JP6375720B2 - 光触媒積層体の製造方法、スパッタリングターゲット、およびスパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

光触媒積層体の製造方法、スパッタリングターゲット、およびスパッタリングターゲットの製造方法 Download PDF

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Description

本願発明は、光触媒積層体の製造方法、スパッタリングターゲット、およびそのスパッタリングターゲットの製造方法に関するものである。
光触媒層は、その光触媒機能により各種の効果を発揮する。例えば、光触媒層は、有機物を分解する効果、表面を親水化する効果、または表面を防汚、抗菌もしくは脱臭する効果といった、さまざまな効果を有する。
この様な光触媒層を基材の表面に製膜する、様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1〜3には、スパッタリング法により基材上に光触媒層を製膜する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、チタン及び酸素の含有割合の合計が99.0質量%以上である酸化チタンから構成されるターゲットを用いてスパッタリング法により酸化チタン膜を形成した後に、前記酸化チタン膜を200〜650℃で焼成することにより、アナターゼ型酸化チタン膜を高速で製膜する方法が開示されている。
特許文献2には、ターゲットに金属チタンを用いて、ガスフロースパッタリング法により酸化チタン薄膜を基材上に製膜する、高い光触媒機能を有する薄膜を高速で形成する方法が開示されている。
特許文献3には、アルゴン雰囲気中のスパッタリング率がチタンのそれの2倍以上である金属を含有するチタンターゲットを用い、反応性スパッタリング法により基体上にチタン化合物膜を高速で形成する方法が開示されている。
しかし、これらの特許文献に記載された光触媒機能を有する薄膜を形成する方法は、基材が高温にさらされるため耐熱性の低い基材を使用できないという問題、特殊な製膜装置を必要とするという問題、均質なターゲットの製造が難しいという問題などを有している。
また、スパッタリング法で光触媒層を形成する場合、生産性を向上させるために、一般に投入電力を高くして製膜速度を向上させる方法がとられるが、スパッタリングターゲットの相対密度が十分に高くないと、スパッタリングターゲットに割れが生じ、安定して製膜できないという問題があり、相対密度の高いスパッタリングターゲットが必要とされている。(相対密度とは、実測密度を理論密度で除した値を百分率で示した値をいう。)
特開2003−293119号公報 特開2007−230812号 WO2003/106732号
有機物を分解する効果、表面を親水化する効果、または表面を防汚、抗菌する、もしくは脱臭する効果といった、種々の効果を発揮する光触媒機能を示す光触媒層を、高い生産性で形成する技術が求められているが、優れた光触媒機能を示す光触媒層を、高い生産性で製造できる技術は、得られていない。
さらに、耐熱性の低い基材の表面に、優れた光触媒機能を示す光触媒層を形成する技術が求められている。
本願発明の光触媒積層体の製造方法は、光触媒機能を示す第1の成分と、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す第2の成分と、を含み、前記第1の成分と前記第2の成分の混合比が重量比で95:5から20:80の範囲内であるスパッタリングターゲットを用いて、基材上に光触媒機能を有する光触媒層を形成する。
また、本願発明の光触媒積層体の製造方法は、前記第1の成分が、平均粒子径10nm以上200nm以下の微粒子であることを特徴とする。
また、本願発明の光触媒積層体の製造方法に用いる基材は、そのガラス転移点が80℃以上であることを特徴とする。
また、本願発明の光触媒積層体の製造方法に用いる基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、またはこれらの共重合体であることを特徴とする。
また、本願発明の光触媒積層体の製造方法に用いる基材は、有機繊維で構成された繊維状基材であることを特徴とする。
本願発明のスパッタリングターゲットは、光触媒機能を示す第1の成分と、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す第2の成分と、を含み、前記第1の成分と前記第2の成分の混合比が重量比で95:5から20:80の範囲内である。
また、本願発明のスパッタリングターゲットの第1の成分は、平均粒子径10nm以上200nm以下の微粒子であることを特徴とする。
また、本願発明のスパッタリングターゲットの第1の成分は、アナターゼ型酸化チタンであることを特徴とする。
また、本願発明のスパッタリングターゲットの第2の成分
の融点は、600℃以下であることを特徴とする。
また、本願発明のスパッタリングターゲットは、相対密度が、40%以上であることを特徴とする。
本願発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、光触媒機能を示す第1の成分と、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す第2の成分と、を含む材料を、前前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度未満、かつ前記第2の成分の融点以上の温度でプレス成形する工程を有する。
