JP6256434B2 - シリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、シリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置に関する技術分野に属する。
従来より、エンジンと、該エンジンにより駆動されて発電する発電機と、該発電機による発電電力を充電するバッテリと、該バッテリの放電電力及び上記発電機による発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される車両駆動用の駆動モータとを有するシリーズハイブリッド車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。このシリーズハイブリッド車両は、通常、バッテリの放電電力によって走行するバッテリ走行モードと、エンジンを運転して該エンジンの出力によって上記発電機を介して上記バッテリを充電しながら走行する充電走行モードとを有し、バッテリの残存容量(SOC)が低くなって充電走行モードに切り換える際に、エンジンが運転されて発電機による発電が行われ、その発電電力がバッテリに供給されるとともに駆動モータにも供給される。特許文献1では、エンジンは、所定回転数(特許文献1では、1800rpm〜2200rpmの範囲の回転数)で運転される。
また、上記エンジンとして、第1燃料と第2燃料とを用いる多種燃料エンジンが知られており、例えば特許文献2では、水素とメタンとを混合して用いる。
特開2014−210457号公報 特開2004−190640号公報
上記シリーズハイブリッド車両において、エンジンは、通常、特許文献1のように所定回転数で定常運転することが好ましい。すなわち、その所定回転数を、エンジンの効率が所定以上となるような回転数にすることで、燃費を向上させることができる。
また、上記シリーズハイブリッド車両のエンジンを、第1燃料と第2燃料とを用いる多種燃料エンジンとした場合においては、上記定常運転時に、第1及び第2燃料を所定の比率でもってエンジンに供給する。さらに、エミッションを向上させるために、上記定常運転時に、エンジンの燃焼室内の燃焼空燃比を所定のリーン空燃比にすることが好ましい。
ところで、例えば、バッテリ走行モードから充電走行モードに切り換えたときにおいて、特に、バッテリの残存容量が、バッテリ走行モードから充電走行モードに切り換るべき値よりも下回っている際には、バッテリの残存容量を出来る限り早期に該値以上になるようにすることが好ましい。このためには、エンジン出力を上記定常運転時よりも高くして、発電機による発電電力を上昇させることで、バッテリの充電電力を大きくする。
しかし、エンジン出力を上記定常運転時よりも高くする際に、単純にエンジン回転数を高くすると、車両の乗員にエンジン音の上昇による違和感を与えるとともに、燃費が悪化する懸念がある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジン定常運転時よりもエンジン出力を高くする要求がなされる高エンジン出力要求時において、車両の乗員にエンジン音の上昇による違和感を与えないようにしつつ、燃費の悪化を出来る限り抑制しようとすることにある。
上記の目的を達成するために、本発明では、第1燃料と第2燃料とがそれぞれ供給可能に構成されたエンジンと、該エンジンにより駆動されて発電する発電機と、該発電機による発電電力を充電するバッテリと、該バッテリの放電電力及び上記発電機による発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される車両駆動用の駆動モータとを有するシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置を対象として、上記第1燃料は、上記第2燃料に対して、単位体積当たりの発熱量が高い燃料であり、上記エンジンの作動を制御する制御手段を備え、上記制御手段は、上記第1及び第2燃料を所定の比率でもって上記エンジンに供給しかつ該エンジンの燃焼室内の燃焼空燃比を所定のリーン空燃比にしながら該エンジンを所定回転数で運転するエンジン定常運転時よりもエンジン出力を高くする要求がなされる高エンジン出力要求時において、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比でもって、エンジン回転数を上記所定回転数よりも上昇させかつ該所定回転数に対する上昇量を、予め設定された設定回転数以下にすることで、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能であるときには、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比でもって、エンジン回転数を、該高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能な回転数に高める第1の運転を実行する一方、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比では、エンジン回転数の上記所定回転数に対する上昇量を上記設定回転数よりも大きくしないと、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成することができないときには、上記エンジンを上記所定回転数で運転しつつ、上記所定の比率に対して上記第1燃料の供給割合を高くしかつ該エンジンの燃焼室内の燃焼空燃比をストイキ空燃比にする第2の運転を実行するように構成されている、という構成とした。
