の指標となる、方法及びキットを提供する。この方法は、生体サンプルからゲノムDNA又はその断片を抽出するか又は別の方法で単離することと、抽出又は単離したゲノムDNA又はその断片を1つ又は複数の試薬で処理することであって、その5位でメチル化していないシトシン塩基をウラシル又はハイブリダイゼーション特性に関してシトシンと検出可能に異なる別の塩基に変換することと、処理ゲノムDNA又は処理断片を、増幅酵素、及び処理配列若しくはその相補体に相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下で該処理配列若しくはその相補体とハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド又は少なくとも50ヌクレオチドの連続した配列を含む少なくとも1つのプライマーに接触させることであって、処理ゲノムDNA又はその断片が少なくとも1つの増幅産物を産生するように増幅するか、又は増幅しないことと、上記増幅産物の有無又は量又は特性に基づき、遺伝子の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態若しくはメチル化レベル、又は遺伝子の複数のCpGジヌクレオチドの平均メチル化状態若しくはメチル化レベル、若しくはそれを反映する値を決定することとを含む。
抽出DNAを処理する方法、DNAを増幅する方法、DNAを検出する方法及びDNAを分析する方法を本明細書で更に説明する。
本発明は、がん被験体から単離された生体サンプルにおける、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていないバイオマーカー又は遺伝子の検出、及びがん被験体に対する更なる予後診断、臨床転帰の決定又は薬物治療の決定を提供する。
本発明の方法は、a)がんを患う被験体から得られた第1の生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片のレベルを測定する工程と、b)被験体から得られた更なる生体サンプル中の遺伝子のメチル化ゲノムDNA又はその断片のレベルを測定する工程と、c)更なるサンプルで測定されたメチル化DNAのレベルと、第1のサンプルで測定されたメチル化DNAのレベルとを比較する工程とを含むことが好ましい。
一実施形態では、検出及び分析は治療前サンプルと、更には治療後サンプルとで行い、ここでの治療は、腫瘍を減少、除去、縮小、最小化又は切除する処置又は投与による患者(又は患者組織)への任意の治療である。かかる方法には、外科的切除、免疫療法、放射線療法、化学療法、固形腫瘍を標的とする治療法、レーザー療法、軟部組織腫瘍を標的とする治療法及び血液がん治療が含まれるが、これらに限定されない。この実施形態では、「治療前サンプル」が「第1のサンプル」に相当し、「治療後サンプル」が「更なるサンプル」に相当する。
治療前サンプルは治療開始前のいずれかの時点で採取してもよい。しかしながら、治療前サンプルを、処理開始前(before)1週間以内に、2週間以内に、4週間以内に又は8週間以内に採取することが好ましい。治療後サンプルは治療(treatment)開始後のいずれかの時点で採取することが好ましい。治療が化学療法である場合、治療後サンプルを患者の治療経過が完了する前に採取することが明確に(explicitly)想定されるが、但し患者は化学療法に使用される少なくとも1つの医薬化合物の少なくとも1回の投与を受けているものとする。
推奨される結腸がんの治療は腫瘍の病期診断によって決まる。第I期、第II期及び第III期は遠隔転移がないことを特徴とする。そのため、腫瘍の外科的切除が最適な治療である。第II B期、第II C期、第III期及び高リスク第II A期では、補助化学療法が推奨され得る。第IV期腫瘍では、遠隔転移の数及び位置が全ての腫瘍を除去することによって完全に治癒する可能性を示唆している場合にのみ、外科的切除が推奨される。第IV期疾患では、外科的切除は補助化学療法及び/又は新補助化学療法を伴うものである。
本発明の好ましい実施形態では、腫瘍は第I期、第II期又は第III期の結腸癌である。この場合、治療後サンプルにおける腫瘍の完全除去を示すメチル化ゲノムDNAのレベル、好ましくは検出限界未満のレベルは、外科的切除によるがんの治療が成功したことを示す。このことは患者の予後が良好であることと同義であり、好ましくは追加の治療として補助化学療法は推奨されない。
本発明の別の好ましい実施形態では、治療は、第I期、第II期若しくは第III期の腫瘍、若しくは手術可能な第IV期腫瘍の補助化学療法若しくは新補助化学療法、又は手術不能な第IV期腫瘍の全身治療としての追加の外科手術を伴わない化学療法である。この場合、治療前サンプルと比較して治療後サンプル中のメチル化ゲノムDNAのレベルの低下は好ましくは、選択された化学療法治療計画が患者の腫瘍量の低減に成功したことを示す。このことは化学療法治療計画を適応させる必要がないことを示しているのと同義である。しかしながら、治療後サンプル中のメチル化ゲノム配列のレベルが変わらないか又は更には増大している場合、このことは好ましくは、現在の治療が成功しておらず、治療計画を適応させる必要があることを示している。この実施形態では、化学療法治療計画が成功しているか又は依然として成功していないかを常に判定するのに、化学療法中の異なる時点で2つ以上の治療後サンプルを採取するのが好ましい。
本発明は、上記の方法等によって原発腫瘍を除去した場合に腫瘍細胞の検出を包含するがん被験体を予後診断する方法を提供する。このようにして本発明は、原発腫瘍を除去するのに用いた処置が成功し、完了したかの判定を提供する。さらに本発明は、腫瘍が拡散しているかを判定する方法を提供する。歴史的には、腫瘍が拡散しているかを判定する方法は、上記のがん病期診断法のような腫瘍のリンパ節での併発及びリンパ節への転移を決定する病理学的かつ組織学的な方法によるものである。本発明によって、腫瘍細胞量、がん量、腫瘍の拡散及び/又は転移等のパラメータを、第1のサンプルを採取し、そのゲノムDNAを、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない遺伝子又はバイオマーカーの存在に関して評価することと、第2のサンプルを採取し、そのゲノムDNAを、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない遺伝子又はバイオマーカーの存在に関して評価することと、腫瘍細胞又はがん細胞が被験体に残存しているかを判定することとによって決定することができ、さらにそのようにして臨床治療が必要であることが示される。
好ましい実施形態では、原発腫瘍の除去後に検出可能なレベルのバイオマーカーが存在することは、腫瘍が完全には除去されていないことを示す。より好ましくは、この状況は、腫瘍が既に周辺組織若しくはリンパ節へと局所に又は結腸、直腸若しくは盲腸以外の器官へと全身に拡散していることを示す。
或る特定の実施形態では、検出方法は定量的に、一部定量的に、定性的に、一部定性的に、又は一部定量的かつ一部定性的に行われる。
或る特定の実施形態では、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない遺伝子又はバイオマーカーはSeptin9である。或る特定の実施形態では、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない遺伝子又はバイオマーカーはRASSF2Aである。
ヒトSeptin 9遺伝子(MLLセプチン様融合タンパク質、MLLセプチン様融合タンパク質MSF−A、Slpa、Eseptin、Msf、セプチン様タンパク質卵巣/乳房セプチン(Ov/Brセプチン)及びSeptin D1としても知られる)は、コンティグAC068594.15.1.168501内の染色体17q25上に位置し、Septin遺伝子ファミリーの成員である。図13には、Septin 9遺伝子のEnsemblアノテーションが提示され、4つの転写変異体、Septin 9変異体及びQ9HC74変異体(Septin 9転写産物の切断型である)が示されている。配列番号1はSeptin 9転写産物及びQ9HC74転写産物の両方の領域とプロモータ領域とを含む上記遺伝子の配列を示す。配列番号2及び配列番号3はそれぞれ、Septin 9転写産物及びQ9HC74転写産物の高CpGプロモータ領域の配列を示すそのサブ領域である。配列番号4及び配列番号5はそれぞれ、表1に示される(すなわちCpGジヌクレオチドがメチル化されている)配列番号1の配列に対応する化学(バイサルファイト)処理したSeptin 9 DNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に対する配列である。配列番号10及び配列番号11はそれぞれ、表1に示される(すなわちCpGジヌクレオチドがメチル化されていない)配列番号1の配列に対応する化学(バイサルファイト)処理したSeptin 9 DNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に対する配列である。配列番号6及び配列番号7はそれぞれ、表1に示される(すなわちCpGジヌクレオチドがメチル化されている)配列番号2に対応する化学(バイサルファイト)処理したSeptin 9 DNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に対する配列である。配列番号12及び配列番号13はそれぞれ、表1に示される(すなわちCpGジヌクレオチドがメチル化されていない)配列番号2に対応する化学(バイサルファイト)処理したSeptin 9 DNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に対する配列である。配列番号8及び配列番号9はそれぞれ、表1に示される(すなわちCpGジヌクレオチドがメチル化されている)配列番号3の配列に対応する化学(バイサルファイト)処理したQ9HC74 DNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に対する配列である。配列番号14及び配列番号15はそれぞれ、表1に示される(すなわちCpGジヌクレオチドがメチル化されていない)配列番号3の配列に対応する化学(バイサルファイト)処理したSeptin 9 DNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に対する配列である。Septin9及びこれらの変異体は、米国特許第7,951,563号として発行された米国特許出願公開第2009−0075260号、米国特許第7,749,702号として発行された米国特許出願公開第2006−0286576号及び米国特許出願公開第2011−0039719号(これらは全て、SEPTIN9遺伝子の説明及び配列情報に関して引用することにより本明細書の一部をなすものとする)にも記載されている。Septin9遺伝子に関連する更なる配列が実施例及び本明細書の記載で説明されている。
或る特定の実施形態では、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない遺伝子又はバイオマーカーはRASSF2A(配列番号16)である。RASSF2遺伝子は、染色体位置20p13に位置し、複数のmRNA転写産物アイソフォームをコードする。Rasタンパク質ファミリーの成員はがんに関連し、RASSF2はK−Rasに結合し、RASSF2の発現は制御された細胞成長に関連する。発現の喪失によって無抑制の細胞増殖が起こり、そのためRASSF2は腫瘍抑制遺伝子である(Vos et. al. J. Biol. Chem., Vol. 278, Issue 30, 28045-28051, Jul.25, 2003)。RASSF2遺伝子は初めの2つの非コーディングエキソンに亘って遺伝子プロモータ内にCpG高密度領域を含む。この領域は同時メチル化することを特徴としており、さらにそのメチル化は胃癌及び結腸癌の発生に関連している。Hesson et al.(Oncogene. 2005 Jun. 2; 24(24):3987-94.)は、結腸がん細胞株のCOBRA分析及びバイサルファイトシークエンシングを用いて、CpG島を同時メチル化するものとみなした。さらに、Hesson et al.は、分析した結腸がん細胞株の30個の内の21個(70%)がRASSF2Aプロモータ領域内でメチル化していたことをMSP分析によって確認した。更なる研究によって、RASSF2メチル化が胃がん(Endoh et. al Br J. Cancer. 2005 Dec. 12; 93(12): 1395-9)及び鼻咽頭がん(Zhang et. al Int J. Cancer. 2007 Jan. 1; 120(1):32-8)に関連し得ることが示唆されている。配列番号16はRASSF2Aの配列を示す。配列番号17及び配列番号18はそれぞれ、表1に示される(すなわちCpGジヌクレオチドがメチル化されている)配列番号16に対応する化学(バイサルファイト)処理したRASSF2A DNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に対する配列である。配列番号19及び配列番号20はそれぞれ、表1に示される(すなわちCpGジヌクレオチドがメチル化されていない)配列番号16の配列に対応する化学(バイサルファイト)処理したRASSF2A DNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に対する配列である。配列番号16で示される全ゲノム遺伝子配列は、米国特許出願公開第2010−0092953号(これはRASSF2A遺伝子の説明及び配列情報に関して引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されている。
本発明の方法を用いて、定量的に、一部定量的に、定性的に、一部定性的に、又は一部定量的かつ一部定性的に決定される第I期又は第II期の被験体の治療後サンプル中の遺伝子又はバイオマーカーの存在は、予後不良又はより積極的ながん治療が必要であることを示す。
本発明の方法を用いて、第III期の被験体の治療後サンプル中の遺伝子又はバイオマーカーの同等の又はより高いレベルは、遺伝子又はバイオマーカーのレベルが増大傾向にあるかを確認するために、本明細書に記載の方法を用いた継続的なモニタリングが必要であることを示す。
本発明の方法は、治療後サンプル中の遺伝子又はバイオマーカーのレベルの変化の検出だけでなく、被験体の治療応答又は治療を行わないこと(non-treatment)の有効性の継続的なモニタリング又は監視をもたらし、がん又は腫瘍が寛解しているか又は再発しているかを判定するのに使用することができる。
DNAのバイサルファイト修飾は、CpGメチル化状況を評価するのに使用される当該技術分野で認識されたツールである。5−メチルシトシンの存在に関してDNAを分析するのに最も頻繁に使用される方法は、バイサルファイトとシトシンとの反応に基づいており、これにより続くアルカリ加水分解の際、シトシンが塩基対合挙動においてチミンに対応するウラシルへと変換される。しかしながら重要なことには、5−メチルシトシンはこれらの条件下では修飾されないままである。結果として、ここでは元々そのハイブリダイゼーション挙動ではシトシンとは識別することができないメチルシトシンを、標準的な当該技術分野で認識された分子生物学的技法を用いて、例えば増幅及びハイブリダイゼーションにより、又はシークエンシングにより残る唯一のシトシンとして検出することができるように、元のDNAが変換される。これらの技法は全て、異なる塩基対合特性に基づいており、ここではそれを十分に活用することができる。
当該技術分野で認識される5−メチルシトシンを検出する方法の概略は、Rein, T., et al., Nucleic Acids Res., 26:2255, 1998で与えられる。
幾つかの例外を除いて(例えばZeschnigk M, et al., Eur J Hum Genet. 5:94-98, 1997)、バイサルファイト技法は、現在研究においてのみ使用されている。概して、バイサルファイト処理後に、既知の遺伝子の短く特異的な断片を増幅し、完全にシークエンシングして(Olek & Walter, Nat Genet. 1997 17:275-6, 1997)、1つ又は複数のプライマー伸長反応を行い(Gonzalgo & Jones, Nucleic Acids Res., 25:2529-31, 1997、国際公開第95/00669号、米国特許第6,251,594号)、個々のシトシン位置を分析するか、又は酵素消化によって処理する(Xiong & Laird, Nucleic Acids Res., 25:2532-4, 1997)。ハイブリダイゼーションによる検出も、当該技術分野で記載されている(Olek et al.、国際公開第99/28498号)。さらに、個々の遺伝子に対するメチル化検出のためのバイサルファイト技法の使用が記載されている(Grigg & Clark, Bioessays, 16:431-6, 1994、Zeschnigk M, et al., Hum Mol Genet., 6:387-95, 1997、Feil R, et al., Nucleic Acids Res., 22:695-, 1994、Martin V, et al., Gene, 157:261-4, 1995、国際公開第9746705号及び国際公開第9515373号)。