また、本願発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、光触媒機能を示す第1の成分と、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す第2の成分と、を含む材料を、前前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度未満でプレス成形をすることによって、成形体を製造する工程と、前記成形体を、前前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度未満、かつ前記第2の成分の融点以上の温度で焼成する工程と、を有する。
また、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、前記第1の成分が、平均粒子径10nm以上200nm以下の微粒子であることを特徴とする。
本願発明のスパッタリングターゲット、およびそれを用いた製造方法により、優れた光触媒機能を示す光触媒層を、高い生産性で製造することができる。
本願発明のスパッタリングターゲットを用いて製造された光触媒積層体の一例を示す模式的な断面図である。
以下、本形態のスパッタリングターゲット、スパッタリングターゲットの製造方法、および光触媒積層体の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、本形態は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
1.光触媒機能
本形態のスパッタリングターゲットは、光触媒機能を示す第1の成分を含む。
光触媒機能を示す材料は、アナターゼ型酸化チタン、または酸化タングステン等が挙げられる。それ以外にも、ニオブ系合金など、さまざまな検討がおこなわれ、新たな材料が開発されている。光触媒機能を示す材料は、光の照射により、有機物を分解する機能、表面を親水化、防汚、抗菌、脱臭、または超親水化などの機能を示す。これらの機能を光触媒機能という。
ここで、本明細書でいう光触媒機能を有する光触媒層は、水接触角の測定により性能の評価をおこなっている。光触媒積層体の光触媒層の紫外線照射による水接触角の経時変化の測定をおこない、紫外線照射1時間後の水接触角が10度以下となった場合には光触媒効果を有すると評価し、紫外線照射1時間後の水接触角が5度以下となった場合に高い光触媒効果を有すると評価している。
2.スパッタリングターゲット
本形態のスパッタリングターゲットは、光触媒機能を示す第1の成分と、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す第2の成分と、を含み、前記第1の成分と前記第2の成分の混合比が重量比で95:5から20:80の範囲内である。
このようなスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法による光触媒層の形成をおこなうと、前記第2の成分により前記第1の成分が支持されている光触媒層が形成される。第1の成分と第2の成分の混合比によって、前記第2の成分により前記第1の成分が接着されている状態の光触媒層から、前記第2の成分の中に前記第1の成分が存在する、いわゆる海島構造の状態の光触媒層まで、さまざまな状態の光触媒層を形成することができる。
このように、本形態のスパッタリングターゲットを用いると、光触媒機能を示す第1の成分がそのまま光触媒層中に取り込まれるため、例えば、基材の熱処理等の後処理をおこなうことなく、光触媒機能を示す光触媒層を形成することができる。
2−1.第1成分
本形態のスパッタリングターゲットに用いる光触媒機能を有する第1の成分は光触媒機能を有していればよく、例えば、アナターゼ型酸化チタン、酸化タングステン等を用いることができる。また、酸素が化学量論数に満たない酸素欠損のある酸化物、例えば、酸化チタン(TiO,xは0より大きく2未満である。)、酸化タングステン(WO,yは0より大きく3未満である。)等を用いることもできる。
光触媒機能が優れている酸素欠損のない酸化物、特にアナターゼ型酸化チタンを用いることが好ましい。
前記光触媒機能を有する第1の粉体の平均粒子径は、200nm以下であること好ましい。第1の粉体の平均粒子径が200nm以下であることで、緻密なスパッタリングターゲットを製造することができる。その結果、高い投入電力でのスパッタリングが可能となり、スパッタリングターゲットに割れが生じることなく、安定して製膜できるので、製膜速度が向上し、高い生産性で光触媒層2を形成することができる。また、第1の粉体の平均粒子径は、10nm以上であることが好ましい。平均粒子径が10nm以下だと、凝集が発生しやすくなる、作業性が悪化する等の問題が発生する。この平均粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡による測長や散乱式粒子計分布測定装置によって評価することができる。
また、前記スパッタリングターゲットに、平均粒子径が10nm以上200nm以下の微粒子である前記第1の成分を用いることで、形成された光触媒層中の第1の成分の表面積を大きくすることができる、つまり、反応面積を大きくすることができるので、高い光触媒機能を有する光触媒層を形成することができる。
2−2.第2の成分
本形態のスパッタリングターゲットに用いる第2の成分には、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す材料が好適に用いられる。
第1の成分および第2の成分の融点は、示差走査熱量計で吸熱ピークを観察することよって測定することができる。
また、一般に、光触媒機能の変化は、結晶構造の変化や材料の分解等によるものであるので、熱反応を通常ともなう。そのため、まず、示差走査熱量計で得られるDSC曲線(温度−熱量曲線)を観察し結晶構造の変化や材料の分解等が発生する温度を測定し、その温度以上に加熱した試料と、加熱していない試料とについて、上述の水接触角の測定により光触媒機能の評価をすることにより、前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度を決定することができる。
