本発明の一実施形態による床構造が図1に示されている。この床構造は、介護施設において高齢者や認知症患者が入居する個室に居室スペースとトイレやキッチンなどの水廻りスペースが隣接して設けられた室内の床構造であって、コンクリートスラブなどの床スラブ1上の居室スペースには居室側フロア10が設けられると共に、水廻りスペースには水廻り側フロア20が設けられ、これら居室側フロア10と水廻り側フロア20の間に床見切り30が設けられて構成されている。
図示実施形態において、居室側フロア10は、表面側から第一基材11/第一緩衝材12/第二基材13/第二緩衝材14の順に積層されてなる衝撃吸収積層体15の表面に化粧シート16が貼着された構成を有する(図2)。衝撃吸収積層体15の第二基材13の四周において対向する一対の木口面には雄実および雌実(いずれも図示せず)が形成され、居室側スペースにおいて隣接して施工される一方の床材10の雄実と他方の床材10の雌実とを嵌合させて、居室側スペースの床面が形成される。一枚の居室側フロア10は、一例として、幅147mm×長さ900mmの平面寸法を有し、厚さは13mmである。
第一基材11は、たとえばMDF、HDFなどの木質繊維板、合板、無垢材、積層板、集成材などの木質材からなり、厚さは0.5〜1.5mmであることが好ましい。この厚さが0.5mm未満では表面強度が弱く、衝撃を受けた際に破損や凹みが生じやすくなる。1.5mmより厚くなると、裏面に積層される第一緩衝材12の衝撃吸収性能が損なわれる。
第一緩衝材12には、たとえばエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂発泡体や、合成ゴム、天然ゴムなどのゴム発泡体であって独立気泡タイプのものを用いる。居室側フロア10の製造工程において第一基材11が第一緩衝材12および第二基材13と加圧接着される際に、接着剤が第一緩衝材12の内部に浸透した状態で圧縮されてしまうと、第一緩衝材12の厚みや硬度が大きく変化してフロア全体としての厚さや硬度の精度が損なわれると共に、第一緩衝材12による衝撃吸収性能が大幅に低下してしまうが、第一緩衝材12として独立気泡発泡体を用いることにより、第一緩衝材12の厚さや硬度が実質的に維持され、居室側フロア10の精度や第一緩衝材12による所期の衝撃吸収性能を損なうことがない。
第一緩衝材12の厚さは0.5〜2.5mmであることが好ましい。この厚さが0.5mm未満では衝撃吸収性能が不十分となり、居室側フロア10について、JIS A 6519の測定方法により測定される最大加速度の値(以下「G値」と言う。)として100以下(より好ましくは80G以下)のG値を得ることが困難になる。2.5mmより厚くなると、第一基材11が衝撃を受けた際に第一基材12が深く撓むことになり、第一基材11が割れやすくなる。
第一緩衝材12として用いられる独立気泡発泡体の発泡倍率は5〜30倍程度であることが好ましい。発泡倍率が30倍を越えると柔らかくなりすぎてしまい、荷重を受けたときの沈み込みが大きくなって歩行時に不快感を与える。また、人が転倒した場合に第一基材11から受ける衝撃を十分に緩衝することができず、転倒した人の頭などがその下層の第二基材13に強く打ち付けられる危険性がある。一方、発泡倍率が5倍を下回ると硬すぎるものとなって衝撃吸収性能が低下する。これらの要因から、第一緩衝材12の発泡倍率は5〜30倍であることが好ましく、より好ましくは8〜15倍である。
第一緩衝材12として用いられる独立気泡発泡体はアスカーC硬度が20〜70度であることが好ましい。アスカーC硬度が20度未満であると、荷重を受けたときの沈み込みが大きくなって歩行時に不快感を与える。また、人が転倒した場合に第一基材11から受ける衝撃を十分に緩衝することができず、転倒した人の頭などがその下層の第二基材13に強く打ち付けられる危険性がある。一方、アスカーC硬度が70度より大きくなると緩衝材として硬すぎるものとなって衝撃吸収作用を十分に発揮することができない。これらの要因から、第一緩衝材12のアスカーC硬度範囲は20〜70度であることが好ましく、より好ましくは35〜60度である。
第二基材13は、第一基材11と同様、たとえばMDF、HDFなどの木質繊維板、合板、無垢材、積層板、集成材などの木質材からなる。MDFは全方向に大きな曲げ強度を発揮し、実(雄実、雌実)の破損を防止する効果に優れているので、MDFからなる第二基材13の厚さ範囲内に実を形成することが好ましく、特に、後述するように、0.6〜1.2N/mm2の剥離強度を有するMDFを用いることが好ましい。
