JP2009282358A - 回折レンズの製造方法、及び回折レンズ - Google Patents

回折レンズの製造方法、及び回折レンズ Download PDF

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Abstract

【課題】凸型の回折レンズ基材上に、規定の非球面形状を有する保護膜を高い形状精度で簡易に形成することは従来困難であった。
【解決手段】凸形状を有するパッド1を、塗料を保持した印刷版2と接触させ、前記塗料を前記印刷版から前記パッド上に転写する工程と、保持部材上に保持され、表面に回折格子形状が形成されたレンズ基材4に対し、前記パッドの凸形状の頂点部6が、前記レンズ基材の光軸上の点とは異なる位置に当接するように、前記塗料が転写された前記パッドを前記レンズ基材に接触させ、前記塗料を前記レンズ基材に再転写する工程とを有し、前記2つの工程を、前記パッドの凸形状の頂点部が前記レンズ基材または前記保持部材と当接する位置を互いに異ならせて、複数回繰り返すことを特徴とする保護膜を有する回折レンズの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は保護膜を有する回折レンズの製造方法、及びこの製造方法により製造される回折レンズに関するものである。より詳細には、回折格子形状を有する凸型レンズ基材上に、表面が規定の非球面形状となる保護膜を、パッド印刷により形成して回折レンズを製造する方法に関する。
光学素子に形成される保護膜の一例として、回折光学素子の色収差を補正する作用を有する光学調整層が挙げられる。これは、回折格子形状を形成した基材上に、使用各波長における特定次数の回折効率が100%付近に到達するよう光学特性が設計された材料を積層することにより、不要回折光を低減するものであり、光学系に適用することでフレア等が抑制される。光学調整層を形成した回折光学素子の例として、非球面のベースカーブ上に回折構造を形成した基材に、ベースカーブと略同形状の光学面を有する層を成型により形成する方法が開示されている(特許文献1、2)。
また、曲面形状を有する基材へ保護膜を形成する方法としては、上記の成型の他に、スピンコート、パッド印刷等の方法が開示されている(特許文献3、4)。
特開2005−164840号公報 特開2006−12393号公報 特開2005−218994号公報 特開2000−263755号公報
特許文献1及び特許文献2に開示されているように、光学調整層を成型により形成する方法では、光軸を中心とした金型位置の調整工程が必要不可欠であり、生産性の向上に限界が生じるという課題が存在していた。
一方、特許文献3に開示されているようなスピンコートによる塗布方法は、凹凸を有する表面への塗布には適さないため、規定の非球面形状を持つ膜を形成するように制御することが難しい。
また、特許文献4に開示されている従来の塗布方法を用いて、回折レンズのような、凹凸形状を有した基材に規定の非球面形状となる保護膜を塗布しようとした場合には、形成される保護膜が均一な厚みにならないという課題や、凹形状部に泡噛みを発生しやすいという課題が存在していた。
このように、凸型回折レンズ形状を有する基材上に、規定の非球面形状を有する保護膜を高い形状精度で、かつ高い生産性で形成することは従来困難であった。
このような状況において、本発明は、回折格子形状を有する凸型レンズ基材上に、規定の非球面形状となるように形状が精密に制御された保護膜を形成する回折レンズの製造方法、及びこの製造方法を用いて製造される回折レンズを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の回折レンズの製造方法は、回折格子形状が形成されたレンズ基材の表面に保護膜を有する回折格子レンズの製造方法であって、凸形状を有するパッドを、塗料を保持した印刷版と接触させ、前記塗料を前記印刷版から前記パッド上に転写する工程と、保持部材上に保持され、表面に回折格子形状が形成されたレンズ基材に対し、前記パッドの凸形状の頂点部が、前記レンズ基材の光軸上の点とは異なる位置に当接するように、前記塗料が転写された前記パッドを前記レンズ基材に接触させ、前記塗料を前記レンズ基材に再転写する工程と、を有し、前記2つの工程を、前記パッドの凸形状の頂点部が前記レンズ基材または前記保持部材と当接する位置を互いに異ならせて、複数回繰り返すことを特徴とする保護膜を有する回折レンズの製造方法である。
本発明により、回折格子形状を有するレンズ基材上に、表面形状が精密に制御された保護膜を簡易なプロセスにより形成することができるため量産性に優れる。また、本発明の製造方法により製造された回折レンズは、保護膜の膜形状が正確であり光学特性に優れる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では例を挙げて説明するが、本発明は以下の例に限定されない。
(第1の実施形態)
本発明の1実施形態として、パッド印刷により、回折格子形状を有する凸型レンズ基材上に保護膜材料を印刷する回折レンズの製造方法について説明する。
パッド印刷は、シリコンゴム等軟質の材料で構成されるパッドを保護膜材料が塗布された印刷版に密着させ、印刷版内に形成された所定の印刷形状内の保護膜材料をパッドに転写させた後、このパッドを基材に密着させることにより、基材上に保護膜材料を転写する方法である。パッドの形状は、円錐状、釣鐘状、かまぼこ状、三角柱状等であればよく、パッドの頂点部とはその先端部、尖った部分を指す。