光触媒機能を示す材料には、ある温度以上になると、結晶型が変化して光触媒機能が低下する材料、または分解して光触媒機能を失う材料がある。例えば、光触媒材料として多く用いられているアナターゼ型酸化チタンは、650℃を超えるとルチル型酸化チタンに結晶型が変化して光触媒性能が低下する。その他、光触媒機能を有するニオブ系合金なども、組成に依存するが、ある温度を超える分解し光触媒性能を失う。
本形態のスパッタリングターゲットは、第1の成分が光触媒機能を有する状態で含んでいる。このようなスパッタリングターゲットを製造するためには、その製造工程において、スパッタリングターゲットの温度を、第1の成分が光触媒機能を失う温度以上に加熱しないことが必要である。
また、第1の成分は、その融点以上に加熱されると溶融する。前記第1の成分が溶融すると、当初の形状を保つことができず、形状が変化する、粒径が大きくなる、粒径にばらつきが生じるといったことにより、設計どおりのスパッタリングターゲットが製造できず、光触媒層のスパッタリング法による製造時の製膜条件が不安定になるという不具合が生じる。特に、前記第1の成分に、平均粒子径10nm以上200nm以下の微粒子を用いた場合、このような形状の変化により粒子の表面積の低下を招き、光触媒層の光触媒機能の性能が低下するという不具合が生じる要因となる。
このように、光触媒機能を発揮する光触媒層を安定に製造するためには、第1の成分の融点以上に加熱しないこと、および第1の成分の光触媒機能が低下する温度以上に加熱しないことが必要である。
また、一般的に、スパッタリングターゲットは、その相対密度が高いほど製膜時に高い電力を投入することができるので、生産性を向上するために、相対密度が高いスパッタリングターゲットが要求される。
本形態のスパッタリングターゲットおいては、その製造時に、第2の成分をその融点以上に加熱し、溶融して流動性をもった第2の成分が光触媒機能を有する第1の成分の空隙を埋めることにより、相対密度の高いスパッタリングターゲットの製造を可能にするものである。
このように、本形態のスパッタリングターゲットでは、その製造時に、第1の成分の融点または第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度以上に加熱しないこと、および第2の成分をその融点以上に加熱することが必要となる。
スパッタリングターゲットの製造時に、第1の成分の融点または第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度以上に加熱しないこと、および第2の成分をその融点以上に加熱するためには、ターゲットの材料となる第2の成分が、第1の成分の融点または第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示すことが必要となる。
第1の成分には、光触媒材料として多く用いられているアナターゼ型酸化チタンを用いることができる。アナターゼ型酸化チタンは、650℃位からルチル型酸化チタンに変化し光触媒性機能が低下するので、第1の成分にアナターゼ型酸化チタンを用いたときは、第2の成分の融点は600℃以下であることで、スパッタリングターゲット製造時の温度制御に余裕ができ、安定した製造が可能になる。
このような第2の成分には、例えば、酸化リン(V)P2O5(融点340℃)、三酸化二ホウ素B2O3(融点450℃)、酸化マンガンMnO2(融点535℃)、三窒化クロムCrN3(融点310℃)、酸化クロム(VI)CrO6(融点196℃)、または前記材料を少なくとも2種類以上含む材料などを用いることができる。
前記第2の成分のスパッタリングターゲットへの混合比率は、スパッタリングターゲットの加工適性、必要とする相対密度、光触媒機能を有する光触媒層の製膜速度、光触媒機能の性能等を勘案して任意に設定するが、前記第1の成分と前記第2の成分の混合比が重量比で95:5から20:80の範囲内であることが必要である。前記第2の成分の混合比が95:5よりも低いとターゲットの相対密度が上がらず、前記第2の成分の混合比が20:80より大きい、光触媒機能の性能が低下するためである。
また、混合する前記第2の成分は、10nm以上200nm以下であること好ましい。10nm以上200nm以下であることで、ターゲットをプレス成形したときの空隙が減少し、より相対密度の高いスパッタリングターゲットを製造することができる。このような、相対密度の高いスパッタリングターゲットを用いることにより、高い投入電力でスパッタリングを行っても、スパッタリングターゲットに割れが生じることなく、安定して製膜できるので、製膜速度を向上させることができ、高い生産性で光触媒層2を形成することができる。
2−3.その他の含有物
本形態のスパッタリングターゲットは、該スパッタリングターゲットを用いて形成される光触媒層2に求められる機能、例えば光触媒活性効率、可視光応答性、抗菌作用等の機能に対応して、必要な金属、合金、酸化物等の金属化合物等のその他の含有物を含んでいてもよい。
光触媒層2の光触媒活性効率を向上させるために、本形態のスパッタリングターゲットは、銀、銅、白金、錫若しくは鉛またはそれらを含む合金若しくはそれらの混合物、または酸化銅(CuO)等を含んでいてもよい。可視光応答性を付与するために、光触媒機能を示す第1の成分が酸化タングステンである場合、例えば、酸化銅等を含んでいてもよい。抗菌作用を付与するために、銀、銅、白金、錫、鉛またはそれらを含む合金若しくはそれらの混合物等を含んでいてもよい。
また、本形態のスパッタリングターゲットは、スパッタリングターゲットに導電性を付与するために、第2の成分以外の、金属、合金等を含んでいてもよく、キャリアを生じさせるリンやボロンを含んでいてもよい。このような導電性を有するスパッタリングターゲットは、直流(DC)放電によるスパッタリング法に用いることができるので、交流(RF)放電によるスパッタリング法と比較して、光触媒層2を高速で形成することが可能となり、生産性も向上する。このような、スパッタリングターゲットに導電性を付与する金属または合金として、銀、銅、白金、錫、鉛、その他の金属またはそれらを含む合金若しくはそれらの混合物等を用いることができる。
