以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置により制御される多種燃料エンジン10(以下、エンジン10)が搭載された車両1の概略図である。この車両1は、所謂レンジエクステンダーEV車両(シリーズハイブリッド車両)であって、エンジン10と、該エンジン10により駆動されて発電する発電機20と、この発電機20によって発電された電力が蓄電(充電)される高電圧・大容量のバッテリ30と、エンジン10に駆動されることによる発電機20の発電電力及びバッテリ30の蓄電電力(放電電力)の両方又はバッテリ30の放電電力のみで駆動される駆動モータ40とを備えている。本実施形態では、発電機20は、モータの機能も有するモータジェネレータであり、モータとしての発電機20によりエンジン10を駆動して(クランキングして)、エンジン10を始動するようになされている。
発電機20とバッテリ30との間には、第1インバータ50が設けられ、バッテリ30と駆動モータ40との間には、第2インバータ51が設けられている。第1インバータ50と第2インバータ51とは互いに接続され、その接続ラインにバッテリ30が接続されている。発電機20の発電電力は、第1インバータ50を介してバッテリ30に供給されるとともに、第1及び第2インバータ50,51を介して駆動モータ40に供給される。バッテリ30からの放電電力は、第2インバータ51を介して駆動モータ40に供給される。
駆動モータ40は、基本的には、バッテリ30の放電電力で駆動され、車両1の乗員による車両1の加速要求時等のように、バッテリ30の放電電力のみでは駆動モータ40の出力が不足するときには、エンジン10が始動されて発電機20の発電電力も駆動モータ40に供給される。駆動モータ40の出力は、デファレンシャル装置60を介して、駆動輪61(ステアリングホイール62により操舵される左右の前輪)に伝達され、これにより、車両1が走行する。
また、駆動モータ40は、回生発電電力を発生可能なものであって、車両1の減速時に発電機として作動して、その発電した電力(回生発電電力)がバッテリ30に充電される。バッテリ30の残存容量(SOC)が所定容量以下になると、エンジン10が始動されて発電機20の発電電力でもってバッテリ30が充電される。上記所定容量は、バッテリ30の充電が早急に必要な緊急性を有するレベルよりも多い容量であって、バッテリ30の残存容量として少なすぎず多すぎない適切なレベルに維持できるような容量である。尚、バッテリ30は、車両1の外部の電源による外部充電も可能になされている。
エンジン10は、発電機20を駆動して発電させるために用いられる発電用エンジンである。エンジン10は、第1燃料用タンクとしてのCNGタンク71に貯留されている第1燃料としての天然ガス(CNG)、及び水素タンク70に貯留されている第2燃料としての水素ガスが、燃料としてそれぞれ供給可能に構成された多種燃料エンジンである。本実施形態では、第1燃料として天然ガスを用いているが、天然ガス以外にも例えばプロパンであってもよい。第1燃料は、第2燃料に対して、単位体積当たりの発熱量が高い気体燃料が好ましく、この点から、第2燃料が水素ガスである場合、天然ガスやプロパンは、第1燃料として好適な燃料である。一方、第2燃料としては、第1燃料に対して着火性が良く、後述する減圧弁によって減圧した際に水分を凍結させる可能性の低い燃料が好ましい。水素ガスは、着火性が良好であることから、リーン運転を行うことで、大気並のエミッション性能と低燃費とを達成することができ、さらに第1燃料に対して分子量が小さいことから、断熱膨張によって減圧した際の温度低下が第1燃料に対して小さいため、第2燃料として好ましい。尚、本発明とは異なる参考形態では、第2燃料として水素ガスを用いているが、メタノールなどの液体燃料を用いてもよい。
図2には、CNGタンク71及び水素タンク70からエンジン10への気体燃料の供給路の構成を示している。エンジン10は、詳しくは後述するが、本実施形態の場合、天然ガスと水素ガスとを供給されて運転されるロータリータイプのエンジンである。
エンジン10に供給される気体燃料は、前述したように、CNGタンク71と、水素タンク70とにそれぞれ貯留されている。各燃料は、圧縮された状態で各タンク70,71内にそれぞれ蓄積される。例えば、天然ガスは充満の状態で約20MPaの圧力で蓄積される一方、水素は充満の状態で約35MPaの圧力で蓄積される。各タンク70,71は、上記の圧力に耐え得るように十分な強度でもって構成されている。
CNGタンク71には、第1燃料用供給路としてのCNG用配管72が接続され、このCNG用配管72を介して、天然ガスが、CNGタンク71からエンジン10(詳しくは、後述するエンジン10のCNG用ポート噴射弁及び直噴噴射弁17B,18B)に供給される。同様に、水素タンク70には、水素タンク70からエンジン10に水素ガスを供給するための水素用配管73が接続されている。
