JP6346621B2 - 酒類用金属担持ゼオライト及び酒類の製造方法 - Google Patents

酒類用金属担持ゼオライト及び酒類の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、酒類に含まれる不要成分を除去する酒類用金属担持ゼオライト、及び酒類用金属担持ゼオライトを用いた酒類の製造方法に関する。
酒類のなかには、ウイスキーのように、短くて4〜6年、通常7〜10年、長い場合には20年近く樽に貯蔵されて、熟成されるものがある。
貯蔵の間に、硫黄化合物等の未熟成成分の蒸散及び消滅、ニューポット由来成分の反応(酸化反応、アセタール化反応、エステル化反応等)、樽の原材料由来成分の分解反応、樽内に溶出した原材料由来成分と原酒との反応、原酒を構成するエタノールと水との状態変化等が起こることにより、ウイスキーに特有の風味が引き出される。
しかし、貯蔵の間に原酒が樽に吸収されたり、樽を透過して揮発したりするため、原酒量は自然に減少する。このため、貯蔵期間の長期化は、製造効率の面では、製品ロスの増加を招いていた。
そこで、硫黄化合物等の未熟成成分、寒冷時における析出成分、不快な香り成分等の酒類にとっての不要成分を、貯蔵により自然に起こる変化を待たずに、積極的に除去する方法が考えられている。
酒類から不要成分を除去する方法としては、例えば、シリカを有機シラン化合物で処理してなる吸着剤に酒類を接触させる方法(特許文献1参照)、活性炭に酒類を接触させる方法(特許文献2参照)、イオン交換樹脂を用いる方法(特許文献3参照)、金属粒と樹脂層とを用いる方法(特許文献4参照)等が既に提案されている。
しかし、上述した従来の技術では、より高い品質の要求を満足する製品を提供するためには、更なる改良の余地が残されていた。
特開昭63−137668号公報 特開平03−187374号公報 特開2004−222567号公報 特開2012−016321号公報
本発明は、酒類に含まれる不要成分を効率よく除去し得る酒類用金属担持ゼオライト、及び酒類用金属担持ゼオライトを用いた酒類の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、特定の金属担持ゼオライトに酒類を通液することにより、酒類に含まれる不要成分を除去することができ、前記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
[1]金属成分が担持されたゼオライトであって、前記金属成分が銀であり、前記ゼオライトがベータ型及びY型から選ばれる少なくとも1種であり、酒類に含まれる不要成分を除去する酒類用金属担持ゼオライト。
[2]前記銀の担持量が、酒類用金属担持ゼオライト全量に対して、5質量%以上25質量%以下であることを特徴とする[1]に記載の酒類用金属担持ゼオライト。
[3] 前記酒類が蒸留酒であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の酒類用金属担持ゼオライト。
[4]前記酒類が醸造酒であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の酒類用金属担持ゼオライト。
[5]酒類を製造する方法であって、前記酒類を精製する精製工程を有し、前記精製工程において[1]〜[4]のいずれかに記載の酒類用金属担持ゼオライトにより前記酒類に含まれる不要成分が除去されることを特徴とする酒類の製造方法。
本発明によれば、酒類に含まれる不要成分を効率よく除去し得る酒類用金属担持ゼオライト、及び酒類用金属担持ゼオライトを用いた酒類の製造方法を提供することができる。
[酒類用金属担持ゼオライト]
本発明の実施形態に係る酒類用金属担持ゼオライトは、金属成分が担持されたゼオライトであって、前記金属成分が銀であり、前記ゼオライトがベータ型及びY型から選ばれる少なくとも1種であり、酒類に含まれる不要成分を除去するものである。
除去される不要成分とは、酒類の風味を妨げる成分であり、主として、不味成分が挙げられる。不味成分としては、ジメチルサルファイド、ジメチルジサルファイド、ジメチルトリサルファイド等の硫黄化合物が挙げられる。また、ピリジン等の窒素化合物が挙げられる。
本実施形態に係る酒類用金属担持ゼオライトは、酒類に含まれる上述した不要成分を除去する一方で、高級アルコール類、フーゼル類、エステル類等の旨味成分を酒類中に残すことができる。