本形態のスパッタリングターゲットは、形成される光触媒層2の屈折率、ヘーズ、色調等の光学特性を調整することができる成分を含んでいてもよい。
屈折率を調整することができる成分として、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化イットイリウム、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等の微粒子を含んでいてもよい。ヘーズを調整することができる成分として、酸化ケイ素、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の微粒子を含んでいてもよい。
ヘーズは、含有する微粒子の粒子径によって調整することもできる。前記粒子系が大きいと、ヘーズは大きくなり、前記粒子径が小さいと小さくなる。
色調を調整することができる成分として、粉体インキ、色素等を含んでいてもよい。
さらに、本形態のスパッタリングターゲットは、基材1と光触媒層2との密着性を高めること、および形成される光触媒層2の膜硬度を高めることができる成分を含んでいてもよい。前記成分としては、酸化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化クロム、酸化炭化クロム、酸化窒化クロム、酸化炭化窒化クロム、酸化ジルコニウム、酸化炭化ジルコニウム、酸化窒化ジルコニウム、酸化炭化窒化ジルコニウム等を用いることができる。
第1の成分、第2の成分、およびその他の含有物を含む材料は、セラミックスの成形で用いられる一般的なバインダーを含んでいても良い。バインダーとしては、例えば、有機系バインダー、無機系バインダー、有機無機ハイブリッド系バインダー等を挙げることができる。
2−4.スパッタリングターゲット
上述の、第1の成分、第2の成分、およびその他の含有物を含むスパッタリングターゲットは、相対密度が40%以上であることが必要である。相対密度が40%未満だと、高速製膜を行うために高電力を投入したときに、スパッタリングターゲットに割れが発生しやすくなる。また、スパッタリングターゲットの相対密度の上限は、理論上100%であるが、技術的に作製することが難しく、技術的に可能な数値が上限となる。例えば、紛体を原料にしたITO((スズドープ酸化インジウム)ターゲットでは、相対密度99%以上が実現されている。
また、上述のスパッタリングターゲットは、光触媒積層体の製造時には、バッキングプレートにボンディングされ使用される。ボンディングは、通常のインジウムを用いてもよいし、より低温で固定するために銀ペーストや導電性テープ等を用いて固定してもよい。バッキングプレートは、通常の無酸素銅を用いてもよいが、光触媒層形成用スパッタリングターゲットの割れを防ぐ目的で、光触媒層形成用スパッタリングターゲットと熱膨張係数(線膨張係数)が同程度の導電性材料、例えば、チタン等を用いてもよい。
3.スパッタリングターゲットの製造方法
本形態のスパッタリングターゲットの製造方法は、光触媒機能を示す第1の成分と、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す第2の成分と、を含む材料を、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度未満、かつ前記第2の成分の融点以上の温度でプレス成形する工程を有する。
また、本形態のスパッタリングターゲットの製造方法は、光触媒機能を示す第1の成分と、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す第2の成分と、を含む材料を、前前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度未満でプレス成形をすることによって、成形体を製造する工程と、前記成形体を、前前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度未満、かつ前記第2の成分の融点以上の温度で焼成する工程と、を有していても良い。
前記プレス成形する工程には、例えば、金属プレス、冷間等方圧加工法(CIP法)、熱間等法圧加圧法(HIP法)のいずれかひとつ、またはこれらの2以上の組み合わせを用いることができる。
前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度未満、かつ前記第2の成分の融点以上の温度でプレス成形する工程の温度、および前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度未満、かつ前記第2の成分の融点以上の温度で焼成する工程の温度は、第1の成分として酸化チタンを用いる場合には、結晶構造がアナターゼ型からルチル型に変化する温度である650℃以下、好ましくは、製造マージンに余裕を持たせられる600℃以下であることが望ましい。また第2の成分として、酸化リン(V)P2O5を用いる場合はその融点である340℃以上、三酸化二ホウ素B2O3の場合はその融点である450℃以上、酸化マンガンMnO2を用いる場合は、融点である535℃以上、三窒化クロムCrN3を用いる場合はその融点である310℃以上に設定することが好ましい。
上述のスパッタリングターゲットは、焼成により第2の成分が溶融し、相対密度を高くする。この相対密度は40%以上であることが好ましく、プレス成形の圧力、および焼成の温度は、相対密度が高くなるように調整する。相対密度が40%未満の場合、高速製膜のために高電力を投入すると、ターゲットの割れが発生しやすくなる。
4.光触媒積層体
本形態のスパッタリングターゲットを用いて製造された光触媒積層体の一例を図1に示す。図1は、フィルム状の基材の一方の面に光触媒層が形成されている。