上記の構成により、エンジン回転数の上昇量が設定回転数以下である場合には、第1の運転を実行してエンジン回転数を上昇させても、その上昇量が小さいので、車両の乗員にエンジン音の上昇による違和感を与えないようにすることができるとともに、燃費の悪化を出来る限り抑制することができる。一方、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比では、エンジン回転数の上昇量を上記設定回転数よりも大きくしないと、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成することができないときに、その高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能な回転数に高めると、車両の乗員にエンジン音の上昇による違和感を与える。そこで、第2の運転を実行して、エンジンを所定回転数で運転することで、車両の乗員にエンジン音の上昇による違和感を与えないようにする。但し、上記所定回転数での運転では、高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成できないので、第1燃料の供給割合を高くしかつエンジンの燃焼室内の燃焼空燃比をストイキ空燃比にすることで、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成するようにする。この場合、エンジンの効率はエンジン定常運転時よりも低下するものの、エンジンを所定回転数で運転することで、燃費の悪化を出来る限り抑制することができる。
上記シリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置において、上記第1燃料は、上記第2燃料に対して、同じ燃焼空燃比下で上記エンジンからのNOx排出量が少なくかつ着火性が低い燃料であり、上記制御手段は、上記第2の運転の実行時において、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力が高いほど、上記第1燃料の供給割合を高くするように構成されている、ことが好ましい。
このことにより、高エンジン出力要求時のエンジン出力が高くなっても、NOx排出量を抑制しながら、該エンジン出力を達成することができるとともに、第1燃料は着火性が低くて燃焼が緩慢であるので、第1燃料の供給割合を高くすることで、燃焼音を小さくすることができる。
上記のように、上記第2の運転の実行時において、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力が高いほど、上記第1燃料の供給割合を高くする構成の場合、上記エンジンの排気通路に設けられ、該エンジンの排気ガスを浄化するNOx吸蔵還元触媒を更に備え、上記NOx吸蔵還元触媒は、上記エンジンの排気ガス中のNOxをリーン空燃比雰囲気下で吸蔵するとともに、該吸蔵したNOxを、ストイキ空燃比雰囲気下又はリッチ空燃比雰囲気下で放出し還元するものであり、上記制御手段は、上記高エンジン出力要求時において上記NOx吸蔵還元触媒からのNOxの放出要求があったときには、上記第1の運転又は上記第2の運転を実行する条件に関係なく、上記第2の運転を実行するように構成されている、ことが好ましい。
こうすることで、第2の運転を実行しながら、NOx吸蔵還元触媒からのNOxを放出し還元することができる。
また、上記第2の運転の実行時において、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力が高いほど、上記第1燃料の供給割合を高くする構成の場合、上記エンジンの冷却水の温度を検出するエンジン水温検出手段を更に備え、上記制御手段は、上記第2の運転の実行時において、上記エンジン水温検出手段による上記冷却水の温度が低いほど、上記第1燃料の供給割合を高くする度合いを低くするように構成されている、ことが好ましい。
すなわち、冷却水の温度が低い場合に、第1燃料の供給割合を高くし過ぎると、着火性が低くなって、燃焼安定性が低下するが、第1燃料の供給割合を高くする度合いを低くすることで、着火性の高い第2燃料により、燃焼安定性を確保することができるようになる。
上記シリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置の一実施形態において、上記バッテリの残存容量を検出するバッテリ残存容量検出手段を更に備え、上記車両は、上記バッテリの放電電力によって走行するバッテリ走行モードと、上記エンジンを運転して該エンジンの出力によって上記発電機を介して上記バッテリを充電しながら走行する充電走行モードとを有するものであり、上記制御手段は、上記バッテリ走行モード時に、上記バッテリ残存容量検出手段により検出されるバッテリの残存容量が第1所定値よりも低くなったときには、上記充電走行モードに切り換える一方、上記充電走行モード時に、上記バッテリ残存容量検出手段により検出されるバッテリの残存容量が、上記第1所定値よりも高い値に設定された第2所定値よりも高くなったときに、上記バッテリ走行モードに切り換える走行モード切換制御部を含み、上記高エンジン出力要求がなされるのは、上記充電走行モード時において、上記バッテリ残存容量検出手段により検出されるバッテリの残存容量が、上記第1所定値よりも低い値に設定された第3所定値以下になったときから上記第1所定値になるまでの間である。
このことにより、過放電したバッテリを早急に充電して、バッテリの残存容量を、好ましい使用範囲に早期に戻すことができる。ここで、車両の乗員は、エンジンが作動すると、充電走行モードに切り換わったことは理解できるが、上記間で上記第2の運転の実行によりエンジン音が高くなると、その理由は理解できず、違和感を生じさせ易い。しかし、上記第2の運転の実行により上記エンジン定常運転時と同じエンジン回転数になるので、エンジン音で乗員に違和感を生じさせるようなことはない。
