JP6348333B2 - 廻り階段用縦ささら材 - Google Patents

Description

本発明は、木造住宅等の廻り階段用の側板（主として段板の両端部を固定するために、階段部の壁面に取り付けられる板）のうち、内下側直側板と内上側直側板との間に配置される縦長の側板（縦ささら材）に関する。

木造住宅（一戸建て、或いは、集合住宅等）において施工される廻り階段は、図６（一般的な木造住宅における廻り階段の平面図）に示すように、段板（直段板５１、廻り段板５２（５２ａ〜５２ｃ））と、これらの段板を支持する側板（外下側直側板５３ａ、外上側直側板５３ｂ、内下側直側板５３ｃ、内上側直側板５３ｄ、下側廻り側板５４ａ、及び、上側廻り側板５４ｂ）と、蹴込み板５５とによって構成されている。

廻り階段を構成する段板や側板等の材料は、従来は現場において加工されていたが、近年では、作業効率の向上、施工時間の短縮を図るべく、工場にて事前に細かな加工を行った汎用性のある材料（プレカット材）を現場に搬入して、必要に応じて（設計に合わせて）プレカット材を裁断して使用するという方法が採用されている。

図７は、側板のプレカット材（外側直側板用のプレカット材６１、及び、廻り側板用のプレカット材６２）の一例を示す図である。図示されているように、これらのプレカット材６１，６２には、図６に示す直段板５１、或いは、廻り段板５２の端部を嵌合させるための横溝６３、及び、蹴込み板５５の端部を嵌合させるための縦溝６４が、板厚寸法の約１／２の深さで形成されている。

例えば、直段板５１（図６参照）が、下側に六段、上側に五段配置される場合、図７（１）において破線で示す位置でプレカット材６１を裁断して外下側直側板５３ａを取り、一点鎖線で示す位置でプレカット材６１を裁断して外上側直側板５３ｂを取る。また、図７（２）において破線で示す位置でプレカット材６２を裁断して下側廻り側板５４ａを取り、一点鎖線で示す位置でプレカット材６２を裁断して上側廻り側板５４ｂを取る。更に、図７（１）に示すプレカット材６１と鏡面対称的な形状のプレカット材（図示せず）を適切な位置で裁断して、内下側直側板５３ｃ、及び、内上側直側板５３ｄを取る。

尚、図７に示すようなプレカット材６１，６２を用いて廻り階段を施工する場合、内下側直側板５３ｃと、内上側直側板５３ｄとの間に、図８に示すような縦ささら材５７が配置される。この縦ささら材５７は、通常、現場毎に、現場の寸法に合わせて、その都度加工して製作されており、プレカット材としては提供されていない。

このような縦ささら材５７が配置される理由、及び、プレカット材が提供されていない理由は、次の通りである。図６に示す廻り段板５２のうち、中段の廻り段板５２ｂの内側の端部は、内下側直側板５３ｃ、或いは、内上側直側板５３ｄによって支持させることが難しいという問題（構造上の問題）があるからであり、また、施工時において、階段部の壁面の出隅部５６（図６参照）等の位置が、設計上の位置からわずかにずれてしまうことがあり（施工上の誤差の問題）、プレカット材では対応が困難だからである。

特開２０１３−１４２２２２号公報

図９は、従来の縦ささら材５７、及び、その構成部品の一例を示す図である。図示されているように、この縦ささら材５７は、中段の廻り段板５２ｂ（図８参照）の内側端部を支持するための切欠５８ａを有する下側部材５７ａと、上段の廻り段板５２ｃ（図８参照）の内側端部を支持するための切欠５８ｂを有する中間部材５７ｂと、廻り段板５２ｃの一段上の直段板５１ａ（図８参照）の内側端部を支持するための切欠５８ｃを有する上側部材５７ｃとによって構成されている。

