JP6368425B2 - シリカ膜及び分離膜フィルタ - Google Patents

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Description

本発明は、シリカ膜及び分離膜フィルタに関し、より詳しくは、有機混合流体からアルコールを選択的に分離するシリカ膜及び分離膜フィルタに関する。
従来、シリカ膜としては、例えば、多孔質基材にp−トリル基を含むシリコンアルコキシドの前駆体ゾルを塗布し、乾燥焼成してシリカ膜フィルタを得るものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このフィルタでは、乾燥膜の総質量に対するシリカ膜の総質量の比率が38〜85質量%であり、炭化水素とアルコールとの混合物からアルコールを選択的に分離することができる。
国際公開2013/146622号パンフレット
しかしながら、この特許文献1に記載されたシリカ膜フィルタでは、シリカ膜の製造方法をより好適にし、シリカ膜自体をより好適なものとするものではあるが、まだ十分ではなく、アルコールの透過速度や分離選択性などを、更に向上することが望まれていた。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、有機混合流体からアルコールを分離する際の透過速度及び選択性をより向上させることができるシリカ膜及び分離膜フィルタを提供することを主目的とする。
上述した主目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、例えば、シリカ膜を形成する下地層の特性、シリカ膜の成膜条件、焼成条件などを調整することにより、元素分析による原子数比Si/C(アリール基の残存状態)をより好適な範囲とすると、分離対象の透過速度及び選択性をより良好なものとすることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のシリカ膜は、アリール基を有し、エネルギー分散型X線分光法(EDX)での元素分析による原子数比Si/Cが0.2以上15以下であるものである。
本発明の分離膜フィルタは、
多孔質基材と、
前記多孔質基材上に形成された上述のいずれかに記載のシリカ膜と、
を備えたものである。
本発明のシリカ膜及び分離膜フィルタは、有機混合流体からアルコールを分離する際の透過速度及び選択性をより向上させることができる。この理由は、例えば、以下のように推察される。例えば、p−トリル基などアリール基を含むシリカ膜は、シリカネットワーク中にアリール基が存在することにより、アリール基が焼失した際に、通常のシリカ膜と比べて大きな細孔を有するものとなる。また、アリール基がシリカ膜中に残存することで、液体分離において、アリール基と透過成分との相互作用により、透過が促進されるという効果が期待できる。ここで、シリカ膜の原子数比Si/Cが0.2以上15以下の範囲にあると、アルコールを好適に透過する細孔が十分存在し、且つアリール基に基づく炭素(C)が好適に残存するため、アルコールの透過速度と選択性を好適なものとすることができる。
シリカ膜フィルタ10の構成の概略を示す説明図。 透水量の測定方法の説明図。 実験例1のシリカ膜フィルタの電子顕微鏡写真及びEDX測定結果。 実験例1のシリカ膜のFT−IR測定結果。
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である分離膜フィルタとしてのシリカ膜フィルタ10の構成の概略を示す説明図である。シリカ膜フィルタ10は、多孔質基材13と、多孔質基材13上に形成されたシリカ膜18とを備える。本発明のシリカ膜18は、下地層である限外ろ過膜15上に形成されているものとしてもよい。シリカ膜18は、アリール基を有し、エネルギー分散型X線分光法(EDX)での元素分析による原子数比Si/Cが0.2以上15以下の範囲にあるものである。
分離対象である有機混合流体は、例えば、炭化水素とアルコールとの混合流体としてもよい。炭化水素としては、例えば、キシレン、n−オクタンなどが挙げら、ガソリン成分としてもよい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられ、そのうちエタノールであるものとしてもよい。流体としては、気体としても液体としてもよい。
多孔質基材13は、分離対象の流体の流路となく複数のセル12が形成されている。このシリカ膜フィルタ10では、入口側からセル12へ入った処理対象流体のうち、シリカ膜18を透過可能な分子サイズを有するアルコールが、シリカ膜18及び多孔質基材13を透過し、シリカ膜フィルタ10の側面から送出される。一方、シリカ膜18を透過できない非透過流体(主として炭化水素)は、セル12の流路に沿って流通し、セル12の出口側から送出される。多孔質基材13は、複数のセル12を備えたモノリス構造を有しているものとしてもよいし、1つのセルを備えたチューブラー構造を有しているものとしてもよい。その外形は、特に限定されないが、円柱状、楕円柱状、四角柱状、六角柱状などの形状とすることができる。あるいは、多孔質基材13は、断面多角形の管状としてもよい。
