JP6349671B2 - 化粧板、化粧板セット及び化粧板の施工方法 - Google Patents
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本発明に使用する基材は、化粧板に使用される各種基材を使用できる。なかでも、不燃性能を向上させるために無機系基材を使用することが好ましい。当該無機系基材としては、樹脂含有量が少なく、略板状のものを使用することができる。窯業系無機質基材のほか骨材としての無機物や無機系繊維を有機系結合材により固めたものを使用することもできるが、無機物の総量が無機系基材の50質量%以上であることが好ましい。当該無機物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム等の結晶水を有する無機物を使用することが好ましい。不燃性向上のためには不燃性基材を使用することが好ましく、なかでも、耐熱性及び不燃性、また容易に入手できる等の観点から、窯業系無機質基材が好ましく、繊維補強珪酸カルシウム成形体、繊維補強セメント成形体、繊維補強セラミックス成形体、軽量気泡コンクリート(ALC)、ガラス、タイル、石材又はこれらの複合材等が挙げられる。これらのうち、特に珪酸カルシウム成形体、繊維補強珪酸カルシウム成形体や繊維補強セメント成形体が好ましい。
本発明に使用する化粧層は、着色剤を含有する層であり、化粧層塗料の塗布、または転写用基材上に形成された化粧層の転写によって形成され、基材の色調を隠蔽して、化粧板に対して任意の意匠性の高い色調の付与を行う層である。本発明においては、低い光沢で意匠性を確保することを重視することから、化粧層の光沢は基板上に積層された状態で光沢度30以下であることが好ましい。当該光沢度は、基板と化粧層間にベースコート層等の任意の層を有する場合には、当該層上に積層された状態の光沢度である。化粧層の光沢は、化粧層下層の表面形状、積層される化粧層の膜厚、化粧層中の樹脂量もしくは添加剤含有量等で調整することができる。光沢度は20以下であることが良好なつや消し状の質感が得られる点で好ましく、10以下であることがさらに好ましい。このような調整手法による化粧層表面の光沢の抑制、艶消し効果の向上は、いずれも樹脂の使用量を低下させる方向であり、不燃性能の向上のために好ましい。特に無機微粒子を艶消し剤として添加することにより化粧層の光沢を調整するときは、化粧層中の樹脂成分をより一層削減することができる。
本発明に使用するクリア層は、化粧層上に積層されていて化粧板の最表面層を形成し、基本的に透明で、クリア層形成後であっても化粧板に光沢の低い、好ましくは艶消し状の外観を保持するものである。本発明においては、当該クリア層として、コールターカウンター法(AP50μm)により測定される平均粒子径が5μm以下、好ましくは4μm以下、より好ましくは3.5μm以下、さらに好ましくは3μm以下の湿式ゲル法シリカ粒子を含有するクリア層を使用する。平均粒子径の下限値は特に制限されるものではないが、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。当該湿式ゲル法シリカ粒子を使用することで、好適な艶消し効果と透明性を両立することが可能となり、クリア層を施していない着色化粧板に対して好適に艶や色味を近似させることができる。
本発明の化粧板においては、無機系基材からのアルカリ成分溶出の防止、化粧層の無機系基材への浸透防止、化粧層の密着性向上、無機質系基材の色調の隠蔽、さらには化粧層塗布前の下地の平滑化等を目的に、基材と化粧層との間にベースコート層を設けることも好ましい。
本発明の化粧板は、上記のとおり基材上に化粧層を有し、当該化粧層上に平均粒子径が5μm以下の湿式ゲル法シリカ粒子を含有するクリア層を有する構成である。当該構成の化粧板は、クリア層形成前の化粧板と光沢度と色差が近似し、外観は、クリア層形成前の化粧板と識別し難いほど差の小さいものとできる。また、クリア層の配合や種々の添加剤の添加を行うことにより、種々の追加機能をクリア層に付加することができる。そして、これらクリア層を通じて追加機能の付加された化粧板を、クリア層を有さない化粧板と、外観上の差異を生じさせることなく、違和感なく併用することができる。クリア層を有さない化粧板は該クリア層に付随する追加機能は有さないが、クリア層が形成されていない分、より優れた不燃性能を有する。このため、クリア層を有する追加機能の付加された化粧板と設置箇所に応じて使い分けることにより、全体として均質で統一感のある良好な意匠性と優れた不燃性能を維持しつつ、それぞれの設置箇所に要請される種々の追加機能を発揮させることが可能となる。
