JP6380109B2 - 多能性幹細胞の安定した未分化維持増殖を行うための培養方法 - Google Patents
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Description
[1]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加され、かつ、培地中にβ-メルカプトエタノールを実質的に含まない又はβ-メルカプトエタノールの濃度が9μM以下であることを特徴とする培地中で多能性幹細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培養方法。
[2]培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、1μM〜1000μMである、[1]に記載の方法。
[3]培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、5μM〜200μMである、[1]に記載の方法。
[4]エタノールアミン類縁体が、下記式
X−CH2−CH2−O−Y
Xは、R1−N(R2)−[R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基を表す]又はR3−CH=N−[R3−CHは、H−CH又はシッフベース型アミノ基保護基を表す]を表し;
Yは、−P(=O)(OH)−O−R4[R4は、−CH2−CH(O−R5)−CH2−O−R6(R5及びR6は、同一又は異なって、炭素数2〜30のアシル基又は水素原子を表す)又は水素原子を表す]、水素原子又はヒドロキシ基の保護基を表す〕
で表される化合物である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基であり、
R3が、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基である、[4]に記載の方法。
[6]エタノールアミン類縁体が、ホスホエタノールアミン、モノメチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、及びリゾホスファチジルエタノールアミンからなる群から選ばれる一又は複数である[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[7]培地が、アルブミンが更に添加された培地である、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]培地中のアルブミンの濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[7]に記載の方法。
[9]培地中のアルブミンの濃度が、1g/l〜8g/lである、[7]に記載の方法。
[10]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[7]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、[7]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、[7]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[13]培地が、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩が更に添加された培地である、[1]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]培地中の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の濃度が1〜1000ng/mlである[13]に記載の方法。
[15]硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、[13]または[14]に記載の方法。
[16]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加され、かつ、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩が添加されることを特徴とする培地中で多能性幹細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培養方法。
[17]培地中の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の濃度が1〜1000ng/mlである[16]に記載の方法。
[18]硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、[16]または[17]に記載の方法。
[19]培地が、アルブミンが更に添加された培地である、[16]〜[18]のいずれかに記載の方法。
[20]培地中のアルブミンの濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[19]に記載の方法。
[21]培地中のアルブミンの濃度が、1g/l〜8g/lである、[19]に記載の方法。
[22]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[19]〜[21]のいずれかに記載の方法。
[23]培養が、フィーダー細胞非存在下で行われる、[1]〜[22]のいずれかに記載の方法。
[24]培養が、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用して行われる、[23]に記載の方法。
[25]培養が、ラミニン511若しくはその活性断片又はマトリゲルを使用して行なわれる、[23]に記載の方法。
[26]培養が、シングルセル播種によって行われる、[1]〜[25]のいずれかに記載の方法。
[27]培養が、無血清条件下で行われる、[1]〜[26]のいずれかに記載の方法。
[28]培地が、実質的にヒト以外の動物由来成分を含まない培地である、[1]〜[27]のいずれかに記載の方法。
[29]多能性幹細胞が、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[1]〜[28]のいずれかに記載の方法。
[30]多能性幹細胞が、霊長類由来である、[1]〜[29]のいずれかに記載の方法。
[31]多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、[1]〜[30]のいずれかに記載の方法。
[32]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを添加し、かつ、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を添加することを含む、多能性幹細胞増殖用培地の保存安定化方法。
[33]使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、[32]に記載の方法。
[34]さらに、アルブミンを添加することを含む、[32]または[33]に記載の方法。