多孔質基材13は、例えば、図1に示すように、支持体14と、支持体14の表面に形成された限外ろ過膜15とを含むものとしてもよい。支持体14は、気孔径が0.1μm〜数100μm程度であるものとしてもよい。また、支持体14は、気孔率が20体積%以上70体積%以下の範囲であるものとしてもよい。支持体14を構成する材料としては、アルミナ(α−アルミナ、γ−アルミナ、陽極酸化アルミナ等)、チタニア、シリカ、コージェライト、ジルコニア、ムライト、ジルコニアなどのうち1以上のセラミックスを挙げることができる。こうすれば、多孔質基材13は、耐熱性、耐薬品性、耐衝撃性などに優れたものとすることができる。このうち、基材の作製、入手の容易さの点から、アルミナが好ましい。支持体14は、平均粒径0.001〜30μmのアルミナ粒子を原料として成形、焼結させたものが好ましい。この多孔質基材13は、単層構造であっても、複層構造であってもよい。支持体14は、例えば、限外ろ過膜15が表面に形成された細粒部と、細粒部が表面に形成された粗粒部と、を含むものとしてもよい。支持体14は、限外ろ過膜15よりも気孔径が大きい部材であるものとしてもよいし、気孔率が高い部材であるものとしてもよい。また、支持体14は、例えば、押し出し成型等によって得られた部材としてもよく、その表面に、アルミナやチタニア等の精密ろ過膜が形成されたものとしてもよい。
限外ろ過膜15(UF膜とも称する)は、シリカ膜18の下地層として機能する膜である。この限外ろ過膜15は、膜厚が0.2μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることが更に好ましい。また、限外ろ過膜15は、膜厚が5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが更に好ましい。膜厚が0.2μm以上では、支持体14上を限外ろ過膜15でより確実に覆うことができる。また、膜厚が5μm以下では、膜割れなどを抑制することができ、より緻密なシリカ膜18を形成することができる。限外ろ過膜15の厚さは、電子顕微鏡観察(SEMやSTEM、TEM)により求めるものとする。シリカ膜フィルタ10の断面を電子顕微鏡により観察し、この観察した画像において、任意の10箇所を選び限外ろ過膜15の厚さを計測する。この計測において、限外ろ過膜15の最上部と最下部との垂直距離を測定し、この平均値を限外ろ過膜15の厚さとする。
限外ろ過膜15は、平均細孔径が2nm以上25nm以下の範囲であることが好ましい。平均細孔径が2nm以上では、シリカ成膜時にシリカ原料(例えばシリカゾル)が限外ろ過膜15の細孔内に浸入することができ、シリカ膜18が限外ろ過膜15からはがれにくくなり、強度が向上し好ましい。平均細孔径が25nm以下では、シリカ原料の粒径に対して細孔が大きすぎず、限外ろ過膜15の厚さを薄くしたとしても、シリカゾルが限外ろ過膜15の内部に染込みすぎるのが防止され、シリカ膜を限外ろ過膜15の表面に成膜しやすい。この限外ろ過膜15の平均細孔径は、20nm以下の範囲であることがより好ましい。限外ろ過膜15の平均細孔径は、非特許文献1(Journal of Membrane Science 186(2001)257-265)に記載の方法に準じて測定するものとする。本発明においては、n−ヘキサンを凝縮性ガスとし、窒素を非凝縮性ガスとして用いるものとする。
この限外ろ過膜15は、元素Mを含む。元素Mとしては、例えば、Ti,Al,Si,Zrなどが挙げられ、具体的には、アルミナ(α−アルミナ、γ−アルミナ、陽極酸化アルミナ等)、チタニア、シリカ、コージェライト、ジルコニア、ムライト、ジルコニアなどのうち1以上のセラミックスを挙げることができる。こうすれば、限外ろ過膜15は、耐熱性、耐薬品性、耐衝撃性などに優れたものとすることができる。このうち、作製、入手の容易さの点から、チタニアが好ましい。
限外ろ過膜15は、シリカ膜18を形成する前の透水量が0.5m/day以上6.0m/day以下の範囲であることが好ましい。透水量が小さいほど、限外ろ過膜15の抵抗が大きく、シリカ膜18の成膜時のシリカ原料の染み込みが低減され、シリカ膜を限外ろ過膜15の表面に均一に薄く成膜できる。この透水量が0.5m/day以上では、限外ろ過膜15自体の抵抗が大きくなるのを抑制することができ、分離におけるアルコールの透過速度が小さくなるのを抑制でき好ましい。透水量が6.0m/day以下では、シリカ原料の染込みが多くなるのを抑制することができ、シリカ膜18を薄く均一に成膜することができる。この透水量は、5.0m/day以下であることがより好ましく、4.0m/day以下であることが更に好ましい。この透水量の測定方法について説明する。図2は、透水量の測定方法の説明図である。透水量の測定は、まず、図2に示すように、限外ろ過膜15を含む多孔質基材13(シリカ膜18を形成する前のフィルタ)の出口側にシール部19を配設しセル12の一方を目封じした状態とする。次に、入り口側から蒸留水をセル12内に供給し、供給水の流量、圧力、水温を測定する。測定した値を、0.1MPa加圧条件下、25℃に換算し、単位膜面積あたりに流れた(膜を透過した)水量(m3)を透水量(m3/m2/day=m/day)とする。
