以下、図面を用いて本実施形態の熱交換器について説明する。
図1(a)は本実施形態の熱交換器の一例を示す外観斜視図であり、(b)は断面図であり、図2は、図1に示す熱交換器のうち、(a)は熱交換用部材の一例を示す斜視図、(b)は導入部材および導出部材の一例を示す側面図、(c)は被覆部材の一例を示す斜視図であり、さらに図3(a)は、図1で示す熱交換器を構成する熱交換用部材の一部を抜粋して示す断面図、(b)は(a)で示す破線部分を拡大して示す断面図である。なお、図1〜図3において同一の部材については同一の番号を付するものとする。
図1に示す熱交換器1は、各部材がセラミック焼結体から構成されている。熱交換器1をセラミック焼結体から構成することにより、耐熱性や耐腐食性に優れた熱交換器とすることができる。このようなセラミック焼結体を構成する材料としては、熱交換の対象とする流体の特性に合わせて適宜選択して用いればよく、例えば、炭化珪素を主成分とする材料のほか、アルミナを主成分とする材料等を用いることができる。炭化珪素を主成分とするならば、比較的熱伝導率が高いため、熱交換器の熱交換効率を高めることができ、また、アルミナを主成分とするならば、原料代が安く加工しやすいため、比較的安価に熱交換器を製造することができる。
本実施形態の熱交換器1は、内部が第1の流体が流れる第1流路8とされた熱交換用部材2の複数個のそれぞれが空間を有して配置され、該空間が第2の流体が流れる第2流路10とされている。なお、第1の流体および第2の流体は、液体や気体等、目的に応じて適宜用いることができ、例えば第1の流体を水等の液体とし、第2の流体を高温のガス等の気体とすることができる。
また、熱交換用部材2の一端側には、第1流路8同士と連通し、第1の流体を熱交換用部材2の第1流路8に導入するための導入部材3を備えており、熱交換用部材2の他端側には、第1流路8同士と連通し、熱交換用部材2の第1流路8を流れた流体を外部に導出するための導出部材4を備えている。なお、ここでいう一端側および他端側とは、第1の流体の流れる方向に沿った一端側および他端側を意味する。
熱交換用部材2においては、導入部材3および導出部材4と連通する必要があるため、導入部材3および導出部材4のそれぞれと連通するための孔を有している。なお、図1に示す熱交換器1においては、熱交換用部材2のうち、第1の流体が流れる方向に沿った一端である最上段に配置される熱交換用部材2(図1においては、2aに該当する。)は、内部を流れる流体が外部に漏れないよう、上面側に孔は設けられておらず、下面側にのみ
孔を有している。また、最上段以外に配置される熱交換用部材2(図1においては、2b、2cに該当する。)は、図2(a)に示すように、貫通孔14を有している。そして、導入部材3や導出部材4を、これらの孔に挿入して配置することにより、熱交換用部材2と、導入部材3および導出部材4とを簡単に組み合わせることができ、各流路を容易に連通させることができる。
一方、導入部材3と導出部材4とは、図2(b)に示すように、1つの筒状(例えば、円筒状)の部材で構成されており、その一部には熱交換用部材2と連通するための連通部15を備えている。導入部材3および導出部材4が、1つの筒状の部材で構成されていることにより、導入部材3および導出部材4を流れる第1の流体が漏れ出すことを効果的に抑制できる。なお、図2(b)においては、導入部材3および導出部材4の一部を省略して図示している。そして、この連通部15と貫通孔8とを連通させることで、導入部材3の内部に設けられた流路(以下、入口流路7という。)を流れた第1の流体は、それぞれの熱交換用部材2内の第1流路8に流れ、この第1流路8を流れる間に、第2流路10を流れる第2の流体と熱交換することができる。また、第1流路8を流れた第1の流体は、導出部材4の内部に設けられた流路(以下、出口流路9という。)を流れて外部に排出される。
なお、入口流路7を流れた第1の流体が、効率よく第1流路8に流れ、また第1流路8を流れた第1の流体が効率よく出口流路9に流れるよう、図2(a)に示す貫通孔14および図2(b)に示す連通部15においては、それぞれ熱交換用部材2bの内側における部分のみが開口している。
そして、熱交換器1を用いて効率のよい熱交換を行なうにあたっては、第1の流体と第2の流体とが対向流となるように配置することが好ましいが、必ずしも対向流となるように配置する必要はなく、例えば直交流となるように配置する、流体の流れを同じ方向となるように配置する等、適宜、目的とする流体の流れに合わせて配置することができる。
図3(a)は、熱交換用部材2の一部を抜粋して示す断面図である。このような熱交換用部材2は、蓋体部16と、底板部17と、蓋体部16と底板部17とを接続するように設けられた隔壁部18とを備えており、この蓋体部16と底板部17と隔壁部18とで囲まれた空間が、第1の流体が流れる第1流路8とされている。この隔壁部18は、第1の流体が流れる方向に沿って一端側から他端側に延びていることが好ましく、これにより第1の流体と隔壁部18とが接触する表面積を大きくでき、熱交換効率を向上できる。なお、図3(a)においては、第1流路8を2つ有している熱交換用部材2の一例を示しているが、第1流路8の数は特に制限はなく、例えば1つであってもよく、また2つ以上であってもよく、求められる熱交換の性能にあわせて適宜設定することができる。