[35]使用時のアルブミンの最終濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[34]に記載の方法。
[36]使用時のアルブミンの最終濃度が、1g/l〜8g/lである、[34]に記載の方法。
[37]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[34]〜[36]のいずれかに記載の方法。
[38]アルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、[34]〜[37]のいずれかに記載の方法。
[39]アルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、[34]〜[37]のいずれかに記載の方法。
[40]培地が、β-メルカプトエタノールが実質的に含まれないか、最終濃度が9μM以下となるように添加されてなる、[32]〜[39]のいずれかに記載の方法。
[41]該培地が、多能性幹細胞の未分化維持増殖用である、[32]〜[40]のいずれかに記載の方法。
[42]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、β-メルカプトエタノールを実質的に含まない又は使用時の濃度が9μM以下となるようにβ-メルカプトエタノールを含む多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地添加剤。
[43]エタノールアミン類縁体が、下記式
X−CH2−CH2−O−Y
Xは、R1−N(R2)−[R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基を表す]又はR3−CH=N−[R3−CHは、H−CH又はシッフベース型アミノ基保護基を表す]を表し;
Yは、−P(=O)(OH)−O−R4[R4は、−CH2−CH(O−R5)−CH2−O−R6(R5及びR6は、同一又は異なって、炭素数2〜30のアシル基又は水素原子を表す)又は水素原子を表す]、水素原子又はヒドロキシ基の保護基を表す〕
で表される化合物である、[42]に記載の培地添加剤。
[44]R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基であり、
R3が、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基である、[43]に記載の培地添加剤。
[45]エタノールアミン類縁体が、ホスホエタノールアミン、モノメチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、及びリゾホスファチジルエタノールアミンからなる群から選ばれる一又は複数である[42]〜[44]のいずれかに記載の培地添加剤。
[46]アルブミンを更に含む、[42]〜[45]のいずれかに記載の培地添加剤。
[47]使用時のアルブミンの最終濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[46]に記載の培地添加剤。
[48]使用時のアルブミンの最終濃度が、1g/l〜8g/lである、[46]に記載の培地添加剤。
[49]アルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、[46]〜[48]のいずれかに記載の培地添加剤。
[50]アルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、[46]〜[48]のいずれかに記載の培地添加剤。
[51]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[46]〜[50]のいずれかに記載の培地添加剤。
[52]硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を更に含む、[42]〜[51]のいずれかに記載の培地添加剤。
[53]使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、[52]に記載の培地添加剤。
[54]硫酸化糖類が、硫酸化単糖、硫酸化二糖、硫酸化多糖、硫酸化糖アルコール及び硫酸化シクリトールからなる群から選択される少なくとも1つである、[52]または[53]に記載の培地添加剤。
[55]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、セルロースSO3Na、キサンタンガムSO3Na、フコイダン、アルギン酸SO3Na、イヌリンSO3Na、マルトヘプタオースSO3Na、スタキオースSO3Na、マルトトリオースSO3Na、マルチトールSO3Na、スクロース8SO3K、グルコースSO3Na、myo−6イノシトールSO3K、α−シクロデキストリンSO3Na、マンニトールSO3Na、キシリトールSO3Na及びエリスリトールSO3Naからなる群から選択される少なくとも1つである、[52]〜[54]のいずれかに記載の培地添加剤。
[56]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、フコイダン、マルトヘプタオースSO3Na、マルトトリオースSO3Na、マルチトールSO3Na及びスクロース8SO3Kからなる群から選択される少なくとも1つである、[55]に記載の培地添加剤。
[57]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、[52]〜[56]のいずれかに記載の培地添加剤。
[58]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、フィーダー細胞を使用しない条件下で行われる、[42]〜[57]のいずれかに記載の培地添加剤。
[59]フィーダー細胞を使用しない条件が、フィーダー細胞を使用せず、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用する条件である、[58]に記載の培地添加剤。
[60]フィーダー細胞を使用しない条件が、フィーダー細胞を使用せず、ラミニン511若しくはその活性断片又はマトリゲルを使用する条件である、[58]に記載の培地添加剤。
[61]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、シングルセル播種によって行われる、[42]〜[60]のいずれかに記載の培地添加剤。
[62]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、無血清条件下で行われる、[42]〜[61]のいずれかに記載の培地添加剤。
[63]実質的にヒト以外の動物由来成分を含まない、[42]〜[62]のいずれかに記載の培地添加剤。
[64]多能性幹細胞が、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[42]〜[63]のいずれかに記載の培地添加剤。
[65]多能性幹細胞が、霊長類由来である、[42]〜[64]のいずれかに記載の培地添加剤。
[66]多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、[42]〜[65]のいずれかに記載の培地添加剤。
