JP6459621B2 - 錫合金スパッタリングターゲット - Google Patents

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Description

本発明は、例えば電子部品や半導体素子の外部電極等をはんだ接合するために用いる錫合金スパッタリングターゲットに関し、さらに詳しくは、電子部品や半導体素子の外部電極等の最外層膜として、はんだ接合するために好適な錫合金膜を形成するために用いる錫合金スパッタリングターゲットに関する。
一般に、電子部品や半導体素子の外部電極等をはんだ接合する場合の接続先の合金は、はんだとの濡れ性が高まるような状態で行われる。
例えば、接続部品の骨格を構成する合金がFe−42質量%Ni合金(42アロイ)の場合には、接続面に金めっきを施したり、Cu−2.4質量%Fe−0.03質量%P−0.12質量%Zn(アロイ194)の場合には、銀めっき上にさらに錫めっきを施したり、あるいはニッケルめっき上にさらにパラジウムめっきを施したり、銅配線基板の場合には、配線材として純銅や添加量の低い銅合金を用いたりと、いずれもはんだ接合時における溶融はんだとの濡れ性を高める工夫を施している。
ところで、電子部品や半導体素子の外部電極をはんだ接合する場合の接続先の合金においても、電極を構成する金属膜の最外層膜は、錫めっき膜や銀スパッタリング成膜であり、あるいは金や銀の蒸着膜となっている。近年、こうした電子部品は小型化が進み、電極膜の厚みも可能な限り薄くしたいとの要求があり、錫めっきから貴金属の中では比較的安価な銀スパッタリング成膜へと成膜材料及び成膜方法が変化している。銀は、酸化しにくくスパッタリングによって容易に薄膜を形成することができ、はんだ濡れ性も非常に良好である。しかしながら、銀は、金属価格が高いため、市場では従来から使用している錫でスパッタリング成膜を行いたいとの要求が強い。
ところが、錫の再結晶温度は、不純物濃度によって異なるもののマイナス7℃から25℃と低いため、スパッタリング時の熱によって容易に再結晶化し、さらに粒成長により粒が粗大化して孤立し、連続した膜を形成することができないという問題がある。その解決策として、SnとAgとAlとを重量比で75:11:14となるように同時スパッタリングによってSn系の非平衡混合物を形成する方法が提案されている(特許文献1)。
特開2006−205198号公報
しかしながら、この特許文献1に記載の方法では、例えばSn−Ag系はんだにAlを4重量%以上添加するとはんだ濡れ性が著しく低下してしまうため、電子部品小型化に伴う接合面積を縮小した電極材料としては使用することができない。また、Cuを30重量%以上添加すると融点が300℃を超えるようになってしまうため、一般的な電子部品のはんだ接合のための熱処理であるリフロー温度250℃を超えてしまい、溶融接合させることができない。
さて、めっきによる錫と異なりスパッタリング成膜された錫合金膜は、環境保全を考慮したロジンが主成分の弱活性フラックスでは表面の酸化物除去が難しい。そのため、はんだ接合時には、錫合金膜が完全に溶解するように融点をリフロー温度以下に設定しなければならない。しかしながら、融点をリフロー温度以下にした錫合金では、スパッタリング時の熱で錫相が粒状化して下地が露出してしまい、はんだ濡れ性が著しく低下してしまう。このことから、融点はリフロー温度以下で、且つ、下地の露出を抑制することができるスパッタリング成膜が得られる錫合金ターゲットの開発が求められていた。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、スパッタリング成膜によって下地が露出せず、リフロー温度で溶融し、確実なはんだ接合が得られる錫合金成膜を形成できるはんだ接合電極成膜用錫合金ターゲットを提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、錫を主成分とする錫合金ターゲットにおいて、所定の割合で銀を含有させるとともに、所定の割合で銅を含有させることによって、錫の粒状化による成膜の不連続化を抑制して下地の露出を防ぎ、融点が300℃以下ではんだ接合時に溶融し、確実なはんだ接合が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、錫を主成分とし、銀が4.6質量%以上10質量%以下、銅が0.1質量%以上2.5質量%以下の割合で含有され、かつ、前記銀の含有量をY質量%とし、前記銅の含有量をX質量%としたときに、Y>2.1X+1.7となる関係を満たすはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲットである。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、銀が4.6質量%以上8.0質量%以下、銅が0.1質量%以上1.2質量%以下の割合で含有されてなるはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲットである。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、1.0℃/秒以上の冷却速度で凝固させてなることを特徴とするはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲットである。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3の何れかの発明において、浴温245℃のSn−3.5質量Ag−0.5質量%Cuはんだ浴を用いて、JIS C 60068−2−54に準拠した試験方法にて測定された、熱平衡状態で接している該はんだ浴と当該錫合金スパッタリングターゲットによるスパッタリング成膜との接触角が90度以下となるゼロクロスタイムが10秒以内であることを特徴とするはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲットである。
本発明に係るはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲットによれば、4.6質量%以上10質量%以下の割合で銀を含有するため、スパッタリング成膜中に再結晶化して錫相が粒成長して粗大化し粒が孤立しても粒間に銀相が残り、下地膜の露出が抑制され、はんだ濡れ性を向上させることができる。また、0.1質量%以上2.5質量%以下の割合で銅を含有し、かつ、銀の含有量Y及び銅の含有量Xが「Y>2.1X+1.7」の関係を満たすことにより、スパッタリング成膜中の錫相が粗大化しても錫粒間の面積が小さくなるとともに、その錫粒が連続化するために孤立する錫粒が大幅に減少し、下地膜の露出面積が抑制されてはんだ濡れ性を向上させることができる。
また、好ましくは、4.6質量%以上8.0質量%以下の銀を含有し、さらに0.1質量%以上1.2質量%以下の銅を含有する錫合金スパッタリングターゲットであることにより、より一層に錫粒が連続化して孤立する錫粒が減少し、ゼロクロスタイムが5秒以内とはんだが濡れるまでの時間が短縮される。これにより、短時間ではんだ接合を行うことができる。
また、冷却速度を1.0℃/秒以上で冷却し凝固させてスパッタリングターゲットとすることにより、凝固組織を細かくし、そのスパッタリングターゲットの局所的溶解が抑制され、ターゲットの寿命が長くなり且つ成膜の品質が安定する。
また、245℃で溶融するSn−3.5質量Ag−0.5質量%Cuはんだ浴を用いて、JIS C 60068−2−54に準拠した試験方法にて測定された、熱平衡状態で接している該はんだ浴と当該錫合金スパッタリングターゲットによるスパッタリング成膜との接触角が90度以下となるゼロクロスタイムが10秒以内であることにより、はんだ接合を短時間で効率的に行うことができる。
スパッタリング成膜された短冊状試料を溶融はんだ浴中に浸漬したときの接触角(θ)との関係に基づくその成膜合金のはんだ濡れ性について説明するための模式図である。 スパッタリングターゲットを用いて、アルゴンガスでスパッタリング成膜したときの成膜の外観例を模式的に示す図である。 スパッタリングターゲットを用いて、アルゴンガスでスパッタリング成膜したときの成膜の外観例を模式的に示す図である。 スパッタリング成膜された錫合金成膜試料を溶融はんだ浴中に浸漬したときの時間と濡れ力との関係について説明するためのグラフ図である。 縦軸を錫合金組成における銀の含有量(質量%)、横軸を錫合金組成における銅の含有量(質量%)としたときの、上述した実施例1、実施例3、並びに、比較例3、比較例7の組成をプロットしたグラフ図である。
以下、本発明に係るはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲットの具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変更が可能である。