本発明の回折レンズの製造方法に供するレンズ基材は、凸型の回折レンズ形状を有する。レンズ基材の凸型の回折レンズ形状は、例えば金型成形、転写、切削、研磨、レーザー加工、放電加工、エッチング等、その形状と基材の材質に応じた方法で形成される。凹凸形状の配置パターンならびに配置ピッチは特に限定されない。この点に関しては、以下の実施形態についても同様である。また、基材に使用される材質については、レンズ作用を実現するのに十分な光学特性を有し、かつパッド印刷工程において形状が保持されるものであれば特に限定されない。
一般的には、均一な保護膜が得られるとされるパッド印刷であるが、印刷される基材の形状によっては、不均一な膜厚となる。例えば、凸型形状物に対し、パッド印刷により保護膜を形成する場合には、パッドの頂点部を凸型形状物の頂点部に当接させるように印刷を行うと、凸型形状物の外周付近において、頂点部付近よりも保護膜の厚みが厚くなる傾向がある。また凸型形状物に対し、パッドの頂点部を凸型形状物の頂点部以外の位置へ当接させるように印刷を行うと、パッド頂点部に近い側で印刷された部分の保護膜は厚く、逆に、その反対側では薄くなる傾向がある。この場合には、軸対称な規定の保護膜形状が得られず、レンズ集光性が低下してしまう。これらの傾向は、パッドの形状や位置による圧力の差に起因していると考えられる。
そこで本発明の回折レンズの製造方法においては、パッド印刷時のパッド頂点部の基材への接触点をある一定の法則性を持つ複数の位置に決めて、複数回のパッド印刷を行う。これにより、軸対称で規定の形状を満たす厚さを有する保護膜を形成することが可能となる。前記複数回のパッド印刷の回数は回折格子形状の段差と版の深さにより決定され、2回から9回が好ましい。これは1回のパッド印刷では、上記した理由から不均一な膜厚となる可能性が高く、10回以上のパッド印刷では時間がかかり生産性が低下するためである。また、保護膜厚さは、回折レンズの段差よりも厚くする必要があるが、厚すぎると保護膜の透過性が低下するという問題が生じ、また薄すぎると、保護膜がベースの非球面形状ではなくレンズ基材の平坦に近い形状に追従する傾向が見られるため、3回から6回がより好ましい。前記「ある一定の法則性を持つ複数の位置」とは、パッド頂点部の基材への接触点が凸型回折レンズの光軸上の点と一致しないことが望ましく、凸型回折レンズの光軸上の点を中心点とした同一円周上の位置にあり、前記同一円の半径が凸型回折レンズのレンズ半径(レンズ部外周の半径)よりも大きいことがより望ましい。さらに、前記同一円周上において等間隔に位置することが好ましい。具体的には、複数回のパッド印刷時のパッド頂点部の位置がn箇所であるとき、前記n箇所のうち隣り合う2箇所の位置が、基材の凸型回折レンズの中心を中心点とした同一円周上の位置で、360/nの角度の関係にあることを満たす位置であることが好ましい。前記n箇所は2箇所から9箇所の範囲であることが望ましく、3箇所から6箇所の範囲であることがより望ましい。また、印刷箇所を分散化することにより、パッド印刷時における基材にかかる応力を分散することが可能となり、光学的に優れたレンズになる。
使用される保護膜塗料の物性については、パッド印刷による工程が安定する粘度が望ましく、好ましくは粘度が0.5から50Pa・sであり、より好ましくは、1から10Pa・sである。粘度の範囲はそれぞれ、パッド印刷時の気温でこの範囲に入っておればよく、必要に応じて、溶媒や増粘剤等の添加剤、印刷版の温度調節等により調整することも可能である。
パッド印刷における塗料の膜厚を制御するパラメータとしては、印刷版に形成されたパターンの深さならびに形状、基材へのパッドの圧着前後におけるパッド駆動速度及び圧着時の圧力、パッドの形状及び硬度等に代表される印刷装置固有のパラメータの他に、粘度、表面張力等の塗料物性により規定される。1回のパッド印刷工程により形成可能な保護膜の膜厚は、使用する塗料の組成や運転条件にも依存するが、一般的には10μm以下とされることから、パッド印刷による保護膜形成を実施する場合は、基材の凸型回折レンズ形状物の回折格子の高さは100μm以下であることが好ましい。高さが100μmを超える凹凸形状については、その上に平滑な保護膜を形成するために必要なパッド印刷の繰り返し回数が増大して生産性が低下するため、パッド印刷を適用するメリットが小さくなる。
本発明の保護膜形成方法について、図1を用いて説明する。
まず、凸型回折レンズ形状物を有するレンズ基材上に、1回目のパッド印刷による保護膜形成工程を実施する。具体的には、まずパッド1を移動手段により印刷版2の上面に接触させて印刷版のパターン内部に供給された塗料3を転写する(図1a、b、c)。続いて保持部材上に固定されたレンズ基材4の凸型回折レンズ形状物5の上方へパッド1を移動させた後、パッド1を下方へ移動させてレンズ基材4に当接させ、パッド1上に転写されていた塗料3をレンズ基材4へ転写印刷する(図1d、e、f)。このときパッド頂点部6は凸型回折レンズ形状物5の外周より外に位置する。パッド1が上方へ移動し転写が終了すると、1回目のパッド印刷により保護膜が形成されたレンズ基材4を、凸型回折レンズ形状物5の光軸を軸として所定の角度の回転をさせる。このときの角度は上記した前記パッド印刷時の凸型回折レンズ形状物5とパッド1の位置関係を上記した一定の法則性を持つ複数の位置をみたす角度であればよい。回転が完了した後、2回目のパッド印刷を行い、再度回転させる。このようにして、複数回のパッド印刷を行ったときのパッド1の頂点部6と凸型回折レンズ形状物5の中心(光軸上の点)との位置関係を、図2を用いて説明する。例えば複数回の印刷回数が4回、印刷箇所が4箇所のときは図2に示すように、凸型レンズ形状物5の中心11を中心とした円周12上で1回目のパッドの頂点部6の位置を0°(13)とするなら0°(13)、90°(14)、180°(15)、270°(16)の位置となる。各位置への印刷する順番は特に規定しない。