[67] [42]〜[66]のいずれかに記載の培地添加剤を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地。
[68]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加された培地中で人工多能性幹細胞(iPS細胞)を培養する工程を含む、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の未分化維持増殖のための培養方法。
[69]培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、1μM〜1000μMである、[68]に記載の方法。
[70]培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、5μM〜200μMである、[68]に記載の方法。
[71]エタノールアミン類縁体が、下記式
X−CH2−CH2−O−Y
Xは、R1−N(R2)−[R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基を表す]又はR3−CH=N−[R3−CHは、H−CH又はシッフベース型アミノ基保護基を表す]を表し;
Yは、−P(=O)(OH)−O−R4[R4は、−CH2−CH(O−R5)−CH2−O−R6(R5及びR6は、同一又は異なって、炭素数2〜30のアシル基又は水素原子を表す)又は水素原子を表す]、水素原子又はヒドロキシ基の保護基を表す〕
で表される化合物である、[68]〜[70]のいずれかに記載の方法。
[72]R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基であり、
R3が、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基である、[71]に記載の方法。
[73]エタノールアミン類縁体が、ホスホエタノールアミン、モノメチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、及びリゾホスファチジルエタノールアミンからなる群から選ばれる一又は複数である[68]〜[72]のいずれかに記載の方法。
[74]培地が、アルブミンが更に添加された培地である、[68]〜[73]のいずれかに記載の方法。
[75]培地中のアルブミンの濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[74]に記載の方法。
[76]培地中のアルブミンの濃度が、1g/l〜8g/lである、[74]に記載の方法。
[77]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[74]〜[76]のいずれかに記載の方法。
[78]培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、[74]〜[77]のいずれかに記載の方法。
[79]培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、[74]〜[77]のいずれかに記載の方法。
[80]培養が、フィーダー細胞非存在下で行われる、[68]〜[79]のいずれかに記載の方法。
[81]培養が、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用して行われる、[80]に記載の方法。
[82]培養が、ラミニン511若しくはその活性断片又はマトリゲルを使用して行なわれる、[80]に記載の方法。
[83]培養が、シングルセル播種によって行われる、[68]〜[82]のいずれかに記載の方法。
[84]培養が、無血清条件下で行われる、[68]〜[83]のいずれかに記載の方法。
[85]培地が、実質的にヒト以外の動物由来成分を含まない培地である、[68]〜[84]のいずれかに記載の方法。
[86]人工多能性幹細胞が、霊長類由来である、[68]〜[85]のいずれかに記載の方法。
[87]人工多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、[68]〜[86]のいずれかに記載の方法。
[88]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを添加することを含む、多能性幹細胞増殖用培地の保存安定化方法。
[89]更に硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を添加することを含む、[88]に記載の方法。
[90]使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、[89]に記載の方法。
[91]さらに、アルブミンを添加することを含む、[88]〜[90]のいずれかに記載の方法。
[92]使用時のアルブミンの最終濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[91]に記載の方法。
[93]使用時のアルブミンの最終濃度が、1g/l〜8g/lである、[91]に記載の方法。
[94]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[91]〜[93]のいずれかに記載の方法。
[95]アルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、[91]〜[94]のいずれかに記載の方法。
[96]アルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、[91]〜[94]のいずれかに記載の方法。
[97]培地が、β-メルカプトエタノールが実質的に含まれないか、最終濃度が9μM以下となるように添加されてなる、[88]〜[96]のいずれかに記載の方法。
[98]該培地が、多能性幹細胞の未分化維持増殖用である、[88]〜[97]のいずれかに記載の方法。
[99]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地添加剤。
[100]エタノールアミン類縁体が、下記式
X−CH2−CH2−O−Y
Xは、R1−N(R2)−[R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基を表す]又はR3−CH=N−[R3−CHは、H−CH又はシッフベース型アミノ基保護基を表す]を表し;
Yは、−P(=O)(OH)−O−R4[R4は、−CH2−CH(O−R5)−CH2−O−R6(R5及びR6は、同一又は異なって、炭素数2〜30のアシル基又は水素原子を表す)又は水素原子を表す]、水素原子又はヒドロキシ基の保護基を表す〕
で表される化合物である、[99]に記載の培地添加剤。
[101]R1及びR2が、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基であり、
R3が、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基である、[100]に記載の培地添加剤。
