JP6634822B2 - 幹細胞の培養用培地 - Google Patents

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Description

本発明は、幹細胞の培養用培地、当該培地の製造方法等に関する。
従来、幹細胞(胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)など)の培養は、血清を含有する培地を用いて行なわれてきた。例えば、ウシ胎仔血清(FBS)等は、細胞増殖に重要な添加物として細胞培養に汎用されている。しかしながら培養後の幹細胞を医療目的で使用する場合、異種由来成分は、血液媒介病原菌の感染源や異種抗原となる可能性がある。また血清のロット間差により培養結果にばらつきが生じる可能性もある。そのため近年では、化学的組成が明らかな培地(chemically defined medium)を用いて幹細胞を培養することが主流となってきており、無血清培地の開発が進められている。
無血清培地において重要性が高い成分の1つとしてアルブミンが挙げられる。アルブミンを添加することにより培地性能の安定維持効果が期待できる。細胞培養用として数種類のアルブミンが市販されている。しかしながら、細胞培養、特に幹細胞の培養において、全てのアルブミンが同等の効果を有しているわけではなく、アルブミンの品質により培養成績が影響を受けている。
一方、アルブミンの精製方法として、活性炭処理、イオン交換、加熱処理等が知られている(非特許文献1、4、5及び6)。また、パルミチン酸が間葉系幹細胞においてアポトーシスを誘導するという報告(非特許文献2)、及びiPS細胞においてオレイン酸合成酵素を阻害する物質を添加することによりパルミチン酸が蓄積し、ERストレス−アポトーシスが誘導されるという報告(非特許文献3)がある。
特許文献1には、アルブミンの安定化のためにオクタン酸が培地中に用いられていること、このオクタン酸が幹細胞培養に有害であることが記載されている。しかし、長鎖脂肪酸がアルブミンの安定化のために用いられていることについての記載は見られず、また、長鎖脂肪酸が中鎖脂肪酸であるオクタン酸よりも幹細胞培養により有害であること、未分化能維持に悪影響があることを示すデータや記載も見られない。また、特許文献2では、脂肪酸フリーのアルブミンが幹細胞用培地に含まれていることが記載されている。該文献には、幹細胞を培養する上でどの程度の脂肪酸をアルブミンから除去すれば十分であるかの記載はなく、また、脂肪酸フリーのアルブミンとして市販のProliant社製のウシ血清由来アルブミンを使用しているため、アルブミンからの脂肪酸除去の煩雑さの検討はなされていない。
国際公開第2013/006675号 国際公開第2013/134378号
J. Biological Chemistry 1968, 212(2), 173-181 Endocrinology November 2012, 153(11), 5275-5284 Cell Stem Cell 2013, 12, 167-179 BioChim. Biophy. Acta 1970, 221, 376-378 Biologics 1997, 25, 391-401 Brazilian journal of medicinal and biological research 1998,31, 1383-1388
本発明は、培地に添加されるアルブミンの品質の違いによる培養成績のばらつきのメカニズムを解明し、より培養成績のよい幹細胞培養用の培地を提供すること、当該培養用培地を製造する方法を提供すること、更には培養用培地への添加に適したアルブミンを選択する方法を提供すること、また、幹細胞培養用の培地添加剤を提供すること、さらに、幹細胞を未分化状態で維持できる培養システムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、幹細胞の培養において添加されるアルブミンが担持する脂肪酸と細胞増殖との間に相関関係があることを見出し、アルブミンに対して脱脂肪酸を目的とした精製を行なうことにより培養成績が改善されることを確認して本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを含有してなる幹細胞の培養用培地。
[2]脂肪酸担持量の低減が脱脂肪酸処理によるものである、[1]記載の培地。
[3]脱脂肪酸処理が活性炭処理である、[2]記載の培地。
[4]アルブミンの脂肪酸担持量が10mg/g以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の培地。
[5]アルブミンの脂肪酸担持量が6mg/g以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の培地。
[6]アルブミンの脂肪酸担持量が0.1mg/g〜0.65mg/gである、[1]〜[3]のいずれかに記載の培地。
[7]培地中の脂肪酸含有量が60μM以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の培地。
[8]アルブミン1g当たりの脂肪酸担持量が0.1mg〜0.65mgである、幹細胞の培養用培地。
[9]培地中の脂肪酸含有量が60μM以下である、[8]に記載の培地。
[10]脂肪酸が長鎖脂肪酸である、[1]〜[9]のいずれかに記載の培地。
[11]脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]〜[9]のいずれかに記載の培地。
[12]アルブミンがヒト血清由来アルブミンである、[1]〜[11]のいずれかに記載の培地。
[13]幹細胞が多能性幹細胞である、[1]〜[12]のいずれかに記載の培地。
[14]多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[13]記載の培地。
[15][1]〜[12]のいずれかに記載の培地で培養する工程を含む、幹細胞の培養方法。
[16]幹細胞が多能性幹細胞である、[15]記載の方法。
[17]多能性幹細胞が、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[16]記載の方法。
[18]脂肪酸担持量を測定し、脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを選抜する工程を含む、培地への添加に適したアルブミンを選択する方法。
[19]アルブミンを脱脂肪酸処理して脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを調製し、該調製されたアルブミンを培地に添加することを特徴とする、幹細胞の培養用培地の製造方法。
[20]脱脂肪酸処理が活性炭処理である、[19]記載の方法。
[21]活性炭処理がアルブミン重量当り30〜60重量%の活性炭量を用いて行われる、[20]記載の方法。
[22]活性炭処理がpH6.7〜7.3で行われる、[20]または[21]記載の方法。
[23]活性炭処理がpH3.7〜4.3で行われる、[20]または[21]記載の方法。