本実施の形態に係るはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲット(以下、単に「錫合金ターゲット」ともいう)は、錫を主成分として構成される錫合金であり、銀と、銅とを、それぞれ所定の割合で添加成分として含有する。具体的に、この錫合金ターゲットは、錫を主成分とし、銀が4.6質量%以上10質量%以下、銅が0.1質量%以上2.5質量%以下の割合で含有され、かつ、その銀の含有量をY質量%とし、銅の含有量をX質量%としたときに、Y>2.1X+1.7となる関係を満たすことを特徴としている。なお、主成分とは、その含有割合が51質量%以上であることをいう。
ここで、スパッタリング方式により成膜処理を行う場合、アルゴンガスの衝突によってターゲット及び基板が加熱される。純錫の再結晶温度はマイナス7℃から25℃と低いため、ターゲットの材質が純錫の場合には基板へ吸着した錫はその加熱により再結晶化し、再結晶化した核は周囲の錫を吸収して粗大化し、錫は粒状化して、その粒間において下地電極金属が露出してしまう。下地金属が露出してしまうと、その露出量によってははんだ濡れ性が著しく低下してしまう。
これに対して、本実施の形態に係る錫合金ターゲットによれば、上述したように、所定の割合で銀を含有するとともに、所定の割合で銅を含有してなることにより、融点を300℃以下に維持しながら錫の粒成長による下地金属の露出を抑制し、電極のはんだ濡れ性を劇的に向上させ、良好にはんだ接合を行うことができる。
本実施の形態に係る錫合金ターゲットは、上述したように、銀を4.6質量%以上10質量%以下の割合で含有する。この錫合金ターゲットでは、銀を4.6質量%以上10質量%以下の割合で含有することによって、融点を300℃以下に維持しながら、かつスパッタリング成膜時の加熱によって成膜が再結晶化し、錫が粒状化して粒が孤立化しても、その粒間には銀相が存在するようになり、下地の露出を抑制することができ、電極のはんだ濡れ性を向上させることができる。
銀の含有量に関して、錫合金中の銀の含有量が4.6質量%未満であると、スパッタリング成膜時の加熱によって成膜が再結晶化し、錫が粒状化して粒が孤立化した場合に、その粒間に銀相を存在させることができず、下地金属を露出させてしまい、はんだ濡れ性を低下させる。一方で、銀の含有量が10質量%を超えると、成膜の融点が300℃を超えてしまい、リフロー炉による加熱によって成膜を溶融して接合することが難しくなるのみならず、銀の原料コストがかさみ非効率となる。
また、銀の含有量としては、4.6質量%以上8.0質量%以下であることがより好ましい。銀の含有量が好ましくはこのような範囲内であることにより、成膜の融点は250℃以下となり、例えばSn−Ag系Pbフリーはんだを接合するためのリフロー炉の一般的な加熱温度である250℃において成膜を溶融して接合させることができる。
また、本実施の形態に係る錫合金ターゲットは、上述したように、銅を0.1質量%以上2.5質量%以下の割合で含有する。この錫合金ターゲットでは、銅を0.1質量%以上2.5質量%以下の割合で含有することによって、融点を300℃以下に維持しながら、スパッタリング成膜時の加熱によって成膜が再結晶化し、錫が粒状化して粒が孤立化するのを抑制し、粒間に発生する下地の露出を抑制し、電極のはんだ濡れ性を向上させることができる。
銅の含有量に関して、錫合金中の銅の含有量が0.1質量%未満であると、スパッタリング成膜時の加熱によって成膜が再結晶化し、錫が粒状化して粒間において下地金属が露出してしまい、その結果としてはんだ濡れ性が著しく低下する。一方で、銅の含有量が2.5質量%を超えると、成膜の融点が300℃を超えてしまい、リフロー炉による加熱によって成膜を溶融して接合することが難しくなる。
また、銅の含有量としては、0.1質量%以上1.2質量%以下であることがより好ましい。銅の含有量が好ましくはこのような範囲内であることにより、成膜の融点は250℃以下となり、例えばSn−Ag系Pbフリーはんだを接合するためのリフロー炉の一般的な加熱温度である250℃において成膜を溶融して接合させることができる。
本実施の形態に係る錫合金ターゲットは、その製造時において、鋳塊を作製するに際し、1.0℃/秒以上の冷却速度で凝固させることが好ましい。冷却速度が1.0℃/秒未満であると、錫合金ターゲットの凝固組織において錫相が粗大化してしまい、スパッタリング中のターゲットの錫相からの錫の供給が増え、成膜における錫濃度が高まって成膜中の錫相が粒状化し、その結果として下地金属が露出してしまう可能性がある。