[102]エタノールアミン類縁体が、ホスホエタノールアミン、モノメチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、及びリゾホスファチジルエタノールアミンからなる群から選ばれる一又は複数である[99]〜[101]のいずれかに記載の培地添加剤。
[103]アルブミンを更に含む、[99]〜[102]のいずれかに記載の培地添加剤。
[104]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[103]に記載の培地添加剤。
[105]硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を更に含む、[99]〜[104]のいずれかに記載の培地添加剤。
[106]使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、[105]に記載の培地添加剤。
[107]硫酸化糖類が、硫酸化単糖、硫酸化二糖、硫酸化多糖、硫酸化糖アルコール及び硫酸化シクリトールからなる群から選択される少なくとも1つである、[105]または[106]に記載の培地添加剤。
[108]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、セルロースSO3Na、キサンタンガムSO3Na、フコイダン、アルギン酸SO3Na、イヌリンSO3Na、マルトヘプタオースSO3Na、スタキオースSO3Na、マルトトリオースSO3Na、マルチトールSO3Na、スクロース8SO3K、グルコースSO3Na、myo−6イノシトールSO3K、α−シクロデキストリンSO3Na、マンニトールSO3Na、キシリトールSO3Na及びエリスリトールSO3Naからなる群から選択される少なくとも1つである、[105]〜[107]のいずれかに記載の培地添加剤。
[109]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、フコイダン、マルトヘプタオースSO3Na、マルトトリオースSO3Na、マルチトールSO3Na及びスクロース8SO3Kからなる群から選択される少なくとも1つである、[108]に記載の培地添加剤。
[110]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、[105]〜[109]のいずれかに記載の培地添加剤。
[111]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、フィーダー細胞を使用しない条件下で行われる、[99]〜[110]のいずれかに記載の培地添加剤。
[112]フィーダー細胞を使用しない条件が、フィーダー細胞を使用せず、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用する条件である、[111]に記載の培地添加剤。
[113]フィーダー細胞を使用しない条件が、フィーダー細胞を使用せず、ラミニン511若しくはその活性断片又はマトリゲルを使用する条件である、[111]に記載の培地添加剤。
[114]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、シングルセル播種によって行われる、[99]〜[113]のいずれかに記載の培地添加剤。
[115]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、無血清条件下で行われる、[99]〜[114]のいずれかに記載の培地添加剤。
[116]実質的にヒト以外の動物由来成分を含まない、[99]〜[115]のいずれかに記載の培地添加剤。
[117]多能性幹細胞が、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[99]〜[116]のいずれかに記載の培地添加剤。
[118]多能性幹細胞が、霊長類由来である、[99]〜[117]のいずれかに記載の培地添加剤。
[119]多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、[99]〜[118]のいずれかに記載の培地添加剤。
[120] [99]〜[119]のいずれかに記載の培地添加剤を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地。
本発明は、エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加され、かつ、培地中にβ-メルカプトエタノールを実質的に含まない又はβ-メルカプトエタノールの濃度が9μM以下であることを特徴とする培地中で多能性幹細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培養方法(以下、本発明の培養方法とも称する)を提供する。
本発明は、フィーダー細胞がエタノールアミンを放出することを新たに見出し、フィーダーフリーの培養においてもエタノールアミンを添加することにより多能性幹細胞の未分化維持増殖を促進することが可能であることを見出したことに基づく。フィーダー細胞は異種由来細胞が用いられるのが一般的であり、またフィーダー細胞由来のウィルスによる感染例も知られている。従って、本発明は、これらの問題を解消することが可能であり、再生医療の分野において極めて有用である。
また、本発明は、培地中のβ-メルカプトエタノールの濃度を減じても、多能性幹細胞の未分化維持増殖を良好に行えることを見出したことにも基づく。本発明の培養方法においては、培地中にβ-メルカプトエタノールが実質的に含まれない又は全く含まれないことが好ましい。培地中にβ-メルカプトエタノールが含まれる場合であっても、その濃度は9μM以下であることが好ましい。
下記式
X−CH2−CH2−O−Y
Xは、R1−N(R2)−[R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基を表す]又はR3−CH=N−[R3−CHは、H−CH又はシッフベース型アミノ基保護基を表す]を表し;
Yは、−P(=O)(OH)−O−R4[R4は、−CH2−CH(O−R5)−CH2−O−R6(R5及びR6は、同一又は異なって、炭素数2〜30のアシル基又は水素原子を表す)又は水素原子を表す]、水素原子又はヒドロキシ基の保護基を表す〕
で表される化合物が挙げられる。
「プロドラッグ化のためにアミノ基に結合しうる脱離基」としては、有機合成化学の分野で使用されるものであれば特に限定はされないが、例えば、ハロゲン原子(例、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、スルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等)等が挙げられる。
「プロドラッグ化のためにヒドロキシ基に結合しうる脱離基」としては、有機合成化学の分野で使用されるものであれば特に限定はされないが、例えば、ハロゲン原子(例、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、スルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等)等が挙げられる。