CNG用配管72におけるCNGタンク71とエンジン10との間には、第1CNG用減圧弁74Bと第2CNG用減圧弁75Bとが取り付けられている。第1CNG用減圧弁74Bは、第2CNG用減圧弁75BよりもCNG用配管72の上流側に取り付けられている。同様に、水素用配管73にも第1水素用減圧弁74A及び第2水素用減圧弁75Aが取り付けられている。各タンク70,71に蓄積されたガス燃料は、これらの減圧弁74A,74B,75A,75Bによって減圧されて、エンジン10に供給される。例えば、CNGタンク71内に約20MPaの圧力で蓄積された天然ガスは、第1CNG用減圧弁74Bによって約1.3MPaまで減圧され、さらに第2CNG用減圧弁75Bにより約0.6MPaまで減圧される。水素ガスも同様に、水素タンク70内に約35MPaの圧力で蓄積された状態から、第1水素用減圧弁74Aにより約1.3MPaにまで減圧され、さらに第2水素用減圧弁75Aにより約0.6MPaまで減圧される。尚、本実施形態では、1本の配管に対して減圧弁を2つ取り付けているが、1本の配管に対して減圧弁を1つだけ取り付けるようにしてもよい。また、本発明とは異なる上記参考形態において、第2燃料として液体燃料を用いる場合には、第1及び第2水素用減圧弁74A,75Aではなく加圧用のレギュレータが取り付けられる。
本実施形態では、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bが、第1燃料用減圧装置を構成する。
CNG用配管72において、第1CNG用減圧弁74Bの下流側の位置(すなわち、天然ガスの減圧後の位置)には、第1CNG用減圧弁74Bによって減圧された後の天然ガスの圧力を検出する第1CNG用配管圧力センサ109Bが設けられ、さらに第2CNG用減圧弁75Bの下流側の位置には、第2CNG用減圧弁75Bによって減圧された後の天然ガスの圧力を検出する第2CNG用配管圧力センサ110Bが設けられている。詳しくは後述するが、第1CNG用配管圧力センサ109Bによって、第1CNG用減圧弁74Bにより減圧された後の天然ガスの圧力を検出することで、第1CNG用減圧弁74Bの異常を予測する一方、第2CNG用配管圧力センサ110Bによって、第2CNG用減圧弁75Bにより減圧された後の天然ガスの圧力を検出することで、第2CNG用減圧弁75Bの異常を予測する。また、水素用配管73においても同様に、第1水素用減圧弁74Aの下流側には、第1水素用配管圧力センサ109A設けられ、第2水素用減圧弁75Aの下流側には、第2水素用配管圧力センサ110Aが設けられている。
本実施形態では、第1及び第2CNG用配管圧力センサ109B,110Bが、第1燃料用圧力検出手段を構成する。
第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bには、エンジン10から第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bにエンジン冷却水を供給するためのエンジン冷却水供給手段としてのエンジン冷却水供給路76が取り付けられている。詳しくは後述するが、気体燃料をエンジン10の燃料として使用する場合、各減圧弁74A,74B,75A,75Bを介して断熱膨張により気体燃料の圧力を低下させるため、各減圧弁74A,74B,75A,75B内には冷熱が発生する。このとき発生する冷熱による温度低下は、水素のように分子量の小さい気体の場合は小さいが、天然ガスのようにメタンなどの分子量の比較的大きい気体を多く含む物質の場合は大きくなる。そのため、天然ガスを減圧した際に発生する冷熱による温度低下によって、天然ガス中の水分や第1及び第2CNG用減圧弁74B,75B内の気体中の水分が凍結して、該減圧弁74B,75Bが作動不良を起こすことがある。そこで、本実施形態では、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bにエンジン10の熱を吸収して温められたエンジン冷却水を供給して、該エンジン冷却水の熱で該減圧弁74B,75Bを加温することで、該減圧弁74B,75Bの作動不良が発生するのを防止している。尚、図2において、エンジン冷却水供給路76の外側に図示した矢印は、エンジン冷却水の流れを表している。
第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bを通るエンジン冷却水の温度は、エンジン10に設けられたエンジン水温検出手段としてのエンジン水温センサ106によって検出される。
次に、各減圧弁74A,74B,75A,75Bの構成について説明する。
図3に第1CNG用減圧弁74Bの概略図を示す。その他の減圧弁74A,75A,75Bも、第1CNG用減圧弁74Bと同じ構成であるため、ここでは、第1CNG用減圧弁74Bのみについて説明し、その他の減圧弁74A,75A,75Bについては詳細な説明を省略する。
第1CNG用減圧弁74Bは、ハウジング120内に形成された流入路121から減圧前の高圧の天然ガスが流入されるよう構成されていて、調圧バルブ123と、連結部材124を介して該調圧バルブ123に連結されたダイヤフラム125と、該ダイヤフラム125を付勢して変位させる調圧スプリング126と、上記調圧バルブ123によって開閉される連通路127と、によって構成される減圧機構によって、上記高圧の天然ガスの圧力を調整して、該調整後の天然ガスを流出路122から流出させる構成となっている。
上記減圧機構において、ダイヤフラム125は、ゴムなどの可撓性部材から形成されていて、流出路122側の圧力によって図3で上向きに変位する一方、調圧スプリング126の付勢力によって図3で下向きに変位するように構成されている。このとき、調圧スプリング126の付勢力は、予め設定された目標圧力(本実施形態では、第1水素用及び第1CNG用減圧弁74A,74Bでは約1.3MPa、第2水素用及び第2CNG用減圧弁75A,75Bでは約0.6MPa)よりもわずかに小さくなるように調整されている。すなわち、流出路122側の圧力が、上記目標圧力に到達しているときには、流出路122側の圧力は調圧スプリング126の付勢力よりも高くなり、ダイヤフラム125は上向きに変位する一方、上記目標圧力よりも低いときには、流出路122側の圧力は調圧スプリング126の付勢力よりも低くなり、ダイヤフラム125は下向きに変位する。
