JP6350969B2 - In又はIn合金スパッタリングターゲット及びその製造方法 - Google Patents
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Description
このCIGS膜をスパッタリング法により成膜する方法として、まず、Inスパッタリングターゲットを使用してスパッタリング法によりIn膜を成膜し、このIn膜の上にCu−Ga二元系合金スパッタリングターゲットを使用してスパッタリングすることによりCu−Ga二元系合金膜を成膜し、得られたIn膜及びCu−Ga二元系合金膜からなる積層膜をSe雰囲気中で熱処理してCu−In−Ga−Se四元系合金膜を形成する方法(セレン化法)が提案されている。
また、本発明は平板状のCu又はCu合金製のバッキングプレートを用いるIn又はIn合金スパッタリングターゲットのみならず、円筒状のCu又はCu合金製のバッキングチューブを用いるIn又はIn合金円筒スパッタリングターゲットや、その他の類似構造を有するIn又はIn合金スパッタリングターゲットにも適用できる。
(1)本発明のIn又はIn合金スパッタリングターゲットは、表面粗さ:0.1〜1.0μmのCu又はCu合金製のバッキングプレートに、ターゲット本体となる機械加工等で形成されたIn又はIn合金成形体が、InとCuの合金による結合層を介して接合されたIn又はIn合金スパッタリングターゲットであって、前記結合層は、厚さ:5〜100μmを有することを特徴とする。
(2)前記(1)のIn又はIn合金スパッタリングターゲットにおける前記結合層は、前記In又はIn合金成形体と前記ターゲット支持基体とのボンディング面におけるカバー率が90%以上であることを特徴とする。
(3)本発明のIn又はIn合金スパッタリングターゲットの製造方法は、Cu又はCu合金製のバッキングプレートの表面を表面粗さ:0.1〜1.0μmに研磨する工程と、前記ターゲット支持基体の表面上に、厚さ:3〜50μmを有するInとCuの合金による下地層を形成する工程と、形成された前記下地層上に機械加工等で形成されたIn又はIn合金の成形体を接合する工程と、を備え、前記In又はIn合金の成形体と前記ターゲット支持基体とは、前記下地層を含むInとCuの合金による厚さ:5〜100μmの結合層を介して接合されることを特徴とする。
(4)前記(3)の製造方法では、前記下地層及び前記結合層は、前記In又はIn合金成形体と前記ターゲット支持基体とのボンディング面に対するカバー率がそれぞれ90%以上であることを特徴とする。
さらに、厚さ:5〜100μmの前記結合層が、ターゲット本体となるIn又はIn合金成形体とバッキングプレートの界面(ボンディング面)の90%以上をカバーすることを特徴としている。厚さが5μm以上の結合層が90%以上のボンディング面をカバーできない場合には、結合層がない部分、或いは、薄い部分から、ターゲット本体となるIn又はIn合金層へのCuの拡散が多量に発生し、ターゲット中のCu含有量が目標値以内に制御できなくなる。一方、厚さ:100μm以上の結合層が90%以上を占めると、ターゲット本体となるIn又はIn合金成形体とバッキングプレートの界面に、亀裂が発生しやすくなる。
この様な手順に従えば、厚さ:3〜50μmのInCu合金からなる下地層を形成し、その後又はそれと同時に、この下地層上でIn原料を溶解し、さらに冷却して固化させることで前記バッキングプレートの表面上に、In又はIn合金成形体からなるターゲット本体を鋳造し、機械加工を経て、バッキングプレートからの剥がれを防止でき、Cu不純物の含有が少ないIn又はIn合金スパッタリングターゲットを作製することもできる。
従って、In又はIn合金成形体を、Cu又はCu合金製のバッキングプレートに結合層(InCu合金相)を介して接合させることができ、バッキングプレートとの接合強度を高めたIn又はIn合金スパッタリングターゲットを作製できる。
また、下地層カバー率についても、照射時間やIn溶湯温度での調整で90%以上に調整することができる。照射に使用する超音波の周波数は10〜100kHzの範囲で良く、特に、20〜50kHzが好ましい。超音波の照射パワーは、5〜300W/cm2が好ましく、特に、10〜100W/cm2が好ましい。超音波照射はボンディング面全面において同時に行っても良く、ボンディング面の局所ごとに順次に照射することも良い。
工程1:
表面粗さ:0.1〜1.0μmの範囲に研磨された円形のCu又はCu合金からなるバッキングプレート1を、160〜230℃に加熱されたホットプレート2上に載置し、該バッキングプレートを加熱する(図1(A)を参照)。ここで、バッキングプレートの表面研磨は、上記の表面粗さ範囲になるように、市販の研磨装置を用いて行われる。