第二基材13には、実が四周木口面に形成されることから厚さを大きく取る必要があり、たとえば5.0mm以上の厚さとする。第二基材13の厚さが5.0mm未満ではこの厚さ範囲に実を形成することが困難となる。
第二緩衝材14は、たとえばポリウレタン(PU)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂発泡体や、合成ゴム、天然ゴムなどのゴム発泡体からなり、独立気泡発泡体および連続気泡発泡体のいずれであっても良い。また、第二緩衝材14の裏面には防水または防湿シートが貼着されることが好ましい。
第二緩衝材14の厚さ(荷重を受けないときの元々の厚さ)は、3.0〜5.0mmであることが好ましい。この厚さが3.0mm未満では衝撃吸収性能が不十分となり、居室側フロア10について100以下のG値を得ることが困難になる。また、5.0mmより厚くなると、柔らかすぎて歩行時の沈み込みが大きくなり、不快感を与える。
第二緩衝材14として用いられる発泡体の発泡倍率は5〜30倍程度であることが好ましい。発泡倍率が30倍を越えると柔らかくなりすぎてしまい、荷重を受けたときの沈み込みが大きくなって歩行時に不快感を与える。また、第二緩衝材14は実が形成される第二基材13の裏面に貼着されるので、第二基材13が沈み込むと、隣接する他の居室側フロア10と嵌合している実が破損する危険性がある。一方、発泡倍率が5倍を下回ると硬すぎるものとなって衝撃吸収性能が低下してしまう。これらの要因から、第二緩衝材14の発泡倍率は5〜30倍であることが好ましく、より好ましくは15〜25倍である。
第二緩衝材14にはアスカーC硬度が1〜30度のものを用いることが好ましい。アスカーC硬度1度未満の第二緩衝材14を用いると、柔らかすぎて歩行時の沈み込みが大きくなり、不快感を与えるので、現実的ではない。一方、アスカーC硬度が30度より大きくなると、緩衝材として硬すぎるものとなって衝撃吸収作用を十分に発揮することができない。これらの要因から、第二緩衝材14のアスカーC硬度範囲は1〜30度であることが好ましく、より好ましくは3〜25度である。
第一基材11/第一緩衝材12/第二基材13/第二緩衝材14からなる衝撃吸収積層体15の表面、すなわち第一基材11の表面には、任意に化粧紙、突板、オレフィンシートなどの合成樹脂シートなどによる化粧シート16が貼着される。化粧シート16の表面にさらに任意塗装を施しても良い。あるいは、化粧シート16を貼着することに代えて、第一基材11の表面に任意塗装を施しても良い。塗装を施す場合は、防滑性能を有する防滑性塗料を用いて行うことが好ましい。
水廻り側フロア20は、床下地材21の上に耐水性床シート22が積層・接着されてなる(図3)。水廻り側フロア20は全体として居室側フロア10と同等の衝撃吸収性能を発揮するものでなければならないが、耐水性床シート22は一般にそれほど優れた衝撃吸収性能を有していない(一般に120〜140G程度)ので、床下地材21に大きな衝撃吸収性能を持たせる必要がある。このため、たとえばポリエチレン樹脂による独立発泡体(一例として発泡倍率=10倍)を床下地材21として用いることが好ましい。このようなポリエチレン発泡樹脂は、60〜70Gの衝撃吸収性能を有し、たとえば、一枚が幅1000mm×長さ1000mm×厚さ10mmの寸法を有する正方形の板材として市販されており、水廻り側フロア20の全体厚が居室側フロア10の全体厚と略同一になるように一枚または複数枚を重ね合わせて床下地材21として使用する。
床下地材21の材質は上記に挙げた例に限定されるものではなく、10mm程度の厚さで60〜70Gの衝撃吸収性能を発揮し得るものであれば、他の材質も使用可能であり、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリフェノール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアクリル、EVA、ABS、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂等の熱可塑性、熱硬化性樹脂などであっても良い。ポリオレフィン系樹脂には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アイソタクチックもしくはシンジオタクチックホモポリプロピレン、ブロックプロピレン共重合体、ランダムプロピレン共重合体、ポリブテン、エチレン−
プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などが含まれる。特に、発泡倍率が8〜20倍の範囲内にある独立発泡樹脂で床下地材21を形成すると、優れた(たとえば60〜70Gの)衝撃吸収性能を発揮させることが容易である。
なお、水廻り側フロア20には、四周木口に実(雄実、雌実)が形成されていて隣接するフロア同士を実嵌合により接合するようにされていても良いし、実が形成されておらず隣接するフロアの木口同士を単に接合することで施工するようにしても良い。実が形成される場合は、厚さの大きい床下地材21に形成することが好ましい。また、床見切り30を設けない場合は、水廻り側フロア20に形成した実を居室側フロア10の実と嵌合することによりこれらを見映え良く接合するようにしても良い。
耐水性床シート22は、水廻りスペースのフロアとして要求される耐水性を発揮するためのものであり、従来から水廻りスペース用のフロア材として使用されている床シート(クッションフロアなどとも呼ばれる)を任意に選択して使用することができる。その材質は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴムなどの発泡体または非発泡体であり、厚さは1.8〜4.0mm程度、幅は950mmや1820mmなど、長さは20mや50mなどの長尺シートや定寸サイズにあらかじめカットされたものなど、様々な寸法・構成のものが市販されている。市販されている床シートの衝撃吸収性能は一般に120〜140G程度であるが、本発明では、水廻り側フロア20に所要の衝撃吸収性能を与える上で床シート22にはほとんど依存せずに、もっぱら床下地材21によって水廻り側フロア10全体としての衝撃吸収性能を与えるものであるから、床シート22は耐水性を有するものであれば十分であり、市販されている耐水性床シートのいずれも使用可能である。水廻り側フロア20を構成する床下地材21と耐水性床シート22の厚さを比較すると、床下地材21の厚さの方が圧倒的に大きいので、耐水性床シート22の衝撃吸収性能が劣っていても、床下地材21として60〜70Gの衝撃吸収性能を有するものを用いれば、水廻り側フロア20全体としての衝撃吸収性能を100G以下、より好ましくは80G以下とすることは容易である。
居室側フロア10と水廻り側フロア20は、略同一の厚さを有することが必要である。この要件を満たすことにより、室内のバリアフリー化を実現して、高齢者や認知症患者などの居住者が躓いて転倒する危険やそれによるけがの危険を未然に防止することができる効果が発揮されることになる。
居室側フロア10を構成する木質系衝撃吸収フロアの厚さは一般に11.5〜14mm程度であるので、水廻り側フロア20の全体厚がこれと略同一になるように、床下地材21の厚さを調整する。たとえば、居室側フロア10の全体厚が13mmである場合において、耐水性床シート22として厚さ2mmのものを使用したときは、床下地材21として厚さ10mmのものを1枚使用すれば、接着剤層の厚さが約1mmとして、水廻り側フロア20の全体厚が約13mmとなって、居室側フロア10と略同一の厚さを有するものとなる。
また、居室側フロア10と水廻り側フロア20は、いずれも100G以下、より好ましくは80G以下であって且つ略同一の衝撃吸収性能を有することが必要である。この要件を満たすことにより、高齢者や認知症患者などの居住者が室内のどこで転倒しても同様に優れた衝撃吸収性能を発揮することができるものとなり、且つ、室内の居住スペースと水廻りスペースの間を行き来しても衝撃吸収性能に体感できるような変化が生じないものとなるため、居住者が危険な場所を意識または注意することなく、安心且つ安全に生活を送ることができる効果が発揮されることになる。
居室側フロア10については、化粧シート16/第一基材11/第一緩衝材12/第二基材13/第二緩衝材14の積層構成を有する場合において、特に第一緩衝材12および第二緩衝材14として用いる材料の厚さ、発泡倍率、アスカーC硬度などを適宜に調整することにより、第一基材11および第二基材13として木質材を使用しても、全体として100G以下、より好ましくは80G以下の衝撃吸収性能を発揮させることができる。たとえば、第一緩衝材12として厚さ0.5mm以上、独立発泡倍率5倍以上およびアスカーC硬度70度以下のものを用い、また、第二緩衝材14として厚さ3.0mm以上、発泡倍率5倍以上およびアスカーC硬度30度以下のものを用いることにより、居室側フロア10に全体として100G以下、より好ましくは80G以下の衝撃吸収性能を与えることができる。