[24]調製されたアルブミンの脂肪酸担持量が10mg/g以下である、[19]〜[23]のいずれかに記載の方法。
[25]調製されたアルブミンの脂肪酸担持量が6mg/g以下である、[19]〜[23]のいずれかに記載の方法。
[26]調製されたアルブミンの脂肪酸担持量が0.1mg/g〜0.65mg/gである、[19]〜[23]のいずれかに記載の方法。
[27]培地中の脂肪酸含有量が60μM以下である、[19]〜[26]のいずれかに記載の方法。
[28]脂肪酸が長鎖脂肪酸である、[19]〜[27]のいずれかに記載の方法。
[29]脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、[19]〜[27]のいずれかに記載の方法。
[30]アルブミンがヒト血清由来アルブミンである、[19]〜[29]のいずれかに記載の方法。
[31]幹細胞が多能性幹細胞である、[19]〜[30]のいずれかに記載の方法。
[32]多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[31]記載の方法。
[33]脂肪酸担持量が0.1mg/g〜0.65mg/gであるアルブミンを含有してなる幹細胞培養用の培地添加剤。
[34]脂肪酸が長鎖脂肪酸である、[33]に記載の培地添加剤。
[35]脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、[33]に記載の培地添加剤。
[36]アルブミンがヒト血清由来アルブミンである、[33]〜[35]のいずれかに記載の培地添加剤。
[37]幹細胞が多能性幹細胞である、[33]〜[36]のいずれかに記載の培地添加剤。
[38]多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[37]に記載の培地添加剤。
[39]脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを含有してなる培地で培養する工程を含む、幹細胞の培養システムであって、該脂肪酸担持量が、幹細胞を未分化状態で維持することができるように選択される培養システム。
[40]脂肪酸担持量の低減が脱脂肪酸処理によるものである、[39]記載の培養システム。
[41]脱脂肪酸処理が活性炭処理である、[40]記載の培養システム。
[42]アルブミンの脂肪酸担持量が10mg/g以下である、[39]〜[41]のいずれかに記載の培養システム。
[43]アルブミンの脂肪酸担持量が6mg/g以下である、[39]〜[41]のいずれかに記載の培養システム。
[44]アルブミンの脂肪酸担持量が0.1mg/g〜0.65mg/gである、[39]〜[41]のいずれかに記載の培養システム。
[45]培地中の脂肪酸含有量が60μM以下である、[39]〜[44]のいずれかに記載の培養システム。
[46]脂肪酸が長鎖脂肪酸である、[39]〜[45]のいずれかに記載の培養システム。
[47]脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、[39]〜[45]のいずれかに記載の培養システム。
[48]アルブミンがヒト血清由来アルブミンである、[39]〜[47]のいずれかに記載の培養システム。
[49]幹細胞が多能性幹細胞である、[39]〜[48]のいずれかに記載の培養システム。
[50]多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、[49]記載の培養システム。
本発明の培地を用いれば、幹細胞を、未分化状態を維持したまま増殖させることができる。さらに、本発明の培地を用いれば、幹細胞を効率よく増殖させることができ、そのため培養中の培地交換の頻度を下げることができ、幹細胞の培養コストを削減することが可能となる。
図1は、アルブミン添加培地での幹細胞の培養成績を示した図である。左図は表1で培養成績+と標記された培養皿の一例を示し、右図は培養成績−と標記された培養皿の一例を示す。 図2は、脂肪酸を吸着させたアルブミンを添加した培地で幹細胞を培養した場合の生細胞数を測定した結果を示した図である。 図3は、異なる精製度のヒト血清由来アルブミンの、iPS細胞の増殖への影響を示す図である。 図4は、異なる種類の脂肪酸を再担持させたヒト血清由来アルブミンの、iPS細胞の増殖への影響を示す図である。
本明細書中、「幹細胞」とは、自己複製能及び分化/増殖能を有する未熟な細胞を意味する。幹細胞には、分化能力に応じて、多能性幹細胞(pluripotent stem cell)、複能性幹細胞(multipotent stem cell)、単能性幹細胞(unipotent stem cell)等の亜集団が含まれる。多能性幹細胞とは、生体を構成する全ての組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。複能性幹細胞とは、全ての種類ではないが、複数種の組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。単能性幹細胞とは、特定の組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。
多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性生殖細胞(EG細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)等を挙げることが出来る。好ましくは、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)である。体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立した幹細胞も、多能性幹細胞としてまた好ましい(Nature, 385, 810 (1997); Science, 280, 1256 (1998); Nature Biotechnology, 17, 456 (1999); Nature, 394, 369 (1998); Nature Genetics, 22, 127 (1999); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 14984 (1999); Nature Genetics, 24, 109 (2000))。また、細胞に対するストレスや刺激によって誘導・選抜される多能性幹細胞も、多能性幹細胞の例として挙げることができる。
複能性幹細胞としては、間葉系幹細胞、造血系幹細胞、神経系幹細胞、骨髄幹細胞、生殖幹細胞等の体性幹細胞等を挙げることが出来る。複能性幹細胞は、好ましくは間葉系幹細胞、より好ましくは骨髄間葉系幹細胞である。間葉系幹細胞とは、骨芽細胞、軟骨芽細胞及び脂肪芽細胞等の間葉系の細胞全て又はいくつかへの分化が可能な幹細胞又はその前駆細胞の集団を広義に意味する。