4−1.基材
前述のように、本形態のスパッタリングターゲットを用いることにより、第1の成分と第2の成分の混合比によって、前記第2の成分により前記第1の成分が接着されている状態の光触媒層から、前記第2の成分の中に前記第1の成分が存在する、いわゆる海島構造の状態の光触媒層まで、さまざまな状態の光触媒層を形成される。つまり、第1の成分は、一部の分解、再結合されている可能性はあるが、第1の成分のほとんどは、スパッタリングターゲットに含まれている状態で光触媒層中に取り込まれている。
真空製膜法により形成される光触媒層は、その製造工程で材料が分解されることがある。本形態の製造方法で用いているスパッタリング法も例外ではない。このように分解された材料により形成された光触媒層は、光触媒機能を示さなかったり、光触媒機能が低かったりするため、光触媒機能を示すことができる光触媒層を得るために、例えば製膜後の熱処理により光触媒機能を示すことができる光触媒層に改質したり、製造中の基材の加熱により再結合させることにより光触媒機能を示すことができる光触媒層を形成したりすることが必要となり、基材への加熱工程が必要となる。
一方、本形態のスパッタリングターゲットを用いて形成される光触媒層は、前述のように光触媒機能を示す第1の成分がそのまま光触媒層中に取り込まれるので、前記光触媒層は、加熱工程をおこなうことなく良好な光触媒機能を示す光触媒層を得ることができる。
このように、本形態のスパッタリングターゲットを用いることにより、基板への加熱工程が不要となり、生産性が向上するだけではなく、耐熱性の低い基材であってもその表面に光触媒機能に優れた光触媒層形成することができるので、ガラス転移点(Tg)が200℃以下といった耐熱性の低い基材を用いても光触媒積層体を製造することができる。例えば、一般にガラス転移点(Tg)が80℃であるといわれている耐熱性の低いポリエチレンテレフタレートフィルムでも問題なく光触媒層を形成することができる。
本形態の基材1としては、例えば、樹脂材料又は有機ガラス材料によって構成された耐熱性の低いフィルム状基材、シート状基材、板状基材又は繊維状基材等の基材を挙げることができる。こうした基材上には、保護層が設けられていてもよい。なお、本形態に係る光触媒積層体10の製造方法は、例えば、ガラス、ウエハー等のような耐熱性を有する基材に対して適用しても良い。
基材1の材料は特に限定されず、既存の各種の樹脂材料や有機ガラス材料を挙げることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、これらの共重合体、及びポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等のポリエステル系樹脂を挙げることができる。これらのうちでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びこれらの共重合体が好ましく、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。また、ノルボルネン系ポリマー、シクロペンテン系ポリマー、シクロブテン系ポリマー等のシクロオレフィン系ポリマーであってもよい。有機ガラス材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、ポリブチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の各種の有機ガラス材料を挙げることができる。こうした基材1は、入手が容易であり、公知の方法で得ることもできる。基材1の厚さは特に制限されず、用途に応じて任意に設計できる。
基材1として、耐熱性の低い有機繊維で構成された繊維状基材を用いてもよい。有機繊維としては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ビニロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂、アラミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリパラフェニレンオキサゾール(PBO)樹脂、エチレンビニルグリコール樹脂、及びポリ乳酸樹脂等で形成される合成繊維;レーヨン、ポリノジック、キュブラ、及びリヨセル等の再生繊維;アセテート、トリアセテート、及びプロミックス等の半合成繊維;ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、パラ系アラミド繊維、ポリパラフェニレンオキサゾール(PBO)繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、高強度ポリビニルアルコール(PVA)繊維、及び高強度ポリプロピレン(PP)繊維等の高強度、高弾性繊維;ポリイミド(PI)繊維、ポリフェニルサルファイド(PPS)繊維、メタ型アラミド繊維、PAN系炭素繊維、及びポリエーテルエーテルケトン繊維等の高耐熱性、難燃性繊維;ポリ乳酸繊維、ポリカプトラクトン繊維、及びポリブチレンサクシネート繊維等の生分解性繊維;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)繊維等のフッ素系繊維;ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維;セルロース繊維;等を挙げることができる。これらの繊維材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
繊維状基材も、入手が容易であり、従来公知の製造方法で得ることもできる。なお、繊維材料の繊維径は、光触媒積層体の用途によって任意に設計されるが、例えば5μm以上500μm以下の範囲内であることが好ましい。繊維径が5μm以下だと基材が高価になりコストが嵩む。繊維径が500μm以上だと、光触媒の表面積が減少し、光触媒の高価が減少する。
