JP6373293B2 - 加熱硬化型導電性ペースト - Google Patents

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Description

本発明は、加熱硬化型の導電性ペーストに関する。
電子機器部品等の電極形成には、導電性ペーストが広く用いられている。特許文献1〜5にはこの用途に使用し得る導電性ペーストが開示されている。例えば特許文献1の請求の範囲等には、熱可塑性樹脂からなるバインダ樹脂と金属粉と有機溶剤とを含む導電性ペースト、および当該導電性ペーストを付与してなる電極配線を備えたタッチパネルが開示されている。
国際公開2014/013899号公報 特開2014−225709号公報 特開2014−2992号公報 特開2014−107533号公報 特開2012−246433号公報
特許文献1等に記載されるように、タッチパネルのようなフレキシブル電子部品では、接着成分として熱可塑性樹脂を用いることが一般的である。これには、柔軟性の高い樹脂を用いることで、可撓性の基板と電極との接着性を高める目的がある。しかしながら、熱可塑性樹脂を用いてなる電極は、樹脂の「やわらかさ」ゆえに、耐熱性や耐薬品性、機械的強度が低下傾向となり、耐久性に欠けることがある。近年、タッチパネルのようなフレキシブル電子部品はその用途が広がり、過酷な環境に晒されることも多くなってきている。このため、電極には耐熱性や耐久性、信頼性の更なる向上が求められている。
そこで、本発明者らは、熱可塑性樹脂に比べて相対的に機械的強度や耐久性が高い熱硬化性樹脂を用いて、可撓性基板上への電極形成を試みた。しかし、熱硬化性樹脂はその剛直な化学構造ゆえに、硬くて脆い(可撓性が低い)性質を有する。このため、熱硬化性樹脂を用いた電極は本質的に硬度が高くなる。その結果、かかる電極は可撓性基板の柔軟性に富んだ動きに追随し難く、基板から剥離し易くなる背反があった。
加えて、各種の電気・電子機器等では、小型化や高密度化、動作速度の高速化等といった高性能化が進行している。これに伴って、電子機器用の電子部品には、電極の更なる低抵抗化(電気伝導性の向上)が求められている。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、可撓性基板との接着性や耐久性、ならびに電気伝導性に優れた電極を形成することのできる加熱硬化型導電性ペーストを提供することにある。
本発明者らは、「強靭性」と「柔軟性」という相反する性質、ならびに良電導性を併せ持った電極を実現するべく検討を重ね、接着成分としての熱硬化性樹脂の構成を最適化することに想到した。そして、更なる鋭意検討の末に、本発明を完成させた。
本発明によって、加熱硬化型の導電性ペーストが提供される。この加熱硬化型導電性ペーストは、(A)導電性粉末と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)硬化剤と、を含む。上記(B)熱硬化性樹脂は、(B1)2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と、(B2)第2級炭素が3個以上連続する構造を有する可撓性エポキシ樹脂と、(B3)1つのエポキシ基を有する1官能エポキシ樹脂と、を含む。
上記構成によれば、熱硬化性樹脂を用いるにもかかわらず、電極に柔軟性や可撓性が付与され、可撓性基板の変形にも追随できるようになる。これによって、電極と基板との密着性や接着性が向上する。また、上記構成によれば、エポキシ樹脂の本来の性質が発揮され、耐熱性や耐久性に優れた電極を得ることができる。さらに、上記構成によれば、例えば体積抵抗率(加熱硬化条件130℃・30分)が100μΩ・cm以下の低抵抗な電極を得ることができる。
ここで開示される好ましい一態様では、上記(B)熱硬化性樹脂が、さらに、(B4)1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ基含有アクリル樹脂を含む。これにより、基板との接着性の向上、耐久性の向上、電極表面の平滑性の向上、のうち少なくとも1つの効果が発揮される。したがって、本願発明の効果がより高いレベル発揮される。
ここで開示される好ましい一態様では、上記(B)熱硬化性樹脂が、質量比率で、以下の成分:(B1)2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂 5〜25質量%;(B2)第2級炭素が3個以上連続する構造を有する可撓性エポキシ樹脂 1〜45質量%;(B3)1つのエポキシ基を有する1官能エポキシ樹脂 50〜70質量%;(B4)1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ基含有アクリル樹脂 0〜20質量%;を含む。これにより、本願発明の効果が安定的により良く発揮される。また、ペーストのハンドリング性やペースト印刷時の作業性をも向上することができる。
ここで開示される好ましい一態様では、上記(B1)〜(B3)が、いずれも数平均分子量が1万以下である。これにより、ペースト印刷時の製版からの脱離性(離型性)が良くなり、印刷精度を一層向上することができる。その結果、細線状電極の精密な形成、電極表面の平滑性の向上、のうち少なくとも1つの効果が発揮される。
ここで開示される好ましい一態様では、上記(A)導電性粉末が、鱗片状の導電性粒子を含まない。
ここで開示される他の好ましい一態様では、上記(A)導電性粉末のレーザー回折・光散乱法に基づく平均粒子径が0.5〜3μmである。
導電性粉末が上記性状のうち少なくとも1つを満たすことで、レーザー加工性が顕著に向上する。このため、かかるペーストは、レーザーエッチング用の加熱硬化型導電性ペーストとして好適に用いることができる。
図1は、例1に係る電極のレ−ザー顕微鏡画像である。 図2は、「可撓性」の評価方法を説明するための説明図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、加熱硬化型導電性ペーストの組成)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、加熱硬化型導電性ペーストの調製方法や電極(導電膜)の形成方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
また、本明細書において「A〜B(ただし、A,Bが任意の値)」とは、特に断らない限りA,Bの値(上限値および下限値)を包含するものとする。
<加熱硬化型導電性ペースト>