このような複雑な構造の縦ささら材５７を、現場毎に、現場の寸法に合わせて、その都度加工しなければならないとすると、非常に手間がかかり、段板や側板についてプレカット材を使用するメリット（作業効率の向上、及び、施工時間の短縮）が損なわれてしまうことになる。

本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、廻り階段の施工に際し、構成材料として、すべてプレカット材を使用することができ（プレカット材のみで施工することができ）、極めて効率よく、短時間で廻り階段を施工することができる廻り階段用縦ささら材を提供することを目的とする。

本発明に係る廻り階段用の縦ささら材は、下段の廻り段板、中段の廻り段板、上段の廻り段板、内下側直側板、及び、内上側直側板を有する廻り階段の内下側直側板と内上側直側板との間に配置され、下側部材と上側部材とによって構成され、下側部材は、少なくとも施工対象となる階段二段分の高さ寸法を有し（つまり、階段二段分の高さ寸法、或いは、それ以上の高さ寸法を有し）、設置された際に、下段の廻り段板側となる表側面と、壁面側となる裏側面と、内下側直側板側となる下階側面と、その反対側の上階側面上半部及び上階側面下半部と、上段の廻り段板の上面と一致する高さとなる天端面と、下段の廻り段板の上面に対して接する状態で配置される底面とを有し、上半部の横幅が、下半部の横幅よりも大きく設定され、下側部材の上階側面上半部が、表側面及び裏側面と直交する下階側面に対し平行であり、下側部材の上階側面下半部が、下階側面に対して所定角度で傾斜し、下側部材の上階側面上半部と上階側面下半部との間に、表側面側から所定の深さを有し、中段の廻り段板の内側端部を進入させて支持する切欠が形成され、下側部材の上階側面上半部と天端面との角部に、裏側面側から所定の深さを有し、上段の廻り段板の内側端部を進入させて支持する切欠が形成され、上側部材が、下側部材と同じ厚さ寸法に設定されていることを特徴としている。

尚、縦ささら材を構成する下側部材は、近接する側板と同じ厚さ寸法に設定されていることが好ましく、また、上側部材は、少なくとも施工対象となる階段一段分の高さ寸法を有する（つまり、階段一段分の高さ寸法、或いは、それ以上の高さ寸法を有する）直方体の板材であることが好ましい。

また、本発明に係る廻り階段は、直段板、廻り段板、外下側直側板、外上側直側板、内下側直側板、内上側直側板、下側廻り側板、上側廻り側板、蹴込み板、及び、内下側直側板と内上側直側板との間に配置される上記縦ささら材によって構成され、縦ささら材を構成する下側部材において、上階側面上半部と上階側面下半部との間に形成されている切欠が、中段の廻り段板の厚さ寸法に対応した高さ寸法を有しており、設置時において、中段の廻り段板の内側端部を進入させ、支持できるように構成され、縦ささら材を構成する下側部材において、上階側面上半部と天端面との角部に形成されている切欠が、上段の廻り段板の厚さ寸法に対応した高さ寸法を有しており、設置時において、上段の廻り段板の内側端部を進入させ、支持できるように構成されていることを特徴としている。

尚、この廻り階段において、下階側面に対する上階側面下半部の傾斜角度が、下段の廻り段板と中段の廻り段板との間に配置される蹴込み板の角度に対応し、下側部材を設置した際に、当該蹴込み板に対して上階側面下半部が全体的に面接触する構成となっていることが好ましい。

従来においては、廻り階段を構成する材料のうち、直側板や廻り側板等についてはプレカット材を利用することができたが、縦ささら材については、構造上の問題から、また、施工上の誤差の問題から、プレカット材を利用することが困難であった。本発明に係る縦ささら材は、階段部の壁面の出隅部の位置が設計上の位置からずれてしまったような場合でも、下側部材と上側部材との相対位置関係を調整することにより、そのようなギャップを無理なく収めることができる。このため、現場毎に、現場の寸法に合わせて、縦ささら材を加工する必要がなく、従って、縦ささら材としてプレカット材を使用することができ、作業効率の更なる向上、及び、施工時間の更なる短縮を図ることができる。