このような凸型回折レンズ形状物5の光軸を軸として所定の角度の回転をさせる方法は、レンズ基材を保持する保持部材側の改良で実現するため、動作機構が簡易で、既設のパッド印刷機の改良による適用も可能である。
なお、このようなパッド頂点部6と回折レンズ形状物5の中心11の位置関係を得るために、ここでは回折レンズ形状物5の中心11を中心軸に回転させることで、位置関係を成立させることを示したが、回折レンズ形状物5を固定し、パッドを光軸に垂直な面内において、任意のX、Y方向へ移動させる方法でも良い。この方法は、例えば微小なレンズに保護膜を形成させる場合など、回転による方法では回転軸のずれによる印刷位置ずれが懸念される場合に有効である。これら以外にも、パッド頂点部6と回折レンズ形状物5の中心11の位置関係を異ならせる方法であれば適用可能である。
また、上記実施の形態では、パッド1の頂点部6がレンズ基材4に当接する場合を示したが、レンズ基材の大きさや、パッドの頂点部6と凸型レンズ形状物5の中心との距離によっては、パッド1の頂点部6をレンズ基材を保持する保持部材に当接させても良い。
回折格子レンズ上の保護膜としては、カメラの色収差を補正するための屈折率調整保護膜が知られている。回折格子曲面上に、回折格子レンズ材料の波長に対する屈折率の分散を相殺するような屈折率分散を有する保護膜を形成した場合、広帯域にわたって、高い回折効率が得られるようになる。その結果、屈折率調整保護膜を形成した回折格子レンズをカメラモジュールに組み込んだ際に、色収差を低減することが可能となる。ある波長λにおいて保護膜形成レンズの1次回折効率が100%となる回折格子形状の段差dは、回折格子レンズの屈折率をn、保護膜の屈折率をnとすると、(数1)で与えられる。
Figure 2009282358
(数1)の右辺が可視域全域にわたって一定値になれば、可視域における回折効率の波長依存性がなくなることになり、色収差を低減することが可能となる。
この構成のレンズでは、回折格子段差が波長以上であるため、保護膜の形状は、基材の凹凸によらず平滑に形成することが重要となる。また、保護膜の表面形状を、回折格子形状を形成した回折格子曲面の非球面形状と一致させることにより、レンズの集光性を高めることが可能となる。
このようにして得られる、屈折率を上記(数1)の右辺が可視域全域にわたって一定値になるように調整した保護膜が凸型回折レンズ形状物表面に規定の非球面として形成されたレンズは、広い波長領域で高い集光性を持つことから、単レンズとしても良好な撮像性能を有する。前記規定の非球面形状とは、レンズ作用を有する曲面上に鋸歯状回折格子形状を同心円形状に形成した前記凸型回折レンズ形状物における前記レンズ作用を有する曲面の形状に概略一致する形状であり、軸対称性を有する。
なお、パッド印刷工程において、例えば4方向から印刷する場合には、パッドが4方向から押し付けられることになり、パッド印刷時に凸型回折レンズ形状物にかかる圧力が、前記4方向からは、他の方向よりも高い圧力で押し付けられることになる。このため、前記凸型回折レンズ形状物における前記4方向と前記他の方向とでは、わずかに保護膜の厚さに差異が生じることがあるが、レンズの集光性に悪影響を与えない程度であれば問題はない。
(第2の実施形態)
回折レンズのような凸凹形状物に対し、パッド印刷により保護膜を印刷し形成する場合、気泡を噛みこむ場合がある。気泡は自然放置または減圧することにより脱泡させることが可能であるが、自然放置による脱泡工程は通常5分から15分程度の時間がかかるとともに、減圧による脱泡工程は連続工程化が困難であり、いずれにしても生産性に課題を有する。このような前記脱泡工程を、本発明の第2の実施形態に示す方法を行うことにより、省略することができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態におけるパッド印刷時に、パッドを凸型回折レンズ形状物5に接触させた状態で一定の静止時間をとることにより、気泡のない保護膜を形成するものである。これは、パッドを接触させた状態で静止時間をとることにより、回折レンズ形状物5と塗料のなじむ時間ができ、塗料が濡れ広がるために気泡の噛み込みを防ぐことができるからである。塗料によっては、静止時間を取ると塗料表面にパッドの跡が残る場合もあるが、複数回の印刷のうち最初のパッド印刷時以外、特に最後のパッド印刷時に静止時間を取らないこと等でこの問題は回避できる。前記静止時間は1秒から6秒が望ましい。1秒未満では、効果が得られないことがあり、6秒よりも長いと工程に時間がかかってしまうためである。
(第3の実施形態)
本発明の回折レンズの製造方法により製造された回折レンズの1実施形態を、図3を用いて説明する。
本発明の製造方法により製造された回折レンズについて説明する。図3に、回折レンズの一例についてその断面図を示し説明する。図3(a)は上面図、図3(b)は、図3(a)のX−X’線における断面図である。なお、図3に示したレンズ30は一例であり、本発明は他の様々な形態にも適用可能である。
レンズ基材31の表面には鋸歯状の回折格子32が同心円形状に形成され、回折格子32を覆うように保護膜として光学調整層33が形成されている。この光学調整層33の、レンズ基材31に接した面と反対面の形状は、回折格子32の溝を通る包絡面とほぼ同じ形状となるように、本発明の製造方法を使用して形成されている。
本発明の製造方法を使用して、回折格子32の溝を通る包絡面とほぼ同じ形状となるように光学調整層33を形成することにより、集光性が向上しMTF特性が向上する。
