JP6388561B2 - 飼料調製用添加剤 - Google Patents
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Description
(1)サイレージ、乾燥牧草、粗飼料、濃厚飼料、カラシ種子の粉砕物又は粉末を少なくとも混合した混合飼料(Total Mixed Ration:以下「TMR」)であって、
カラシ種子の粉砕物又は粉末が0.01〜5質量%であることを特徴とする混合飼料(Total Mixed Ration)。
(2)カラシ種子の粉砕物又は粉末が0.05〜0.5質量%であることを特徴とする(1)記載の混合飼料(Total Mixed Ration)。
(3)カラシ種子がカラシナ(Brassica juncea)、シロカラシ(Sinapis alba)、クロカラシ(Brassica nigra)に属するいずれかの植物の種子である(1)又は(2)に記載の混合飼料(Total Mixed Ration)。
さらにカラシ種子は、プロピオン酸などの醗酵調整剤に比して効力が高く、低コストのため酪農家の経営上も有利である。
本発明の効果は、粗い粉砕物であっても粉末であっても発揮される。
また酪農家で粉砕する場合は、市販のカッター式粉砕機を用いて、TMRを調製する際にカラシ種子を粉砕しても良い。
粉砕または粉末化したカラシ種子は、TMR原料を混合する際にTMRあたり0.01〜5質量%含有するようにする。0.01質量%以下の場合、目的とする発熱抑制効果を得ることができない。また5質量%を超えて配合してもその効果は頭打ちとなり、実効的及び経済的にも好ましくない。実効及び経済効果の面からは0.05〜0.5質量%とすることが好ましい。
またTMR用の濃厚飼料に添加する場合には、最終的にTMRとしたとき上記のカラシ種子粉砕物または粉末の含有量が担保されるように配合する。この濃厚飼料をTMRに用いる場合は、カラシ種子の粉砕物または粉末をTMRの発熱防止用として添加する必要はない。乳牛用のTMRの場合、通常20〜30質量%配合されるので、通常0.5〜15質量%になるように配合する。
かくして得られたTMRは、従来のTMRが調製後24時間経過すると、品温が30℃以上にまで上昇し、場合によっては腐敗臭が発生するのに対して、調製時の温度を保ち、24時間経過しても不快臭も発生せず、牛の食いつきの良いTMRとなる。
また大規模飼育においては常時TMRを給餌し、自由摂取できるようになっており、このような状況下では牛舎においてTMRの変性を防止することができる。
1.カラシ種子の粉砕(1)
当年度採取した西洋からし菜(Brassica juncea)の種子100g程度を、農業用カッター式粉砕機ワンダーブレンダー-WB1(大阪ケミカル社製)により約1分間粉砕処理を行い、粉砕物を得た。粉砕物に未粉砕の種子が残っていないことを確認し、ポリエチレン製の袋に密封し室温保存した。これをTMR用の温度上昇抑制剤とした。
(1)試験方法
表1に示す配合のTMRを調製する際に、上記1.で調製したカラシ種子粉砕物を温度上昇抑制剤として0.1、0.2、0.5質量%になるように飼料混合機(ブレンダー)で混合し、これを10kg単位でポリエチレン製の袋につめたものを2袋ずつ用意した。各袋の内部に温度測定用センサー(温度データロガー:KNラボラトリーズ社製)を入れて、連続的に1分間隔で温度を測定し記録した。また比較例として、TMRの温度上昇抑制効果を有するとして推奨されている粉状プロピオン酸カルシウム(以下PA)を推奨量である0.5質量%添加したTMRを調製し、これを同様に包装して、連続的に温度変化を測定し記録した。
なおこのTMRの配合組成は、サイレージによる発熱効果を確認するために行ったもので、飼料イネWCSを最大限とし、さらに飼料イネWCS配合量のうち18質量%相当量をあらかじめ2日間空気にさらし、発熱しやすい状態にしておいた。なお、飼料イネWCSはイネホールクロップサイレージであり、イネの実と茎葉の全体を醗酵させた飼料である。
21時間経過後にデータロガーを取り出し、品温の変化を記録した。なお品温は2袋の平均値を各試験試料の温度とした。
0、5、15、21時間経過後の温度を表2に、また温度変化の経時的なプロットを図1に示す。
対照の飼料は21時間経過後、強い蒸れ臭や腐敗臭が感じられたが、本発明の温度上昇抑制剤を添加した各飼料は、いずれもサイレージに由来する醗酵臭と飼料本来の臭気のみであった。
また経時的な温度変化を記録した図1に示すとおり、PAは10時間経過すると急激に温度上昇することが確認された。本発明は低濃度であっても添加することにより、TMRの温度上昇を抑制できることが確認できた。0.2質量%以上添加した例は、無添加に対して全ての時間、温度抑制が確認された。PAに対しては0.5質量%添加では10時間以上経過において大きな抑制効果が確認されている。なお、この試験は前述のように発熱を促進するように調整した試験試料を用いた結果である。
PAを温度上昇抑制剤として添加しても、その効果は半日程度しか持続しないのに対して、本発明は21時間経過しても品温が上昇しないことから、TMRの作り置きのための添加剤として適していることがわかった。また本発明の効果は、サイレージに由来する発熱が発生しやすい条件としてTMRを調製したが、本発明の発熱抑制剤は、このような発熱しやすいサイレージを用いても発熱を抑制することができた。
