JP6380109B2 - 多能性幹細胞の安定した未分化維持増殖を行うための培養方法 - Google Patents

多能性幹細胞の安定した未分化維持増殖を行うための培養方法 Download PDF

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Description

本発明は、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培養方法等に関し、特に、ヒト多能性幹細胞を、無血清・フィーダーフリー条件下・シングル播種条件下において安定して未分化維持増殖させるための培養方法等に関する。
ES(Embryonic stem)細胞やiPS(induced pluripotent stem)細胞などの多能性幹細胞は、その優れた増殖性や多分化能から、再生医療等での使用が期待されている。特にiPS細胞は、作製・入手が比較的容易であること、作製に際しての倫理的制約が少ないこと、さらには移植の際の拒絶反応の観点から、非常に優れた再生医療の材料と目されている。
これら多能性幹細胞は、従来は、繊維芽細胞などの支持細胞(以下、フィーダー細胞)との共培養で、血清を含有する培地を用いて培養されてきた。例えば、非特許文献1では、山中らによる世界初のiPS細胞作製に関する報告であるが、フィーダー細胞、血清を使用した条件で、iPS細胞の樹立、維持増殖がなされている。また、これら多能性幹細胞は個々の細胞が密集したコロニーを形成しつつ増殖する。コロニーを単一の細胞にまで解離し播種(以下、シングルセル播種)すると、細胞が不安定になることから、ある程度の大きさのコロニーを維持したまま播種(以下、コロニー播種)を行うのが一般的である。例えば、非特許文献2には、シングルセル播種の場合は、コロニー播種に比し、細胞の生育状態が、培養環境の影響を受けやすいことを示す例が開示されている。即ち、シングルセル播種はコロニー播種より、培養難易度が高いと言える。
フィーダーフリー培養を行うためには、フィーダー細胞に代わる基質又は足場材を培養容器底面に塗付する必要がある。基質としては、細胞外マトリクスの成分が使用されることが多い。特許文献1には、ラミニン511の活性断片の基質としての使用が、ヒトES/iPS細胞の増殖に好適であり、シングルセル播種も可能であることが示されている。
特許文献2および非特許文献3には、ヒト多能性幹細胞用の無血清培地組成が開示されている。E8と呼ばれるこの組成は、DMEM/F12を基礎培地とし、bFGFやインスリン等のいくつかの因子を加えたものであるが、現在のところ、ヒト多能性幹細胞を培養するにあたっての最小組成と考えられる。
エタノールアミンは、培地の添加剤として用いた場合、間葉系幹細胞の増殖促進に寄与することが知られている。例えば、特許文献3には、エタノールアミンが、間葉系幹細胞の増殖を促進することを示唆する実施例が開示されている。
また、特許文献4には、エタノールアミン、2-メルカプトエタノール、脂肪酸除去したウシアルブミンと複合させたオレイン酸、およびヘパリン等を含有する培地により霊長類胚性幹細胞を維持する方法等が記載され、特許文献5には、2-メルカプトエタノール、2-エタノールアミン、および無脂肪酸ウシ血清アルブミンと複合体化したオレイン酸等を含有するES細胞培養用培地が記載されている。特許文献6には、ヒトアルブミン、エタノールアミン、およびβ-メルカプトエタノール等を含有するES細胞用培地が開示されている。
上記特許文献4、5及び6には、培地の必須成分として一定量(順に10μM、10μM、100μM)の2-メルカプトエタノール(β-メルカプトエタノール)が記載されている。また、特許文献4では、脂肪酸を除去したウシアルブミンにオレイン酸を担持させるべくオレイン酸を添加しているが、アルブミンに対するオレイン酸の量として9.4mg/gが含まれている。
一方、これまでに、硫酸化多糖類が、成長因子を分解、変性、失活等から保護する作用を有することが報告されている。例えば特許文献7には、カラギーナンがbFGFを安定化することが開示されており、実施例にはヘパリン、デキストラン硫酸、カラギーナン等の硫酸化多糖類を含む保護剤がbFGFを加水分解や熱変性から保護することが記載されている。しかしながら、エタノールアミンと硫酸化多糖類との組み合わせによる効果は開示されていない。また、上記特許文献4には、エタノールアミンとヘパリンが一体となって含まれた培地が開示されているが、それぞれの詳細な効果はこれまでに知られていない。
特開2011-78370号公報 国際公開第2012/019122号 特開2006-325445号公報 特表2009-542247号公報 国際公開第2005/063968号 米国特許8569061号公報 国際公開第92/13526号
Cell, 2006, 126, 663-76 Nature Communications, 2012, 3:1236 Nature Methods, 2011, 8, 424-429
多能性幹細胞を用いた再生医療を、特に産業レベルで、行うに当たっては、上記従来の培養方法では様々な問題がある。フィーダー細胞はマウス胎仔由来繊維芽細胞など、異種由来細胞が用いられるのが一般的であり、移植後の安全性の問題が指摘される。また、コスト面、細胞の品質管理面からも、フィーダー細胞を用いない(以下、フィーダーフリー)培養の方が良いと言える。血清は、感染源の問題、及びロット間の性能差により培養成績にバラつきがでる懸念が指摘される。コロニー播種は、播種する細胞数の厳密な調整ができないため、培養スケジュールが管理しにくく、また、培養結果に属人性が生じる。産業レベルで再生医療用の多能性幹細胞を生産するには、厳密に、手順、スケジュールが管理された条件で、複数の作業者によって作業がなされる必要がある。さらに、通常多能性幹細胞の培地に添加されるβ-メルカプトエタノールは毒物に指定されており、取扱いの煩雑さ等の理由から培地に添加しないまたは添加量をできるだけ減らすことが好ましく、その添加量が多能性幹細胞の培養へ与える影響については詳細には明らかにされていない。以上の事から、従来の培養方法とは異なる、無血清・フィーダーフリー・シングルセル播種による多能性幹細胞の培養方法の開発が求められている。加えて、産業レベルではコストは大きな問題である。従って、単に無血清・フィーダーフリー・シングルセル播種培養ができればよいのではなく、できるだけ単位時間あたりに得られる細胞が多い方が、つまり増殖効率の優れた培養ができることが望ましい。
また本発明者らは、特許文献1に記載されたラミニン511の活性断片を基質とし、E8組成からなる培地を用いる従来の培養方法で、無血清・フィーダーフリー・シングルセル播種培養を試みたが、長期間安定して維持培養を行うことができなかった。このような培養の不安定性の原因の解明と克服、並びにさらなる増殖性能の向上が必要である。
そこで本発明は、多能性幹細胞の未分化維持増殖を行うための手段を提供することを目的とする。更に本発明は、無血清・フィーダーフリー・シングルセル播種培養において、安定かつ効率の良い多能性幹細胞の未分化維持増殖を行うための手段を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、フィーダー細胞がエタノールアミンを放出すること、エタノールアミンが多能性幹細胞の増殖を促進することを見出した。また、E8は解凍・調製後に著しい性能低下を起こし、これがE8による培養の不安定性の原因である可能性があること、さらにはアルブミンによりそのような性能低下を抑制できることを見出した。またアルブミンには、培地安定化効果のみならず、エタノールアミンの上記細胞増殖効果を増強する作用があることを見出した。また硫酸化糖類には、エタノールアミン存在下で増殖促進、培地安定化効果があることを見出した。さらに、本発明者らは、β-メルカプトエタノール、およびアルブミンに担持された脂肪酸の量が、多能性幹細胞の未分化維持増殖に影響を与えることを示した。本発明者らはこれらの知見に基づき更に研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は以下の通りである。
[1]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加され、かつ、培地中にβ-メルカプトエタノールを実質的に含まない又はβ-メルカプトエタノールの濃度が9μM以下であることを特徴とする培地中で多能性幹細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培養方法。
[2]培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、1μM〜1000μMである、[1]に記載の方法。
[3]培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、5μM〜200μMである、[1]に記載の方法。
[4]エタノールアミン類縁体が、下記式
[化1]
X−CH−CH−O−Y
〔式中、
Xは、R−N(R)−[R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基を表す]又はR−CH=N−[R−CHは、H−CH又はシッフベース型アミノ基保護基を表す]を表し;
Yは、−P(=O)(OH)−O−R[Rは、−CH−CH(O−R)−CH−O−R(R及びRは、同一又は異なって、炭素数2〜30のアシル基又は水素原子を表す)又は水素原子を表す]、水素原子又はヒドロキシ基の保護基を表す〕
で表される化合物である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]R及びRが、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基であり、
が、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基である、[4]に記載の方法。
[6]エタノールアミン類縁体が、ホスホエタノールアミン、モノメチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、及びリゾホスファチジルエタノールアミンからなる群から選ばれる一又は複数である[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[7]培地が、アルブミンが更に添加された培地である、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]培地中のアルブミンの濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[7]に記載の方法。
[9]培地中のアルブミンの濃度が、1g/l〜8g/lである、[7]に記載の方法。
[10]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[7]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、[7]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、[7]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[13]培地が、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩が更に添加された培地である、[1]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]培地中の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の濃度が1〜1000ng/mlである[13]に記載の方法。
[15]硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、[13]または[14]に記載の方法。
[16]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加され、かつ、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩が添加されることを特徴とする培地中で多能性幹細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培養方法。
[17]培地中の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の濃度が1〜1000ng/mlである[16]に記載の方法。
[18]硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、[16]または[17]に記載の方法。
[19]培地が、アルブミンが更に添加された培地である、[16]〜[18]のいずれかに記載の方法。
[20]培地中のアルブミンの濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[19]に記載の方法。
[21]培地中のアルブミンの濃度が、1g/l〜8g/lである、[19]に記載の方法。