なお、回折格子32の溝を通る包絡面は、球面形状、非球面形状、シリンドリカル形状等の形状をとることができる。特に包絡面が非球面形状に設計されている構成においては、球面形状の場合に補正できなかったレンズ収差を補正することが可能になるので好ましい。なお、前記「非球面形状」の面とは、下記(数1)を満足する曲面である。
Figure 2009282358
上記式は、X−Y平面に垂直なZ軸の周りに回転させた場合の非球面を表す式であって、cは中心曲率、A,B,C,Dは2次曲面からのずれを表す係数である。また、Kの値によって、以下のような非球面となる。
0>Kの場合、短径を光軸とする楕円面
−1<K<0の場合、長軸を光軸とする楕円面
K=−1の場合、放物面
K<−1の場合、双曲面
図3のレンズ30に関しては回折格子32ならびに光学調整層33が片面に形成された構成としているが、レンズ基材表面に形成される回折格子形状は、レンズのいずれか片面に形成されていても、両面に形成されていてもよい。両面に形成される場合においては、両面の回折格子は必ずしも同じ深さ、形状である必要はない。また、回折格子内の輪帯ピッチは同じである必要はない。また、両面における保護膜のそれぞれの材料、及びそれぞれの厚みも同じである必要はない。レンズの形状については、少なくとも片面が回折格子形状ならびに光学調整層を形成した凸面であればよく、図3に示した平面と凸面以外に、凹面と凸面、両凸面等でもよい。
前記レンズ基材31の材質としては、レンズに用いる材料として一般的な透明光学材料、例えば、ガラスを含む材料、樹脂を含む材料等を用いることができる。MTF特性をより向上させる目的として、レンズ基材31の曲面を非球面形状に加工したり、その曲面上に回折格子32を形成したりする場合においては、樹脂を含む材料を使用することが好ましい。レンズの生産において最も生産性が期待できる金型成形を考えた場合、ガラスを含む材料においては、金型の耐久性が樹脂を含む材料の1/10以下であり、回折格子32を有する基材の製造が容易ではないのに対して、樹脂を含む材料は、射出成形等の量産性の高い製造方法を適用することができるからである。また、樹脂と無機粒子とを含むコンポジット材料を用いることも可能である。
前記樹脂を含む材料としては、光学特性や耐光性に優れ、成形性の良い材料の中から、回折光学素子の光学設計に応じて適宜選択すればよい。例えば、ポリシクロオレフィン系樹脂(例えば、日本ゼオン社製“ZEONEX”、三井化学社製“アペル”等)、ポリカーボネート系樹脂(例えば、帝人化成社製“パンライト”、ジェネラルエレクトリックス社製“レキサン”等)、ポリエステル系樹脂(例えば、大阪ガスケミカル社製“OKP4”等)、ポリアクリル系樹脂等を用いることができる。
特にレンズ基材31として樹脂材料を使用する場合、金型加工の容易さと、レンズ性能面での回折格子形状の寄与、及び周辺温度に対する安定性を確保するには回折格子32の深さを20μm以下にすることが望ましい。数十μmを越える深さの回折格子形状に対しては加工精度の高い金型加工が困難である。なぜなら、一般に金型加工はバイトを用いて行うが、回折格子32の深さが深いと加工量が増え、バイト先端が磨耗するため、加工精度が劣化する。同時に回折格子32の深さが深くなると回折格子32のピッチを狭くすることができない。回折格子32が深くなると先端の曲率半径の大きなバイトで金型を加工する必要があり、その結果、ある程度回折格子32のピッチを広げないと回折格子の加工ができないためである。これにより回折格子32の深さが深いほど回折格子形状の設計自由度がなくなり、回折格子32による収差低減効果がほとんどなくなっていく。
特に回折格子32の深さを20μm以下とすることにより、回折格子32上への光学調整層33の形成に必要なパッド印刷の繰り返し回数が少なくてすみ、生産性が向上するという効果も期待できる。
表面の少なくとも一方に回折格子32を形成したレンズ基材31に対して光学調整層33を形成する場合、ある波長λにおいてレンズ30の1次回折効率が100%となる回折格子深さd´は(数3)により与えられる。なお(数3)において、nCOMλは光学調整層の、nLλはレンズ基材の、波長λにおける屈折率である。
Figure 2009282358
(数3)の右辺がある波長領域においてほぼ一定値になれば、その波長領域内において1次回折効率の波長依存性がなくなることになる。そのためには、レンズ基材31と光学調整層33を高屈折率・低波長分散性材料と低屈折率・高波長分散性材料との組み合わせにより構成すればよい。即ち、レンズ基材31は、光学調整層33よりも屈折率が低くかつアッベ数が小さい材料、又は、光学調整層33よりも屈折率が高くかつアッベ数が大きい材料であることが好ましい。特に、波長400〜700nmの可視光の全領域において、前記(数3)における回折格子深さd´が同じ値となるような材料の組合せで構成することによって、1次回折効率が可視光領域において波長に依存しないレンズ30となり、撮像用途に適用した場合に画質の向上が可能となる。
本発明のレンズ30における光学調整層33の材料は、レンズに用いるものとして一般的な材料の中から、要求される物性(光学特性、機械特性、耐環境性等)、ならびに形成プロセス全体への対応性等を勘案して選定される。例えば、樹脂を含む材料、ガラスを含む材料等を用いることができるが、前記レンズ基材31が樹脂を含む材料である場合、以下に示す理由により光学調整層33の材料選択の幅が狭くなる。光学調整層33の材料として、例えばレンズ基材31よりも高屈折率・低波長分散性の材料を選択する場合、基材の耐熱性がガラスと比較して高くないことから、加工に高温を要するガラス材料については使用できる組成が著しく限定されるとともに、使用できる組成が存在しても生産性の低下は免れない。特に本発明においては、生産性を向上させるために光学調整層33の形成方法としてパッド印刷を適用することから、レンズ基材31及び光学調整層33の材料としては樹脂を含むものが好ましい。