以上説明したように、本発明のシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置によると、第1及び第2燃料を所定の比率でもってエンジンに供給しかつ該エンジンの燃焼室内の燃焼空燃比を所定のリーン空燃比にしながら該エンジンを所定回転数で運転するエンジン定常運転時よりもエンジン出力を高くする要求がなされる高エンジン出力要求時において、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比でもって、エンジン回転数を上記所定回転数よりも上昇させかつ該所定回転数に対する上昇量を、予め設定された設定回転数以下にすることで、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能であるときには、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比でもって、エンジン回転数を、該高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能な回転数に高める第1の運転を実行する一方、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比では、エンジン回転数の上記所定回転数に対する上昇量を上記設定回転数よりも大きくしないと、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成することができないときには、上記エンジンを上記所定回転数で運転しつつ、上記所定の比率に対して上記第1燃料(第2燃料に対して単位体積当たりの発熱量が高い燃料)の供給割合を高くしかつ該エンジンの燃焼室内の燃焼空燃比をストイキ空燃比にする第2の運転を実行するようにしたことにより、高エンジン出力要求時において、車両の乗員にエンジン音の上昇による違和感を与えないようにしつつ、燃費の悪化を出来る限り抑制することができる。
本発明の実施形態に係るエンジン制御装置が搭載されたシリーズハイブリッド車両の概略図である。 上記シリーズハイブリッド車両のエンジン及びその制御系の構成を示すブロック図である。 水素ガス、天然ガス及びこれらの混合ガスA,B,Cについて、エンジンで燃焼させたときの、空気過剰率λとエンジンからのNOx排出量との関係を示すグラフである。 水素ガス、天然ガス及びこれらの混合ガスA,B,Cについて、エンジンで燃焼させたときの、空気過剰率λとエンジンからのHC排出量との関係を示すグラフである。 水素ガス、天然ガス及びこれらの混合ガスA,B,Cについて、エンジンで燃焼させたときの、空気過剰率λとエンジンの出力トルクとの関係、及び、空気過剰率λとエンジンの熱効率との関係を示すグラフである。 第2の運転の実行時における、エンジン出力及びエンジン水温と、天然ガスの供給割合との関係を示すグラフである。 コントロールユニットによる、イグニッションスイッチがONになったときにスタートする処理動作を示すフローチャートである。 コントロールユニットによる、エンジンを制御するための処理動作の一部を示すフローチャートである。 コントロールユニットによる、エンジンを制御するための上記処理動作の残部を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン制御装置が搭載されたシリーズハイブリッド車両1(以下、単に車両1という)の概略図である。この車両1は、エンジン10と、該エンジン10により駆動されて発電する発電機20と、この発電機20によって発電された電力が蓄電(充電)される高電圧・大容量のバッテリ30と、エンジン10により駆動されて発電する発電機20の発電電力及びバッテリ30の蓄電電力(放電電力)の少なくとも一方により駆動される駆動モータ40とを備えている。本実施形態では、発電機20は、モータの機能も有するモータジェネレータであり、モータとしての発電機20によりエンジン10を駆動して(クランキングして)、エンジン10を始動するようになされている。
発電機20とバッテリ30との間には、第1インバータ50が設けられ、バッテリ30と駆動モータ40との間には、第2インバータ51が設けられている。第1インバータ50と第2インバータ51とは互いに接続され、その接続ラインにバッテリ30が接続されている。発電機20の発電電力は、第1インバータ50を介してバッテリ30に供給されるとともに、第1及び第2インバータ50,51を介して駆動モータ40に供給される。バッテリ30からの放電電力は、第2インバータ51を介して駆動モータ40に供給される。
駆動モータ40の出力は、デファレンシャル装置60を介して、駆動輪61(ステアリングホイール62により操舵される左右の前輪)に伝達され、これにより、車両1が走行する。
駆動モータ40は、回生発電電力を発生可能なものであって、車両1の減速時に発電機として作動して、その発電した電力(回生発電電力)がバッテリ30に充電される。また、後述の充電走行モードでは、エンジン10が始動されて発電機20の発電電力でもってバッテリ30が充電される。尚、バッテリ30は、車両1の外部の電源による外部充電も可能になされている。
エンジン10は、発電機20を駆動して発電させるために用いられる発電用エンジンである。エンジン10は、水素タンク70に貯留されている水素ガス、及び、CNGタンク71に貯留されている天然ガス(CNG)が、燃料としてそれぞれ供給可能に構成された多種燃料エンジンである。天然ガスは、第1燃料に相当し、水素ガスは、第2燃料に相当する。天然ガスは、水素ガスに対し、単位体積当たりの発熱量が高い燃料である。このような第1燃料としては、天然ガスに限らず、例えばプロパンやブタンであってもよい。また、天然ガスは、水素ガスに対し、同じ燃焼空燃比下でエンジン10(燃焼室)からのNOx排出量が少なくかつ着火性が低い燃料である(プロパン、ブタンも同様)。第2燃料は、水素ガスのように、着火性が高い燃料であることが好ましい。
図2に示すように、エンジン10は、ツインロータ式(2気筒)のロータリピストンエンジンであって、2つの繭状のロータハウジング11内(気筒内)に形成されるロータ収容室11aに、概略三角形状のロータ12がそれぞれ収容されて構成されている。2つのロータハウジング11は、3つのサイドハウジング(図示せず)の間に挟み込むようにして該サイドハウジングと一体化されてなり、各ロータハウジング11とその両側のサイドハウジングとで各ロータ収容室11aが形成される。尚、図2では、2つのロータハウジング11(2つの気筒)を展開した状態で図示しており、2つのロータハウジング11内の中央部にそれぞれ描いているエキセントリックシャフト13は、同じものである。