工程2:
バッキングプレート1の外周に、外周に堰となる型(SUS製)3を設けて、バッキングプレート上に鋳型を形成する(図1の(B)を参照)。
工程3:
バッキングプレート1を160〜230℃に加熱し、ボンディング面にInの溶湯を均一に塗布する。
工程4:
上記In溶湯とバッキングプレートに超音波を照射し、厚さ:3〜50μmのCu−In合金による下地層を均一に形成する。この下地層を形成した後に、余ったIn溶湯を取り除く。
下地層を形成後、一旦バッキングプレートを冷却し、下記の工程5を行っても良く、工程5と実質的に連続的に行ってもよい。
工程5:
型3で形成された鋳型内に、99.99%以上のIn原料であるInインゴット5を所定量だけ投入する(図1の(D)を参照)。
工程6:
上記鋳型内で、Inの融点以上の温度に加熱し、Inインゴット5を溶解し、In溶融体6を作成し、その後に、例えば、迅速に加熱を停止し、冷却固化を行う。下地層をベースに形成される結合層の厚みを一定範囲に制御するため、Inの溶湯温度が250℃以下であることが好ましく、160℃までの冷却速度は、30℃/h以上であることが好ましい(図1の(E)を参照)。なお、最高温度での保持時間は、3時間以下である。
工程6:
In溶融体6が固化され、ターゲット本体となるIn層7が形成された後に、型3を除去し、In層7の表面を機械加工により切削して、所定形状のInスパッタリングターゲットを完成させる(図1の(F)を参照)。ここで、In層7は、バッキングプレート1上に、InCu合金からなる結合層を介して接合される。
同様に、工程4において、予め用意したIn層に相当するIn板を、下地層を介して、バッキングプレートに接合させる方法もあり、以上と同様の効果が得られる。
なお、上述した本実施形態における製造工程では、Inスパッタリングターゲットについてであったが、上記のターゲット本体となるIn合金層を形成する場合には、In合金インゴットを用いることにより、同様の製造工程で、In合金スパッタリングターゲットを作製することができる。
次に、上記本実施形態に基づいて、具体的に、Inスパッタリングターゲットを作製した実施例について説明する。
本実施形態のInスパッタリングターゲットについては、図1に示された工程手順に従って作製された。
先ず、表1に示される表面粗さに研磨された円形のCu製バッキングプレート1を、表1に示されるバッキングプレート温度となるように、加熱されたホットプレート上に載置し、該バッキングプレートを加熱し(工程1)、研磨表面にInCu合金下地層を形成する。下地層は、In溶湯を塗布したバッキングプレート表面に対して、周波数40kHz、パワー密度50W/cm2の超音波を、表1に示される照射時間(秒)の間、照射することで形成し、余った酸化膜付きIn溶湯を取り除いた(工程2)。次に、この下地層が形成されたバッキングプレート上に、SUS製の円筒状型を設け、バッキングプレート上に直径50.8mmの鋳型を形成した(工程3)。鋳型内に、99.99%以上のInインゴットを所定量だけ投入した(工程4)。ここで、上記鋳型内で、表1に示されるキープ時間(分)に設定して加熱し、Inインゴットを溶解し、In溶融体を作成し、その後に、放冷し、固化させた(工程5)。In溶融体が固化されて、In層が形成された後に、円筒状型を除去し、ターゲット本体とするため、In層の表面を機械加工により切削して、厚さ10mmの実施例1〜6のInスパッタリングターゲットを作製した(工程6)。
また、実施例7は、上記工程2に続いて、下地層が形成されたバッキングプレート表面に、予め、厚さ:0.4mm程度にIn溶湯を塗り、その上に予め圧延、機械加工されたIn層に相当するIn板を載せた(工程7)。In板の底面が溶け始めたら、ホットプレートによる加熱を停止し、放冷、接着させた(工程8)。
上記の実施例と比較するため、比較例1〜3のInスパッタリングターゲットを作製した。各比較例のInスパッタリングターゲットの作製においては、実施例1〜7のInスパッタリングターゲットの作製手順(工程1〜6)と同様であるが、表1に示されるように、比較例1〜2の場合は、表面粗さRa、溶解温度、キープ時間、結合層(InCu合金相)厚み、Cu含有量のいずれかの条件が本発明の範囲外になっている。
また、比較例3は実施例7のInスパッタリングターゲットの作製工程7、8と同様であるが、下地層を形成する工程2が行われていない。
なお、下地層のカバー率は、実施例と比較例と同様な条件で作成した工程2の下地膜付きバッキングプレートを切断、解析したものである。