樹脂の光学特性や機械特性等の各種特性は、分子骨格や分子中に含まれる官能基等の設計により制御することが可能であるので、保護膜の目的(例えばレンズ30においては光学特性の調整)に適合する樹脂を、適宜選択して用いればよい。
また、本発明のレンズ30に使用される光学調整層33の材料は、樹脂単独ではなく、樹脂に光学特性やその他の特性を改善する目的で他成分を添加した組成物を使用することもできる。添加される成分としては、例えば光学調整層33の屈折率等の光学特性や機械特性等を改善する無機粒子及びこの無機粒子の分散性を改善する分散剤、光学調整層33の吸収スペクトルを調節する色素や紫外線吸収剤等の成分、光学調整層33の表面平滑性を改善するレベリング剤、重合開始剤、離型剤、安定剤、帯電防止剤等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
特に、汎用の光学用途の樹脂単独では、高屈折率の樹脂であっても屈折率はほぼ1.7以下であり、このような汎用の樹脂の中から光学調整層33の材料を選択しようとすると、レンズ基材31との屈折率の差が大きくなる材料がないために、前記(数2)の条件を満たす回折格子32の深さd´が大きくなってしまい、レンズ基材31の加工及び光学調整層33の作製がいずれも困難となる。このため、前記レンズ基材31が樹脂を含む材料である場合には、光学調整層33の材料として、レンズ基材31に対して高屈折率低波長分散の特性を有する、樹脂と無機粒子とを含むコンポジット材料を用いるのが好ましい。
前記コンポジット材料を使用すると、樹脂を含むことによりパッド印刷の適用が可能になり、かつ無機粒子を含むことにより、屈折率及びアッベ数を広い範囲で制御することが可能となる。コンポジット材料の樹脂及び無機粒子の種類、ならびに無機粒子の体積比を適宜選択することにより、レンズ基材31よりも高屈折率・低波長分散性を有するコンポジット材料を調製することができる。
光学調整層33を高屈折率・低波長分散性を有するコンポジット材料にて構成することによって、レンズ基材31の材料の選択肢が広くなる。このようなコンポジット材料を用いることによって、回折格子32の深さが小さくて、回折効率の波長依存性が少ないレンズ30となる。このため、回折格子32のピッチを細かくすることができ、MTF特性の向上や、色収差の低減がより容易となる。
さらにコンポジット材料は、樹脂単体と比べ熱膨張係数を低減し、屈折率の温度変化を低減できるため、信頼性、光学安定性の面で樹脂より格段に優れ、周辺温度が変化しても光学特性変動の小さいレンズ30を提供することができる。
前記無機粒子は、粒子状に形成された無機化合物のことであり、その材料や粒子径によって特に限定されない。
前記無機粒子の平均粒子径は、1nm以上100nm以下の範囲であることが好ましく、1nm以上50nm以下の範囲であることがより好ましい。なお、前記「平均粒子径が1nm以上100nm以下の範囲」とは、例えば、粒度分布計や透過型電子顕微鏡撮影等による画像処理法等の方法によって無機粒子全体を測定したとき、粒度頻度分布の中心粒径が1nm以上100nm以下の範囲にあり、その平均粒子径を中心に頻度分布の50%以上が1nm以上100nm以下の範囲にあることを意味する。
前記無機粒子の粒子径が光の波長よりも充分に小さい場合、前記コンポジット材料を屈折率のばらつきがない均一な媒体とみなすことができる。なお、無機粒子の平均粒子径が光の波長の1/4以上、例えば100nmを超えると、コンポジット材料中の無機粒子によりミー散乱が生じ透明性が低下する。また、無機粒子の平均粒子径が1nm未満であると、量子的な効果により蛍光が生じる等、光学性能への影響が発現することがある。したがって、前記無機粒子の粒子径が1nm以上100nm以下の範囲であれば、無機粒子による光散乱はレーリー散乱のみとなり、透明性の高いコンポジット材料が得られるとともに、蛍光等の付加的な光学性能が発現することもない。特に無機粒子の平均粒径が1nm以上20nm以下の範囲にあると、透光性がより高くなるので一層好ましい。
前記コンポジット材料は、樹脂と無機粒子との体積比を調整することによって、前記コンポジット材料の屈折率及びアッベ数を自由に制御することができる。なお、本明細書において、コンポジット材料の屈折率は、そのコンポジット材料を1つの屈折率を有する媒体とみなしたときの、実効的な屈折率を意味する。
前記コンポジット材料の屈折率は、例えば、マクスウェル−ガーネット理論に基づき、下記(数4)により推定できる。但し、nCOMはコンポジット材料の平均屈折率、npは無機粒子の屈折率、nmは樹脂の屈折率であり、Pはコンポジット材料に占める前記無機粒子の体積比である。また、前記無機粒子が、光を吸収する場合や金属からなる場合には、複素屈折率として計算する。
Figure 2009282358
なお、前記コンポジット材料の実際の屈折率は、成形後に、例えばエリプソメトリ法、アベレス法、光導波路法、分光反射率法等を用いて測定することによって求めることができる。