また、熱交換用部材2に設けられる第1流路8は、第1の流体が効率よく流れる構成とすることが好ましい。それゆえ、例えば導入部材3との接続部から内側に向けて広がった構成として、また導出部材4との接続部に向けて縮まる構成とすることもできる。このような構成とすることにより、導入部材3から導入された第1の流体が、第1流路8に留まることを抑制でき、第1の流体を効率よく流すことができる。
そして、このような熱交換用部材2において、さらに熱交換効率を向上させるにあたり、第2流路10を流れる第2の流体の熱を効率よく第1流路8を流れる第1の流体に伝熱するため、蓋体部16および底板部17のうち少なくとも一方において、第1流路8の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)を粗くして、第2の流体の熱をより多く第1の流体に伝熱することが考えられる。
しかしながら、この場合、蓋体部16および底板部17のうち少なくとも一方において、第1流路8の直上において、第2の流体の熱が効率よく第1の流体に伝わるものの、蓋体部16および底板部17のうち少なくとも一方における隔壁部18の直上の部位においては、第2の流体より伝わった熱の第1流路8への伝熱量が減少し、第2の流体より伝わった熱が蓋体部16や底板部17に蓄熱されてしまう。それにより、蓋体部16および底板部17において温度差を生じ、それに伴って、隔壁部18の直上においてクラック等の破損を生じるおそれがあることが分かった。
それゆえ、本実施形態の熱交換用部材2においては、蓋体部16および底板部17のうち少なくとも一方において、第1流路8の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が、隔壁部18の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)よりも小さい。それにより、隔壁部18に伝熱された熱をより多く第1流路8側に伝えることができ、蓋体部16や底板部17に蓄熱される熱量を低減できる。それゆえ、蓋体部16および底板部17における温度差を低減でき、隔壁部18の直上におけるクラック等の破損を抑制することができる。なお、言うまでもないが、第1流路8の直上および隔壁部18の直上とは、蓋体部16の外表面のみならず、図示において下に位置するものの、底板部17の外表面のことも指し、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の比較においては、蓋体部16側、底板部17側のそれぞれで行なうものである。
そして、蓋体部16と底板部17との両方において、第1流路8の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が、隔壁部18の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)よりも小さいことが好ましい。
また、蓋体部16および底板部17のうち少なくとも一方において、第1流路8の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が0.2〜0.4μmであり、隔壁部18の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が0.5〜1.4μmであることが好ましい。それぞれの粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)をこの範囲とすることで、隔壁部18を介して第1流路8に伝熱される熱量を増やすことができ、蓋体部16や底板部17における温度差を低減できることで、破損を抑制でき、信頼性の向上した熱交換用部材2とすることができる。
また、蓋体部16および底板部17のうち少なくとも一方において、第1流路8の直上における外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が、隔壁部16の直上における外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)よりも小さいことが好ましい。
具体的には、第1流路8の直上における外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)としては50〜100μmであることが好ましく、隔壁部18の直上における外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)としては、110〜300μmであることが好ましい。それぞれの粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)をこの範囲にすることで、隔壁部18に伝熱された熱をより多く第1流路8側に伝えることができ、蓋体部16や底板部17に蓄熱される熱量を低減できる。それゆえ、蓋体部16および底板部17における温度差を低減でき、隔壁部18の直上におけるクラック等の破損を抑制することができる。
なお、蓋体部16と底板部17との両方において、第1流路8の直上における外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が、隔壁部18の直上における外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)よりも小さいことが好ましい。