ここで開示される加熱硬化型導電性ペースト(以下、単に「ペースト」ということがある。)は、必須構成成分として、(A)導電性粉末と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)硬化剤と、を含む。また、好適には熱可塑性樹脂を含まない。そして、上記(B)が少なくとも所定の3成分を含むことで特徴づけられる。したがって、その他については特に限定されず、種々の基準に照らして任意に決定し得る。例えば、その組成比を変更したり、上記(A)〜(C)以外の成分を配合したりすることができる。以下、ペーストの構成成分等について説明する。
<(A)導電性粉末>
導電性粉末は、電極に電気伝導性を付与するための成分である。導電性粉末としては特に限定されず、所望の導電性やその他の物性を備える各種の金属、合金等を、用途等に応じて適宜用いることができる。一好適例として、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、およびそれらの被覆混合物や合金等が挙げられる。なかでも、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属の単体、およびそれらの混合物(銀コート銅、銀コートニッケル)や合金(銀−パラジウム(Ag−Pd)、銀−白金(Ag−Pt)、銀−銅(Ag−Cu)等)が好ましい。特には、比較的コストが安く電気伝導性にも優れることから、銀および銀コート品、ならびに銀の合金が好ましい。
導電性粉末の形状は特に限定されず、球状、鱗片状(フレーク状)、針状等、種々のものを考慮することができる。なかでも、真球状または略球状の導電性粒子が好ましい。これにより、ペーストの粘度を低くすることができ、ペーストの取扱い性や、ペースト印刷時の作業性を向上することができる。また、ペーストの安定性をも向上することができる。さらには、レーザー加工性に優れた導電膜を安定的に形成できるようになる。
なお一般に、真球状または略球状の導電性粒子を用いる場合、例えば鱗片状等のアスペクト比のより大きな導電性粒子を用いる場合に比べて、粒子同士の接触面積が小さくなる。このため、体積抵抗が増大することが懸念され、高い電気伝導性を求められる電極形成にあっては使用が敬遠される傾向にある。しかしながら、ここで開示される技術によれば、後述する(B)熱硬化性樹脂が最適化されている効果によって、アスペクト比の大きな導電性粒子を用いる従来のペーストと比べても遜色のない程度に高い体積抵抗率を実現することができる。
なお、本明細書において「略球状」とは、球状、ラグビーボール状、多角体状等をも包含する用語であり、例えば、平均アスペクト比(長径/短径比)が1〜2、典型的には1〜1.5、例えば1.1〜1.4のものをいう。
また、本明細書において「平均アスペクト比」とは、複数個の導電性粒子の長径/短径比の平均をいう。例えば、電子顕微鏡を用いて少なくとも30個(例えば30〜100個)の導電性粒子を観察する。そして、各々の粒子画像について外接する最小の長方形を描き、かかる長方形の短辺の長さ(例えば厚み)Bに対する長辺の長さAの比(A/B)をアスペクト比として算出する。得られたアスペクト比を算術平均することで、平均アスペクト比を求めることができる。
好適な一態様において、導電性粉末は、鱗片状の導電性粒子を含まない。つまり、導電性粉末は、アスペクト比が10を超える(典型的には5を超える、好ましくは3を超える、例えば2を超える)導電性粒子を含まないことが望ましい。換言すれば、導電性粉末は、真球状または略球状の(例えばアスペクト比が1.0〜2.0の)導電性粒子からなるとよい。これにより、ペースト印刷時の製版からの脱離性(メッシュからの抜け)が良くなり、電極表面の平滑性や印刷精度が向上し得る。さらには、レーザー加工性が一層向上し、細線状の電極を安定した加工線幅で形成することができるようになる。
つまり、アスペクト比の大きな導電性粒子は、概して一粒子の平面視での面積が大きくなる。このため、1つの導電性粒子が、電極として残す部位とレーザー加工によって除去する部位(レーザー照射部位)とにまたがった状態で存在することがある。本発明者らの検討によれば、この状態でレーザー光を照射すると、電極として残す部分の導電性粒子にも熱が伝わり、導電膜が必要以上に削れてしまうことがある。その結果、電極が既定の幅より細くなったり、断線したり、あるいは電極表面が荒れた状態になったりすることがある。導電性粉末が鱗片状の導電性粒子を含まないことで、このような欠陥部位の割合を劇的に低減することができる。
導電性粉末の平均粒子径は特に限定されないが、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であって、概ね5μm以下、好ましくは3μm以下、例えば2.2μm以下であるとよい。
平均粒子径が所定値以上であると、電極内の粒子同士の接触点が減少して、内部抵抗が低減される。したがって、高い電気伝導性を実現することができる。また、ペースト中で凝集が生じることを抑制し、均質性や分散性を向上することができる。さらに、好ましくはペーストの粘性を低く抑えて、例えばペーストの取扱性やペースト印刷時の作業性をも向上することができる。
また、平均粒子径が所定値以下であると、薄膜状にあるいは細線状の電極を一層安定的に形成することができる。さらに、例えばレーザー加工時に電極として残す部位と熱分解する部位とにまたがった状態となる導電性粒子を効果的に減らすことができる。したがって、レーザー加工性が向上して、細線状の電極を安定して形成することができる。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、レーザー回折・光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒子径の小さい方から累積50%に相当する粒子径D50値(メジアン径)をいう。
好適な一態様において、導電性粉末を構成する導電性粒子は、その表面に脂肪酸を含む皮膜を備える。上記構成によれば、導電性粒子表面の水酸基(ヒドロキシル基)が増加して、親水性が高められる。熱硬化性樹脂は典型的には疎水性のため、これにより導電性粒子と熱硬化性樹脂の濡れ性が低下する。その結果、導電性粒子に熱硬化性樹脂がまとわりつきにくくなり、導電性粒子同士が接点を形成し易くなる。したがって、電気伝導性に一層優れた電極を形成することができる。なお、脂肪酸としては、例えば、炭素原子数が10以上である飽和高級脂肪酸や不飽和脂肪酸が挙げられる。上記効果を高いレベルで発揮する観点からは、アルキルコハク酸やアルケニルコハク酸等の多価不飽和脂肪酸が好適である。
ペーストの必須構成成分の総質量(つまり、(A)+(B)+(C))に占める(A)導電性粉末の割合は特に限定されないが、通常50質量%以上、典型的には60〜95質量%、例えば70〜90質量%であるとよい。上記範囲を満たすことで、電気伝導性の高い電極の形成と、優れた作業性やハンドリング性とを高いレベルで両立することができる。