対象とする酒類は、特に限定されるものではなく全ての酒類が適用できる。具体的には、ウイスキー、ブランデー、ジン、ウオッカ、テキーラ、ラム、白酒、アラック等の全ての蒸留酒が適用できる。また、清酒、ビール、ワイン、酒精強化ワイン、中国酒等の全ての醸造酒及び混成酒が適用できる。醸造酒及び混成酒のなかでは、清酒が好適に用いられる。さらに、麦焼酎、米焼酎、芋焼酎、黒糖酒、そば焼酎、コーン焼酎、粕取り焼酎、泡盛等の全ての焼酎が適用できる。
[ゼオライト]
本実施形態に係る酒類用金属担持ゼオライトを構成するゼオライトの構造は、ベータ型及びY型から選ばれる少なくとも1種を適用できる。これらのなかでは、12員環或いは10員環細孔を有するFAU及びBEA構造を有するゼオライトが好ましい。
ゼオライトのBET比表面積は、500m/g以上900m/gであることが好ましく、より好ましくは550m/g以上850m/g以下である。
ゼオライトのミクロ孔容積は、0.05cc/g以上0.40cc/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.10cc/g以上0.35cc/gである。
本実施形態に係る酒類用金属担持ゼオライトは、バインダー成分を添加して成型して用いられてもよい。バインダー成分の添加量は、該金属担持ゼオライト成型体全量に基づき、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下の割合で、添加して成型されることが望ましい。
ゼオライト成型体の平均粒径は、0.1mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.3mm以上3mm以下であり、さらに好ましくは、0.5mm以上2mm以下である。
使用可能なバインダー成分としては、アルミナ、シリカなどが好ましい。成型を容易にする観点から、さらにベントナイト、バーミキュライト等の粘土鉱物やセルロース等の有機添加剤を加えてもよい。ゼオライトに、上記バインダー成分を加えて、押出成型、打錠成型、転動造粒、スプレードライ等の通常の方法により金属担持ゼオライト成型体を成型することができる。
[酒類用金属担持ゼオライトの製造方法]
酒類用金属担持ゼオライトを製造する方法としては、イオン交換法があげられる。イオン交換法では、ゼオライトの結晶の内部にイオン交換により、金属イオンを担持させる。本実施形態に係る酒類用金属担持ゼオライトでは、ゼオライトに担持する金属成分として、銀を用いることができる。
ゼオライト結晶の内部のイオンを金属イオンで交換し、ゼオライト結晶の内部に金属イオンを担持する方法としては、金属イオンを含有する溶液中にゼオライトを入れ、常温から80℃程度の温度で1〜数時間、金属イオンを含有する溶液とゼオライトとを接触させる方法が挙げられる。この操作は、複数回繰り返し行ってもよい。
本実施形態では、金属イオンを含有する溶液としては、硝酸塩や塩化物など水溶性の金属塩が使用できる。また、金属化合物をアンモニア水に溶解させて、金属アンミン錯イオンを形成させた溶液を使用することもできる。すなわち、硝酸銀、硝酸アンモニウムを用いることができる。
イオン交換によって、ゼオライト結晶内部に金属イオンが担持された後、水等で洗浄した後、50℃以上、好ましくは50℃以上200℃以下程度の温度で乾燥処理されてもよい。また、乾燥された後、さらに、500℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下程度の温度、で数時間焼成処理されてもよい。
本実施形態に係る酒類用金属担持ゼオライトにおいて、ゼオライトに担持された金属の総担持量は、酒類用金属担持ゼオライト全量に対して、5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、5質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは、6質量%以上20質量%以下で最も好ましくは6質量%以上18質量%以下である。金属の担持量が5質量%未満であると飲料に含まれる不要成分を十分に除去できず、25質量%を超えると、金属がイオン交換され難くなるため、金属が凝集し、金属当たりの不要成分の除去効率が低下する。金属としては銀が好ましい。
[酒類の製造方法]
本発明の実施形態に係る酒類の製造方法は、酒類を精製する精製工程を有し、精製工程において上述した酒類用金属担持ゼオライトにより酒類に含まれる不要成分が除去される。
酒類用金属担持ゼオライトを用いた精製条件は、以下のとおりである。