また、蓋体部16と底板部17のうち少なくとも一方において、第1流路8の直上における外表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が、隔壁部18の直上における外表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)よりも小さいことが好ましく、具体的には、第1流路8の
直上における外表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が、0.7〜3.0μmであることが好ましく、隔壁部18の直上における外表面の粗さ曲線の最大高さ粗さ(Rz)が、1.3〜8.0μmであることが好ましい。
また、熱交換用部材2は、Ni、Cu、Al、Crのうちのいずれかを主成分とする被覆層で覆われていることが好ましい。熱交換用部材2が、Ni、Cu、Al、Crのうちのいずれかを主成分とする被覆層で覆われていることにより、腐食性の高いガスや液体に曝される使用環境下において優れた耐食性を有することができる。例えば、CF4などのフッ素系ガス、フッ化水素(HF)水溶液などの液体に触れることによって、熱交換用部材2の成分がフッ化物となって昇華したり、溶出したりすることを妨げることができる。
また、Ni、Cu、Al、Crの存在は、X線回折装置(XRD)、エネルギー分散型X線装置(EDS)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)で測定することにより確認することができる。また、含有量については、被覆層をサンプリングし、上述した測定によって確認された成分について、ICPを用いて定量分析すればよい。なお、上述した測定によって確認された成分が、Ni、Cu、Al、Crのうちのいずれかであり、被覆層を構成する全成分の50質量%を超えていれば、その成分は、熱交換用部材2の被覆層における主成分である。
以下に、熱交換用部材2の製造方法について説明する。
例えば、主成分となる原料(炭化珪素、アルミナ等)の粉末に、焼結助剤、バインダ、溶媒および分散剤等を添加して適宜混合して、スラリーを作製する。このスラリーを用いて、ドクターブレード法により形成したセラミックグリーンシートを金型により打ち抜いて、複数の所望形状のシート状成形体を得た後、積層することにより積層体である成形体を作製する。また、セラミックグリーンシートの他の製造方法としては、スラリーをスプレードライ法により噴霧乾燥して顆粒を作製し、その顆粒をロールコンパクション法によって粉末圧延し、セラミックグリーンシートを得ても良い。
また、成形体の他の製造方法としては、主成分となる原料の粉末に、焼結助剤、バインダ、溶媒および分散剤等を添加して適宜混合して作製した坏土を用いて押出成形法で作製するほか、上述した顆粒を用いてメカプレス法や冷間静水圧加圧成形(CIP)法で作製しても良い。また、CIP後には、切削加工を施しても良い。
続いて、成形体のうち、第1流路8の直上となる部位に、ブラストマスクを配置する。ブラストマスクとしては、一般的に使用されるものを用いることができ、例えばシート状のものを用いればよい。なお、ブラストマスクとしては、1層からなるほか、多数の層からなるブラストマスクを用いてもよい。
そして、ブラスト法により粗面加工を行なう。具体的には、ブラストマスクを配置した後、ノズルから研磨材を高圧で吹き付けることにより、成形体におけるブラストマスク以外の外表面に粗面加工を施す。
研磨材としては、成形体の材質に応じて種々の材料を用いることができ、例えばジルコニア、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素等の粒子を用いることができる。成形体の外表面の粗さは、研磨材の材質、粒径、吹き付け時間、吐出圧などを変えることで適宜調整することができる。
なお、ここまで、第1流路8の直上以外、すなわち隔壁部18の直上にのみ粗面加工を施す例を説明したが、第1流路8の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra
)が、隔壁部18の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)よりも小さいという関係を満たすのであれば、第1の流路8の直上にも粗面加工を施しても良いことは言うまでもない。また、ブラスト法の代わりに、金型を使用して粗面加工を施しても良い。この場合、成形体の表面を所望の表面性状に転写可能な表面を有する金型を使用すれば良い。
このようにして得られた成形体を焼成することで熱交換用部材2となる焼結体を得ることができる。なお、ブラスト法による粗面加工は、熱交換用部材2となる成形体を焼結して焼結体とした後に行なってもよい。ちなみに、蓋体部や底板部の外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)および粗さ曲線の最大高さ粗さは、JIS B 0601 2001に従って算出することができる。