<(B)熱硬化性樹脂(混合物)>
熱硬化性樹脂は、電極に接着性や耐久性を付与するための成分である。熱硬化性樹脂は、硬化剤を加えて加熱すると分子間に網目状の架橋構造が形成され、硬化する。一旦硬化した後は溶媒にも溶けにくく、加熱しても可塑性が現れない(変形しない)。このため、熱可塑性樹脂を用いる従来品に比べて、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、ならびに耐久性に優れた電極を実現することができる。
ここで開示されるペーストの熱硬化性樹脂は、少なくとも以下の3成分:(B1)多官能エポキシ樹脂;(B2)可撓性エポキシ樹脂;(B3)1官能エポキシ樹脂;を含む混合物である。なお、(B)熱硬化性樹脂は、上記(B1)〜(B3)の成分で構成されていてもよく、上記(B1)〜(B3)に加えて、従来知られているその他の熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂等を含んでいてもよい。好適な一態様では、(B)熱硬化性樹脂の全体を100質量%としたときに、上記(B1)〜(B3)の合計が、概ね90質量%以上、例えば95質量%以上を占めている。
<(B1)多官能エポキシ樹脂>
多官能エポキシ樹脂は、剛直な骨格構造を有する。剛直な骨格構造とは、環状の炭化水素骨格を示し、例えばベンゼン環骨格やシクロペンタジエン骨格のことを指す。このことにより、多官能エポキシ樹脂は、電極に優れた耐熱性や耐薬品性、強靭性を付与する機能がある。したがって、電極の機械的強度や形状安定性を高めることができ、耐久性に一層優れた電極が実現される。
多官能エポキシ樹脂としては、2つ以上のエポキシ基を有する未硬化の(硬化前の)化合物であればよく、従来知られているものを適宜用いることができる。多官能エポキシ樹脂の一好適例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、およびそれらの変性型等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
なかでも、入手容易性の観点等から、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。特には、体積抵抗をより高いレベルで低減する観点等から、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、概ね100〜3000g/eq、典型的には100〜1000g/eq、例えば150〜500g/eq程度であるとよい。エポキシ当量が所定値以上であると、エポキシ樹脂としての機能(すなわち、密着性や接着性)がより良く発揮される。また、エポキシ当量が所定値以下であると、耐久性や信頼性に一層優れた電極を実現することができる。
なお、本明細書において「エポキシ当量」とは、JIS K7236(2009)に従って測定された値をいう。
多官能エポキシ樹脂の数平均分子量Mcは特に限定されないが、概ね1万以下、好ましくは5000以下、典型的には100〜5000、より好ましくは2000以下、例えば300〜1500程度であるとよい。数平均分子量Mcが所定値以下であると、ペースト印刷時の製版からの脱離性(離型性)が良くなり、印刷精度が向上する。また、熱分解性が高まって、レーザー加工性も向上し得る。さらに、数平均分子量Mcが所定値以上であると、基板との接着性や電極の形状一体性が向上し得る。
なお、本明細書において「数平均分子量」とは、ゲルクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)によって測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した個数基準の平均分子量をいう。
熱硬化性樹脂全体に占める(B1)多官能エポキシ樹脂の割合は特に限定されないが、典型的には5質量%以上、好ましくは7質量%以上、例えば10質量%以上であって、概ね25質量%以下、好ましくは23質量%以下、例えば22質量%以下であるとよい。これにより、耐熱性や耐薬品性、機械的強度に優れた電極を、より安定的に得ることができる。
<(B2)可撓性エポキシ樹脂>
可撓性エポキシ樹脂は、第2級炭素が3個以上連続する(柔軟な)構造を有する。このため、可撓性エポキシ樹脂は、以後に述べるような「可撓性」を有することで、上記(B1)成分に由来する硬性を緩和して、電極に適度な可撓性や弾力性、しなやかさを付与する機能がある。これにより、電極と可撓性基板との接着性(一体性)が向上する。そして、電子機器の製造(組立)時や使用時等に、可撓性基板が収縮や反り、変形等を生じた場合でも、電極がこの動きに柔軟に追随できるようになる。したがって、導電膜の剥離がより良く抑制されて、優れた耐久性や信頼性を実現することができる。
可撓性エポキシ樹脂としては、第2級炭素が3個以上連続する構造部分(セグメント)を有する未硬化の(硬化前の)化合物であればよく、従来知られているものを適宜用いることができる。ここで言う可撓性エポキシ樹脂は、典型的には、CHの繰り返し単位が少なくとも3個連続する構造部分(すなわち、−(CH−で表わされる構造部分。ただしnは、n≧3を満たす実数である。)を有する。上記繰り返し単位が連続する構造部分は、典型的には炭素数が最大となる主鎖骨格に含まれるが、例えば上記主鎖骨格とそこから枝状に伸びた側鎖(ペンダント位)とにまたがって存在してもよい。
好適な一態様において、上記繰り返し単位が連続する数(上記n)はn≧4、特にはn≧5である。これにより、電極のフレキシビリティーがより良く向上し、可撓性基板との接着性が一層向上し得る。繰り返し単位が連続する数(上記n)の上限は特に限定されないが、上記(B1)の特性を維持しつつ、上記(B2)の特性をより良く発揮させる観点からは、概ねn≧10であるとよい。なお、一つの化合物中において、第2級炭素の連続する数がランダムに存在する場合は、最も小さい連続数を上記「連続する数」とする。
可撓性エポキシ樹脂に占める上記繰り返し単位の割合は特に限定されないが、例えば5〜90質量%程度であるとよい。
可撓性エポキシ樹脂の一好適例として、ダイマー酸型エポキシ樹脂、ビスフェノール変性型エポキシ樹脂等の、鎖状・脂環式エポキシ樹脂や、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等の、変性エポキシ樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
なかでも、導電性や硬化性を向上する観点等から、ダイマー酸型エポキシ樹脂やビスフェノール変性型エポキシ樹脂が好ましい。