本発明において用いる基礎培地には、自体公知のものを用いることができ、幹細胞の増殖を阻害しない限り特に限定されないが、例えばDMEM、EMEM、IMDM(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)、GMEM(Glasgow's MEM)、RPMI-1640、α-MEM、Ham's Medium F-12、Ham's Medium F-10、Ham's Medium F12K、Medium 199、ATCC-CRCM30、DM-160、DM-201、BME、Fischer、McCoy's 5A、Leibovitz's L-15、RITC80-7、MCDB105、MCDB107、MCDB131、MCDB153、MCDB201、NCTC109、NCTC135、Waymouth's MB752/1、CMRL-1066、Williams' medium E、Brinster's BMOC-3 Medium、E8 medium(Nature Methods, 2011, 8, 424-429)、ReproFF2培地(リプロセル社)、及びこれらの混合培地等が挙げられる。また、幹細胞培養用に改変された培地や、上記基礎培地と他の培地との混合物等を用いてもよい。
本発明において用いる培地には、自体公知の添加物を含むことができる。添加物としては、幹細胞の増殖を阻害するものでない限り特に限定されないが、例えば成長因子(例えばインスリン等)、鉄源(例えばトランスフェリン等)、ポリアミン類(例えばプトレシン等)、ミネラル(例えばセレン酸ナトリウム等)、糖類(例えばグルコース等)、有機酸(例えばピルビン酸、乳酸等)、アミノ酸(例えばL−グルタミン等)、還元剤(例えば2−メルカプトエタノール等)、ビタミン類(例えばアスコルビン酸、d−ビオチン等)、ステロイド(例えばβ−エストラジオール、プロゲステロン等)、抗生物質(例えばストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等)、緩衝剤(例えばHEPES等)等が挙げられる。また、従来から幹細胞の培養に用いられてきた添加物も適宜含むことができる。添加物は、それぞれ自体公知の濃度範囲内で含まれることが好ましい。
本発明において用いる培地には、血清が含まれていてもよい。血清としては、動物由来の血清であれば、幹細胞の増殖を阻害するものでない限り特に限定されないが、好ましくは哺乳動物由来の血清(例えばウシ胎仔血清、ヒト血清等)である。血清の濃度は、自体公知の濃度範囲内であればよい。ただし、血清成分にはヒトES細胞の分化因子等も含まれていることが知られており、また血清のロット間差により培養結果にばらつきが生じる可能性もあることから、血清の含有量は低いほど好ましく、血清を含まないことが最も好ましい。更に、培養後の幹細胞を医療目的で使用する場合、異種由来成分は血液媒介病原菌の感染源や異種抗原となる可能性があるため、血清を含まないことが好ましい。血清を含まない場合、血清の代替添加物(例えばKnockout Serum Replacement(KSR)(Invitrogen)、Chemically-defined Lipid concentrated(Gibco)、Glutamax(Gibco)等)を用いてもよい。
本発明は、幹細胞の培養用培地であって、脂肪酸含有量が低減されていることを特徴とする培地(以後、本発明の培地とも称する)を提供する。
1.本発明の培地
本発明の培地は、いずれの幹細胞の増殖にも好適に使用することができるが、好ましくは、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞の増殖用である。
また本発明の培地は、いずれの動物由来の幹細胞の増殖にも好適に使用することができる。本発明の培地を使用して培養され得る幹細胞は、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等由来の幹細胞であり、好ましくは、ヒト由来の幹細胞である。
本発明の培地は、脂肪酸含有量が低減されていることを特徴とする。その一実施態様として、本発明の培地は脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを含むことを特徴とする。本発明において用いられるアルブミンは、細胞培養用として用いられているものであれば特に限定されず、既に脂肪酸担持量が低減されたものであればそのまま、脂肪酸担持量が低減されていないものであれば脱脂肪酸処理を施した後培地に添加される。
本明細書中、アルブミンを脱脂肪酸処理に供することを、アルブミンを「精製」すると表現する場合がある。
脂肪酸としては、炭素数8〜20からなる飽和脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸)及び炭素数16〜20からなる不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸)が挙げられる。
本発明者らは、アルブミンに担持される脂肪酸の種類によって幹細胞の増殖への影響が異なるかを検討した結果、中鎖脂肪酸よりも長鎖脂肪酸の方が、幹細胞の増殖阻害作用が高いことを見出した。従って、本発明の培地中において長鎖脂肪酸が低減されている状態が好ましい。
本明細書中、「長鎖脂肪酸」は、炭素数12以上の脂肪酸を意味する。幹細胞の増殖阻害作用を有する長鎖脂肪酸であれば、本発明の培地において低減される長鎖脂肪酸は特に限定されないが、低減されるべき長鎖脂肪酸の具体例としては、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸が挙げられ、好ましい低減されるべき長鎖脂肪酸の例として、ステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸が挙げられる。
アルブミンとして、具体的には、卵白アルブミン、ブタ由来アルブミン、ウシ由来アルブミン、ヒト由来アルブミン等の天然由来のアルブミンや、ウシ型、ブタ型、又はヒト型等の遺伝子組換え体のアルブミンなどを挙げることができ、特に血清由来のアルブミンやヒト型の遺伝子組換え体アルブミン(リコンビナントヒトアルブミン(rHSA))を好適に例示することができる。中でもヒト血清由来のアルブミンが特に好適である。
アルブミンは、種々の物質と結合する能力の高いタンパク質であり、カルシウムや亜鉛等の微量元素や脂肪酸、酵素、ホルモン等と結合する。例えば血清由来のアルブミンは血清中に含まれる種々の物質と結合しており、脂肪酸の場合であればアルブミン1分子は通常脂肪酸2分子と結合する能力を有する。
アルブミンの脱脂肪酸処理は、アルブミンの脂肪酸担持量を低減させることができる処理であれば特に限定されず、活性炭処理(非特許文献1)、イオン交換処理(非特許文献4、5)、加熱処理(非特許文献6)等が挙げられるが、経済性、簡便性等の観点から好ましくは活性炭処理である。アルブミンの脂肪酸担持量の測定は、当分野で通常実施されている方法またはそれに準じた方法を用いて実施することができ、例えば、遊離脂肪酸をメチルエステル化後GC-MSによる検出や、赤外分光による定量に加えてDuncombeの抽出法、アシル−CoAシンセターゼ(ACS)とアシル−CoAオキシダーゼ(ACOD)を使用したACS−ACOD法などが挙げられる。いずれも測定キットとして市販されているものを利用することができる。