ここで培地の「保存安定化」とは、培地の保存時(通常、−80℃程度〜40℃程度)及び使用時における培地の経時劣化が緩和されることを意味する。本発明における「培地の劣化」とは、多能性幹細胞を未分化維持増殖させる機能が低下することであり、その程度は、後述の実施例に記載されるように、多能性幹細胞を当該培地中で所定の期間培養した後、細胞数を測定することにより評価することができる。調製直後の培地を使用した場合を基準として、培養後の細胞数が少ないほど、培地がより劣化したと評価される。
例えば、デキストラン硫酸Naの平均分子量としては、通常1000〜70万、好ましくは1000〜30万、より好ましくは1000〜10万、最も好ましくは2,500〜7,500である。
細胞外基質は、培養器の表面と細胞との接着を改善する目的で細胞の培養に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、ラミニン(ラミニン511、ラミニン332等)、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲン、エラスチン、アドへサミン等の公知のものを使用することができる。また細胞外基質の活性断片は、該細胞外基質と同等の細胞接着活性を有するその断片であればよく、これらも公知のものを使用することができる。例えば、特開2011-78370号公報に開示されている、ラミニン511のE8フラグメント、ラミニン332のE8フラグメント等が挙げられる。細胞外基質及びその活性断片は、市販品であってもよく、例えば、(ライフテクノロジーズ、BDファルコン、バイオラミナ)等から入手可能である。これらの細胞外基質及びその活性断片は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また基底膜を過剰産生するマウスEHS肉腫から抽出、精製した、タンパク質や多糖類を含む複雑な基底膜成分の混合物であるマトリゲル(商品名)を使用してもよい。細胞外基質及びその活性断片は、適当な溶液中に懸濁し、細胞を培養するのに適した容器に塗布すればよい。
細胞外基質の機能をミミックする人工物も、細胞の培養に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、コーニング社のシンセマックス(登録商標)やウルトラウェブ(登録商標)、シグマアルドリッチ社のHy-STEMシリーズ、ポリリジン、ポリオルニチン等の公知のものを使用することができる。
本発明において使用される細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物は、好ましくはマトリゲル、又はラミニン511若しくはラミニン511の活性断片であり、より好ましくはラミニン511の活性断片(即ち、ラミニン511のE8フラグメント)である。
シングルセル播種を行う場合、多能性幹細胞のコロニーを単一の細胞にまで解離した後、培地中に播種する。シングルセル播種は、自体公知の方法により行えばよい。例えば、細胞剥離液(トリプシン溶液等)で細胞間接着、細胞−基質間接着を弱くしたあと、スクレーパー(IWAKI社、9000-220等)等で細胞を基質から剥がし(この状態で細胞は細胞塊を形成した状態で溶液中に浮遊しており、完全なシングルセルではない)、その後ピペッティングにより細胞をシングルセルにまで解離させた後、培地に播種すればよい。播種時には、多能性幹細胞の生存のために、Y-27632(ナカライテスク社:08945-84)などのROCK阻害剤を培地に添加しておくことが好ましい。ROCK阻害剤は、播種の翌日以降は、多能性幹細胞の増殖に必要ないため、培地から除去することが好ましい。
細胞培養においては、培地成分の劣化、細胞から排出される老廃物の蓄積等の理由により、培養中に培地交換を必要とすることがあるが、本発明の培養方法においては、実施例に示すとおり、培地交換を省略することも可能である。例えば、培地交換を行なわずに連続して4日間以上(4日、5日、6日等)、多能性幹細胞を培養することができる。
本発明はまた、エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを添加し、かつ、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を添加することを含む、多能性幹細胞増殖用培地の保存安定化方法(以下、本発明の安定化方法とも称する)を提供する。
上記本発明の培養方法において基礎培地に添加される成分は、培地添加剤とすることができる。即ち、本発明は、エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、β-メルカプトエタノールを実質的に含まない又は使用時の濃度が9μM以下となるようにβ-メルカプトエタノールを含む多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地添加剤(以下、本発明の培地添加剤とも称する)を提供する。
各種被験化合物は、現在のところヒト多能性幹細胞を培養するための最小組成と考えられる「E8」組成(Nature Methods, 2011, 8, 424-429にて開示される)の培地に、所定の濃度にて添加し、培養に用いることにより、その効果を検討した。培地は、「E8」組成からなるとされるEssential 8(ライフテクノロジーズ社:A14666SA)を用いて調製するか、同等の組成となるよう調合したものを用いて調製した。
ヒト血清由来アルブミン(シグマアドリッチ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加し、調製後ただちに培養に使用した場合と、調製後4℃に3週間置いた後に使用した場合で、培養後の細胞数を検討することによりアルブミンの効果を検討した。培養期間は1週間である。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり5μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、トリパンブルー(ライフテクノロジーズ社:15250-061)染色と血球計算盤で行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図1に示す。調製後ただちに使用した場合は、アルブミン添加有りと無しとで同等の細胞増殖を示した。調製後3週間経過した培地を使用した場合は、アルブミン無添加の培地では、ほぼ細胞増殖が見られなかったのに対して、アルブミン添加培地では、明確な細胞増殖が認められた。以上の結果から、E8最小組成培地は通常使用(保存)条件下に3週間置かれることにより、顕著な性能低下を起こすが、アルブミンを添加することにより、そのような劣化現象を改善できることがわかった。よって、アルブミンは、4℃保管での培地の安定化に寄与することがわかった。