可撓性エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、典型的には上記(B1)よりも大きく、本発明の効果を高いレベルで発揮させる目的からは、概ね200〜3000g/eq、典型的には300〜2000g/eq、例えば350〜1000g/eq程度であるとよい。
可撓性エポキシ樹脂の数平均分子量Mcは特に限定されないが、概ね1万以下、好ましくは5000以下、典型的には100〜5000、より好ましくは2000以下、例えば500〜1000程度であるとよい。数平均分子量Mcが所定値以上であると、可撓性向上の効果が十分に得られる。数平均分子量Mcが所定値以下であると、ペーストの取扱性や、印刷時の作業性が向上し得る。
なお、エポキシ樹脂の「可撓性」は、次のような試験によって評価することができる。
先ず、エポキシ樹脂(単体)と硬化剤とを硬化させて、樹脂膜を作製する。この樹脂膜を幅10mm、長さ40mm、厚み1mmの大きさにカットして、試料片とする。そして、曲率半径25mm(曲率0.04/mm)の円柱形状の試験部材に沿うように試料片を湾曲させる(図2参照)。試料片を湾曲させた後にクラックや破断等の不具合が認められないものは「良」とする。この試験を10枚の試験片について行い、10枚すべてが「良」となるエポキシ樹脂を「可撓性あり(Good)」とみなす。逆に、10枚中1枚でも不具合が確認されれば、そのエポキシ樹脂を「可撓性なし」とみなす。具体的な評価方法については、後述する実施例に示す。
好ましい一態様では、エポキシ樹脂の可撓性がより高く、例えば、曲率半径15mm(曲率0.06/mm)、さらには、曲率半径10mm(曲率0.1/mm)の円柱形状の試験部材に沿うように試料片を湾曲させた際にも、10枚すべての試験片が「良」となる。このようなエポキシ樹脂をそれぞれ「可撓性が良好(Great)」、「可撓性が非常に良好(Excellent)」とみなすことができる。
さらに好ましい一態様では、エポキシ樹脂の可撓性が顕著に高く、例えば、試験片の長さ方向の両端部を接触させるように180°曲げた際にも、10枚すべての試験片が「良」となる。このようなエポキシ樹脂を「可撓性が特に良好(Brilliant)」」とみなすことができる。
熱硬化性樹脂全体に占める上記(B2)可撓性エポキシ樹脂の割合は特に限定されないが、典型的には1質量%以上、好ましくは2質量%以上、例えば4質量%以上であって、概ね45質量%以下、好ましくは40質量%以下、例えば35質量%以下であるとよい。これにより、高い柔軟性を持ち、可撓性基板との接着性にも優れた電極を一層安定的に得ることができる。
<(B3)1官能エポキシ樹脂>
1官能エポキシ樹脂は、ペーストに流動性を持たせてペースト粘度を低下させる成分である。また、ペーストのガラス転移点を下げる成分でもある。これにより、ペーストの取扱い性や、ペースト印刷時の作業性を向上することができる。このことは、レーザー加工に適する薄膜状の(例えば厚みが10μm以下の)電極を得る観点からも好ましい。さらに、ガラス粘度が下がることでエポキシ樹脂の柔軟性が高まり、ペーストの加熱硬化中にエポキシ樹脂が流動し易くなる。その結果、導電性粒子同士の接点に介在する樹脂をはじく(排除する)効果が得られる。したがって、導電性粒子同士の接触面積が増加し、体積抵抗を一層低く抑えることができる。
1官能エポキシ樹脂(単官能エポキシ樹脂)としては、分子内に1つのエポキシ基を有する未硬化の(硬化前の)化合物であればよく、従来知られているものを適宜用いることができる。1官能エポキシ樹脂の一好適例としては、炭素数が6〜36(典型的には6〜26、例えば6〜18)のアルキルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル、アルキニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;炭素数が6〜36(典型的には6〜26、例えば6〜18)のアルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステル、フェニルグリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
なかでも、本発明の効果を高いレベルで発揮させる目的からは、アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、フェニルグリシジルエステルが好ましい。特には、フェニルグリシジルエーテルが好ましい。
1官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、典型的には上記(B1)と概ね同等であり、本発明の効果を高いレベルで発揮させる目的からは、概ね100〜3000g/eq、典型的には100〜1000g/eq、例えば100〜500g/eq程度であるとよい。
1官能エポキシ樹脂の数平均分子量Mcは特に限定されないが、典型的には上記(B1)および上記(B2)よりも小さく、本発明の効果を高いレベルで発揮させる目的からは、概ね5000以下、典型的には2000以下、好ましくは1000以下、例えば100〜300程度であるとよい。
熱硬化性樹脂全体に占める(B3)1官能エポキシ樹脂の割合は特に限定されないが、典型的には50質量%以上、好ましくは55質量%以上、例えば60質量%以上であって、概ね70質量%以下、好ましくは67質量%以下、例えば65質量%以下であるとよい。また、好ましい一態様では、(B1)多官能エポキシ樹脂と(B3)1官能エポキシ樹脂との質量比率が、概ね20:80〜45:55である。これにより、電気伝導性と耐久性に優れた電極を一層安定的に得ることができる。
<(B4)エポキシ基含有アクリル樹脂>
好適な一態様において、(B)熱硬化性樹脂はさらに(B4)1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ基含有アクリル樹脂を含む。エポキシ基含有アクリル樹脂は、電極と可撓性基板との接着性の向上や、電極表面の平滑性向上に寄与するよう作用する。
つまり、エポキシ基含有アクリル樹脂は、エポキシ基を含有するために上記(B1)〜(B3)と馴染みが良い。そして、塗膜の加熱硬化の段階にあっては、(B4)エポキシ基含有アクリル樹脂のエポキシ基が硬化反応を起こして、上記(B1)〜(B3)と共に三次元の架橋構造を形成する。これにより、電極と可撓性基板との接着性が一層向上する。
また、(B4)エポキシ基含有アクリル樹脂の一部は、樹脂成分が完全硬化する前に塗膜の表面に浮き広がり、塗膜の表面張力を均質化するよう機能する。換言すれば、(B4)エポキシ基含有アクリル樹脂は、いわゆる表面調整剤(レベリング剤)としても機能し得る。これにより、電極表面の平滑性を一層向上することができる。
