JP6364626B2 - 回折光学素子、回折光学素子の製造方法および回折光学素子の製造方法に用いられる型 - Google Patents

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Description

本開示は、回折光学素子、回折光学素子の製造方法および回折光学素子の製造方法に用いられる型に関する。
回折光学素子は、例えば、ガラスまたは樹脂により構成される光学材料からなる基体に、光を回折させる回折格子が設けられた構造を備える。回折光学素子は、撮像装置および光記録装置を含む種々の光学的機器の光学系に用いられている。回折光学素子としては、例えば、特定次数の回折光を1点に集めるように設計されたレンズ、空間ローパスフィルタ、または偏光ホログラムが知られている。
回折光学素子は、光学系をコンパクトにできるという特長を有する。また、屈折とは逆に長波長の光ほど大きく回折することから、回折光学素子と屈折を利用する通常の光学素子とを組み合わせることにより、光学系の色収差または像面湾曲を改善することも可能である。
回折光学素子の製造方法として、大面積成形性と高転写性とに優れたレプリカ成形法が知られている。特許文献1および2は、レプリカ成形法により、回折光学素子を含む複合型光学素子を製造する方法を開示している。
特許文献1に開示された方法においては、まず。複合型光学素子の樹脂層を成形するための光学有効部と、前記光学有効部外において、同心円状に配置された2つの土手と、土手の間に配置された溝とを備えた型を準備する。次に、この型に樹脂を滴下し、基板を2つの土手に突き当てながら加圧し、樹脂を硬化させた後、硬化した樹脂層と基板を一体として型から離脱させる。溝と外側の土手により、外側に向かう樹脂の流れが弱くなるため、光学有効部の未充填領域にむけて樹脂が回りこむ流れが大きくなる。したがって、型の光学有効部内に樹脂を不足なく充填し、型の外に樹脂があふれることを防ぐことができる。
特許文献2においては、成形面における光学有効成形面外に、光硬化性樹脂の樹脂厚の70%以上95%以下の高さを有する凸形状部を有する型を準備し、成形面に押圧充填された光硬化性樹脂を光硬化させ、ガラス基板と共に離型する方法を開示している。この方法により、成形樹脂の離型性を向上させることができ、生産の効率化とコストダウンとが可能となる。
一方、回折効率は理論的に光の波長に依存することから、特定の波長の光における回折効率が最適となるように回折光学素子を設計すると、その他の波長の光では回折効率が低下する。例えば、白色光を利用する光学系に回折光学素子を用いる場合、この回折効率の波長依存性によって、色むらまたは不要次数光によるフレアが生じる。白色光を利用する光学系としては、例えばカメラ用レンズが挙げられる。
そこで、特許文献3および4は、回折効率の波長依存性を低減する方法を開示している。特許文献3は、光学材料からなる基体の表面に回折格子を設け、基体と異なる光学材料からなる光学調整層で回折格子を覆うことによって、位相差型の回折光学素子を構成することを開示している。この回折光学素子によると、光学特性が所定の条件を満たすように2つの光学材料を選択することによって、設計した回折次数での回折効率を波長によらず高くする、つまり、回折効率の波長依存性を低減することができる。
回折光学素子を透過する光の波長をλとし、2種類の光学材料の波長λにおける屈折率をn1(λ)およびn2(λ)とし、回折格子の深さをdとすると、下記数式1を満たす場合、波長λの光に対する回折効率が100%となる。
Figure 0006364626
したがって、回折効率の波長依存性を低減するためには、使用する光の波長帯域内においてdがほぼ一定となるような波長依存性を持つ、屈折率n1(λ)の光学材料と屈折率n2(λ)の光学材料とを組み合わせればよい。一般的には、屈折率が高く波長分散の低い材料と、屈折率が低く波長分散の高い材料とが組み合わされる。特許文献3は、基体となる第1光学材料としてガラスまたは樹脂を用い、第2光学材料として紫外線硬化樹脂を用いることを開示している。
特許文献4は、同様の構造を有する位相差型の回折光学素子において、第1光学材料としてガラスを用い、第2光学材料として、粘度が5000mPa・s以下のエネルギー硬化型樹脂を用いることを開示している。この回折光学素子によると、回折効率の波長依存性を低減して、例えば、色むらおよび不要次数光によるフレア発生を有効に防止できる。
特開2012−232449号公報 特開2007−326330号公報 特開平10−268116号公報 特開2001−249208号公報
本開示は、光学調整層内部および/または基体と光学調整層の界面への気泡残留が抑制される、生産性および長期信頼性に優れた回折光学素子、その製造方法およびその製造方法に用いられる型を提供する。
本開示に係る回折光学素子は、回折格子の設けられた第1領域と第1領域の外側に位置する第2領域とを表面に有する基体と、第1領域と第2領域の少なくとも一部とに接するように表面上に設けられた光学調整層と、を有する。光学調整層のうち第2領域に接している部分の少なくとも一部に、光学調整層のうち第2領域に接している部分の最大膜厚よりも小さい膜厚を有する薄膜部分が設けられている。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システムまたは方法で実現されてもよく、素子、システム、装置および方法の任意な組み合わせで実現されてもよい。
本開示によると、光学調整層内部および/または基体と光学調整層の界面での気泡残留が抑制される、生産性および長期信頼性に優れた回折光学素子、その製造方法およびその製造方法に用いられる型を提供できる。
第1の実施の形態における回折光学素子の全体図である。 従来技術の回折光学素子の説明図である。 第1の実施の形態の回折光学素子の説明図である。 第2の実施の形態の回折光学素子の断面図である。 第2の実施の形態の回折光学素子の説明図である。 第3の実施の形態における回折光学素子の全体図である。 第1の実施の形態の回折光学素子を製造する方法の説明図である。 微細凹凸部の説明図である。
(本開示の基礎となった知見)
本願発明者は、特許文献3および4に開示された位相差型の回折光学素子において、特に基体および光学調整層の両方に樹脂を含む材料を用いる際に、有効領域内の光学調整層内に気泡が残留することを見出し、その制御要因について検討を行った。その結果、光学調整層の原料として60℃における粘度が1000Pa・s以下の材料を使用して従来の位相差型回折光学素子を作製した場合、基体表面上に形成された回折格子の凹部に気泡が残留したまま、光学調整層が形成される傾向が顕著であることを見出した。
光学調整層内に気泡が残留するメカニズムについて、発明者の見解を以下に説明する。位相差型の回折光学素子は一般的に、表面に回折格子を形成した基体と、非球面形状を規定する成膜型との間に光学調整層の原料を配置し、基体と成膜型との間に押圧力を印加することにより、光学調整層の原料が回折格子を含むキャビティを充填しながら流動し、有効領域内に配置されていく。しかし、光学調整層の原料として扱い易い上述の低粘度の材料を使用すると、押圧力の印加に際して光学調整層の原料が平滑な非球面形状を有する成膜型側に沿って優先的に流動してしまい、凹凸を有する回折格子には追従しない。この結果、回折格子の凹部には光学調整層の原料が充填されず、気泡として残留してしまうものと考えられる。
特に、基体および光学調整層の両方に樹脂を含む材料を用いた場合、樹脂の光学特性の選択範囲はガラスと比較して限定されることから、数式1より、回折格子の深さdが拡大される傾向にある。したがって、上述した気泡の残留がより発生しやすい状況となる。
このように有効領域内の光学調整層に気泡が残留すると、気泡により入射光が散乱されるため、光学特性が著しく低下する課題が生じていた。入射光が散乱されると、例えば、フレアの発生、ゴーストの発生、またはコントラストの低下が生じる。また、入射光の散乱が顕著な場合には、結像自体が不可能となる。また耐環境性の低下、例えば、残留した気泡を基点とした光学調整層のクラック発生も実際に生じていることが確認された。