[22]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[19]〜[21]のいずれかに記載の方法。
[23]培養が、フィーダー細胞非存在下で行われる、[1]〜[22]のいずれかに記載の方法。
[24]培養が、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用して行われる、[23]に記載の方法。
[25]培養が、ラミニン511若しくはその活性断片又はマトリゲルを使用して行なわれる、[23]に記載の方法。
[26]培養が、シングルセル播種によって行われる、[1]〜[25]のいずれかに記載の方法。
[27]培養が、無血清条件下で行われる、[1]〜[26]のいずれかに記載の方法。
[28]培地が、実質的にヒト以外の動物由来成分を含まない培地である、[1]〜[27]のいずれかに記載の方法。
[29]多能性幹細胞が、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[1]〜[28]のいずれかに記載の方法。
[30]多能性幹細胞が、霊長類由来である、[1]〜[29]のいずれかに記載の方法。
[31]多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、[1]〜[30]のいずれかに記載の方法。
[32]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを添加し、かつ、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を添加することを含む、多能性幹細胞増殖用培地の保存安定化方法。
[33]使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、[32]に記載の方法。
[34]さらに、アルブミンを添加することを含む、[32]または[33]に記載の方法。
[35]使用時のアルブミンの最終濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[34]に記載の方法。
[36]使用時のアルブミンの最終濃度が、1g/l〜8g/lである、[34]に記載の方法。
[37]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[34]〜[36]のいずれかに記載の方法。
[38]アルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、[34]〜[37]のいずれかに記載の方法。
[39]アルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、[34]〜[37]のいずれかに記載の方法。
[40]培地が、β-メルカプトエタノールが実質的に含まれないか、最終濃度が9μM以下となるように添加されてなる、[32]〜[39]のいずれかに記載の方法。
[41]該培地が、多能性幹細胞の未分化維持増殖用である、[32]〜[40]のいずれかに記載の方法。
[42]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、β-メルカプトエタノールを実質的に含まない又は使用時の濃度が9μM以下となるようにβ-メルカプトエタノールを含む多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地添加剤。
[43]エタノールアミン類縁体が、下記式
[化2]
X−CH−CH−O−Y
〔式中、
Xは、R−N(R)−[R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基を表す]又はR−CH=N−[R−CHは、H−CH又はシッフベース型アミノ基保護基を表す]を表し;
Yは、−P(=O)(OH)−O−R[Rは、−CH−CH(O−R)−CH−O−R(R及びRは、同一又は異なって、炭素数2〜30のアシル基又は水素原子を表す)又は水素原子を表す]、水素原子又はヒドロキシ基の保護基を表す〕
で表される化合物である、[42]に記載の培地添加剤。
[44]R及びRが、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基であり、
が、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基である、[43]に記載の培地添加剤。
[45]エタノールアミン類縁体が、ホスホエタノールアミン、モノメチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、及びリゾホスファチジルエタノールアミンからなる群から選ばれる一又は複数である[42]〜[44]のいずれかに記載の培地添加剤。
[46]アルブミンを更に含む、[42]〜[45]のいずれかに記載の培地添加剤。
[47]使用時のアルブミンの最終濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[46]に記載の培地添加剤。
[48]使用時のアルブミンの最終濃度が、1g/l〜8g/lである、[46]に記載の培地添加剤。
[49]アルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、[46]〜[48]のいずれかに記載の培地添加剤。
[50]アルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、[46]〜[48]のいずれかに記載の培地添加剤。
[51]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[46]〜[50]のいずれかに記載の培地添加剤。
[52]硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を更に含む、[42]〜[51]のいずれかに記載の培地添加剤。
[53]使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、[52]に記載の培地添加剤。
[54]硫酸化糖類が、硫酸化単糖、硫酸化二糖、硫酸化多糖、硫酸化糖アルコール及び硫酸化シクリトールからなる群から選択される少なくとも1つである、[52]または[53]に記載の培地添加剤。
[55]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、セルロースSONa、キサンタンガムSONa、フコイダン、アルギン酸SONa、イヌリンSONa、マルトヘプタオースSONa、スタキオースSONa、マルトトリオースSONa、マルチトールSONa、スクロース8SOK、グルコースSONa、myo−6イノシトールSOK、α−シクロデキストリンSONa、マンニトールSO3Na、キシリトールSONa及びエリスリトールSO3Naからなる群から選択される少なくとも1つである、[52]〜[54]のいずれかに記載の培地添加剤。
[56]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、フコイダン、マルトヘプタオースSONa、マルトトリオースSONa、マルチトールSONa及びスクロース8SOKからなる群から選択される少なくとも1つである、[55]に記載の培地添加剤。
[57]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、[52]〜[56]のいずれかに記載の培地添加剤。
[58]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、フィーダー細胞を使用しない条件下で行われる、[42]〜[57]のいずれかに記載の培地添加剤。
[59]フィーダー細胞を使用しない条件が、フィーダー細胞を使用せず、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用する条件である、[58]に記載の培地添加剤。
[60]フィーダー細胞を使用しない条件が、フィーダー細胞を使用せず、ラミニン511若しくはその活性断片又はマトリゲルを使用する条件である、[58]に記載の培地添加剤。
[61]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、シングルセル播種によって行われる、[42]〜[60]のいずれかに記載の培地添加剤。
[62]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、無血清条件下で行われる、[42]〜[61]のいずれかに記載の培地添加剤。
[63]実質的にヒト以外の動物由来成分を含まない、[42]〜[62]のいずれかに記載の培地添加剤。
[64]多能性幹細胞が、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[42]〜[63]のいずれかに記載の培地添加剤。
[65]多能性幹細胞が、霊長類由来である、[42]〜[64]のいずれかに記載の培地添加剤。
[66]多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、[42]〜[65]のいずれかに記載の培地添加剤。
[67] [42]〜[66]のいずれかに記載の培地添加剤を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地。
[68]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加された培地中で人工多能性幹細胞(iPS細胞)を培養する工程を含む、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の未分化維持増殖のための培養方法。
[69]培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、1μM〜1000μMである、[68]に記載の方法。
[70]培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、5μM〜200μMである、[68]に記載の方法。
[71]エタノールアミン類縁体が、下記式
[化3]
X−CH−CH−O−Y
〔式中、
Xは、R−N(R)−[R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基を表す]又はR−CH=N−[R−CHは、H−CH又はシッフベース型アミノ基保護基を表す]を表し;
Yは、−P(=O)(OH)−O−R[Rは、−CH−CH(O−R)−CH−O−R(R及びRは、同一又は異なって、炭素数2〜30のアシル基又は水素原子を表す)又は水素原子を表す]、水素原子又はヒドロキシ基の保護基を表す〕
で表される化合物である、[68]〜[70]のいずれかに記載の方法。
[72]R及びRが、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基であり、
が、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基である、[71]に記載の方法。
[73]エタノールアミン類縁体が、ホスホエタノールアミン、モノメチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、及びリゾホスファチジルエタノールアミンからなる群から選ばれる一又は複数である[68]〜[72]のいずれかに記載の方法。
[74]培地が、アルブミンが更に添加された培地である、[68]〜[73]のいずれかに記載の方法。
[75]培地中のアルブミンの濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[74]に記載の方法。
[76]培地中のアルブミンの濃度が、1g/l〜8g/lである、[74]に記載の方法。
[77]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[74]〜[76]のいずれかに記載の方法。
[78]培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、[74]〜[77]のいずれかに記載の方法。
[79]培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、[74]〜[77]のいずれかに記載の方法。
[80]培養が、フィーダー細胞非存在下で行われる、[68]〜[79]のいずれかに記載の方法。
[81]培養が、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用して行われる、[80]に記載の方法。
[82]培養が、ラミニン511若しくはその活性断片又はマトリゲルを使用して行なわれる、[80]に記載の方法。
[83]培養が、シングルセル播種によって行われる、[68]〜[82]のいずれかに記載の方法。
[84]培養が、無血清条件下で行われる、[68]〜[83]のいずれかに記載の方法。
[85]培地が、実質的にヒト以外の動物由来成分を含まない培地である、[68]〜[84]のいずれかに記載の方法。
[86]人工多能性幹細胞が、霊長類由来である、[68]〜[85]のいずれかに記載の方法。