図１は、本発明に係る縦ささら材７を用いて施工した右廻り階段（下段側から見て上段側が右方向へ廻る階段）の一例を示す斜視図である。 図２は、図１に示す縦ささら材７（右廻り階段用）を構成する下側部材７ａの外観を示す図であり、図２（１）（２）は斜視図、図２（３）は正面図、図２（４）は背面図である。 図３は、図１に示す縦ささら材７の上側部材７ｃの斜視図である。 図４は、図２に示す下側部材７ａを設置した状態を示す拡大図である。 図５は、図１に示す内下側直側板３ｃの上端部付近拡大図である。 図６は、一般的な木造住宅における廻り階段の一例を示す平面図である。 図７は、側板のプレカット材（外側直側板用のプレカット材６１、及び、廻り側板用のプレカット材６２）の一例を示す図である。 図８は、一般的な木造住宅における廻り階段の一例を示す斜視図である。 図９は、従来の縦ささら材５７、及び、その構成部品の一例を示す図である。

以下、添付図面に沿って、本発明に係る廻り階段用の縦ささら材７の実施形態について説明する。図１は、本発明に係る縦ささら材７を用いて施工した右廻り階段（下段側から見て上段側が右方向へ廻る階段）（三段廻り階段）の一例を示す斜視図である。図１に示す廻り階段は、直段板１、廻り段板２（２ａ〜２ｃ）、外下側直側板３ａ、外上側直側板３ｂ、内下側直側板３ｃ、内上側直側板３ｄ、下側廻り側板４ａ、上側廻り側板４ｂ、蹴込み板５、及び、縦ささら材７によって構成されており、縦ささら材７は、図示されているように、内下側直側板３ｃと内上側直側板３ｄとの間に配置されている。尚、図１においては、側板等が固定される階段部の壁面の表示は省略されている。

図２は、図１に示す縦ささら材７（右廻り階段用）を構成する下側部材７ａの外観を示す図であり、図２（１）（２）は斜視図、図２（３）は正面図、図２（４）は背面図である。この下側部材７ａは、他の側板（例えば、下側部材７ａに近接する内下側直側板３ｃ）と同じ厚さの板材であって、階段二段分の高さ寸法を有する直方体の板材をベースとして、これを部分的に加工して形成したものであり、設置された際に下段の廻り段板２ａ（図１参照）側となる表側面１１と、壁面側となる裏側面１２と、内下側直側板３ｃ側となる下階側面１３と、その反対側の上階側面上半部１４及び上階側面下半部１５と、天端面１６と、底面１７と、上階側面上半部１４の下側の顎下面１８とを有している。

図２に示すように、縦ささら材７の下側部材７ａは、上半部の横幅（下階側面１３から上階側面上半部１４までの寸法）が、下半部の横幅（下階側面１３から上階側面下半部１５までの寸法）よりも大きく、下階側面１３を基準として、上階側面上半部１４が、上階側面下半部１５よりも外側へ突出した形状となっている。尚、表側面１１及び裏側面１２と直交する下階側面１３に対し、上階側面上半部１４は平行であるが、上階側面下半部１５は、下階側面１３に対して所定角度で傾斜しており、その傾斜角度は、図１に示す下段の廻り段板２ａと中段の廻り段板２ｂとの間に配置される蹴込み板５ａの角度に対応しており、下側部材７ａを設置した際に、蹴込み板５ａに対して上階側面下半部１５が全体的に面接触する構成となっている。

また、図２に示すように、上階側面上半部１４と上階側面下半部１５との間には、切欠１９が形成されている。この切欠１９は、表側面１１側から板厚寸法の約１／２の深さまで形成され、図１に示す中段の廻り段板２ｂの厚さ寸法に対応した高さ寸法を有しており、設置時において、中段の廻り段板２ｂの内側端部を進入させ、支持できるように構成されている。