一方、光学調整層の原料として60℃における粘度が1000Pa・s以上の高粘度の材料を使用した場合、先述した気泡の残留はそれ程発生しないことを、発明者は見出した。押圧力の印加に際して光学調整層原料が基体表面上の回折格子にも追従しながらキャビティ内をゆっくりと移動し、回折格子の凹部に存在した空気を有効領域外にまで押し出したため、気泡がそれ程残留していないものと考えられる。
このように高粘度材料を使用すると、残留気泡の面では利点があるが、生産性等の製造上の面で、課題が確認された。具体的には、光学調整層の原料を基体上へ安定して配置することが著しく困難であり、例えば、配置量不足により光学調整層が形成されない部分の発生、または配置量過剰による光学調整層形状不良により、回折光学素子の歩留まりが低下する課題が生じていた。また生産性が低下する課題、例えば、配置の際に光学調整層の原料の加熱が必要であるために配置自体にも長時間を要する点も生じていた。また、1Pa・s以下の低すぎる粘度では、例えば、光学調整層を形成してもレンズに実装すると結像しないという不具合を生じ、製造上問題があった。
なお、上記のメカニズムは、成膜型を使用して光学調整層の原料を基体上に配置する場合について例示したが、押圧力の印加により光学調整層の原料を回折格子に充填するプロセス、例えば、スクリーン印刷またはパッド印刷を用いる場合全般に適用されるものと考えられる。本願発明者は、上記の知見に基づき、以下に説明する技術的思想を考案するに至った。
(第1の実施形態)
以下、図面を用いて本開示による回折光学素子の第1の実施形態を説明する。
図1は第1の実施形態における回折光学素子101の構造を示しており、図1(a)は上面図、図1(b)は図1(a)のA−A’断面における断面図を示している。図1(b)に示すように、回折光学素子101は、基体102、光学調整層103を含んで構成されている。基体102は、第1樹脂を含む第1光学材料からなり、表面102aを有する。基体102の表面102aは第1領域105および第2領域106を含み、第1領域105には回折格子104が設けられている。光学調整層103は、第2樹脂を含む第2光学材料からなり、基体102の表面102aの第1領域105と、第2領域106の少なくとも一部とに接するように設けられている。光学調整層103の最外周に薄膜部分107が形成されている。薄膜部分107の膜厚は、光学調整層103のうち第2領域106に接している部分における光学調整層103の最大膜厚よりも小さい。本実施形態において、薄膜部分107の膜厚は、第2領域106のうち凹凸形状108が配置されていない平坦な面から、光学調整層103の基体102と反対側の表面103aまでの、光学調整層103の膜厚に相当する。
図2は、従来技術の回折光学素子の課題を説明するための図である。図2は、回折光学素子201において、成膜型211を使用して光学調整層の原料212を配置する際に、光学調整層の原料212が流動する状態を示している。図2(a)は成膜型211から押圧力の印加を受ける回折光学素子201全体の断面図である。図2(b)は図2(a)のB部を拡大した図である。図2(c)は、完成した回折光学素子201の断面図である。
上述のとおり、本願発明者は、位相差型の回折光学素子201の光学調整層203内部および/または基体202と光学調整層203との界面における気泡213の残留状態の制御要因について検討を実施した。その結果、本願発明者は、気泡213の残留は、押圧力の印加に際して光学調整層の原料212が平滑な曲面形状を有する成膜型211側に沿って優先的に流動してしまい、凹凸を有する回折格子204には追従しないために発生するという考えに、想到した。
一般的に、光学調整層の原料212が流動する成膜型211のキャビティの容積は、光学調整層の原料212の配置量のばらつきを吸収するため、光学調整層の原料212が実際に配置される量に対して余裕を持たせて設計される。すなわち、光学調整層の原料212が成膜型211のキャビティを完全に充填することはなく、キャビティの少なくとも一部において光学調整層の原料212は開放された状態をとる。
この状態において、光学調整層の原料212に印加された押圧力は、光学調整層の原料212がキャビティ内の開放領域214へ向かって流動することに優先的に寄与し、凹凸を有し流動抵抗の大きい回折格子204への充填に対しては十分に作用していないものと考えられる。特に、光学調整層の原料212の60℃における粘度が1000Pa・s以下である場合、回折格子204の形状への追従が間に合わないまま、光学調整層の原料212へ印加された押圧力の流動による開放が進行し、最終的に気泡213を残した状態にて光学調整層の原料212の流動が停止してしまう。
上記課題に対して、本願発明者は、図1に示すように、回折光学素子101の有効領域外である基体102の第2領域106上に設けられた光学調整層103の少なくとも一部に、第2領域106上における光学調整層103の最大膜厚と比較して膜厚の薄い薄膜部分107を形成することにより、有効領域内において光学調整層103内への気泡残留を効果的に抑制できることを見出した。
図3は、図1に示す本実施形態の回折光学素子101において、成膜型311を使用して光学調整層の原料312を配置する際に、光学調整層の原料312が流動する状態を示した図である。図3(a)は成膜型311から押圧力の印加を受けているときの回折光学素子101全体の断面図、図3(b)は図3(a)のC部を拡大した図である。
図3(a)に示すように、成膜型311には、第1領域105に対応する領域に曲面形状313と、第2領域106に対応する領域に薄膜部分107を形成するためのキャビティの領域320と、が設けられている。薄膜部分107に対応する成膜型311のキャビティの領域320は、他の領域と比較して光学調整層の原料312の流動抵抗が大きくなる。押圧力の印加により塑性流動した光学調整層の原料312がこの領域320に到達すると、抵抗の増大により流動速度が低下し、この領域320より内側に存在する光学調整層の原料312に対し、押し戻される方向の応力が発生する。この応力の作用により、光学調整層の原料312が充填できていなかった回折格子104側へ押し戻されることになり、回折格子104上に残留していた気泡は押しつぶされて消滅する。この結果、原料312に製造上扱い易い、粘度が1Pa・s以上1000Pa・s以下の材料を使用しても、光学調整層103内に気泡の残留がない回折光学素子101を形成することが可能となる。
薄膜部分107の最小膜厚は、以下の観点から、例えば第1領域105上における光学調整層103の最大膜厚に対して2%以上50%以下としてもよい。すなわち、第1領域105上における最大膜厚の50%を超えると、光学調整層の原料312に付与される応力が不足して回折格子104への充填が不十分となり得、光学調整層103内に気泡が残留し得る場合がある。一方、第1領域105上における最大膜厚の2%未満では、薄膜部分107を基点として離型時または使用環境において光学調整層103にクラックが発生し、歩留まりまたは長期信頼性の低下につながり得る。また、光学調整層の原料312の回折格子104への充填に必要な応力を、より大きく発生させるため、薄膜部分107の最小膜厚は、第1領域105上における光学調整層103の最大膜厚に対して2%以上20%以下としてもよい。また、薄膜部分107の最小膜厚は、第2領域106上における光学調整層103の最大膜厚に対して2%以上50%以下としてもよく、20%以下としてもよい。
図1においては、薄膜部分107は光学調整層103の最も外側の全周に形成されている。回折格子104の有効領域内全てに対し、光学調整層の原料312を充填するため必要な応力を十分に作用させることを考慮すると、薄膜部分107は、例えば光学調整層103の最外周のうち、円周方向の30%以上の領域にて形成される。また、50%以上の領域にて形成されてもよい。円周方向の30%未満の領域にしか薄膜部分107が形成されない場合、薄膜部分107が形成されない領域においては上述の応力が十分に得られず、結果として第1領域105上の光学調整層103内に気泡が残留し得る。50%以上の領域に薄膜部分107が形成される場合、気泡残留の抑制効果がより確実なものになる。