活性炭処理は、所望の効果を得られるのであれば、いかなる条件で行われてもよいが、一態様において、活性炭処理は、アルブミンの重量当り30〜60重量%、好ましくは40〜50重量%の活性炭量を用いて行うことができる。また、活性炭処理を行う際のpHは、所望の効果を得られるのであれば特に限定されないが、pH3〜8、好ましくはpH3.7〜7.3、さらに好ましくは3.7〜4.3または6.7〜7.3が例示される。
一態様において、アルブミンの脱脂肪酸処理は、イオン交換クロマトグラフィーを行うことでも好適に成し得る。具体的な方法の例としては、中性付近のpHに調整した40 mMリン酸ナトリウム緩衝液に対してアルブミン溶液を透析し、これを、あらかじめ同じ緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィー用カラム(例えば、DEAEセファロースFF(GEヘルスケア・ジャパン))に負荷し、その後、同じく中性付近のpHに調整した80 mMリン酸ナトリウムに対して、カラム容積の10倍の容量で直線濃度勾配を付与することで、脂肪酸と結合していないアルブミン画分を回収する方法を挙げることができる。
本発明において使用されるアルブミンの脂肪酸担持量は、幹細胞が良好に増殖できる程度に低減される。脱脂肪酸処理が行われていないアルブミンの脂肪酸担持量としては、14mg/g程度の脂肪酸担持量が例示される。本発明において使用されるアルブミンの脂肪酸担持量の低減は、好ましくは脂肪酸担持量10mg/g以下、より好ましくは6mg/g以下となるよう、いっそう好ましくは実質的に脂肪酸を担持しないよう実施される。ここで、「実質的に脂肪酸を担持しない」とは、アルブミンが全く脂肪酸を結合していないか、結合していても、脂肪酸担持量を測定するために用いた測定方法又は測定用キットの検出限界未満であることを意味する。
2種以上の脂肪酸がアルブミンに結合している場合は、その合計量が上記範囲となるように低減されることが好ましい。
一態様において、本発明の培地に使用されるアルブミンの脂肪酸担持量は、10mg/g以下、より好ましくは6mg/g以下であって、かつ、0.1mg/g以上であり得る。具体的には、脂肪酸担持量は、0.1mg/g〜0.8mg/gであり得、好ましくは0.1mg/g〜0.65mg/g、または、0.2mg/g〜0.8mg/g、より好ましくは0.2mg/g〜0.65mg/g、最も好ましくは0.29mg/g〜0.65mg/gであり得る。当該脂肪酸担持量は、例えば、活性炭処理等の簡便な方法でアルブミンの脱脂肪酸処理を行うことで達成し得るアルブミンの脂肪酸担持量であり、かつ、脂肪酸担持量が前記範囲内にあれば、脱脂肪酸処理を行っていないアルブミンを使用した培地を用いた場合と比べ、幹細胞の増殖を亢進することが可能である。よって、培地作製にかかる時間、労力、費用等の削減を図れるため、当該範囲内の脂肪酸担持量は、本発明の培地を簡便に大量生産する上で好適に採用し得る。
また、アルブミンの脂肪酸担持量を0.1mg/g未満にした場合でも所望の効果は得られるが、脂肪酸担持量を0.1mg/g未満にするには、例えば、イオン交換クロマトグラフィー等の方法により更に脱脂肪酸処理を行う必要があり、活性炭処理等の簡便な方法と比べ、時間、労力、費用等を要する。従って、アルブミンの脂肪酸担持量を0.1mg/g未満にした場合には産業レベルで本発明の培地を大量生産するのには不利である。
2種以上の脂肪酸がアルブミンに結合している場合は、その合計量が上記範囲となるように低減されることが好ましい。
本発明において、脂肪酸担持量が低減されたアルブミンの培地への添加量は、細胞培養用培地に通常添加され得る量であれば特に限定されないが、終濃度が0〜50mg/mL、好ましくは0.01〜30mg/mL、より好ましくは0.05〜10mg/mL、さらに好ましくは0.5〜5mg/mLとなるように、幹細胞培養用の基礎培地に添加される。
別の一実施態様として、本発明の培地は培地全体として脂肪酸含有量が低減されている。ここで、「培地全体として脂肪酸含有量が低減された」とは、アルブミンに結合している脂肪酸の量の低減に加え、遊離の脂肪酸の量をも低減されていることを意図する。好ましい態様においては、アルブミンに結合している脂肪酸の量が低減している。培地中の脂肪酸含有量は、好ましくは60μM以下であり、より好ましくは30μM以下、さらに好ましくは10μM以下であり、いっそう好ましくは9、8、7、6、5、4、3、2または1μM以下であり、最も好ましくは幹細胞培養用の基礎培地に含まれる脂肪酸濃度に大きな影響を与えない濃度である。幹細胞培養用の基礎培地に含まれる脂肪酸濃度とは、例えば市販のHam's Medium F-12やDMEM/Ham's Medium F-12において0.3μMおよび0.15μM程度である。大きな影響を与えないとは、幹細胞培養用の基礎培地に含まれる脂肪酸濃度から10倍以内の濃度変化にとどまることである。すなわち、幹細胞培養用の基礎培地に含まれる脂肪酸濃度の10倍量を超えない範囲で0μM以上、0μMを超える濃度、0.15μM以上、0.3μM以上、0.5μM以上の脂肪酸が含まれることは許容される。脂肪酸含有量は、上記したアルブミンに結合した脂肪酸の量を測定する方法に準じて測定することができ、測定キットも市販されている。
2種以上の脂肪酸が培地中に含まれている場合には、その合計量が上記範囲となるように低減されることが好ましい。
脂肪酸としては、炭素数8〜20からなる飽和脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸)及び炭素数16〜20からなる不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸)が挙げられる。
中鎖脂肪酸よりも長鎖脂肪酸の方が高い幹細胞増殖阻害作用を有するという本発明者らの知見に基づき、一態様において、低減されるべき脂肪酸は長鎖脂肪酸(炭素数12以上の脂肪酸)であり、その具体例としては、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸が挙げられ、好ましい具体例としてはステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸が挙げられる。
アルブミン1g当たりの脂肪酸担持量が0.1mg〜0.65mgである、幹細胞の培養用培地が好ましい。また、更に培地中の脂肪酸含有量が60μM以下である、幹細胞の培養用培地が好ましい。
本発明は、幹細胞の培養用培地であって、脂肪酸含有量が低減されていることを特徴とする培地を製造する方法(以後、本発明の製造方法とも称する)を提供する。
2.本発明の製造方法
一実施態様として、本発明の製造方法は、アルブミンを脱脂肪酸処理して脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを調製し(工程1)、該調製されたアルブミンを培地に添加する(工程2)方法である。
(工程1) アルブミンを脱脂肪酸処理して脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを調製する工程