限外ろ過膜15は、元素Mを含む原料ゾルを用いて作製されているものとしてもよい。限外ろ過膜15は、例えば、原料ゾルを支持体14の表面に形成した形成体を得る形成処理、形成体を乾燥する乾燥処理、乾燥した乾燥体を焼成する焼成処理などを含む限外ろ過膜作製工程を経て得られたものとしてもよい。このとき、形成処理、乾燥処理及び焼成処理を複数回繰り返すものとしてもよい。原料ゾルは、元素Mを含むものとすればよく、例えば、チタニアゾルなどが挙げられる。また、原料ゾルには、バインダーや増粘剤などの添加剤を添加するものとしてもよい。添加剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などが挙げられる。形成処理では、原料ゾルを支持体14のセル12内に流し込むものとしてもよい。乾燥処理では、原料ゾルに含まれる溶媒を除去できればよく、大気中、室温〜120℃などで行うことができる。焼成処理は、原料ゾルを酸化物として支持体14上に固着する温度で行うことができ、例えば、400〜800℃とすることができ、400〜500℃がより好ましい。限外ろ過膜作製工程では、上述した膜厚などになるよう、適宜、原料ゾル濃度や成膜回数などにより膜付着量(膜厚)を調整し、焼成温度や添加剤の添加量により細孔径を調整するものとすればよい。
シリカ膜18は、多孔質基材13(例えば、限外ろ過膜15)上に形成され、有機混合流体からアルコールを選択的に透過することができる膜である。ここで、「アルコールを選択的に透過する」とは、有機混合流体から純度100%のアルコールを分離して取り出すだけでなく、有機混合流体の組成と比較してアルコールの含有率が高くなった溶液または気体を分離して取り出すことも含む。例えば、純度60%以上のアルコールや純度75%以上のアルコールを分離して取り出すものとしてもよい。
シリカ膜18は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)での元素分析による原子数比Si/Cが0.2以上15以下の範囲である。シリカ膜18に含まれるアリール基は、シリカ原料に含まれるものとしてもよく、一部が焼成時に膜中から焼失することで、シリカ膜の細孔の一部となる一方、一部が膜中に残存することで、アルコールとの相互作用により透過を促進させる効果があると考えられる。Si/Cが0.2以上では、シリカ膜の細孔が十分に形成されるため、エタノール透過速度がより多く、好ましい。Si/Cが15以下では、膜中のアリール基の残存量が少なくなりすぎず、アルコールとの相互作用を確保することができ、好ましい。このSi/Cは、0.5以上であることがより好ましく、0.7以上であることが更に好ましい。また、このSi/Cは、8.0以下であることがより好ましい。
ここで、シリカ膜18のEDXでの元素分析について説明する。まず、シリカ膜フィルタ10を、シリカ膜18の断面が観察できるよう任意の断面で切断する。次に、この断面を電子顕微鏡(SEMやSTEM)により観察する。電子顕微鏡観察は、シリカ膜が十分に観察できる倍率で実施し、シリカ膜の厚みが目視可能な倍率とする。この観察した画像において、ランダムに10箇所を選びEDX元素分析を行い、原子数比(Si/C)を求める。求めたSi/Cの平均値をSi/Cとする。なお、EDX元素分析をランダムに10箇所行うが、電子顕微鏡観察においては少なくとも1視野以上行い、複数視野行うことがより好ましい。例えば、2箇所のEDX元素分析を5視野で行うものとしてもよい。ランダムに選択した10箇所は重複しない視野とする。また、局所的な測定になることを防ぐために、一測定あたりのEDX分析視野範囲は、少なくとも膜厚に直交する方向に0.2μm程度以上、膜厚方向にXμm程度以上とする。なお、Xμmは、その視野でのシリカ膜厚(μm)×0.5程度以上とする。EDX分析視野範囲は、限外ろ過膜が含まれず、シリカ膜部のみが含まれるように選択する。なお、観察のための試料調整方法は特に限定されないが、試料の保護や固定に炭素成分を含むもの(例えば樹脂)を使用する場合は、分析に影響ないように使用することとする。
このシリカ膜18は、アリール基を有するものである。アリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基などが挙げられ、アルコールの透過性から、トリル基やフェニル基が好ましく、特にp−トリル基であることが好ましい。また、シリカ膜18は、Siに直接アリール基が結合した原料から作製されているものとしてもよい。
このシリカ膜18は、例えば、膜厚が30nm以上300nm以下の範囲であるものとしてもよい。膜厚が30nm以上では膜の強度をより高めることができ、300nm以下では分離対象であるアルコールの透過速度を確保することができる。シリカ膜18の膜厚は、50nm以上であることが好ましく、100nm以下であることが好ましい。シリカ膜18の厚さは、電子顕微鏡観察(SEMやSTEM、TEM)により求めるものとする。シリカ膜フィルタ10の断面を電子顕微鏡により観察し、この観察した画像において、ランダムに10箇所を選びシリカ膜18の厚さを計測する。この計測において、シリカ膜18の最上部と最下部との垂直距離を測定し、この平均値をシリカ膜18の厚さとする。