一方、薄膜部分107の半径方向の幅については、基体102の第2領域106上の少なくとも一部に形成されていれば、先に述べた回折格子104への充填に必要な応力が光学調整層の原料312に対して作用するため、特に限定されない。
次に基体102について説明する。まず基体102の構造を説明する。図1に示すように、基体102の表面102aの第1領域105には、回折格子104が設けられている。回折格子の深さdは、例えば2μm以上20μm以下の範囲内とする。本実施形態では、基体102の表面102aは、第1領域105においてレンズ作用を有する曲面を備えており、この曲面に、同心円形状を有する回折格子104が設けられている。
回折格子104の半径方向の断面における形状は、矩形、鋸歯状、段差状、曲面形状、フラクタル形状、およびランダム形状が一例として挙げられるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。回折格子104の配置パターンならびに配置ピッチも、回折光学素子101に要求される特性を満たすものであれば特に限定されない。
回折格子104の底部を通る包絡面102dは、例えば球面形状、非球面形状、またはシリンドリカル形状である。特に包絡面102dが非球面形状を有する場合、球面形状の場合には補正できない収差を補正することが可能になる。本実施形態では図1に示すように、包絡面102dは凸形状である。しかし、光学系における回折光学素子101に求められる機能に応じて、包絡面102dは凹形状あるいは平面形状であってもよい。
本実施形態においては、基体102の表面102aと反対側の表面102bは平坦であり、回折格子104の同心円形状の中心と一致する中心を有する曲面形状102cが設けられている。曲面形状102cは、屈折により光路を規定する機能を有し、その形状は回折光学素子101を含む光学系全体の設計に応じて決定される。本実施形態では図1に示すように、曲面形状102cは凹形状である。しかし、光学系における回折光学素子101に求められる機能に応じて、曲面形状102cは凸形状であってもよいし、あるいは表面102bに曲面形状102cを形成せず、平面形状としてもよい。
すなわち、基体102は、表面が球面形状または非球面形状を有することからレンズ作用を備えていてもよいし、表面が平坦であることからレンズ作用を備えなくてもよい。
なお、基体102は、本実施形態においては一方の表面102aにのみ回折格子104および光学調整層103を備えているが、一方の表面102aと他方の表面102bの両方に回折格子104を備えていてもよい。両面に回折格子104が設けられる場合、両面の回折格子104の深さおよび断面形状は同じでなくてもよい。両面における光学調整層103の各々の材料、および各々の厚みも同じである必要はない。
第2領域106は平坦形状をとってもよいし、図1に示すように凹凸形状108が形成されてもよい。この凹凸形状108の上に光学調整層103を配置することにより、基体102と光学調整層103との接触界面面積の増大に伴うアンカー効果が発現し、両者の密着性が増大する。凹凸形状108における凹凸の高さは、100nm以上10μm以下であってもよい。
凹凸形状108の形状は、図1においては鋸刃状の断面形状を示している。この形状は、基体102と光学調整層103との密着性が確保できる限りにおいては、特にこの形状に限定されない。矩形、三角形、または円弧状の断面形状を有する凹凸形状108を形成しても良いし、例えば、シボ加工形成またはサンドブラストによる粗面化をもって凹凸形状108としてもよい。特に鋸刃状の断面形状の凹凸形状108を形成することにより、基体102と光学調整層103との密着性がより確実なものとなる。
続いて基体102を構成する材料について説明する。基体102は、本実施形態においては、先述したように第1樹脂を含む第1光学材料からなる。第1光学材料として樹脂を含む材料を使用する利点は、一つにはレンズの生産において量産性の高い製造方法を適用することができる点である。また、樹脂を含む材料は成形または他の加工法により微細加工を実施することが容易であるため、回折格子104のピッチを小さくすることができ、これによって回折光学素子101の性能向上、小型化、および軽量化が実現できる。なお、基体102は、樹脂でない光学材料、例えば、ガラスから構成してもよい。
第1樹脂としては、光学素子の材料として一般に使用される透光性の樹脂材料の中から、回折光学素子101の設計次数mでの回折効率の波長依存性を低減可能な屈折率特性と波長分散性とを、使用する波長領域全体で有する材料を、下記数式2に基づいて選択できる。すなわち、第2の光学材料の屈折率n2(λ)および回折格子の深さdとの間で数式2の関係が成立する屈折率n1(λ)を有する材料である。このような材料であって、第2の光学材料に含まれる第2樹脂の原料であるモノマまたはオリゴマ、および/または溶媒に浸食されることなく、透光性、屈折率特性、かつ回折格子104の形状を保つ材料を選択することができる。
Figure 0006364626
例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、脂環式オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、およびシリコーン樹脂の中から適宜選択することができる。アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)および脂環式アクリル樹脂が挙げられる。
また、これらの樹脂に対し、例えば成形性もしくは機械特性を向上させる目的で他の樹脂を添加した共重合体樹脂、ポリマーアロイ、またはブレンドポリマーを用いてもよい。さらに、これらの樹脂中に、屈折率等の光学特性もしくは熱膨張性等の力学特性を調整するための無機粒子、または、特定の波長領域の電磁波を吸収する添加剤である染料もしくは顔料を必要に応じて添加してもよい。
特に第1樹脂として、例えばポリカーボネート系樹脂、脂環式オレフィン樹脂、およびポリエステル系樹脂に代表される熱可塑性樹脂を使用すると、基体102の製造において生産性に特に優れた射出成形を採用できる。この場合、第1樹脂の屈折率はある程度限定され、数式2から決定される回折格子深さdの低減にも限界が生じるが、本実施形態の構成により、回折格子深さdが深い状態であっても光学調整層103が回折格子104を不足なく充填できる。このため、光学特性および長期信頼性に優れた回折光学素子の提供が可能となる。
次に光学調整層103について詳細に説明する。光学調整層103は先述したとおり、回折光学素子101における回折効率の波長依存性を低減するために設けられる。表面の少なくとも一方に回折格子104を形成した基体102に光学調整層103を形成することにより位相型回折格子を構成する場合、ある波長λにおいてレンズの1次回折効率が100%となる回折格子深さdは数式1により与えられる。数式1の右辺がある波長領域においてほぼ一定値になれば、その波長領域内において1次回折効率の波長依存性がなくなる。そのためには、基体102を構成する第1光学材料と光学調整層103を構成する第2光学材料とを、低屈折率および高波長分散性を有する材料と高屈折率および低波長分散性を有する材料との組み合わせにより構成すればよい。
特に、波長400nm以上700nm以下.の可視光の全領域において、数式1における回折格子深さdがほぼ一定値となるような第1光学材料および第2光学材料の組合せを用いることによって、1次回折効率が可視光領域において波長に依存しない回折光学素子101が実現する。このような回折光学素子101を、例えばレンズとして撮像用途に適用すると、不要次数回折光に伴うフレア等の発生が抑制され画質が向上する。なお、可視光の全領域において、数式1における回折格子深さdを厳密に一定値とすることは実態としては困難である。第1光学材料と第2光学材料の屈折率が数式2を満足すれば、本開示の実施形態にかかる回折光学素子101としては、十分な光学特性を得ることができる。