第1CNG用減圧弁74Bでの減圧の過程について、具体的に説明する。まず、流出路122側に天然ガスが存在しない初期状態では、ダイヤフラム125は、調圧スプリング126によって付勢されて下向きに変位し、ダイヤフラム125と連結された調圧バルブ123は連通路127を開放している。この初期状態から、流入路121に高圧の天然ガスが流入されると、該天然ガスは連通路127を通って流出路122側へと流れる。流出路122側は連通路127よりも広く構成されているため、連通路127から流出路122側へと流れた天然ガスは、断熱膨張により減圧される。該減圧後の天然ガスが流通路122側に蓄積されていくと、流通路122側の圧力が上昇する。そして、流出路122側の圧力が、上記目標圧力に到達すると、ダイヤフラム125は、流出路122側の圧力によって上向きに変位する。ダイヤフラム125が上向きに変位すると、調圧バルブ123は上向きに変位して、連通路127を閉鎖する。その後、流出路122側の天然ガスが消費されると(つまり、燃料として使用されると)、流出路122側の圧力が下がる。該圧力が上記目標圧力よりも低くなると、ダイヤフラム125は、調圧スプリング125の付勢力によって下向きに変位して、調圧バルブ123を下向きに変位させる。これにより、連通路127が再び開放される。そして、再び、流入路121から流出路122に天然ガスが流れていく。これらの一連の動作の繰り返しによって、CNG用配管72内の圧力は上記目標圧力に保たれる。
以上のように、各減圧弁74A,74B,75A,75Bでは、流入路121側の高圧の気体燃料(本実施形態では、水素ガス及び天然ガス)は、断熱膨張によって減圧される。断熱膨張によって気体を減圧するとき、気体には冷熱が生じるため、減圧後の気体が蓄積される流出路122側の温度は低下している。各減圧弁74A,74B,75A,75B内の気体や気体燃料中には、微量な水分が存在しており、該水分が気体燃料の減圧に伴う温度低下により凍結することがある。この水分の凍結がダイヤフラム125の近傍で発生すると、ダイヤフラム125の可撓性が損なわれて、ダイヤフラム125及び調圧バルブ123が上下に変位しにくくなり、上記水分の凍結が発生した減圧弁の調圧機能が低下する。例えば、調圧バルブ123が連通路127を閉鎖しているときに凍結すると、流出路122側の圧力が目標圧力よりも低くなったときでも、ダイヤフラム125は下向きに変位せず、連通路127が開放されないため、流出路122側に気体燃料が流入せず、流出路122側は低圧状態のままとなる。一方、調圧バルブ123が連通路127を開放しているときに凍結すると、流出路122側の圧力が目標圧力に到達したときでも、ダイヤフラム125は上向きに変位せず、連通路127は開放されたままになるため、流出路122側に高圧の気体燃料が流入し続けて、流出路122側は高圧状態のままとなる。
このような、気体燃料の減圧に伴う水分の凍結は、水素ガスのように分子量が小さく、減圧した際の温度低下が小さい気体では発生しにくいが、天然ガスのように分子量が比較的大きく、減圧した際の温度低下が大きい気体では発生しやすい。つまり、本実施形態においては、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75B(より詳しくは、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75B内のダイヤフラム125)は、第1及び第2水素用減圧弁74A,75Bよりも凍結する可能性が高い。そこで、前述したように、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bのダイヤフラム125が凍結するのを防止するために、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bには、エンジン10によって温められたエンジン冷却水を供給して加温している。また、第1CNG用減圧弁74Bの流出路122側の圧力を第1CNG用配管圧力センサ109Bによって検出する一方、第2CNG用減圧弁75Bの流出路122側の圧力を第2CNG用配管圧力センサ110Bによって検出して、第1又は第2CNG用減圧弁74B,75Bの少なくとも一方が凍結する可能性があると予測された場合は、後述する凍結防止制御を実行するようにしている。
次に、エンジン10及びその制御系の構成について説明する。
図4に示すように、エンジン10は、ツインロータ式(2気筒)のロータリピストンエンジンであって、2つの繭状のロータハウジング11内(気筒内)に形成されるロータ収容室11aに、概略三角形状のロータ12がそれぞれ収容されて構成されている。2つのロータハウジング11は、3つのサイドハウジング(図示せず)の間に挟み込むようにして該サイドハウジングと一体化されてなり、各ロータハウジング11とその両側のサイドハウジングと一体化されてなり、各ロータハウジング11とその両側のサイドハウジングとで各ロータ収容室11aが形成される。尚、図4では、2つのロータハウジング11(2つの気筒)を展開した状態で図示しており、2つのロータハウジング11内の中央部にそれぞれ描いているエキセントリックシャフト13は、同じものである。