シリカ膜18は、多孔質基材13(例えば、限外ろ過膜15)への膜付着量が、単位膜面積あたり0.3g/m2以上5.2g/m2以下の範囲であることが好ましい。膜付着量が0.3g/m2以上では、シリカ膜が多孔質基材13の表面を十分に被覆することができ、分離性能を十分に発揮することができる。膜付着量が5.2g/m2以下では、シリカ膜18が厚くなりすぎず、好ましい。シリカ膜18が厚くなりすぎると、焼成時に焼成雰囲気と十分に接触できなくなることから、最適な量までアリール基を焼失させるのに、より高温で焼成する必要が生じるため、焼成時にクラックが発生するリスクが高くなることなどが懸念される。このシリカ膜18の多孔質基材13への膜付着量は、単位膜面積あたり5.0g/m2以下の範囲であることがより好ましく、3.0g/m2以下の範囲であることが更に好ましい。なお、シリカ膜18の膜付着量(g/m2)は、シリカ膜18を形成したあとのフィルタの質量からシリカ膜18を形成前のフィルタの質量を差し引いて膜総質量を求め、この膜総質量をシリカ膜18の総面積で除算することにより求めることができる。
シリカ膜18は、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IR)における、Si−O−Si結合の吸収強度Xとアリール基に基づく吸収強度Yとの比X/Yが5.0以上200以下の範囲であることが好ましい。X/Yが5.0以上では、シリカ膜の細孔が十分に形成されるため、エタノール透過速度がより多く、好ましい。X/Yが200以下では、膜中のアリール基の残存量が少なくなりすぎず、アルコールとの相互作用を確保することができ、好ましい。このX/Yは、12.0以上であることがより好ましく、160以下であることが更に好ましい。アリール基に基づく吸収は、特徴的な吸収を採用すればよく、例えば、Si−Ph(Phはベンゼン環)やSi−Ph−CH3由来の吸収としてもよい。吸収強度Xは、例えば、Si−O−Si結合由来の1050cm-1近傍のピーク強度とすることができる。また、吸収強度Yは、Si−Ph−CH3結合由来の3073cm-1近傍のピーク強度とすることができる。FT−IR測定は、シリカ膜フィルタ10から取り出したシリカ膜18の粉体を測定するものとする。このX/Yは、複数の膜粉末を測定してX/Yを求め、その平均値とする。
このシリカ膜18は、0.5nm以上20nm以下のサイズの細孔が形成されているものとしてもよい。このような細孔の範囲では、アルコールの透過を促進させることができる。シリカ膜18の細孔径は、Kelvin式に基づく方法、例えば、SRIインターナショナル社製、細孔分布測定装置(DYNAMIC PORE SIZE MEASUREMENT)を用いて測定することができる。測定は、フィードガスとして窒素ガスを用い、凝縮性ガスとしてn−ヘキサンを用いることができる。
シリカ膜18は、Siを含む原料ゾルを用いて作製されているものとしてもよい。Siを含む原料ゾルとしては、例えば、アリール基を有するシリコンアルコキシドの前駆体ゾルなどが挙げられる。特に、この原料ゾルは、アリール基がSiに直接結合したものとすることが好ましい。シリカ膜18は、例えば、原料ゾルを多孔質基材13の表面に成膜した成膜体を得る成膜処理、成膜体を乾燥する乾燥処理、乾燥した乾燥体を焼成する焼成処理などを含む膜作製工程を経て得られたものとしてもよい。このとき、成膜処理、乾燥処理及び焼成処理を複数回繰り返すものとしてもよい。成膜処理では、原料ゾルを多孔質基材13のセル12内に流し込むものとしてもよい。原料ゾル濃度は、多孔質基材13の表面に原料ゾルが適度に付着できれば特に限定されないが、例えば0.2〜5質量%とすることができる。乾燥処理では、原料ゾルに含まれる溶媒を除去できればよく、大気中、室温〜120℃などで行うことができる。焼成処理は、原料ゾルを酸化物として多孔質基材13上に固着させる温度で行うことができる。また、焼成処理は、原料に含まれるアリール基の一部が焼失し、一部が残存する条件で行うことが好ましい。この焼成処理は、例えば、350〜500℃で行うことができる。
以上説明した本実施形態のシリカ膜フィルタ10によれば、有機混合流体からアルコールを分離する際の透過速度及び選択性をより向上させることができる。この理由は、以下のように推察される。例えば、アリール基(例えばp−トリル基)を含むシリカ膜18は、シリカネットワーク中にアリール基が存在することで、アリール基が焼失した際に、通常のシリカ膜と比べて大きな細孔を有することができる。また、アリール基がシリカ膜中に残存することで、液体分離において、アリール基と透過成分との相互作用により、透過が促進されるという効果が期待できる。シリカ膜18の原子数比Si/Cが0.2以上15以下の範囲にあると、アルコールを好適に透過する細孔が十分存在し、且つアリール基(炭素:C)が好適に残存し、アルコールの透過速度と選択性を好適なものとすると推察される。