[87]人工多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、[68]〜[86]のいずれかに記載の方法。
[88]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを添加することを含む、多能性幹細胞増殖用培地の保存安定化方法。
[89]更に硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を添加することを含む、[88]に記載の方法。
[90]使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、[89]に記載の方法。
[91]さらに、アルブミンを添加することを含む、[88]〜[90]のいずれかに記載の方法。
[92]使用時のアルブミンの最終濃度が、0.1g/l〜20g/lである、[91]に記載の方法。
[93]使用時のアルブミンの最終濃度が、1g/l〜8g/lである、[91]に記載の方法。
[94]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[91]〜[93]のいずれかに記載の方法。
[95]アルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、[91]〜[94]のいずれかに記載の方法。
[96]アルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、[91]〜[94]のいずれかに記載の方法。
[97]培地が、β-メルカプトエタノールが実質的に含まれないか、最終濃度が9μM以下となるように添加されてなる、[88]〜[96]のいずれかに記載の方法。
[98]該培地が、多能性幹細胞の未分化維持増殖用である、[88]〜[97]のいずれかに記載の方法。
[99]エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地添加剤。
[100]エタノールアミン類縁体が、下記式
[化4]
X−CH−CH−O−Y
〔式中、
Xは、R−N(R)−[R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基を表す]又はR−CH=N−[R−CHは、H−CH又はシッフベース型アミノ基保護基を表す]を表し;
Yは、−P(=O)(OH)−O−R[Rは、−CH−CH(O−R)−CH−O−R(R及びRは、同一又は異なって、炭素数2〜30のアシル基又は水素原子を表す)又は水素原子を表す]、水素原子又はヒドロキシ基の保護基を表す〕
で表される化合物である、[99]に記載の培地添加剤。
[101]R及びRが、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基であり、
が、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基である、[100]に記載の培地添加剤。
[102]エタノールアミン類縁体が、ホスホエタノールアミン、モノメチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、及びリゾホスファチジルエタノールアミンからなる群から選ばれる一又は複数である[99]〜[101]のいずれかに記載の培地添加剤。
[103]アルブミンを更に含む、[99]〜[102]のいずれかに記載の培地添加剤。
[104]アルブミンが動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである、[103]に記載の培地添加剤。
[105]硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を更に含む、[99]〜[104]のいずれかに記載の培地添加剤。
[106]使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、[105]に記載の培地添加剤。
[107]硫酸化糖類が、硫酸化単糖、硫酸化二糖、硫酸化多糖、硫酸化糖アルコール及び硫酸化シクリトールからなる群から選択される少なくとも1つである、[105]または[106]に記載の培地添加剤。
[108]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、セルロースSONa、キサンタンガムSONa、フコイダン、アルギン酸SONa、イヌリンSONa、マルトヘプタオースSONa、スタキオースSONa、マルトトリオースSONa、マルチトールSONa、スクロース8SOK、グルコースSONa、myo−6イノシトールSOK、α−シクロデキストリンSONa、マンニトールSO3Na、キシリトールSONa及びエリスリトールSO3Naからなる群から選択される少なくとも1つである、[105]〜[107]のいずれかに記載の培地添加剤。
[109]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、デキストラン硫酸Na、フコイダン、マルトヘプタオースSONa、マルトトリオースSONa、マルチトールSONa及びスクロース8SOKからなる群から選択される少なくとも1つである、[108]に記載の培地添加剤。
[110]前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、[105]〜[109]のいずれかに記載の培地添加剤。
[111]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、フィーダー細胞を使用しない条件下で行われる、[99]〜[110]のいずれかに記載の培地添加剤。
[112]フィーダー細胞を使用しない条件が、フィーダー細胞を使用せず、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用する条件である、[111]に記載の培地添加剤。
[113]フィーダー細胞を使用しない条件が、フィーダー細胞を使用せず、ラミニン511若しくはその活性断片又はマトリゲルを使用する条件である、[111]に記載の培地添加剤。
[114]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、シングルセル播種によって行われる、[99]〜[113]のいずれかに記載の培地添加剤。
[115]多能性幹細胞の未分化維持増殖が、無血清条件下で行われる、[99]〜[114]のいずれかに記載の培地添加剤。
[116]実質的にヒト以外の動物由来成分を含まない、[99]〜[115]のいずれかに記載の培地添加剤。
[117]多能性幹細胞が、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[99]〜[116]のいずれかに記載の培地添加剤。
[118]多能性幹細胞が、霊長類由来である、[99]〜[117]のいずれかに記載の培地添加剤。
[119]多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、[99]〜[118]のいずれかに記載の培地添加剤。
[120] [99]〜[119]のいずれかに記載の培地添加剤を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地。
本発明によれば、多能性幹細胞を安定して効率よく増殖させることができ、無血清・フィーダーフリー・シングルセル播種培養においても長期間安定して未分化維持増殖させることができる。
アルブミンによる4℃保存条件下での培地安定化効果を示す図である。 エタノールアミンの細胞増殖促進効果及びアルブミンとの組み合わせ効果を示す図である。 エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムとの組み合わせによる細胞増殖促進効果を累積生細胞増加率(倍)で示す図である。 E8最小組成培地にアルブミン、エタノールアミン、デキストラン硫酸ナトリウムを添加した培地での長期培養後のiPS細胞のコロニーをアルカリフォスファターゼ染色した結果を示す図である。 基底膜マトリックスとしてマトリゲルを使用した培養におけるエタノールアミンの細胞増殖促進効果を示す図である。 アルブミン及びエタノールアミンを含む培地にデキストラン硫酸ナトリウムを添加することにより、iPS細胞の培養において培地交換を省略できることを示す図である。 エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムとの組み合わせによる常温保存条件下での培地安定化効果を示す図である。 O-ホスホリルエタノールアミンの細胞増殖促進効果を示す図である。 2-(メチルアミノ)エタノールの細胞増殖促進効果を示す図である。 2-ジメチルアミノエタノールの細胞増殖促進効果を示す図である。 エタノールアミン塩酸塩の細胞増殖促進効果を示す図である。 アルブミンのオレイン酸担持量の増加に伴う細胞増殖抑制効果を示す図である。
(多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培養方法)
本発明は、エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加され、かつ、培地中にβ-メルカプトエタノールを実質的に含まない又はβ-メルカプトエタノールの濃度が9μM以下であることを特徴とする培地中で多能性幹細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培養方法(以下、本発明の培養方法とも称する)を提供する。
本発明は、フィーダー細胞がエタノールアミンを放出することを新たに見出し、フィーダーフリーの培養においてもエタノールアミンを添加することにより多能性幹細胞の未分化維持増殖を促進することが可能であることを見出したことに基づく。フィーダー細胞は異種由来細胞が用いられるのが一般的であり、またフィーダー細胞由来のウィルスによる感染例も知られている。従って、本発明は、これらの問題を解消することが可能であり、再生医療の分野において極めて有用である。
また、本発明は、培地中のβ-メルカプトエタノールの濃度を減じても、多能性幹細胞の未分化維持増殖を良好に行えることを見出したことにも基づく。本発明の培養方法においては、培地中にβ-メルカプトエタノールが実質的に含まれない又は全く含まれないことが好ましい。培地中にβ-メルカプトエタノールが含まれる場合であっても、その濃度は9μM以下であることが好ましい。
本明細書中、「β-メルカプトエタノールが実質的に含まれない」とは、β-メルカプトエタノールの含有量が検出限界未満の濃度であることを意味する。
本発明において、「多能性幹細胞」とは、自己複製能及び分化/増殖能を有する未成熟な細胞であって、生体を構成する全ての組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性生殖細胞(EG細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)等を挙げることが出来る。体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立した幹細胞も、多能性幹細胞に含まれる(Nature, 385, 810 (1997); Science, 280, 1256 (1998); Nature Biotechnology, 17, 456 (1999); Nature, 394, 369 (1998); Nature Genetics, 22, 127 (1999); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 14984 (1999); Nature Genetics, 24, 109 (2000))。尚、本発明における多能性幹細胞には、複能性幹細胞(multipotent stem cell)は含まれない。複能性幹細胞とは、全ての種類ではないが、複数種の組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味し、間葉系幹細胞等の体性幹細胞が含まれる。
本発明の培養方法は、いずれの多能性幹細胞にも好適に使用することができるが、好ましくは、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)の未分化維持増殖のために使用される。
また本発明の培養方法は、いずれの動物由来の多能性幹細胞にも好適に使用することができる。本発明の培地を使用して培養され得る多能性幹細胞は、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等由来の多能性幹細胞であり、好ましくは霊長類由来の多能性幹細胞である。再生医療に用いられる場合は、好ましくはヒトiPS細胞である。
本発明において、多能性幹細胞の「未分化維持増殖」とは、多能性幹細胞が多分化能を維持したまま未分化状態で増殖することを意味する。即ち、本発明の培養方法は、多能性幹細胞を多分化能を維持したまま未分化状態で増殖させる方法ということもできる。多能性幹細胞が未分化状態に維持されていることは、後述の実施例に示すようにアルカリフォスファターゼ染色を行うことにより確認される。染色された細胞は未分化状態に維持されていると評価される。