各ロータ12は、その三角形の頂点部に図示しないアペックスシールを有し、これらアペックスシールがロータハウジング11のトロコイド内周面に摺接しており、このことで、各ロータ12により各ロータ収容室11a(各気筒)内に3つの作動室(燃焼室に相当)が画成される。そして、各ロータ12は、該ロータ12の3つのアペックスシールが各々ロータハウジング11のトロコイド内周面に当接した状態でエキセントリックシャフト13の周りを自転しながら、該エキセントリックシャフト13の軸心周りに公転するようになっている。ロータ12が1回転する間に、該ロータ12の各頂点部間にそれぞれ形成された作動室が周方向に移動しながら、吸気、圧縮、膨張(燃焼)及び排気の各行程を行い、これにより発生する回転力がロータ12を介して出力軸としてのエキセントリックシャフト13から出力される。
上記ロータ収容室11aには、吸気行程にある作動室に吸気開口に連通するように吸気通路14が接続されているとともに、排気行程にある作動室に開口する排気開口に連通するように排気通路15が接続されている。吸気通路14は、上流側では1つであるが、下流側では、2つの分岐路に分岐してそれぞれ上記各ロータ収容室11aに連通している。
吸気通路14の上記分岐部よりも下流側の各分岐路には、上記CNGタンク71から上記CNG用配管72介して天然ガス、及び上記水素タンク70から上記水素用配管73を介して水素ガス、を吸気通路14(特に吸気ポート又はその近傍が好ましい)内にそれぞれ噴射するCNG用ポート噴射弁17B及び水素用ポート噴射弁17Aが配設されている。これら水素用及びCNG用ポート噴射弁17A,17Bによりそれぞれ噴射された水素ガス及び天然ガスは、空気と混合された状態で、吸気行程にある作動室に供給される。尚、水素用及CNG用ポート噴射弁17A,17Bは、後述する第3始動制御を行う場合を除いて、エンジン10の極冷間時(エンジン冷間時の中でもエンジン冷却水の温度がかなり低くて、予め設定された設定温度(後述する基準温度よりも低い温度)よりも低いとき)における始動時に、主に使用される燃料噴射弁である。すなわち、エンジン10の極冷間時における始動時においては、後述する水素用及びCNG用直噴噴射弁18A,18Bの燃料噴射開口が、燃料の燃焼により生じた水分の凍結により塞がれている可能性があるので、極冷間時における始動時に水素用及びCNG用ポート噴射弁17A,17Bより燃料を噴射するようにしている。
本実施形態では、CNG用ポート噴射弁17Bが、ポート噴射弁に相当する。
上記排気通路15は、上流側では、各ロータ収容室11aにそれぞれ連通するように2つ設けられているが、下流側では、1つに合流されている。この排気通路15の該合流部よりも下流には、外気ガスを浄化するための低温活性三元触媒81及びNOx吸蔵還元触媒82が配設されている。尚、図4において吸気通路14及び排気通路15に図示した矢印は、吸気及び排気の流れを示している。
上記各ロータハウジング11(各気筒)には、上記CNGタンク71から上記CNG用配管72を通って天然ガスを、ロータ収容室11aの圧縮行程にある作動室(燃焼室)に直接噴射するCNG用直噴噴射弁18Bと、上記水素タンク70から上記水素用配管73を通って水素ガスを、ロータ収容室11aの圧縮行程にある作動室(燃焼室)に直接噴射する水素用直噴噴射弁18Aと、水素用及びCNG用直噴噴射弁18A,18Bによりそれぞれ噴射された水素ガス及び天然ガスの点火を行う2つの点火プラグ19とが設けられている。水素ガス及び天然ガスは、後述する凍結防止制御時を除いて、略同じ体積比率(共に50%)でもってエンジン10(燃焼室)に供給される。
本実施形態では、CNG用ポート噴射弁17B及びCNG用直噴噴射弁18Bは、第1燃料をエンジン10に供給すべく噴射する第1燃料用噴射弁に含まれ、水素用ポート噴射弁17A及び水素用直噴噴射弁18Aは、第2燃料をエンジン10に供給するべく噴射する第2燃料用噴射弁に含まれる。
エンジン10には、該エンジン10の各ロータ収容室11aにおける吸気行程にある作動室(燃焼室)内への吸気の過給を行う排気ターボ過給機85が設けられている。この排気ターボ過給機85は、吸気通路14におけるスロットル弁16よりも下流側に配設されたコンプレッサ85aと、排気通路15における上記合流部よりも下流側でかつ三元触媒81よりも上流側に配設されたタービン85bとで構成されている。タービン85bが排気ガス流により回転し、このタービン85bの回転により、該タービン85bと連結されたコンプレッサ85aが作動して、吸気通路14に吸入された空気を圧縮する。この圧縮された空気は、吸気通路14におけるコンプレッサ85aよりも下流側に配設されたインタークーラ86によって冷却された後、上記各分岐路を介して各ロータ収容室11aにおける吸気行程にある作動室内に吸入される。