上記各ロータ12は、その三角形の各頂部に図示しないアペックスシールを有し、これらアペックスシールがロータハウジング11のトロコイド内周面に摺接しており、このことで、各ロータ12により各ロータ収容室11a(各気筒)内に3つの作動室(燃焼室に相当)が画成される。そして、各ロータ12は、該ロータ12の3つのアペックスシールが各々ロータハウジング11のトロコイド内周面に当接した状態でエキセントリックシャフト13の周りを自転しながら、該エキセントリックシャフト13の軸心の周りに公転するようになっている。ロータ12が1回転する間に、該ロータ12の各頂部間にそれぞれ形成された作動室が周方向に移動しながら、吸気、圧縮、膨張(燃焼)及び排気の各行程を行い、これにより発生する回転力がロータ12を介して出力軸としてのエキセントリックシャフト13から出力される。
上記各ロータ収容室11aには、吸気行程にある作動室に開口する吸気開口に連通するように吸気通路14が接続されているとともに、排気行程にある作動室に開口する排気開口に連通するように排気通路15が接続されている。吸気通路14は、上流側では1つであるが、下流側では、2つの分岐路に分岐してそれぞれ上記各ロータ収容室11aに連通している。吸気通路14の上記分岐部よりも上流側(後述のインタークーラ86よりも下流側)には、ステッピングモータ等のスロットル弁アクチュエータ90により駆動されて吸気通路14の断面積(弁開度)を調節するスロットル弁16が配設されている。このスロットル弁16により、各ロータ収容室11a(吸気行程にある作動室)内への吸気量が調節されることになる。本実施形態における後述のエンジン制御(アイドル運転時は除く)では、スロットル弁16は全開とされる。
吸気通路14の上記分岐部よりも下流側の各分岐路には、上記水素タンク70からの水素ガス、及び、上記CNGタンク71からの天然ガスを、吸気通路14内にそれぞれ噴射する水素用ポート噴射弁17A及びCNG用ポート噴射弁17Bが配設されている。これら水素用及びCNG用ポート噴射弁17A,17Bによりそれぞれ噴射された水素ガス及び天然ガスは、空気と混合された状態で、吸気行程にある作動室に供給される。尚、水素用及びCNG用ポート噴射弁17A,17Bは、エンジン10の極冷間時(エンジン冷間時の中でもエンジン冷却水の温度がかなり低くて、予め設定された設定温度よりも低いとき)における始動時のみに使用される燃料噴射弁であり、基本的には、後述の水素用及びCNG用直噴噴射弁18A,18Bより燃料(水素ガス及び天然ガス)が燃焼室内に直接噴射される。すなわち、エンジン10の極冷間時における始動時においては、水素用及びCNG用直噴噴射弁18A,18Bの燃料噴射開口が、燃料の燃焼により生じた水分の凍結により塞がれている可能性があるので、極冷間時における始動時には例外的に水素用及びCNG用ポート噴射弁17A,17Bより燃料を噴射するようにしている。尚、水素用及びCNG用ポート噴射弁17A,17Bをなくすことも可能である。以下の説明では、水素用及びCNG用直噴噴射弁18A,18Bより燃料(水素ガス及び天然ガス)を噴射するものとする。
上記排気通路15は、上流側では、各ロータ収容室11aにそれぞれ連通するように2つ設けられているが、下流側では、1つに合流されている。この排気通路15の該合流部よりも下流側には、排気ガスを浄化するための低温活性三元触媒81及びNOx吸蔵還元触媒82が配設されている。低温活性三元触媒81は、NOx吸蔵還元触媒82よりも触媒活性化温度が低い三元触媒であって、NOx吸蔵還元触媒82よりも上流側に配設されている。尚、図2において吸気通路14及び排気通路15に図示した矢印は、吸気及び排気の流れを示している。
上記NOx吸蔵還元触媒82は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属を含んだ担体に、バリウム(Ba)、カリウム(K)等のNOx吸蔵剤を担持させて構成されていて、エンジン10の排気ガス中のNOxをリーン空燃比雰囲気下で吸蔵するとともに、該吸蔵したNOxを、ストイキ空燃比雰囲気下又はリッチ空燃比雰囲気下で放出して、該NOxを、排気ガス中のHCやCOと反応させて還元する機能を有する。
上記各ロータハウジング11(各気筒)には、水素タンク70からの水素ガスを、ロータ収容室11aの圧縮行程にある作動室(燃焼室)内に直接噴射する水素用直噴噴射弁18Aと、CNGタンク71からの天然ガスを、ロータ収容室11aの圧縮行程にある作動室(燃焼室)内に直接噴射するCNG用直噴噴射弁18Bとが設けられている。各ロータハウジング11において、CNG用直噴噴射弁18Bは、2つ設けられていて、これら2つのCNG用直噴噴射弁18Bが、ロータ12の幅方向(エキセントリックシャフト13が延びる方向)に並んでいる(図2では、紙面奥側のCNG用直噴噴射弁18Bが見えていない)。各ロータハウジング11において、水素用直噴噴射弁18A、水素用ポート噴射弁17A及びCNG用ポート噴射弁17Bの数は全て1つである。本実施形態では、天然ガスは、常に2つのCNG用直噴噴射弁18Bから噴射される。
また、各ロータハウジング11には、水素用及びCNG用直噴噴射弁18A,18Bよりそれぞれ噴射された水素ガス及び天然ガスの点火を行う2つの点火プラグ19が設けられている。これら両点火プラグ19は、圧縮トップ(TDC)の近傍で、リーディング側及びトレーリング側の順で点火されて、圧縮乃至膨張行程にある作動室内の混合気の点火を行う。