エポキシ基含有アクリル樹脂としては、アクリル樹脂の主鎖骨格の末端及び/又は側鎖(ペンダント位)に1つ以上のエポキシ基を有する未硬化の(硬化前の)化合物であればよく、従来知られているものを適宜用いることができる。
一好適例として、エポキシ基を含有する重合性モノマーの単独重合体、上記エポキシ基含有重合性モノマーとその他の重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。
エポキシ基含有重合性モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、α−メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでもグリシジルメタクリレートを含むことが好ましい。
上記その他の重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル(TBA)、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ナフチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル;酢酸ビニル;スチレン;ブタジエン等が挙げられる。なかでも、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルのうち少なくとも一種を含むことが好ましい。
エポキシ基含有重合性モノマーとその他の重合性モノマーとの混合比率は特に限定されないが、おおよその目安として、一好適例では3:1〜1:3程度、例えば2:1〜1:2程度であり得る。これにより、本発明の効果がさらに高いレベルで発揮され得る。
エポキシ基含有アクリル樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、典型的には上記(B1)〜(B3)よりも多く、本発明の効果を高いレベルで発揮させる目的からは、概ね200〜3000g/eq、典型的には300〜2000g/eq、例えば400〜1000g/eq程度であるとよい。
エポキシ基含有アクリル樹脂の数平均分子量Mcは特に限定されないが、典型的には上記(B1)〜(B3)よりもよりも大きく、本発明の効果を高いレベルで発揮させる目的からは、概ね1万以下、典型的には5000以下、好ましくは2000以下、例えば100〜1000程度であるとよい。
熱硬化性樹脂には(B4)エポキシ基含有アクリル樹脂が含まれていてもよいし含まれていなくてもよい。熱硬化性樹脂が(B4)エポキシ基含有アクリル樹脂を含む場合、熱硬化性樹脂全体に占める(B4)エポキシ基含有アクリル樹脂の割合は特に限定されないが、添加の効果を高いレベルで発揮させる目的からは、典型的には質量0.5%以上、好ましくは1質量%以上、例えば5質量%以上であって、概ね20質量%以下、好ましくは17質量%以下、例えば15質量%以下であるとよい。
好ましい一態様では、(B)熱硬化性樹脂が、質量比率で、以下の成分:
(B1)2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂 5〜25質量%;
(B2)第2級炭素が3個以上連続する構造を有する可撓性エポキシ樹脂 1〜45質量%;
(B3)1つのエポキシ基を有する1官能エポキシ樹脂 50〜70質量%;
(B4)1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ基含有アクリル樹脂 0〜20質量%;を含む。
熱硬化性樹脂が上記成分比率で構成されることで、「強靭性」と「柔軟性」という相反する性質を極めて高いレベルで併せ持った電極を実現することができる。
(B)熱硬化性樹脂の含有割合は特に限定されないが、導電性粉末を100質量部としたときに、典型的には3質量部以上、好ましくは5質量部以上、例えば8質量部以上であって、概ね30質量部以下、好ましくは25質量部以下、例えば20質量部以下であるとよい。これにより、基板との接着性や耐久性、電気伝導性に一層優れた電極を得ることができる。
ペーストの必須構成成分の総質量(つまり、(A)+(B)+(C))に占める(B)熱硬化性樹脂(混合物)の割合は特に限定されないが、典型的には3質量%以上、好ましくは5質量%以上、例えば7質量%以上であって、概ね25質量%以下、好ましくは20質量%以下、例えば18質量%以下であるとよい。上記範囲を満たすことで、本発明の効果をより高いレベルで奏することができる。
<(C)硬化剤>
硬化剤は、上記(B1)〜(B3)または(B1)〜(B4)の分子間に架橋構造を形成して、硬化させるための成分である。硬化剤としては特に限定されず、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応して架橋構造を形成し得る化合物を適宜用いることができる。一好適例として、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、有機ホスフィン類、およびそれらの誘導体等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化剤の含有割合は特に限定されないが、導電性粉末を100質量部としたときに、典型的には0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、例えば1質量部以上であって、概ね10質量部以下、好ましくは7質量部以下、例えば5質量部以下であるとよい。これにより、硬化不良が生じることを防止して硬化反応をスムーズに進行させることができる。また、未反応の硬化剤が電極内に残留することを抑制して、体積抵抗をより低く抑えることができる。
ペーストの必須構成成分の総質量(つまり、(A)+(B)+(C))に占める硬化剤の割合は特に限定されないが、典型的には0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、例えば1質量%以上であって、概ね10質量%以下、好ましくは5質量%以下、例えば4質量%以下であるとよい。上記範囲を満たすことで、体積抵抗の低減された電極を安定的に形成することができる。
<(D)その他の成分>
ここで開示されるペーストは、上記(A)〜(C)の成分の他に、必要に応じて種々の添加成分を含有し得る。そのような添加成分の一例として、反応促進剤(助触媒)、レーザー光吸収剤、無機フィラー、界面活性剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、顔料、希釈溶媒等が挙げられる。これらの添加成分としては、一般的な導電性ペーストに使用し得ることが知られているものを適宜用いることができる。