本発明は、ゲノム配列内のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状況を決定するための1つ又は複数のメチル化アッセイと組み合わせたバイサルファイト技法の使用を提供する。ゲノムCpGジヌクレオチドをメチル化又は非メチル化(代替的には、それぞれ上方メチル化及び下方メチル化として知られている)することができる。しかし、本発明の方法は、不均一性を有する生体サンプル(例えば血液又は精液のバックグラウンド内の低濃度の腫瘍細胞)の分析に好適である。したがって、このようなサンプル内のCpG位置のメチル化状況を分析する際、当業者は、メチル化状態に対して特定のCpG位置のメチル化のレベル(例えばパーセント、分数、比、割合又は程度)を決定するのに定量的アッセイを使用してもよい。したがって、「メチル化状況」又は「メチル化状態」という用語は、CpG位置のメチル化度を反映する値も意味するものとする。特に記述がない限り、「高メチル化」又は「上方メチル化」という用語は、特定のカットオフ点のメチル化レベルを超えるメチル化レベルを意味するものとし、上記カットオフは、所定の集団に対する平均若しくは中央値のメチル化レベルを表す値であり得るか、又は最適化されたカットオフレベルであるのが好ましい。「カットオフ」は、本明細書で「閾値」とも称される。本発明に関して、「メチル化」、「高メチル化」又は「上方メチル化」という用語は、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列内、及び(例えばプロモータ又は調節領域において)これらと関連する全てのCpG位置に対して、カットオフを超えるメチル化レベルが、0%(又はそれと同等の)メチル化であることを含むものとする。
本発明によると、ゲノム配列内のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状況の決定は、がんを有する被験体の予後の決定に有用である。
メチル化アッセイ法。
様々なメチル化アッセイ法が当該技術分野で既知であり、本発明と併せて使用することができる。これらのアッセイによって、DNA配列内の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド(例えばCpG島)のメチル化状態の決定が可能になる。このようなアッセイは、数ある技法の中でもバイサルファイト処理DNAのDNAシークエンシング、(配列特異的な増幅のための)PCR、サザンブロット分析、及びメチル化感受性制限酵素の使用を伴う。
例えば、バイサルファイト処理を利用することによって、DNAメチル化パターンの分析及び5−メチルシトシン分布のためのゲノムシークエンシングを単純化している(Frommer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1827-1831, 1992)。さらに、バイサルファイト変換されたDNAから増幅したPCR産物の制限酵素消化、例えばSadri & Hornsby(Nucl. Acids Res.24:5058-5059, 1996)に記載されている方法、又は複合バイサルファイト制限分析(COBRA)(Xiong& Laird, Nucleic Acids Res. 25:2532-2534, 1997)を利用する。
COBRA。
COBRA(商標)分析は、少量のゲノムDNAで特定遺伝子座のDNAメチル化レベルを決定するのに有用である定量的メチル化アッセイである(Xiong & Laird, Nucleic Acids Res. 25:2532-2534, 1997)。要するに、制限酵素消化を利用して、重亜硫酸ナトリウム処理したDNAのPCR産物においてメチル化依存的配列差異を明らかにする。初めに、Frommer et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA89:1827-1831, 1992)で記載された手法に従った標準的なバイサルファイト処理によって、ゲノムDNAにメチル化依存的配列差異を導入する。それから、対象となるCpG島に特異的なプライマーを使用して、バイサルファイト変換したDNAのPCR増幅を行った後、制限エンドヌクレアーゼ消化、ゲル電気泳動、及び特異的な標識ハイブリダイゼーションプローブを使用した検出を行う。元のDNAサンプルのメチル化レベルは、広範なDNAメチル化レベルにわたって一次定量的に、消化及び非消化PCR産物の相対量で表す。また、この技法は確実に、顕微解剖したパラフィン包埋組織サンプルから得られたDNAに適用することができる。
COBRA(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なCOBRA(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又はバイサルファイト処理DNA配列若しくはCpG島)に関するPCRプライマー、制限酵素及び適切なバッファー、遺伝子ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチド、対照ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプローブのためのキナーゼ標識キット、及び標識ヌクレオチドが含まれ得る。また、バイサルファイト変換試薬には、DNA変性バッファー、スルホン化バッファー、DNA回収試薬又はキット(例えば析出カラム、限外濾過カラム、アフィニティカラム)、脱スルホン化バッファー、及びDNA回収成分が含まれ得る。
好ましくは、「MethyLight(商標)」等のアッセイ(蛍光ベースのリアルタイムPCR法)(Eads et al., Cancer Res. 59:2302-2306, 1999)、Ms−SNuPE(商標)(メチル化感受性単一ヌクレオチドプライマー伸長)反応(Gonzalgo & Jones, Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997)、メチル化特異的PCR(「MSP」、Herman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9821-9826, 1996、米国特許第5,786,146号)、及びメチル化CpG島増幅(「MCA」、Toyota et al., Cancer Res. 59:2307-12, 1999)を、単独で又は他のこれらの方法と組み合わせて使用する。
「HeavyMethyl(商標)」アッセイ法は、バイサルファイト処理DNAのメチル化特異的増幅に基づき、メチル化の差異を評価する定量的方法である。増幅プライマー間のCpG位置をカバーする、又は増幅プライマーによってカバーされる、メチル化特異的な遮断プローブ(本明細書でブロッカーとも称される)によって、核酸サンプルのメチル化特異的な選択増幅が可能になる。
本明細書で実施される、その実施形態における「HeavyMethyl(商標)MethyLight(商標)」アッセイという用語は、MethyLight(商標)アッセイを、増幅プライマー間のCpG位置をカバーするメチル化特異的な遮断プローブと組み合わせたMethyLight(商標)アッセイの変法である、HeavyMethyl(商標)MethyLight(商標)アッセイを表す。HeavyMethyl(商標)アッセイは、メチル化特異的な増幅プライマーと組み合わせて使用することもできる。
HeavyMethyl(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なMethyLight(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又はバイサルファイト処理DNA配列若しくはCpG島)に関するPCRプライマー、遮断オリゴヌクレオチド、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、並びにTaqポリメラーゼが含まれ得る。
MSP。
MSP(メチル化特異的PCR)によって、メチル化感受性制限酵素の使用と関係なく、CpG島内の実質的に任意の群のCpG部位のメチル化状況の評価が可能になる(Herman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9821-9826, 1996、米国特許第5,786,146号)。要するに、メチル化シトシンではなく、全ての非メチル化シトシンをウラシルに変換する重亜硫酸ナトリウムによってDNAを修飾し、その後非メチル化DNAに対してメチル化DNAに特異的なプライマーで増幅する。ごく少量のDNAしか必要としないMSPは、所定のCpG島座の0.1%メチル化対立遺伝子に感受性であり、パラフィン包埋サンプルから抽出したDNAで行うことができる。MSP分析に典型的な試薬(例えば典型的なMSPベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又はバイサルファイト処理DNA配列若しくはCpG島)に関するメチル化PCRプライマー及び非メチル化PCRプライマー、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、並びに特異的プローブが含まれ得る。
MethyLight(商標)。
MethyLight(商標)アッセイは、PCR工程後に更に操作を必要としない蛍光ベースのリアルタイムPCR(TaqMan(商標))法を利用するハイスループット定量的メチル化アッセイである(Eads et al., Cancer Res. 59:2302-2306, 1999)。要するに、MethyLight(商標)プロセスはゲノムDNAの混合サンプルから始め、これは、標準的な手法に従って、重亜硫酸ナトリウム反応中にメチル化依存的な配列差異がある混合プールに変換される(バイサルファイトプロセスによって、非メチル化シトシン残基がウラシルに変換される)。それから、蛍光ベースのPCRを「偏向(biased:バイアス)」(既知のCpGジヌクレオチドと重複するPCRプライマーによる)反応中に行う。配列識別(discrimination)は、増幅プロセスのレベルと蛍光検出プロセスのレベルとの両方で行うことができる。
MethyLight(商標)アッセイは、ゲノムDNAサンプルにおけるメチル化パターンに関する定量的検査として使用してもよく、配列識別はプローブハイブリダイゼーションのレベルで起こる。この定量的なバージョンでは、PCR反応によって、特定の推定メチル化部位と重複する蛍光プローブの存在下でメチル化特異的な増幅が与えられる。プライマーもプローブも全くCpGジヌクレオチドに重ならない反応によって、DNAの導入量に対する不偏制御が与えられる。代替的に、既知のメチル化部位を「カバー」しない対照オリゴヌクレオチド(HeavyMethyl(商標)法及びMSP法の蛍光ベースのバージョン)、又は潜在的なメチル化部位をカバーするオリゴヌクレオチドのいずれかで偏向PCRプールをプローブ化することによって、ゲノムメチル化に関する定性的検査を行う。
例えば「TaqMan(商標)」、Lightcycler(商標)等の任意の好適なプローブとともにMethyLight(商標)プロセスを使用することができる。例えば、二本鎖ゲノムDNAを重亜硫酸ナトリウムで処理し、TaqMan(商標)プローブを使用して、例えばMSPプライマー及び/又はHeavyMethylブロッカーオリゴヌクレオチド及びTaqMan(商標)プローブで、2組のPCR反応の1つを行う。TaqMan(商標)プローブは、蛍光「レポータ」及び「消光(quencher:クエンサ)」分子で二重標識し、このプローブがフォワードプライマー又はリバースプライマーよりも約10℃高い温度でPCRサイクル中に溶融するように、比較的GC含量が高い領域に特異的になるように設計する。これによって、TaqMan(商標)プローブをPCRアニーリング/伸長工程中、十分なハイブリダイズ状態に維持することが可能になる。Taqポリメラーゼが、PCR中に新規の鎖を酵素的に合成するので、最終的には、アニーリングしたTaqMan(商標)プローブに達する。それから、Taqポリメラーゼ5’→3’エンドヌクレアーゼ活性によって、リアルタイム蛍光検出システムを使用して、現時点で消光していないシグナルを定量的に検出するために、蛍光レポータ分子を放出するように消化することによって、TaqMan(商標)プローブが置き換わる。
MethyLight(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なMethyLight(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又はバイサルファイト処理DNA配列若しくはCpG島)に関するPCRプライマー、TaqMan(商標)又はLightcycler(商標)プローブ、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、並びにTaqポリメラーゼが含まれ得る。
QM(商標)(定量的メチル化)アッセイは、ゲノムDNAサンプルにおけるメチル化パターンに関する代替的な定量的検査であり、配列識別はプローブハイブリダイゼーションのレベルで起こる。この定量的なバージョンでは、PCR反応によって、特定の推定メチル化部位と重複する蛍光プローブの存在下で不偏増幅が与えられる。プライマーもプローブも全くCpGジヌクレオチドに重ならない反応によって、DNAの導入量に対する不偏制御が与えられる。代替的に、既知のメチル化部位を「カバー」しない対照オリゴヌクレオチド(HeavyMethyl(商標)法及びMSP法の蛍光ベースのバージョン)、又は潜在的なメチル化部位をカバーするオリゴヌクレオチドのいずれかで偏向PCRプールをプローブ化することによって、ゲノムメチル化に関する定性的検査を行う。
増幅プロセスにおいて例えば「TaqMan(商標)」、Lightcycler(商標)等の任意の好適なプローブとともにQM(商標)プロセスを使用することができる。例えば、二本鎖ゲノムDNAを重亜硫酸ナトリウムで処理し、不偏プライマー及びTaqMan(商標)プローブに曝す。TaqMan(商標)プローブは、蛍光「レポータ」及び「消光」分子で二重標識し、このプローブがフォワードプライマー又はリバースプライマーよりも約10℃高い温度でPCRサイクル中に溶融するように、比較的GC含量が高い領域に特異的になるように設計する。これによって、TaqMan(商標)プローブをPCRアニーリング/伸長工程中、十分なハイブリダイズ状態に維持することが可能になる。Taqポリメラーゼが、PCR中に新規の鎖を酵素的に合成するので、最終的には、アニーリングしたTaqMan(商標)プローブに達する。それから、Taqポリメラーゼ5’→3’エンドヌクレアーゼ活性によって、リアルタイム蛍光検出システムを使用して、現時点で消光していないシグナルを定量的に検出するために、蛍光レポータ分子を放出するように消化することによって、TaqMan(商標)プローブが置き換わる。
QM(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なQM(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又はバイサルファイト処理DNA配列若しくはCpG島)に関するPCRプライマー、TaqMan(商標)又はLightcycler(商標)プローブ、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、並びにTaqポリメラーゼが含まれ得る。
Ms−SNuPE。