更に、上階側面上半部１４と天端面１６との角部にも、切欠２０が形成されている。この切欠２０は、裏側面１２側から板厚寸法の約１／２の深さまで形成され、図１に示す上段の廻り段板２ｃの厚さ寸法に対応した高さ寸法を有しており、設置時において、上段の廻り段板２ｃの内側端部を進入させ、支持できるように構成されている。

図３は、図１に示す縦ささら材７の上側部材７ｃの斜視図である。この上側部材７ｃは、下側部材７ａと同じ厚さの板材であって、階段一段分の高さ寸法を有する直方体の板材である。

図４は、図２に示す下側部材７ａを設置した状態を示す拡大図である。上述の通り、下側部材７ａは、階段二段分の高さ寸法を有しているため、底面１７が、下段の廻り段板２ａの上面に対して接する状態で配置すると、天端面１６が、上段の廻り段板２ｃの上面と一致する高さとなる。そして、図示されているように、中段の廻り段板２ｂの内側端部が切欠１９内に進入した状態となって下側部材７ａに支持され、また、上段の廻り段板２ｃの内側端部が切欠２０内に進入した状態となって下側部材７ａに支持された状態となる。また、下段の廻り段板２ａと中段の廻り段板２ｂとの間に配置される蹴込み板５ａの内側端部が、上階側面下半部１５に面接触した状態となる。

図３に示す上側部材７ｃは、図４に示す下側部材７ａの天端面１６の上に配置され、図１に示すような状態となる。このとき、上側部材７ｃは、上段の廻り段板２ｃ側の面が、内上側直側板３ｄの内側面の位置と一致するように配置すればよく、必ずしも下側部材７ａの下階側面１３の位置を基準として配置する必要はない。

このため、階段部の壁面の出隅部５６（図６参照）の位置が、設計上の位置からずれてしまうこと等に起因して、下側部材７ａの実際の取付位置が、本来の設計上の位置よりも下階側（内下側直側板３ｃ側）へずれてしまったような場合でも、下側部材７ａと上側部材７ｃとの相対位置関係を調整することにより、そのようなギャップを無理なく収めることができる。

また、下側部材７ａの取付位置が、本来の設計上の位置よりも下階側或いは上階側へずれてしまった場合、下側部材７ａの下階側面１３と、内下側直側板３ｃとの間に隙間が形成されてしまうか、或いは、内下側直側板３ｃと干渉して、下側部材７ａをうまく配置できなくなってしまうという問題が生じかねないが、このような場合には、プレカット材（図７参照）から内下側直側板３ｃを切り出す際に、内下側直側板３ｃの上端部における寸断位置Ｐ（図５参照）を、図５に示す矢印方向へ適宜調整することにより、上記のような問題を好適に解決することができる。

尚、上記実施形態においては、右廻り階段用の縦ささら材７について説明したが、下側部材７ａの形状を、図２に示したものと鏡面対称的な形状とすることにより、左廻り階段用の縦ささら材として構成することができる。また、縦ささら材７の上側部材７ｃとして、表面が平滑な直方体形状のものを例示したが、必ずしもこの形状には限定されず、各種の意匠、装飾を施したものを用いることもできる。

また、上記実施形態においては、縦ささら材７の下側部材７ａについて、「階段二段分の高さ寸法を有する」と説明したが、この高さ寸法のものには限定されず、それ以上の高さ寸法を有するものとして構成することもできる。更に、縦ささら材７の上側部材７ｃについても、「階段一段分の高さ寸法を有するもの」には限定されず、それ以上の高さ寸法を有するものとして構成することもできる。