本発明において用いられる「エタノールアミン」(2-アミノエタノール、モノエタノールアミンとも呼ばれる)は、天然物やその加工品から単離・精製したものであってもよいし、合成品であってもよい。エタノールアミンは、酸化エチレンとアンモニアを反応させて製造することができる。またエタノールアミンは、溶媒抽出、各種クロマトグラフィーなどの公知の技術を用いて天然物やその加工品から単離・精製することもできる。エタノールアミンは、市販品であってもよく、例えば、シグマアルドリッチ社などから入手可能である。
本発明において用いられる「エタノールアミン類縁体」としては、
下記式
[化5]
X−CH−CH−O−Y
〔式中、
Xは、R−N(R)−[R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアミノ基の保護基を表す]又はR−CH=N−[R−CHは、H−CH又はシッフベース型アミノ基保護基を表す]を表し;
Yは、−P(=O)(OH)−O−R[Rは、−CH−CH(O−R)−CH−O−R(R及びRは、同一又は異なって、炭素数2〜30のアシル基又は水素原子を表す)又は水素原子を表す]、水素原子又はヒドロキシ基の保護基を表す〕
で表される化合物が挙げられる。
「アミノ基の保護基」については、例えば、Greenら、Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, 1999, John Wiley & Sons, Inc.などの成書を参照することができ、適宜の保護基を選択して導入及び除去することが可能である。「アミノ基の保護基」としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基が挙げられる。さらに、プロドラッグ化のためにアミノ基に結合しうる脱離基も挙げられる。
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。
「アリール基」としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等が挙げられる。
「炭素数2〜30のアシル基」としては、飽和カルボン酸アシル基及び不飽和カルボン酸アシル基が挙げられる。飽和カルボン酸アシル基としては、アセチル(エタノイル)、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイル、イコサノイル、エイコサノイル、ヘンイコサノイル、ヘンエイコサノイル、ドコサノイル、トリカサノイル、テトラコサノイル、ペンタコサノイル、ヘキサコサノイル、ヘプタコサノイル、オクタコサノイル、ノナコサノイル及びトリアコンタノイル等が挙げられる。不飽和カルボン酸アシル基としては、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、イソクロトノイル、ブテノイル、ブタジエノイル、ペンテノイル、ヘキセノイル、ヘプテノイル、オクテノイル、ノネノイル、デセノイル、ウンデセノイル、ドデセノイル、テトラデセノイル、オレロイル、エライジノイル、シクロペンタノイル、シクロヘキサノイル、シクロヘプタノイル、メチルシクロペンタノイル、メチルシクロヘキサノイル、メチルシクロヘプタノイル、シクロペンテノイル、2,4−シクロペンタジエノイル、シクロヘキセノイル、2,4−シクロヘキサジエノイル、シクロヘプテノイル、メチルシクロペンテノイル、メチルシクロヘキセノイル及びメチルシクロヘプテノイル等が挙げられる。
「炭素数1〜6のアルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖又は分枝アルキル基を意味し、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、n−ヘキシル、2−ヘキシル等が挙げられる。
「炭素数1〜6のアルコキシル基」とは、炭素数1〜6の直鎖又は分枝アルコキシル基を意味し、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、エトキシエトキシ基、エトキシプロポキシキ基等が挙げられる。
「炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基」とは、アルキル基中の水素原子の一部が水酸基で置換された、炭素数1〜6の直鎖又は分枝ヒドロキシアルキル基を意味し、具体的には、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ−2-メチルプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
「炭素数1〜6のハロアルキル基」とは、アルキル基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換された、炭素数1〜6の直鎖又は分岐ハロアルキル基を意味し、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。具体的には、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2−フルオロエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3−クロロプロピル基または3−ヨードプロピル基等が挙げられる。
「炭素数1〜6のハロアルコキシル基」とは、アルコキシル基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換された、炭素数1〜6の直鎖又は分岐ハロアルコキシル基を意味し、具体的には、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2−クロロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロ−n−プロポキシ基、ヘプタフルオロ−i−プロポキシ基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロポキシ基、3−フルオロ−n−プロポキシ基、1−クロロシクロプロポキシ基、2−ブロモシクロプロポキシ基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−2−ブトキシ基、ノナフルオロ−n−ブトキシ基、ノナフルオロ−2−ブトキシ基、5,5,5−トリフルオロ−n−ペンチルオキシ基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−2−ペンチルオキシ基、3−クロロ−n−ペンチルオキシ基、4−ブロモ−2−ペンチルオキシ基、4−クロロブチルオキシ基、2−ヨード−n−プロピルオキシ基等が挙げられる。
「炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基」とは、ヒドロキシルアルキル基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換された、炭素数1〜6の直鎖又は分岐ハロヒドロキシアルキル基を意味し、具体的には、ジフルオロヒドロキシメチル、1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエチル、2,2−ジフルオロ−2−ヒドロキシエチル、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−ヒドロキシエチル基等が挙げられる。
「プロドラッグ化のためにアミノ基に結合しうる脱離基」における「プロドラッグ化」とは、それ自体では本発明の効果が小さいかまたは発揮されないが、培地中で及び/または培養中に脱離基が脱離して本発明の効果が発揮されるように対象化合物を変換しておくことであり、本発明の効果が発揮される化合物中のアミノ基と脱離基との間で培地中で及び/または培養中に脱離基が脱離するように一時的結合を形成しておくものである。
「プロドラッグ化のためにアミノ基に結合しうる脱離基」としては、有機合成化学の分野で使用されるものであれば特に限定はされないが、例えば、ハロゲン原子(例、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、スルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等)等が挙げられる。
−CHがシッフベース型アミノ基保護基である場合、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アリール基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のハロアルコキシル基又は炭素数1〜6のハロヒドロキシアルキル基である。
「ヒドロキシ基の保護基」は、有機合成化学の分野で使用されるヒドロキシ基の保護基であれば特に限定はされないが、例えば、炭素数1〜6のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル)、フェニル基、トリチル基、炭素数7〜10のアラルキル基(例、ベンジル、p−メトキシベンジル)、ホルミル基、炭素数1〜6のアルキル−カルボニル基(例、アセチル、プロピオニル)、ベンゾイル基、炭素数7〜10のアラルキル−カルボニル基(例、ベンジルカルボニル)、メトキシメチル、エトキシエチル、2−テトラヒドロピラニル基、2−テトラヒドロフラニル基、置換シリル基(例、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジエチルシリル)、炭素数2〜6のアルケニル基(例、1−アリル)等が挙げられる。さらに、プロドラッグ化のためにヒドロキシ基に結合しうる脱離基も挙げられる。
「プロドラッグ化のためにヒドロキシ基に結合しうる脱離基」における「プロドラッグ化」とは、それ自体では本発明の効果が小さいかまたは発揮されないが、培地中で及び/または培養中に脱離基が脱離して本発明の効果が発揮されるように対象化合物を変換しておくことであり、本発明の効果が発揮される化合物中のヒドロキシ基と脱離基との間で培地中で及び/または培養中に脱離基が脱離するように一時的結合を形成しておくものである。
「プロドラッグ化のためにヒドロキシ基に結合しうる脱離基」としては、有機合成化学の分野で使用されるものであれば特に限定はされないが、例えば、ハロゲン原子(例、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、スルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等)等が挙げられる。
エタノールアミン類縁体は、好ましくは、ホスホエタノールアミン(別名ホスホリルエタノールアミン)、モノメチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、及びリゾホスファチジルエタノールアミンからなる群から選ばれる一又は複数である。
本発明において用いられるエタノールアミン及び/又はエタノールアミン類縁体は、薬学的に許容可能な塩の形態であってもよい。かかる塩としては、例えば、化合物中にカルボキシル基等の酸性基が存在する場合の酸性基に対しては、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、モルホリン、ピペリジン、ジシクロへキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。化合物中に塩基性基が存在する場合の塩基性基に対しては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸などの無機酸との塩、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩が挙げられる。特に塩酸塩が好ましい。
培地中のエタノールアミン及び/又はエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩の最終濃度(使用時の濃度)は、フィーダーフリーの条件下で、多能性幹細胞の未分化維持増殖の促進に働き得る限り、任意の範囲に設定することができる。その種類によって異なり得るが、通常1μM〜1000μM、好ましくは5μM〜200μM、又は11μM〜200μMである。1μM未満であると、多能性幹細胞の未分化維持増殖を促進する効果が弱くなる傾向がある。また1000μMを超えると、多能性幹細胞の増殖抑制を引き起こす場合がある。培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度は、通常1μM〜1000μM、好ましくは5μM〜200μM、又は11μM〜200μMである。複数種を用いる場合にはそれらの合計量が上記範囲内にあるように設定されるが、種数によって適宜増減し得る。