Ms−SNuPE(商標)法は、DNAのバイサルファイト処理に基づき、特定のCpG部位でのメチル化差異を評価した後に、単一ヌクレオチドプライマー伸長を行う、定量的方法である(Gonzalgo & Jones, Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997)。要するに、ゲノムDNAを重亜硫酸ナトリウムと反応させて、非メチル化シトシンをウラシルに変換させるが、5−メチルシトシンは変わらない。それから、バイサルファイト変換したDNAに特異的なPCRプライマーを使用して、所望の標的配列の増幅を行い、得られた産物を、対象となるCpG部位(複数の場合もある)のメチル化分析のための鋳型として単離及び使用する。少量のDNA(例えば顕微解剖した病理切片)を分析することができ、CpG部位のメチル化状況を決定するのに、制限酵素の利用が回避される。
Ms−SNuPE(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なMs−SNuPE(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又はバイサルファイト処理DNA配列若しくはCpG島)に関するPCRプライマー、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、ゲル抽出キット、陽性対照プライマー、特定遺伝子に対するMs−SNuPE(商標)プライマー、(Ms−SNuPE反応のための)反応バッファー並びに標識ヌクレオチドが含まれ得る。さらに、バイサルファイト変換試薬には、DNA変性バッファー、スルホン化バッファー、DNA回収試薬又はキット(例えば析出カラム、限外濾過カラム、アフィニティカラム)、脱スルホン化バッファー、及びDNA回収成分が含まれ得る。
血中のがん/腫瘍の予後指標としてのがんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていないバイオマーカーの検出には新規の有用性がある。
一態様では、本発明の方法は、以下のi)がん組織ではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化及び/又は発現を決定する工程と、ii)がんを有する被験体の予後を決定する工程とを含む。一実施形態では、これらの工程は身体組織又は血液で行われる。一実施形態では、遺伝子はSEPTIN9(配列番号1〜配列番号15、及び本明細書に記載の他の配列)であり、そのゲノム配列は非がん組織ではメチル化されておらず、がん組織ではメチル化されている。別の実施形態では、遺伝子はRASSF2A(配列番号16〜配列番号20、及び本明細書に記載の他の配列)であり、そのゲノム配列は非がん組織ではメチル化されておらず、がん組織ではメチル化されている。
本発明の方法は、それから転写したRNA又は上記RNAから翻訳したポリペプチド若しくはタンパク質の発現分析のいずれか、好ましくはmRNA発現分析又はポリペプチド発現分析によって可能になり得る。しかしながら、本発明の最も好ましい実施形態では、がんを有する被験体の予後の決定が、非がん組織ではメチル化されておらず、がん組織ではメチル化されている少なくとも1つの遺伝子若しくはゲノム配列、及び/又は該ゲノム配列のプロモータ若しくは調節要素のメチル化状況の分析によって可能となる。他の実施形態では、本発明は、被験体での1つ又は複数の遺伝子の発現を検出し、そこからがんを有する被験体の予後を該被験体において決定する、定性的なものと定量的なものの両方の予後診断アッセイ及び方法も提供する。他の実施形態では、1つ又は複数の遺伝子の高メチル化及び/又は低発現はがんの進行及び侵攻性に関連する。
好ましい実施形態では、術前のサンプルに3pg/mlを超えるメチル化Septin9 DNAが存在することはがんが存在することを示す。好ましくは、術後の負の(negative)Septin9メチル化シグナル(0pg/mlのメチル化Septin9)は予後が良好であることを示す(indicative)。好ましくは術後にサンプル1ml当たり0pg超から3pgまでのメチル化Septin9が存在することはがんの再発リスクが低いことを示す。好ましくは、術後の血漿1ml当たり3pg〜30pgのメチル化Septin9レベルはがんの再発リスクが中程度であることを示す。好ましくは、術(surgery)後にサンプル1ml当たり30pgを超えるメチル化Septin9が存在することは再発の(of)リスクが高いことを示す。好ましい実施形態では、術前のサンプルに3pg/mlを超えるメチル化RASSF2A DNAが存在することはがんが存在することを示す。好ましくは、術後の負のRASSF2Aメチル化シグナル(0pg/mlのメチル化RASSF2A)は予後が良好であることを示す。好ましくは術後にサンプル1ml当たり0pg超から3pgまでのメチル化RASSF2Aが存在することはがんの再発リスクが低いことを示す。好ましくは、術後の血漿1ml当たり3pg〜30pgのメチル化RASSF2Aレベルはがんの再発リスクが中程度であることを示す。好ましくは、術後にサンプル1ml当たり30pgを超えるメチル化RASSF2Aが存在することは再発のリスクが高いことを示す。好ましいサンプルは血液、腫瘍組織及び血漿である。がんは結腸直腸がんであるのが好ましい。
遺伝子又はゲノム配列をコードするmRNAの存在を検出するために、サンプルを被験体から入手する。サンプルは腫瘍の細胞性物質(cellular matter)を含む任意の好適なサンプルであり得る。好適なサンプル型には、組織、血液、血漿又は血清、及びそれらの全ての可能な組合せが含まれる。上記サンプル型は血液であるのが好ましい。サンプルを処理して、そこに含有されるRNAを抽出することができる。それから、サンプルから得られる核酸を分析する。遺伝子発現の絶対レベル及び相対レベルを決定する多くの技法が現行の技術水準で知られており、本発明に使用するのに適した一般的に使用される技法としては、in situハイブリダイゼーション(例えばFISH)、ノーザン分析、RNase保護アッセイ(RPA)、マイクロアレイ及びPCRベースの技法(定量的PCR及び示差表示PCR又は任意の他の核酸検出法等)が挙げられる。逆転写/重合連鎖反応法(RT−PCR)を使用することができる。RT−PCRの方法は当該技術分野で既知である(例えば、Watson and Fleming(上記)を参照されたい)。
RT−PCR法は、以下のように行うことができる。例えば標準的なイソチオシアネートグアニジウム法によって総細胞RNAを単離し、総RNAを逆転写する。逆転写法は、逆転写酵素及び3’末端オリゴヌクレオチドdTプライマー及び/又はランダム六量体プライマーを使用したRNA鋳型上でのDNA合成を伴う。それから、このようにして産生したcDNAをPCRによって増幅する(Belyavsky et al, Nucl Acid Res 17:2919-2932, 1989、Krug and Berger, Methods in Enzymology, Academic Press, N.Y.,Vol.152, pp. 316-325, 1987、引用することにより本明細書の一部をなすものとする)。PCR産物をハイブリダイゼーションプローブ(例えばTaqMan、LightCycler、Molecular Beacons及びScorpion)又はSYBRグリーンで検出する、RT−PCRの「リアルタイム」変法が更に好ましい。それから、検量線を参照するか、又はCt値と較正基準の値とを比較することによって、プローブ又はSYBRグリーンから検出されるシグナルを定量化する。結果を正規化するのには、ハウスキーピング遺伝子分析が使用されることが多い。
ノーザンブロット分析において、総mRNA又はポリ(A)+ mRNAを変性アガロースゲル上に泳動し、乾燥ゲル自体における又は膜上の標識プローブとのハイブリダイゼーションによって検出する。得られたシグナルは、RNA集団において標的RNAの量に比例する。
2つ以上の細胞集団又は組織からのシグナルを比較することによって、遺伝子発現レベルの相対的差異が明らかになる。シグナルと、標的RNAに対応する既知の量のin vitro転写産物を使用して作成した検量線とを比較することによって、絶対的定量化を行うことができる。発現レベルが条件に関係なく相対的に一定のままであると予測される遺伝子である、ハウスキーピング遺伝子の分析は、結果を正規化し、RNAの膜への不均衡な移動、又はゲル上のRNAの不均衡な充填によって引き起こされるあらゆる見掛けの差異を取り除くのに使用されることが多い。
ノーザン分析の第1工程は、対象となる細胞又は組織から純粋で無傷のRNAを単離することである。ノーザンブロットは、サイズによってRNAを識別するので、サンプルの完全性は、シグナルが単一バンドに局在化する程度に影響を与える。部分的に分解したRNAサンプルによって、シグナルが塗抹されるか、又は幾つかのバンドにわたって分散され、全体的に感度が失われ、データが誤って解釈される可能性がある。ノーザンブロット分析では、DNA、RNA及びオリゴヌクレオチドプローブを使用することができ、これらのプローブを標識するのが好ましい(例えば放射線標識、質量標識又は蛍光標識)。プローブではない標的RNAのサイズによって、検出バンドのサイズが決定されるため、可変長のプローブを作製するランダムプライム化標識のような方法がプローブ合成に好適である。プローブの比活性によって、感度レベルが決定されるため、比活性が高いプローブを使用するのが好ましい。
RNase保護アッセイにおいて、RNA標的及び規定長のRNAプローブを溶液中でハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション後、一本鎖核酸に特異的なRNaseでRNAを消化し、任意のハイブリダイズしていない一本鎖の標的RNA及びプローブを除去する。RNaseを不活性化し、例えば、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、RNAを分離する。無傷のRNAプローブの量は、RNA集団における標的RNAの量に比例する。RPAは、遺伝子発現の相対的及び絶対的定量化、並びにまたRNA構造(イントロン/エキソン境界及び転写開始部位等)のマッピングに使用することができる。RNase保護アッセイは、一般的に検出限界がより低いのでノーザンブロット分析よりも好ましい。
RPAに使用するアンチセンスRNAプローブは、規定の終点を有するDNA鋳型のin vitro転写によって作製し、通常は50ヌクレオチド〜600ヌクレオチドの範囲内である。標的RNAと相同ではない付加的配列を含むRNAプローブの使用によって、保護断片を完全長プローブと識別することが可能になる。一本鎖RNAプローブを作製するのが容易であり、かつRNaseによるRNA:RNA二本鎖消化に再現性及び信頼性があるので(Ausubel et al. 2003)、通常はDNAプローブの代わりにRNAプローブを使用し、比活性が高いプローブが特に好ましい。
マイクロアレイの使用が特に好ましい。マイクロアレイ分析プロセスは、2つの主要部に分けることができる。初めに、スライドガラス又は他の固体支持体上に既知の遺伝子配列を固定した後、スライドガラス(又は他の固相)上に固定した既知の遺伝子に対して、蛍光標識したcDNA(検索する配列を含む)をハイブリダイゼーションする。ハイブリダイゼーション後、蛍光マイクロアレイスキャナを使用して、アレイを精査する。異なる遺伝子の相対的蛍光強度を分析することは、遺伝子発現の差異の評価基準を与える。
準備したスライドガラス又は他の固体表面上に前合成したオリゴヌクレオチドを固定化することによって、DNAアレイを作製することができる。この場合、標準的なオリゴヌクレオチド合成法及び精製法を使用して、代表的な遺伝子配列を製造及び調製する。これらの合成遺伝子配列は、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子のRNA転写産物(複数の場合もある)に相補的であり、25ヌクレオチド〜70ヌクレオチドの範囲のより短い配列である傾向がある。代替的に固定化オリゴは、スライド表面上にin situで化学合成することができる。in situオリゴヌクレオチド合成は、適切なヌクレオチドをマイクロアレイ上のスポットに逐次付加することを伴い、ヌクレオチドを受けていないスポットは、物理的マスク又は仮想マスクを使用して、各プロセス段階中で保護される。好ましくは、上記合成核酸は、ロックド(locked)核酸である。
発現プロファイリングマイクロアレイの実験において、使用するRNA鋳型は、研究中の細胞又は組織の転写プロファイルの代表的なものである。初めに、比較する細胞集団又は組織からRNAを単離する。それから逆転写反応を介して蛍光標識cDNAを作製するために、各RNAサンプルを鋳型として使用する。cDNAの蛍光標識は、直接標識法又は間接標識法のいずれかで達成することができる。直接標識中、蛍光修飾ヌクレオチド(例えばCy(商標)3−dCTP又はCy(商標)5−dCTP)は、逆転写中にcDNAに直接組み込まれる。代替的に、間接標識は、cDNA合成中、アミノアリル修飾ヌクレオチドを組み込み、それから逆転写反応が完了した後、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル色素と、アミノアリル修飾cDNAとを結合することによって達成することができる。代替的に、プローブは、標識しなくてもよく、直接又は間接的に標識したリガンドとの特異的結合によって検出することもできる。リガンド(及びプローブ)を標識するのに適した標識及び方法は当該技術分野で既知であり、例えば既知の方法(例えばニックトランスレーション又はキナージング(kinasing))によって組み込まれ得る放射性標識が含まれる。他の好適な標識としては、ビオチン、蛍光基、化学発光基(例えばジオキセタン、特に誘発ジオキセタン)、酵素、抗体等が挙げられるが、これらに限定されない。
差次的遺伝子発現分析を行うために、様々なRNAサンプルから作製したcDNAをCy(商標)3で標識する。得られた標識cDNAを精製し、組み込まれなかったヌクレオチド、遊離色素及び残留RNAを除去する。精製後、標識cDNAサンプルをマイクロアレイとハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション中、及び洗浄手順中、多くの因子(温度、イオン強度、時間の長さ、ホルムアミド濃度を含む)によって、ハイブリダイゼーションの緊縮性を決定する。これらの因子は、例えばSambrook et al.(Molecular Cloning: ALaboratory Manual, 2nd ed., 1989)で概説される。ハイブリダイゼーション後、蛍光マイクロアレイスキャナを使用して、マイクロアレイを精査する。各スポットの蛍光強度は分析遺伝子の発現レベルを示し、明るいスポットは強く発現する遺伝子に対応し、暗いスポットは弱い発現を示す。
画像を得たら、生データを分析する必要がある。初めに、各スポットの蛍光からバックグラウンド蛍光を差し引く必要がある。それから、データを制御配列(外から加えられた核酸(好ましくはRNA又はDNA)、又は任意の非特異的ハイブリダイゼーション、アレイセットアップにおけるアレイ不完全性又は変動性、cDNA標識化、ハイブリダイゼーション又は洗浄の原因となる(account for)ハウスキーピング遺伝子パネル等)に正規化する。データの正規化によって、複数のアレイ結果の比較が可能になる。
本発明の別の態様は、本発明の方法に従ってがんを有する被験体の予後を決定するのに使用されるキットであって、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列遺伝子の転写レベルを測定する手段を備える、キットに関する。好ましい実施形態では、転写レベルを測定する手段は、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の転写産物とストリンジェントな条件又は適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む。最も好ましい実施形態では、転写レベルはノーザンブロット分析、逆転写酵素PCR、リアルタイムPCR、RNase保護及びマイクロアレイの群から選択される技法によって決定される。本発明の別の実施形態ではキットは、被験体の生体サンプルを得る及び/又は貯蔵する手段を更に備える。最も好ましくは転写レベルを測定する手段と被験体の生体サンプルとを収容するのに好適であるコンテナを更に備え、最も好ましくはキット結果を利用及び解釈するための取扱説明書を更に備えるキットが好ましい。
好ましい実施形態では、キットは、(a)ストリンジェントな条件又は適度にストリンジェントな条件下で、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の転写産物とハイブリダイズすることができる複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと、(b)コンテナ、好ましくはオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと転写産物を含む被験体の生体サンプルとを収容するのに好適であるコンテナであって、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件又は適度にストリンジェントな条件下で転写産物とハイブリダイズすることができる、コンテナと、(c)(b)のハイブリダイゼーションを検出する手段と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを備える。