上記、「本発明の培地」の項に準じて実施することができる。要すれば、ヒト由来の血清アルブミンやrHSAを活性炭処理、イオン交換処理、加熱処理等の脱脂肪酸処理(好ましくは活性炭処理)に付し、脂肪酸担持量が低減された(好ましくは脂肪酸担持量10mg/g以下、より好ましくは6mg/g以下となるよう、いっそう好ましくは実質的に脂肪酸を担持しない)アルブミンを調製する。脂肪酸担持量が低減されたことの確認は、当分野で通常実施されている方法またはそれに準じた方法を用いてアルブミンに結合している脂肪酸の量を測定することによって実施することができ、測定キットとして市販されているものを利用することができる。
一態様において、アルブミンの脂肪酸担持量は、10mg/g以下、より好ましくは6mg/g以下であって、かつ、0.1mg/g以上であり得る。具体的には、脂肪酸担持量は、0.1mg/g〜0.8mg/gであり得、好ましくは0.1mg/g〜0.65mg/g、または、0.2mg/g〜0.8mg/g、より好ましくは0.2mg/g〜0.65mg/g、最も好ましくは0.29mg/g〜0.65mg/gであり得る。
(工程2)上記工程1で得られた、脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを培地に添加する工程
上記、「本発明の培地」の項に準じて実施することができる。脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを培地(基礎培地)に、終濃度が0〜50mg/mL、好ましくは0.01〜30mg/mL、より好ましくは0.05〜10mg/mL、さらに好ましくは0.5〜5mg/mLとなるように添加する。基礎培地としては、上記、「本発明の培地」の項で例示したものが同様に用いられる。
かくして幹細胞の培養用培地を製造することができる。
本発明は、培地への添加に適したアルブミンを選択する方法(以後、本発明の選択方法とも称する)を提供する。
3.本発明の選択方法
一実施態様として、本発明の選択方法は、培地への添加候補となるアルブミンの脂肪酸担持量を測定し(工程1)、脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを選抜する(工程2)方法である。
(工程1)アルブミンの脂肪酸担持量を測定する工程
上記、「本発明の培地」の項に準じて実施することができる。要すれば、当分野で通常実施されている方法またはそれに準じた方法を用いて実施することができ、例えば、Duncombeの抽出法、アシル−CoAシンセターゼ(ACS)とアシル−CoAオキシダーゼ(ACOD)を使用したACS−ACOD法などが挙げられる。いずれも測定キットとして市販されているものを利用することができる。
(工程2)脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを選抜する工程
上記工程1で得られた測定結果に基づいて脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを選抜する工程である。「脂肪酸担持量が低減されたアルブミン」としては、好ましくは脂肪酸担持量10mg/g以下、より好ましくは6mg/g以下、いっそう好ましくは実質的に脂肪酸を担持しないアルブミンが挙げられる。
一態様において、アルブミンの脂肪酸担持量は、10mg/g以下、より好ましくは6mg/g以下であって、かつ、0.1mg/g以上であり得る。具体的には、脂肪酸担持量は、0.1mg/g〜0.8mg/gであり得、好ましくは0.1mg/g〜0.65mg/g、または、0.2mg/g〜0.8mg/g、より好ましくは0.2mg/g〜0.65mg/g、最も好ましくは0.29mg/g〜0.65mg/gであり得る。
かくして選抜された「脂肪酸担持量が低減されたアルブミン」は幹細胞培養用の培地に好適に添加される。
本発明は、幹細胞の培養方法(以後、本発明の培養方法とも称する)を提供する。
4.本発明の培養方法
本発明の培養方法は、幹細胞を本発明の培地で培養する工程を含む。
幹細胞の培養に用いられる培養器は、幹細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウエルプレート、マルチプレート、マルチウエルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、及びローラーボトルが挙げられ得る。
培養器は、細胞接着性であっても細胞非接着性であってもよく、目的に応じて適宜選ばれる。細胞接着性の培養器は、培養器の表面の細胞との接着性を向上させる目的で、細胞外マトリックス(ECM)等の任意の細胞支持用基質でコーティングされたものであり得る。細胞支持用基質は、幹細胞又はフィーダー細胞(用いられる場合)の接着を目的とする任意の物質であり得る。
その他の培養条件は、適宜設定できる。例えば、培養温度は、特に限定されるものではないが約30〜40℃、好ましくは約37℃であり得る。CO濃度は、約1〜10%、好ましくは約2〜5%であり得る。酸素分圧は、1〜10%であり得る。
5.本発明の添加剤
本発明は、脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを含有してなる幹細胞培養用の培地添加剤(本明細書中、「本発明の添加剤」と記載する場合がある)をも提供する。
本発明の添加剤に含まれるアルブミンの脂肪酸担持量は、10mg/g以下、より好ましくは6mg/g以下、いっそう好ましくは実質的に脂肪酸を担持しないアルブミンが挙げられる。一態様において、アルブミンの脂肪酸担持量は、10mg/g以下、より好ましくは6mg/g以下であって、かつ、0.1mg/g以上であり得る。具体的には、脂肪酸担持量は、0.1mg/g〜0.8mg/gであり得、好ましくは0.1mg/g〜0.65mg/g、または、0.2mg/g〜0.8mg/g、より好ましくは0.2mg/g〜0.65mg/g、最も好ましくは0.29mg/g〜0.65mg/gであり得る。
本発明の添加剤は、所望の効果を損なわない限り、アルブミン以外の添加物をさらに含むことができる。該添加物としては、幹細胞の増殖を阻害するものでない限り特に限定されないが、例えば成長因子(例えばインスリン等)、鉄源(例えばトランスフェリン等)、ポリアミン類(例えばプトレシン等)、ミネラル(例えばセレン酸ナトリウム等)、糖類(例えばグルコース等)、有機酸(例えばピルビン酸、乳酸等)、アミノ酸(例えばL−グルタミン等)、還元剤(例えば2−メルカプトエタノール等)、ビタミン類(例えばアスコルビン酸、d−ビオチン等)、ステロイド(例えばβ−エストラジオール、プロゲステロン等)、抗生物質(例えばストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等)、緩衝剤(例えばHEPES等)等が挙げられる。また、従来から幹細胞の培養に用いられてきた添加物も適宜含むことができる。添加物は、それぞれ自体公知の濃度範囲内で含まれることが好ましい。
本発明の添加剤は、所望の効果が得られる限り、いかなる剤形であってもよく、例えば、溶液、固形、粉末状等が挙げられる。固形または粉末状である場合は、適切な緩衝液等を使用して所望の濃度になるように溶解し、使用することができる。