また、シリカ膜18のアルコールの透過速度と選択性を高めるに際して、限外ろ過膜15(UF膜)の構造も影響を与えていることが推察される。シリカ膜18は、限外ろ過膜15の内部に浸透した構造になっていることが好ましい。シリカ膜18が限外ろ過膜15に浸透していることにより、シリカ膜18が強固に限外ろ過膜15に固定され、焼成時の膜ハガレなどを抑制することができる。一方で、シリカ膜18が限外ろ過膜15の中に浸透しすぎると、ろ過膜中にシリカ膜が詰まってしまうことで、膜の透過抵抗が高くなってしまい、液体分離における抵抗が大きくなってしまうことが懸念される。さらに、ろ過膜内部のシリカ膜18の中のアリール基を最適量で焼失させるためには、高温で焼成する必要が発生する。高温での焼成は、クラックを発生させるリスクが高くなることが懸念される。例えば、限外ろ過膜15の透水量が0.5m/day以上6.0m/day以下の範囲にあると、シリカ膜18の成膜時にその原料(シリカゾル)の限外ろ過膜15への染み込みが低減され、シリカ膜18が限外ろ過膜15の表面に均一に薄く成膜できるものと推察される。また、シリカ膜18のアリール基を最適量で焼失させるには、シリカ膜18を高温(例えば550℃以上など)で焼成することがある。一方、焼成温度が高くなると、焼成時にシリカ膜18などにクラックが生じることがある。シリカ膜18にクラックが生じると、分離性能が大幅に低下することが懸念される。ここでは、限外ろ過膜15を好適な範囲とすることにより、アリール基を含むシリカ膜18を限外ろ過膜15上に薄く均一に成膜し、焼成時に焼成雰囲気と十分に接触でき、高温で焼成しなくても、アリール基を最適な量まで焼失させることができるのである。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、シリカ膜フィルタを具体的に製造した例を実験例として説明する。なお、実験例1〜11、15〜17が本発明の実施例に相当し、実験例12〜14、18が比較例に相当する。
[シリカ膜フィルタの作製]
長手方向に沿って直径2.5mmの貫通直線孔(貫通孔)を55個有する直径30mm、長さ160mmの多孔質アルミナ質の円柱状部材(モノリス形状支持部材)を押出成形および焼成により作製した。次に、アルミナ及びチタニアの精密ろ過膜を貫通孔内部に成膜、焼成により形成して、支持体を得た。この精密ろ過膜を形成したモノリス形状基材の両端部にガラスを溶融してシールを施した(シール部)。次に、貫通孔内にチタニアの限外ろ過膜(UF膜)を成膜した。まず、チタンプロポキシドを硝酸の存在下で加水分解し、チタニアゾル液を得た。動的光散乱法で測定されたゾル粒径は100nmであった。このチタニアゾル液を水で希釈し、適宜有機バインダーであるPVAを添加したものを成膜ゾルとした。基材セル内に流通、接触させることにより、セル内に膜を形成した。乾燥後、400〜500℃にて焼成した。この流通、乾燥、焼成工程を成膜1サイクルとし、2〜6回行い、支持体上に限外ろ過膜を形成した多孔質基材を得た。最終焼成後、多孔質基材(支持体及び限外ろ過膜)の透水量を測定した。多孔質基材の透水量は、チタニアゾル濃度と成膜回数により限外ろ過膜付着量(膜厚)を、焼成温度やPVAの添加量により細孔径を制御することで調整された。
アリール基を有するシリコンアルコキシドとしてp−トリルトリメトキシシラン又はフェニルトリメトキシシランを用いたシリカ膜を作製した。p−トリルトリメトキシシランとエタノールとを混合して4℃で撹拌し、混合溶液を作製した。次に、硝酸水溶液を少量ずつ添加し、加水分解させた。混合溶液のpHが0.3になるまで硝酸水溶液を添加したのち、4℃で1時間撹拌した。次に、この混合溶液を50℃で3時間撹拌し、反応液を得た。pHは、pHメータ(堀場製作所製、Twin pH B−212)により測定した。その後、反応液のゾル濃度がシリカ換算で2.0質量%となるようにエタノールを加えて全体を希釈し、p−トリル基を含むシリコンアルコキシドの前駆体ゾルを得た。
この前駆体ゾルを160mL測りとり、両端面をガラスでシールした上記多孔質基材の一方の端面からセル(貫通孔)内に前駆体ゾルを流下させた。これにより、セルの内壁面に前駆体ゾルを塗布した。次に、前駆体ゾルを乾燥させて乾燥膜を形成した。その後、焼成温度370℃〜550℃で1時間保持することにより焼成膜を形成した。上記の前駆体のゾルの塗布から熱処理までの焼成膜形成操作を所定回数繰り返し、p−トリル基を含有するシリカ膜を備えたシリカ膜フィルタを作製した。また、フェニルトリメトキシシランを用いて同様の工程を行い、フェニル基を含有するシリカ膜フィルタも作製した。
[実験例1〜18]
チタニアゾル濃度、焼成温度、成膜回数を適宜変更することによって、表1に示す限外ろ過膜を作製した。表1には、得られた限外ろ過膜の透水量も示した。さらに、表2に示すシリカゾル濃度、成膜回数、焼成温度にて、限外ろ過膜上にアリール基を有するp−トリルシリカ膜を形成した。限外ろ過膜及びシリカ膜を表1、2に示した条件で作製したものをそれぞれ実験例1〜18とした。なお、表2には、評価結果をまとめて示した。
(限外ろ過膜の細孔径)