次に、熱交換用部材2に、Ni、Cu、Al、Crのうちのいずれかを主成分とする被覆層を形成する方法について説明する。第1の方法としては、無電解メッキ法により、Ni、Cu、Al、Crのうちのいずれかをメッキすれば良く、被覆層の厚みは5〜20μm程度とすればよい。また、第2の方法としては、プラズマ溶射法により、NiAl粉末、NiCr粉末、AlCr粉末およびCuAl粉末等の金属粉末のいずれかを用いて550〜800℃で溶射する。これにより被覆層は、NiAl、Ni3Al、Ni2Al3、Cr2Al、CuAl2、Cu3Al2のうちの少なくとも1つの結晶相からなるものとなり、被覆層の厚みは5〜50μm程度とすればよい。
なお、本実施形態の熱交換器1においては、上述のように得られた熱交換用部材2に孔(貫通孔等)を設け、この孔に導入部材3および導出部材4を挿入することで、入口流路7、第1流路8および出口流路9がそれぞれ連通することとなるが、その際、熱交換用部材2と、導入部材3および導出部材4との接続部から、第1の流体が漏れだすおそれがある。ここで、第1の流体が漏れ出した場合には、熱交換効率が低下するほか、第1の流体によっては、熱交換器1が配置される各種装置等に悪影響を及ぼすおそれがある。
それゆえ、図1に示す熱交換器1においては、熱交換用部材2間に配置され、導入部材3および導出部材4のそれぞれの外周を覆うとともに、一端面および他端面が熱交換用部材2と接続された被覆部材6を備えている。なお、被覆部材6の一例を図2(c)に示している。このような被覆部材6の外形は、導入部材3および導出部材4に合わせた形状とすることができ、例えば円筒状とすることができる。
それにより、熱交換用部材2と、導入部材3および導出部材4との接続部から第1の流体が漏れた場合であっても、被覆部材6の一端面および他端面が熱交換用部材2と接続されていることから、第1の流体が外部に漏れることを抑制することができる。従って、さらに信頼性の向上した熱交換器1とすることができる。
なお、図1においては、被覆部材6の内面が、導入部材3および導出部材4の外面とそれぞれ接続された例を示しているが、必ずしも接続されている必要はなく、例えば導入部材3および導出部材4の外面と隙間を空けて配置されていても構わない。この場合には、熱交換用部材2と、導入部材3および導出部材4との接続部から第1の流体が漏れたとき、この隙間が漏れた第1の流体を留めるための貯留部の役目を果たすこととなる。
なお、図1に示す熱交換器1においては、導入部材3および導出部材4の下側に、第1の流体を導入する導入部11と、導出部材4を流れた第1の流体を収集する収集部12とを備えるフランジ部5を有している。
それにより、フランジ部5の一方側から導入された第1の流体は、入口流路7、第1流
路8および出口流路9を流れて、フランジ部5の他方側から排出される。ちなみに、図1(a)においては、出口流路9の出口13を図示している。
なお、導入部11および収集部12は、それぞれが混合しないよう、独立して設けられていればよく、また、導入部11および収集部12は互いに独立した流路を形成しても良く、その大きさは適宜設定することができる。このように、導入部11および収集部12が一体となったフランジ部5を用いたならば、フランジ部でも熱交換をすることができるので、熱交換器の熱交換効率を高めることができる。
また、上述した熱交換器1においては、導入部材3および導出部材4を1つの筒状の部材から構成した例を用いて説明したが、例えば各熱交換用部材2の間に配置されるように複数個の部材より構成してもよい。
この場合、導入部材3の入口流路7を流れる第1の流体が、第1の流体の流れる方向の先端側に位置する第1流路8に多く流れ、入口側の第1流路8に流れる量が少なくなることを抑制すべく、第1流路8の導入部材3側の端部や、貫通孔14の内部、さらには導入部材3の内部等に、第1の流体が各第1流路8に流れやすくなるよう、例えば入口流路7の入口側に向けて延びる板状の流量調整部材を設けることもできる。
また、図1(b)に示したように入口流路7が同じ幅で形成されている場合、第1の流体が流れる方向の一端側における第1流路8に多くの第1の流体が流れ、入口側に位置する第1流路8に流れる第1の流体の量が少なくなり、それにより効率のよい熱交換ができなくなるおそれがある。
それゆえ、例えば、導入部材3の形状を、第1の流体が流れる方向の一端側における入口流路7の幅が、第1の流体が流れる方向の他端側である入口側における入口流路の幅よりも狭い形状とする、言い換えれば導入部材3における入口流路7が上に向けて先細りとすることもできる。
導入部材3の形状をこのような構成とすることで、より多くの量の第1の流体8を、入口側に位置する第1流路8に流すことができ、それにより熱交換効率を向上することが可能な熱交換器1とすることができる。
また、上記の熱交換器1においては、1つの導入部材3および導出部材4を設けた例を示しているが、熱交換用部材2の大きさ等によっては、導入部材3および導出部材4を複数設けることもできる。
なお、上述の熱交換器1は、特にその用途が制限されるものではなく、例えば各種レーザー装置のほか、熱交換を行うものであれば適宜適用することができる。
以下に、上述した熱交換器1の作製方法について説明する。なお、熱交換用部材2については説明を省略する。
まず、導入部材3、導出部材4、被覆部材6およびフランジ部5のそれぞれを個別に作製する。