前記コンポジット材料に占める前記無機粒子の重量比は、5重量%以上90重量%以下の範囲であることが好ましい。重量比が5重量%未満であると、従来の樹脂の屈折率・分散特性から逸脱した特性を示すコンポジット材料を構成できず、回折格子深さを小さくできない場合があり、90重量%を超えると、コンポジット材料の光透過率が低下しその影響を無視できなくなる場合がある。特に、前記無機粒子の重量比が、10重量%以上85重量%以下の範囲であれば、より優れた光学特性ならびに高い塗布性が得られるので、より好ましい。なお、(数3)による複合材料の屈折率推定は、無機物粒子の体積比を用いて実施するが、無機物粒子の体積比と重量比は、各構成成分の比重を用いて容易に換算できる。
光学調整層33の厚さは、最も厚い部分で回折格子32の深さd´以上100μm以下であることが好ましい。厚さが100μmを超えると光散乱が大きくなり、レンズとして十分な光線透過率が得られなくなる可能性がある。ただし、無機粒子の粒径をさらに小さくすると、光線透過率が高くなるために、光学調整層33の厚みを増すことができる。また、厚さが100μmを超えるとレンズとして収差が発生する要因となり、集光性が低下する。なお、光学調整層33の厚みは、通常1μm以上である。
前記光学調整層33の材料としてコンポジット材料を使用する場合には、樹脂及び無機粒子の材質を適宜選定し、前記(数4)を用いてそれらの混合比を調節して、前記(数3)を満足する混合組成を決定すればよい。樹脂及び無機粒子の材質の選択において、レンズ基材31が樹脂を含む材料である場合には、このレンズ基材31の屈折率及び屈折率波長分散に対して、例えば光学調整層33が高屈折率・低波長分散性となるようにコンポジット材料を調製すればよい。なお、この場合のレンズ基材31は、光学的特性や製造的な容易さから、ポリカーボネート樹脂を含むことがより好ましい。
光学調整層33の材料として高屈折率・低波長分散性を有する前記コンポジット材料を使用する場合には、前記コンポジット材料に含まれる樹脂として、レンズ基材31よりも屈折率の波長分散性が低い、すなわちレンズ基材31よりも大きいアッベ数を有するものが好ましい。このような樹脂を用いることで、前記コンポジット材料の屈折率の波長分散性を低くするのが容易になる。その中でも屈折率が高い樹脂を選択すると、前記無機粒子の混合量を低下させることができるのでより好ましい。さらに、前記コンポジット材料に含まれる樹脂は、無機粒子の分散性、及び光学調整層33の製造の容易さから選択すればよい。また、この樹脂は、取り扱い性がよく、形成後に安定していることが好ましい。光学的な選択の幅や、製造の容易さの観点から、レンズ基材31の回折格子32上に形成した後に樹脂を硬化して安定した光学調整層33を得ることができる樹脂を用いるのが好ましい。レンズ基材31が樹脂を含む材料である場合には、光学調整層33の形成時にレンズ基材31への影響を少なくするために、低エネルギーで製造できる上、製造時間が短い紫外線硬化性樹脂等の光硬化性樹脂を用いることが好ましい。特に、紫外線硬化性のアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂が好ましい。
また、無機粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化シリコン、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ハフニウム等の金属酸化物を用いることができる。無機粒子はこれらの酸化物のいずれか1つで形成されていてもよいし、これらの酸化物の複合酸化物で形成されていてもよい。また、無機粒子の材料としては窒化シリコン等の金属窒化物や炭化シリコン等の金属炭化物、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン等の光透過性の炭素系材料を用いてもよい。また、硫化硫黄や硫化スズ等の硫化物や、金、白金、銀、パラジウム、銅、アルミニウム等の金属、シリコンやゲルマニウム等の半導体材料を用いてもよい。
前述の無機粒子の中でも、d線における屈折率が1.7以上であり、波長分散性を表わすアッベ数が30以上であるものが特に好適に用いられる。これらの無機粒子は、汎用の樹脂より屈折率が高く、かつ樹脂との混合によって高いアッベ数を確保するのに適している。特に、酸化ジルコニウム(d線屈折率:2.05、アッベ数:32)、酸化イットリウム(d線屈折率:1.88、アッベ数:35)、酸化アルミニウム(d線屈折率:1.76、アッベ数:76)を主な成分とする無機酸化物粒子は、分散性の良好さ、入手のしやすさの観点から優れている。これらの無機酸化物粒子は、それぞれを混合して用いることもできるし、他の無機粒子を混合して屈折率を調整することもできる。
レンズ基材31として樹脂を含む材料を、光学調整層33としてレンズ基材より高屈折率・低波長分散性を有するコンポジット材料をそれぞれ使用することにより、本発明のレンズがパッド印刷工程を使用して容易に作成できるようになる。本材料構成にて非球面形状上に鋸歯状回折格子形状を形成したレンズ基材を設計する場合、回折位相の関係上、非球面形状から逸脱し平坦に近い形状を有する領域がレンズ基材中心部付近に発生する。このレンズ基材31上に、従来のパッド印刷方法を用いて、ベースとなる非球面に一致した光学調整層を形成しようとすると、レンズ基材にパッドが押し当てられる圧力が高いところは薄く、前記圧力が低いところは厚く保護膜が形成される傾向があり、ベースとなる非球面形状に一致しない。特にレンズ中心部付近については、従来のパッド印刷方法においては、光学調整層はベースの非球面形状ではなく、レンズ基材31の平坦に近い形状に追従する傾向が見られる。その結果、得られるレンズのMTF特性が低下し、撮像用途に適用した場合に画質が低下するという課題が生じる。