水廻り側フロア20については、既述したように、その全体厚さの大半を床下地材21が占めるので、耐水性床シート22の衝撃吸収性能が劣る(120〜140G)としても、床下地材21として60〜70Gの衝撃吸収性能を有するものを用いることにより、水廻り側フロア20に全体として100G以下、より好ましくは80G以下の衝撃吸収性能を与えることができる。このような床下地材は、従来から市販されているものの中から適宜選択して用いることができる。
この点についてさらに具体例を挙げて説明する。下記表1に記載された試験体1〜6は、既述した水廻り側フロア20に相当するものであり、いずれも297×210mmの同一の平面寸法を有するが、床下地材21および床シート22の材質および厚さを数通りに変え、各試験体についてJIS A 6519により衝撃加速度Gを測定した。
表1に示すように、試験体1〜3は、床シート22/床下地材21の積層構成を有する試験体全体として100以下(80以下)のG値を有し、優れた衝撃吸収性能を発揮することが確認された。また、これらの試験体1〜3は、接着剤層1mmを含む全体厚が13〜13.8mmであり、一般に11.5〜14mm程度の厚さに形成される居室側フロア10の厚さと略同一に形成されるものであった。したがって、これらの試験体1〜3は、本発明の床構造における水廻り側フロア20として好適に用いることができるものであることが確認された。
これに対し、試験体4〜6は、試験体1〜3と同程度の厚さ(12.8〜13.8mm)を有するものであるが、G値が101〜145と大きく、本発明の床構造における水廻り側フロア20に要求される衝撃吸収性能を発揮することができないものであった。たとえば、試験体1と試験体4を比べると、既述したように床シート22は全体としての衝撃吸収性能に対して大きな影響を与えないと考えられるので、G値が大きく異なる(試験体1のG値が73であるのに対して試験体のG値は101)のは、もっぱら床下地材21によるものと考えられるところ、これら試験体に用いられる床下地材21の材質および厚さは同じであり、発泡倍率のみが異なっている。この結果から、床下地材21に(したがって試験体全体に)100G以下、より好ましくは80G以下の衝撃吸収性能を与えるためには、発泡倍率が大きく影響することが分かる。この点について本発明者らはさらに試験を重ねた結果、発泡倍率を8〜20倍として独立発泡させた樹脂を床下地材21に用いることにより、上記要求性能を容易に満たすことができることを見出した。床下地材21を形成する樹脂の発泡倍率が8倍未満であると、試験体4の結果からも明らかなようにその衝撃吸収性能を居室側フロア10と同程度(100G以下、より好ましくは80G以下)にまで高めることが困難であり、一方、発泡倍率が20倍を超えるようになると、樹脂で形成される骨格部分(発泡による気泡を含む部分)が薄くなり、衝撃を受けたときに破損しやすくなるため、居室側フロア10と同程度の衝撃吸収性能を得ることが困難になり、また、床下地材自体の剥離強度や剪断強度も低下して剥がれや陥没が生じやすくなる。
床見切り30としては、ABS樹脂などの樹脂製、木製、金属製などで所定形状に形成されたものを用いることができる。図示実施形態では、床見切り30が、上部材31と下部材32とから構成される。上部材31の両側縁には長手方向全長に亘って外方に延出するツバ部33が設けられる。ツバ部33は、後述する嵌合凸部35と嵌合凹部36との嵌合により上部材31が下部材32に装着されて床見切り30として床スラブ1上に固定して用いられたとき(図1)に、下部材32を隠蔽し、且つ、居室側フロア10と水廻り側フロア20の突き合わせ部を隠蔽するものであり、突き合わせ部が露出することによって生ずる段差を解消し、歩行時のつまずきや隙間に塵が入ることを防止する役割を果たす。
ツバ部33は、図1に示されるように、その先端方向に向けて薄くなるような傾斜表面を有することが好ましい。これによりツバ部33と居室側フロア10、水廻り側フロア20の表面との間の段差を徐々に解消し、歩行時のつまずき防止に一層効果を発揮する。