さて、一般的に、卑な金属のはんだ濡れ性は貴な金属のはんだ濡れ性よりも劣り、はんだをはじく。ここで、図1に、錫合金ターゲットによる成膜(錫合金成膜)10Aを形成した試料10を溶融はんだ浴11中に浸漬した場合の接触角(θ)との関係に基づく、その成膜10Aのはんだ濡れ性の様子を模式的に示す。錫合金成膜をはんだ接合する場合には、図1(A)及び(B)に示すように、溶融はんだ浴に対して接触角が90度以下(θ≦90度)になることが必要となる。接触角が安定して90度以下となるような成膜であれば、はんだ付け作業の品質管理が容易になり、はんだ接合の信頼性が向上する。
なお、図1(B)は、溶融はんだ浴11に対する成膜10Aの接触角(θ)が90度(θ=90度)となるものであり、この場合、θ<90度の場合に比べては若干劣るものの、はんだ濡れ性は良好となる。一方で、図1(C)は、溶融はんだ浴11に対する成膜10Aの接触角(θ)が90度を超える(θ>90度)ものであり、この場合には、はんだ濡れ性が不良であると判断される。
具体的に、本実施の形態に係る錫合金ターゲットは、銀を4.6質量%以上10質量%以下の割合で含有するとともに、銅を0.1質量%以上2.5質量%以下の割合で含有する。そしてさらに、本実施の形態に係る錫合金ターゲットでは、本実施の形態に係る錫合金ターゲットでは、上述した範囲で含有される銀及び銅の含有量に関して、銀の含有量をY質量%とし、銅の含有量をX質量%としたときに、「Y>2.1X+1.7」となる関係を満たす。
ここで、後で詳述する[実施例]にて示すように、得られた錫合金ターゲットの濡れ性の評価が不良となった比較例3と比較例7のプロットに基づくと、銀の含有量(Y質量%)及び銅の含有量(X質量%)の関係からY=2.1X+1.7の関係式が得られる。
したがって、錫を主成分とし、銀が4.6質量%以上10質量%以下、銅が0.1質量%以上2.5質量%以下の割合で含有し、かつ、銀の含有量(Y質量%)と銅の含有量(X質量%)との関係で「Y>2.1X+1.7」を満たすことにより、はんだ濡れ性を向上させることができる。このような含有量並びに関係式を満たすような、特に銀の添加は、はんだ付け作業におけるフラックスによるはんだ濡れ性の改善効果をより高めることに寄与する。
銀の含有量に関して、錫合金ターゲット中の銀の含有量が4質量%未満では、はんだ付け作業におけるフラックスによるはんだ濡れ性の改善効果が十分に得られない。一方で、銀の含有量が10質量%を超えても、はんだ濡れ性の改善効果は飽和して変わらないものの、コストが高くなり非効率となる。また、銀の含有量としては、上述したように、4質量%以上5.5質量%以下であることがより好ましく、このような範囲であることにより、例えば使用するはんだがSn−3.5質量%Ag−0.5Cuのような融点の低いはんだであっても、その高いはんだ濡れ性を確実に維持することができ、より信頼性の高いはんだ接合が可能となる。
具体的には、この錫合金ターゲットによる錫合金成膜は、浴温245℃のSn−3.5質量Ag−0.5質量%Cuのはんだ浴を用いて、JIS C 60068−2−54(IEC 60068−2−54)に準拠したはんだ付け性試験方法(はんだ槽平衡法)にて測定された、熱平衡状態で接しているそのはんだ浴と当該錫合金成膜との接触角(θ)が90度以下である。すなわち、錫合金成膜試料の鉛直方向に働く浮力Bと表面張力の鉛直方向成分Sとの差である濡れ力F(F=S−B)の最大値(Fmax)がゼロ以上である(濡れ力F、Fmaxについて図4、及び実施例での評価を参照)。
また、同様のはんだ浴を用いてJIS C 60068−2−54に準拠した試験方法にて測定された、熱平衡状態で接しているそのはんだ浴と当該錫合金成膜との接触角が90度以下となるゼロクロスタイムが10秒以内である(ゼロクロスタイムについて図4を参照)。
このような高いはんだ濡れ性を有する錫合金成膜によれば、リフロー温度で溶融し、はんだ接合作業における品質管理が極めて容易となり、はんだ接合の信頼性を高めることができる。また、はんだ接合を短時間で効率的に行うことができる。さらに、はんだ付けのための銀やパラジウムといった金属価格の高いターゲットを用いたスパッタリング成膜を施す必要がなく、低いコストで電子部品電極を形成することが可能となる。
なお、本実施の形態に係る錫合金ターゲットによるスパッタリング成膜の溶融はんだに対する高い濡れ性は、上述したような、245℃で溶融するSn−3.5質量Ag−0.5質量%Cuのはんだ浴に限られるものではなく、例えば、200℃から300℃に融点を有するはんだ浴であれば同様に高い濡れ性を示す。