例えば、それぞれの部材を構成する主成分となる原料(炭化珪素、アルミナ等)の粉末に、焼結助剤、バインダ、溶媒および分散剤等を添加して適宜混合して、スラリーを作製する。このスラリーを用いて、ドクターブレード法により形成したセラミックグリーンシートを金型により打ち抜いて、複数の所望形状のシート状成形体を得た後、積層すること
により積層体である成形体を作製して焼成することで、各部材を作製する。また、セラミックグリーンシートの他の製造方法としては、スラリーをスプレードライ法により噴霧乾燥して顆粒を作製し、その顆粒をロールコンパクション法によって粉末圧延し、セラミックグリーンシートを得ても良い。
また、成形体の他の製造方法としては、主成分となる原料の粉末に、焼結助剤、バインダ、溶媒および分散剤等を添加して適宜混合して作製した坏土を用いて押出成形法で作製するほか、上述した顆粒を用いてメカプレス法やCIPで作製しても良い。また、CIP後には、切削加工を施しても良い。さらに、焼結体に研削加工を施しても良い。
次に、作製した各部材を用いて組み立てを行なう。まず、第1の流体が流れる方向に沿った一端となる熱交換用部材2に設けられた孔に、導入部材3および導出部材4とを挿入する。続いて導入部材3および導出部材4に、被覆部材6を挿入する。さらに続いて熱交換用部材2、被覆部材6を順に繰り返して挿入して、最後にフランジ部5を接続する。なお、各部材は接着剤等を塗布した状態で挿入し、最終的に作製したものを熱処理することで、本実施形態の熱交換器1とすることができる。また、導入部材3および導出部材4を1つの筒状体より構成する場合は、熱交換用部材2と被覆部材6を積層して、その後導入部材3および導出部材4を挿入して形成してもよい。
ここで、使用される接着剤としては、耐熱性や耐腐食性に優れているものとして、無機接着剤を用いることが好ましい。無機接着剤としては、例えば、SiO2−Al2O3−B2O3−RO系ガラス(R:アルカリ土類金属元素)粉末や、金属珪素粉末と炭化珪素粉末とを混合したセラミック粉末を含有するペースト等を用いれば良い。このような無機接着剤を使用すると、熱処理を行った際に部材を劣化させることなく、互いの部材を強固に接合できるうえに、耐熱性や耐腐食性に優れているので、熱交換器の信頼性を向上することができる。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
例えば、隔壁部18から第1流路8(第1の流体)に伝熱される熱量を上げるにあたり、第1流路8を構成する隔壁部18の流路側表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)を、蓋体部16および底板部17の流路側表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)よりも大きくしてもよい。それにより、隔壁部18から第1流路8に伝わる熱量を大きくでき、蓋体部16や底板部17に蓄熱される熱量を低減できることから、蓋体部16および底板部17における温度差を低減でき、隔壁部18の直上または直下におけるクラック等の破損をさらに抑制することができる。
また、例えば、上述において、導入部材3の形状として、第1の流体が流れる方向の一端側における入口流路7の幅を、第1の流体が流れる方向の他端側である入口側における入口流路の幅よりも狭くする例を示したが、導出部材4においては導入部材3とは逆に、第1の流体が流れる方向の一端側である出口側における出口流路9の幅を、第1の流体が流れる方向の他端側である出口流路9の幅よりも広い構成とすることができる。すなわち、導出部材4における出口流路9が、上に向けて先細りとすることができる。それにより、上段側の熱交換用部材2に第1の流体が多く流れるようになり、全体として熱交換器1の熱交換効率を向上することができる。
また、本実施形態の熱交換用部材2に、Ni、Cu、Al、Crのうちのいずれかを主成分とする被覆層を形成する例を示したが、熱交換用部材2に限らず熱交換器1にも被覆
層を形成しても良い。
また、本実施形態の熱交換用部材2を複数組み合わせた熱交換器1として説明したが、熱交換用部材2そのものを熱交換器として用い、例えば、半導体素子用や、半導体製造装置用等の熱交換器とすることもできる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、主成分となる原料である炭化珪素の粉末に、焼結助剤、バインダ、溶媒および分散剤等を添加して適宜混合して、スラリーを作製し、このスラリーを用いてスプレードライ法により顆粒を作製し、その顆粒をロールコンパクション法によって粉末圧延し、セラミックグリーンシートを作製した。
次に、このセラミックグリーンシートを金型により打ち抜いて、複数の所望形状のシート状成形体を得た後に積層することにより、第1流路となる空間を有する積層成形体を得た。次に、積層成形体の第1流路の直上となる部位に、ブラストマスクを配置した。このブラストマスクを配置した積層成形体に対し、焼成後に表1に示す粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)を有するように粗面加工を施した。また、次に、積層成形体の隔壁部の直上となる部位に、ブラストマスクを配置し、このブラストマスクを配置した積層成形体に対し、焼成後に表1に示す粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)を有するように粗面加工を施した。その後、不活性ガス雰囲気下において、2275℃の温度で10時間保持して焼成することにより、熱交換用部材を得た。