キットは、別々のコンテナに入った状態で、ハイブリダイゼーションバッファー等の他の成分(オリゴヌクレオチドはプローブとして使用する)を含有してもよい。代替的に、標的領域を増幅するのにオリゴヌクレオチドを使用する場合、キットは、ポリメラーゼと、ポリメラーゼによって媒介されるプライマー伸長(PCR等)のために最適化した反応バッファーとを別々のコンテナに入った状態で含有してもよい。上記ポリメラーゼは逆転写酵素であるのが好ましい。上記キットはRnase試薬を含有するのが更に好ましい。
本発明は、上記被験体から得られたサンプルにおいて上記遺伝子配列によってコードされるポリペプチドの存在を検出する方法を更に提供する。
がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列によってコードされるポリペプチドの異常なポリペプチド発現レベルは、がんを有する被験体の予後に関連する。
本発明によれば、上記ポリペプチドの低発現は、がんを有する被験体の予後不良に関連する。
ポリペプチドを検出する当該技術分野で既知の任意の方法を使用することができる。このような方法としては、質量分析法(mass-spectrometry)、免疫拡散法、免疫電気泳動法、免疫化学法、バインダ−リガンドアッセイ、免疫組織化学技法、凝集及び補体アッセイ(例えばBasic and Clinical Immunology, Sites and Terr, eds., Appleton &Lange, Norwalk, Conn. pp 217-262, 1991(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体をエピトープ(単数又は複数)と反応させること、及び標識ポリペプチド又はその誘導体を競合的に置き換えることを含むバインダ−リガンドイムノアッセイ法が好ましい。
本発明の或る特定の実施形態は、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列によってコードされるポリペプチド(複数の場合もある)に特異的な抗体の使用を含む。
このような抗体は、がんを有する被験体の予後の決定に有用である。或る特定の実施形態では、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体の産生は、抗原(antigen)としてがんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のポリペプチドによってコードされるエピトープの使用によって誘導することができる。そのような抗体は更に、発現ポリペプチドを検出するのに使用してもよい。存在するこのようなポリペプチドのレベルは従来方法によって定量化することができる。抗体−ポリペプチド結合は、当該技術分野で既知の様々な手段(蛍光リガンド又は放射性リガンドによる標識化等)によって検出及び定量化することができる。本発明は、上述の手順を行うためのキットを更に含み、このようなキットは、研究するポリペプチドに特異的な抗体を含有する。
多くの競合ポリペプチド結合イムノアッセイ及び非競合ポリペプチド結合イムノアッセイが、当該技術分野で既知である。このようなアッセイで利用する抗体は、例えば凝集検査で使用される場合、標識されず、又は多種多様なアッセイ法を使用する場合は標識され得る。使用することができる標識としては、放射性核種、酵素、蛍光因子(fluorescers)、化学発光因子(chemiluminescers)、酵素基質又は補因子、酵素阻害剤、粒子、色素等が挙げられる。好ましいアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ、例えば酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光イムノアッセイ等が挙げられるが、これらに限定されない。当該技術分野で既知の多くの方法のいずれかによってイムノアッセイに使用するために、ポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体又はそのエピトープを作製することができる。
本方法の代替的な実施形態において、タンパク質をウェスタンブロット分析で検出することができる。上記分析は、当該技術分野で標準的なものであり、簡潔に言えば電気泳動(例えばSDS−PAGE)によってタンパク質が分離される。それから、分離タンパク質を好適な膜(又は紙)、例えばニトロセルロースに移し、電気泳動によって達成された空間的分離を維持する。その後、膜上で粘性の残る場所と結合させるために、膜を遮断剤とインキュベートする。一般的に使用される作用物質にはジェネリックタンパク質(例えば乳タンパク質)が含まれる。それから、対象となるタンパク質に特異的な抗体を添加し、上記抗体は、例えば色素又は酵素的手段(例えばアルカリホスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼ)によって検出可能に標識する。その後、膜上の抗体位置を検出する。
本方法の代替的な実施形態において、タンパク質を免疫組織化学法(サンプルにおけるプローブ特異的な抗原に抗体を使用すること)によって検出することができる。上記分析は、当該技術分野で標準的なものであり、組織における抗原の検出が免疫組織化学法として知られている一方で、培養細胞における検出は一般的に、免疫細胞化学法と呼ばれている。簡単に言うと一次抗体は、その特異的な抗原と結合することで検出する。それから、抗体−抗原複合体は、酵素結合した二次抗体によって結合する。必要となる基質及び色原体の存在下では、抗体−抗原結合部位での発色沈殿物によって、結合酵素を検出する。様々な好適なサンプルの種類、抗原−抗体親和性、抗体の種類、及び検出増大法が存在する。このため、免疫組織化学的検出又は免疫細胞化学的検出に最適な条件は、各々の場合で当業者が決定しなければいけない。
ポリペプチドに対する抗体を調製するアプローチの1つは、アミノ酸配列を化学的に合成し、それを適切な動物(通常はウサギ又はネズミ)に注射する、ポリペプチドの全て又は一部のアミノ酸配列の選択及び調製である(Milstein and Kohler Nature 256:495-497, 1975、Gulfre and Milstein, Methods in Enzymology: ImmunochemicalTechniques 73:1-46, Langone and Banatis eds., Academic Press, 1981、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする)。ポリペプチド又はそのエピトープを調製する方法としては、化学合成、組み換えDNA技法、又は生体サンプルからの単離が挙げられるが、これらに限定されない。
本方法の最終工程では、被験体の予後を決定し、それにより(mRNA又はポリペプチドの)低発現は、がんを有する被験体の予後の指標となる。「低発現」という用語は、平均、中央値又は最適化した閾値からなる群から選択され得る所定のカットオフ値よりも低い検出レベルでの発現を意味するものとする。「過剰発現」という用語は、平均、中央値又は最適化した閾値からなる群から選択され得る所定のカットオフ値よりも高い検出レベルでの発現を意味するものとする。
本発明の別の態様は、本発明の方法に従って、がんを有する被験体の予後の決定に使用するキットであって、がんのポリペプチドではメチル化されているが、非がん組織のポリペプチドではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列を検出する手段を含む、キットを提供する。ポリペプチドを検出する手段は、抗体、抗体誘導体、又は抗体断片を含むのが好ましい。標識抗体を利用するウェスタンブロッティングによって、ポリペプチドを検出するのが最も好ましい。本発明の別の実施形態ではキットは、被験体の生体サンプルを得る手段を更に含む。被験体の生体サンプルにおいてポリペプチドを検出する手段を収容するのに適したコンテナを更に含み、最も好ましくはキット結果を利用及び解釈するための取扱説明書を更に含むキットが好ましい。好ましい実施形態では、キットは、(a)がんのポリペプチドではメチル化されているが、非がん組織のポリペプチドではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列を検出する手段と、(b)上記手段と該ポリヌクレオチドを含む被験体の生体サンプルとを収容するのに好適であるコンテナであって、該手段が該ポリペプチドと複合体を形成することができる、コンテナと、(c)(b)の複合体を検出する手段と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを備える。
キットは、別々のコンテナに入った状態で、遮断、洗浄又はコーティングに適したバッファー又は溶液等の他の成分を含有してもよい。
メチル化分析
本発明の特定の実施形態は、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列内のメチル化レベル及び/又はメチル化パターンの分析の新たな適用を提供し、それによりがんを有する被験体の予後の決定が可能になる。
この方法の一実施形態では、がんを有する被験体の予後は、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の1つ又は複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状況の分析によって決定される。
一実施形態では、上記本発明の方法は、以下のi)被験体から得られた(好ましくは組織、血液、血漿又は血清から単離された)ゲノムDNAを、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列(そのプロモータ及び調節領域を含む)内のメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別する少なくとも1つの試薬又は試薬群に接触させる工程と、ii)がんを有する上記被験体の予後を決定する工程とを含む。
がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の上記1つ又は複数のCpGジヌクレオチドが、ゲノム配列で与えられる各ゲノム標的配列及びその相補体内に含まれることが好ましい。本発明は、シトシンのメチル化を分析することによって、被験体内において、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子若しくはゲノム配列及び/又はゲノム配列によるゲノム配列の遺伝的パラメータ及び/又はエピジェネティックパラメータを確認する方法を更に提供する。上記方法は、上記被験体から得られた生体サンプル中にゲノム配列を含む核酸を、標的核酸内でメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別する少なくとも1つの試薬又は試薬群に接触させることを含む。
好ましい実施形態では、上記方法は以下の工程を含む。第1の工程では、分析対象の組織サンプルを得る。供給源は任意の好適な供給源、例えば組織、血液、血漿又は血清、及びそれらの全ての可能な組合せであってもよい。上記DNA源は組織、血液、血漿又は血清であるのが好ましい。
その後、サンプルからゲノムDNAを単離する。ゲノムDNAは、市販のキットの使用を含む、当該技術分野で標準的な任意の手段によって単離してもよい。要するに、対象となるDNAが、細胞膜によってその中に封入され、生体サンプルは、酵素的手段、化学的手段又は機械的手段によって破壊及び溶解される必要がある。それから、例えばプロテイナーゼKによる消化で、DNA溶液からタンパク質及び他の汚染物質を除去してもよい。その後、溶液からゲノムDNAを回収する。塩析、有機抽出、又はDNAと固相支持体との結合を含む様々な方法によって、これを行ってもよい。方法の選択は、時間、費用、要求されるDNA量を含む幾つかの因子の影響を受ける。
サンプルDNAは膜中に封入されず(例えば血液サンプル由来の循環DNA)、DNAの単離及び/又は精製のために当該技術分野で標準的な方法を利用してもよい。このような方法としては、タンパク質変性試薬(例えばカオトロピック塩、例えば塩酸グアニジン又は尿素)、又は界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、臭化シアン)の使用が挙げられる。代替的な方法としては、エタノール析出又はプロパノール析出、特に遠心分離による減圧濃縮が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、濾過装置(例えば限外濾過、シリカ表面又はシリカ膜、磁性粒子、ポリスチロール粒子、ポリスチロール表面、正に荷電した表面、及び正に荷電した膜、荷電膜、荷電表面、荷電スイッチ膜(charged switch membranes)、荷電切り替え表面(chargedswitched surfaces))等の装置を使用してもよい。
核酸を抽出した場合、分析にはゲノム二本鎖DNAを使用する。メチル化分析は、メチル化感受性制限酵素分析及び化学試薬分析を含むが、これらに限定されない当該技術分野に既知の任意の手段によって行うことができる。
化学分析
本方法の第2の工程において、5’位で非メチル化したシトシン塩基を、ウラシル、チミン、又はハイブリダイゼーション挙動がシトシンと異なる別の塩基に変換するように、ゲノムDNAサンプルを処理する。これは、本明細書中では「前処理」又は「処理」と理解される。
バイサルファイト試薬による処理によってこれを達成するのが好ましい。「バイサルファイト試薬」という用語は、本明細書に開示されるようにメチル化CpGジヌクレオチド配列と非メチル化CpGジヌクレオチド配列とを識別するのに有用である、重亜硫酸塩、二亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、又はこれらの組合せを含む試薬を表す。上記治療方法は、当該技術分野で既知である(例えば国際出願PCT/EP2004/011715号、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする)。例えばこれらに限定されないが、n−アルキレングリコール、特にジエチレングリコールジメチルエーテル(DME)等の変性溶媒の存在下、又はジオキサン若しくはジオキサン誘導体の存在下でバイサルファイト処理を行うのが好ましい。好ましい実施形態では、変性溶媒は、1%〜35%(v/v)の濃度で使用する。例えばこれらに限定されないが、クロマン誘導体(例えば、6−ヒドロキシ−2,5,7,8,−テトラメチルクロマン2−カルボン酸、又はトリヒドロキシ安息香酸(trihydroxybenzoe acid)及びその誘導体(例えば没食子酸)等のスカベンジャの存在下でバイサルファイト反応を行うのも好ましい(国際出願PCT/EP2004/011715号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照されたい)。バイサルファイト変換は、30℃〜70℃の反応温度で行うのが好ましく、それにより反応中、短時間で85℃を超えるまで温度が増大する(国際出願PCT/EP2004/011715号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照されたい)。定量化の前にバイサルファイト処理DNAを精製するのが好ましい。例えばこれに限定されないが、限外濾過等の当該技術分野で既知の任意の手段によって、これを行ってもよく、Microcon(商標)カラム(Millipore(商標)製)によって行うのが好ましい。改良した製造業者のプロトコルに従って精製を行う(国際出願PCT/EP2004/011715号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照されたい)。
本方法の第3の工程において、本発明によるプライマーオリゴヌクレオチド組と、増幅酵素とを使用して、処理DNA断片を増幅する。1つの同じ反応容器で、幾つかのDNAセグメントの増幅を同時に行うことができる。通常、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、増幅を行う。好ましくは、上記増幅産物は、100塩基対長〜2000塩基対長である。プライマーオリゴヌクレオチド組は、それぞれの配列が、バイサルファイト配列の内の1つの塩基配列及びこれに相補的な配列の少なくとも16塩基対長のセグメントと逆相補的、同一であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含む。