本発明の添加剤中の脂肪酸担持量が低減されたアルブミンの含有量は、所望の効果が得られるのであれば特に制限されないが、例えば、0.05〜250mg/mL、好ましくは0.05〜150mg/mL、より好ましくは0.25〜50mg/mL、さらに好ましくは2.5〜25mg/mLが挙げられる。当該添加剤は、培地中におけるアルブミンの終濃度が0.01〜50mg/mL、好ましくは0.01〜30mg/mL、より好ましくは0.05〜10mg/mL、さらに好ましくは0.5〜5mg/mLとなるように添加し、幹細胞の培養に好適に使用し得る。
本発明の添加剤において低減され得る脂肪酸は上記に準じ、本発明の添加剤における幹細胞の定義も上記に準じる。
6.本発明の培養システム
本発明は、脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを含有してなる培地で培養する工程を含む、幹細胞の培養システムであって、該脂肪酸担持量が、幹細胞を未分化状態で維持することができるように選択される培養システム(本明細書中、「本発明の培養システム」と記載する場合がある)をも提供する。
「幹細胞を未分化状態で維持することができるように選択される」とは、幹細胞が未分化状態で増殖可能な範囲内の脂肪酸担持量を選択することを意味する。本発明の培養システムにおいては、好ましくは、培養期間中に分化細胞の占める割合が増えることなく、その割合が、多くても10%以内程度に保たれている状態で幹細胞が培養され、より好ましくは、分化細胞が実質的に混在することなく、幹細胞が未分化状態で培養され、かつ、未分化細胞が増殖可能な範囲内の脂肪酸担持量が選択され得る。幹細胞の未分化状態は自体公知の方法により確認することができ、一例として、アルカリフォスファターゼ染色による確認やFACSによる未分化マーカー蛋白質陽性率の確認や顕微鏡によるコロニーの確認等の方法が挙げられる。また、当該方法により未分化状態にないと判断された細胞を、分化細胞として認定することができる。
本発明の培養システムに用いられるアルブミンの脂肪酸担持量は、幹細胞を未分化状態で維持することができるように選択される脂肪酸担持量に低減されていれば特に制限されるものではないが、例として、10mg/g以下、より好ましくは6mg/g以下、いっそう好ましくは実質的に脂肪酸を担持しないアルブミンが挙げられる。一態様において、アルブミンの脂肪酸担持量は、10mg/g以下、より好ましくは6mg/g以下であって、かつ、0.1mg/g以上であり得る。具体的には、脂肪酸担持量は、0.1mg/g〜0.8mg/gであり得、好ましくは0.1mg/g〜0.65mg/g、または、0.2mg/g〜0.8mg/g、より好ましくは0.2mg/g〜0.65mg/g、最も好ましくは0.29mg/g〜0.65mg/gであり得る。
本発明の培養システムにおいて低減され得る脂肪酸は上記に準じ、本発明の培養システムにおける幹細胞の定義も上記に準じる。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
(材料と方法)
1.アルブミンの精製(活性炭処理)
ヒト血清アルブミンの生理食塩水溶液(40ml、25%)にリン酸緩衝液(pH7.2)を40ml加え、予め200℃で30分間加熱した活性炭(5g、和光純薬社製)にリン酸緩衝液20mlで懸濁した液に加えた。4℃で3時間撹拌した後、4℃にて11,900rpmで20分間遠心分離した。沈降した活性炭をデカンテーションで除き、反応液を0.22μmのシリンジフィルターでろ過した。ろ過した液を100倍希釈し、島津製作所製UV吸収測定装置UV1800を用いて波長260nm、280nm、320nmで吸光度を測定して計算式(A280-A320)/0.55×100にて濃度を算出した。
2.細胞評価
各種被験化合物による人工多能性幹細胞(iPS細胞)の増殖効果を評価した。iPS細胞は、iPSアカデミアジャパン社より購入した201B7株を用いた。細胞培養は、基底膜マトリックスをコートした培養容器(日本ベクトンディッキンソン社、Falcon培養シャーレもしくはFalcon培養プレート)を用い、5%CO/37℃の条件で行った。
各種被験化合物は、現在のところ、ヒト多能性幹細胞を培養するための最小組成と考えられる「E8」組成(Nature Methods, 2011, 8, 424-429にて開示される)の培地に、所定の濃度にて添加し、培養に用いることにより、その効果を検討した。
3.脂肪酸担持量の測定
アルブミン10mgに相当する溶液または粉末を、1%食塩水を用いて200μlに調製し、メタノール400μlとクロロホルム200μlを加えて10分間振とうした。クロロホルム200μlと1%食塩水200μlを加え10分間振とうした後、10,000rpmで2分間遠心分離して下層を分取した。得られたクロロホルム層の溶媒を乾固しアッセイ用サンプルとした。サンプルを2−プロパノールに溶解し、脂肪酸量測定キット(ラボアッセイTMNEFA、和光純薬社製)を用いて検量線法により脂肪酸量をオレイン酸換算にて定量した。吸光度の測定には、コロナエレクトリック社のSH900を用いた。
実施例1 各種アルブミンの細胞培養への影響
ヒト血清由来アルブミンを最終濃度2.6g/Lで培地に添加し、各アルブミンの培養成績を比較した。数種のアルブミンについて、脂質除去を目的とした精製処理(脱脂肪酸処理)を施した。培養期間は1週間であった。6ウェルプレートの1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり5μgコートした。播種時に使用する培地にはY−27632を添加(最終濃度10μM、ナカライテスク社:08945−84)した。翌日以降はY−27632を添加していない培地で培養した。
各々の培地毎に実験を3連にて行った結果を表1に示す。
1週間の培養後、アルカリフォスファターゼ(ALP)染色を行い、未分化能維持の確認を行った。染色には、アルカリフォスファターゼ染色キット(シグマアルドリッジ社:86−R)を用いた。培養成績の欄において、+または−と表記した場合の培養後の様子を、図1に示す。Nova Biologics、Sigma、Biocell Laboratoriesの各社から入手したアルブミンを培地に添加した場合、一部を除いて細胞は増殖しなかった。しかし、アルブミンを精製処理に供した後で培地に添加した場合、細胞は増殖した。また、これら全てのアルブミンについて、脂肪酸担持量(脂肪酸含有量)を測定したところ、表1に示す結果となった。以上の結果から、アルブミンに結合した脂肪酸が、細胞の正常な増殖を阻害することがわかった。
精製:活性炭処理
脂肪酸担持量(mg/g)
実施例2 精製ヒト血清由来アルブミンへの脂肪酸再添加の影響
(脂肪酸添加)
オレイン酸12.6μlを15mlのファルコンチューブに入れ、精製したヒト血清アルブミンBの溶液(5.9ml、8.8%)を加えた。溶液を37℃で3時間振とうし、放冷した後0.22μmのシリンジフィルターでろ過した。
かくしてオレイン酸を吸着させたアルブミンを得た。得られたオレイン酸を吸着させたアルブミンを、最終濃度2.6g/Lにて添加した培地を用いて実験を行った(培地中オレイン酸濃度196μM)。
パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸についても、表2に記載の用量の脂肪酸と精製したヒト血清アルブミンを用いて同様の処理を行い、各種の脂肪酸を吸着させたアルブミンを得、各種の脂肪酸を吸着させたアルブミンが添加された培地を調製した。
尚、上記吸着操作後のアルブミンの脂肪酸担持量の測定は行っていない。
(脂肪酸量の測定)
アルブミン10mgに相当する溶液または粉末を、1%食塩水を用いて200μlに調製し、メタノール400μlとクロロホルム200μlを加えて10分間振とうした。クロロホルム200μlと1%食塩水200μlを加え10分間振とうした後、10,000rpmで2分間遠心分離して下層を分取した。得られたクロロホルム層の溶媒を乾固しアッセイ用サンプルとした。サンプルを2−プロパノールに溶解し、脂肪酸量測定キット(ラボアッセイTMNEFA、和光純薬社製)を用いて検量線法により脂肪酸量をオレイン酸換算にて定量した。吸光度の測定には、コロナエレクトリック社のSH900を用いた。
培地中の添加脂肪酸及び脂肪酸の添加濃度、アルブミン1gあたりの脂肪酸含有量(脂肪酸担持量)を表2に示す。
脂肪酸担持量(mg/g)
(細胞評価)
脂肪酸を吸着させたアルブミンを表2に記載の濃度で添加された培地を用い、幹細胞を培養した。培養期間は1週間であった。6ウェルプレートの1ウェルあたり、13,000個の生細胞をシングルセル播種した。基底膜マトリックスとして大阪大学より購入した、ラミニン511の活性ドメインを含む断片を1ウェル当たり5μgコートした。播種時に使用する培地にはY−27632を添加(最終濃度10μM)した。翌日以降はY−27632を添加していない培地で培養した。
各ウェルから、トリプルセレクト(ライフテクノロジーズ社:12563−011)で細胞を剥離し、ウェル内の生細胞数を測定した。その結果を図2に示す。オレイン酸、パルミチン酸、ともに、添加によって、細胞増殖を抑制することがわかった。その抑制効果は、脂肪酸添加濃度に比例し、高濃度の脂肪酸を添加するほど、強く細胞増殖を抑制した。以上の結果から、アルブミンに吸着した脂肪酸の濃度依存的に、細胞培養効率が低下することがわかった。
実施例3 異なる精製度のヒト血清由来アルブミンのiPS細胞への影響(図3)
以下の5通りの精製度のヒト血清アルブミンを調製した。
(I)群:脂肪酸除去処理が施されたヒト血清アルブミン(Sigma社)を使用した。脂肪酸担持量は0.07mg/g以下であると考えられる。
(II)群:ヒト血清由来アルブミン(Nova Biologics社)をpH4の条件下、アルブミン重量に対して50重量%の活性炭を使用して精製した後に使用した。脂肪酸担持量の測定結果は、0.29mg/gであった。
(III)群:ヒト血清由来アルブミン(Nova Biologics社)をpH7の条件下、アルブミン重量に対して50重量%の活性炭を使用して精製した後に使用した。脂肪酸担持量の測定結果は、0.65mg/gであった。
(IV)群:ヒト血清由来アルブミン(Nova Biologics社)をpH7の条件下、アルブミン重量に対して25重量%の活性炭を使用して精製した後に使用した。脂肪酸担持量の測定結果は、0.92mg/gであった。
(V)群:ヒト血清由来アルブミン(Nova Biologics社)をpH7の条件下、アルブミン重量に対して13重量%の活性炭を使用して精製した後に使用した。脂肪酸担持量の測定結果は、1.86mg/gであった。
上記各群のヒト血清アルブミンを最終濃度2.6g/Lで培地に添加し、iPS細胞の培養を行った。基底膜マトリックスとしてラミニン511の活性ドメインを含む断片(iMatrix−511(株式会社ニッピ社))を5μg/wellでコートした6ウェルプレートを使用し、1ウェル当り13,000個のiPS細胞をシングルセル播種し、1週間培養した。播種時に使用する培地にのみ、最終濃度10μMでY−27632(ナカライテスク社:08945−84)を添加した。
各ウェルからトリプルセレクト(ライフテクノロジーズ社:12563−011)で細胞を剥離し、生細胞数を計測した。図3には、各群についての3回の独立した実験の平均値を示す。培地性能に問題がない場合、本培養法で1週間の培養を行った場合のiPS細胞の生細胞数は3.0×10細胞程度以上になる。図3に示すように、(I)〜(III)群においては、良好な細胞増殖が認められ、いずれも3.0×10を超える細胞数が得られた。一方で、(IV)および(V)群では、明らかな増殖阻害作用が認められた。このことから、少なくともアルブミンの脂肪酸担持量が0.65mg/g以下であれば、iPS細胞は良好に増殖できることが明らかとなった。
(I)〜(III)群については、上記培養後さらに1週間の培養を行い、アルカリホスファターゼ(ALP)染色により分化率を調べた。分化率(%)は、各ウェル中における、ALP陰性コロニー数/全コロニー数×100にて算出した。(I)、(II)および(III)群の分化率は、それぞれ0.4%、1.5%および2.6%であった。これらの数値は十分に低い値といえ、いずれの条件もiPS細胞の未分化状態を維持したまま増殖させるのに適していることが明らかとなった。同様の結果は、顕微鏡によるコロニーの観察においても得られ、アルブミンの精製度が高いほど、iPS細胞の未分化状態がより高い割合で維持できることが確認された。
実施例4 7種の脂肪酸を再担持させた精製ヒト血清由来アルブミンの影響(図4)
オクタン酸18.3μLを50mLのファルコンチューブに入れ、脱脂肪酸処理したヒト血清アルブミンB溶液(15mL、10%、Sigma社)を加えた。該溶液を37℃で7時間振とうし、4℃で終夜静置後、0.22μmのシリンジフィルターでろ過した。かくしてオクタン酸を再吸着させたアルブミンを得た。該オクタン酸を再吸着させたアルブミンの脂肪酸担持量を測定し、該オクタン酸再吸着後のアルブミンと再吸着前の脱脂肪酸処理後の精製アルブミンを、培地中の最終オクタン酸濃度が28μMまたは57μMとなるように比率を調製しながら適宜混合させた。培地にはアルブミンの最終濃度が2.6g/Lとなるように添加した。
オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸についても同様の手技にて脂肪酸の再吸着を行った。培地中の最終濃度および添加量についても同様である。
上記のようにして作製した培地を使用し、各脂肪酸のiPS細胞の増殖に対する影響を検討した。基底膜マトリックスとしてラミニン511の活性ドメインを含む断片(iMatrix−511(株式会社ニッピ社))を5μg/wellでコートした6ウェルプレートを使用し、1ウェル当り13,000個のiPS細胞をシングルセル播種し、1週間培養した。播種時に使用する培地にのみ、最終濃度10μMでY−27632(ナカライテスク社:08945−84)を添加した。尚、陽性対照には、脂肪酸を再吸着させていないアルブミン、即ち、脱脂肪酸処理を施したアルブミンを使用してiPS細胞の培養を行った。
各ウェルからトリプルセレクト(ライフテクノロジーズ社:12563−011)で細胞を剥離し、生細胞数を計測した。図4には、各群についての3回の独立した実験の平均値を示す。