本発明の化粧板は、低い光沢度と透明性とを有することから、化粧層の良好な色味を有しつつ、好適な艶消し性を有することから、当該化粧板単独での使用も可能である。また、本発明の化粧板は、該化粧板におけるクリア層形成前の化粧板との色味の差異が生じにくいことから、上記化粧板と、該化粧板におけるクリア層形成前の化粧板との化粧板セットとして、同一の施工箇所に設置することで、全体として均質で統一感のある良好な意匠性を有しつつ、それぞれの設置箇所に要請される表面硬度や不燃性能等の機能を発揮させることができる。
[クリア層無し化粧板の作製]
まず、厚さ6mmの珪酸カルシウム板(三菱マテリアル建材社製ヒシタイカ#70)の片面に対して、珪酸カルシウム板の表層強化及びアルカリ成分の溶出を防止するための固形分比50%MDI(日本ポリウレタン製コロネートMR−100)をロールコーターで乾燥時の塗布量が77g/m2となるように塗工し、ベースコート層の一つであってシーラー処理を行うシーラー層を形成し、十分に乾燥させた。次に、その上から目止め処理層として固形分比100%のエポキシアクリレート系紫外線硬化型塗料(DIC製UV目止めAC−12)をロールコーターで乾燥時の塗布量110g/m2となるように塗工し、上記シーラー層と併せてベースコート層を形成した。次に、その上からサンディング加工を行い、表面が平滑な下地処理済み珪酸カルシウム板を得た。
次に、クリア層用塗料として不揮発分55%、水酸基価95のアクリルポリオール(DIC社製アクリディックTU690)72.7質量部と、コールターカウンター法(AP50μm)による平均粒子径が1.9μmのゲル法シリカ(東ソーシリカ製NIPGEL AZ260)2.2質量部と、メチルイソブチルケトン25.1質量部、さらに硬化剤(住化バイエルウレタン社製スミジュールN−3300 HDI系イソシアネート)10質量部を各々配合しクリア層用塗料(A)を作製した。得られたクリア層用塗料(A)を、上記クリア層無し化粧板(a)表面に、ナチュラルロールコーターで乾燥塗布膜厚6μmとなるように塗工して化粧板(1)を得た。
クリア層用途料として、不揮発分55%、水酸基価95のアクリルポリオール(DIC社製アクリディックTU690)72.7質量部と、コールターカウンター法(AP50μm)による平均粒子径が1.9μmのゲル法シリカ(東ソーシリカ製NIPGEL AZ260)3.8質量部と、メチルイソブチルケトン23.5質量部、さらに硬化剤(住化バイエルウレタン社製スミジュールN−3300 HDI系イソシアネート)10質量部を各々配合しクリア層用塗料(B)を作製した。得られたクリア層用塗料(B)を、実施例1と同様の方法で作製したクリア層無し化粧板(a)表面に、ナチュラルロールコーターで乾燥塗布膜厚6μmとなるように塗工して化粧板(2)を得た。
実施例1においてクリア層用塗料に使用した平均粒子径が1.9μmのゲル法シリカを、コールターカウンター法(AP50μm)による平均粒子径3.0μmのゲル法シリカ(東ソーシリカ製NIPGEL AY460)に変更した以外は、実施例1と同様にして、クリア層用塗料(C)を作製した。得られたクリア層用塗料(C)を、実施例1と同様の方法で作製したクリア層無し化粧板(a)表面に、ナチュラルロールコーターで乾燥塗布膜厚6μmとなるように塗工して化粧板(3)を得た。
実施例2においてクリア層用塗料に使用した平均粒子径が1.9μmのゲル法シリカを、コールターカウンター法(AP50μm)による平均粒子径3.0μmのゲル法シリカ(東ソーシリカ製NIPGEL AY460)に変更した以外は、実施例2と同様にして、クリア層用塗料(D)を作製した。得られたクリア層用塗料(C)を、実施例1と同様の方法で作製したクリア層無し化粧板(a)表面に、ナチュラルロールコーターで乾燥塗布膜厚6μmとなるように塗工して化粧板(4)を得た。
実施例1においてクリア層用塗料に使用した平均粒子径が1.9μmのゲル法シリカを、コールターカウンター法(AP50μm)による平均粒子径4.0μmのゲル法シリカ(東ソーシリカ製NIPGEL AZ600)に変更した以外は、実施例1と同様にして、クリア層用塗料(F)を作製した。得られたクリア層用塗料(F)を、実施例1と同様の方法で作製したクリア層無し化粧板(a)表面に、ナチュラルロールコーターで乾燥塗布膜厚6μmとなるように塗工して化粧板(5)を得た。