エンジン10には、該エンジン10の各ロータ収容室11aにおける吸気行程にある作動室(燃焼室)内への吸気の過給を行う排気ターボ過給機85が設けられている。この排気ターボ過給機85は、吸気通路14におけるスロットル弁16よりも上流側に配設されたコンプレッサ85aと、排気通路15における上記合流部よりも下流側でかつ三元触媒81よりも上流側に配設されたタービン85bとで構成されている。タービン85bが排気ガス流により回転し、このタービン85bの回転により、該タービン85bと連結されたコンプレッサ85aが作動して、吸気通路14に吸入された空気を圧縮する。この圧縮された空気は、吸気通路14におけるコンプレッサ85aよりも下流側でかつスロットル弁16よりも上流側に配設されたインタークーラ86によって冷却された後、上記各分岐路を介して各ロータ収容室11aにおける吸気行程にある作動室内に吸入される。尚、NOx吸蔵還元触媒82は、排気通路15におけるタービン85bの下流側に配設されることになる。
車両1には、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧を検出するバッテリ電流・電圧センサ101と、車両1の乗員によるアクセルペダルの踏み込み量(乗員の操作によるアクセル開度)を検出するアクセル開度センサ102と、車両1の車速を検出する車速センサ103と、エキセントリックシャフト13に設けられ、エキセントリックシャフト13の回転角度位置を検出する回転角センサ104と、排気通路15における低温活性三元触媒81とタービン85bとの間に配設され、エンジン10の排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ105(本実施形態では、リニアO2センサで構成されている)と、ロータハウジング11の内部に形成されたウォータジャケット(図示せず)に臨んで該ウォータジャケット内を流れるエンジン冷却水の温度(エンジン水温)を検出するエンジン水温検出手段としてのエンジン水温センサ106と、水素タンク70内の圧力(つまり水素タンク70内の水素ガス残量)及びCNGタンク71内の圧力(つまりCNGタンク71内の天然ガス残量)をそれぞれ検出するタンク圧力センサ107(水素タンク70とCNGタンク71とに別々に設けられている)と、吸気通路14内に吸入される吸気流量を検出するエアフローセンサ108と、バッテリ30の温度を検出するバッテリ温度センサ109と、エンジン10の作動制御や、第1及び第2インバータ50,51の作動制御(つまり発電機20及び駆動モータ40の作動制御)等を行うコントロールユニット100とが設けられている。上記回転角センサ104は、エンジン10の回転数を検出するエンジン回転数センサを兼ねている。
コントロールユニット100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。コントロールユニット100には、バッテリ電流・電圧センサ101、アクセル開度センサ102、車速センサ103、回転角センサ104、空燃比センサ105、エンジン水温センサ106、タンク圧力センサ107、エアフローセンサ108、バッテリ温度センサ109等からの各種情報の信号が入力されるようになっている。
発電機20は、該発電機20による発電電圧及び発電電流の情報をコントロールユニット100に送信するようになっており、コントロールユニット100は、その情報を入力して該情報から発電機20による発電電力(発電量)を検出する。
駆動モータ40は、該駆動モータ40の回転数の情報や、駆動モータ40による回生発電電圧及び回生発電電流の情報をコントロールユニット100に送信するようになっており、コントロールユニット100は、その情報を入力して駆動モータ40の作動制御に用いる。
そして、コントロールユニット100は、上記入力信号に基づいて、スロットル弁アクチュエータ90、水素用ポート噴射弁17A、CNG用ポート噴射弁17B、水素用直噴噴射弁18A、CNG用直噴噴射弁18B、及び点火プラグ19に対して制御信号を出力してエンジン10を制御するとともに、第1及び第2インバータ50,51に対して制御信号を出力して発電機20及び駆動モータ40を制御する。コントロールユニット100は、エンジン10の作動を制御する制御手段を構成することになる。
車両1は、バッテリ30の放電電力によって走行するバッテリ走行モード(このとき、エンジン10は停止された状態にある)と、エンジン10を運転して該エンジン10の出力によって発電機20を介してバッテリ30を充電しながら走行する充電走行モードとを有する。本実施形態では、車両1がシリーズハイブリッド車両であるので、充電走行モードでは、エンジン10の出力により発電する発電機20による発電電力でもって、バッテリ30への充電と駆動モータ40の駆動を行う。
コントロールユニット100は、バッテリ電流・電圧センサ101により検出された、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧に基づいて、バッテリ30の残存容量(SOC)を検出する。このことで、バッテリ電流・電圧センサ101及びコントロールユニット100は、バッテリ30の残存容量を検出するバッテリ残存容量検出手段を構成することになる。
そして、コントロールユニット100は、上記バッテリ走行モード時に、上記検出されるバッテリ30の残存容量が第1所定値(例えば30%)よりも低くなったときには、上記充電走行モードに切り換える一方、上記充電走行モード時に、上記検出されるバッテリ30の残存容量が、上記第1所定値よりも高い値に設定された第2所定値(例えば70%)よりも高くなったときに、上記バッテリ走行モードに切り換える。これにより、バッテリ30の残存容量を、低過ぎずかつ高過ぎない好ましい範囲内に維持することができる。コントロールユニット100は、上記バッテリ走行モードと上記充電走行モードとを切り換える走行モード切換制御部を含むことになる。