基材1は、その比表面積が大きいが好ましい。基材1の比表面積を大きくすることで、その上に形成する光触媒層2の実質的な表面積が大きくなり、光触媒効果が得やすくなるという利点がある。基材1の比表面積を大きくする方法としては、プレス成形、エンボス加工、マット加工の他、薬液処理、コロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理等の表面を粗面化する方法を挙げることができる。また、基材1の表面に形状加工用の樹脂層を設け、外観変化を与えない程度で、印刷法、転写法、インプリント法等によって凹凸形状、プリズム形状、レンズ形状、モスアイ形状等の形状を樹脂層に形成する方法等も挙げることができる。なお、基材1には、洗浄処理、表面改質等の前処理が施されていてもよい。
ここで、比表面積とは、単位投影面積に対する、凹凸を含めた実質的な表面積の比率のことである。
前記基材1は、光触媒層2の光触媒活性によって基材1に含まれる有機材料が劣化するのを防ぐ保護層を有していてもよい。前記保護層は、光触媒層2と基材1に含まれる有機材料との接触を妨げる、または接触面積を低下させるものである。前記保護層は、耐熱性の低い基材1と光触媒層2との密着性を高める効果を有していても良い。また、前記保護層は、基材1の表面の全体を覆うように設けられていてもよく、基材1の表面の一部分に、斑点状、市松模様状に設けられていてもよい。
保護層には、酸化物、酸窒化物、窒化物等の化合物等を用いることができる。例えば、ケイ素化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、インジウム化合物、錫化合物、クロム化合物、アルムニウム化合物、チタン化合物を用いることができる。保護層の形成方法は、上述の保護層を基材1上に形成できれば、特に限定されず、例えば、CVD法、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法等の方法を挙げることができる。保護層の厚さは特に限定されないが、例えば10nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。保護層の厚さが10nm以下だと材料が島状に形成され膜になりにくく、100nm以上だと生産性が悪くなるだけでなく、保護層の割れやはがれが発生しやすくなる。
さらに、保護層の表面に、光触媒層2のコーティング適性や、光触媒層2の密着性を高めるため、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン照射、光照射、電子線照射等を、後処理としておこなっても良い。これらの処理は、化学的に表面物性を変化させたり官能基を導入させたりすることで濡れ性を向上させたり、物理的に表面形状に変化を与え、比表面積を増加させることで密着性を向上させる。このような後処理は、組みあわておこなっても良くまた、保護層を減圧下で形成した後に、大気開放することなく、連続しておこなってもよい。
4−2.光触媒層
光触媒層2は、本形態のスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により基材1上に形成される。
本形態のスパッタリングターゲットの第1の成分と第2の成分の混合比によって、形成される光触媒層は、前記第2の成分により前記第1の成分が接着されている状態から、前記第2の成分の中に前記第1の成分が存在する、いわゆる海島構造の状態まで、さまざまな状態で形成されるが、第1の成分は、ターゲットに用いた材料と同様の光触媒機能を示す。
一般的に、スパッタリング法により形成された薄膜は、基材の表面形状に従って形成される。本形態においても、その表面の形状に従って光触媒層は、基材上に形成される。例えば、基材1がフィルム状基材、シート状基材、または板状基材であれば、図1に示すように、その表面の形状に従って膜状の光触媒層2が形成される。
基材1が繊維状基材である場合、光触媒層2は、主に基材1を形成する繊維状物の光触媒層形成面側に形成される。製膜真空度がより大気圧に近い条件でスパッタリングをおこなうなど、スパッタリング条件を調整することにより、前記繊維状物の側面さらには裏面側にもスパッタリング中の廻りこみ効果により光触媒層2を形成することができる。
4−3.その他の層
本形態の光触媒積層体は、基材および光触媒層以外の層を有していてもよい。例えば、意匠性を有する層、静電気を防止するための導電層、他の物品へ貼付をおこなうための粘着層または接着層などを挙げることができる。
5.光触媒積層体の製造方法
5−1.光触媒積層体の形成工程
本形態に係る光触媒積層体10は、上述のスパッタリングターゲットをスパッタリングすることにより、光触媒層2を形成することができる。
スパッタリングターゲットを用いて基材1上に光触媒層2をスパッタリングで形成する温度は、基材1の種類によって異なるが、基材1が変形しない温度であれば特に制限されない。例えば、5℃以上で、かつ基材1が変形しない温度以下の範囲内であることが好ましい。5℃未満である場合、基材1の表面で水分の吸着が起こり、形成される光触媒層2の組成が変化したり、光触媒層2の間の密着性が低下したりする。また、基材1が変形する温度である場合、熱によって基材1が変形し、その基材本来の性能が維持できなくなることがある。なお、耐熱性の低い基材1が変形しない温度とは、その基材1の種類によって異なるが、200℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
前記スパッタリングターゲットを用いて光触媒層2を形成する方法は、例えば、マグネトロンスパッタリング、デュアルマグネトロンスパッタリング、対向ターゲットスパッタリング、ガスフロースパッタリング等などのスパッタリング法を用いることができる。また、スパッタリング時における放電方式も、RF放電(交流周波数13.56MHz)、MF放電(低周波放電50〜500kHz)DC(直流)放電、パルスDC放電等の任意の放電方式を適用することができる。