バッキングプレートのボンディング面について、表面粗さ計測装置を用いて測定した。ボンディング面における複数個所(5箇所)の測定値を平均して、その値を表1の「表面粗さ(Ra)(μm)」欄に示した。
バッキングプレート表面に予め形成した下地層及びスパッタリングターゲット作成後の結合層になるInCu合金相の厚みを測定した。
作製したInスパッタリングターゲットの縦断面について、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)により像を取得し、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとの界面に形成されたInCu合金相の厚さを計測した。ボンディング面の任意5ヶ所、各箇所の界面長さ5mmの範囲の測定値を平均して、当該Inスパッタリングターゲットに係るInCu合金相の厚さとした。その測定結果を、表1の「下地層厚み(μm)」欄及び「結合層厚み(μm)」欄に示した。
<下地層及び結合層(InCu合金相)のカバー率の測定>
上記EPMA像を用いて、下地層の厚みが3μmから50μmの界面区域の長さを測定し、下記のようにカバー率を計算した。
下地層のカバー率=
〔(3〜50μmの界面区域の長さ)/(観察した界面の全長)〕×100%
ここで、ボンディング面の任意5ヶ所、各箇所の界面長さ5mmの範囲の測定値を平均して、当該Inスパッタリングターゲットに係る下地層のカバー率とした。
上記と同様に、厚みが5〜100μmの結合層のカバー率も測定し、その測定結果を、表1の「下地層カバー率」欄及び「結合層カバー率」欄に示した。
バッキングプレートがボンディングされたInスパッタリングターゲットにおけるIn層を切削し、バッキングプレート面から1mmのところで得られた切粉5サンプルをICPによりCu含有量を測定した。5サンプルの測定結果の最大値を、表1の「Cu含有量(ppm)」欄に示した。5サンプルの測定結果の最大値をCu含有量測定値として選ぶ理由は、結合層のカバー状況によって、ターゲット本体へのCu不純物の拡散が場所により異なり、サンプリングした箇所のCu不純物の最大測定値はターゲット本体中のCu不純物最大濃度を、より適正に反映できるためである。
上記工程6において、バッキングプレートにボンディングされたIn層の表面を機械加工する際に、ボンディング界面に剥がれ又は亀裂の有無を確認した。その剥がれ又は亀裂が発生しない場合を、「無」とし、亀裂等の欠陥が発生した場合を、「亀裂有り」として、その結果を、表1の「ボンディング欠陥の有無」欄に示した。
一方、比較例1の場合には、InCu合金相の厚みが、薄いため、ボンディング界面に亀裂が発生した。また、比較例2の場合には、下地層と結合層が共に100μm以上と厚かったため、ボンディング界面に亀裂が発生した。比較例3の場合には、結合層がないため、バッキングプレートとターゲット本体との間に、亀裂が発生した。
2 ホットプレート
3 円筒状型
4 下地層
5 Inインゴット
6 In溶融体
7 In層
Claims (4)
- 表面粗さ:0.1〜1.0μmのCu又はCu合金製のバッキングプレート又はバッキングチューブによるターゲット支持基体上に、ターゲット本体となるIn又はIn合金成形体が、InとCuの合金による結合層を介して接合されたIn又はIn合金スパッタリングターゲットであって、
前記結合層は、厚さ:5〜100μmを有することを特徴とするIn又はIn合金スパッタリングターゲット。 - 前記結合層は、前記In又はIn合金成形体と前記ターゲット支持基体とのボンディング面におけるカバー率が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載のIn又はIn合金スパッタリングターゲット。
- Cu又はCu合金製のバッキングプレート又はバッキングチューブによるターゲット支持基体の表面を表面粗さ:0.1〜1.0μmに研磨する工程と、
前記ターゲット支持基体の表面上に、厚さ:3〜50μmを有するInとCuの合金による下地層を形成する工程と、
形成された前記下地層上に、予め機械加工等で形成されたIn又はIn合金成形体を接合する工程と、を備え、
前記In又はIn合金の成形体と前記ターゲット支持基体とは、前記下地層を含むInとCuの合金による厚さ:5〜100μmの結合層を介して接合されることを特徴とするIn又はIn合金スパッタリングターゲットの製造方法。 - 前記下地層及び前記結合層は、前記In又はIn合金成形体と前記ターゲット支持基体とのボンディング面に対するカバー率がそれぞれ90%以上であることを特徴とする請求項3に記載のIn又はIn合金スパッタリングターゲットの製造方法。
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