本発明において、エタノールアミン及び/又はエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが「フィーダーフリーの条件下で、多能性幹細胞の未分化維持増殖の促進に働く」とは、エタノールアミン及び/又はエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩を含有しないこと以外は同じ条件で、フィーダー細胞の非存在下で培養した多能性幹細胞の細胞数を基準(100%)として、エタノールアミン及び/又はエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを培地に含有させた場合に、100%を超える細胞数が得られることをいう。フィーダーフリーの条件下で多能性幹細胞の未分化維持増殖の促進に働くか否かは、実施例に記載の方法等の公知の細胞増殖系を使用する方法で評価することができる。
β-メルカプトエタノールはその濃度が高いと毒性が懸念される。従って、本発明において用いられる、β-メルカプトエタノールの濃度は使用時の最終濃度として9μM以下である。より好ましくは7μM以下、さらに好ましくは5μM以下である。さらにはβ-メルカプトエタノールが実質的に含まれていない又は全く含まれないことが好ましい。本願発明では、実質的にβ-メルカプトエタノールを含んでいなくとも多能性幹細胞の安定した未分化維持増殖が可能である。
「β-メルカプトエタノールが実質的に含まれない」の定義は上記に準じる。
本発明において用いられる培地は、アルブミンが更に添加された培地であってもよい。アルブミンの添加により、培地の保存安定化効果が得られると共に、エタノールアミンによる多能性幹細胞の未分化維持増殖の促進効果が増強される。
ここで培地の「保存安定化」とは、培地の保存時(通常、−80℃程度〜40℃程度)及び使用時における培地の経時劣化が緩和されることを意味する。本発明における「培地の劣化」とは、多能性幹細胞を未分化維持増殖させる機能が低下することであり、その程度は、後述の実施例に記載されるように、多能性幹細胞を当該培地中で所定の期間培養した後、細胞数を測定することにより評価することができる。調製直後の培地を使用した場合を基準として、培養後の細胞数が少ないほど、培地がより劣化したと評価される。
本発明において用いられるアルブミンは、動物由来の血清アルブミンである。動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなどのげっ歯類及びウサギなどの実験動物、イヌ及びネコなどのペット、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ及びヒツジなどの家畜、ヒト、サル、オランウータン及びチンパンジーなどの霊長類などが挙げられ、特に限定されない。再生医療に使用される細胞を培養する場合、本発明において用いられるアルブミンは、好ましくはヒトアルブミンである。尚、「動物由来」とは、アルブミンのアミノ酸配列が動物のものであることを意味する。
本発明において用いられるアルブミンは、動物の生体試料(例えば、血液、血漿、血清等)から単離・精製したものであってもよいし、遺伝子組換え技術によって製造され単離・精製されたものであってもよい。アルブミンの調製方法は公知である。またアルブミンは、市販品であってもよく、例えば、シグマアルドリッチ社などから入手可能である。
本発明において用いられるアルブミンは、好ましくは、動物(ヒトを含む)の血漿又は遺伝子組み換え技術から得られるアルブミンである。
本発明において用いられるアルブミンは、その脂肪酸担持量が好ましくは9mg/g以下、より好ましくは7mg/g以下、さらに好ましくは2.2mg/g以下である。
本発明においてアルブミンが添加された培地を用いる場合、培地中のアルブミンの最終濃度(使用時の濃度)は、培地の安定化効果が得られ、且つエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つによる多能性幹細胞の未分化維持増殖の促進効果を増強する限り、特に限定されないが、通常0.1g/l〜20g/l、好ましくは1g/l〜8g/lである。
本発明において用いられる培地は、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩が更に添加された培地であってもよい。硫酸化糖類をエタノールアミンと組み合わせて培地に添加することにより、培地の安定化効果が得られると共に、エタノールアミンによる多能性幹細胞の未分化維持増殖の促進効果が増強される。硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩は、所望により複数種を用いてもよい。
本発明において、「硫酸化糖類」は、糖類の硫酸化物である。「糖類」としては、当該技術分野で公知のものであれば特に限定されず、また新規なものであってもよい。糖類は、天然物でも合成品でもよい。本発明の培地に添加される硫酸化糖類は、好ましくは、硫酸化単糖、硫酸化二糖、硫酸化多糖、硫酸化糖アルコール又は硫酸化シクリトールである。
「単糖」は、当該技術分野で公知のものであっても、新規なものであってもよい。糖を構成する炭素の数は限定されず、例えば、四炭糖、五炭糖、六炭糖、七炭糖等のいずれであってもよい。単糖としては、具体的には、例えばグルコース、ガラクトース、マンノース、タロース、イドース、アルトロース、アロース、グロース、キシロース、アラビノース、ラムロース、フコース、フラクトース、リボース、デオキシリボース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、ガラクツロン酸等が挙げられる。硫酸化単糖は、これらの単糖の硫酸化物である。
「二糖」は、前記単糖二分子がグリコシド結合により結合して一分子となった糖であり、当該技術分野で公知のものであっても、新規なものであってもよい。グリコシド結合の様式は特に限定されず、α−1,2結合、β−1,2結合、α−1,3結合、β−1,3結合、α−1,4結合、β−1,4結合、α−1,5結合、β−1,5結合、α−1,6結合、β−1,6結合、α−1,α−1結合、α−1,β−1結合、α−1,β−2結合等のいずれであってもよい。二糖としては、具体的には、例えばスクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マルチトール等が挙げられる。硫酸化二糖は、これらの二糖の硫酸化物である。
多糖は、前記単糖三分子以上がグリコシド結合により結合して一分子となった糖であり、当該技術分野で公知のものであっても、新規なものであってもよい。多糖は、前記糖類のうち一種類のみで構成されるものでもよいし、二種類以上が組み合わさって構成されるものでもよい。多糖は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよい。多糖としては、例えば、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、デキストリン、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、デキストラン、マルトヘプタオース、スタキオース、マルトトリオース、プルラン、セルロース及びその誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ラミナラン、カードラン、カロース、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、キシラン、グルクロノキシラン、アラビノキシラン、アラバン、ガラクタン、ガラクツロナン、キチン、キトサン、キシログルカン、ペクチン酸及びペクチン、アルギン酸、アラビノガラクタン、グリコサミノグルカン(例えば、デキストラン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、コンドロイチン4-硫酸、コンドロイチン6-硫酸、デルマタン硫酸、ケタラン硫酸等)、グアーガム、キサンタンガム、フコイダン、イヌリンなどが挙げられる。硫酸化多糖は、これらの多糖の硫酸化物であり、上記糖類のうち既に硫酸化されているもの(例えば、デキストラン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン4-硫酸、コンドロイチン6-硫酸、デルマタン硫酸、ケタラン硫酸、フコイダン等)については、当該糖類自体も含まれる。硫酸化多糖としては、デキストラン硫酸、セルロースの硫酸化物(即ち、セルロースSOH)、キサンタンガムの硫酸化物(即ち、キサンタンガムSOH)、フコイダン、アルギン酸の硫酸化物(即ち、アルギン酸SOH)、イヌリンの硫酸化物(即ち、イヌリンSOH)、α−シクロデキストリンの硫酸化物(即ち、α−シクロデキストリンSOH)、マルトヘプタオースの硫酸化物(即ち、マルトヘプタオースSOH)、スタキオースの硫酸化物(即ち、スタキオースSOH)及びマルトトリオースの硫酸化物(即ち、マルトトリオースSOH)が好ましく、デキストラン硫酸が特に好ましい。
「糖アルコール」は、前記単糖のカルボニル基が還元されて生成する化合物であり、当該技術分野で公知のものであっても、新規なものであってもよい。糖アルコールとしては、例えば、グリセリン、エリスリトール、トレイトール、アラビニトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ボレミトール、ペルセイトール等が挙げられ、エリスリトール、キシリトール及びマンニトールが好ましい。硫酸化糖アルコールは、これらの糖アルコールの硫酸化物である。
「シクリトール」は、ポリヒドロキシシクロアルカンであり、環状糖アルコール又はシクリットとも呼ばれる。シクリトールは、当該技術分野で公知のものであっても、新規なものであってもよい。またシクリトールには多くの異性体が知られているが、いずれの異性体であってもよい。環を構成する炭素の数も特に限定されないが、好ましくは六員環である。シクリトールとしては、例えば、イノシトール(1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサオール)、イノシトールの誘導体(ヒドロキシ基をアミノ基、ケトン基、カルボキシル基等に置換した誘導体)等が挙げられる。硫酸化シクリトールは、これらのシクリトールの硫酸化物である。
本発明において培地に添加される硫酸化糖類は、薬学的に許容可能な塩の形態であってもよい。かかる塩としては、硫酸化糖類中に存在する硫酸基等と塩基との塩が挙げられる。具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、アンモニウム塩などの無機塩基塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン等との有機塩基塩が挙げられ、フリー体から常法により調製することができる。硫酸化糖類の薬学的に許容可能な塩としては、硫酸基のナトリウム塩又はカリウム塩が好ましく、例えば、スクロース8SOK、デキストラン硫酸Na(分子量5,000、25,000、50万等)、セルロースSONa、キサンタンガムSONa、アルギン酸SONa、イヌリンSONa、α−シクロデキストリンSONa、エリスリトールSONa、マンニトールSONa、myo−イノシトール6SOK等が挙げられ、デキストラン硫酸Naが特に好ましい。
本発明において、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩が添加された培地を用いる場合、培地中の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度(使用時の濃度)は、培地の安定化効果が得られ、且つエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つによる多能性幹細胞の未分化維持増殖の促進効果を増強する限り、特に限定されないが、通常1〜1000ng/ml、好ましくは10〜250ng/mlである。複数種を用いる場合には、それらの合計量が上記範囲内にあるように設定されるが、種類によって適宜増減し得る。
硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩の平均分子量は、特に限定されず、採用する硫酸化糖類の種類と塩の種類によって異なるが、通常50〜100万、好ましくは100〜70万、より好ましくは300〜50万、最も好ましくは500〜10万である。平均分子量が100万を超えると、一定濃度以上の添加により毒性または細胞接着阻害などによるとみられる細胞増殖抑制がみられる傾向がある。平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
例えば、デキストラン硫酸Naの平均分子量としては、通常1000〜70万、好ましくは1000〜30万、より好ましくは1000〜10万、最も好ましくは2,500〜7,500である。
本発明において用いられる培地は、血清を含んでいても、含んでいなくてもよいが、再生医療に使用される細胞を培養する場合、血清がウイルス感染源となる可能性、ロット間の性能差により培養結果にバラつきが生じる可能性等があることから、培養を無血清条件下で行うことが好ましい。
本発明において用いられる培地は、培養される細胞とは異なる種に由来する成分を含んでいても、含んでいなくてもよいが、再生医療に使用されるヒトの細胞を培養する場合、移植後の安全性の観点から、ヒト以外の動物に由来する成分を含まないことが好ましい。
