JP6372971B2 - 電線接続構造体、及び電線接続構造体の製造方法 - Google Patents
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Description
このような腐食の原因である水への対策として、金属の表面に防錆剤を塗布するものが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
例えば、遮蔽された車両空間では、被水の恐れが極めて低いことから、ワイヤハーネスの端部に非防水コネクタが設けられ、この非防水コネクタの中の端子と電線との圧着部には防食処置が施されていないことが多い。
その方法として、例えば、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の芯線を外界と遮断する圧着技術が採用されている。具体的には、圧着部全体を樹指により被覆する方法、管状のバレルにより圧着する方法、等により、圧着部における電線(芯線)の外界露出を遮断する方法がある。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、閉じた空間内に露出した電線(芯線)の腐食を抑制することが可能な電線接続構造体を提供することを目的としている。
この構成によれば、電線の芯線の腐食を抑制することができ、長期に渡って低い電気抵抗を維持することができる。また、管状端子の一端が閉塞することで、圧着により露出した芯線の表面が閉じた空間に存在することになる。従って、圧着部に水が浸入しにくい構造となり、より一層芯線の腐食を抑制することができる。
この構成によれば、芯線への水の接触を抑制することができ、芯線の腐食を抑制することができる。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の電線接続構造体10を示す斜視図である。
電線接続構造体10は、管状端子11と、この管状端子11に圧着結合された電線13とを備える。管状端子11は、雌型端子のボックス部20と管状かしめ部30とを有し、これらの橋渡しとしてトランジション部40を有する。
管状端子11は、導電性と強度を確保するために基本的に金属材料(本実施形態では、銅または銅合金)の基材で製造されている。なお、管状端子11の基材は、銅または銅合金に限るものではなく、アルミニウムや鋼、またはこれらを主成分とする合金等を用いることもできる。
また、管状端子11は、端子としての種々の特性を担保するために、例えば管状端子11の一部あるいは全部にスズ、ニッケル、銀めっきまたは金等のめっき処理が施されていても良い。また、めっきのみならず、スズ等のリフロー処理を施しても良い。
電線13は、例えば、金属または合金製の素線14aを束ねた芯線14を、絶縁樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)で構成する絶縁部15で被覆して構成される。芯線14は、所定の断面積となるように、素線14aを撚って構成しているが、この形態に限定されるものではなく単線で構成しても良い。
なお、芯線を構成する金属材料は、高い導電性を有する金属であればよく、アルミニウムまたはアルミニウム合金の他、銅または銅合金を用いても良い。
通常、圧着結合すると、導体圧着縮径部35および被覆圧着縮径部36がそれぞれ塑性変形を起こして、元の径よりも縮径されることで、電線13の芯線先端部14bおよび被覆先端部15aと圧着結合される。
管状かしめ部30の一端は、電線13を挿入することができる電線挿入口31を有し、他端はトランジション部40に接続されている。管状かしめ部30のトランジション部40側は、溶接等の手段によって閉口(閉塞)しており、トランジション部40側から水分等が浸入しないように形成されている。
管状端子11の金属基材(銅または銅合金)と芯線14(アルミニウム又はアルミニウム合金)との接合部に水分が付着すると、両金属の起電力(イオン化傾向)の差から芯線14が腐食する。また、管状端子11と芯線14とがアルミニウム同士であっても微妙な合金組成の違いによって、それらの接合部は腐食しやすい。
平面状態からの曲げ加工した際に、かしめ部に相当する部位はC字型断面となっているので、開放された両端部を突き合わせて溶接等によって接合することで、管状かしめ部30が形成される。管状かしめ部30の接合は、レーザ溶接が好ましいが、電子ビーム溶接、超音波溶接、抵抗溶接等の溶接法でもかまわない。また、はんだ、ろう等、接続媒体を使っての接合でも良い。また、管状かしめ部30は、上記したC字型断面の両端部を接合する方法に限らず、深絞り工法で形成されても良い。さらに、連続管を切断するとともに一端側を閉塞して、管状かしめ部30を形成しても良い。
管状かしめ部30では、芯線14を強圧縮して導通を維持する機能と、絶縁部15を圧縮してシール性を維持する機能とが要求される。被覆圧着縮径部36では、その断面を略正円にかしめ、絶縁部15の全周に渡ってほぼ同等の圧力を与えることにより、全周に渡って均一な弾性反発力を発生させて、シール性を得ることが好ましい。