エタノールアミン(シグマアルドリッジ社:E0135)を最終濃度6、30、150、750又は3,750μMになるように添加し、調製後ただちに培養に用い、培養後細胞数を検討することによりエタノールアミンの効果を検討した。培養期間は1週間とした。また、アルブミンとの組み合わせの効果を検討するため、上記エタノールアミン添加培地に、さらにヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加したものでも、同様の検討を行った。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり5μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、トリパンブルー(ライフテクノロジーズ社:15250-061)染色と血球計算盤で行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図2に示す。値はエタノールアミン無添加群(0μM)の平均値に対する相対値として示す。エタノールアミンには比較的幅広い濃度域で増殖促進効果があることが分かった。高濃度域では、逆に増殖抑制効果が現れることが分かった。アルブミンとの組み合わせにより、エタノールアミンの増殖促進効果がより増強され、高濃度域でも増殖抑制効果が現れにくく、増殖促進効果を示すことが分かった。
ヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を添加(最終濃度2.6 g/l)した培地に、エタノールアミン(最終濃度30μM)を単独で添加、さらにその培地にデキストラン硫酸ナトリウム(和光純薬、最終濃度50 ng/ml)を添加し、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムとの組み合わせによるさらなる増殖促進効果を検証した。約3週間の培養を行い、その間2度の継代を行い、全培養期間での累積生細胞増加率を算出した。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり5μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。継代時は、トリプルセレクト(ライフテクノロジーズ社:12563-011)で細胞を剥離し、再びY-27632添加培地に13,000個の生細胞を播種し、その翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、トリパンブルー(ライフテクノロジーズ社:15250-061)染色と血球計算盤で行った。
また、最も増加率が高かった、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムの両者を添加した培地で、約一か月の培養を行った後、アルカリフォスファターゼ染色を行い、未分化能維持の確認を行った。アルカリフォスファターゼ染色キット(シグマアルドリッチ社:86-R)を用いて染色した結果を図4に示す。ウェル全体のiPS細胞のコロニーが染色された。これにより、E8最小組成培地にアルブミン、エタノールアミン、デキストラン硫酸ナトリウムを添加した培地での長期培養で、iPS細胞は未分化能を維持した状態で増殖することが確認された。
エタノールアミン(シグマアルドリッジ社:E0135)を最終濃度6、30、150、750又は3,750μMになるように添加し、調製後ただちに培養に用い、培養後細胞数を検討することによりエタノールアミンの効果を検討した。培養期間は8日間とした。1ウェルあたり、100,000個の細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとしてマトリゲル(日本ベクトンディッキンソン社)をコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図5に示す。実施例1と同様に、エタノールアミンが幅広い濃度域で増殖促進効果を奏することを示す結果が得られた。従って、エタノールアミンの増殖促進効果は、ラミニン511を使用しての培養に限定されるものではないことが分かった。
(1)アルブミンを含んだ培地での効果
Essential8にヒト血清由来アルブミン(最終濃度2.6 g/l)及びエタノールアミン(最終濃度30μM)を含んだ培地(コントロール)、並びに、これにデキストラン硫酸ナトリウムを所定の濃度となるように添加した培地をそれぞれ調製し、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムとの組み合わせ効果を検証した。培養期間は6〜12日間とした。シングルセル播種の場合、マトリゲルをコートした12ウェル培養プレートに1ウェルあたり、40,000個の細胞を播種した。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。コロニー状態で播種する場合には、マトリゲルをコートした6ウェル培養プレートに1ウェルあたり、元の培養の2.5〜3.5倍希釈となる細胞を播種した。この場合、播種時に使用する培地にはY-27632を添加しなかった。培地交換を2〜3日毎に行った。
細胞増殖の評価基準は以下の通りである。
◎:細胞数がコントロールのそれに対して120%以上
○:細胞数がコントロールのそれに対して100%以上120%未満
−:細胞数がコントロールのそれに対して50%以上100%未満
×:細胞数がコントロールのそれに対して50%以下
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果を表1に示す。デキストラン硫酸ナトリウムを添加した方が、高い細胞増殖が見られた。よって、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムの組み合わせによる細胞増殖促進効果もまた、ラミニン511を使用しての培養に限定されるものではないことが分かった。また、コロニー状態で播種した場合でも本効果は示され、シングルセル播種した場合に限定されるものでもないことが分かった。
上記(1)の評価において、デキストラン硫酸ナトリウム(最終濃度10 ng/ml)を添加した培地で培地交換を行わずに培養を行い、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムとを組み合わせて培地に添加することにより培地交換を省略できるか否かを検証した。培養期間は6日間とした。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果を図6に示す。培地交換を行わない場合、デキストラン硫酸ナトリウムを添加した方が、高い細胞増殖が見られた。その効果は、デキストラン硫酸ナトリウムを含まない培地で培地交換した場合に近いものであった。よって、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムの組み合わせにより、培地交換を省略できる効果を有することが分かった。
Essential8に、エタノールアミン(最終濃度30μM)を単独で添加した培地、エタノールアミン(最終濃度30μM)及びデキストラン硫酸ナトリウム(和光純薬、最終濃度50 ng/ml)を添加した培地、ヒト血清由来アルブミン(最終濃度2.6 g/l)を単独で添加した培地、をそれぞれ調製し、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムとの組み合わせによる培地安定化効果を検証した。各培地を調製後常温に8日間放置した後に培養に使用した。培養期間は8日間とした。マトリゲルをコートした6ウェル培養プレートに1ウェルあたり、100,000個の細胞を、シングルセル播種した。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図7に示す。エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムの両者を添加した場合の効果は、アルブミンを添加した場合と同等であった。よって、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムの組み合わせには、常温での培地の安定化効果がある上に、培地に汎用されるアルブミンを代替又は削減できる可能性のあることが分かった。