光学調整層103は、回折格子104を完全に充填して平滑な表面形状を形成していれば、光学特性上は問題ない。光学調整層103の膜厚が極端に増大すると、レンズとして使用した場合にコマ収差等が増大するとともに、光学調整層103の形成時における第2光学材料の硬化収縮の影響が増大して表面形状の制御が困難となり、集光特性が低下する。以上の観点から、例えば光学調整層103の最大膜厚は、回折格子深さd以上200μm以下としてもよく、特に回折格子深さd以上100μm以下としてもよい。光学調整層103の最大膜厚は、光学調整層103の基体102と反対側の表面103aから、回折格子104の底部までの膜厚に相当する。
光学調整層103の基体102と反対側の表面103aは、例えば回折格子104の底部を通る包絡面102dとほぼ同じ形状を有するように形成する。これにより、屈折作用と回折作用との組み合わせにより、例えば色収差および像面湾曲がバランスよく改善され、MTF(Modulation Transfer Function)特性が向上した高い撮像性能を有するレンズを得ることが可能となる。
光学調整層103は、光学調整層の原料の配置量不足、および/または基体102からの浮き上がりもしくは剥離に伴う光学特性の劣化を抑制するため、基体102の表面102aの第1領域105のみならず、第2領域106の少なくとも一部を覆うように形成される。
続いて光学調整層103を構成する材料について説明する。光学調整層103は、本実施形態において第2樹脂を含む第2光学材料からなる。第2光学材料は先に述べたように数式2を満たしうるための屈折率特性を有するものの中から、例えば、基体102の表面102aの第1領域105に対する非浸食性、形状制御性、製造工程における取扱い性、および耐環境性を考慮して選択される。
第2樹脂の種類については特に制限はないが、例えば、ポリメタクリル酸メチル、アクリレート、メタクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂;エポキシ樹脂;オキセタン樹脂;エン−チオール樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリカプロラクトン等のポリエステル樹脂;ポリスチレン等のポリスチレン樹脂;ポリプロピレン等のオレフィン樹脂;ナイロン等のポリアミド樹脂;ポリイミドおよびポリエーテルイミド等のポリイミド樹脂;ポリビニルアルコール;ブチラール樹脂;酢酸ビニル樹脂;脂環式ポリオレフィン樹脂等を用いることができる。また、これらの樹脂の混合体または共重合体を用いてもよいし、これらの樹脂を変性したものを用いてもよい。
これらの中でも特に、熱硬化型樹脂、エネルギー線硬化型樹脂などのエネルギー硬化型樹脂を第2樹脂として用いることにより、光学調整層103を形成する工程が簡易となる。具体的には、第2樹脂として、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、シリコーン樹脂、エン−チオール樹脂等が挙げられる。
樹脂材料はその組成上、ガラスと比較して、屈折率およびその波長分散が大きく異なる材料を選択することが難しい。つまり、数式2を満たす第1樹脂を含む第1光学材料および第2樹脂を含む第2光学材料の組み合わせの数は少ない。この問題を解決するため、マトリクス材となる樹脂に無機粒子を分散させたコンポジット材料を第2光学材料として使用することができる。
マトリクス材に分散させる無機粒子の種類、量、または大きさによって、第2光学材料の屈折率およびアッベ数を微調整することが可能となる。これにより、数式2を満たす第1光学材料および第2光学材料の組み合わせの候補を増やすことができるとともに、樹脂を単独で使用する場合より基体102との屈折率差を拡大することができる。このため、数式2から明らかなように、回折格子深さdを小さくすることができ、光学調整層103として必要な膜厚も小さくなり透光性が改善されるとともに、回折格子104の側面部分を通過する光が低減される。また、第1光学材料および第2光学材料がより高い精度で数式2を満たすようにできるため、回折光学素子101の回折効率をより向上させることができる。以上の結果、撮影画像上のフレア発生およびコントラスト低下が改善される。さらに、第2樹脂としても様々な物性を有する材料を使用することが可能となり、光学特性と、機械特性、耐環境性、または製造工程における取扱い性との両方を満足する第2光学材料の組成選択の幅が広くなる。
基体102に第1樹脂を含む第1光学材料を用い、光学調整層103としてコンポジット材料を第2光学材料として用いる場合、一般に無機粒子は樹脂より高屈折率であることが多い。このため、コンポジット材料が高屈折率および低波長分散性を示すよう調整することで、無機粒子、第1樹脂および第2樹脂として選択し得る材料が多くなる。
コンポジット材料によって構成される第2光学材料の屈折率は、マトリクス材となる第2樹脂および無機粒子の屈折率から、例えば下記数式3にて表されるマックスウェル−ガーネット理論により推定できる。数式3よりd線(587.6nm)F線(486.1nm)C線(656.3nm)における屈折率をそれぞれ推定することにより、さらにコンポジット材料のアッベ数を推定することも可能である。逆にこの理論に基づく推定から、マトリクス材となる第2樹脂と無機粒子との混合比を決定してもよい。
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なお、数式3において、nCOMλはある特定波長λにおけるコンポジット材料の平均屈折率であり、npλ、nmλはそれぞれこの波長λにおける無機粒子およびマトリクス材となる第2樹脂の屈折率である。Pは、コンポジット材料全体に対する無機粒子の体積比である。無機粒子が光を吸収する場合または無機粒子が金属を含む場合には、数式3の屈折率を複素屈折率として計算する。
先述したとおり、第2光学材料としてコンポジット材料を使用する場合、コンポジット材料には高屈折率かつ低波長分散性が要求される。そこで、コンポジット材料中に分散させる無機粒子についても、低波長分散性、すなわち高アッベ数の材料を主成分としてもよい。例えば、酸化ジルコニウム(アッベ数:35)、酸化イットリウム(アッベ数:34)、酸化ランタン(アッベ数:35)、アルミナ(アッベ数:76)、シリカ(アッベ数:68)、酸化ハフニウム(アッベ数:32)、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)(アッベ数:52)および酸化スカンジウム(アッベ数:27)からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化物を主成分とすることができる。また、これらの複合酸化物を用いてもよい。さらにこれらの無機粒子に加えて、例えば酸化チタンおよび酸化亜鉛等に代表される高屈折率を示す無機粒子等を共存させても、コンポジット材料である第2光学材料の屈折率が使用する波長領域において数式2を満たしていれば差し支えない。
コンポジット材料中における無機粒子の中心粒径は、例えば1nm以上100nm以下とする。中心粒径が100nm以下であれば、レイリー散乱による損失を低減させ、光学調整層103の透明性を高くすることができる。また、中心粒径が1nm以上であれば、量子効果による発光等の影響を抑制することができる。コンポジット材料中には、必要に応じて、無機粒子の分散性を改善する分散剤、または重合開始剤、レベリング剤等の添加剤を含有してもよい。
コンポジット材料を第2光学材料として用いて光学調整層103を形成する場合、形成工程内においては溶媒を共存させても良い。コンポジット材料に含まれる溶媒は、無機粒子を第2樹脂中で分散させやすくしたり、粘度を調整して取り扱い性を改善したりするために使用される。溶媒の種類については、無機粒子の分散性、コンポジット材料のマトリクス材となる樹脂の溶解性、製造工程における取扱い性等の必要とされる特性を満たすものを選定すればよい。製造工程における取扱い性としては、例えば、基体への濡れ性、または沸点もしくは蒸気圧により表される乾燥の容易性が挙げられる。