スパッタリング法による光触媒層2の製膜は、例えば、真空製膜チャンバー内に基材1をセットし、真空排気ポンプを用いてチャンバー内の圧力を10−5Pa以上10−4Pa以下の範囲内まで低下した後、スパッタリング放電用ガスとしてアルゴンを導入し、また必要に応じて反応性ガス(例えば、酸素、窒素等)を導入し、チャンバー内の圧力を0.1Paから10Paの範囲に調整し、スパッタリング電極に電力を印加してプラズマ放電を発生させることにより行うことができる。
光触媒層2の厚さは、特に限定されないが、通常、30nm以上1μm以下の範囲内であり、好ましくは50nm以上500nm以下の範囲内である。厚さが30nm未満である場合、光触媒機能が発現しないことがあり、厚さが1μmを超えると、製膜時間を要し、生産性が低下してしまうことがある。
なお、形成される光触媒層2は、一般的に光の反射率が高いので、その反射を防止する場合は、光触媒層2の上に、反射防止膜を形成してもよい。この、反射防止膜は、高屈折率膜と低屈折率膜との積層体であってもよい。このような形成材料としては、例えば、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。高屈折率膜の形成材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、チッ化ケイ素等を用いることができる。低屈折率膜の形成材料としては、例えば、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。
5−2.活性化処理工程
光触媒積層体10を形成した後に、活性化処理をおこなっても良い。この活性化処理は、光触媒層2の表面に対しておこなう。前記活性化処理は、光触媒層2中の不必要なバインダー成分等の添加成分を除去することにより、または光触媒層2を活性化することにより、光触媒機能を向上する。このような活性化処理には、プラズマ処理や紫外線照射処理等を用いることができる。
以下、実施例を用いて、本願発明をさらに具体的に説明する。
表1に実施例1〜18および比較例1〜9で用いたスパッタリングターゲットの組成、および相対密度を示す。また、表2に実施例1〜18および比較例1〜9の製膜条件、およびそれぞれの条件で製造した光触媒積層体の評価結果を示す。
Figure 0006375720
Figure 0006375720
(スパッタリングターゲット)
本願発明の実施例1〜18および比較例1〜9では、第1の成分として、結晶構造がアナターゼ型の酸化チタン紛体材料(石原産業株式会社製、商品名:ST−01)を用いた。また、第2の成分として、三酸化二ホウ素(B2O3)、酸化リン(P2O5)、酸化マンガン(MnO2)、または三窒化クロム(CrN3)を用いた。
これらの第1の成分と第2の成分とを、表1に記載の所定の割合で混合し、1t/cmで金型プレスをおこなうことにより、成形体を形成した。この成型体を、冷間等方圧加工法により5tで加圧、更に600℃12時間大気中で焼成を行い、直径4インチ、厚さ5mmのスパッタリングターゲットを製造した。実施例1〜18および比較例1〜9で製造したスパッタリングターゲットの相対密度の測定結果を表1に示す。ここで、スパッタリングターゲットの相対密度は、スパッタリングターゲットの重量を体積で割りターゲットの密度を求め、この密度を理想的な安定構造の酸化チタン密度(3.9g/cm3)で割ることにより、計算をおこなった。
(光触媒積層体)
実施例1〜18および比較例1〜9とも、表1に示すスパッタリングターゲットを、銅製のバッキングプレートにインジウムを用いてボンディングし、RFスパッタリング製膜装置(キャノンアネルバ株式会社製、商品名:E−400型)に取り付けた。
また、基材には、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:PETA4100、厚さ100μm)を使用した。
製膜チャンバー内を2×10−4Pa以下まで排気した後、製膜チャンバー内にArガスを20sccm導入し、製膜チャンバー内の圧力が1Paとなるように排気量を調整した。製膜チャンバー内の圧力が安定した後、基材温度を室温に保持し、所定の製膜投入電力でRFスパッタリング法により基材上に光触媒層を形成し、光触媒積層体を作製した。
作製したスパッタリングターゲットおよび光触媒積層体について、以下の評価をおこなった。
(製膜速度)
製膜速度は、基材上に形成した光触媒層の厚さを製膜時間で割り、計算で求めた。ここで、膜厚は触針式表面形状測定器 (Dektak)を用いて測定した。
(ターゲットの状態)
製膜後にターゲット表面を目視確認によりスパッタリングターゲットの状態を確認し、スパッタリングターゲットの割れの有無を確認した。スパッタリングターゲットに割れが生じることは、長時間安定的に製膜できないことを意味する
(光触媒性能評価)
光触媒作用を有する膜は、光照射により親水化することが知られている。そこで、実施例1〜18および比較例1〜9で作製した光触媒積層体の光触媒層に、紫外線蛍光ランプ(東芝ライテック株式会社製、商品名:ブラックライト蛍光ランプFL2OS・BLB)を用いて紫外線照射(放射照度2mW/cm)を行い、光触媒層の紫外線照射による水接触角の経時変化を室温(23℃)で測定した。測定は、光触媒層の面内の5点に対して行い、その平均値を算出した。その結果を表1に示す。なお、表1中の「良好」は水の接触角が5度以上10度未満の超親水性を示し、光触媒効果を有することを意味する。また、表1中の「極めて良好」は水接触角が5度未満であり、光触媒効果に非常に優れていることを示す。表1中の「悪い」は水接触角が10度以上で、光触媒効果が低いことまたは無いことを示す。
(評価結果)