ツバ部33は一般に上部材31と一体に成型されるが、ツバ部33の先端部34は軟質合成樹脂などの軟質材であることが好ましく、したがってツバ部33を含む上部材31が木質系材料などの硬質材料で構成される場合には、ツバ部33の先端に軟質材による先端部34を接着などの任意手法によって固着する。ツバ部33の少なくとも先端部34が軟質材とされることにより、居室側フロア10と水廻り側フロア20との間に若干の不陸があってもそれに応じて先端部34が変形して、ツバ部33の先端部34とフロア10、20表面との間に隙間ができることを防止するため、歩行時のつまずきや塵の入り込みを防止し、且つ、見映えも良くすることができる。
上部材31は下部材32に対して着脱自在に設けられるものであり、これを可能にするための手段として、図示実施態様では、上部材31の幅方向中央部の裏面側に嵌合凸部35を設け、これを下部材32の幅方向中央部表面側に形成された嵌合凹部36と嵌合するように構成している。この実施態様では、上部材31の下面から間隔をおいて平行に下方向に延長する一対の嵌合凸部35を形成し、これら嵌合凸部35を、下部材32に形成した嵌合凹部36に嵌合収容することにより、上部材31と下部材32を一体化して床見切り30を構成するものとしている。図示しないが、嵌合凸部35の各外側面および/または嵌合凹部36の内側面に多数の小突起を設けるなどにより、上部材31と下部材32を一体化したときの嵌合強度をより強固にすることができる。
また、嵌合凸部を一対の嵌合凸部35とすることは、それらの間に形成される溝空間37によって嵌合凸部35を互いに近づける方向に若干の変形を許容する弾性が付与されるため、嵌合凸部35を嵌合凹部36に嵌合させる際の作業が容易となる利点があるが、一つの嵌合凸部35を嵌合凹部36に嵌合させるようにした構成も本発明の一実施形態である。
嵌合凸部35は、上部材31の幅方向中央部の裏面側において長手方向に亘って延長するものとして形成されることが好適であるが、場合によっては間隔をおいて断続的に設けられても良い。
下部材32は断面略コの字形であって、ツバ部33を有する上部材31を嵌合一体化して支持する基材として働くものであり、前述のようにその幅方向中央部の表面側には嵌合凹部36が設けられている。嵌合凹部36は好ましくは下部材32の長手方向に亘って延長するものとして形成されるが、上部材31の嵌合凸部35を着脱可能に嵌合することができるものであればその形状および構成は任意であり、たとえば嵌合凸部35が断続的に設けられる場合には、これに対応した断続的な嵌合凹部36とすることができる。
さらに、嵌合凹部36の底面には、下部材32を床スラブ1に固定するための釘やビスの打ち込み位置を示す釘溝(図示せず)をあらかじめ形成しておくことができる。
下部材32の長手方向に延長する基部の一側面38aは、嵌合凹部36を形成する上向き凸部の外側面39より外方に位置して垂直に立ち上がっている。図示実施形態では一体的に形成された下部材32として示されているが、凸部外側面39より外側に位置する部分に、たとえばポリプロピレンなどの合成樹脂を発泡させた発泡合成樹脂や該合成樹脂を成型した合成樹脂片、ゴムや合成ゴムを成型したゴム片などの弾性材からなる別部材を、接着剤や両面テープ、ビス止めなどで固着することによって、基部外側面38を形成しても良い。下部材32に一体または別部材により形成される基部外側面38は、下部材32の長手方向全長に亘るものであっても良いし、下部材32の長手方向に断続的に形成されるものであっても良い。
図1の床構造は次のようにして得ることができる。まず、水廻りスペース(以下において「トイレ」とする)に隣接する居室スペースに居室側フロア10を施工する。これは、居室側フロア10の裏面に接着剤を塗布し、床スラブ1上に貼着することによって行われる。既述したように居室側フロア10の四周木口には雄実および雌実が形成されるので、これらの嵌合を介して居室側フロア10を隣接施工して、居室スペースの全面に床を形成する。
次いで、トイレスペースとの境界部分に施工した居室側フロア10の側面(木口)17に合わせて、床見切り30の下部材32を床スラブ1上に配置して、裏面に塗布した接着剤やネジなどで固定する。このとき、下部材32の基部側面38bを居室側フロア10の側面17に突き当てることにより、下部材32の位置決めを容易に行うことができる。