この方法の代替的な実施形態では、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列内、好ましくはゲノム配列による核酸配列内の予め選択されたCpG位置のメチル化状況をメチル化特異的なプライマーオリゴヌクレオチドの使用によって検出することができる。この技法(MSP)は、Hermanへの米国特許第6,265,171号に記載されている。バイサルファイト処理DNAの増幅のためのメチル化状況に特異的なプライマーの使用によって、メチル化核酸と非メチル化核酸との識別が可能になる。MSPプライマー対は、バイサルファイト処理CpGジヌクレオチドとハイブリダイズする少なくとも1つのプライマーを含有する。したがって、上記プライマー配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。非メチル化DNAに特異的なMSPプライマーは、CpGにおけるC位の位置で「T」を含有する。好ましくはしたがって、上記プライマーの塩基配列は、バイサルファイト配列の内の1つによる処理核酸配列及びこれに相補的な配列とハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の配列を含むことが要求され、上記オリゴマーの塩基配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。本方法の更なる好ましい実施形態は、ブロッカーオリゴヌクレオチド(HeavyMethyl(商標)アッセイ)の使用を含む。このようなブロッカーオリゴヌクレオチドの使用は、Yu et al., BioTechniques 23:714-720, 1997に記載されている。遮断プローブオリゴヌクレオチドは、PCRプライマーと同時にバイサルファイト処理核酸とハイブリダイズする。遮断プローブに相補的な配列が存在する場合に核酸の増幅が抑制されるように、核酸のPCR増幅は遮断プローブの5’位で終結する。プローブは、メチル化状況に特異的にバイサルファイト処理核酸とハイブリダイズするように設計され得る。例えば非メチル化核酸集団内のメチル化核酸の検出のために、メチル化核酸の増幅抑制が望まれる場合、「CpG」に対して対象となる位置で「CpA」又は「TpA」を含む遮断プローブを使用することによって、対象となる位置で非メチル化する核酸の増幅抑制を起こす。
ブロッカーオリゴヌクレオチドを使用したPCR法のために、ポリメラーゼ媒介性増幅の効果的な破壊には、ブロッカーオリゴヌクレオチドがポリメラーゼでは伸長しないことが要求される。好ましくは、3’−デオキシオリゴヌクレオチド、すなわち「遊離」ヒドロキシル基以外で、3’位で誘導体化したオリゴヌクレオチドであるブロッカーを使用することによって、これを達成する。例えば、3’−O−アセチルオリゴヌクレオチドは、好ましいブロッカー分子クラスの代表的なものである。
さらに、ブロッカーオリゴヌクレオチドのポリメラーゼ媒介性分解を防ぐ必要がある。好ましくは、このような防止には、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を失ったポリメラーゼの使用、又は例えばブロッカー分子をヌクレアーゼ耐性にする、その5’末端(terminii)にチオエート架橋を有する修飾ブロッカーオリゴヌクレオチドの使用のいずれかが含まれる。特定の用途には、ブロッカーのこのような5’修飾は要求され得ない。例えば、ブロッカー結合部位及びプライマー結合部位が重複し、それによりプライマーが(例えば過剰なブロッカーと)結合するのを防ぐ場合、ブロッカーオリゴヌクレオチドの分解が実質的に防がれる。これは、ポリメラーゼがプライマーをブロッカーに向かって又はブロッカーを通って(5’−3’方向に)伸長させないため、通常ハイブリダイズするブロッカーオリゴヌクレオチドの分解をもたらすプロセスである。
本発明のために、及び本明細書中で行われるように、特に好ましいブロッカー/PCRの実施形態には、遮断オリゴヌクレオチドとしてのペプチド核酸(PNA)オリゴマーの使用が含まれる。このようなPNAブロッカーオリゴマーは、ポリメラーゼでは分解も伸長もしないので理想的に適している。
好ましくはしたがって、上記遮断オリゴヌクレオチドの塩基配列には、バイサルファイト配列の内の1つによる処理核酸配列及びこれに相補的な配列とハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の配列を含むことが要求され、上記オリゴヌクレオチドの塩基配列が、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含む。上記遮断オリゴヌクレオチドの塩基配列は、配列番号5、配列番号6、配列番号9又は配列番号10の1つによる処理核酸配列とハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の配列と、それに相補的な配列とを含む必要があることが特に好ましい。ここで上記オリゴヌクレオチドの塩基配列は少なくとも1つのTpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含む。
増幅によって得られる断片は、直接又は間接的に検出可能な標識を保有し得る。蛍光標識、放射性核種、又は質量分析計で検出することができる通常の質量を有する分離型分子断片の形態での標識が好ましい。上記標識が質量標識である場合、標識された増幅産物が、質量分析計でのより良好なディレクタビリディ(delectability:検出能)を可能にする、単一の正の正味電荷又は負の正味電荷を有することが好ましい。例えばマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI)によって、又は電子噴霧(electron spray)質量分析(ESI)を使用して、検出を行い可視化することができる。
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI−TOF)は、生体分子の分析に非常に効果的な進歩である(Karas & Hillenkamp, Anal Chem., 60:2299-301, 1988)。検体は吸光マトリクスに包埋される。マトリクスは、短レーザーパルスで蒸発し、これにより検体分子を非断片化して気相に移す。マトリクス分子による衝突によって、検体をイオン化する。印加電圧が、フィールドフリー飛行管へとイオンを加速させる。これらの異なる質量により、イオンが異なる速度で加速する。小さいイオンは、大きいイオンよりも早く検出器に到達する。MALDI−TOF質量分析は、ペプチド及びタンパク質の分析に十分適している。核酸の分析は幾らか難しい(Gut & Beck, Current Innovations and Future Trends, 1:147-57,1995)。核酸分析に対する感度は、ペプチドに対する感度よりもおよそ100倍小さく、断片の大きさが増大するにつれ不均衡に減少する。さらに、多価に負に荷電した骨格を有する核酸に対しては、マトリクスを介したイオン化プロセスはほとんど有効ではない。MALDI−TOF質量分析では、マトリクスの選択は、極めて重要な役割を果たす。ペプチドの脱離に対して、非常に精細な結晶体を作製する非常に効果的なマトリクスが幾つか見出されている。現在、DNAに対して幾つかの反応性マトリクスが存在するが、ペプチドと核酸との感度の差は低減されていない。しかし、ペプチドと類似になるようにDNAを化学修飾することによって、この感度の差を低減することができる。例えば、骨格の通常のリン酸塩をチオリン酸塩に置換したホスホロチオエート核酸は、単純なアルキル化化学反応を用いて電荷が中性のDNAに変換させることができる(Gut & Beck, Nucleic Acids Res. 23: 1367-73, 1995)。荷電タグとこの修飾DNAとのカップリングによって、ペプチドで見出されるのと同じレベルまでMALDI−TOF感度が増大する。荷電タグ付けの更なる利点は、非修飾基質の検出を極めて困難なものにする不純物に対する分析の安定性の増大である。
本方法の第4の工程において、処理前にCpGジヌクレオチドのメチル化状況を確かめるために、本方法の第3の工程中に得られた増幅産物を分析する。
MSP増幅によって増幅産物が得られた実施形態において、増幅産物の有無又は種類自体が、上記プライマーの塩基配列に従って、該プライマーがカバーするCpG位置のメチル化状態の指標となる。
標準的なPCR及びメチル化特異的PCRの両方によって得られた増幅産物は、例えばこれらに限定されないが、アレイ技法及びプローブベースの技法等の客観的(based-based)方法によって、並びにシークエンシング及び鋳型指向性伸長等の技法によって更に分析してもよい。
本方法の1つの実施形態において、工程3で合成された増幅産物を次に、アレイ又はオリゴヌクレオチド組、及び/又はPNAプローブ組とハイブリダイズする。これに関して、ハイブリダイゼーションは以下のように行う:ハイブリダイゼーション中に使用されるプローブ組は、少なくとも2つのオリゴヌクレオチド又はPNA−オリゴマーから構成されるのが好ましく、プロセス中、増幅産物は、予め固相と結合したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズするプローブとして働き、続いて、ハイブリダイズしなかった断片を除去し、上記オリゴヌクレオチドは、本発明の配列表で指定される塩基配列のセグメントと逆相補的又は同一である少なくとも9ヌクレオチド長の少なくとも1つの塩基配列を含有し、該セグメントは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含む。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズ部分は通常、少なくとも9ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長又は35ヌクレオチド長である。しかし、より長い分子が本発明に有用であり、このため本発明の範囲内である。
好ましい実施形態において、上記ジヌクレオチドがオリゴマーの中央部3分の1内にある。例えば、オリゴマーは、1つのCpGジヌクレオチドを含み、上記ジヌクレオチドは、13merの5’末端から5番目〜9番目のヌクレオチドであるのが好ましい。ゲノム配列からなる群から選択される配列内の各CpGジヌクレオチド、及びバイサルファイト配列内の等価位置の分析に対して、1つのオリゴヌクレオチドが存在する。上記オリゴヌクレオチドは、ペプチド核酸形態で存在していてもよい。その後、ハイブリダイズしなかった増幅産物が除去され、ハイブリダイズした増幅産物が検出される。これに関して、増幅産物に付着する標識は、オリゴヌクレオチド配列が位置する各固相位置で同定可能であるのが好ましい。
本方法のまた更なる実施形態において、CpG位置のゲノムメチル化状況は、PCR増幅プライマー(上記プライマーは、メチル化に特異的、又は標準的なものであり得る)と同時にバイサルファイト処理DNAとハイブリダイズする(上記で詳述されたように)オリゴヌクレオチドプローブで確かめることができる。
本方法の特に好ましい実施形態は、二重標識蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(ABI Prism 7700配列検出システム(Perkin Elmer Applied Biosystems, Foster City, California)を使用するTaqMan(商標)PCR)を利用した蛍光ベースのリアルタイム定量PCRの使用である(Heid et al., Genome Res. 6:986-994, 1996、米国特許第6,331,393号も参照されたい)。TaqMan(商標)PCR反応は、好ましい実施形態でフォワード増幅プライマーとリバース増幅プライマーとの間に位置する高CpG配列とハイブリダイズするように設計した、TaqMan(商標)プローブと呼ばれる非伸長性検索オリゴヌクレオチドの使用を利用する。TaqMan(商標)プローブは、TaqMan(商標)オリゴヌクレオチドのヌクレオチドに付着したリンカー部分(例えばホスホルアミダイト(phosphoramidites))と共有結合する蛍光「レポータ部分」と「消光部分」とを更に含む。バイサルファイト処理後の核酸内のメチル化分析のために、プローブが、MethyLight(商標)アッセイとしても知られる米国特許第6,331,393号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする)で記載されるように、メチル化特異的であることが要求される。また、記載の本発明とともに使用するのに適したTaqMan(商標)検出法の変法には、二重プローブ技術(LightCycler(商標))又は蛍光増幅プライマー(Sunrise(商標)技術)の使用が含まれる。これらの技法の両方は、バイサルファイト処理DNAとの使用、更にCpGジヌクレオチド内のメチル化分析に好適になるように適合し得る。
本方法の更に好ましい実施形態において、本方法の第4の工程には、鋳型指向性のオリゴヌクレオチド伸長(例えばGonzalgo & Jones, Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997に記載されるMS−SNuPE)の使用が含まれる。
本方法のまた更なる実施形態において、本方法の第4の工程には、本方法の第3の工程で生成した増幅産物のシークエンシング及びその後の配列分析が含まれる(Sanger F., et al., Proc Natl Acad Sci USA 74:5463-5467, 1977)。
本方法の一実施形態において、上記で概説された方法の最初の3つの工程に従ってゲノム核酸を単離及び処理する、すなわち:
a)被験体のゲノムDNAを有する生体サンプルを被験体から得ること、
b)ゲノムDNAを抽出、又はそうでなければ単離すること、
c)b)のゲノムDNA又はその断片を1つ又は複数の試薬で処理することであって、その5位がメチル化していないシトシン塩基を、ウラシル残基又はハイブリダイゼーション特性に関してシトシンと異なることが検出可能な別の塩基に変換すること、また、
d)c)での処理後に、メチル化特異的に、すなわちメチル化特異的プライマー又は遮断オリゴヌクレオチドを使用することによって増幅を行い、さらに、
e)上記のように、リアルタイム検出プローブによって、増幅産物の検出を行い、
f)被験体の予後を決定し、
g)好ましくは、上記のように、メチル化特異的プライマーによって、d)のその後の増幅が行われる場合、上記メチル化特異的プライマーは、バイサルファイト配列の内の1つによる処理核酸配列及びこれに相補的な配列とハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長、少なくとも6ヌクレオチド長、少なくとも25ヌクレオチド長、又は少なくとも50ヌクレオチド長の配列を含み、上記オリゴマーの塩基配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレチドを含む。
本方法の工程e)、すなわちゲノム配列による1つ又は複数のCpG位置のメチル化状況の指標となる特定の増幅産物の検出は、上記のようなリアルタイム検出法によって行われる。
メチル化感受性制限酵素分析
本発明の代替的な実施形態では、上記の第2の工程を、メチル化感受性制限酵素分析又はメチル化特異的制限酵素分析を用いて行うことができる。メチル化感受性制限酵素試薬、又は標的領域内でメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別するメチル化感受性制限酵素試薬を含む制限酵素試薬群を、メチル化を決定するのに利用する方法、例えばこれに限定されないが、DMHが当該技術分野で既知である。
好ましい実施形態において、DNAは、メチル化感受性制限酵素による処理の前に切断され得る。このような方法は、当該技術分野で既知であり、物理的手段及び酵素的手段の両方を含み得る。メチル化感受性ではない1つ又は複数の制限酵素の使用が特に好ましく、その認識部位は高ATであり、CGジヌクレオチドを含まない。このような酵素の使用によって、断片化DNAにおけるCpG島及び高CpG領域の変換が可能になる。非メチル化特異的制限酵素は、MseI、BfaI、Csp6I、Tru1I、Tvu1I、Tru9I、Tvu9I、MaeI及びXspIからなる群から選択されるのが好ましい。2つ又は3つのこのような酵素の使用が特に好ましい。MseI、BfaI及びCsp6Iの組合せの使用が特に好ましい。