また、コントロールユニット100は、上記充電走行モード時に、通常は、エンジン10を、所定回転数で運転するエンジン定常運転を行う。この所定回転数は、エンジン10の効率が所定以上となるような、エンジン10の最高効率点を含む範囲(例えば1800rpm〜2300rpm)内のエンジン回転数であり、本実施形態では、2000rpmとする。また、上記エンジン定常運転時のエンジン負荷は、所定負荷よりも大きい中負荷ないし高負荷である(上記エンジン定常運転時のエンジントルクは、所定トルクよりも大きい中トルクないし高トルクである)。そして、コントロールユニット100は、上記エンジン定常運転時におけるエンジン10の運転を、水素ガスと天然ガスとの混合で行うべく、水素用及びCNG用直噴噴射弁18A,18Bを制御する。本実施形態では、水素ガス及び天然ガスを略同じ体積比率(共に約50%)でもってエンジン10の燃焼室内に噴射する。このとき、コントロールユニット100は、上記燃焼室内の燃焼空燃比を、エンジン10(燃焼室)からのNOx排出量が、例えば、天然ガスのみをそのリーン限界の燃焼空燃比でもって燃焼させたときのNOx排出量と略同じになるリーン空燃比にするべく、水素用及びCNG用直噴噴射弁18A,18Bを制御する。
上記充電走行モード時において、車両1の所定以上の加速要求時のように、駆動モータ40の要求出力が、上記エンジン定常運転時のエンジン出力(発電電力)よりも大きいときには、その不足分をバッテリ30の放電電力で補う(充電はしない)。
ここで、図3に、水素ガス、天然ガス及びこれらの混合ガスA,B,Cについて、エンジン10(回転数2000rpm、スロットル弁16全開)で燃焼させたときの、空気過剰率λとエンジン10(燃焼室)からのNOx排出量との関係を示す。混合ガスAは、水素ガスと天然ガスとを略同じ体積比率(共に約50%)としたものであり、混合ガスBは、混合ガスAよりも水素ガスの体積比率を多くしたものであり、混合ガスCは、混合ガスBよりも水素ガスの体積比率を多くしたものである。また、図4に、図3の上記各ガスについて、エンジン10(回転数2000rpm、スロットル弁16全開)で燃焼させたときの、空気過剰率λとエンジン10(燃焼室)からのHC排出量との関係を示す。さらに、図5に、図3の上記各ガスについて、エンジン10(回転数2000rpm、スロットル弁16全開)で燃焼させたときの、空気過剰率λとエンジン10の出力トルクとの関係、及び、空気過剰率λとエンジン10の熱効率との関係を示す。ここでは、天然ガスはCNG用直噴噴射弁18Bより噴射させ、水素ガスは水素用ポート噴射弁17Aより噴射させている。この場合、水素ガス及び天然ガスを水素用及びCNG用直噴噴射弁18A,18Bよりそれぞれ噴射させる場合と比べて、出力トルクの大きさ等は変わるものの、上記関係の傾向は大きくは変わらない。
図3〜図5より、天然ガスのリーン限界の燃焼空燃比(ここでは、空気過剰率λ)は、1.6であり、これよりも空気過剰率λを大きくしても、安定した点火を行うことができない。図3〜図5では、空気過剰率λが2.7までしかないが、水素ガスのリーン限界の空気過剰率λは約3である。尚、図3〜図5では、水素ガスについての、空気過剰率λが1.8よりも低い場合の結果は省略している。
図3より、空気過剰率λが同じであれば、天然ガスの方が水素ガスよりもNOx排出量が少なく、混合ガスA,B,Cにおいては、天然ガスの体積比率が大きい(水素ガスの体積比率が小さい)ほど、NOx排出量が少なくなることが分かる。すなわち、水素ガスや、混合ガスにおいて水素ガスの体積比率が大きい場合、NOx排出量は多くなる。しかし、水素ガスや、混合ガスにおいて水素ガスの体積比率が大きい場合、リーン限界の燃焼空燃比が高くなるので、燃焼室内の燃焼空燃比を高くすることで、NOx排出量を少なくすることができる。
本実施形態では、上記エンジン定常運転時には、水素ガス及び天然ガスを略同じ体積比率(共に50%)でもって燃焼室内に噴射するが、このとき、燃焼室内の燃焼空燃比(空気過剰率λ)を、エンジン10からのNOx排出量が、例えば、天然ガスのみをそのリーン限界の燃焼空燃比(λ=1.6)でもって燃焼させたときのNOx排出量と略同じになるリーン空燃比にする。このリーン空燃比は、本実施形態では、図3の天然ガスのライン上のλ=1.6の点Q1を通る、横軸と平行なラインと、混合ガスAのラインとが交わる点Q2のλの値(つまりλ=1.9)となる。
また、図4より、天然ガスや、混合ガスにおいて天然ガスの体積比率が大きい場合、リーン空燃比にし過ぎると、HC排出量が多くなり過ぎて、低温活性三元触媒81でHCを適切に浄化しきれなくなる可能性がある。燃焼空燃比がストイキ空燃比(λ=1)であれば、燃料が天然ガスのみであっても、HC排出量は問題のないレベルとなる。
コントロールユニット100は、水素ガス及び天然ガスを所定の比率(本実施形態では、共に50%)でもってエンジン10に供給しかつ該エンジン10の燃焼室内の燃焼空燃比を所定のリーン空燃比(本実施形態では、λ=1.9)にしながら該エンジン10を所定回転数(本実施形態では、2000rpm)で運転する上記エンジン定常運転時よりもエンジン出力を高くする要求がなされる高エンジン出力要求時には、以下のような第1の運転を実行するか、又は、第2の運転を実行する。
上記高エンジン出力要求がなされるのは、本実施形態では、上記充電走行モード時において、バッテリの残存容量が、上記第1所定値よりも低い値に設定された第3所定値以下になったときから上記第1所定値になるまでの間である。これは、過放電したバッテリ30を早急に充電して、バッテリ30の残存容量を、好ましい使用範囲(30%〜70%)に早期に戻すためである。
上記第1の運転は、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比でもって、エンジン回転数を上記所定回転数よりも上昇させかつ該所定回転数に対する上昇量を、予め設定された設定回転数以下にすることで、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能であるときに、実行される。この第1の運転は、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比でもって、エンジン回転数を、該高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能な回転数に高める運転である。上記設定回転数は、エンジン回転数の上記所定回転数に対する上昇量が、該設定回転数よりも大きくなると、車両1の乗員にエンジン音の上昇による違和感を与えるような上昇量であり、また、上昇後のエンジン回転数でのエンジン10の効率が、上記所定回転数での効率よりも大きく低下しないような上昇量(例えば500rpm)である。