車両1には、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧を検出するバッテリ残量検出手段としてのバッテリ電流・電圧センサ101と、車両1の乗員によるアクセルペダルの踏み込み量(乗員の操作によるアクセル開度)を検出するアクセル開度センサ102と、車両1の車速を検出する車速センサ103と、エキセントリックシャフト13に設けられ、エキセントリックシャフト13の回転角度位置を検出する回転角センサ104と、排気通路15における低温活性三元触媒81とタービン85bとの間に配設され、エンジン10の排気ガスの空燃比を検出する空燃比検出手段としての空燃比センサ105(本実施形態では、リニアO2センサで構成されている)と、ロータハウジング11の内部に形成されたウォータジャケット(図示せず)に臨んで該ウォータジャケット内を流れるエンジン冷却水の温度(エンジン水温)を検出するエンジン水温センサ106と、水素タンク70内の圧力(つまり水素タンク70内の水素ガスの残量)及びCNGタンク71内の圧力(つまりCNGタンク71内の天然ガスの残量)をそれぞれ検出するタンク圧力センサ107(水素タンク70とCNGタンク71とに別々に設けられている)と、吸気通路14内に吸入される吸気流量を検出するエアフローセンサ108と、水素用配管73において第1水素用減圧弁74Aによる減圧後の水素ガスの圧力を検出する第1水素用配管圧力センサ109Aと、水素用配管73において第2水素用減圧弁75Aによる減圧後の水素ガスの圧力を検出する第2水素用配管圧力センサ110Aと、CNG用配管72において第1CNG用減圧弁74Bによる減圧後の天然ガスの圧力を検出する第1CNG用配管圧力センサ109Bと、CNG用配管72において第2CNG用減圧弁75Bによる減圧後の天然ガスの圧力を検出する第2CNG用配管圧力センサ110Bと、エンジン10の作動制御や、第1及び第2インバータ50,51の作動制御(つまり発電機20及び駆動モータ40の作動制御)等を行うコントロールユニット100と、が設けられている。上記回転角センサ104は、エンジン10の回転数を検出するエンジン回転数センサを兼ねている。
コントロールユニット100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。コントロールユニット100には、バッテリ電流・電圧センサ101、アクセル開度センサ102、車速センサ103、回転角センサ104、空燃比センサ105、エンジン水温センサ106、タンク圧力センサ107、エアフローセンサ108、第1水素用配管圧力センサ109A、第2水素用配管圧力センサ110A、第1CNG用配管圧力センサ109B,第2CNG用配管圧力センサ110B等からの各種情報の信号が入力されるようになっている。
発電機20は、該発電機20による発電電圧及び発電電流の情報をコントロールユニット100に送信するようになっており、コントロールユニット100は、その情報を入力して該情報から発電機20による発電電力(発電量)を検出する。
駆動モータ40は、該駆動モータ40の回転数の情報や、駆動モータ40による回生発電電圧及び回生発電電流の情報をコントロールユニット100に送信するようになっており、コントロールユニット100は、その情報を入力して駆動モータ40の作動制御に用いる。
そして、コントロールユニット100は、上記入力信号に基づいて、スロットル弁アクチュエータ90、水素用ポート噴射弁17A、CNG用ポート噴射弁17B、水素用直噴噴射弁18A、CNG用直噴噴射弁18B、及び点火プラグ19に対して制御信号を出力してエンジン10を制御するとともに、第1及び第2インバータ50,51に対して制御信号を出力して発電機20及び駆動モータ40を制御する。
コントロールユニット100は、水素用ポート噴射弁17A、CNG用ポート噴射弁17B、水素用直噴噴射弁18A、及びCNG用直噴噴射弁18Bのそれぞれに対して、パルス信号を含む噴射信号を出力して、その噴射信号により各噴射弁17A,17B,18A,18Bを作動させて燃料を噴射させる。その際、パルスの立ち上がりから立ち下がりまでのパルス幅(パルス時間)によって、各噴射弁17A,17B,18A,18Bからの燃料の噴射量を制御する。
コントロールユニット100は、エンジン10が停止した状態にあるときにおいて、駆動モータ40の要求出力及びバッテリ30の残存容量(SOC)の値に基づいて、エンジン10の運転要求の有無(本実施形態では、発電要求の有無と同じことである)を確認して、エンジン10の運転要求(発電要求)が有るときには、モータとしての発電機20によりエンジン10をクランキングしてエンジン10を始動させ、その始動後に発電機20に発電を行わせるべくエンジン10を運転する。
コントロールユニット100は、エンジン10の運転要求(発電要求)によりエンジン10を運転する際には、車両1の所定以上の加速要求がなければ、基本的に定常運転する。コントロールユニット100は、このように発電要求時において定常運転する際には、所定負荷以上の負荷である中負荷ないし高負荷でかつ所定回転数領域で運転する。上記所定回転数領域は、本実施形態では、エンジン10の最高効率点を含む効率の良い領域(例えば1800rpm〜2200rpm)であり、本実施形態では、基本的に、2000rpmで運転する。このようにコントロールユニット100は、水素用ポート噴射弁17A、水素用直噴噴射弁18A、CNG用ポート噴射弁17B、及びCNG用直噴噴射弁18Bの作動を含めて、エンジン10の作動を制御する制御手段を構成することになる。
ここで、特に、エンジン水温検出センサ106による検出温度が、予め設定された基準温度よりも低いとき(エンジン冷間時)の始動時には、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bを介して天然ガスが減圧される際に生じる冷熱によって、第1及び/又は第2CNG用減圧弁74B,75Bが凍結し、第1及び/又は第2CNG用減圧弁74B,75Bによる天然ガスの圧力の調整ができなくなるという現象が生じやすい。特に、約20MPaから約1.3MPaまで減圧する第1CNG用減圧弁74Bは、減圧による天然ガスの温度低下が大きいため、凍結する可能性が高い。