次いで、トイレスペースに水廻り側フロア20を施工する。たとえば、トイレスペースの床面寸法に合わせて床下地材21を必要枚数準備し、トイレスペースの隅部に施工する床下地材21については適宜切断し、トイレスペースの床スラブ1の全面に接着剤を塗布して、床下地材21を敷き詰めて貼着した後、床下地材21同士の継目に溶接棒を当てて専用溶接ノズル(5mm径)で溶かしながら接着して床面全体を一体化させる。床下地材21に実が形成される場合は、実同士を嵌合させて一体化させる。床下地材21の施工において、居室スペースとの境界部分に施工される床下地材21については、その側面23を下部材32の基部側面38aに突き当てて施工する。このようにしてトイレスペースの全面に施工された床下地材の表面に接着剤を塗布して、床シート22を貼着する。床シート22も、トイレスペースの床面寸法に合わせて用意し、必要に応じて切断しておく。
次いで、居室スペースとトイレスペースとの境界部分において居室側フロア10と水廻り側フロア20との間で床スラブ1上に固定されている既設の下部材32の上に、嵌合凸部35と嵌合凹部36との嵌合を介して、上部材31を嵌め込んで床見切り30を形成する。これにより、床構造が完成する。
上述の施工方法は一例であり、他の施工方法ないし施工順を採用しても良い。たとえば、上述の施工方法では、居室側フロア10、下部材32、水廻り側フロア20、上部材31の順に施工するものとして説明したが、これに代えて、水廻り側フロア20、下部材32、居室側フロア10、上部材31の順に施工しても良いことは言うまでもない。
また、居室側フロア10(または水廻り側フロア20)、水廻り側フロア20(または居室側フロア10)、床見切り30の順に施工しても良い。この場合は、居室側フロアおよび水廻り側フロアを施工する際に、これらの境界部分に床見切り30の下部材31を設置可能な隙間を空けておく。この施工順にすると、居室側フロア10の側面17と下部材32の側面38bとの間、また、水廻り側フロア20の床下地材21の側面23と下部材32の側面38aとの間に隙間が生ずることがあるが、下部材32に上部材31を嵌め込んで床見切り30を形成した状態では、上部材31のツバ部33で該隙間を隠蔽することができるので、見映えが悪くなることはない。
以下に、本発明の一実施例を示す。この実施例は本発明を実施する形態として好適な一例ではあるが、本発明がこれに限定されないことは言うまでもない。
居室スペース(3.0×5.0m、15m2)に隣接してトイレスペース(2.0×1.5m、3m2)が設けられた個室の床構造として、コンクリートの床スラブ1上の居室スペースには化粧シート16/第一基材11/第一緩衝材12/第二基材13/第二緩衝材14の積層構成を有する居室側フロア10(図2)を貼り、トイレスペースには床シート22/床下地材21の積層構成を有する水廻り側フロア20(図3)を貼り、これらの間に床見切り30を設けて、図1に示す床構造とした。
居室側フロア10は、幅147mm、長さ900mmとし、化粧シート16には化粧紙を、第一基材11には1.0mm厚のMDFを、第一緩衝材12には1.2mm厚のEVA発泡体を、第二基材13には6.8mm厚のMDFを、第二緩衝材14には4.0mm厚のウレタン樹脂発泡体をそれぞれ用いて、全体厚を約13mmとした。この居室側フロア10の衝撃吸収性能をJIS A 6519で測定したところ、73Gであった。
水廻り側フロア20は、厚さ10mm×幅1000mm×長さ1000mmの発泡ポリエチレン樹脂(発泡倍率10倍)からなる床下地材21をトイレスペースの床面積に合わせて必要枚数(適宜切断したものを含む)敷き詰め、この上に、厚さ2mm×幅1820mm×長さ9000mの未発泡複層ビニルからなる長尺の床シート22をトイレスペースの床面積に合わせて現場切断して接着することにより形成した。この水廻り側フロア20に用いた床下地材21および床シート22はいずれも既述した試験体1で用いたものと同一であり、JIS A 6519によるG値は、床下地材21が73G、床シート22は148Gであった。水廻り側フロア20全体としてのG値は、表1にも示されるように73Gであり、居室側フロア10と同一のG値を示した。また、この水回り側フロア20の全体厚は、接着剤層約1mmを含めて約13mmであり、居室側フロア10の全体厚と略同一に形成した。
床見切り30には、いずれもABS樹脂からなる上部材31(幅38mm×高さ3mm)と下部材32(幅24mm×高さ12mm)とを組み合わせたものを使用した。形状は図3に示されるものと同様とした。床見切り30は、長さ1000mmの長尺部材として作成し、これを現場で適宜切断して使用した。