原酒中の硫黄化合物の濃度が100容量ppm以下であれば上述した酒類用金属担持ゼオライトにて脱硫処理することが可能である。硫黄化合物の濃度は、好ましくは、10容量ppm以下である。
温度範囲は、−50℃以上150℃以下であり、より好ましくは−50℃以上120℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以上100℃以下である。
上述した酒類用金属担持ゼオライトに対して酒類を流通させる方式にする場合には、流速(LHSV)範囲は、0.1h−1以上100h−1以下であり、より好ましくは0.5以上50h−1以下であり、さらに好ましくは1以上30h−1以下である。
上記精製条件によれば、酒類中に高級アルコール類、フーゼル類、エステル類等の旨味成分を保持しながら、不要成分を除去することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
後述する供試酒の成分を以下の方法で評価した。
<酒類用金属担持ゼオライトの銀担持量の定量>
酒類用金属担持ゼオライトにおける銀担持量は、ICP発光分光分析装置 アジレントテクノロジー株式会社製 720−ESを用いて定量した。
<酒類の成分評価>
(評価試験1…バッチ式)
供試酒中の硫黄化合物(ジメチルスルフィド(DMS)、ジメチルジスルフィド(DMDS)及びジメチルトリスルフィド(DMTS))と、各種エステル類及びフーゼル類とを、ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析計(ヘッドスペースインジェクター「MultiPurpose Sampler MPS2」 Gerstel株式会社製)を用いて分析した。
次に、容器中に、供試酒と供試脱硫剤とを入れて脱硫処理を行った。具体的には、1リットルの容器に、この供試酒700mlと、蒸留水を通した供試脱硫剤14mlとを入れて4時間振とうした。
この後、ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析計を用いて、供試酒中の硫黄化合物、各種エステル類及びフーゼル類を、再度定量した。
硫黄化合物については、除去率(脱硫率という)で表した。除去率が100%であれば、試験後の存在量が検出可能レベル未満であることを示す。
(評価試験2…流通式)
流通式では、脱硫処理する前の供試酒中の成分を分析した後、この供試酒100mlを、供試脱硫剤を5cm封入した直径1cmのカラムに流通させた。この後、供試酒中の成分を再度分析した。なお、流通条件は、LHSV=10h−1で実施した。
(ピリジンの定量方法)
上記振とう操作の前後に供試酒中に含まれるピリジンの存在量を、上述のヘッドスペースインジェクターにより定量し、除去率(脱硫率という)で表した。また、ピリジンの除去評価のための触媒処理は、成分評価試験2と同様の流通式にて行った。流通条件は、LHSV=10h−1で実施した。
[触媒の製造例]
<製造例1>
市販のNaY型ゼオライト成型体(東ソー株式会社製 HSZ−320NAD1A)を砕いて平均粒径を0.5〜1mmに揃えた。硝酸アンモニウム240gを水3Lに溶解し、上記ゼオライト1kgを投入し、液を3時間撹拌し、イオン交換処理を行ってNHY型ゼオライトを得た。水洗及び乾燥の後、NHY型ゼオライト1kgを硝酸銀394g及びアンモニア(30%)330gを水2.5Lに溶解した銀アンミン錯イオン溶液に投入し、液を3時間撹拌し、Agイオン交換を行い、さらに、水洗及び乾燥を行った。この後、400℃で3時間の焼成を行い、AgY型ゼオライト1を得た。
<製造例2>
市販のNaY型ゼオライト成型体(東ソー株式会社製 HSZ−320NAD1A)を砕いて平均粒径を0.5〜1mmに揃えた。硝酸銀394gを水2.5Lに溶解した溶液に、上記ゼオライト1kgを投入し、液を3時間撹拌し、銀イオン交換を行った。水洗及び乾燥の後、400℃で3時間の焼成を行い、AgY型ゼオライト2を得た。
<製造例3>
市販のNaY型ゼオライト成型体(東ソー株式会社製 HSZ−320NAD1A)を砕いて平均粒径を0.5〜1mmに揃えた。硝酸アンモニウム240gを水3Lに溶解し、上記ゼオライト1kgを投入し、液を3時間撹拌し、イオン交換処理を行ってNHY型ゼオライトを得た。水洗及び乾燥の後、NHY型ゼオライト1kgを硝酸銀98.5g及びアンモニア(30%)82.5gを水2.5Lに溶解した銀アンミン錯イオン溶液に投入し、液を3時間撹拌し、Agイオン交換を行い、さらに、水洗及び乾燥を行った。この後、400℃で3時間の焼成を行い、AgY型ゼオライト3を得た。