以上のように構成される本実施形態の回折光学素子によれば、光学調整層の少なくとも一部に設けられた薄膜部分の作用により、製造工程において扱いやすい低粘度の光学調整層原料を使用しても、回折光学素子の有効領域内において、光学調整層内部および/または基体と光学調整層との界面への気泡残留が抑制される。その結果、気泡による入射光散乱に伴う光学特性低下のない回折光学素子を得ることができる。そして、環境の変化または長期の使用に伴い、残留した気泡を起点として発生する光学調整層のクラックを防止できる。更には、これらにより、回折光学素子の長期信頼性を高めることができる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1に示すとおり薄膜部分107として光学調整層103の表面形状に凹部が形成された形態をとっている。しかしながら、薄膜部分107は、必ずしもこの形態に限定されるものではない。例えば、図4のように、基体102の第2領域106の表面の一部に、薄膜部分107に対応した凸部401が形成された形態をとっても差し支えない。
また、図1および図4においては、薄膜部分107とその周辺の光学調整層との接続部分について、半径方向の断面における形状は段差状をとっているが、必ずしもこの形態に限定されるものではない。図5(a)、(b)は成膜型311a、311bから押圧力の印加を受けているときの回折光学素子の一部を拡大した図である。例えば図5(a)、(b)のように、薄膜部分107とその周辺の光学調整層との接続部分について、半径方向の断面における形状が、円弧状、または明確な段差のないスロープ状を呈しても差し支えない。
また、第2領域106上における、薄膜部分107以外の光学調整層103の膜厚については、特に限定されない。略一定であってもよいし、密着性向上または過剰に配置された光学調整層の原料の格納等の目的により適宜凹凸が発生していても差し支えない。
更に、図4に示すように、基体102は表面102aの第2領域106のさらに外側に第3領域402を備えていてもよい。この場合、第3領域402は、少なくとも一部が平坦としてもよい。第3領域402は、回折光学素子101をモジュールに実装する際、第3領域402を、実装のための保持部として使用することができる。また、第3領域402を、モジュールの構成部品間の実装精度を確保したり、フォーカス位置を調整したりするための基準面として使用してもよい。
第3領域402を、実装時の基準面として使用する場合、たとえば第3領域402の表面粗さRaは1.6μm以下とする。第3領域402の形状および大きさは、回折光学素子101が組み込まれるモジュールまたは機器によって要求される要件等により適宜決定されるものであり、本実施形態において特に限定されるものではない。
(第3の実施の形態)
以下、回折光学素子の第3の実施形態を説明する。図6は第3の実施形態である回折光学素子601の構造を示している。図6(a)は上面図、図6(c)は図6(a)のD−D’断面における断面図、図6(b)は図6(c)に対応する成膜型311cの断面図を示している。
図6に示すように、回折光学素子601は、基体102、および光学調整層103を含んで構成されている。光学調整層103の一部に、基体102の第1領域105に対して同心円状に薄膜部分107が形成され、そのさらに外周にも光学調整層103が形成されている点で第1の実施形態と異なっている。回折光学素子101の他の構成は第1の実施形態と同じである。
第3の実施形態である回折光学素子601においても、第1の実施形態と同様、薄膜部分107に対応する、成膜型311のキャビティ領域320c内の凸部322に光学調整層の原料312が到達すると、抵抗の増大により流動速度が低下し、この領域より内側に存在する光学調整層の原料312に対し、押し戻される方向の応力が発生する。この応力の作用により、光学調整層103内に気泡の残留がない回折光学素子601を形成することが可能となる。
第3の実施形態においては、薄膜部分107のさらに外周にも光学調整層103が形成される。この外周部分の光学調整層103にて、光学調整層の原料の配置量ばらつきを吸収させる構成とすることにより、薄膜部分107を確実に形成することが可能となる。
薄膜部分107の幅については、光学調整層の原料312に対する流動抵抗を発現させる目的から、例えば0.02mm以上とし、0.05mm以上としてもよい。上限値については、回折光学素子601全体および有効領域の大きさまたは形状により決定されるもので、特に限定されない。
以上のように構成される本実施形態の回折光学素子によれば、第1の実施形態と同様、光学調整層の少なくとも一部に設けられた薄膜部分の作用により、製造工程において扱いやすい低粘度の光学調整層原料を使用しても、回折光学素子の有効領域内において、光学調整層内部および/または基体と光学調整層の界面への気泡残留が抑制される。その結果、光学特性および長期信頼性に優れた回折光学素子を得ることができる。
(第4の実施形態)
次に図7を参照しながら、第1の実施形態の回折光学素子を製造する方法の一例を説明する。以下に説明する製造方法は、第2、第3の実施形態についても同様に適用できる。
まず、図7(a)に示すように、表面102aに回折格子104が形成された基体102を用意する。基体102は、例えば第1樹脂を含む第1光学材料を用いて、表面102aに回折格子104が形成され、成形される。先述したように、基体102の表面は球面形状または非球面形状を有し、レンズ作用を備えていてもよいし、平坦であってよい。第1領域105の回折格子104、ならびに必要に応じて第2領域106に形成する凸部401および/または凹凸形状108は、その形状と基体102の材質とに応じた方法、例えば成形、転写、切削、研削、研磨、レーザー加工、またはエッチングで形成することができる。
基体102が第1樹脂を含む第1光学材料によって構成される場合、射出成形等の成形プロセスを用いて、回折格子104、凸部401および/または凹凸形状108が形成された基体102を一体的に形成することが非常に簡便である。これにより、生産性を大きく向上することができる。あるいは、成形プロセスにより、回折格子104が形成された基体102を一体的に形成し、第2領域106上の凸部401および/または凹凸形状108のみを、バイトなどを用いた切削によって形成してもよい。基体102が第1樹脂を含む第1光学材料によって形成されているため、このような方法によっても容易に凸部401および/または凹凸形状108を形成することができる。
特に本開示の実施形態にかかる回折光学素子101において、後で述べるように光学調整層103を成形にて形成する場合、薄膜部分107を形成する際に、薄膜部分107より内側、すなわち光軸側に位置する光学調整層の原料312に印加される押圧力が高まると考えられる。この際、光学調整層の原料312が成膜型311に圧接される応力も高まり、その結果、薄膜部分107を形成しない場合と比較して、成膜型311の離型時に要する応力が増大、すなわち離型性が低下する。基体102と光学調整層103との密着性が低いと、この離型時に光学調整層103の基体102からの剥離が発生し、回折光学素子101の光学特性および歩留まりの低下につながることから、本開示の実施形態にかかる回折光学素子101においては、基体102の第2領域106上に凹凸形状108を形成し、両者の密着性を高めてもよい。
成形により一体的に基体102を作製する場合、型加工が容易であり、また、加工精度の高い回折格子104を形成するため、たとえば回折格子104の深さは20μm以下とする。回折格子104の深さが数十μmを越える場合、型を高い精度で加工することが困難となる。これは、一般に型はバイトを用いた切削により形状加工が行われるが、回折格子104が深くなると加工量が増え、バイト先端が磨耗するため、加工の進行に伴って加工精度が劣化するからである。また、回折格子104が深くなるとピッチを狭くすることが困難となる。これは、回折格子104が深くなると先端の曲率半径の大きなバイトで成膜型を加工する必要があり、その結果、ある程度ピッチを広げないと回折格子104の加工ができなくなるためである。これらのことから、回折格子104が深いほど設計自由度がなくなり、回折格子104の導入による収差低減効果が得られなくなってしまう。
続いて、図7(b)に示すように、用意された基体102に対し、光学調整層の原料312を配置する。本実施形態においては、第2樹脂の原料を含む光学調整層の原料312を用意し、回折格子104を完全に覆い、かつ基体102の第2領域106上に薄膜部分107が形成されるように、光学調整層の原料312を基体102上に配置する。