本発明の回折レンズの製造方法を用いることにより、パッド印刷を用いてベースとなる非球面に一致した光学調整層33を形成することが可能となる。その結果、MTF特性が高く、撮像用途に適用した場合にも高画質が得られる、高性能のレンズ30を容易に作成することが可能となる。
なお、第1、2、3の実施形態では、それぞれ単レンズの場合を示したが、例えばレンズアレイのような複数のレンズに適用することも可能である。
本発明のレンズは、第1の実施形態に示すような一定の法則性を持つ複数の位置に、複数回のパッド印刷を行うことにより光学調整層を形成することから、表面に凸型回折レンズ形状が形成された基材を使用した場合においても、ベースの形状によく一致した光学調整層を得ることができる。回折位相の関係上レンズ基材頂点部付近に発生する平坦に近い形状を有する領域においても、複数回のパッド印刷を行うことで、塗料が厚くなり、保護膜形状は平坦に近い基材の形状ではなく、非球面形状により近くなる。その結果、容易な生産プロセスから高い性能を有するレンズが実現される。
以下に、本発明のレンズの作成方法について、具体例をあげて説明する。
(実施例1)
本発明の回折レンズを、次の方法により作成した。脂環式炭化水素基含有アクリル系オリゴマー(d線屈折率1.53、アッベ数52、硬化後の密度1.1g/cm3)と酸化ジルコニウムフィラー(一次粒径3〜10nm、酸化ジルコニウム100重量部に対してシラン系表面処理剤を40重量部含有、固形分中における重量比が62重量%)のイソプロピルアルコール分散液(全固形分62重量%)を保護膜塗料として使用した。レンズ基材として、ポリカーボネート樹脂(6mm四方、厚さ0.8mm、d線屈折率1.585、アッベ数27.9)製の非球面レンズを用い、これに深さ15μmの輪帯状回折格子を一面に付加した。レンズ部有効半径は0.865mm、輪帯数は19本、最小輪帯ピッチ14μm、回折面の近軸R(曲率半径)は−0.9487mmであった。上記した基材、塗料の組み合わせは、前記第3の実施形態に示す条件を満たす組み合わせであり、前記(数1)の右辺が可視域全域にわたって一定値となり、可視域における回折効率の波長依存性がなくなることになり、色収差を低減することが可能となる組み合わせである。
次に、印刷版として、深さ15μm、1.8mmφにパターニングされたスチール版を準備し、前記保護膜塗料を回折レンズ上にパッド印刷した。パッドには、その先端部が直径約3cmの円錐状のシリコンゴム製のパッドを用い、パッド印刷機には株式会社ミシマ製パッド印刷装置SPACE・PAD80を用いた。パッド印刷時のパッド頂点部と回折レンズの位置関係は図4に示すように、パッド頂点部を回折レンズ5の中心11から1.0mm離れた円周41上でそれぞれ0°(42)、60°(43)、120°(44)、180°(45)、240°(46)、300°(47)の位置となる6箇所になるように印刷した。それぞれの位置へのパッド印刷は、パッド頂点部を印刷パターンから外れた箇所(印刷パターンの中心点から1.0mm離れた位置)に接触させることにより保護膜塗料をパッド斜面部に転写させ、それをレンズ基材側に移動させ、パッド頂点部を回折レンズの中心から1.0mm離れた位置に当接させることにより、保護膜塗料を回折レンズに転写する条件で行った。1回パッド印刷するごとに、回折格子レンズをレンズ部の光軸を軸にして水平方向に60°回転させ、計6箇所で合計6回のパッド印刷を行った。その後、室温で10分の自然放置(脱泡処理)後、室温で60分の減圧処理を行い保護膜塗料中の溶剤分を揮発させた後、紫外線硬化(メタルハライドランプ(発光長125mm、入力80W/cm)使用、ピーク照度120mW/cm2、積算光量5000mJ/cm2)を実施し、保護膜硬化させ、回折レンズを形成した。
(比較例1)
パッド頂点部を印刷パターンの中心位置に圧着することにより保護膜塗料をパッドの頂点部周辺に転写させ、パッド印刷時のパッド頂点部と回折レンズの位置関係を、パッド頂点部と回折レンズの光軸の位置が一致するようにして6回のパッド印刷を行うこと以外は、実施例1で示した条件と同等の方法でレンズを形成した。
(実施例2)
パッド頂点部を印刷パターン内の箇所(印刷パターンの中心点から0.4mm離れた位置)に接触させることにより保護膜塗料をパッド頂点部からパッド斜面部付近にかけて転写させ、パッド印刷時のパッド頂点部と回折レンズの位置関係が、図5に示すようなパッド頂点部を回折レンズ5の中心11から0.4mm離れた円周51上でそれぞれ0°(52)、60°(53)、120°(54)、180°(55)、240°(56)、300°(57)の位置となる6箇所になるように印刷を行うこと以外は実施例1で示した条件と同等の方法でレンズを作成した。
(比較例2)
パッド印刷時のパッド頂点部と回折レンズの位置関係を、パッド頂点部が回折レンズの中心からの距離が1.0mmとなる場所とし、同一地点に6回のパッド印刷を行うこと以外は、実施例1で示した条件と同等の方法でレンズを形成した。
(実施例3)
パッド印刷時にパッドを回折レンズに押し当てている時間(静止時間)を3秒とし、また実施例1に示す減圧処理前の室温での自然放置の工程を設けないこと以外は、実施例1で示した条件と同等の方法で回折レンズを形成した。
実施例1、2と比較例1から3による条件により形成した保護膜を有する回折レンズそれぞれの保護膜形状を測定し、規定の保護膜形状とのずれ(形状データの差)を表すグラフを図6から10にそれぞれ示す。保護膜の形状測定はレーザー反射式形状測定装置を用いて、回折レンズの中心(光軸)を通る任意の1断面について測定ピッチを1μmとして行った。
図6(実施例1)では、規定の保護膜形状と、パッド印刷により作成した保護膜形状とのずれが全領域において、±1μm以内に収まる良好な形状が得られた。また、膜形成直後に含有していた気泡は自然放置により消失した。