(1)試験方法
サイレージである飼料イネWCSの配合量を試験(1)よりも減らし、濃厚配合飼料の配合量を増量させた表3に示す配合の標準的な組成のTMRを調製した。また発熱防止剤に水添加した場合の効果を試験した。試験(1)と同様に、上記1.で調製したカラシ種子粉砕物を温度上昇抑制剤として0.1、0.5質量%になるように飼料混合機(ブレンダー)で混合し、これを10kg単位でポリエチレン製の袋につめたものを2袋ずつ用意した。また、0.1質量%カラシ種子に相当するカラシ種子粉砕物に予め約100mlの水を添加混合したものを添加したTMR(0.1W)を同様に調製した。各袋の内部に温度測定用センサー(温度データロガー:KNラボラトリーズ社製)を同封して、連続的に5分間隔で温度を測定し記録した。
24時間経過後にデータロガーを取り出し、品温の変化を記録した。なお品温は2袋の平均値を各試験試料の温度とした。
0、4、8、12、16、20、24時間経過後の温度を表4に、また温度変化の経時的なプロットを図2に示す。
また、図2の温度曲線から、TMRは、調製後12時間経過後から温度上昇が始まるが、本発明の温度上昇抑制剤は16〜18時間まで延長され、さらに水と混合して添加した場合は20時間まで延長されることが明らかとなった。
この試験(2)から、標準的なTMRの場合は、本発明の温度上昇抑制剤を0.1質量%添加することで20時間以上品温が上昇せず、さらに水と混和してから添加すると24時間温度上昇が抑制されることが明らかとなった。特に図1に示すように、TMRの発熱促進条件下の温度上昇抑制効果をあわせて考えると、通常のTMRの発熱条件下では低濃度添加でも十分にTMRの発熱温度の上昇を抑制できることがわかる。
1.の粉砕操作と同様に当年度採取した西洋からし菜(Brassica juncea)の種子1,000kgを、大型の工業用ハンマーミルを用いて粉砕処理し、粉砕物を得た。この粉砕物はほぼ粉末状を呈していた。この粉末状粉砕物をポリエチレン製の袋に密封し室温保存した。これを以下の試験に用いるTMR用の温度上昇抑制剤とした。
(1)試験方法
温度上昇抑制効果試験(2)と同様に表3の組成に、上記4.で調製したカラシ種子ハンマーミル粉砕物を温度上昇抑制剤として0.1、0.05質量%になるように飼料混合機(ブレンダー)で混合し、これを10kg単位でポリエチレン製の袋につめたものを2袋ずつ用意した(ハンマーミル粉砕0.1%、ハンマーミル粉砕0.05%)。また、0.1質量%カラシ種子に相当するカラシ種子粉砕物に予め約100mlの水を添加混合したものを添加したTMR(ハンマーミル粉砕0.1%+水)を同様に調製した。各袋の内部に温度測定用センサー(温度データロガー:KNラボラトリーズ社製)を同封して、連続的に5分間隔で温度を測定し記録した。
24時間経過後にデータロガーを取り出し、品温の変化を記録した。なお品温は2袋の平均値を各試験試料の温度とした。
0、4、8、12、16、20、24時間経過後の温度を表5に、また温度変化の経時的なプロットを図3に示す。
また、図3の温度曲線から、無添加のTMRは、調製後12時間経過後から温度上昇が始まるが、添加した場合は20時間後に温度上昇が始まり、その後の上昇も小さいことが明らかとなった。
粉砕による効果は、ハンマーミルによる粉砕がより温度上昇抑制効果が高いことが明らかとなった。
また24時間経過後の無添加TMR飼料は強い蒸れ臭や腐敗臭が感じられたが、本発明の温度上昇抑制剤を添加した各飼料は、いずれもサイレージに由来する醗酵臭と飼料本来の臭気のみであった。
本発明の温度上昇抑制剤添加による飼料効率及び乳牛の泌乳量に及ぼす影響について試験を行った。
(1)試験方法
搾乳牛6頭を2頭ずつA、B、Cの3群に分けた。この3群間には泌乳量、乳脂肪率・乳蛋白質率、乾物摂取量などに差がないことをあらかじめ確認した上で、3群に分けた。
また試験試料は上記の表3の組成のTMR飼料を基礎飼料として、ハンマーミル粉砕カラシ種子を添加した次の3種とした。
1)対照(CTL):TMR
2)MS50:粉砕カラシ種子50グラム/頭・日給与になるように調製したTMR
3)MS100:粉砕カラシ種子100グラム/頭・日給与になるように調製したTMR
TMRの投与量は、あらかじめ各試験牛の飽食における摂食量を測定しておき、その量を試験期間中投与した。
試験期間は次の表6の投与日程に従った。
測定解析結果を下記の表7に示す。
Claims (3)
- サイレージ、乾燥牧草、粗飼料、濃厚飼料、カラシ種子の粉砕物又は粉末を少なくとも混合した混合飼料(Total Mixed Ration:以下「TMR」)であって、
カラシ種子の粉砕物又は粉末が0.01〜5質量%であることを特徴とする混合飼料(Total Mixed Ration)。 - カラシ種子の粉砕物又は粉末が0.05〜0.5質量%であることを特徴とする請求項1記載の混合飼料(Total Mixed Ration)。
- カラシ種子がカラシナ(Brassica juncea)、シロカラシ(Sinapis alba)、クロカラシ(Brassica nigra)に属するいずれかの植物の種子である請求項1又は2に記載の混合飼料(Total Mixed Ration)。
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