反応促進剤(助触媒)としては、例えば、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)等の金属元素を含むアルコキシド、キレート(錯体)、アシレートが挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、有機ジルコニウム化合物を含むことが好ましい。
また、希釈溶媒としては、例えば、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤等の有機溶剤が挙げられる。
添加成分の含有割合は特に限定されないが、導電性粉末を100質量部としたときに、例えば10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下であるとよい。
<ペーストの調製>
このようなペーストは、上述した材料を所定の含有率(質量比率)となるよう秤量し、均質に撹拌混合することで調製し得る。材料の撹拌混合は、従来公知の種々の攪拌混合装置、例えばロールミル、マグネチックスターラー、プラネタリーミキサー、ディスパー等を用いて行うことができる。
<ペーストの使用方法>
ペーストの一使用例では、先ず、基板を準備する。基板としては、例えば、プラスチック基板、アモルファスシリコン基板、ガラス基板等を考慮し得る。特には、耐熱性の低い材料からなる基板を採用する場合に本発明を好適に採用し得る。
次に、この基板上に、所望の厚み(例えば1〜50μm、好ましくは10μm以下、例えば1〜10μm、より好ましくは7μm以下)になるようにペーストを付与(塗工)する。ペーストの付与は、例えばスクリーン印刷、バーコーター、スリットコーター、グラビアコーター、ディップコーター、スプレーコーター等を用いて行うことができる。
次に、基板上に付与したペーストを加熱乾燥する。加熱温度は、例えば(B)熱硬化性樹脂のガラス転移点以上の温度とし得る。また、基板の損傷を抑える観点や生産性を向上する観点からは、加熱乾燥温度を可撓性基板の耐熱温度よりも十分低く、典型的には200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは100〜150℃、特には100〜130℃とするとよい。また、加熱乾燥時間は、典型的には1〜60分、例えば10〜30分とするとよい。これによって、ペースト中の熱硬化性樹脂を硬化させ、基板上に膜状の導電膜(電極)を形成する。
好適な一態様では、さらに、上記導電膜が所望の形状(例えば細線形状)となるようにマスキングを施して、それ以外の部位にレーザー光を照射する。
レーザーの種類は特に限定されず、この種の用途に使用し得ることが知られているものを適宜用いることができる。一好適例として、IRレーザー、ファイバーレーザー、COレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。例えば、750〜1500nmの波長域、更には900〜1100nmの波長域の近赤外レーザー光を発生するレーザーを用いることができる。
一好適例では、基板の吸収波長領域とレーザー光の基本波長とが一致しないようにレーザー種を選択する。これにより、基板への損傷を最小限に抑えることができる。
他の一好適例では、レーザー光の波長が導電膜を構成する成分の吸収波長領域と一致するようにレーザー種を選択する。これにより、導電膜がレーザー光の波長に吸収帯を有することとなり、レーザー加工時の作業性や生産性を向上することができる。例えば、導電膜を構成する硬化膜(具体的には、上記(B)熱硬化性樹脂を(C)硬化剤で硬化させた硬化物)の吸収波長領域が、概ね9000〜10000cm−1、例えば9300〜9900cm−1の範囲にある場合は、基本波長1064nmのIRレーザーを好ましく用いることができる。
レーザー光の照射条件は特に限定されない。例えばレーザー出力は、導電膜の厚み等にもよるが、基板への損傷を回避しつつ導電膜の不要な部位を適切に除去する観点からは、概ね0.5〜100Wとするとよい。例えばIRレーザーを用いて1〜10μm程度の厚みの導電膜を加工する場合には、レーザー出力を1〜10W程度とするとよい。
また、レーザーの走査速度は、生産性を高く維持しつつ導電膜の不要な部位を適切に除去する観点から、概ね1000〜10000mm/s、例えば1500〜5000mm/sとするとよい。
レーザーの光エネルギーは熱エネルギーへと変換され、導電膜に到達する。これにより、レーザー光の照射部位では導電膜が熱分解され、溶融、除去される。そして、レーザー光を照射しなかった部位のみが残存し、電極が成形される。
以上のようにして、基板上に所定のパターンの電極(配線)を備えた構造体(配線基板)を得ることができる。
<ペーストの用途>
ここで開示されるペーストは、柔軟性や可撓性の高い電極を形成することができる。したがって、例えば変形の自由度が高い可撓性基板上に電極を形成するために好ましく用いることができる。なお、本明細書において「可撓性基板」とは、曲率半径25mm(曲率0.04/mm)の円柱形状の試験部材に沿うように基板を湾曲させたときに、当該基板にクラックや破断等が認められないものをいう。また、ここで開示されるペーストは、低温短時間の熱硬化によって低抵抗な電極を形成することができる。したがって、高温に曝されると性能が低下してしまうような基板上に電極を形成するために好ましく用いることができる。さらに、好適な一態様では、レーザー加工性にも優れ、特にL/S=80μm/80μm以下、例えばL/S=50μm/50μm以下の細線状の電極を形成するために好ましく用いることができる。
代表的な一使用用途として、各種電子部品の電極形成や、フレキシブル基板を有するタッチパネルや液晶ディスプレイ、電子ペーパー等のフレキシブルデバイスの導体回路の形成が挙げられる。フレキシブル基板としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド等の樹脂からなるフィルム状のプラスチック基板や、ガラス基板等が例示される。なお、フレキシブル基板上にはITO膜(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ膜)等の酸化物からなる導電膜が成膜された状態であり得る。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
I.エポキシ樹脂の可撓性評価
先ず、次の4種類のエポキシ樹脂を用意した。
・可撓性エポキシ樹脂1:ダイマー酸型エポキシ樹脂(第2級炭素の連続する数≧5)
・可撓性エポキシ樹脂2:ビスフェノール変性型エポキシ樹脂(第2級炭素の連続する数≧4)
・可撓性エポキシ樹脂3:水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(第2級炭素の連続する数<3)
・多官能エポキシ樹脂:ビスフェノール型エポキシ樹脂(第2級炭素の連続する数<3)