本発明において用いられる基礎培地としては、多能性幹細胞の種類に応じて自体公知のものを用いることができ、多能性幹細胞の未分化維持増殖を阻害しない限り特に限定されないが、例えばDMEM、EMEM、IMDM(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)、GMEM(Glasgow's MEM)、RPMI-1640、α-MEM、Ham's Medium F-12、Ham's Medium F-10、Ham's Medium F12K、Medium 199、ATCC-CRCM30、DM-160、DM-201、BME、Fischer、McCoy's 5A、Leibovitz's L-15、RITC80-7、MCDB105、MCDB107、MCDB131、MCDB153、MCDB201、NCTC109、NCTC135、Waymouth's MB752/1、CMRL-1066、Williams' medium E、Brinster's BMOC-3 Medium、E8 medium(Nature Methods, 2011, 8, 424-429)、及びこれらの混合培地等が挙げられる。また、多能性幹細胞培養用に改変された培地や、上記基礎培地と他の培地との混合物等を用いてもよい。
本発明において用いられる培地は、自体公知の添加物を更に含むことができる。添加物としては、多能性幹細胞の未分化維持増殖を阻害するものでない限り特に限定されないが、例えば成長因子(例えばインスリン等)、鉄源(例えばトランスフェリン等)、ポリアミン類(例えばプトレシン等)、ミネラル(例えばセレン酸ナトリウム等)、糖類(例えばグルコース等)、有機酸(例えばピルビン酸、乳酸等)、アミノ酸(例えばL−グルタミン等)、還元剤(例えばチオグリコール酸ナトリウム)、ビタミン類(例えばアスコルビン酸、d−ビオチン等)、ステロイド(例えばβ−エストラジオール、プロゲステロン等)、抗生物質(例えばストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等)、緩衝剤(例えばHEPES等)等が挙げられる。また、従来から多能性幹細胞の培養に用いられてきた添加物も適宜含むことができる。添加物は、それぞれ自体公知の濃度範囲内で含まれることが好ましい。
本発明の培養方法においては、フィーダー細胞を使用しても、使用しなくてもよい。再生医療に使用される細胞を培養する場合は、移植後の安全性の観点から、フィーダー細胞を使用しないこと(フィーダーフリー)が好ましい。いかなる理論にも拘束されないが、本発明の培養方法では、通常フィーダー細胞から培地中に分泌されるエタノールアミンを培地に添加するため、フィーダー細胞非存在下でも多能性幹細胞の未分化維持増殖を促進することができる。
フィーダー細胞を使用しない場合、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用して、培養を行うことが好ましい。
細胞外基質は、培養器の表面と細胞との接着を改善する目的で細胞の培養に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、ラミニン(ラミニン511、ラミニン332等)、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲン、エラスチン、アドへサミン等の公知のものを使用することができる。また細胞外基質の活性断片は、該細胞外基質と同等の細胞接着活性を有するその断片であればよく、これらも公知のものを使用することができる。例えば、特開2011-78370号公報に開示されている、ラミニン511のE8フラグメント、ラミニン332のE8フラグメント等が挙げられる。細胞外基質及びその活性断片は、市販品であってもよく、例えば、(ライフテクノロジーズ、BDファルコン、バイオラミナ)等から入手可能である。これらの細胞外基質及びその活性断片は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また基底膜を過剰産生するマウスEHS肉腫から抽出、精製した、タンパク質や多糖類を含む複雑な基底膜成分の混合物であるマトリゲル(商品名)を使用してもよい。細胞外基質及びその活性断片は、適当な溶液中に懸濁し、細胞を培養するのに適した容器に塗布すればよい。
細胞外基質の機能をミミックする人工物も、細胞の培養に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、コーニング社のシンセマックス(登録商標)やウルトラウェブ(登録商標)、シグマアルドリッチ社のHy-STEMシリーズ、ポリリジン、ポリオルニチン等の公知のものを使用することができる。
本発明において使用される細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物は、好ましくはマトリゲル、又はラミニン511若しくはラミニン511の活性断片であり、より好ましくはラミニン511の活性断片(即ち、ラミニン511のE8フラグメント)である。
本発明の培養方法において、細胞播種方法は特に限定されず、コロニー播種であってもシングルセル播種であってもよいが、産業レベルで再生医療用の多能性幹細胞を製造するためには、厳密に手順及びスケジュールが管理された条件で、複数の作業者によって作業がなされる必要がある。そのため、播種する細胞数の厳密な調整が可能なシングルセル播種が好ましい。
シングルセル播種を行う場合、多能性幹細胞のコロニーを単一の細胞にまで解離した後、培地中に播種する。シングルセル播種は、自体公知の方法により行えばよい。例えば、細胞剥離液(トリプシン溶液等)で細胞間接着、細胞−基質間接着を弱くしたあと、スクレーパー(IWAKI社、9000-220等)等で細胞を基質から剥がし(この状態で細胞は細胞塊を形成した状態で溶液中に浮遊しており、完全なシングルセルではない)、その後ピペッティングにより細胞をシングルセルにまで解離させた後、培地に播種すればよい。播種時には、多能性幹細胞の生存のために、Y-27632(ナカライテスク社:08945-84)などのROCK阻害剤を培地に添加しておくことが好ましい。ROCK阻害剤は、播種の翌日以降は、多能性幹細胞の増殖に必要ないため、培地から除去することが好ましい。
その他の培養条件は、適宜設定できる。例えば、培養温度は、特に限定されるものではないが約30〜40℃、好ましくは約37℃であり得る。CO濃度は、約1〜10%、好ましくは約2〜5%であり得る。酸素分圧は、1〜10%であり得る。
細胞培養においては、培地成分の劣化、細胞から排出される老廃物の蓄積等の理由により、培養中に培地交換を必要とすることがあるが、本発明の培養方法においては、実施例に示すとおり、培地交換を省略することも可能である。例えば、培地交換を行なわずに連続して4日間以上(4日、5日、6日等)、多能性幹細胞を培養することができる。
一態様において、本発明は、エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加され、かつ、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩が添加されることを特徴とする培地中で多能性幹細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培養方法を提供する。該培養方法におけるエタノールアミン、エタノールアミン類縁体及びこれらの薬学的に許容可能な塩、並びに硫酸化糖類及びその薬学的に許容可能な塩の定義は上記と同様であり、これらの使用濃度も上記に準じる。また、当該培養方法に関する他の条件も上記と同様である。
(多能性幹細胞増殖用培地の保存安定化方法)
本発明はまた、エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを添加し、かつ、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を添加することを含む、多能性幹細胞増殖用培地の保存安定化方法(以下、本発明の安定化方法とも称する)を提供する。
本発明において、培地の「保存安定化」とは、培地の保存時(通常、−80℃程度〜40℃)における培地の経時劣化が緩和されることを意味する。ここで「培地の劣化」とは、多能性幹細胞を未分化維持増殖させる機能が低下することであり、その程度は、後述の実施例に記載されるように、多能性幹細胞を当該培地中で所定の期間培養した後、細胞数を測定することにより評価することができる。調製直後の培地を使用した場合を基準として、培養後の細胞数が少ないほど、培地がより劣化したと評価される。
本発明における多能性幹細胞増殖用培地は、上記本発明の培養方法において使用される培地と同様であり、好ましくは、多能性幹細胞の未分化維持増殖用培地である。
培地の保存安定化のために培地に添加される、エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩は、上記本発明の培養方法において使用されるものと同様である。培地中への添加濃度も、上記本発明の培養方法における添加濃度と同様である。培地にエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩を添加することにより、添加後の培地を安定化することができる。
本発明の安定化方法は、更に硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を添加する工程を含む。硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩は、上記本発明の培養方法において使用されるものと同様である。培地中への添加濃度も、上記本発明の培養方法における添加濃度と同様である。エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つと硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩とを組み合わせて培地に添加することにより、更に培地の安定性を高めることが可能である。
本発明によれば、培地調製後、例えば常温(通常15〜25℃程度)で8日間程度まで保存した場合、培地の劣化を緩和することができる。そのため従来よりも長期間培地を保存することが可能となり、本発明は多能性幹細胞の製造等において有用である。
(多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地添加剤)
上記本発明の培養方法において基礎培地に添加される成分は、培地添加剤とすることができる。即ち、本発明は、エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、β-メルカプトエタノールを実質的に含まない又は使用時の濃度が9μM以下となるようにβ-メルカプトエタノールを含む多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地添加剤(以下、本発明の培地添加剤とも称する)を提供する。
エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩は、上記本発明の培養方法において使用されるものと同様である。
本発明の培地添加剤の培地への添加量は、調製後の培地を使用してフィーダーフリーの条件下で培養した場合に、多能性幹細胞の未分化維持増殖の促進に働き得る限り、任意の範囲に設定することができるが、培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩の最終濃度が、通常1μM〜1000μM、好ましくは5μM〜200μM、又は11μM〜200μMとなるように添加すればよい。
β-メルカプトエタノールはその濃度が高いと毒性が懸念される。従って、本発明において用いられる、β-メルカプトエタノールの濃度は使用時の最終濃度として9μM以下である。より好ましくは7μM以下、さらに好ましくは5μM以下である。さらにはβ-メルカプトエタノールが実質的に含まれていない又は全く含まれないことが好ましい。本願発明では、実質的にβ-メルカプトエタノールを含んでいなくとも多能性幹細胞の安定した未分化維持増殖が可能である。
「β-メルカプトエタノールが実質的に含まれない」の定義は上記に準じる。
本発明の培地添加剤は、アルブミン、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を更に含んでもよい。これらは、上記本発明の培養方法において使用されるものと同様である。
本発明の培地添加剤は、必要に応じて、上記成分以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、培地の調製に際して通常使用される添加物が挙げられ、特に制限されないが、例えば、上記本発明の製造方法において用いられる培地に含められる添加物が挙げられる。
本発明の培地添加剤は、培養される細胞とは異なる種に由来する成分を含んでいても、含んでいなくてもよいが、再生医療に使用されるヒトの細胞を培養する場合、ヒト以外の動物に由来する成分を含まないことが好ましい。
本発明の培地添加剤を用いることにより、無血清・フィーダーフリー・シングルセル播種培養においても長期間安定して未分化維持増殖させることが可能な培地を調製することが可能である。