それから、続く酵素増幅を容易にするために、断片化DNAをアダプタオリゴヌクレオチドにライゲートすることができる。平滑末端DNA断片及び付着末端DNA断片へのオリゴヌクレオチドのライゲーションは、当該技術分野で既知であり、(例えば仔ウシ又はエビのアルカリホスファターゼを使用した)末端の脱リン酸化手段、及びdATPの存在下でリガーゼ酵素(例えばT4 DNAリガーゼ)を使用した続くライゲーションによって行われる。アダプタオリゴヌクレオチドは通常、少なくとも18塩基対長である。
次いで、第3の工程において、1つ又は複数のメチル化感受性制限酵素で、DNA(又はその断片)を消化する。制限部位でのDNAの加水分解が、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の特定CpGジヌクレオチドのメチル化状況の情報を与えるように、消化が行われる。
好ましくは、メチル化特異的制限酵素は、Bsi E1、Hga I HinPI、Hpy99I、Ava I、Bce AI、Bsa HI、BisI、BstUI、BshI236I、AccII、BstFNI、McrBC、GlaI、MvnI、HpaII(HapII)、HhaI、AciI、SmaI、HinP1I、HpyCH4IV、EagI及び2つ以上の上記酵素の混合物からなる群から選択される。制限酵素BstUI、HpaII、HpyCH4IV及びHinP1Iを含有する混合物が好ましい。
任意ではあるが、好ましい実施形態である第4の工程において、制限断片を増幅する。ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、これを行うのが好ましく、上記増幅産物は、上述のように好適な検出可能な標識、すなわちフルオロフォア標識、放射性核種及び質量標識を保有し得る。増幅酵素と、それぞれの場合で上記ゲノム配列を含む群から選択される配列に相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも16ヌクレオチド長の連続した配列、並びにその相補体を含む少なくとも2つのプライマーとによる増幅が特に好ましい。好ましくは、上記連続した配列は、少なくとも16ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長又は25ヌクレオチド長である。代替的な実施形態では、上記プライマーは、断片と連結した任意のアダプタに相補的であり得る。
第5の工程において、増幅産物を検出する。例えばこれらに限定されないが、ゲル電気泳動分析、ハイブリダイゼーション分析、PCR産物内の検出可能なタグの組み込み、DNAアレイ分析、MALDI又はESI分析等の当該技術分野で標準的な任意の手段によって検出が行われ得る。好ましくは、それぞれの場合で上記ゲノム配列を含む群から選択される配列に相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも16ヌクレオチド長の連続した配列、並びにその相補体を含む少なくとも1つの核酸又はペプチド核酸とのハイブリダイゼーションによって、上記検出が行われる。好ましくは、上記連続した配列は、少なくとも16ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長又は25ヌクレオチド長である。
ゲノム核酸のメチル化状態又はメチル化レベルの決定に続いて、がんを有する被験体の予後を、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態若しくはメチル化レベル、又はゲノム配列の複数のCpGジヌクレオチド配列の平均メチル化状態若しくはそれを反映する値に基づき推定する。ここでメチル化はがんを有する被験体の予後に関連する。上記メチル化を定量的手段によって決定する場合、上記メチル化の存在を決定するカットオフ点は好ましくはゼロである(すなわち、サンプルが任意のメチル化度を示す場合、サンプルは分析したCpG位置でメチル化状況を有すると決定される)。それにもかかわらず、当業者は、特に好ましい感度又は特異度のアッセイを与えるために、上記カットオフ値を調整することを望み得ると予測される。したがって、上記カットオフ値は増大してもよく(このようにして特異度を増大させる)、上記カットオフ値は、0%〜5%、5%〜10%、10%〜15%、15%〜20%、20%〜30%及び30%〜50%からなる群から選択される範囲内にあり得る。カットオフ値は、少なくとも0.1%、1%、10%、15%、25%及び30%が特に好ましい。
本明細書で使用される「予後」という用語は、予測される疾患の進行(侵攻性及び転移能を含むが、これらに限定されない)及び/又は予測される患者の生存時間の指標を意味するものと解釈される。
本発明に関して、「侵攻性」という用語は、術後の再燃の可能性が高いこと、患者生存が平均未満又は中央値未満であること、無疾患生存が平均未満又は中央値未満であること、無再燃生存が平均未満又は中央値未満であること、腫瘍関連合併症の平均を超えること、腫瘍又は転移の進行が早いことの1つ又は複数を意味すると解釈される。
特に指定のない限り、本明細書で使用される「生存(survival)」という用語は、以下のもの全てを含むと解釈される:全生存としても知られる死亡するまでの生存(上記死亡は原因又は腫瘍に関連するものかを問わない);「無再発生存」(ここでの「再発」という用語には局所再発及び遠隔再発の両方が含まれるとする);無転移生存;無疾患生存(ここでの「疾患」という用語には、がんとそれに伴う疾患とが含まれるとされる)。上記生存の長さは、既定の開始点(例えば診断時点又は治療開始時点)及び終了点(例えば死亡、再発又は転移)を参照して算出することができる。
開示される本発明はゲノム配列に由来する処理核酸を提供する。ここでの処理は、がん又は腫瘍を有する被験体の予後を決定するのに用いられる、ゲノムDNA配列の少なくとも1つのメチル化していないシトシン塩基をウラシル又はハイブリダイゼーションに関してシトシンと検出可能に異なる別の塩基に変換するのに適したものである。対象となるゲノム配列は、1つ又は複数の連続したメチル化CpG位置を含み得る。核酸(nucleicacid)の上記処理は、重亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩及びそれらの組合せからなる群から選択される試薬の使用を含むのが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、本発明は、バイサルファイト配列からなる群から、特に配列番号5、配列番号7、配列番号10〜配列番号13及び配列番号18〜配列番号20によって規定される配列から(from)選択される配列の連続した少なくとも16ヌクレオチド塩基長の配列を含む非自然発生的な修飾核酸を提供する。本発明の更に好ましい実施形態では、上記核酸は、バイサルファイト配列に開示された核酸配列の少なくとも50塩基対、100塩基対、150塩基対、200塩基対、250塩基対又は500塩基対の長さのセグメントである。ゲノム配列又は他の自然発生的なDNAではなく、バイサルファイト配列の全て又は一部の配列と同一である又はそれに相補的である核酸分子が特に好ましい。
上記配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpAジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドと、これらに相補的な配列とを含むことが好ましい。バイサルファイト配列の配列によって、ゲノム配列による核酸の非自然発生的な修飾型が与えられ、各ゲノム配列の修飾によって、以下のように特有で、かつ上記ゲノム配列とは異なる配列を有する核酸が合成される。各センス鎖のゲノムDNAに対して、4つの変換型が開示される。「C」が「T」に変換するが、「CpG」は「CpG」のままである(すなわち、ゲノム配列に関して、CpGジヌクレオチド配列の全ての「C」残基がメチル化し、したがって変換しない場合に相当する)第1の型が与えられ、第2の型は、開示されたゲノムDNA配列の相補体(すなわちアンチセンス鎖)を開示し、ここでは「C」が「T」に変換するが、「CpG」は「CpG」のままである(すなわち、CpGジヌクレオチド配列の全ての「C」残基がメチル化し、したがって変換しない場合に相当する)。ゲノム配列の「上方メチル化」変換配列はSEPTIN9では配列番号4〜配列番号9に対応し、RASSF2Aでは配列番号17及び配列番号18に対応する。各ゲノム配列の化学変換した第3の型が与えられ、ここでは「CpG」ジヌクレオチド配列のものを含む全ての「C」残基に関して「C」が「T」に変換される(すなわちゲノム配列に関して、CpGジヌクレオチド配列の全ての「C」残基がメチル化していない場合に相当する)。各配列の化学変換した最後の型は、開示されたゲノムDNA配列の相補体(すなわちアンチセンス鎖)を開示し、ここでは「CpG」ジヌクレオチド配列のものを含む全ての「C」残基に関して「C」が「T」に変換される(すなわち各ゲノム配列の相補体(アンチセンス鎖)に関して、CpGジヌクレオチド配列の全ての「C」残基がメチル化していない場合に相当する)。ゲノム配列の「下方メチル化」変換配列はSEPTIN9では配列番号10〜配列番号15に対応し、RASSF2Aでは配列番号19及び配列番号20に対応する。
重要なことは、これまでバイサルファイト配列による核酸配列及び分子は、がんを有する被験体の予後に関連又は相関付けられていなかった。
代替的な実施形態では、本発明は、ゲノムDNA又は処理(化学修飾)DNA内のシトシンのメチル化状態を検出するのに本発明の方法で使用するのに適したオリゴヌクレオチド又はオリゴマーを更に提供する。上記オリゴヌクレオチド又はオリゴマー核酸は新規の予後診断手段を提供する。上記オリゴヌクレオチド又はオリゴマーは、バイサルファイト配列による処理核酸配列及び/又はこれに相補的な配列、又はゲノム配列によるゲノム配列及び/又はこれに相補的な配列と同一であるか、又は(本明細書の上記で規定のように)適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の核酸配列を含む。
したがって本発明は、適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件及び/又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で上記配列の全て若しくは一部、又はその相補体とハイブリダイズする核酸分子(例えばオリゴヌクレオチド及びペプチド核酸(PNA)分子(PNA−オリゴマー))を含む。適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件及び/又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でゲノム配列ではなく、バイサルファイト配列の配列の全て若しくは一部、又は他のヒトゲノムDNAとハイブリダイズする核酸分子が特に好ましい。
ハイブリダイズする核酸の同一部分又はハイブリダイズ部分は通常、少なくとも9ヌクレオチド長、16ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長又は35ヌクレオチド長である。しかし、より長い分子が本発明に有用であり、このため本発明の範囲内である。
好ましくは、本発明のハイブリダイズする核酸のハイブリダイズ部分は、上記配列若しくはその一部、又はその相補体に対して少なくとも95%、又は少なくとも98%、又は100%同一である。
本明細書に記載の種類のハイブリダイズする核酸は、例えばプライマー(例えばPCRプライマー)、又は診断プローブ若しくはプライマーとして使用することができる。好ましくは、ストリンジェントな条件下で、オリゴヌクレオチドプローブと核酸サンプルとのハイブリダイゼーションを行い、プローブは、標的配列と100%同一である。核酸二本鎖又はハイブリッド安定性は、溶融温度すなわちTmで表し、これはプローブが標的DNAから解離する温度である。この溶融温度は、要求されるストリンジェントな条件を規定するのに使用する。
同一ではなく、ゲノム配列の対応する配列に関連し、実質的にこれと同一である標的配列(対立遺伝子変異型及びSNP等)に関して、初めに相同ハイブリダイゼーションだけが特定濃度の塩(例えばSSC又はSSPE)で起こる最小温度を確立することが有用である。それから、ミスマッチが1%であると仮定すると、Tmが1℃減少し、そのためハイブリダイゼーション反応の最終洗浄の温度が減少する(例えば、プローブとの同一性が95%を超える配列が求められる場合、最終洗浄温度は5℃減少する)。実際、Tmの変化は、1%のミスマッチ当たり0.5℃〜1.5℃であり得る。
本明細書に記載のゲノム配列及び変換配列を参照してポリヌクレオチド位置によって示されるように、X(ヌクレオチド)長の本発明のオリゴヌクレオチドの例には、長さがXの連続した重複オリゴヌクレオチドの組(センス組及びアンチセンス組)に対応するものが含まれ、ここで、連続して重複した各組内のオリゴヌクレオチド(所定のX値に対応する)が、ヌクレオチド位置からZ個のオリゴヌクレオチドの有限組と規定される:n〜(n+(X−1))、(式中、n=1、2、3、・・・(Y−(X−1))、Yは配列番号1〜配列番号20の(ヌクレオチド又は塩基対の)長さに等しく、Xは、この組における各オリゴヌクレオチドの一般的な(ヌクレオチドの)長さに等しく(例えば、連続して重複した20merの組ではX=20)、かつ長さがYの所定の配列番号に対する、長さがXの連続して重複したオリゴマーの数(Z)は、Y−(X−1)に等しい)。
好ましくはこの組は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含むこれらのオリゴマーに限定されない。
本発明の20merオリゴヌクレオチドの例としては、配列番号1〜配列番号20を参照してポリヌクレオチド位置で示される本明細書に記載のオリゴマー(及びこれに相補的なアンチセンス組)が挙げられる:1〜20、2〜21、3〜22、4〜23、5〜24等。
好ましくはこの組は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含むこれらのオリゴマーに限定されない。
同様に、本発明の25merオリゴヌクレオチドの例としては、配列番号1〜配列番号20を参照してポリヌクレオチド位置で示される以下の組のxxxオリゴマー(及びこれに相補的なアンチセンス組)が挙げられる:1〜25、2〜26、3〜27、4〜28、5〜29等。
好ましくはこの組は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含むこれらのオリゴマーに限定されない。
本発明は、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない配列(センス及びアンチセンス)のそれぞれに対して、長さがX(例えばX=9、10、17、20、22、23、25、27、30又は35ヌクレオチド)の複数の連続して重複したオリゴヌクレオチド組又は修飾オリゴヌクレオチド組を包含する。
本発明によるオリゴヌクレオチド又はオリゴマーは、ゲノム配列に対応するゲノム配列の遺伝的パラメータ及びエピジェネティックパラメータを確かめるのに有用な効果的ツールを構成する。このようなオリゴヌクレオチド組又は修飾オリゴヌクレオチド組は、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない配列(及びその相補体)に対応する、連続して重複したオリゴマー組である。上記オリゴマーは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含むのが好ましい。
特に好ましい本発明によるオリゴヌクレオチド又はオリゴマーは、CpGジヌクレオチド(又は対応する変換TpG若しくはCpAジヌクレオチド)配列のシトシンが、オリゴヌクレオチドの中央部3分の1内にある、すなわちオリゴヌクレオチドが、例えば13塩基長であり、CpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドが、5’末端から5番目〜9番目のヌクレオチド内に位置しているものである。