表2に示すとおり、実施例1〜18の、第1の成分と第2の成分を含み、前記第1の成分と前記第2の成分の混合比が重量比で95:5から20:80の範囲内であるスパッタリングターゲットを用いた製膜において、10nm/min以上の高い製膜速度が得られた。さらに、200W〜600Wの製膜投入電力でスパッタリング法による製膜をおこなっても、ターゲットに割れが発生することはなかった。さらに、形成された膜の製膜後60分後の評価で、水の接触角が10度未満となり、極めて良好または良好な光触媒性能が得られることが確認できた。
一方、比較例1から6の、第1の成分と第2の成分を含み、前記第1の成分と前記第2の成分の混合比が重量比で97:3であるスパッタリングターゲットを用いた製膜において、形成された膜の製膜後60分後の評価で、水の接触角が10度未満となり、極めて良好または良好な光触媒性能が得られることが確認できたが、5nm/min以下と高い製膜速度は得られなかった。さらに400W以上の製膜投入電力でスパッタリングを行なうと、スパッタリングターゲット割れが生じ、長時間安定的に製膜できないことが確認できた。
さらに、比較例7から9の、第1の成分と第2の成分を含み、前記第1の成分と前記第2の成分の混合比が重量比で15:85のスパッタリングターゲットを用いた製膜において、形成された膜の製膜後60分後の評価で、水の接触角が10度以上となり、光触媒性能が悪いことが確認できた。
これらの結果から、第1の成分と第2の成分を含み、前記第1の成分と前記第2の成分の混合比が重量比で95:5から20:80の範囲内であるスパッタリングターゲットを用いて基材上に光触媒機能を有する光触媒層を形成することにより、安定に、高速にスパッタリング法による製膜をおこなうことができ、かつ高性能の光触媒層を得ることができることが確認できた。
本願発明を用いて作製された光触媒積層体10は、例えば、医療用資材、家庭用資材、浄化資材、農業用資材、各種表面保護フィルム、建築用資材等に好ましく適用できる。
10 光触媒積層体
1 基材
2 光触媒層

Claims (12)

  1. 光触媒機能を示す第1の成分と、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す第2の成分と、を含み、前記第1の成分と前記第2の成分の混合比が重量比で95:5から20:80の範囲内であるスパッタリングターゲットを用いて、基材上に光触媒機能を有する光触媒層を形成する、光触媒積層体の製造方法。
  2. 前記第1の成分が、平均粒子径10nm以上200nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒積層体の製造方法。
  3. 前記基材のガラス転移点が80℃以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光触媒積層体の製造方法。
  4. 前記基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、またはこれらの共重合体であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光触媒積層体の製造方法。
  5. 前記基材が、有機繊維で構成された繊維状基材であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光触媒積層体の製造方法。
  6. 光触媒機能を示す第1の成分と、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す第2の成分と、を含み、前記第1の成分と前記第2の成分の混合比が重量比で95:5から20:80の範囲内であるスパッタリングターゲット。
  7. 前記第1の成分が、平均粒子径10nm以上200nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項6に記載のスパッタリングターゲット。
  8. 前記第1の成分が、アナターゼ型酸化チタンであることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のスパッタリングターゲット。
  9. 前記第2の成分の融点が、600℃以下であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット。
  10. 相対密度が、40%以上であることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット。
  11. 請求項6から請求項10のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法であって、光触媒機能を示す前記第1の成分と、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す前記第2の成分と、を含む材料を、前前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度未満、かつ前記第2の成分の融点以上の温度でプレス成形する工程を有するスパッタリングターゲットの製造方法。
  12. 請求項6から請求項10のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法であって、光触媒機能を示す前記第1の成分と、前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度より低い融点を示す前記第2の成分と、を含む材料を、前前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度未満でプレス成形をすることによって、成形体を製造する工程と、
    前記成形体を、前前記第1の成分の融点または前記第1の成分の光触媒機能が低下する温度のうちいずれか低いほうの温度未満、かつ前記第2の成分の融点以上の温度で焼成する工程と、を有する、スパッタリングターゲットの製造方法。
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