このように、被覆圧着縮径部36と絶縁部15との間がシールされ、圧着結合部内に閉空間37が出来る。但し、より密閉された閉じた空間を形成するには、より高いシール機能を有する手段が必要である。
圧着結合する前の管状端子11Aは、雌型端子のボックス部20と管状部25とを有し、これらの橋渡しとしてトランジション部40を有する。管状部25は、トランジション部40から次第に大径となる拡径部26と、この拡径部26の縁部から筒状に延びる筒部27とからなる。
拡径部26には、導体圧着縮径部35(図1参照)が形成され、筒部27には、被覆圧着縮径部36(図1参照)が形成される。管状端子11Aは、一部または全部にスズめっき等の処理が施されている。
図4は、撥水層17の第1の形成要領を示す作用図である。
撥水剤塗布装置60を準備する。撥水剤塗布装置60は、中空部60aと、この中空部60aに連通して中空部60aに撥水剤を供給する撥水剤供給通路60bと、撥水剤を排出する撥水剤排出通路60cとを備える。
撥水剤塗布装置60の中空部60a内に、導体が伸線処理されて形成された芯線14を通し、撥水剤供給通路60b側から矢印Aで示すように、中空部60aに撥水剤を供給しながら芯線14を白抜き矢印で示すように長手方向に移動させる。この結果、芯線14の表面に次々に撥水剤が塗布され、撥水層17が形成される。なお、塗布時に余った撥水剤は矢印Bで示すように撥水剤排出通路60cから排出され、再度塗布に使用される。
図5(A)において、芯線14に撥水層17(図3参照)を形成する準備として、電線13の絶縁部15の端部を芯線14から剥がす処理が成される。詳細には、電線13の端部近傍の両側に配置された一対のカッター刃62,62を、それぞれ矢印Dで示すように互いに近づけて絶縁部15に食い込ませ、更に、食い込ませた状態で、それぞれ矢印Eに示すように、電線13の長手方向に移動させる。この結果、図5(B)に示すように、芯線14から絶縁部15の端部が剥ぎ落された状態になり、外部に露出した芯線14の端面及び外周面に撥水剤が塗布されて撥水層17が形成される。
雌形防水コネクタ70は、複数の端子係合穴71を備え、各端子係合穴71に電線接続構造体10の管状端子11をそれぞれ挿入して係合させる。端子係合穴71は、管状端子11の挿入時の入口となる挿入口71aと、この挿入口71aに隣接して電線接続構造体10の電線13の外周面に嵌合するシール部材73の外周面が内接するシール穴71bと、管状端子11のボックス部20が配置されるボックス部配置部71cと、ボックス部20の抜けを防止する段部71dとを備える。
このような閉空間において、芯線14に撥水層17が形成されることで、芯線14への水の付着をより一層抑制することができ、芯線14の腐食を抑制することができる。
電線接続構造体50は、オープンバレル端子51と、このオープンバレル端子51に圧着結合された電線53とを備える。オープンバレル端子51は、一方端にかしめ部51Aを備え、かしめ部51Aより電線53の先端部側の他方端にかしめ部51Bを備える。電線接続構造体50は、被覆圧着部39において、挿入された電線53の端末領域の絶縁部55がオープンバレル端子51のかしめ部51Aによって絶縁部55の外周に沿ってかしめられており、加えて、導体圧着部38において、挿入された電線53の末端領域の芯線54がオープンバレル端子51のかしめ部51Bによって芯線54の外周に沿ってかしめられている。なお、図7において、芯線54の表面に施された撥水層は省略する。
なお、オープンバレル端子51を用いる場合、モールド樹脂56は形成しなくてもよいが、芯線54の外部への露出を無くし、一時的にモールド内部で芯線54が露出した領域内に水分が浸入することを防止する、という点でモールド樹脂56を設けることが好ましい。
(実験例)
実験例に用いる電線接続構造体は、図2に示す電線接続構造体10の形態と図7に示す電線接続構造体50を用い、端子の基材として、古河電気工業製の銅合金FAS−680(厚さ0.25mm、H材)を用いた。FAS−680の合金組成は、ニッケル(Ni)を2.0〜2.8質量%、シリコン(Si)を0.45〜0.6質量%、亜鉛(Zn)を0.4〜0.55質量%、スズ(Sn)を0.1〜0.25質量%、およびマグネシウム(Mg)を0.05〜0.2質量%含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物である。
図2に示す電線接続構造体10の管状部25は、曲げ加工されたC字型断面の両端部を突き合わせ、内径3.2mmとなるようにレーザー溶接した。
また、電線13,53の絶縁部15,55は、ハロゲンフリー樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体を用いた。絶縁部15,55は、芯線14,54の周囲を外径が2.8mmとなるように押出し法により形成した。
端子としては、(1)管状端子、又は(2)オープンバレル端子がある。