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例及び比較例の錫合金ターゲットの製造>
実施例及び比較例において、下記表1に示すような成分組成となるようにして錫合金溶湯を調製して錫合金試料を製造した。表1に示すように、成分としては、錫、銀、及び銅をそれぞれ所定の割合で含有する。なお、表1における金属価格は、2014年の平均価格として錫を2.3円/g、銀を66.4円/g、銅を0.7円/gとして計算した。
具体的には、高周波真空溶解炉を用いて、9×10−3Pa以下に真空引きした後にアルゴンガスを500Paまで注入し、下記表1に示される成分組成を有する錫合金溶湯を作製し、その後600℃で10分間保持した後に熱伝導性が130W/(m・K)と高い黒鉛(東洋炭素株式会社製IG−70)鋳型に鋳込んで鋳塊を作製した。このときの冷却速度は1.3℃/秒以上とした。そして、作製した鋳塊から直径75mmの円盤状ターゲットに切り出して研磨加工した後、スパッタリングターゲットとして、以下に示す評価に供した。
Figure 0006459621
<評価>
作製した錫合金ターゲットを用いてモネル板(Ni−34質量%Cu)に成膜し、成膜状態とはんだ濡れ性の評価を行った。
成膜は、芝浦メカトロニクス株式会社製スパッタリング装置(型式:CFS−4ES−2)を用いて行った。チャンバー内の真空度が1×10−3Paに到達した後、アルゴンを15SCCMになるように供給しながらスパッタリングを行った。5mm×0.3mm×15mmの短冊状モネル板をターゲットに対向する基板ホルダーへ直立させて固定し、基板ホルダーを公転させてモネル板の全面に0.5μm厚で成膜した。
成膜状態の外観は、走査電子顕微鏡を用いて観察し、成膜の成分元素は付属のEDS分析装置を用いて行った。錫粒外観については、図2の模式図に示すように多くの錫粒21が連続しているような場合を『良』とし、図3の模式図に示すようにほとんどすべての錫粒21が独立しており下地のモネル板31が観察されるような場合を『不良』として評価した。なお、図2の模式図において、符号22で示すものが錫粒21の粒間を覆うように存在する第2相(銀相)である。また、粒間については、錫粒間のモネルを覆うように第2相(22)が広く存在する場合を『良』とし、錫粒21の周囲に限定的に第2相(22)が存在してモネル板が露出している場合を『不良』として評価した。
はんだ濡れ性の評価は、株式会社レスカ製のソルダーチェッカ(型式:SAT−5200)を使用して評価した。はんだ濡れ性の試験では、フラックスとして、ロジン25%、イソプロパノール75%からなる溶液に塩化ジメチルアンモニウムを添加した活性化ロジンフラックスを用いた。また、はんだ浴としては、Sn−3質量%Ag−0.5質量%Cuを溶解して245℃に保持した溶融はんだ浴を用いた。なお、錫合金成膜試料のはんだ浴への浸漬速度は5mm/s、浸漬深さは2mm、浸漬時間は10秒とした。
ここで、ソルダーチェッカは、錫合金成膜試料の鉛直方向に働く浮力Bと表面張力の鉛直方向成分Sとの差を濡れ力F(F=S−B)とし、その濡れ力Fを経時観測するものである。そこで、錫合金成膜試料のはんだ濡れ性については、濡れ力Fの最大値(Fmax)がゼロ以上の場合を『良』、ゼロ未満の場合を『不良』として評価した。
表面張力の鉛直方向成分Sは、はんだとの接触角θ、溶融はんだの表面張力γ、及び試料周囲長LからS=Lγcosθで計算される。また、浮力Bは、はんだ浴へ浸漬した試料の体積V、浸漬深さD、及びはんだの密度ρからB=VDρで計算される。したがって、試料表面の成膜と溶融はんだとの接触角θは、はんだの表面張力γが不明であっても、γcosθ(=(F+B)/L=(F+VDρ)/L)がゼロ以上であれば、接触角θがゼロ以上90度以下であることが確認できる。そこで、γcosθについて、2/3Fmax(濡れ力Fの最大値Fmaxの2/3に達したときの値)におけるγcosθの値がゼロ以上の場合を『良』、ゼロ未満の場合を『不良』として評価した。図4に、スパッタリング成膜された錫合金成膜試料を溶融はんだ浴中に浸漬したときの時間と濡れ力Fとの関係についてのグラフ図を示す。
なお、図4のグラフ図に示されるように、ゼロクロスタイムとは、はんだ浴と錫合金成膜との接触角が90度以下となるまでの時間をいい、このゼロクロスタイムが短いほど、濡れ性が良好であって、はんだ接合を短時間で行うことができることを意味する。
<結果>
下記表2に、外観の評価結果と、はんだ濡れ性の評価結果を示す。なお、表2には、各実施例、比較例にて得られた錫合金ターゲットの融点についても併せて示す。