次に、上記のエポキシ樹脂を硬化剤(ここではイミダゾール系硬化剤を使用した。)で硬化させて、樹脂膜を作製した。この樹脂膜を幅10mm、長さ40mm、厚み1mmの大きさにカットし、10枚の試料片を用意した。
また、次の曲率を有する円柱形状の試験部材を用意した。
・曲率半径25mm、15mm、10mm(曲率0.04/mm、0.06/mm、0.1/mm)の円柱部材
そして、円柱部材の円弧形状に沿って、試料片を湾曲させた(図2参照)。そして、湾曲させた後の試料片にクラックや破断等の不具合があるか否かを確認した。曲率半径10mmでの曲げが可能であった試料片については、さらに180°曲げを行った。
結果を表1に示す。表1において、「○」は10枚の試料片の何れにおいても不具合が認められなかった(10枚すべてが「良」であった)ことを、「△」は10枚中1〜2枚に不具合が認められたことを、「×」は10枚中3枚以上に不具合が認められたことを、表している。
表1に示すように、第2級炭素の連続する数が3以上の可撓性エポキシ樹脂1,2は、曲率半径15mm(曲率0.06/mm)の形状に沿った変形が可能であり、可撓性に優れていると言える。上述した可撓性の評価基準で言えば、可撓性エポキシ樹脂1は「可撓性が特に良好(Brilliant)」であり、可撓性エポキシ樹脂2は「可撓性が良好(Great)」であった。
また、参考用として、粘弾性スペクトロメータ(DMS)を用いて上記のうちの3種類のエポキシ樹脂について曲げ弾性率を測定した。結果を表2に示す。
表2に示すように、本明細書における「可撓性」の評価結果と、DMSに基づく一般的な曲げ弾性率の測定結果とは、傾向が異なっていた。換言すれば、ここで開示される「可撓性」の評価結果は、一般的な「弾性率」の測定のみからは推測できないものであった。
II.導電性ペーストの評価
先ず、加熱硬化型導電性ペーストの構成成分となる以下の材料を準備した。
≪(A)導電性粉末≫
・導電性粉末1:球状銀粉末(DOWAエレクトロニクス株式会社製「Ag-2-8」、D50=1.0μm、平均アスペクト比1.1)
・導電性粉末2:球状銀粉末(DOWAエレクトロニクス株式会社製「Ag-2-1C」、D50=0.5μm、平均アスペクト比1.0)
・導電性粉末3:球状銀粉末(DOWAエレクトロニクス株式会社製「Ag-5-8」、D50=3.0μm、平均アスペクト比1.1)
・導電性粉末4:球状銀コート銅粉末(DOWAエレクトロニクス株式会社製「AO-DCL-1」、D50=2.2μm、平均アスペクト比1.1)
・導電性粉末5:球状銀コート銅粉末(DOWAエレクトロニクス株式会社製「AO-DCL-2」、D50=2.2μm、平均アスペクト比1.1)
・導電性粉末6:鱗片状銀粉末(DOWAエレクトロニクス株式会社製「FA-D-4」、D50=15μm、アスペクト比16.7)
・導電性粉末7:鱗片状銀粉末(DOWAエレクトロニクス株式会社製「FA-S-11」、D50=2.8μm、平均アスペクト比2.2)
≪(B)熱硬化性樹脂≫
(B1)多官能エポキシ樹脂
・多官能エポキシ樹脂1:ノボラック型エポキシ樹脂
(日本化薬株式会社製、エポキシ当量193g/eq、数平均分子量Mc1100)
・多官能エポキシ樹脂2:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂
(DIC株式会社製、エポキシ当量258g/eq、数平均分子量Mc550)
・多官能エポキシ樹脂3:ビスフェノール型エポキシ樹脂
(株式会社ADEKA製、エポキシ当量170g/eq、数平均分子量Mc340)
(B2)可撓性エポキシ樹脂
・可撓性エポキシ樹脂1:ダイマー酸型エポキシ樹脂
(三菱化学株式会社製、エポキシ当量390g/eq、数平均分子量Mc560、第2級炭素の連続する数≧5、可撓性が特に良好(Brilliant))
・可撓性エポキシ樹脂2:ビスフェノール変性型エポキシ樹脂
(DIC株式会社製、エポキシ当量403g/eq、数平均分子量Mc900、第2級炭素の連続する数≧4、可撓性が良好(Great))
・可撓性エポキシ樹脂3:水添ビスフェノール型エポキシ樹脂
(三菱化学株式会社製、エポキシ当量210g/eq、数平均分子量Mc400、第2級炭素の連続する数<3、可撓性あり(good))
(B3)1官能エポキシ樹脂
・フェニルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製、エポキシ当量206g/eq、数平均分子量Mc210)
(B4)エポキシ基含有アクリル樹脂
・エポキシ基含有アクリル樹脂1:MMA50部とGMA50部からラジカル重合で作製したアクリル樹脂(エポキシ当量497g/eq、数平均分子量Mc2500)
・エポキシ基含有アクリル樹脂2:TBA50部とGMA50部からラジカル重合で作製したアクリル樹脂(エポキシ当量486g/eq、数平均分子量Mc2400)
≪(C)硬化剤≫
・硬化剤1:イミダゾール系硬化剤(味の素ファインテクノ株式会社製)
・硬化剤2:第3級アミン系硬化剤(味の素ファインテクノ株式会社製)
≪(D)添加剤≫
・ジルコニウム系キレート(マツモトファインケミカル社製)
〔導電膜の形成〕
樹脂が固形のものについては適宜、有機系分散媒(ここでは、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用いた。)に溶かした後、上記準備した材料を表3,4に示す質量比率になるよう秤量、混合して、加熱硬化型導電性ペースト(例1〜20)を調製した。
〔接着性評価〕
上記調製したペーストを、スクリーン印刷の手法によって以下の3種類のフレキシブル基板上に□2cm×2cmの正方形状にべた塗りし、130℃・30分間の加熱乾燥をした。そして、JIS K5400(1990)に従って付着性評価(クロスカット法−100マス碁盤目試験)を行った。
結果を表3,4の「接着性」の欄に示す。なお、表3,4において、「○」は剥離がなかったことを、「×」は1マス以上剥離したことを、表している。
≪フレキシブル基板≫
・ITO−PETフィルム(尾池工業株式会社製、ポリエチレンテレフタレート上に酸化インジウムスズが成膜されているもの)
・PETフィルム(東レ株式会社製、アニール処理済み)
・ポリカーボネートフィルム(旭硝子株式会社製)
〔体積抵抗率の測定〕
上記PETフィルム上の導電膜について、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、型式:ロレスタGP MCP−T610)を用いて、4端子法で体積抵抗率を測定した。結果を表3,4の「体積抵抗率」の欄に示す。
〔レーザー加工性の評価〕
上記調製したペーストをスクリーン印刷の手法によってITO−PETフィルムの表面にスクリーン印刷(べた塗り)し、130℃・30分間の加熱乾燥をした。これにより、エポキシ樹脂を硬化させてITO−PETフィルム上に導電膜を形成した。