限外ろ過膜の平均細孔径を、以下の方法により求めた。まず、限外ろ過膜にn−ヘキサンと窒素を同時に流し、n−ヘキサンの分圧を変化させて、そのときの窒素透過流量を測定した。次に、測定したn−ヘキサン分圧の値をケルビンの凝縮式に当てはめて得られる細孔径分布から限外ろ過膜の平均細孔径を求めた(Journal of Membrane Science 186(2001)257-265を参照)。ヘキサンの分圧0のときの窒素透過流量を1としてその値が半分となる細孔径を平均細孔径とした。
(限外ろ過膜、シリカ膜の膜厚)
限外ろ過膜の膜厚を測定した。まず、上記作製したシリカ膜フィルタを切断し、その断面を電子顕微鏡観察した。この電子顕微鏡画像において、任意の10箇所を選択し、限外ろ過膜の最上部と最下部との垂直距離を測定し、この平均値を限外ろ過膜の厚さとした。なお、限外ろ過膜の膜厚の測定を任意の10箇所行うが、電子顕微鏡観察においては少なくとも1視野以上行い、複数視野行うことがより好ましい。例えば、2箇所の膜厚測定を5視野で行うものとしてもよい。また、同様の手法により、シリカ膜の膜厚についても測定した。
(限外ろ過膜(多孔質基材)の透水量)
限外ろ過膜の透水量は、以下のように測定した。まず、限外ろ過膜(多孔質基材)の出口側にシール部を配設することによりセルの一方を目封じした状態とし、入り口側から蒸留水をセル内に供給し、供給水の流量、圧力、水温を測定した(図2参照)。得られた値を0.1MPa加圧条件下、25℃に換算し、単位膜面積あたりの膜を透過した水量を透水量(m/day)とした。
(シリカ膜の原子数比Si/Cの測定)
得られたシリカ膜フィルタの断面に対して、シリカ膜のエネルギー分散型X線分光法(EDX)での元素分析を行った。シリカ膜の領域からランダムに10箇所を選び、EDX元素分析を行った。各測定箇所における元素分析の結果により原子数比Si/Cを求め、その平均値をそのシリカ膜のSi/C値とした。図3は、実験例1のシリカ膜フィルタの電子顕微鏡写真及びEDX測定結果である。また、局所的な測定になることを防ぐために、一測定あたりのEDX分析視野範囲は、少なくとも膜厚に直交する方向に0.2μm程度以上、膜厚方向にXμm程度以上とした。なお、Xμmは、その視野でのシリカ膜厚(μm)×0.5)程度以上とした。
(フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IR)測定)
シリカ膜の表面をスパチュラでかき取り、膜粉末を採取した。そのサンプルを拡散反射法にて測定器としてBio−Rad Diglab社製FTS−55Aを用いて測定した。測定は、膜粉末を測定カップに充填して行った。測定後の拡散反射スペクトルはKubelka−Munk関数によって補正した。シリカ強度は、SiO2由来の吸収である1050cm-1近傍のピーク強度Xとし、p−トリル基に基づく吸収強度は、Si−Ph−CH3(Phはベンゼン環)由来の吸収である3073cm-1近傍のピーク強度Yとした。測定は、10サンプルの膜粉末を測定し、X/Yを求め、その平均値とした。図4は、実験例1のシリカ膜のFT−IR測定結果である。なお、ピーク強度は、ベースラインを差し引いた値とした。例えば、大きいブロードなピークの上に小さなピークが存在する場合は、このブロードピークをベースラインとして差し引いて小さなピークのピーク強度を求めた。
焼成後の膜付着量を測定した。膜付着量は、シリカ原料を供給し焼成したシリカ膜を形成したあとのシリカ膜フィルタの質量からシリカ原料を供給する前の限外ろ過膜が形成された基材の質量を差し引いた値とした。単位膜面積あたりの膜付着量(g/m2)は、この膜総質量をシリカ膜の総面積で除算することにより求めた。シリカ膜の総面積は、セルの内表面積とした。
(パーベーパレーション試験1)
エタノール、イソオクタンの混合液体を、質量比でエタノール:イソオクタン=10:90となるよう調製した。シリカ膜フィルタのセル内に温度60℃の上記混合液体を流通させ、シリカ膜フィルタの側面から6kPaの真空度で減圧し、シリカ膜フィルタの側面から流出する透過蒸気を、液体窒素にて冷却したトラップにて捕集した。捕集した透過蒸気の液化物の質量から全透過流束を算出した。また、透過蒸気の液化物をガスクロマトグラフィーにて分析し、透過蒸気の組成を決定した。
(パーベーパレーション試験2)
エタノール、n−オクタン、o−キシレンの混合液体を、質量比でエタノール:n−オクタン:o−キシレン=10:45:45となるよう調製した。シリカ膜フィルタのセル内に温度70℃の上記混合液体を流通させ、シリカ膜フィルタの側面から6kPaの真空度で減圧し、シリカ膜フィルタの側面から流出する透過蒸気を、液体窒素にて冷却したトラップにて捕集した。捕集した透過蒸気の液化物の質量から全透過流束を算出した。また、透過蒸気の液化物をガスクロマトグラフィーにて分析し、透過蒸気の組成を決定した。
(結果と考察)