そこで、コントロールユニット100は、以下の制御を実行して、エンジン冷間時の始動時における第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bの凍結を回避する。
すなわち、コントロールユニット100は、エンジン冷間時に、エンジン10の運転要求によりエンジン10を始動するときには、CNG用ポート噴射弁17B、水素用直噴噴射弁18A、CNG用直噴噴射弁18Aに対して、以下に説明する第1始動制御、第2始動制御、及び第3始動制御を段階的に実行する。
具体的に、第1始動制御は、CNG用直噴噴射弁18Bには噴射信号を出力せずに、水素用直噴噴射弁18Aにのみ噴射信号を付与し、水素ガスのみでエンジン10を始動させる制御である。水素ガスは、前述したように天然ガスよりも分子量が小さく、減圧による温度低下が小さい。そのため、第1及び第2水素用減圧弁74A,75Aは、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bよりも凍結する可能性が低い。
しかし、水素ガスは着火性が高いものの、天然ガスに対して単位体積当たりの発熱量が低いため、エンジン冷間時以外のときの始動時と同じ量の水素ガスを供給したとしても、エンジン10の始動に必要な始動トルクが得られないことがある。そこで、上記第1始動制御を開始してから、予め設定した基準時間を経過した場合でも、エンジン10が始動しないときには、所定の噴射制御としての第2始動制御を実行する。上記基準時間は、エンジン冷間時以外の始動時において、エンジン10の始動を開始してから、エンジン10が始動するまでに要する時間である。
上記第2始動制御では、水素ガスの供給量を上記第1始動制御時における供給量から予め設定された設定量ずつ増大させ、エンジン10の始動を試みる。すなわち、水素用直噴噴射弁18Aに付与する噴射信号(パルス幅)を設定量ずつ増大させて、エンジン10を始動させる。
上記第2制御において、水素ガスの噴射量が、予め設定された第1基準噴射量を超過した場合でも、エンジン10の始動動作が継続しているときには、第3始動制御を実行する。この第1基準噴射量は、更に噴射量を増大させたとしても、始動トルクが増大する見込みが得られない噴射量である。尚、本実施形態では、第1基準噴射量が基準噴射量に相当する。
上記第3始動制御では、水素用直噴噴射弁18Aに加えて、CNG用ポート噴射弁17Bを作動させ、水素ガスと天然ガスとでエンジン10の始動を試みる。CNG用ポート噴射弁17Bを作動させることで、エンジン10には、空気と均一に混合されて、燃焼性が良い状態の天然ガスが供給される。この第3始動制御では、予め設定された第2基準噴射量まで、天然ガスの供給量を予め設定された設定量ずつ増大させてエンジン10の始動を試みる。この第2基準噴射量は、第1又は第2CNG用減圧弁74B,75Bの少なくとも一方が凍結する可能性がある量よりも少ない量である。
上記第1始動制御、第2始動制御、及び第3始動制御のいずれかの段階において、エンジン10が始動した後は、エンジン10を継続して運転させることで、気筒内の温度が上昇するため、エンジン冷却水供給路76を流れるエンジン冷却水の温度を上昇させることができる。これにより、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bが加温されて、凍結する可能性が低減される。このとき、コントロールユニット100は、第3始動制御によりCNG用ポート噴射弁17Bを作動させていた場合は、CNGポート噴射弁17Bの作動を停止させる。尚、タンク圧力センサ107によって検出される水素タンク70内の水素ガスの残量が、予め設定された基準蓄積量よりも小さいときには、第2始動制御を省略して、第1始動制御を実行した直後に、第3始動制御を実行するようにしてもよい。また、上記極冷間時におけるエンジン始動時には、上記第1始動制御において、水素用直噴噴射弁18Aの代わりに水素用ポート噴射弁17Aを作動させるようにしてもよい。
そして、コントロールユニット100は、エンジン10の始動後、エンジン水温センサ106によって、エンジン冷却水の温度が上記基準温度以上であることが検出されたときには、天然ガスを減圧した際の冷熱によって、第1CNG用減圧弁74Bが凍結する可能性も、第2CNG用減圧弁75Bが凍結する可能性も無いと判定して、水素用直噴噴射弁18Aに加えて、CNG用直噴噴射弁18Bを作動させ、水素ガス及び天然ガスでエンジン10を運転する。