光学調整層の原料312を基体102上に配置する方法は、粘度等の材料特性および回折光学素子101に要求される光学的特性から決定される光学調整層103の形状精度に応じて、公知のコーティング層形成プロセスから適宜選択される。具体的には、ディスペンサ等の注液ノズルを用いた塗布、インクジェット法等の噴射塗布、スクリーン印刷またはパッド印刷等のスキージングによる塗布、転写または成膜型を使用した各種成形法、スピンコーティング法等の回転による塗布等の方法を用いることができる。これらのプロセスを適宜組み合わせてもよい。先述したプロセスの中でも特に、押圧力の印加により回折格子104を不足なく充填し、かつ光学調整層103の表面形状を平滑に規定する観点から、成形、パッド印刷、スクリーン印刷のいずれかの方法またはこれらを組み合わせた方法を用いてもよい。
本実施形態では、図7(b)に示すように、ディスペンサ704を用いて光学調整層の原料312を基体102上に配置した後、図7(c)に示すように、成膜型311を基体102に設置する工程を示している。なお、図7に示す例とは逆に、光学調整層の原料312を成膜型311上に配置した後、基体102を成膜型311に設置する工程に置き換えても良い。
成膜型311を用いた成形により光学調整層の原料312を配置する場合、成膜型311が、基体102の第2領域106に相対する部分に凸部703を有することにより、光学調整層103に薄膜部分107を形成することが可能となる。なお、基体102に凸部401、401aを設けて、対応する薄膜部分107を形成してもよい。
光学調整層の原料312の粘度については、例えば60℃において1000Pa・s以下とする。この場合、光学調整層内部および/または基体と光学調整層との界面への気泡残留の抑制が顕著に観測され、高い生産性が期待できる。60℃における粘度が1000Pa・sを超えると、基体102上への配置が困難となり、タクトタイムの長時間化または歩留まりの低下を生じる可能性がある。また、下限は例えば60℃において1Pa・s以上とする。光学調整層の原料312の粘度が60℃において1Pa・s未満で光学調整層103を形成すると、これを実装したレンズを用いて画像撮影を行っても結像しない、といった不具合が生じる可能性がある。このような場合、光学調整層内部および/または基体と光学調整層との界面に気泡が残留し得る。
成膜型311の作製にあたり、図8に示すように、薄膜部分107に対応する凸部703とともに、基体102の第2領域106に対応する領域の少なくとも一部に、薄膜部分107より微細な微細凹凸部705を形成してもよい。成形により光学調整層の原料312を配置する場合、先に述べたように、薄膜部分107の形成に伴って離型性の低下が見られることがある。成膜型311の、基体102の第2領域106に対応する領域の少なくとも一部に微細凹凸部705を形成することにより、第2光学材料の原料と成膜型311との接触面積が低減される。その結果、薄膜部分107を形成した本開示の実施形態にかかる回折光学素子においても、成膜型311の離型が容易になり、光学調整層103の剥離に伴う光学特性または歩留まりの低下を抑制することが可能となる。
微細凹凸部705の形状は、上記の目的を達成するものであれば特に限定されない。例えばシボ形状、矩形溝、鋸歯状溝、ピット形状等を採用することができる。矩形溝または鋸歯状溝を、光学中心を中心とした同心円状またはらせん状に配置すれば、成膜型311の作製時に、有効領域に相当する非球面形状および凸部703と同時に、切削加工により、微細凹凸部705を形成することが可能である。
微細凹凸部705の凹凸の大きさは、薄膜部分107より粗くなると、薄膜部分107の作用が見られなくなる。薄膜部分107より微細である分には特に限定されないが、例えば溝形状であれば深さが1μm以上15μm以下、ピッチが1μm以上30μm以下の範囲内にて設定すれば、先に述べた離型性の改善効果を発現させることができる。
その後、エネルギー硬化型樹脂を第2樹脂に用いる場合には、これらの原料を含む光学調整層の原料312を硬化させる工程を行う。第2樹脂の原料を硬化させることにより、光学調整層の原料312全体が硬化し、光学調整層103が形成される。これにより、図7(d)に示すように、回折格子104を有する基体102の表面に光学調整層103が設けられた回折光学素子101が完成する。
硬化の方法は、使用する第2樹脂の種類に応じて、熱硬化またはエネルギー線照射等の工程を用いることができる。硬化工程に使用するエネルギー線としては、たとえば、紫外線、可視光線、赤外線、電子線等が挙げられる。紫外線硬化を実施する場合には、光学調整層の原料312にあらかじめ光重合開始剤を添加しておいてもよい。電子線硬化を実施する場合には重合開始剤は通常必要ない。
本開示の実施形態によれば、製造工程において扱いやすい粘度を有する光学調整層原料を使用しても、回折光学素子の有効領域内において、光学調整層内部および/または基体と光学調整層の界面への気泡残留が抑制される。したがって、前記光学調整層原料の前記基体への配置が容易であり、かつ成膜型からの離型時に、残留した気泡を起点として発生する光学調整層のクラックを防止できるため、生産性に優れた回折光学素子の製造方法を実現できる。
以下、本開示の実施形態による効果を確認するために、回折光学素子を作製し、特性を評価した結果を説明する。
(実施例1)
実施例1の回折光学素子を以下に説明するように作製した。まず基体102として、ビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂(直径6.0mm、厚さ0.8mm、d線屈折率1.585、アッベ数30)製の非球面レンズの一面に深さ15μmの輪帯状の回折格子104を設けたものを、射出成形により作製した。レンズ部の有効半径は1.4mmであり、輪帯数は16本である。最小輪帯ピッチは15μmであり、回折面の近軸R(曲率半径)は1.37mmであった。
次に光学調整層の原料312を作製した。アクリレートモノマ混合物(d線屈折率1.530、アッベ数50、硬化後の密度1.14g/cm)、光重合開始剤イルガキュア(IRGACURE)(登録商標)184(モノマ混合物に対して3重量%)、酸化ジルコニウムフィラー(中心粒径6nm)のイソプロピルアルコール分散液(全固形分35.6重量%)を調合した後、ロータリーエバポレータによりイソプロピルアルコールを70℃にて30分間減圧除去した。得られた第2光学材料の原料の硬化前の粘度は80Pa・s(25℃)、2.7Pa・s(60℃)であり、d線屈折率は1.626、アッベ数は46であった。
続いて、光学調整層の原料312を配置する成膜型311を作製した。スタバックス(STAVAX)(登録商標)上にニッケルめっき(膜厚100μm)を施した成膜型ベース上に、基体の第1領域に対応する非球面形状、基体の第2領域に対応する形状、および光学調整層103の薄膜部分107に対応する凸部703を、ダイヤモンドバイトを使用した切削加工により形成した。非球面形状の最大膜厚は30μmとした。凸部703は非球面形状に対して同心円状に形成し、非球面形状の最外端から凸部703の最内端までの距離は0.6mm、凸部703の幅は0.35mm、高さは30μmとした。
光学調整層の原料312を30℃に加熱し、ディスペンサを用いて基体102の第1領域105の略中心部に0.3μLを配置した。光学調整層の原料312の配置に要する時間は1秒以内であった。続いて成膜型311を、配置された光学調整層の原料312に対向させて設置し、押圧(6kgf)により光学調整層の原料312を非球面形状に成形した。その後、成形された光学調整層の原料312に紫外線照射(照度500mW/cm、積算光量15000mJ/cm)を行って硬化させ、光学調整層103を形成した。その後成膜型311から離型し、図1に示す構成の回折光学素子101を得た。
得られた回折光学素子101は、光学調整層103の最外周部分が成膜型311の凸部703に到達する形で薄膜部分107を形成していた。回折光学素子101の断面を光学顕微鏡にて観察したところ、薄膜部分107の膜厚は3μmであった。