表2に示すように、実験例1〜11、15〜17のSi/Cが0.2以上15以下の範囲では、エタノールの透過速度が高く、且つエタノールの濃度(選択性)も高いことがわかった。具体的に検討すると、表1、2に示すように、実験例1では、より良好な限外ろ過膜の細孔径、膜厚により透水量を小さくすることにより、シリカ膜の付着量を小さくし、より良好なp−トリル基の残存量に制御することができ、高いエタノールの透過速度を発現したものと推察される。実験例2では、限外ろ過膜の膜厚が薄いため透水量が高くなり、シリカ膜の付着量が多くなることでp−トリル基の残存量が多くなり、エタノール透過速度が低めになった。実験例3では、限外ろ過膜の細孔径が小さいため、透水量が比較的小さく、シリカ膜の付着量は少ないものの、限外ろ過膜の細孔内にシリカが浸入できず、シリカ表面層が多くなり、エタノール透過速度が若干低下した。実験例4では、シリカゾル濃度が高いことにより、膜付着量が多くなり、p−トリル基の残存量も多くなったため、エタノール透過速度が若干低下した。実験例5では、限外ろ過膜の細孔径が大きいため、限外ろ過膜を厚くしても透水量が所望まで低下せず、シリカ膜の付着量、p−トリル基の残存量が多くなり、エタノール透過速度は若干低下した。実験例6では、限外ろ過膜の細孔径がさらに大きいため、限外ろ過膜を厚くしても透水量が所望まで低下せず、シリカ膜の付着量、p−トリル基の残存量が多くなり、エタノール透過速度は低下した。実験例7では、限外ろ過膜の透水量が小さいため、シリカ膜の付着量が小さくなり、p−トリル基の残存量も小さくなったため、エタノール透過速度は向上したが、p−トリル基の残存量が低くなったためにエタノールとの相互作用が小さくなり、透過エタノール濃度が若干低下した(エタノール選択性が低下した)。実験例8,9では、焼成温度が高く、シリカ膜の付着量、p−トリル基の残存量が低くなったため、エタノール透過速度が向上したが、透過エタノール濃度は若干低下した。実験例10では、シリカ膜厚が厚いため、エタノール透過速度は若干低下したが、エタノール選択性が向上した。実験例11では、アリール基をフェニル基としたが、p−トリル基と同様の結果が得られた。実験例12では、焼成温度が高く、p−トリル基の残存量が低くなったため、透過エタノール濃度が低下した。実験例13では、焼成温度が低く、p−トリル基の残存量が多くなり、エタノール透過速度が低下した。実験例14では、限外ろ過膜の細孔径と膜厚の調整により透水量が所望まで低下しなかったため、シリカ膜の付着量、p−トリル基の残存量が多くなり、エタノール透過速度が低下した。実験例15、17では、フェニル基を有するシリカ膜であって、その膜厚が比較的薄いものであるが、エタノール透過速度及び透過エタノール濃度が良好であった。実験例18では、焼成温度が高く、Si/Cが高いため、エタノール選択性が低下した。実験例16では、焼成温度は低いが、シリカ膜厚が比較的好適であり、比較的高いエタノール透過速度及び透過エタノール濃度が得られた。
また、パーベーパレーション試験2においては、表3に示すように、エタノールの次に優先透過するのはo−キシレンであることがわかった。一般的に、直鎖炭化水素であるn−オクタンは、芳香族化合物であるo−キシレンより分子径が小さく、膜を透過しやすい成分であると考えられる。しかしながら、本実施例のシリカ膜では分子径が大きいo−キシレンのほうが透過しやすい傾向があった。この理由は、以下のように推察される。例えば、アリール基が焼失して形成されたシリカ膜の細孔は、アリール基と同様の平面的な細孔形状を有しており、その細孔形状が、同じく平面的な分子形状を有する芳香族成分であるo−キシレンの透過に適した形状になっていると考えられた。このため、本実施例のシリカ膜フィルタでは、平面構造ではないn−オクタンよりも優先的にo−キシレンを透過したものと推測された。
実験例1〜11、15〜17では、アルコールと炭化水素との有機混合液の分離特性において上記傾向を示すことが明らかになったが、表2に示すように、シリカ膜の原子数比Si/Cが0.2以上15以下の範囲にあると、アルコールの透過速度と透過濃度(選択性)が高く、膜特性としてより好ましいことがわかった。この理由は、以下のように推察された。例えば、アリール基(p−トリル基やフェニル基)を含むシリカ膜は、シリカネットワーク中にアリール基が存在することで、アリール基が焼失した際に、通常のシリカ膜と比べて大きな細孔を有することができる。また、アリール基がシリカ膜中に残存することで、液体分離において、アリール基と透過成分との相互作用により、透過が促進されるという効果が期待できる。シリカ膜の原子数比Si/Cが0.2以上15以下の範囲にあると、アルコールを好適に透過する細孔が十分存在し、且つアリール基(炭素:C)が好適に残存し、アルコールの透過速度と選択性を好適なものとすると推察された。ここで、Si/Cが下限側ではアルコールの選択性がより高く、上限側では透過速度がより高い傾向にあった。したがって、分離速度を重視するか、分離選択性を重視するかによって、原子数比Si/Cを上記範囲内で適宜選択すればよいことがわかった。