１，５１，５１ａ：直段板、
２，２ａ〜２ｃ，５２，５２ａ〜５２ｃ：廻り段板、
３ａ，５３ａ：外下側直側板、
３ｂ，５３ｂ：外上側直側板、
３ｃ，５３ｃ：内下側直側板、
３ｄ，５３ｄ：内上側直側板、
４ａ，５４ａ：下側廻り側板、
４ｂ，５４ｂ：上側廻り側板、
５，５ａ，５５：蹴込み板、
７，５７：縦ささら材、
７ａ，５７ａ：下側部材、
７ｃ，５７ｃ：上側部材、
１１：表側面、
１２：裏側面、
１３：下階側面、
１４：上階側面上半部、
１５：上階側面下半部、
１６：天端面、
１７：底面、
１８：顎下面、
１９，２０：切欠、
５６：出隅部、
５７ｂ：中間部材、
５８ａ〜５３ｃ：切欠、
６１：外側直側板用のプレカット材、
６２：廻り側板用のプレカット材、
６３：横溝、
６４：縦溝

Claims (5)

1. 下段の廻り段板、中段の廻り段板、上段の廻り段板、内下側直側板、及び、内上側直側板を有する廻り階段の内下側直側板と内上側直側板との間に配置される縦ささら材であって、
   下側部材と上側部材とによって構成され、
   下側部材は、少なくとも施工対象となる階段二段分の高さ寸法を有し、設置された際に、下段の廻り段板側となる表側面と、壁面側となる裏側面と、内下側直側板側となる下階側面と、その反対側の上階側面上半部及び上階側面下半部と、上段の廻り段板の上面と一致する高さとなる天端面と、下段の廻り段板の上面に対して接する状態で配置される底面とを有し、上半部の横幅が、下半部の横幅よりも大きく設定され、
   下側部材の上階側面上半部が、表側面及び裏側面と直交する下階側面に対し平行であり、
   下側部材の上階側面下半部が、下階側面に対して所定角度で傾斜し、
   下側部材の上階側面上半部と上階側面下半部との間に、表側面側から所定の深さを有し、中段の廻り段板の内側端部を進入させて支持する切欠が形成され、
   下側部材の上階側面上半部と天端面との角部に、裏側面側から所定の深さを有し、上段の廻り段板の内側端部を進入させて支持する切欠が形成され、
   上側部材が、下側部材と同じ厚さ寸法に設定されていることを特徴とする、廻り階段用の縦ささら材。
2. 下側部材が、近接する側板と同じ厚さ寸法に設定されていることを特徴とする、請求項１に記載の廻り階段用の縦ささら材。
3. 上側部材が、少なくとも施工対象となる階段一段分の高さ寸法を有する直方体の板材であることを特徴とする、請求項１に記載の廻り階段用の縦ささら材。
4. 直段板、廻り段板、外下側直側板、外上側直側板、内下側直側板、内上側直側板、下側廻り側板、上側廻り側板、蹴込み板、及び、内下側直側板と内上側直側板との間に配置される、請求項１に記載の縦ささら材によって構成される廻り階段であって、
   縦ささら材を構成する下側部材において、上階側面上半部と上階側面下半部との間に形成されている切欠が、中段の廻り段板の厚さ寸法に対応した高さ寸法を有しており、設置時において、中段の廻り段板の内側端部を進入させ、支持できるように構成され、
   縦ささら材を構成する下側部材において、上階側面上半部と天端面との角部に形成されている切欠が、上段の廻り段板の厚さ寸法に対応した高さ寸法を有しており、設置時において、上段の廻り段板の内側端部を進入させ、支持できるように構成されていることを特徴とする廻り階段。
5. 下階側面に対する上階側面下半部の傾斜角度が、下段の廻り段板と中段の廻り段板との間に配置される蹴込み板の角度に対応し、下側部材を設置した際に、当該蹴込み板に対して上階側面下半部が全体的に面接触する構成となっていることを特徴とする、請求項４に記載の廻り階段。

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