実施例1の回折光学素子101は、有効領域内の光学調整層103に気泡は観察されなかった。本回折光学素子を実装したレンズ(VGA相当、F2.8)を用いて画像撮影を行ったところ、迷光に伴う顕著なフレア光の発生およびコントラストの低下はなく、良好な画像が得られた。また、本回折光学素子に対して高温高湿試験(85℃85%RH、1000時間)を実施したところ、光学調整層103にクラックは発生せず、良好な耐環境性を示した。
(実施例2)
実施例1と同様の方法により実施例2の回折光学素子601を作製した。実施例1と異なるのは、成膜型311について、凸部703の幅を0.2mmとした点、離型後の光学調整層103の最外周部分が薄膜部分107のさらに外側まで到達した点である。実施例2の回折光学素子601の断面を光学顕微鏡にて観察したところ、薄膜部分107の膜厚は5μmであった。
実施例2の回折光学素子601は、有効領域内の光学調整層103に気泡は観察されなかった。本回折光学素子を実装したレンズを用いて画像撮影を行ったところ、迷光に伴う顕著なフレア光の発生およびコントラストの低下はなく、良好な画像が得られた。また、本回折光学素子に対して高温高湿試験(85℃85%RH、1000時間)を実施したところ、光学調整層103にクラックは発生せず、良好な耐環境性を示した。
(比較例1)
比較例1の回折光学素子は、光学調整層の原料の配置量が0.1μLである。比較例1は、薄膜部分が形成されない点で実施例1と異なる。
比較例1の回折光学素子は、有効領域内の光学調整層中に、直径10μmを超える気泡が複数確認された。本回折光学素子を実装したレンズを用いて画像撮影を行ったところ、気泡により入射光が散乱され、フレアが発生した。また、高温高湿試験(85℃85%RH)を実施したところ、200時間経過時点にて、気泡を起点として光学調整層にクラックが発生した。
(比較例2)
比較例2の回折光学素子は、光学調整層の原料の硬化前の粘度が700Pa・s(60℃)である点、第2光学材料の原料を基体に配置する際の加熱温度が60℃である点、および、光学調整層の原料の配置量が0.1μLである。比較例2は、薄膜部分が形成されない点で実施例1と異なる。第2光学材料の原料0.1μLを基体に配置する工程に要した時間は5秒であった。
比較例2の回折光学素子においても、比較例1と同様に、有効領域内の光学調整層中に直径10μmを超える気泡が複数確認された。本回折光学素子を実装したレンズを用いて画像撮影を行ったところ、気泡により入射光が散乱され、フレアが発生した。
(まとめ)
以上の記載には、以下の実施形態が開示されている。
(1)本開示の回折光学素子101,601は、回折格子104の設けられた第1領域105と第1領域105の外側に位置する第2領域106とを表面に有する基体102と、第1領域105と第2領域106の少なくとも一部とに接するように表面上に設けられた光学調整層103と、を有する。光学調整層103のうち第2領域106に接している部分の少なくとも一部に、光学調整層103のうち第2領域106に接している部分の最大膜厚よりも小さい膜厚を有する薄膜部分107が設けられている。
本開示の構成によると、光学調整層103内部および/または基体102と光学調整層103との界面での気泡残留が抑制される、生産性および長期信頼性に優れた回折光学素子を提供できる。
気泡残留の抑制により、気泡による入射光散乱が抑制され、ゴースト・フレアまたはコントラスト低下の発生がない良好な光学特性を有する回折光学素子を得ることができる。また、光学調整層の原料の基体への配置が容易であり、かつ成膜型からの離型時に、残留した気泡を起点として発生する光学調整層のクラックを防止できるため、生産性に優れた回折光学素子の製造方法を実現できる。さらに、環境の変化や長期の使用により、残留した気泡を起点として発生する光学調整層のクラックを防止できるため、回折光学素子の長期信頼性を高めることができる。
(2)薄膜部分107は、光学調整層103のうち第2領域106に接している部分の最大膜厚に対して2%以上50%以下の膜厚を有してもよい。
この構成によると、光学調整層103内部および/または基体102と光学調整層103との界面での残留気泡を、より顕著に抑制できる。
薄膜部分107は、光学調整層103のうち第2領域106に接している部分の最大膜厚に対して2%以上20%以下の膜厚を有してもよい。
この構成によると、光学調整層103内部および/または基体102と光学調整層103との界面での残留気泡を、より顕著に抑制できる。
(3)薄膜部分107は、光学調整層103の最も外側に設けられていてもよい。
(4)(1)、(2)の構成において、薄膜部分107は、第1領域105の外側に同心円状に設けられてもよい。
(5)(1)から(4)の構成において、薄膜部分107は、第2領域106に接して設けられた光学調整層103の表面形状の凹みによって設けられてもよい。
この構成によると、薄膜部分107のさらに外周にも光学調整層103が形成され、光学調整層103の原料の配置量ばらつきがこれに吸収されることにより、薄膜部分107を確実に形成することが可能となる。
(6)(1)から(4)の構成において、基体102の第2領域106の少なくとも一部に、薄膜部分107に対応した位置に凸部401が設けられてもよい。
この構成によると、基体の凸部401によって薄膜部分107を形成し、光学調整層103における気泡の残留を抑制できる。
(7)(1)から(6)の構成において、基体102の第2領域106の少なくとも一部に、凹凸形状108が設けられてもよい。
この構成によると、基体102と光学調整層103との接触界面面積の増大に伴うアンカー効果が発現し、両者の密着性が増大する。
(8)(1)から(7)の構成において、基体102の第2領域106に接して設けられた光学調整層103の表面形状の少なくとも一部に、薄膜部分107の膜厚より微細な凹凸形状706が設けられてもよい。
この構成によると、光学調整層103と成膜型311との接触面積が低減される。その結果、薄膜部分107を形成した本開示の回折光学素子においても、成膜型311の離型が容易になり、光学調整層103の剥離に伴う光学特性および歩留まりの低下を抑制することが可能となる。
(9)(1)から(8)の構成において、回折格子104の深さが2μm以上20μm以下の範囲内にあってもよい。
(10)(1)から(9)の構成において、基体102は、第1樹脂を含む第1光学材料からなるものでもよい。
この構成によると、回折格子104のピッチを小さくすることができるなど、成形または他の加工法により微細加工を実施することが容易となる。
(11)(1)から(10)の構成において、光学調整層103は、第2樹脂を含む第2光学材料からなるものでもよい。
(12)(10)の構成において、第1樹脂は熱可塑性樹脂でもよい。
この構成によると、基体102の製造において生産性に特に優れた射出成形を採用できる。
(13)(11)の構成において、第2樹脂はエネルギー硬化型樹脂であってもよい。
(14)(11)、(13)の構成において、第2光学材料は、無機粒子をさらに含み、無機粒子が第2樹脂中に分散していてもよい。
この構成によると、第2光学材料の屈折率およびアッベ数を微調整することが可能となる。そのため、数式2を満たす第1光学材料および第2光学材料の組み合わせの候補を増やすことができるとともに、樹脂を単独で使用する場合より基体102との屈折率差を拡大することができる。
(15)(10)の構成において、基体は、熱硬化性樹脂およびエネルギー硬化型樹脂を含まなくてもよい。
(16)(10)の構成において、基体は、実質的に熱可塑性樹脂からなるものでもよい。
(17)本開示の回折光学素子の製造方法は、回折格子104の設けられた第1領域105と第1領域105の外側に位置する第2領域106とを表面に有する基体102を用意する工程と、基体102の表面上に、光学材料の原料312を配置する工程と、原料312が第1領域105と第2領域106の少なくとも一部とを覆うように、原料312を押圧する工程と、原料312を硬化させることにより、光学材料からなる光学調整層103を形成する工程と、を包含する。押圧する工程において、光学調整層103のうち第2領域106に接している部分の少なくとも一部に、光学調整層103のうち第2領域106に接している部分の最大膜厚よりも小さい膜厚を有する薄膜部分107を形成する。