また、シリカ膜は、膜厚が30nm〜300nmの範囲にあると、アルコールの透過速度と選択性が高く、膜特性としてより好ましいことがわかった。更に、シリカ膜の付着量が0.3g/m2〜5.2g/m2の範囲にあると、アルコールの透過速度と選択性が高く、膜特性としてより好ましいことがわかった。シリカ膜の膜厚や焼成後の付着量は、上記範囲にあると、例えば、限外ろ過膜の表面を十分にシリカ膜で覆うことができ、且つアリール基が好適に焼失、残存しているものと推察された。更にまた、シリカ膜は、FT−IRによるSi−O−Si結合の吸収強度XとSi−Ph−CH3結合の吸収強度Yとの比X/Yが5.0以上200以下の範囲にあると、アルコールの透過速度と選択性が高く、膜特性としてより好ましいことがわかった。この理由は、X/Yが上記範囲にあると、p−トリル基が好適に焼失、残存しているためであると推察された。
更に、シリカ膜のアルコールの透過速度と選択性を高めるに際して、限外ろ過膜の構造も影響を与えていることが推察された。例えば、表1、2に示すように、限外ろ過膜の透水量が0.5m/day以上6.0m/day以下の範囲にあると、シリカ膜成膜時の原料(シリカゾル)の染み込みが低減され、シリカ膜が限外ろ過膜の表面に均一に薄く成膜できるものと推察された。また、限外ろ過膜の平均細孔径が2〜25nmの範囲にあり、限外ろ過膜の厚さが0.2μm〜5μmの範囲にあると、シリカ膜成膜時の原料(シリカゾル)の染み込みが低減され、シリカ膜が限外ろ過膜の表面に均一に薄く成膜できるものと推察された。また、シリカ膜のアリール基(p−トリル基やフェニル基)を最適量で焼失させるためには、シリカ膜を高温(例えば550℃以上など)で焼成することがある。一方、焼成温度が高くなると、焼成時にクラックが生じることがある。シリカ膜にクラックが生じると、分離性能が大幅に低下することが懸念される。ここでは、限外ろ過膜を上記の好適な範囲とすることにより、アリール基を含むシリカ膜を限外ろ過膜上に薄く均一に成膜し、焼成時に焼成雰囲気と十分に接触でき、高温で焼成しなくても、アリール基を最適な量まで焼失させることができるものと推察された。
このように、シリカ膜に、アルコールを好適に透過する細孔が十分存在し、且つアリール基(炭素:C)が好適に残存すると、アルコールの透過速度と選択性とをより好適なものとすることができることがわかった。
なお、本発明は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本出願は、2015年3月19日に出願された日本国特許出願第2015−055919号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
本発明は、分離膜の技術分野に利用可能である。
10 シリカ膜フィルタ、12 セル、13 多孔質基材、14 支持体、15 限外ろ過膜、18 シリカ膜、19 シール部。

Claims (10)

  1. アリール基を有し、エネルギー分散型X線分光法(EDX)での元素分析による原子数比Si/Cが0.2以上15以下の範囲であ
    フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IR)における、Si−O−Si結合の吸収強度Xと前記アリール基に基づく吸収強度Yとの比X/Yが5.0以上200以下の範囲であり、
    透水量が0.5m/day以上6.0m/day以下の範囲である多孔質基材上に形成されている、
    シリカ膜。
  2. 前記Si/Cが0.5以上である、請求項1に記載のシリカ膜。
  3. 前記Si/Cが8.0以下である、請求項1又は2に記載のシリカ膜。
  4. 膜厚が30nm以上300nm以下の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリカ膜。
  5. 多孔質基材上に形成され、膜付着量が0.3g/m2以上5.2g/m2以下の範囲である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリカ膜。
  6. 前記シリカ膜は、前記多孔質基材の限外ろ過膜上に形成されており、
    前記限外ろ過膜は、平均細孔径が2nm以上25nm以下の範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリカ膜。
  7. 前記シリカ膜は、前記多孔質基材の限外ろ過膜上に形成されており、
    前記限外ろ過膜は、膜厚が0.2μm以上5μm以下の範囲である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリカ膜。
  8. 前記シリカ膜は前記多孔質基材の限外ろ過膜上に形成されており、
    前記限外ろ過膜は、Tiを主成分とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリカ膜。
  9. 前記アリール基は、p−トリル基及びフェニル基のうち1以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載のシリカ膜。
  10. 多孔質基材と、
    前記多孔質基材上に形成された請求項1〜のいずれか1項に記載のシリカ膜と、
    を備えた分離膜フィルタ。
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