(1)O-ホスホリルエタノールアミン(別名ホスホエタノールアミン)の効果
ヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加した培地に、O-ホスホリルエタノールアミン(シグマアルドリッジ社:P0503-25G)を最終濃度6、30、150又は750 μMになるように添加し、調製翌日より培養に用い、培養後細胞数を検討することによりO-ホスホリルエタノールアミンの効果を検討した。培養期間は1週間とした。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり4.8 μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10 μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、生死細胞オートアナライザーViCELLTM XR (BECKMAN COULTER社)を用いて行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図8に示す。値はO-ホスホリルエタノールアミン無添加群(0 μM)の平均値に対する相対値として示す。O-ホスホリルエタノールアミンには比較的幅広い濃度域で増殖促進効果があることが分かった。
ヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加した培地に、2-(メチルアミノ)エタノール(シグマアルドリッジ社:471445-25ML)を最終濃度6、30、150又は750 μMになるように添加し、調製翌日より培養に用い、培養後細胞数を検討することにより2-(メチルアミノ)エタノールの効果を検討した。培養期間は1週間とした。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり4.8 μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10 μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、生死細胞オートアナライザーViCELLTM XR (BECKMAN COULTER社)を用いて行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図9に示す。値は2-(メチルアミノ)エタノール無添加群(0 μM)の平均値に対する相対値として示す。2-(メチルアミノ)エタノールには比較的幅広い濃度域で増殖促進効果があることが分かった。
ヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加した培地に、2-ジメチルアミノエタノール(シグマアルドリッジ社:471453-100ML)を最終濃度6、30、150又は750 μMになるように添加し、調製翌日より培養に用い、培養後細胞数を検討することにより2-ジメチルアミノエタノールの効果を検討した。培養期間は1週間とした。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり4.8 μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10 μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、生死細胞オートアナライザーViCELLTM XR (BECKMAN COULTER社)を用いて行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図10に示す。値は2-ジメチルアミノエタノール無添加群(0 μM)の平均値に対する相対値として示す。2-ジメチルアミノエタノールは、比較的幅広い濃度域で増殖促進効果を示すが、高濃度域では、増殖抑制効果が現れることが分かった。
ヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加した培地に、エタノールアミン塩酸塩(東京化成社:A0298)を最終濃度6、30、150又は750 μMになるように添加し、調製翌日より培養に用い、培養後細胞数を検討することによりエタノールアミン塩酸塩の効果を検討した。培養期間は1週間とした。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり4.8 μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10 μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、生死細胞オートアナライザーViCELLTM XR (BECKMAN COULTER社)を用いて行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図11に示す。値はエタノールアミン塩酸塩無添加群(0 μM)の平均値に対する相対値として示す。エタノールアミン塩酸塩には比較的幅広い濃度域で増殖促進効果があることが分かった。
ヒト血清アルブミン(Nova Biologics社)の生理食塩水溶液(25%)40mlにリン酸緩衝液(pH7.2)を40ml加えた。さらに予め200℃で30分間加熱した活性炭(5g、和光純薬社製)をリン酸緩衝液20mlで懸濁した液を足し合わせ100mlにした。4℃で3時間撹拌した後、4℃にて11,900rpmで20分間遠心分離した。沈降した活性炭をデカンテーションで除き、反応液を0.22μmのシリンジフィルターでろ過した。かくして脱脂肪酸処理したヒト血清アルブミンを得た。次に、得られた脱脂肪酸処理したヒト血清アルブミンにオレイン酸を添加することにより、脂肪酸担持量が2.2、6.5、21.7mg/gとなるようにヒト血清由来アルブミンを調製し、各々のアルブミンは、最終濃度2.6 g/lとなるよう培地に添加した(その場合の培地中のオレイン酸の最終濃度はそれぞれ20、60、200μMとなる)。各培地にはエタノールアミン(最終濃度30μM)を添加した。各培地を用いて細胞を1週間培養し、培養後の細胞数を確認することによりオレイン酸の影響を検討した。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり4.8 μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10 μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、生死細胞オートアナライザーViCELLTM XR (BECKMAN COULTER社)を用いて行った。
各々の培地を用いて培養した結果を図12に示す。アルブミンのオレイン酸担持量が増加するのに伴って細胞増殖が抑制されることが分かった。