しかし、エンジン10が始動し、エンジン水温センサ106による検出温度が上記基準温度以上となった後であっても、寒冷地域等で車両1を運転する場合には、所定負荷以下の負荷である低負荷で継続して運転が行われると、エンジン冷却水の温度が下がり、エンジン冷却水による第1又は第2CNG用減圧弁74B,75Bの加温が不十分となって、第1又は第2CNG用減圧弁74B,75Bの少なくとも一方が凍結してしまうことがある。そこで、コントロールユニット100は、第1CNG用配管圧力センサ109Bによる検出圧力から第1CNG用減圧弁74Bの凍結を予測したとき、又は第2CNG用配管圧力センサ110Bによる検出圧力から第2CNG用減圧弁75Bの凍結を予測したときには、以下に説明する凍結防止制御を実行する。ここで、上記の凍結の予測は、第1CNG用配管圧力センサ109Bによる検出圧力と上記目標圧力との差の絶対値が予め設定された第1基準値よりも大きいか否か、及び第2CNG用配管圧力センサ110Bによる検出圧力と上記目標圧力との差の絶対値が予め設定された第2基準値よりも大きいか否か、を判定することによって行う。前述したように、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bにおいて、調圧バルブ123が連通路127を閉鎖した状態で、第1又は第2CNG用減圧弁74B,75Bの少なくとも一方が凍結した場合は、CNG用配管72内の圧力は上記目標圧力よりも低くなる一方、調圧バルブ123が連通路127を開放した状態で、第1又は第2CNG用減圧弁74B,75Bの少なくとも一方が凍結した場合は、CNG用配管72内の圧力は上記目標圧力よりも高くなる。そこで、コントロールユニット100は、第1CNG用配管圧力センサ109Bによる検出圧力と上記目標圧力との差の絶対値を上記第1基準値と、又は第2CNG用配管圧力センサ110Bによる検出圧力と上記目標圧力との差の絶対値を上記第2基準値と比較して、上記絶対値が上記第1又は第2基準値以下のときは凍結のおそれは無いと予測する一方、上記絶対値が上記第1又は第2基準値より大きいときは凍結のおそれが有ると予測するようにすることで、上記目標圧力よりも低くなる場合と上記目標圧力よりも高くなる場合との両方に対応できるようにしている。尚、上記第1及び第2基準値は、どちらも基準値に含まれる。
具体的に、上記凍結防止制御について説明すると、第1又は第2CNG用減圧弁74B,75Bの少なくとも一方が凍結する可能性があると予測された場合には、該予測時の天然ガスの噴射量に対して、天然ガスの噴射量を減少させる(例えば、上記第2基準噴射量まで減少させる)。すなわち、CNG用直噴噴射弁18Bに出力される噴射信号(パルス幅)を短くして、天然ガスの噴射量を減少させる。これにより、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bにて減圧される天然ガスの絶対量が減少するため、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75B内の、単位時間当たりに奪われる熱量が減少し、凍結の可能性は低減される。尚、凍結防止制御時の天然ガスは、上記第2基準噴射量よりも多くすることもできる。また、凍結防止制御において、CNG用直噴噴射弁18Bからの天然ガスの噴射量を減少させるとともに、水素用直噴噴射弁18Aからの水素ガスの噴射量を増加させるようにしてもよい。
次に、コントロールユニット100によるエンジン10の始動時及び運転時の処理動作を、図5のフローチャートに基づいて説明する。
最初のステップS1で、各種センサからの信号を読み込み、次のステップS2で、アクセル開度センサ102及び車速センサ103からの信号に基づき、駆動モータ40の要求出力を計算する。
次のステップS3では、上記駆動モータ40の要求出力とバッテリ30のSOCとに基づき、エンジン10の運転要求の有無を確認し、次のステップS4では、エンジン10の運転要求が有るか否かを判定する。
上記ステップS4の判定がNOであるときには、上記ステップS1に戻る一方、ステップS4の判定がYESであるときには、ステップS5に進んで、エンジン10の始動を開始する。
上記ステップS5にて、エンジン10の始動要求を出した後は、ステップS6において、エンジン水温センサ106による検出温度Twが、予め設定された基準温度Twoより低いか否かについて判定する。
上記ステップS6の判定がYESであるときには、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bにて天然ガスを減圧させることによって、該減圧弁74B,75Bの少なくとも一方が凍結する可能性が有ると判定して、ステップS7に進み、上記第1始動制御を実行して、水素用直噴噴射弁18Aにのみ噴射信号を送り、水素ガスのみをエンジン10の燃料室内に噴射してエンジン10の始動を試みる。その後、ステップS9に進む。
一方、上記ステップS6の判定がNOであるときには、第1CNG用減圧74Bが凍結する可能性も、第2CNG用減圧75Bが凍結する可能性も無いと判定して、ステップS8に進み、水素用及びCNG用直噴噴射弁18A,18Bの両方に噴射信号を送り、水素ガスと天然ガスとでエンジン10の始動を試みる。その後、ステップS17に進む。
上記ステップS9では、エンジン10が始動したか否かについて判定する。このステップS9の判定がYESのときはステップS16に進む一方、ステップS9の判定がNOのときはステップS10に進む。
上記ステップS10では、水素ガスの噴射を開始してから、上記基準時間を経過しても水素ガスのみによる始動動作が継続しているか否かについて判定する。このステップS10の判定がYESのときはステップS11に進む一方、ステップS10の判定がNOのときはステップS9に戻る。
上記ステップS11では、エンジン10を始動すべく、上記第2始動制御を実行して、水素用直噴噴射弁18Aに出力する噴射信号を設定量ずつ増大させて、水素ガスの噴射量を漸増させる。すなわち、単位時間当たりの発熱量を高くして、エンジン10の始動に必要な始動トルクの確保を試みる。ステップS11の後は、ステップS12に進む。