次に、炭化珪素の粉末に、焼結助剤、バインダ、溶媒および分散剤等を添加して適宜混合してスラリーを作製し、このスラリーを用いてスプレードライ法により顆粒を作製し、押出成形法により導入部材および導出部材、メカプレス法により被覆部材、ロールコンパクション法によって作製したセラミックグリーンシートを積層成形することによりフランジ部となる成形体を作製した。この後、熱交換用部材と同様に焼成を行ない、焼成後に、金属珪素粉末と炭化珪素粉末とを混合したセラミック粉末を含有するペーストを用いて、熱交換用部材、導入部材、導出部材、被覆部材およびフランジ部を接合し、熱交換器の組み立てを行なった。その後、熱処理することにより、図1に示すような熱交換器(試料No.1〜19)を得た。
なお、試料No.18および19は、粗面加工条件の調整により、第1流路の直上の外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)および隔壁部の直上の外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)は同じ値としながら、試料No.18については、第1流路の直上の外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を200μmとし、隔壁部の直上の外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を150μmとし、試料No.19については、第1流路の直上の外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を75μmとし、隔壁部の直上の外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を200μmとした。
そして、各試料につき、JIS B 0601 2001に準拠した測定機(株式会社
東京精密製 SURFCOM 1400D)を使用して粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)測定した。具体的には、測定長さを2.5mm、カットオフ波長を0.8mm、測定速度を0.3mm/sとして測定した。なお、試料No.18および19について記載した粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の値も、同様の測定機により測定した値である。
次に、作製した試料No.1〜19の熱交換器の評価を行った。
評価方法としては、第1の流体を25℃の水、第2の流体を600℃の空気とした熱交換を10分間実施し、その後に室温(25℃)に戻すというサイクルを1回とした冷熱サイクルを繰り返し、光学顕微鏡での観察においてクラックが確認されるまでの回数で評価した。なお、試料はそれぞれ15個準備し、平均値をクラックが確認されるまでの回数とした。結果を表1に示す。
表1に示す結果から、試料No.1〜10および13〜19は、クラックが確認されるまでの回数が500回以上であり、第1流路の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が、隔壁部の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)よりも小さいことにより、熱交換用部材の破損を抑制でき、信頼性が向上することが分かった。
また、試料No.4、5、8,9、13〜15、18、19は、クラックが確認されるまでの回数が650回以上であり、第1流路の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が0.2〜0.4μmであり、隔壁部の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が0.5〜1.4μmであることにより、熱交換用部材の破損をさらに抑制でき、さらに信頼性が向上することが分かった。
また、試料No.18および19の結果より、第1流路8の直上における外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が、隔壁部18の直上における外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)よりも小さい方が好ましいことが分かった。
さらに、蓋体部および底板部ともに、試料No.9と同様の表面性状の試料を作製し、上記評価を行なったところ、試料No.9よりも良い評価結果が得られた。この結果より、蓋体部および底板部ともに、第1流路の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が、隔壁部の直上における外表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)よりも小さいことが好ましいことが分かった。