図7(比較例1)では、回折レンズの外周付近で保護膜が厚くなりすぎる傾向があった。これは、パッドが押し付けられるときの圧力が中心付近で高く、外周付近で低くなり、塗料が回折レンズの外周方向に押し出されたためと考えられる。
図8(実施例2)では、図7(比較例1)と同様の傾向があったが、その程度は小さくなっていた。これは、パッド頂点部の接触点が回折レンズの中心から外れることにより、比較例1では回折レンズの中心に集中してかかっていた圧力が分散されたためと考えられる。しかし、回折レンズの中心から0.4mm離れた位置、つまり半径0.865mmである回折レンズ上にパッド頂点部の接触点が位置し、ここに圧力が偏るため、結果として、図7と同様の傾向が発生したと考えられる。
図9(比較例2)では、保護膜の厚みに傾きがでる傾向があった。
図10(実施例3)では、規定の保護膜形状と、パッド印刷により作成した保護膜形状とのずれが全領域において、±1μm以内に収まる良好な形状が得られた。また、パッド印刷後、乾燥前の工程において、自然放置することなく脱泡させることが可能であった。
本発明の回折レンズの製造方法は、携帯電話用、車載用、内視鏡用、デジタルスチルカメラ用などのカメラモジュール等に用いられる回折レンズの製造に利用できる。
本発明の実施の形態1におけるレンズ保護膜形成方法を示す図 本発明の実施の形態1におけるレンズの上面図およびパッド頂点部と光軸との位置関係を示す図 本発明の第3の実施形態におけるレンズの上面ならびに断面を示す図 実施例1におけるレンズの上面図およびパッド頂点部と光軸との位置関係を示す図 実施例2におけるレンズの上面図およびパッド頂点部と光軸との位置関係を示す図 実施例1の保護膜の規定の形状からのずれを表すグラフ 比較例1の保護膜の規定の形状からのずれを表すグラフ 実施例2の保護膜の規定の形状からのずれを表すグラフ 比較例2の保護膜の規定の形状からのずれを表すグラフ 実施例3の保護膜の規定の形状からのずれを表すグラフ
符号の説明
1 パッド
2 印刷版
3 保護膜塗料
4 基材
5 回折レンズ形状物
6 パッド頂点部
11 光軸(レンズ中心)
12,41,51 光軸を中心とした円周
30 レンズ
31 レンズ基材
32 回折格子
33 光学調整層

Claims (10)

  1. 回折格子形状が形成されたレンズ基材の表面に保護膜を有する回折格子レンズの製造方法であって、
    凸形状を有するパッドを、塗料を保持した印刷版と接触させ、前記塗料を前記印刷版から前記パッド上に転写する工程と、
    保持部材上に保持され、表面に回折格子形状が形成されたレンズ基材に対し、前記パッドの凸形状の頂点部が、前記レンズ基材の光軸上の点とは異なる位置に当接するように、前記塗料が転写された前記パッドを前記レンズ基材に接触させ、前記塗料を前記レンズ基材に再転写する工程と、
    を有し、
    前記2つの工程を、前記パッドの凸形状の頂点部が前記レンズ基材または前記保持部材と当接する位置を互いに異ならせて、複数回繰り返すことを特徴とする保護膜を有する回折レンズの製造方法。
  2. 前記回折形状が形成されたレンズ基材は、レンズ作用を有する非球面形状の曲面上に鋸歯状の回折格子を同心円状に形成したものであり、
    前記保護膜の表面形状は、前記非球面形状に略一致することを特徴とする請求項1に記載の回折レンズの製造方法。
  3. 前記パッドの凸形状の頂点部が前記レンズ基材または前記保持部材と当接する位置は、前記レンズ基材の光軸上の点を中心点とする同一円周上に位置することを特徴とした請求項1に記載の回折レンズの製造方法。
  4. 前記パッドの凸形状の頂点部が前記レンズ基材または前記保持部材と当接する位置は、前記レンズ基材の光軸上の点を中心点とする同一円周上に位置し、かつ前記同一円の半径は前記レンズ基材のレンズ半径よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の回折レンズの製造方法。
  5. 前記パッドの凸形状の頂点部が前記レンズ基材または前記保持部材と当接する位置は、前記同一円周上において等間隔に位置することを特徴とする請求項3または4に記載の回折レンズの製造方法。
  6. 前記パッドの凸形状の頂点部が前記レンズ基材または前記保持部材と当接する位置を互いに異ならせるために、前記レンズ基材の光軸を中心軸として、前記レンズ基材を回転させる工程をさらに有する請求項1〜5のいずれかに記載の回折レンズの製造方法。
  7. 前記パッドの凸形状の頂点部が前記レンズ基材または前記保持部材と当接する位置を互いに異ならせるために、前記レンズ基材に対して前記パッドを前記レンズ基材の光軸に垂直な面内において移動させる工程をさらに有する請求項1〜5のいずれかに記載の回折レンズの製造方法。
  8. 前記再転写する工程において、前記塗料が転写された前記パッドを前記レンズ基材に1秒以上接触させることを特徴とする回折レンズの製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかの製造方法により製造された保護膜を有する回折レンズ。
  10. 前記レンズ基材がガラスまたは樹脂よりなり、前記保護膜が、少なくとも樹脂と無機粒子より構成され、前記レンズ基材よりも高屈折率のコンポジット材料であることを特徴とする請求項8に記載の回折レンズ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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