一方、上記第2の運転は、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比では、エンジン回転数の上記所定回転数に対する上昇量を上記設定回転数よりも大きくしないと、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成することができないときに、実行される。この第2の運転は、エンジン10を上記所定回転数で運転しつつ、上記所定の比率に対して上記第1燃料の供給割合を高くしかつ該エンジン10の燃焼室内の燃焼空燃比をストイキ空燃比(λ=1)にする運転である。
本実施形態では、コントロールユニット100は、上記第2の運転の実行時において、図6に示すように、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力が高いほど、天然ガスの供給割合を高くする。但し、上記第2の運転の実行時において、図6に示すように、エンジン水温センサ106によるエンジン水温が低いほど、天然ガスの供給割合を高くする度合いを低くする。すなわち、エンジン水温が低いと、低温活性三元触媒81が活性化されておらず、この状態で天然ガスの供給割合を高くし過ぎると、HC排出量が多くなって、低温活性三元触媒81でHCを適切に浄化しきれなくなる可能性がある。そこで、エンジン水温が低いほど、天然ガスの供給割合を高くする度合いを低くして、低温活性三元触媒81でHCを適切に浄化できるようにする。
また、コントロールユニット100は、上記高エンジン出力要求時においてNOx吸蔵還元触媒82からのNOxの放出要求があったときには、上記第1の運転又は上記第2の運転を実行する条件に関係なく、上記第2の運転を実行する。すなわち、NOx吸蔵還元触媒82からのNOx放出時には、エンジン10を、ストイキ空燃比又はリッチ空燃比で運転する必要があるので、第2の運転を実行しながら、NOx吸蔵還元触媒82からのNOxを放出し還元することができるようになる。ここで、NOxの放出要求があるときとは、NOx吸蔵還元触媒82のNOx吸蔵量が所定吸蔵量(これ以上吸蔵することができないレベルよりも僅かに小さい量)よりも多くなったときである。上記NOx吸蔵量は、エンジン10の運転履歴から計算することができ、コントロールユニット100が、エンジン10の運転中、その運転状態に基づいてNOx吸蔵量を積算していく。
尚、コントロールユニット100は、上記エンジン定常運転時においてNOx吸蔵還元触媒82からのNOxの放出要求があったときには、エンジン10を、水素ガスのみでかつストイキ空燃比でもって運転して、NOx吸蔵還元触媒82からNOxを放出し還元する。このとき、エンジン10はアイドル運転とする。
上記バッテリ走行モード時には、基本的には、エンジン10が停止された状態にあるが、駆動モータ40の要求出力がバッテリ30の最大放電可能電力を超えているときには、コントロールユニット100は、エンジン10を、上記所定回転数(2000rpm)でかつ上記所定の比率(共に50%)でかつ上記所定のリーン空燃比(λ=1.9)でもって運転して、該運転されるエンジン10の出力と、バッテリ30の放電電力とにより、駆動モータ40の要求出力を満たすようにする。このとき、バッテリ30の放電電力の値を調整して、エンジン負荷を、常に、上記所定負荷よりも高い値に設定された設定負荷以上の高負荷にする。(エンジントルクを、常に、上記所定トルクよりも高い値に設定された設定トルク以上の高トルクにする)。
上記バッテリ走行モード時におけるエンジン10の運転時においてNOx吸蔵還元触媒82からのNOxの放出要求があったときには、エンジン10を、上記所定回転数でかつ天然ガスのみでかつストイキ空燃比でもって運転して、NOx吸蔵還元触媒82からNOxを放出し還元する。このときも、バッテリ30の放電電力の値を調整して、エンジン負荷を、常に、上記設定負荷以上の高負荷にする(エンジントルクを、上記設定トルク以上の高トルクにする)。
ここで、上記最大放電可能電力はバッテリ30の温度によって変化する。このバッテリ30の温度と上記最大放電可能電力との関係が、マップとして、コントロールユニット100のメモリに記憶されており、コントロールユニット100は、そのマップを用いて、バッテリ温度センサ109により検出されるバッテリ30の温度から上記最大放電可能電力を検出する。
次に、コントロールユニット100による処理動作を、図7〜図9のフローチャートに基づいて説明する。尚、図7のフローチャートは、車両1の不図示のイグニッションスイッチがONになったときにスタートし、図8及び図9のフローチャートは、エンジン10を制御するための処理動作であって、エンジン10が運転されたとき(後述のフラグFが1になったとき)にスタートする。
上記イグニッションスイッチがONになると、ステップS1で、フラグFを0に設定するとともに、エンジン10を停止した状態にする。フラグFが0に設定されるということは、エンジン10が停止された状態で、バッテリ30の放電電力によって走行するバッテリ走行モードであることを意味する。したがって、イグニッションスイッチがONになったとき、最初は、エンジン10を停止した状態のバッテリ走行モードにする。
次のステップS2で、各種センサ等からの各種入力信号を読み込み、次のステップS3で、アクセル開度センサ102及び車速センサ103からの信号に基づき、駆動モータ40の要求出力を計算する。