上記形成した導電膜に、以下の9つの条件でレーザーを照射し、それぞれL/S=30μm/30μmの細線形成を試みた。
≪レーザー加工条件(9条件)≫
・レーザー種:IRレーザー(基本波長;1064nm)
・レーザー出力:5W、7W、9W
・走査速度:1000、2000、3000mm/s
レーザー加工によって形成した細線をレーザー顕微鏡で観察し、所望の線幅の電極が形成されているか否かを確認した。顕微鏡観察は、倍率10倍で、3視野を確認した。
結果を表3,4の「レーザー加工性」の欄に示す。なお、表3,4において、「○」はすべての条件で上記細線の形成が可能であったことを、「△」は一部の条件でのみ細線の形成が可能であったことを、「×」は細線が形成できなかったことを、表している。
また、一例として、例1に係る観察画像を図1に示す。
表3,4に示すように、(B2)第2級炭素が3個以上連続する構造を有する可撓性エポキシ樹脂を含まない例8,19,20では、フレキシブル基板との接着性が悪かった。また、(B1)多官能エポキシ樹脂を含まない例9,10では、体積抵抗率が相対的に高かった。これら参考例に対して、熱硬化性樹脂が、(B1)多官能エポキシ樹脂と、(B2)第2級炭素が3個以上連続する構造を有する可撓性エポキシ樹脂と、(B3)1官能エポキシ樹脂と、をいずれも含む例1〜7では、フレキシブル基板との接着性が向上した。また、体積抵抗率(加熱硬化条件130℃・30分)も100μΩ・cm以下と低く抑えることができた。さらに、レーザー加工性も良好であった。
また、例11〜18の比較から、(A)導電性粉末が鱗片状の導電性粒子を含まないことで、レーザー加工適性をより向上することができた。
〔表面粗さRaの測定〕
また、例1と例5の導電膜について、JIS B0601(2001)に準拠して、表面粗さRaを測定した。
その結果、エポキシ基含有アクリル樹脂を含まない例1ではRaが0.8μmであり、エポキシ基含有アクリル樹脂を含む例5ではRaが0.7μmであった。つまり、エポキシ基含有アクリル樹脂を添加することによって、電極表面の平坦性を高めることができた。この理由は明らかではないが、エポキシ基含有アクリル樹脂の一部が、塗膜の表面に浮き上がり、アクリル系レベリング剤として機能し得たためと推察される。
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。

Claims (11)

  1. (A)導電性粉末と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)硬化剤と、を含み、
    前記(B)熱硬化性樹脂は、
    (B3)1つのエポキシ基を有する1官能エポキシ樹脂と、
    (B2)第2級炭素が3個以上連続する構造を有する可撓性エポキシ樹脂(ただし、前記(B3)を除く)と、
    (B1)2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂(ただし、前記(B2)を除く)と、
    を含み、
    前記(B1)は、ベンゼン環骨格およびシクロペンタジエン骨格のうちの少なくとも一方を有し、数平均分子量が1万以下であり、かつ、エポキシ当量が100〜3000g/eqであり、
    前記(B2)は、前記(B1)よりもエポキシ当量が大きく、
    前記(B3)は、前記(B1)および前記(B2)よりも数平均分子量が小さい、
    電極形成用加熱硬化型導電性ペースト。
  2. 前記(B1)と前記(B3)との質量比率が、20:80〜45:55である、
    請求項1に記載の電極形成用加熱硬化型導電性ペースト。
  3. 前記(B1)〜(B3)が、いずれも数平均分子量2000以下である、
    請求項1または2に記載の電極形成用加熱硬化型導電性ペースト。
  4. 前記(A)導電性粉末が、鱗片状の導電性粒子を含まない、
    請求項1からのいずれか一項に記載の電極形成用加熱硬化型導電性ペースト。
  5. 前記(A)導電性粉末のレーザー回折・光散乱法に基づく平均粒子径が0.5〜3μmである、
    請求項1からのいずれか一項に記載の電極形成用加熱硬化型導電性ペースト。
  6. (A)導電性粉末と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)硬化剤と、を含み、
    前記(B)熱硬化性樹脂は、
    (B4)1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ基含有アクリル樹脂と、
    (B3)1つのエポキシ基を有する1官能エポキシ樹脂と、
    (B2)第2級炭素が3個以上連続する構造を有する可撓性エポキシ樹脂(ただし、前記(B3)を除く)と、
    (B1)2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂(ただし、前記(B2)を除く)と、
    を含み、
    前記(B4)の数平均分子量が、前記(B1)〜(B3)のいずれよりも大きく、かつ、5000以下である、
    加熱硬化型導電性ペースト。
  7. 前記(B)熱硬化性樹脂が、質量比率で、以下の成分:
    (B1)2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂 5〜25質量%;
    (B2)第2級炭素が3個以上連続する構造を有する可撓性エポキシ樹脂 1〜45質量%;
    (B3)1つのエポキシ基を有する1官能エポキシ樹脂 50〜70質量%;
    (B4)1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ基含有アクリル樹脂 〜20質量%;
    を含む、請求項に記載の加熱硬化型導電性ペースト。
  8. 前記(B1)〜(B3)が、いずれも数平均分子量2000以下である、
    請求項6または7に記載の加熱硬化型導電性ペースト。
  9. 前記(A)導電性粉末が、鱗片状の導電性粒子を含まない、
    請求項からのいずれか一項に記載の加熱硬化型導電性ペースト。
  10. 前記(A)導電性粉末のレーザー回折・光散乱法に基づく平均粒子径が0.5〜3μmである、
    請求項からのいずれか一項に記載の加熱硬化型導電性ペースト。
  11. 請求項1から5のいずれか一項に記載の電極形成用加熱硬化型導電性ペーストの硬化物、および、請求項6から10のいずれか一項に記載の加熱硬化型導電性ペーストの硬化物のうちの少なくとも1つを備えた基板。
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