Claims (30)
- エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加され、かつ、培地中にβ-メルカプトエタノールを実質的に含まない又はβ-メルカプトエタノールの濃度が9μM以下であることを特徴とする、多能性幹細胞の未分化維持増殖用の培地であって、培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、11μM〜200μMであり、かつ、アルブミンが更に添加されている培地であって、培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である培地。
- 培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、請求項1に記載の培地。
- 硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩が更に添加された、請求項1または2に記載の培地。
- 培地中の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の濃度が1〜1000ng/mlである請求項3に記載の培地。
- 硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、請求項3または4に記載の培地。
- 多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の培地。
- エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加され、かつ、培地中にβ-メルカプトエタノールを実質的に含まない又はβ-メルカプトエタノールの濃度が9μM以下であることを特徴とする培地中で多能性幹細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培養方法であって、培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、11μM〜200μMであり、かつ、培地にアルブミンが更に添加されていることを特徴とする方法であって、培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である方法。
- 培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、請求項7に記載の方法。
- 培地が、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩が更に添加された培地である、請求項7または8に記載の方法。
- 培地中の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の濃度が1〜1000ng/mlである請求項9に記載の方法。
- 硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、請求項9または10に記載の方法。
- 培養が、フィーダー細胞非存在下で行われる、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
- 培養が、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用して行われる、請求項12に記載の方法。
- 培養が、ラミニン511若しくはその活性断片又はマトリゲルを使用して行なわれる、請求項13に記載の方法。
- 培養が、シングルセル播種によって行われる、請求項7〜14のいずれか一項に記載の方法。
- 培養が、無血清条件下で行われる、請求項7〜15のいずれか一項に記載の方法。
- 多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、請求項7〜16のいずれか一項に記載の方法。
- エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを添加し、アルブミンを添加し、かつ、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を添加することを含む、多能性幹細胞未分化維持増殖用培地の保存安定化方法であって、培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、11μM〜200μMであり、かつ、培地中にβ-メルカプトエタノールを実質的に含まない又はβ-メルカプトエタノールの濃度が9μM以下であって、アルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、方法。
- 使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、請求項18に記載の方法。
- 使用時のアルブミンの最終濃度が、0.1g/l〜20g/lである、請求項18または19に記載の方法。
- 使用時のアルブミンの最終濃度が、1g/l〜8g/lである、請求項18または19に記載の方法。
- アルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
- エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、β-メルカプトエタノールを実質的に含まない又は使用時の濃度が9μM以下となるようにβ-メルカプトエタノールを含み、かつアルブミンを含む多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地添加剤であって、エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの使用時の培地中の濃度が、11μM〜200μMであって、アルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、培地添加剤。
- 使用時のアルブミンの最終濃度が、0.1g/l〜20g/lである、請求項23に記載の培地添加剤。
- 使用時のアルブミンの最終濃度が、1g/l〜8g/lである、請求項23に記載の培地添加剤。
- アルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、請求項23〜25のいずれか一項に記載の培地添加剤。
- 硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を更に含む、請求項23〜26のいずれか一項に記載の培地添加剤。
- 使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、請求項27に記載の培地添加剤。
- 前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、請求項27または28に記載の培地添加剤。
- 多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、請求項23〜29のいずれか一項に記載の培地添加剤。
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