撥水剤塗布方法としては、(1)図4に示したように、芯線の製造工程の一つである素線の伸線工程で撥水剤を塗布、あるいは伸線工程の直後に塗布する、又は(2)図5に示したように、端子と芯線とを圧着接合する前で絶縁部を剥ぎ落した後に塗布する。
撥水層が形成された芯線を上記の端子に圧着し、試料とした。なお、オープンバレル端子に対しては樹脂被覆(モールド樹脂の形成)を行っていない。
・温度サイクル試験
−40℃から120℃の間で温度を上昇させ、次に下降させる。これを1サイクル(2時間)として1000サイクル実施した。
・塩水噴霧試験
塩水噴霧溶液(NaCl)の濃度5%、試験槽内の温度35℃、試験時間100時間で実施した。
また、塩水噴霧試験の評価方法は、芯線14の腐食状況を目視により4段階の評価をした。腐食なしを「◎」、芯線の一部に表面の変色が見られるものを「○」、芯線の一部に腐食が見られるものを「△」、芯線の大部分が腐食しているものを「×」とした。
なお、この評価において、露出した芯線表面の80%以上が変色(腐食)したものを大部分、10%を下回ったものを一部とする。
なお、(1)管状端子については、耐久試験のために導体圧着縮径部35付近をペンチによって部分的に潰すことで開口部を形成した。
耐久試験内容及び耐久試験結果を表1に示す。
実施例2は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に伸線工程で塗布し、撥水剤にはAL50を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例3は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に伸線工程で塗布し、撥水剤にはAS35を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例5は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはAL−100を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「◎」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例6は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはAL50を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「◎」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例7は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはAS35を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「◎」であり、判定は「〇(合格)」である。
実施例8は、管状端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはフッ素樹脂を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「◎」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例10は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に伸線工程で塗布し、撥水剤にはAL50を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例11は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に伸線工程で塗布し、撥水剤にはAS35を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例13は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはAL50を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例14は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはAS35を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例15は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に圧着前に塗布し、撥水剤にはフッ素樹脂を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「〇」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