上記ステップS12では、水素ガスの噴射量が上記第1基準噴射量に到達したか否かについて判定する。このステップS12の判定がYESのときはステップS13に進む一方、ステップS12の判定がNOのときはステップS9に戻る。
上記ステップS13では、エンジン10を始動すべく、上記第3始動制御を実行して、CNG用ポート噴射弁17Bに噴射信号を出力し、CNG用ポート噴射弁17Bを作動させる。そして、上記噴射信号(パルス幅)を設定量ずつ増大させて、天然ガスの噴射量を漸増させる。すなわち、水素ガスに対して単位体積当たりの発熱量が高い天然ガスを噴射することで、水素ガスのみでは確保することができなかった分の始動トルクの確保を試みる。その後、ステップS14に進む。
上記ステップS14では、天然ガスの噴射量が上記第2基準噴射量に到達したか否かについて判定する。このステップS14の判定がYESのときはステップS15に進む一方、ステップS14の判定がNOのときはステップS9に戻る。
上記ステップS15では、天然ガスの噴射量を上記第2基準噴射量よりも増大させると、第1又は第2CNG減圧弁74B,75Bの少なくとも一方が凍結する可能性が有るとして、エンジン10の始動を中止する。その後、しかる後に終了する。
上記ステップS14の判定がNOでありかつ上記ステップS9の判定がYESのときには、エンジン10の始動後に、CNG用ポート噴射弁17Bの作動を停止させる。その後、ステップS16に進む。
上記ステップS16では、エンジン水温センサ106による検出温度Twが、基準温度Two以上であるか否かについて判定する。このステップS16の判定がNOのときは、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bにて天然ガスを減圧させることによって、該減圧弁74B,75Bの少なくとも一方が凍結する可能性が有ると判定して、エンジン10の運転を続け、ステップS16の処理動作を繰り返す。一方、このステップS16の判定がYESのときは、第1CNG用減圧弁74Bが凍結する可能性も、第2CNG用減圧弁75Bが凍結する可能性も無いと判定して、CNG用直噴噴射弁18Bを作動させて、ステップS17に進む。
上記ステップS17では、水素ガスと天然ガスとを略同じ体積比率(水素ガス噴射量:天然ガス噴射量=50:50)でもってエンジン10の燃焼室内に噴射して、エンジン10を運転させる。その後、ステップS18に進む。
上記ステップS18では、第1CNG用配管圧力センサ109Bによる検出圧力と上記目標圧力(1.3MPa)との差の絶対値が基準値Δ(例えば、目標圧力の30%)よりも大きいか否か、又は第2CNG用配管圧力センサ110Bによる検出圧力と上記目標圧力(0.6MPa)との差の絶対値が基準値Δ(例えば、目標圧力の30%)よりも大きいか否かについて判定する。このステップS18の判定がYESのときは、第1又は第2CNG用減圧74B,75Bの少なくとも一方が凍結する可能性があると判定して、ステップS19に進む。一方、このステップS18の判定がNOのときは、第1CNG用減圧74Bが凍結する可能性も、第2CNG用減圧75Bが凍結する可能性も無いと判定して、ステップS20に進む。
上記ステップS19では、第1及び第2CNG用減圧74B,75Bの凍結を防止すべく、上記凍結防止制御を実行し、CNG用直噴噴射弁18Bに出力する噴射信号(パルス幅)を減少させて、天然ガスの噴射量を減少させる。すなわち、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bにて減圧される天然ガスの絶対量を減少させて、該減圧弁74B,75B内から、単位時間当たりに奪われる熱量を減少させることで、該減圧弁74B,75Bが凍結する可能性を低減させる。その後、ステップS18に戻り、再び判定を受ける。
上記ステップS20では、新たに各種センサからの信号を読み込んで新たにエンジン要求の有無を確認して、エンジン運転要求がなくなったか否かを判定する。このステップS20の判定がNOであるときには、上記ステップS18に戻る一方、ステップS20の判定がYESであるときには、ステップS21に進んで、エンジン10を停止させ、しかる後にリターンする。
したがって、本実施形態では、エンジン水温センサ106の検出温度が、予め設定された基準温度より低い場合に、エンジン10を始動させるときには、先ず、水素ガスのみをエンジン10に供給してエンジン10を始動させ、エンジン10の始動後、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bに供給されるエンジン冷却水の温度が基準温度以上になった後に、天然ガスの供給を開始するようにしたので、燃費/電費の悪化を抑制しつつ、エンジン冷間時であっても、第1及び第2CNG用減圧弁74B,75Bの凍結を防止して、安定したエンジン10の始動性を得ることができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態では、エンジン10を、シリーズハイブリッドシステムにおいて発電機20を駆動して発電させるために用いられる発電用エンジンとしたが、エンジン10を、車両1の駆動輪61を駆動するエンジン(パラレルハイブリッドシステムのエンジンを含む)とすることも可能である。また、上記実施形態では、エンジン10をロータリピストンエンジンとしたが、往復動型エンジンとすることも可能である。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。