本開示の構成によると、光学調整層103内部および/または基体102と光学調整層103との界面への気泡残留が抑制される、生産性および長期信頼性に優れた回折光学素子を製造できる。
(18)(17)の構成において、薄膜部分107の膜厚が、光学調整層103のうち第2領域106に接している部分の最大膜厚に対して2%以上50%以下であってもよい。
この構成によると、光学調整層103内部および/または基体102と光学調整層103との界面での残留気泡を、より顕著に抑制できる。
(17)の構成において、薄膜部分107の膜厚が、光学調整層103のうち第2領域106に接している部分の最大膜厚に対して2%以上20%以下であってもよい。
この構成によると、光学調整層103内部および/または基体102と光学調整層103との界面での残留気泡を、より顕著に抑制できる。
(19)(17)、(18)の構成において、押圧する工程において、第1領域105に対応する領域に曲面形状313が設けられ、第2領域106に対応する領域の少なくとも一部に凸部322,703が設けられた型を使用し、前記型の凸部に対応して前記薄膜部分を形成してもよい。
この構成によると、型の凸部322,703によって薄膜部分107を形成し、光学調整層103における気泡の残留を抑制した回折光学素子を製造できる。
(20)(17)、(18)の構成において、基体102の第2領域106の少なくとも一部に凸部401が設けられており、押圧する工程において、基体の凸部401に対応して薄膜部分107を形成してもよい。
この構成によると、基体の凸部401によって薄膜部分107を形成し、光学調整層103における気泡の残留を抑制した回折光学素子を製造できる。
(21)(17)から(20)の構成において、基体102は、第2領域106の少なくとも一部に凹凸形状108が設けられているものであってもよい。
この構成によると、基体102と光学調整層103との接触界面面積の増大に伴うアンカー効果が発現し、両者の密着性が増大する。
(22)(20)、(21)の構成において、型の、第2領域106に対応する領域の少なくとも一部に、薄膜部分107の膜厚より微細な凹凸形状が設けられてもよい。
この構成によると、光学調整層103と成膜型311との接触面積が低減される。その結果、薄膜部分107を形成した本開示の回折光学素子においても、成膜型311の離型が容易になり、光学調整層103の剥離に伴う光学特性および歩留まりの低下を抑制することが可能となる。
(23)(17)から(22)の構成において、光学材料の原料312はエネルギー硬化型樹脂を含み、光学調整層103を形成する工程において、原料312にエネルギーを付与して硬化させてもよい。
(24)(23)の構成において、配置する工程において、光学材料の原料の60℃における粘度が1Pa・s以上1000Pa・s以下のものであってもよい。
この構成によると、製造工程において扱いやすく、一般的に用いられる粘度の光学調整層103原料を用いて、回折光学素子の有効領域内において光学調整層103内部および/または基体102と光学調整層103との界面への気泡残留が抑制できる。
(25)本開示の型は、(1)の回折光学素子の製造に用いられる型であって、第1領域105に対応する領域に曲面形状313が設けられ、前記第2領域106に対応する領域の一部に凸部322,703が設けられる。
本開示の構成によると、光学調整層103内部および/または基体102と光学調整層103との界面への気泡残留が抑制される、生産性および長期信頼性に優れた回折光学素子を製造する型を提供できる。
本開示にかかる回折光学素子は、例えば、撮像レンズとして携帯電話用、車載用、監視用、画像センシング用等のカメラモジュールに利用可能である。本開示にかかる回折光学素子は、撮像レンズ以外に、例えば、空間ローパスフィルタ、偏光ホログラム等にも利用可能である。
101,201,601 回折光学素子
102,202 基体
102a,102b,103a 表面
102c,313 曲面形状
103,203 光学調整層
104,204 回折格子
105 第1領域
106 第2領域
107 薄膜部分
108,706 凹凸形状
211,311,311a,311b,311c 成膜型
212,312 原料
322,401,703 凸部
704 ディスペンサ

Claims (18)

  1. 回折格子の設けられた第1領域と、前記第1領域の外側に位置する第2領域と、を表面に有する基体と、
    前記第1領域と、前記第2領域の少なくとも一部と、に接するように前記表面上に設けられた光学調整層と、を有し、
    前記光学調整層のうち前記第2領域に接している部分の少なくとも一部に、前記光学調整層のうち前記第2領域に接している部分の最大膜厚よりも小さい膜厚を有する薄膜部分が設けられ
    前記基体の前記第2領域に接して設けられた前記光学調整層の表面形状の少なくとも一部に、前記薄膜部分の膜厚より微細な凹凸形状が設けられている、回折光学素子。
  2. 前記薄膜部分の膜厚が、前記光学調整層のうち前記第2領域に接している部分の最大膜厚に対して2%以上50%以下である、請求項1に記載の回折光学素子。
  3. 前記薄膜部分が、光学調整層の最も外側に設けられている、請求項1または2に記載の回折光学素子。
  4. 前記薄膜部分が、前記第1領域の外側に同心円状に設けられている、請求項1または2に記載の回折光学素子。
  5. 前記薄膜部分が、前記第2領域に接して設けられた光学調整層の表面形状の凹みによって設けられている、請求項1から4のいずれか1つに記載の回折光学素子。
  6. 前記基体の第2領域の少なくとも一部に、前記薄膜部分に対応した位置に凸部が設けられている、請求項1から4のいずれか1つに記載の回折光学素子。
  7. 前記基体の第2領域の少なくとも一部に、凹凸形状が設けられている、請求項1から6のいずれか1つに記載の回折光学素子。
  8. 前記回折格子の深さが2μm以上20μm以下の範囲内にある、請求項1からのいず
    れか1つに記載の回折光学素子。
  9. 前記基体は、第1樹脂を含む第1光学材料からなる、請求項1からのいずれか1つに記載の回折光学素子。
  10. 前記光学調整層は、第2樹脂を含む第2光学材料からなる、請求項1からのいずれか1つに記載の回折光学素子。
  11. 前記第1樹脂は熱可塑性樹脂である、請求項に記載の回折光学素子。
  12. 前記第2樹脂はエネルギー硬化型樹脂である、請求項10に記載の回折光学素子。
  13. 前記第2光学材料は、無機粒子をさらに含み、前記無機粒子が前記第2樹脂中に分散している、請求項10または12に記載の回折光学素子。
  14. 前記基体は、熱硬化性樹脂およびエネルギー硬化型樹脂を含まない、請求項に記載の回折光学素子。
  15. 前記基体は、熱可塑性樹脂からなる、請求項に記載の回折光学素子。
  16. 回折格子の設けられた第1領域と、前記第1領域の外側に位置する第2領域と、を表面に有する基体を用意する工程と、
    前記基体の表面上に、光学材料の原料を配置する工程と、
    前記原料が前記第1領域と前記第2領域の少なくとも一部とを覆うように、前記原料を押圧する工程と、
    前記原料を硬化させることにより、前記光学材料からなる光学調整層を形成する工程と、を包含し、
    前記押圧する工程において、前記光学調整層のうち前記第2領域に接している部分の少なくとも一部に、前記光学調整層のうち前記第2領域に接している部分の最大膜厚よりも小さい膜厚を有する薄膜部分を形成するとともに、前記基体の前記第2領域に接して形成された前記光学調整層の表面形状の少なくとも一部に、前記薄膜部分の膜厚より微細な凹凸形状を形成する、回折光学素子の製造方法。
  17. 前記薄膜部分の膜厚が、前記光学調整層のうち前記第2領域に接している部分の最大膜厚に対して2%以上50%以下である、請求項16に記載の回折光学素子の製造方法。
  18. 請求項1記載の回折光学素子の製造に用いられる型であって、前記第1領域に対応する領域に曲面形状が設けられ、前記第2領域に対応する領域の一部に凸部が設けられた型。
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