本発明のオリゴヌクレオチドはまた、オリゴヌクレオチドと1つ又は複数の部分又は複合体とを化学的に結合させることによって修飾して、オリゴヌクレオチドの活性、安定性又は検出を高めることができる。このような部分又は複合体としては、クロモフォア、フルオロフォア、コレステロール等の脂質、胆汁酸、チオエーテル、脂肪族鎖、リン脂質、ポリアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、パルミチル部分、及び例えば米国特許第5,514,758号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,597,696号、及び同第5,958,773号で開示されるような他のものが挙げられる。プローブはまた、特に好ましい対合性があるペプチド核酸(PNA)形態で存在し得る。このように、オリゴヌクレオチドは、ペプチド等の他の付随基(appended groups)を含んでもよく、ハイブリダイゼーション誘起切断剤(Krolet al., Bio Techniques 6:958-976, 1988)又は挿入剤(Zon,Pharm. Res. 5:539-549, 1988)を含んでもよい。このために、オリゴヌクレオチドは、別の分子、例えばクロモフォア、フルオロフォア、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘起架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘起切断剤等と複合体を形成してもよい。
オリゴヌクレオチドはまた、少なくとも1つの当該技術分野で認識される修飾糖及び/若しくは塩基部分を含み得るか、又は修飾骨格若しくは非天然ヌクレオシド間連結を含み得る。
本発明の特定の実施形態によるオリゴヌクレオチド又はオリゴマーは通常、「組」で使用し、上記ゲノム配列からなる群から選択されるゲノム配列及びこれに相補的な配列の各CpGジヌクレオチドの分析のために、又はバイサルファイト配列による処理核酸の配列及びこれに相補的な配列内の対応するCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド若しくはCpAジヌクレオチドの分析のために少なくとも1つのオリゴマーを含有する。しかし、経済的要因又は他の要因のために、好ましくは、上記配列内のCpGジヌクレオチドの限定選択を分析してもよく、それに応じてオリゴヌクレオチド組の含有量が変わることが予測される。
したがって、特定の実施形態では本発明は、処理ゲノムDNA(バイサルファイト配列)において、又はゲノムDNA(上記ゲノム配列、並びにこれに相補的な配列)においてシトシンのメチル化状態を検出するのに有用な、少なくとも2つの(オリゴヌクレオチド及び/又はPNA−オリゴマー)組を提供する。これらのプローブによって、がんを有する被験体の予後の決定が可能になる。オリゴマー組はまた、処理ゲノムDNA(バイサルファイト配列)において、又はゲノムDNA(上記ゲノム配列、並びにこれに相補的な配列)において一塩基多型(SNP)を検出するのに使用することができる。
好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチド組の少なくとも1つ、より好ましくは全ての成員が固相に結合する。
更なる実施形態において、本発明は、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない配列の内の1つのDNA配列及びこれに相補的な配列、又はそのセグメントを増幅するための「プライマー」オリゴヌクレオチドとして使用する、少なくとも2つのオリゴヌクレオチド組を提供する。
オリゴヌクレオチドは、「アレイ」又は「DNAチップ」(すなわち固相に結合した様々なオリゴヌクレオチド及び/又はPNA−オリゴマーの配置)の全て又は一部を構成し得ることが予測される。様々なオリゴヌクレオチド−オリゴマー配列及び/又はPNA−オリゴマー配列のこのようなアレイは、例えば長方形又は六方格子の形態で固相上に配置されることを特徴とし得る。固相表面は、ケイ素、ガラス、ポリスチレン、アルミニウム、スチール、鉄、銅、ニッケル、銀、又は金で構成され得る。また、ニトロセルロース、並びにペレット状で又は樹脂マトリクスとして存在し得るナイロン等のプラスチックを使用してもよい。オリゴマーアレイの製造における従来技術の概説は、Nature Genetics(Nature Genetics Supplement,Volume 21, January 1999)の特別版から、及びそれに言及される文献から収集することができる。固定化DNAアレイの精査に、蛍光標識プローブを使用することが多い。Cy3色素及びCy5色素と、特異的なプローブの5’−OHとの単純な連結は、蛍光標識に特に好適である。例えば、共焦点顕微鏡によって、ハイブリダイズするプローブの蛍光の検出を行うことができる。他の多くのものに加えて、Cy3色素及びCy5色素が市販されている。
オリゴヌクレオチド又はその特定の配列は、「仮想アレイ」(オリゴヌクレオチド又はその特定の配列は、例えば「指定子」として検体の複合混合物を分析するために、多様な特別に標識したプローブ集団の一部として、又はこれと組み合わせて使用する)の全て又は一部を構成し得ることも予測される。例えば、このような方法は、米国特許出願公開第2003/0013091号(2003年1月16日に公開された米国特許出願第09/898,743号)に記載されている。このような方法において、複合混合物における各核酸(すなわち各検体)が、特有の標識と独自に結合し、それにより検出することができるように、十分な標識が生成される(各標識を直接計測し、それにより混合物中の各分子種をデジタルで読み取る)。
本発明によるオリゴマーは、がんを有する被験体の予後の決定に利用するのが特に好ましい。
キット
さらに、本発明の更なる態様は、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化を決定する手段を備えるキットである。がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化を決定する手段は、好ましくはバイサルファイト含有試薬と、それぞれの場合で、バイサルファイト配列から選択される配列の少なくとも9塩基長、少なくとも18塩基長、少なくとも25塩基長又は少なくとも50塩基長のセグメントと同一であるか、これに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする配列からなる1つ又は複数のオリゴヌクレオチドと、任意で記載のメチル化分析方法を実行及び評価するための取扱説明書とを含む。一実施形態では、上記オリゴヌクレオチドの塩基配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、CpAジヌクレオチド又はTpGジヌクレオチドを含む。
更なる実施形態において、上記キットは、CpG位置特異的なメチル化分析を行うのに標準的な試薬を更に含んでもよく、上記分析は、1つ又は複数の以下の技法を含む:MS−SNuPE、MSP、MethyLight(商標)、HeavyMethyl、COBRA、及び核酸シークエンシング。しかし、本発明に沿ったキットは、上述の成分の一部分だけを含有することもできる。
好ましい実施形態において、キットは、DNA変性バッファー、スルホン化バッファー、DNA回収試薬又はキット(例えば析出カラム、限外濾過カラム、アフィニティカラム)、脱スルホン化バッファー、及びDNA回収成分からなる群から選択される、更なるバイサルファイト変換試薬を含み得る。
更なる代替的な実施形態において、キットは、ポリメラーゼと、ポリメラーゼによって媒介されるプライマー伸長(PCR等)のために最適化した反応バッファーとを別々のコンテナに入った状態で含有し得る。本発明の別の実施形態では、キットは、被験体の生体サンプルを得る及び/又は分類する手段を更に含む。被験体の生体サンプルにおいて、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化を決定する手段を収容するのに適したコンテナを更に含み、最も好ましくはキット結果を利用及び解釈するための取扱説明書を更に含むキットが好ましい。好ましい実施形態では、キットは、(a)バイサルファイト試薬と、(b)上記バイサルファイト試薬及び被験体の生体サンプルを収容するのに適したコンテナと、(c)それぞれの場合で配列が、バイサルファイト配列から選択される配列の少なくとも9塩基長、又はより好ましくは18塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする、2つのオリゴヌクレオチドを含有する少なくとも1つのプライマーオリゴヌクレオチド組と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。代替的な好ましい実施形態では、キットは、(a)バイサルファイト試薬と、(b)上記バイサルファイト試薬及び被験体の生体サンプルを収容するのに適したコンテナと、(c)少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、及び/又はバイサルファイト配列の内の1つによる前処理核酸配列及びこれに相補的な配列と同一であるか、又はこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長又は16ヌクレオチド長のPNA−オリゴマーと、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。
代替的な実施形態では、キットは、(a)バイサルファイト試薬と、(b)該バイサルファイト試薬及び被験体の生体サンプルを収容するのに適したコンテナと、(c)それぞれの場合で配列が、バイサルファイト配列から選択される配列の少なくとも9塩基長、又はより好ましくは18塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする、2つのオリゴヌクレオチドを含有する少なくとも1つのプライマーオリゴヌクレオチド組と、(d)少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、及び/又はバイサルファイト配列の内の1つによる前処理核酸配列及びこれに相補的な配列と同一であるか、又はこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長又は16ヌクレオチド長のPNA−オリゴマーと、任意で(e)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。
またキットは、別々のコンテナに入った状態で、遮断、洗浄又はコーティングに適したバッファー又は溶液等の他の成分を含有してもよい。
本発明の別の態様は、がんを有する被験体の予後を決定するのに使用されるキットであって、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の転写レベルを測定する手段と、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化を決定する手段とを備える、キットに関する。
COBRA(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なCOBRA(商標)ベースキットで見出され得るようなもの)には、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列に関するPCRプライマー、制限酵素及び適切なバッファーと、遺伝子ハイブリダイゼーションオリゴと、対照ハイブリダイゼーションオリゴと、オリゴプローブ用のキナーゼ標識キットと、標識ヌクレオチドとが含まれ得るが、これらに限定されない。MethyLight(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なMethyLight(商標)ベースキットで見出され得るようなもの)には、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のバイサルファイト変換配列に関するPCRプライマーと、バイサルファイト特異的プローブ(例えばTaqMan(商標)又はLightCycler(商標))と、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチドと、Taqポリメラーゼとが含まれ得るが、これらに限定されない。
Ms−SNuPE(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なMs−SNuPE(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又はバイサルファイト処理DNA配列若しくはCpG島)に関するPCRプライマー、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、ゲル抽出キット、陽性対照プライマー、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のバイサルファイト変換配列に対するMs−SNuPE(商標)プライマー、(Ms−SNuPE反応のための)反応バッファー、並びに標識ヌクレオチドが含まれ得る。
MSP分析に典型的な試薬(例えば典型的なMSPベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のバイサルファイト変換配列に対するメチル化及び非メチル化PCRプライマー、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、並びに特異的プローブが含まれ得る。
さらに、本発明の更なる態様は、がんではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化を決定する手段を備える代替的キットであって、上記手段が、少なくとも1つのメチル化特異的制限酵素と、ゲノム配列から選択される配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む配列の増幅に適した、1つ又は複数のプライマーオリゴヌクレオチド(好ましくは1つ又は複数のプライマー対)と、任意で記載のメチル化分析方法を実施及び評価するための取扱説明書とを備えるのが好ましい、代替的キットである。一実施形態では、上記オリゴヌクレオチドの塩基配列は、ゲノム配列から選択される配列の少なくとも18塩基長のセグメントと同一であるか、これに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする。
更なる実施形態において、上記キットは、消化断片の分析のための1つ又は複数のオリゴヌクレオチドプローブを含んでもよく、好ましくは、上記オリゴヌクレオチドは、上記ゲノム配列から選択される少なくとも1つの配列の少なくとも16塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする。
好ましい実施形態において、キットは、バッファー(例えば制限酵素、PCR、保存バッファー又は洗浄バッファー)、DNA回収試薬又はキット(例えば析出カラム、限外濾過カラム、アフィニティカラム)及びDNA回収成分からなる群から選択される更なる試薬を含み得る。
更なる代替的な実施形態において、キットは、ポリメラーゼと、ポリメラーゼによって媒介されるプライマー伸長(PCR等)のために最適化した反応バッファーとを別々のコンテナに入った状態で含有し得る。本発明の別の実施形態では、キットは、被験体の生体サンプルを得る及び/又は貯蔵する手段を更に含む。好ましい実施形態では、キットは、(a)メチル化感受性制限酵素試薬と、(b)上記試薬及び被験体の生体サンプルを収容するのに適したコンテナと、(c)上記ゲノム配列から選択される少なくとも1つの配列の少なくとも9塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする、1つ又は複数の核酸又はペプチド核酸を含有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチド組と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。代替的な好ましい実施形態において、キットは、(a)メチル化感受性制限酵素試薬と、(b)上記試薬及び患者の生体サンプルを収容するのに適したコンテナと、(c)上記ゲノム配列から選択される配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む配列の増幅に適した少なくとも1つのプライマーオリゴヌクレオチド組と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。