Figure 0006459621
表2の結果に示すように、実施例の錫合金ターゲットでは、錫粒の多くが孤立せずに連続的に析出し、かつ錫粒間には第2相である銀相が析出してモネル板が露出しなかった。濡れ性も良好で、いずれの試料もはんだ浸漬深さ以上のはんだ付着が認められ、またゼロクロスタイムは10秒以内であった。なお、表2のゼロクロスタイムの評価において、浸漬時間の10秒以内にゼロクロスタイムが観測されなかった場合を「ND」として表記した。
また、表1に示すように実施例における成分組成の錫合金ターゲットでは、金属価格が9円/g未満であった。
一方で、比較例1〜6にて得られた錫合金ターゲットでは、錫粒が孤立し、粒間には第2相が広く存在せずに下地のモネル板が露出してしまった。濡れ性も接触角θが90度を超えてしまい、はんだをはじく結果となった。
また、比較例7にて得られた錫合金ターゲットでは、錫粒は孤立せず連続的であったものの、第2相が錫粒の下に隠れてしまった。また、濡れ性は接触角θが90度を超えてしまい、はんだをはじく結果となった。
また、比較例8にて得られた錫合金ターゲットでは、錫粒は孤立したものの、粒間には第2相である銀相が広く存在してモネル板の露出を抑制した。ところが、成膜の融点は323℃と高く、Sn−Ag−Cu系はんだ接合のための一般的なリフロー温度で溶融させることができず確実なはんだ接合が得られないことが予想された。また、成膜状態の外観も悪く、さらに表1に示すように金属価格は10円/gとコスト高となった。
図5は、縦軸を錫合金組成における銀の含有量(質量%)、横軸を錫合金組成における銅の含有量(質量%)としたときの、上述した実施例1、実施例3、並びに、比較例3、比較例7の組成をプロットしたグラフ図である。なお、実施例1及び実施例3のプロットを黒塗り菱形で示し、比較例3及び比較例7のプロットを白抜き四角形で示す。濡れ性の評価が『不良』となった比較例3と比較例7のプロットに基づき、銀の含有量をY質量%とし銅の含有量をX質量%とすると、Y=2.1X+1.7の関係式が得られる。
本実施の形態に係るはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲットによれば、錫を主成分とするスパッタリング成膜が可能となり、電極上に成膜することで電極のはんだ濡れ性を著しく改善することができ、はんだ接合用電極錫合金として好ましい成膜を得ることができる。また、この錫合金スパッタリングターゲットは、金属価格の点でも安価であり、電子部品業界での利用価値は極めて大きい。
10 試料
10A 成膜(錫合金成膜)
11 溶融はんだ浴
21 錫粒
22 第2相(銀相)
31 モネル板(下地)

Claims (4)

  1. 錫、銀及び銅のみからなり、銀が4.6質量%以上10質量%以下、銅が0.1質量%以上2.5質量%以下の割合で含有され、かつ、
    前記銀の含有量をY質量%とし、前記銅の含有量をX質量%としたときに、
    Y>2.1X+1.7となる関係を満たす
    ことを特徴とするはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲット。
  2. 銀が4.6質量%以上8.0質量%以下、銅が0.1質量%以上1.2質量%以下の割合で含有されてなることを特徴とする請求項1に記載のはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲット。
  3. 浴温245℃のSn−3.5質量Ag−0.5質量%Cuはんだ浴を用いて、JIS C 60068−2−54に準拠した試験方法にて測定された、熱平衡状態で接している該はんだ浴と当該錫合金スパッタリングターゲットによるスパッタリング成膜との接触角が90度以下となるゼロクロスタイムが10秒以内であることを特徴とする請求項1又は2に記載のはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲット。
  4. 錫、銀及び銅のみからなり、銀が4.6質量%以上10質量%以下、銅が0.1質量%以上2.5質量%以下の割合で含有され、かつ、
    前記銀の含有量をY質量%とし、前記銅の含有量をX質量%としたときに、
    Y>2.1X+1.7となる関係を満たす溶湯を、
    1.0℃/秒以上の冷却速度で凝固させる工程を含むことを特徴とするはんだ接合電極成膜用錫合金スパッタリングターゲットの製造方法。
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