実施例17は、管状端子を用い、撥水剤を管状端子に圧着前に塗布し、撥水剤にはAL−100を用いた。温度サイクル試験の結果は「◎」、塩水噴霧試験の結果は「◎」であり、判定は「〇(合格:良)」である。
比較例2は、オープンバレル端子を用い、撥水剤を芯線に塗布しなかった。温度サイクル試験の結果は「△」、塩水噴霧試験の結果は「×」であり、判定は「×(不合格)」である。
図8は、第2実施形態の電線接続構造体80の長手方向の要部断面図である。図2に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
電線接続構造体80は、電線接続構造体10(図2参照)に対して絶縁部15の外周面に被覆された樹脂被覆81のみが異なっている。
即ち、電線接続構造体80は、芯線14及び撥水層17からなる導体部18と、この導体部18を覆う絶縁被覆部82とからなり、絶縁被覆部82は、絶縁部15と樹脂被覆81とからなる。
上記した樹脂被覆81を設けることで、圧着結合部内には密閉された閉空間83が出来、水の浸入が阻止されて芯線14の腐食を防止することができる。更に、例えば、圧着結合部内の閉空間83で結露が発生し、水が管状かしめ部30と導体部18との間に生じても、芯線14は撥水層17で覆われているため、水が芯線14に接触することは無い。また、芯線14内の閉空間19で結露が発生し、水が芯線14の各素線14aに付着しても、水は素線14aだけに接触することになり、例えば、素線14aとは異なる材質の金属、即ち管状端子11と素線14aとが水を介して接続することはなく、異種金属間の腐食は避けられるため、素線14aの腐食を抑制することができる。
この構成によれば、露出した電線13の導体である芯線14の腐食を抑制することができ、長期に渡って低い電気抵抗を維持することができる。
例えば、上記実施形態において、図2及び図3に示したように、芯線14の表面に撥水層17を設けたが、これに限らず、芯線14の各素線14aの表面に撥水処理を施しても良い。
本発明は、自動車のワイヤハーネスに適用可能であるが、これに限らず、他の車両の配線や、車両以外の装置等の配線に適用しても良い。
11,11A 管状端子(端子)
13,53 電線(電線)
14,54 芯線
15,55 絶縁部(導体絶縁層)
17 撥水層
19,37,76,83 閉空間(閉じた空間)
35 導体圧着縮径部(導体圧着部)
36 被覆圧着縮径部(被覆圧着部)
38 導体圧着部
39 被覆圧着部
51 オープンバレル端子
70 雌形防水コネクタ
81 樹脂被覆
Claims (5)
- 端子と、芯線及び当該芯線を被覆する導体絶縁層を有する電線とを圧着結合した電線接続構造体であって、
前記電線は、前記芯線の表面全体を覆うように前記芯線の全体の外周面及び両端面に撥水層を有し、
前記端子は、管状かしめ部を有する管状端子であり、前記管状かしめ部は、前記撥水層を介して前記芯線を圧着結合する導体圧着部と、前記導体絶縁層を圧着結合する被覆圧着部とを備え、前記管状かしめ部の一端が閉塞し、他端に前記電線が挿入される電線挿入口を有し、
圧着結合される前記導体圧着部と前記芯線との間に導通部を有し、前記被覆圧着部による前記導体絶縁層の圧着結合により前記管状かしめ部内に閉じた空間が形成され、
前記撥水層が、前記電線の端部において前記管状端子内の前記閉じた空間に露出していることを特徴とする電線接続構造体。 - 前記端子が銅製又は銅合金製であって、前記芯線がアルミニウム製又はアルミニウム合金製であることを特徴とする請求項1に記載の電線接続構造体。
- 前記管状かしめ部の他端において前記被覆圧着部と前記導体絶縁層の間に樹脂被覆が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電線接続構造体。
- 前記撥水層は、油脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂のいずれかで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電線接続構造体。
- 管状端子と、芯線及び当該芯線を被覆する導体絶縁層を有する電線とが圧着結合される電線接続構造体の製造方法であって、
予め前記芯線の表面全体を覆うように前記芯線の全体の外周面及び両端面に撥水剤を塗布することにより撥水層を形成し、
前記電線の一端部から前記導体絶縁層の端部を除去した後に、一端が閉塞された前記管状端子の管状かしめ部の他端に設けられた電線挿入口から前記管状かしめ部内に前記電線の一端部側を挿入し、
前記芯線及び前記導体絶縁層を、前記管状かしめ部に備える導体圧着部、被覆圧着部によりそれぞれ圧着接合することで、前記導体圧着部と前記芯線との間に前記撥水層を介して導通部を形成するとともに、前記被覆圧着部による前記導体絶縁層の圧着結合により前記管状かしめ部内に閉じた空間を形成することを特徴とする電線接続構造体の製造方法。
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