ステアリン酸、パルミチン酸、およびアラキドン酸を再吸着させた場合は、28μMと57μMの双方で細胞が死滅し、生細胞を得られなかった。リノール酸およびリノレン酸も、iPS細胞の増殖阻害作用が強く、57μMの再吸着の場合は細胞が死滅し、28μMの再吸着でも陽性対照と比べiPS細胞の増殖が顕著に抑制された。オレイン酸を再吸着させた場合でも、濃度依存的な細胞増殖阻害作用が認められ、28μMおよび57μMのいずれの場合でも陽性対照よりも少ない生細胞数であった。一方で、オクタン酸の場合は、57μMの再吸着においては、一定の細胞増殖阻害作用が認められたが、28μMの再吸着では陽性対照と同等の生細胞数であった。これらの検討から、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸またはアラキドン酸をアルブミンへ再吸着させた場合は、いずれの濃度で添加された場合でもiPS細胞の増殖に対して阻害作用を示すことが明らかとなった。オクタン酸の再吸着の場合は、再吸着の濃度によっては陽性対照と同等の生細胞数が得られ、その阻害作用は低いことが明らかとなった。
以上より、オレイン酸等の長鎖脂肪酸の方が、オクタン酸等の中鎖脂肪酸に比べiPS細胞への毒性が強く増殖阻害作用が高いことが示された。
本発明の培地を用いれば、幹細胞を、未分化状態を維持したまま増殖させることができる。さらに、本発明の培地を用いれば、幹細胞を効率よく増殖させることができ、そのため培養中の培地交換の頻度を下げることができ、幹細胞の培養コストを削減することが可能となる。
本願は日本で出願された特願2013−114285(出願日:2013年5月30日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (34)

  1. 脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを含有してなる多能性幹細胞の培養用培地であって、アルブミンの脂肪酸担持量が0.1mg/g〜0.65mg/gであり、且つ培地中のアルブミンの添加量が終濃度0.5〜5mg/mLである、培地。
  2. 脂肪酸担持量の低減が脱脂肪酸処理によるものである、請求項1記載の培地。
  3. 脱脂肪酸処理が活性炭処理である、請求項2記載の培地。
  4. 培地中の脂肪酸含有量が60μM以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の培地。
  5. 脂肪酸が長鎖脂肪酸である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の培地。
  6. 脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の培地。
  7. アルブミンがヒト血清由来アルブミンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の培地。
  8. 多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、請求
    項1〜7のいずれか1項に記載の培地。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の培地で培養する工程を含む、多能性幹細胞の培養方法。
  10. 多能性幹細胞が、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、請
    求項9記載の方法。
  11. 脂肪酸担持量を測定し、脂肪酸担持量が0.1mg/g〜0.65mg/gに低減されたアルブミンを選抜する工程を含む、多能性幹細胞培養用の培地添加剤の製造方法。
  12. アルブミンを脱脂肪酸処理して脂肪酸担持量が0.1mg/g〜0.65mg/gに低減されたアルブミンを調製し、該調製されたアルブミンを終濃度0.5〜5mg/mLとなるように培地に添加することを特徴とする、多能性幹細胞の培養用培地の製造方法。
  13. 脱脂肪酸処理が活性炭処理である、請求項12記載の方法。
  14. 活性炭処理がアルブミン重量当り30〜60重量%の活性炭量を用いて行われる、請求項13記載の方法。
  15. 活性炭処理がpH6.7〜7.3で行われる、請求項13または14記載の方法。
  16. 活性炭処理がpH3.7〜4.3で行われる、請求項13または14記載の方法。
  17. 培地中の脂肪酸含有量が60μM以下である、請求項12〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 脂肪酸が長鎖脂肪酸である、請求項12〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項12〜17のいずれか1項に記載の方法。
  20. アルブミンがヒト血清由来アルブミンである、請求項12〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、請求
    項12〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 脂肪酸担持量が0.1mg/g〜0.65mg/gであるアルブミンを含有してなる多能性幹細胞培養用の培地添加剤。
  23. 脂肪酸が長鎖脂肪酸である、請求項22に記載の培地添加剤。
  24. 脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項22に記載の培地添加剤。
  25. アルブミンがヒト血清由来アルブミンである、請求項22〜24のいずれか1項に記載の培地添加剤。
  26. 多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、請求
    項22〜25のいずれか1項に記載の培地添加剤。
  27. 脂肪酸担持量が低減されたアルブミンを終濃度0.5〜5mg/mLで含有してなる培地で培養する工程を含む、多能性幹細胞の培養システムであって、該脂肪酸担持量が、多能性幹細胞を未分化状態で維持することができるように選択される培養システムであって、アルブミンの脂肪酸担持量が0.1mg/g〜0.65mg/gであるシステム。
  28. 脂肪酸担持量の低減が脱脂肪酸処理によるものである、請求項27記載の培養システム。
  29. 脱脂肪酸処理が活性炭処理である、請求項28記載の培養システム。
  30. 培地中の脂肪酸含有量が60μM以下である、請求項27〜29のいずれか1項に記載の培養システム。
  31. 脂肪酸が長鎖脂肪酸である、請求項27〜30のいずれか1項に記載の培養システム。
  32. 脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項27〜30のいずれか1項に記載の培養システム。
  33. アルブミンがヒト血清由来アルブミンである、請求項27〜32のいずれか1項に記載の培養システム。
  34. 多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)である、請求
    項27〜33のいずれか1項に記載の培養システム。
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