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例では、各種被験化合物によるヒト多能性幹細胞の増殖効果を評価した。ヒト多能性幹細胞として、特に言及がない場合は、iPSアカデミアジャパン社より購入した人工多能性幹細胞(iPS細胞)201B7株を用いた。細胞培養は、基底膜マトリックスをコートした培養容器(日本ベクトンディッキンソン社、Falcon培養シャーレもしくはFalcon培養プレート)を用い、5 % CO2/37 ℃の条件で行った。
各種被験化合物は、現在のところヒト多能性幹細胞を培養するための最小組成と考えられる「E8」組成(Nature Methods, 2011, 8, 424-429にて開示される)の培地に、所定の濃度にて添加し、培養に用いることにより、その効果を検討した。培地は、「E8」組成からなるとされるEssential 8(ライフテクノロジーズ社:A14666SA)を用いて調製するか、同等の組成となるよう調合したものを用いて調製した。
参考例1 アルブミンの培地安定化効果
ヒト血清由来アルブミン(シグマアドリッチ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加し、調製後ただちに培養に使用した場合と、調製後4℃に3週間置いた後に使用した場合で、培養後の細胞数を検討することによりアルブミンの効果を検討した。培養期間は1週間である。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり5μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、トリパンブルー(ライフテクノロジーズ社:15250-061)染色と血球計算盤で行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図1に示す。調製後ただちに使用した場合は、アルブミン添加有りと無しとで同等の細胞増殖を示した。調製後3週間経過した培地を使用した場合は、アルブミン無添加の培地では、ほぼ細胞増殖が見られなかったのに対して、アルブミン添加培地では、明確な細胞増殖が認められた。以上の結果から、E8最小組成培地は通常使用(保存)条件下に3週間置かれることにより、顕著な性能低下を起こすが、アルブミンを添加することにより、そのような劣化現象を改善できることがわかった。よって、アルブミンは、4℃保管での培地の安定化に寄与することがわかった。
実施例1 エタノールアミンの増殖促進効果及びアルブミンとの組み合わせ効果
エタノールアミン(シグマアルドリッジ社:E0135)を最終濃度6、30、150、750又は3,750μMになるように添加し、調製後ただちに培養に用い、培養後細胞数を検討することによりエタノールアミンの効果を検討した。培養期間は1週間とした。また、アルブミンとの組み合わせの効果を検討するため、上記エタノールアミン添加培地に、さらにヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加したものでも、同様の検討を行った。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり5μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、トリパンブルー(ライフテクノロジーズ社:15250-061)染色と血球計算盤で行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図2に示す。値はエタノールアミン無添加群(0μM)の平均値に対する相対値として示す。エタノールアミンには比較的幅広い濃度域で増殖促進効果があることが分かった。高濃度域では、逆に増殖抑制効果が現れることが分かった。アルブミンとの組み合わせにより、エタノールアミンの増殖促進効果がより増強され、高濃度域でも増殖抑制効果が現れにくく、増殖促進効果を示すことが分かった。
実施例2 デキストラン硫酸の効果
ヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を添加(最終濃度2.6 g/l)した培地に、エタノールアミン(最終濃度30μM)を単独で添加、さらにその培地にデキストラン硫酸ナトリウム(和光純薬、最終濃度50 ng/ml)を添加し、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムとの組み合わせによるさらなる増殖促進効果を検証した。約3週間の培養を行い、その間2度の継代を行い、全培養期間での累積生細胞増加率を算出した。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり5μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。継代時は、トリプルセレクト(ライフテクノロジーズ社:12563-011)で細胞を剥離し、再びY-27632添加培地に13,000個の生細胞を播種し、その翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、トリパンブルー(ライフテクノロジーズ社:15250-061)染色と血球計算盤で行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図3に示す。エタノールアミン単独添加の場合より、デキストラン硫酸ナトリウムと組み合わせた方が、細胞増加率が高いことが分かった。
また、最も増加率が高かった、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムの両者を添加した培地で、約一か月の培養を行った後、アルカリフォスファターゼ染色を行い、未分化能維持の確認を行った。アルカリフォスファターゼ染色キット(シグマアルドリッチ社:86-R)を用いて染色した結果を図4に示す。ウェル全体のiPS細胞のコロニーが染色された。これにより、E8最小組成培地にアルブミン、エタノールアミン、デキストラン硫酸ナトリウムを添加した培地での長期培養で、iPS細胞は未分化能を維持した状態で増殖することが確認された。
実施例3 エタノールアミンの増殖促進効果−マトリゲルを使用した培養の結果
エタノールアミン(シグマアルドリッジ社:E0135)を最終濃度6、30、150、750又は3,750μMになるように添加し、調製後ただちに培養に用い、培養後細胞数を検討することによりエタノールアミンの効果を検討した。培養期間は8日間とした。1ウェルあたり、100,000個の細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとしてマトリゲル(日本ベクトンディッキンソン社)をコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図5に示す。実施例1と同様に、エタノールアミンが幅広い濃度域で増殖促進効果を奏することを示す結果が得られた。従って、エタノールアミンの増殖促進効果は、ラミニン511を使用しての培養に限定されるものではないことが分かった。
実施例4 エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムの組み合わせ効果−マトリゲルを使用した培養の結果
(1)アルブミンを含んだ培地での効果
Essential8にヒト血清由来アルブミン(最終濃度2.6 g/l)及びエタノールアミン(最終濃度30μM)を含んだ培地(コントロール)、並びに、これにデキストラン硫酸ナトリウムを所定の濃度となるように添加した培地をそれぞれ調製し、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムとの組み合わせ効果を検証した。培養期間は6〜12日間とした。シングルセル播種の場合、マトリゲルをコートした12ウェル培養プレートに1ウェルあたり、40,000個の細胞を播種した。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。コロニー状態で播種する場合には、マトリゲルをコートした6ウェル培養プレートに1ウェルあたり、元の培養の2.5〜3.5倍希釈となる細胞を播種した。この場合、播種時に使用する培地にはY-27632を添加しなかった。培地交換を2〜3日毎に行った。
細胞増殖の評価基準は以下の通りである。
◎:細胞数がコントロールのそれに対して120%以上
○:細胞数がコントロールのそれに対して100%以上120%未満
−:細胞数がコントロールのそれに対して50%以上100%未満
×:細胞数がコントロールのそれに対して50%以下
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果を表1に示す。デキストラン硫酸ナトリウムを添加した方が、高い細胞増殖が見られた。よって、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムの組み合わせによる細胞増殖促進効果もまた、ラミニン511を使用しての培養に限定されるものではないことが分かった。また、コロニー状態で播種した場合でも本効果は示され、シングルセル播種した場合に限定されるものでもないことが分かった。
(2)培地交換を省略できる効果
上記(1)の評価において、デキストラン硫酸ナトリウム(最終濃度10 ng/ml)を添加した培地で培地交換を行わずに培養を行い、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムとを組み合わせて培地に添加することにより培地交換を省略できるか否かを検証した。培養期間は6日間とした。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果を図6に示す。培地交換を行わない場合、デキストラン硫酸ナトリウムを添加した方が、高い細胞増殖が見られた。その効果は、デキストラン硫酸ナトリウムを含まない培地で培地交換した場合に近いものであった。よって、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムの組み合わせにより、培地交換を省略できる効果を有することが分かった。
(3)アルブミンを含まない培地での安定化効果
Essential8に、エタノールアミン(最終濃度30μM)を単独で添加した培地、エタノールアミン(最終濃度30μM)及びデキストラン硫酸ナトリウム(和光純薬、最終濃度50 ng/ml)を添加した培地、ヒト血清由来アルブミン(最終濃度2.6 g/l)を単独で添加した培地、をそれぞれ調製し、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムとの組み合わせによる培地安定化効果を検証した。各培地を調製後常温に8日間放置した後に培養に使用した。培養期間は8日間とした。マトリゲルをコートした6ウェル培養プレートに1ウェルあたり、100,000個の細胞を、シングルセル播種した。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図7に示す。エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムの両者を添加した場合の効果は、アルブミンを添加した場合と同等であった。よって、エタノールアミンとデキストラン硫酸ナトリウムの組み合わせには、常温での培地の安定化効果がある上に、培地に汎用されるアルブミンを代替又は削減できる可能性のあることが分かった。
実施例5 エタノールアミン類縁体の効果
(1)O-ホスホリルエタノールアミン(別名ホスホエタノールアミン)の効果
ヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加した培地に、O-ホスホリルエタノールアミン(シグマアルドリッジ社:P0503-25G)を最終濃度6、30、150又は750 μMになるように添加し、調製翌日より培養に用い、培養後細胞数を検討することによりO-ホスホリルエタノールアミンの効果を検討した。培養期間は1週間とした。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり4.8 μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10 μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、生死細胞オートアナライザーViCELLTM XR (BECKMAN COULTER社)を用いて行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図8に示す。値はO-ホスホリルエタノールアミン無添加群(0 μM)の平均値に対する相対値として示す。O-ホスホリルエタノールアミンには比較的幅広い濃度域で増殖促進効果があることが分かった。
(2)2-(メチルアミノ)エタノールの効果
ヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加した培地に、2-(メチルアミノ)エタノール(シグマアルドリッジ社:471445-25ML)を最終濃度6、30、150又は750 μMになるように添加し、調製翌日より培養に用い、培養後細胞数を検討することにより2-(メチルアミノ)エタノールの効果を検討した。培養期間は1週間とした。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり4.8 μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10 μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、生死細胞オートアナライザーViCELLTM XR (BECKMAN COULTER社)を用いて行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図9に示す。値は2-(メチルアミノ)エタノール無添加群(0 μM)の平均値に対する相対値として示す。2-(メチルアミノ)エタノールには比較的幅広い濃度域で増殖促進効果があることが分かった。
(3)2-ジメチルアミノエタノールの効果
ヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加した培地に、2-ジメチルアミノエタノール(シグマアルドリッジ社:471453-100ML)を最終濃度6、30、150又は750 μMになるように添加し、調製翌日より培養に用い、培養後細胞数を検討することにより2-ジメチルアミノエタノールの効果を検討した。培養期間は1週間とした。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり4.8 μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10 μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、生死細胞オートアナライザーViCELLTM XR (BECKMAN COULTER社)を用いて行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図10に示す。値は2-ジメチルアミノエタノール無添加群(0 μM)の平均値に対する相対値として示す。2-ジメチルアミノエタノールは、比較的幅広い濃度域で増殖促進効果を示すが、高濃度域では、増殖抑制効果が現れることが分かった。
(4)エタノールアミン塩酸塩の効果
ヒト血清由来アルブミン(シグマアルドリッジ社:A1887)を最終濃度2.6 g/lで添加した培地に、エタノールアミン塩酸塩(東京化成社:A0298)を最終濃度6、30、150又は750 μMになるように添加し、調製翌日より培養に用い、培養後細胞数を検討することによりエタノールアミン塩酸塩の効果を検討した。培養期間は1週間とした。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり4.8 μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10 μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、生死細胞オートアナライザーViCELLTM XR (BECKMAN COULTER社)を用いて行った。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果の平均値を図11に示す。値はエタノールアミン塩酸塩無添加群(0 μM)の平均値に対する相対値として示す。エタノールアミン塩酸塩には比較的幅広い濃度域で増殖促進効果があることが分かった。
実施例6 オレイン酸の影響
ヒト血清アルブミン(Nova Biologics社)の生理食塩水溶液(25%)40mlにリン酸緩衝液(pH7.2)を40ml加えた。さらに予め200℃で30分間加熱した活性炭(5g、和光純薬社製)をリン酸緩衝液20mlで懸濁した液を足し合わせ100mlにした。4℃で3時間撹拌した後、4℃にて11,900rpmで20分間遠心分離した。沈降した活性炭をデカンテーションで除き、反応液を0.22μmのシリンジフィルターでろ過した。かくして脱脂肪酸処理したヒト血清アルブミンを得た。次に、得られた脱脂肪酸処理したヒト血清アルブミンにオレイン酸を添加することにより、脂肪酸担持量が2.2、6.5、21.7mg/gとなるようにヒト血清由来アルブミンを調製し、各々のアルブミンは、最終濃度2.6 g/lとなるよう培地に添加した(その場合の培地中のオレイン酸の最終濃度はそれぞれ20、60、200μMとなる)。各培地にはエタノールアミン(最終濃度30μM)を添加した。各培地を用いて細胞を1週間培養し、培養後の細胞数を確認することによりオレイン酸の影響を検討した。1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり4.8 μgコートした。播種時に使用する培地にはY-27632を添加(最終濃度10 μM、ナカライテスク社:08945-84)した。翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。生細胞数測定は、生死細胞オートアナライザーViCELLTM XR (BECKMAN COULTER社)を用いて行った。
各々の培地を用いて培養した結果を図12に示す。アルブミンのオレイン酸担持量が増加するのに伴って細胞増殖が抑制されることが分かった。
本発明によれば、多能性幹細胞を安定して効率よく増殖させることができ、無血清・フィーダーフリー・シングルセル播種培養においても長期間安定して未分化維持増殖させることができるため、再生医療等の分野において有用である。
本願は日本で出願された特願2013−016592(出願日:2013年1月31日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (30)

  1. エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加され、かつ、培地中にβ-メルカプトエタノールを実質的に含まない又はβ-メルカプトエタノールの濃度が9μM以下であることを特徴とする、多能性幹細胞の未分化維持増殖用の培地であって、培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、11μM〜200μMであり、かつ、アルブミンが更に添加されている培地であって、培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である培地
  2. 培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、請求項1に記載の培地。
  3. 硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩が更に添加された、請求項1または2に記載の培地。
  4. 培地中の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の濃度が1〜1000ng/mlである請求項に記載の培地。
  5. 硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、請求項またはに記載の培地。
  6. 多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、請求項1〜のいずれか一項に記載の培地。
  7. エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つが添加され、かつ、培地中にβ-メルカプトエタノールを実質的に含まない又はβ-メルカプトエタノールの濃度が9μM以下であることを特徴とする培地中で多能性幹細胞を培養する工程を含む、多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培養方法であって、培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、11μM〜200μMであり、かつ、培地にアルブミンが更に添加されていることを特徴とする方法であって、培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である方法
  8. 培地中のアルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、請求項に記載の方法。
  9. 培地が、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩が更に添加された培地である、請求項7または8に記載の方法。
  10. 培地中の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の濃度が1〜1000ng/mlである請求項に記載の方法。
  11. 硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、請求項または10に記載の方法。
  12. 培養が、フィーダー細胞非存在下で行われる、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 培養が、細胞外基質若しくはその活性断片、又はそれらの機能をミミックする人工物を使用して行われる、請求項12に記載の方法。
  14. 培養が、ラミニン511若しくはその活性断片又はマトリゲルを使用して行なわれる、請求項13に記載の方法。
  15. 培養が、シングルセル播種によって行われる、請求項14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 培養が、無血清条件下で行われる、請求項15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、請求項16のいずれか一項に記載の方法。
  18. エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを添加し、アルブミンを添加し、かつ、硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を添加することを含む、多能性幹細胞未分化維持増殖用培地の保存安定化方法であって、培地中のエタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの濃度が、11μM〜200μMであり、かつ、培地中にβ-メルカプトエタノールを実質的に含まない又はβ-メルカプトエタノールの濃度が9μM以下であって、アルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、方法。
  19. 使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、請求項18に記載の方法。
  20. 使用時のアルブミンの最終濃度が、0.1g/l〜20g/lである、請求項18または19に記載の方法。
  21. 使用時のアルブミンの最終濃度が、1g/l〜8g/lである、請求項18または19に記載の方法。
  22. アルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、請求項1821のいずれか一項に記載の方法。
  23. エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、β-メルカプトエタノールを実質的に含まない又は使用時の濃度が9μM以下となるようにβ-メルカプトエタノールを含み、かつアルブミンを含む多能性幹細胞の未分化維持増殖のための培地添加剤であって、エタノールアミン及びエタノールアミン類縁体並びにそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの使用時の培地中の濃度が、11μM〜200μMであって、アルブミンの脂肪酸担持量が9mg/g以下である、培地添加剤。
  24. 使用時のアルブミンの最終濃度が、0.1g/l〜20g/lである、請求項23に記載の培地添加剤。
  25. 使用時のアルブミンの最終濃度が、1g/l〜8g/lである、請求項23に記載の培地添加剤。
  26. アルブミンの脂肪酸担持量が2.2mg/g以下である、請求項2325のいずれか一項に記載の培地添加剤。
  27. 硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩を更に含む、請求項2326のいずれか一項に記載の培地添加剤。
  28. 使用時の硫酸化糖類及び/又はその薬学的に許容可能な塩の最終濃度が1〜1000ng/mlである、請求項27に記載の培地添加剤。
  29. 前記硫酸化糖類又はその薬学的に許容可能な塩が、平均分子量2,500〜7,500のデキストラン硫酸Naである、請求項27または28に記載の培地添加剤。
  30. 多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞である、請求項2329のいずれか一項に記載の培地添加剤。
JP2014559540A 2013-01-31 2013-12-27 多能性幹細胞の安定した未分化維持増殖を行うための培養方法 Active JP6380109B2 (ja)

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