代替的な実施形態では、キットは、(a)メチル化感受性制限酵素試薬と、(b)上記試薬及び被験体の生体サンプルを収容するのに適したコンテナと、(c)上記ゲノム配列から選択される配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む配列の増幅に適した少なくとも1つのプライマーオリゴヌクレオチド組と、(d)上記ゲノム配列から選択される配列の少なくとも9塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする、1つ又は複数の核酸又はペプチド核酸を含有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチド組と、任意で(e)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。
またキットは、別々のコンテナに入った状態で、遮断、洗浄又はコーティングに適したバッファー又は溶液等の他の成分を含有してもよい。
本発明は更に、メチル化感受性制限酵素分析によって被験体においてがんを有する被験体の予後を決定するのに使用するキットに関する。上記キットは、コンテナとDNAマイクロアレイ成分とを含む。上記DNAマイクロアレイ成分は、複数のオリゴヌクレオチドが設計位置で固定化される表面であり、オリゴヌクレオチドは少なくとも1つのCpGメチル化部位を含む。少なくとも1つの上記オリゴヌクレオチドは、上記遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列に特異的であり、少なくとも15塩基対長の配列を含むが、上記ゲノム配列の1つによる配列を200bp以下しか含まない。好ましくは、上記配列は、少なくとも15塩基対長であるが、上記ゲノム配列の1つによる配列を80bp以下しか含まない。上記配列が、少なくとも20塩基対長であるが、上記ゲノム配列の1つによる配列を30bp以下しか含まないのが更に好ましい。上記検査キットは、1つ又は複数のメチル化感受性制限酵素を含む制限酵素成分を更に含むのが好ましい。
更なる実施形態において、上記検査キットはさらに、少なくとも1つのメチル化特異的制限酵素を含むことを特徴とし、オリゴヌクレオチドは、上記の少なくとも1つのメチル化特異的制限酵素の制限部位を含むことを特徴とする。
キットは、DNA濃縮に関して当該技術分野で知られている以下の成分の1つ又は幾つかを更に含み得る:タンパク質成分(上記タンパク質は、メチル化DNAと選択的に結合する)、任意で好適な溶液中の三重鎖形成核酸成分である1つ又は複数のリンカー、ライゲーションを行うための物質又は溶液(例えばリガーゼ、バッファー)、カラムクロマトグラフィを行うための物質又は溶液、免疫学に基づく濃縮(例えば免疫沈降)を行うための物質又は溶液、核酸増幅(例えばPCR)を行うための物質又は溶液、カップリング試薬に適用可能な場合、溶液中で適用可能な場合の色素又は幾つかの色素、ハイブリダイゼーションを行うための物質又は溶液、並びに/若しくは洗浄工程を行うための物質又は溶液。
記載の本発明は、がんを有する被験体の予後の決定に有用な物質の組成物を更に提供する。上記組成物は、少なくとも1つの核酸と、バイサルファイト配列に開示の核酸配列の18塩基対長のセグメントと、1mM〜5mMの塩化マグネシウム、100μM〜500μMのdNTP、0.5単位〜5単位のtaqポリメラーゼ、ウシ血清アルブミン、オリゴマー、特にオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸(PNA)−オリゴマー(上記オリゴマーはそれぞれの場合、バイサルファイト配列の1つによる前処理ゲノムDNAに相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の少なくとも1つの塩基配列及びそれに相補的な配列を含む)を含む群から選択される1つ又は複数の物質とを含むのが好ましい。上記物質の組成物は、水溶液中での上記核酸の安定化に適切なバッファー溶液を含み、上記溶液中でポリメラーゼに基づく反応が可能であることが好ましい。好適なバッファーは当該技術分野で既知であり、市販されている。
本発明は、がん被験体の予後の決定、がん被験体に合った薬物治療の決定、がん被験体由来の腫瘍が、腫瘍が侵攻性であるか若しくは転移能を有すること若しくは被験体の生存時間の低減を示すかの判定、被験体における侵攻性のがんの検出、がん治療に対するがん被験体の選別、又はがん被験体からなる被験体における腫瘍細胞量若しくはがん量の決定への上で規定したキット又はオリゴヌクレオチドの使用にも関する。
本発明の更なる好ましい実施形態では、上記少なくとも1つの核酸は、バイサルファイト配列に開示された核酸配列の少なくとも50塩基対、100塩基対、150塩基対、200塩基対、250塩基対又は500塩基対の長さのセグメントである。
実施例1
がん組織ではメチル化されているが、非がん組織ではメチル化されていない遺伝子又はゲノム配列の例としてSeptin9及びメチル化RASSF2Aのレベルを、外科的切除前及び外科的切除後のCRC患者由来の適合血漿サンプルで研究した。
Septin9及びRASSF2Aのレベルを、Septin9遺伝子、メチル化RASSF2A遺伝子及びHB14遺伝子を測定する三重アッセイ法によって決定した。同様のアッセイを一重フォーマット、二重フォーマット、三重フォーマット、四重フォーマット又は多重フォーマットで行うことができる。
遺伝子及びゲノム配列のメチル化又はメチル化状況を測定する方法が当該技術分野で知られている。例えば米国特許第7,229,759号又は欧州特許第1370691号(どちらもこれらのメチル化アッセイ及び検出法に関して引用することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照されたい。本明細書の遺伝子及びゲノム配列のメチル化又はメチル化状況を測定した。血漿DNAをバイサルファイト変換し、ゲノム配列位置でのメチル化DNAのレベルを三重アッセイにおいて検出した。
Invitrogenの磁気ラック(DynaMag−15及びDynaMag−2)を使用した。洗浄液Aを、45mlのエタノール(Merck、A000920、99.8%)をEpi proColonUS洗浄液A濃縮液に添加することによって調製した。洗浄液Bを、28mlのエタノール(Merck、A000920、99.8%)をEpi proColonUS洗浄液B濃縮液に添加することによって調製した。ラベルを付けた15ml容のファルコンチューブ内で、3.5mlの血漿を3.5mlのLysis−Bindingバッファーと混ぜ合わせ、ボルテックスすることによって混合し、室温で10分間インキュベートした。この溶解反応液に、90μlの磁性ビーズ(Dynabeads MyOne SILANE、30秒ボルテックスすることによって新たに懸濁させた)及び2.5mlのエタノールを、総量が約10mlとなるまで添加した。チューブを手で5、6回反転させることによって混合し、回転振盪器(Rotator)を用いて室温で45分間、インキュベートした。1回目の洗浄を、15ml容のチューブを少なくとも5分間、磁気ラックに入れることによって行った後(after which)、バッファーを捨てて、チューブを非磁気ラックに移した。1500μlの洗浄液A(上記したLysis/Bindingバッファー+分子生物学用(f. d. Molekularbiologie)エタノール)を添加し、ビーズを10秒間ボルテックスすることによって再懸濁させた。ビーズ懸濁液を、ラベルを付けた2ml容のチューブにホールピペットを用いて移した。80℃でのインキュベーション中、安全な封止を確保するためだけに2ml容のSafeLockチューブを遠心分離に使用した。ホールピペットを少なくとも2分間、15ml容のチューブに戻し、残存するビーズを回収した。さらに同じホールピペットを用いて2ml容のチューブに入れた。2ml容のチューブを2分間、磁気ラックに入れた後、可能な限り多くの洗浄バッファーを、ビーズを取り出さないよう注意しながらピペットで取り除いた。チューブを遠心分離機に入れ、1000rcfで10秒間、スピンさせ、底にあるビーズを回収し、それを2分間磁気ラックに入れ、残りのバッファーを除去した。
血漿DNAを、100μlのElutionバッファー(10mM Tris(pH 8.0))をそれぞれのチューブに加えることによって溶出させ、ビーズを10秒間ボルテックスすることによって再懸濁し、ペレットが完全に再懸濁したことを確認した後、1000rpmの熱振盪機内において80℃で15分間インキュベートした。チューブをパルススピンさせ、蓋から液滴を除去した。さらに磁気ラックに2分間入れた。完全な溶出液(約100μl)を、予めラベルを付けた2.0ml容のチューブに移した。
血漿DNAを、以下の試薬:150μlのバイサルファイト溶液(ABS、重亜硫酸アンモニウム溶液(Ammonium Bisulfite Solution)、未開封チューブのみを使用、使用済みのチューブは破棄する)及び25μlのProtection Buffer(THFAを含む)(5gのTrolox+40mlのTHFA)を溶出液に添加することによってバイサルファイト変換させた。チューブに蓋をし、10秒間ボルテックスして、十分に混合した。液体が蓋に付かないように、チューブをパルススピンした後、サーマルブロック又は熱振盪機に入れ、振盪せずに80℃で45分間インキュベートした。チューブをパルススピンし、蓋から液滴を除去した後、ビーズを、10秒間ボルテックスすることによって再懸濁させ、全てのビーズが十分に懸濁していることを確認した。1000μlの洗浄液A及び20μlの磁気ビーズ(Dynabeads MyOne SILANE)の成分を順番に総量が300ulになるように各バイサルファイト反応液(reaction)に添加し、ボルテックスすることによって慎重に混合した後、それらを熱振盪機において室温で45分間、1000rpmで振盪してインキュベートした。チューブをパルススピンし、蓋から液滴を除去して、磁気ラックに2分間入れることで、粒子を捕捉した。次いで、新たなピペットを使用して、捕捉粒子に触れずにできる限り多くの液体を除去した。洗浄手順のために、チューブを磁気ラックから取り出した。800μlの洗浄液Aを添加し、ビーズを壁から洗い流した後、ボルテックスすることによって再懸濁させ、チューブをパルススピンし、蓋から液滴を除去して、磁気ラックに2分間入れた。新たなピペットを使用して、捕捉粒子に触れずにできる限り多くの液体を除去した。洗浄手順のために、チューブを磁気ラックから取り出した。800μlの洗浄液Bを添加し、ビーズを壁から洗い流し、ボルテックスすることによって再懸濁させ、チューブをパルススピンし、蓋から液滴を除去した後、それらを磁気ラックに2分間入れた。新たなピペットを使用して、捕捉粒子に触れずにできる限り多くの液体を除去した。洗浄手順のために、チューブを磁気ラックから取り出した。400μlの洗浄液Bを添加し、ビーズを壁から洗い流し、ボルテックスすることによって再懸濁させ、パルススピンし、蓋から液滴を除去して、磁気ラックに2分間入れた。新たなピペットを使用して、捕捉粒子に触れずにできる限り多くの液体を除去した。チューブを短時間スピンして、底に残存する液滴を回収し、磁気ラックに2分間入れた後、残りの液体をピペットで除去した。ペレットを、磁石の上の蓋の空いたチューブを用いて室温で10分間乾燥させた。
チューブを非磁気ラックに移し(transferred)、55μlの溶出バッファー(10mM Tris(pH8.0))を各チューブに加えた。次いでビーズを20秒分のボルテックスによって再懸濁させ、その後チューブを1000rpmの熱振盪機内において80℃で5分間インキュベートした後、更に10秒間ボルテックスし、短時間遠沈して、底に落ちた全ての液体を回収した。チューブを2分間、磁気ラックに入れ、完全な溶出液を96ウェルPCRプレート(又は予めラベルを付けた0.5ml容のチューブ)に移した。
実施する三重アッセイに関するプローブ及びプライマーの配列を表2に示す。
Septin9ゲノム配列:
Ctgcccaccagccatcatgtcggaccccgcggtcaacgcgcagctggatgggatcattt(配列番号32)
Septin9バイサルファイト変換ゲノム配列:
Ttgtttattagttattatgtcggatttcgcggttaacgcgtagttggatgggattattt(配列番号33)
RASSF2Aゲノム配列:
Acttagagctgaatgcaaagtaagcgctcgaaatgcagaagtagccggggccgcccacggcacctgcctcgctcggggcgagagaagacgccaggctgaggtcccag(配列番号34)
RASSF2Aバイサルファイト変換ゲノム配列:
atttagagttgaatgtaaagtaagcgttcgaaatgtagaagtagtcggggtcgtttacggtatttgtttcgttcggggcgagagaagacgttaggttgaggttttag(配列番号35)
結果から、第I期及び第II期のがん患者は、術後Septin9及びRASF2Aシグナルを喪失する傾向にあり、第III期の患者はSeptin9及びRASF2Aシグナルを保持する傾向にあることが示される。既に転移性疾患を患っている2人の第IV期のCRC患者は、術後Septin9及びRASF2Aシグナルを「保持している」。このことから、たとえ原発腫瘍が切除されていても、転移をSeptin9及びRASF2Aによって検出することができることが示唆される。結果を図1〜図12に示す。図14及び図15に、定量的に述べられているSeptin9及びRASSF2Aの結果を示す。値は血漿1ml当たりのメチル化Septin9/RASSF2A DNA(pg)で表している。
原発腫瘍の治癒的切除後にCRC患者を予後診断する方法:
Septin9の検出は、血液/血漿中のDNAメチル化を検出することができる幾つかの現行の技術水準の方法によって行うことができる。mSeptin9の定性分析、半定量分析及び/又は定量分析が可能であり、使用目的及び対象の患者/腫瘍集団に強く結び付く。
分析サンプルの決定
定性分析:
第I期のCRC腫瘍患者。
術前Septin9シグナル陽性
術後Septin9シグナル陰性=予後良好
術後Septin9シグナル陽性=予後不良(転移のリスク)
予後良好は、本発明の好ましい実施形態において外科手術を受けた個体をモニタリングしている、すなわち1つ又は複数のがん再発(re-occurrence)検査を、間を置いて繰り返し行っていることを意味するものとする。特に好ましい実施形態では、このような検査は本明細書に、米国特許出願公開第2006−0286576号又は国際公開第2006/113466号に開示されるようなメチル化Septin 9 DNAの検出である。
術前RASSF2Aシグナル陽性
術後RASSF2Aシグナル陰性=予後良好
術後RASSF2Aシグナル陽性=予後不良(転移のリスク)
予後良好は、本発明の好ましい実施形態において外科手術を受けた個体をモニタリングしている、すなわち1つ又は複数のがん再発検査を、間を置いて繰り返し行っていることを意味するものとする。
半定量分析:
第I期、第II期及び第III期のCRC腫瘍患者。
術前Septin9シグナル陽性(3回の反復測定のうち1回)=腫瘍の存在
術後Septin9シグナル陰性=予後良好(3回の反復測定のうち3回)
3回のうち1回の術後Septin9シグナル陽性=低リスク
3回のうち2回の術後Septin9シグナル陽性=中程度リスク
3回のうち3回の術後Septin9シグナル陽性=高リスク
第I期、第II期及び第III期のCRC腫瘍患者。
術前RASSF2Aシグナル陽性(3回の反復測定のうち1回)=腫瘍の存在
術後RASSF2Aシグナル陰性=予後良好(3回の反復測定のうち3回)
3回のうち1回の術後RASSF2Aシグナル陽性=低リスク
3回のうち2回の術後RASSF2Aシグナル陽性=中程度リスク
3回のうち3回の術後RASSF2Aシグナル陽性=高リスク
定量分析:
第II期及び第III期及び第IV期のCRC腫瘍患者。
例えば内部標準を用いた術前及び術後のSeptin9の程度の検出。
第I期、第II期及び第III期のCRC腫瘍患者。
血漿1ml当たり3pgを超える術前Septin9=腫瘍の存在
術後Septin9シグナル陰性=予後良好(0pg/mlのSeptin9)
血漿1ml当たり0pg超から3pgまでの術後Septin9=低リスク
血漿1ml当たり3pg〜30pgの術後Septin9=中程度リスク
血漿1ml当たり30pgを超える術後Septin9=高リスク
内部標準を用いた術前及び術後のRASSF2Aの程度の検出。
第I期、第II期及び第III期のCRC腫瘍患者。
血漿1ml当たり3pgを超える術前RASSF2A=腫瘍の存在
術後RASSF2Aシグナル陰性=予後良好(0pg/mlの血漿RASSF2A)
血漿1ml当たり0pg超から3pgまでの術後RASSF2A=低リスク
血漿1ml当たり3pg〜30pgの術後RASSF2A=中程度リスク
血漿RASSF2A1ml当たり30pgを超える術後RASSF2A=高リスク