実施例1においてクリア層用塗料に使用した平均粒子径が1.9μmのゲル法シリカを、コールターカウンター法(AP50μm)による平均粒子径3.0μmの沈降法シリカ(東ソーシリカ製NIPSIL E170)に変更した以外は、実施例1と同様にして、クリア層用塗料(E)を作製した。得られたクリア層用塗料(E)を、実施例1と同様の方法で作製したクリア層無し化粧板(a)表面に、ナチュラルロールコーターで乾燥塗布膜厚6μmとなるように塗工して化粧板(H1)を得た。
実施例1にて得られたクリア層無し化粧板(a)を参考例1とした。
上記実施例及び比較例にて得られた化粧板、クリア層無し化粧板(a)の60°光沢度をグロスメーター(堀場製作所製IG−330)により測定した。
上記実施例及び比較例にて使用したクリア層用塗料を、各実施例及び比較例にてクリア層無し化粧板(a)に塗布した方法と同様の方法で透明PETフィルムに塗工し、そのヘイズ値をクリア層側からヘイズメーター(村上色彩技術研究所製HR−100)で測定した。
上記実施例及び比較例にて得られた化粧板と、クリア層無し化粧板(a)との色差ΔEを色差計(JUKI製JP7200C:C光源2度視野を使用)で測定した。ここで色差ΔEは下記のハンターの色差式で得られるものを用いた。
ΔE={(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2}1/2
ここでΔLとΔa,Δbは、比較する二つの表面色の明度指数Lと色座標a,bの差である。
上記実施例及び比較例にて得られた化粧板を、クリア層無し化粧板(a)と並置し以下の基準で外観を比較、評価した。結果を表2に示す。
◎ 目視により外観の差異がほとんど見られない
○ 目視により外観の差異がわずかに認識できる。
× 目視により外観の差異が容易に認識できる。
上記実施例及び比較例にて得られた化粧板表面に10円硬貨の円周部分を接触させ、角度45度を維持しながら50gの加重をかけつつ10円硬貨の面と平行方向に5cmの距離の移動をさせた。このとき化粧板の表面に形成された10円硬貨の削れ痕(金属汚れ)の状況を以下の評価基準をもとに評価した。
○ 化粧板上に10円硬貨の削れ痕による金属汚れが発生しない。
△ 10円硬貨の削れ痕による金属汚れがわずかに発生する。
× 10円硬貨の削れ痕が明確に発生する。
2 化粧層
3 基材
4 ベースコート層
5 シーラー層
6 目止め処理層
Claims (14)
- 基材上に着色材を含有する化粧層を有し、前記化粧層上にクリア層を有する化粧板であって、
前記クリア層が、コールターカウンター法(AP50μm)により測定される平均粒子径が5μm以下の湿式ゲル法シリカ粒子を含有し、
前記クリア層の膜厚が0.2〜8μmであることを特徴とする化粧板。 - 前記クリア層のヘイズ値が60%以下である請求項1に記載の化粧板。
- 前記クリア層中の湿式ゲル法シリカ粒子の含有量が、2〜10質量%である請求項1又は2に記載の化粧板。
- 前記クリア層が、光沢度6.0の濃色化粧板表面に膜厚6μmで積層した際の光沢度が3〜12のクリア層である請求項1〜3のいずれかに記載の化粧板。
- 前記クリア層が、アクリルポリオール樹脂と湿式ゲル法シリカ粒子とを含有するクリア層用塗料から形成される層である請求項1〜4のいずれかに記載の化粧板。
- 前記化粧層表面の光沢度が30以下である請求項1〜5のいずれかに記載の化粧板。
- 前記基材の表面にベースコート層を有する請求項1〜6のいずれかに記載の化粧板。
- 前記基材が無機系基材である請求項1〜7のいずれかに記載の化粧板。
- 前記クリア層中の有機成分量が40g/m2以下である請求項1〜8のいずれかに記載の化粧板。
- 有機成分量の総量が250g/m2以下である請求項1〜9のいずれかに記載の化粧板。
- 請求項1〜10に記載のいずれか1項に記載の化粧板と、該化粧板における前記クリア層形成前の化粧板とを含有する化粧板セット。
- 請求項11に記載の化粧板セットを構成する複数の種類の化粧板を使用して、建築構造、建築構造の付設物、又は建築構造の内外に設置される物品の表面を被覆することを特徴とする化粧板の施工方法。
- 請求項12に記載の施工方法を用いて、建築構造、または建築構造の付設物における表面が、化粧板によって被覆されたことを特徴とする建築物。
- 建築構造の内外に設置される物品であって、請求項12に記載の施工方法を用いて、その表面を化粧板によって被覆されたことを特徴とする物品。
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