<製造例4>
市販のベータ型ゼオライト成型体(東ソー株式会社製 HSZ−930NHA)を砕いて平均粒径を0.5〜1mmに揃えた。硝酸アンモニウム240gを水3Lに溶解し、上記ゼオライト1kgを投入し、液を3時間撹拌し、イオン交換処理を行ってNHY型ゼオライトを得た。水洗及び乾燥の後、NHY型ゼオライト1kgを硝酸銀394g及びアンモニア(30%)330gを水2.5Lに溶解した銀アンミン錯イオン溶液に投入し、液を3時間撹拌し、Agイオン交換を行い、さらに、水洗及び乾燥を行った。この後、400℃で3時間の焼成を行い、Agβ型ゼオライト4を得た。
[実施例及び比較例]
<実施例1−1>
製造例1により得られたAgY型ゼオライト1にウイスキー(モルトウイスキー(アルコール分62%))を通液し、評価試験1(バッチ式)に基づいて通液前後の成分を比較した。なお、バッチ処理前のウイスキーには、DMSが1.7816ppm、DMDSが0.4226ppm、DMTSが0.0032ppm含まれていた。脱硫率を第1表に示す。また、各種エステル類及びフーゼル類の存在量を第2表に示す。
<実施例1−2乃至1−4>
製造例2により得られたAgY型ゼオライト2にウイスキー(モルトウイスキー(アルコール分62%))を通液し、上記評価方法に基づいて通液前後の成分を比較した。
製造例3により得られたAgY型ゼオライト3にウイスキー(モルトウイスキー(アルコール分62%))を通液し、上記評価方法に基づいて通液前後の成分を比較した。
製造例4により得られたAgβ型ゼオライト4にウイスキー(モルトウイスキー(アルコール分62%))を通液し、上記評価方法に基づいて通液前後の成分を比較した。
なお、実施例1−2乃至1−4については、脱硫率のみを評価した。結果を第1表に示す。
<実施例2−1>
製造例1により得られたAgY型ゼオライト1に焼酎(麦焼酎(常圧蒸留品、アルコール分25%))を通液し、評価試験1(バッチ式)に基づいて通液前後の成分を比較した。なお、バッチ処理前の焼酎には、DMSが0.0087ppm、DMDSが0.0122ppm、DMTSが0.0116ppm含まれていた。脱硫率を第1表に示す。
<実施例3−1>
製造例1により得られたAgY型ゼオライト1にラム酒(市販ラム酒(ホワイトラム、アルコール分37%))を通液し、評価試験1(バッチ式)に基づいて通液前後の成分を比較した。なお、バッチ処理前のラム酒には、DMSが0.0526ppm、DMDSが0.0030ppm、DMTSが0.0016ppm含まれていた。脱硫率を第1表に示す。各種エステル類及びフーゼル類の存在量を第3表に示す。
<実施例4−1>
製造例1により得られたAgY型ゼオライト1に、清酒として、市販清酒(本醸造酒、アルコール分16%)を70℃で1週間処理し、老酒にしたものを通液し、評価試験1(バッチ式)に基づいて通液前後の成分を比較した。なお、清酒には、元々DMS、DMTSの含有量が少なく、老香の原因物質のひとつがDMTSと考えられている。このことから、DMTSの脱硫効果を確認した。バッチ処理前の老酒には、DMTSが0.0025ppm含まれていた。脱硫率を第1表に示す。
<実施例5−1>
製造例1により得られたAgY型ゼオライト1にウイスキー(モルトウイスキー(アルコール分62%))を流通し、評価試験2(流通式)に基づいて流通前後の成分を比較した。なお、流通処理前のウイスキーには、DMSが2.0103ppm、DMDSが0.3662ppm、DMTSが0.0044ppm含まれていた。脱硫率を第4表に示す。
<実施例6−1>
製造例1により得られたAgY型ゼオライト1に焼酎(芋焼酎(常圧蒸留品、アルコール分37%)を流通し、評価試験2(流通式)に基づいて流通前後の成分を比較した。なお、流通処理前の焼酎には、DMSが0.0134ppm、DMDSが0.0143ppm、DMTSが0.0074ppm含まれていた。脱硫率を第4表に示す。
<実施例7−1>
製造例1により得られたAgY型ゼオライト1に焼酎(麦焼酎(常圧蒸留品、アルコール分25%)を流通し、評価試験2(流通式)に基づいて流通前後の成分を比較した。なお、流通処理前の焼酎には、DMSが0.0026ppm、DMDSが0.0048ppm、DMTSが0.0011ppm含まれていた。脱硫率を第4表に示す。
<実施例8−1>
製造例1により得られたAgY型ゼオライト1に焼酎(麦焼酎(減圧蒸留品、アルコール分25%)を流通し、評価試験2(流通式)に基づいて流通前後の成分を比較した。なお、流通処理前の焼酎には、DMSが0.0040ppm、DMDSが0.0020ppm、DMTSが0.0022ppm含まれていた。脱硫率を第4表に示す。
また、製造例1の酒類用金属担持ゼオライトを用いて酒類中のピリジン除去効果を評価した結果を第5表に示す。通液前のピリジン含有量は、評価試験1(バッチ式)又は評価試験2(流通式)にて脱硫処理前後のピリジン含有量を比較した。
なお、バッチ式による脱硫処理前のウイスキーには、ピリジンが0.0606ppm含まれていた。また、流通式による脱硫処理前のモルトウイスキーには、ピリジンが0.0949ppm含まれていた。同様に、芋焼酎(常圧蒸留品、アルコール分37%)にはピリジンが0.0359ppm含まれ、麦焼酎(減圧蒸留品、アルコール分25%)には、ピリジンが0.0207ppm含まれていた。
<実施例9−1>
製造例1により得られたAgY型ゼオライト1にビール(麦芽100%ビール、アルコール分6%)を通液し、評価試験1(バッチ式)に基づいて通液前後の成分を比較した。なお、バッチ処理前のビールには、3硫黄化合物のうちDMSのみ0.0384ppm含まれていた。脱硫率を第6表に示す。
<実施例10−1>
製造例1により得られたAgY型ゼオライト1にワイン(赤ワイン、アルコール分10%)を通液し、評価試験1(バッチ式)に基づいて通液前後の成分を比較した。なお、バッチ処理前のワインには、3硫黄化合物のうちDMSは検出されず、DMDSが0.0128ppm、DMTSが0.0009ppm含まれていた。脱硫率を第6表に示す。
<実施例11−1>
製造例1により得られたAgY型ゼオライト1にブランデーの1種であるグラッパ(アルコール分36%)を通液し、評価試験1(バッチ式)に基づいて通液前後の成分を比較した。なお、バッチ処理前のグラッパには、DMSが0.0028ppm、DMDSが0.0385ppm、DMTSが0.0028ppm含まれていた。脱硫率を第6表に示す。
<実施例12乃至21>
製造例1と同様の方法で、銀担持量、粒径の異なるAgY型ゼオライトを製造した。この顆粒状AgY型ゼオライトに水を懸濁させ、得られた懸濁液を直径1.0cmのカラム容器に入れ、高さ23cmまで充填した。なお、粒径は、カムサイザー/デジタル画像解析式粒子径分布測定装置(HORIBA社、Retsch Techonolgy)を用い、円相当径のQ50%値を測定した。
このカラム容器にウイスキーを所定の流速で通過させ、ウイスキーを処理し、通液前後の成分を比較した。なお、処理前のウイスキーには、DMSが0.35ppm、DMDSが0.22ppm、DMTSが0.0073ppm含まれていた、脱硫率を第7表に示す。
[評価結果]
上記結果から、酒類を本実施例に係る金属担持ゼオライトに通液すると、旨味成分を酒類中に残しながら、不味成分を除去できることがわかった。

Claims (4)

  1. 酒類を製造する方法であって、
    前記酒類を精製する精製工程を有し、
    前記酒類が蒸留酒であり、
    前記精製工程において、酒類用金属担持ゼオライトに酒類を流通させる方式により、前記酒類に含まれるジメチルサルファイド(DMS)、ジメチルジサルファイド(DMDS)、ジメチルトリサルファイド(DMTS)及びピリジンから選択される1種以上が除去され、
    前記酒類を流通させる方式における流速(LHSV)範囲が、0.1h −1 以上100h −1 以下であり、
    前記酒類用金属担持ゼオライトが、金属成分が担持されたゼオライトであって、前記金属成分が銀であり、前記ゼオライトがベータ型及びY型から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする酒類の製造方法。
  2. 前記銀の担持量が、酒類用金属担持ゼオライト全量に対して、5質量%以上25質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の酒類の製造方法
  3. 前記蒸留酒が、ウイスキーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の酒類の製造方法
  4. 前記精製工程において、酒類に含まれるジメチルサルファイド(DMS)、ジメチルジサルファイド(DMDS)及びジメチルトリサルファイド(DMTS)から選択される1種以上が除去されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酒類の製造方法
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