次のステップS4で、バッテリ30の残存容量(SOC)が上記第1所定値よりも低いか否かを判定する。このステップS4の判定がYESであるときには、ステップS5に進む一方、ステップS4の判定がNOであるときには、ステップS8に進む。
上記ステップS5では、フラグFを1に設定する。但し、後述の如くフラグFが3に設定されている間は、フラグFを3に維持する。フラグFが1に設定されるということは、上記充電走行モードであることを意味する。
次のステップS6で、エンジン10を運転(つまり、発電機20により発電)し、次のステップS7で、上記イグニッションスイッチがOFFになったか否かを判定する。このステップS7の判定がNOであるときには、上記ステップS2に戻る一方、ステップS7の判定がYESであるときには、本処理動作を終了する。
上記ステップS4の判定がNOであるときに進むステップS8では、フラグFが0で、かつ駆動モータ40の要求出力がバッテリ30の最大放電可能電力よりも大きいか否かを判定する。このステップS8の判定がYESであるときには、上記ステップS6に進む一方、ステップS8の判定がNOであるときには、ステップS9に進む。
上記ステップS9では、フラグFが1であるか否かを判定し、このステップS9の判定がNOであるときには、上記ステップS7に進む一方、ステップS9の判定がYESであるときには、ステップS10に進む。
上記ステップS10では、バッテリ30の残存容量(SOC)が上記第2所定値よりも高いか否かを判定する。このステップS10の判定がNOであるときには、上記ステップS7に進む一方、ステップS10の判定がYESであるときには、ステップS11に進んで、フラグFを0に設定し、次のステップS12で、エンジン10を停止し、しかる後に上記ステップS7に進む。
図8及び図9のフローチャートでは、上記ステップS6でエンジン10が運転されたときに、エンジン10がどのように運転されるかが示されている。このフローチャートは、エンジン10が運転されたときに、図7のフローチャートと並行して実行される。
最初のステップS51で、エンジン10の制御に必要な各種入力信号(特に、エンジン水温センサ106からのエンジン水温、バッテリ30の残存容量、NOx吸蔵量)を読み込む。
次のステップS52で、フラグFが1又は3であるか否かを判定する。このステップS52の判定がYESであるときには、ステップS53に進む一方、ステップS52の判定がNOであるとき(つまり、バッテリ走行モードで、駆動モータ40の要求出力がバッテリ30の最大放電可能電力よりも大きいとき)には、ステップS55に進む。
上記ステップS53では、バッテリ30の残存容量(SOC)が上記第3所定値よりも低いか否かを判定する。このステップS53の判定がNOであるときには、ステップS58に進む一方、ステップS53の判定がYESであるときには、ステップS54に進んで、フラグFを3に設定し、しかる後にステップS64に進む。フラグFが3に設定されるということは、上記充電走行モード時での上記高エンジン出力要求時であることを意味する。
上記ステップS52の判定がNOであるときに進むステップS55では、NOx吸蔵還元触媒82のNOx吸蔵量が上記所定吸蔵量よりも多いか否かを判定する。このステップS55の判定がYESであるときには、ステップS56に進んで、天然ガスのみでエンジン10を運転するとともに燃焼室内の空気過剰率λを1にしかつエンジン回転数を2000rpmにして、高トルクで運転する。しかる後にステップS69に進む。
一方、ステップS55の判定がNOであるときには、ステップS57に進んで、水素ガスと天然ガスとの混合(略同じ体積比率)でエンジン10を運転するとともに、燃焼室内の空気過剰率λを1.9にしかつエンジン回転数を2000rpmにして、高トルクで運転する。しかる後にステップS69に進む。
上記ステップS53の判定がNOであるときに進むステップS58では、フラグFが3であるか否かを判定する。このステップS58の判定がNOであるときには、ステップS61に進む一方、ステップS58の判定がYESであるときには、ステップS59に進む。
上記ステップS59では、バッテリ30の残存容量(SOC)が上記第1所定値以上であるか否かを判定する。このステップS59の判定がNOであるときには、ステップS64に進む一方、ステップS59の判定がYESであるときには、ステップS60に進んで、フラグFを1に設定し、しかる後にステップS61に進む。
上記ステップS61では、NOx吸蔵還元触媒82のNOx吸蔵量が上記所定吸蔵量よりも多いか否かを判定する。このステップS61の判定がYESであるときには、ステップS62に進んで、水素ガスのみでエンジン10を運転するとともに、燃焼室内の空気過剰率λを1にして、アイドル運転し、しかる後にステップS69に進む。
一方、ステップS61の判定がNOであるときには、ステップS63に進んで、水素ガスと天然ガスとの混合(略同じ体積比率)でエンジン10を運転するとともに、燃焼室内の空気過剰率λを1.9にしかつエンジン回転数を2000rpmにして、中トルクないし高トルクで運転する(つまり、上記エンジン定常運転時の運転を行う)。しかる後にステップS69に進む。
上記ステップS54に続くステップS64では、エンジン10に対して高エンジン出力要求を行い、次のステップS65で、上記所定の比率(共に50%)及び上記所定のリーン空燃比(λ=1.9)でもって、エンジン回転数を上記所定回転数(2000rpm)よりも上昇させかつ該所定回転数に対する上昇量を上記設定回転数以下にすることで、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能であるか否かを判定する。
上記ステップS65の判定がNOであるときには、ステップS68に進む一方、ステップS65の判定がYESであるときには、ステップS66に進んで、NOx吸蔵還元触媒82のNOx吸蔵量が上記所定吸蔵量よりも多いか否かを判定する。
上記ステップS66の判定がYESであるときには、ステップS68に進む一方、ステップS66の判定がNOであるときには、ステップS67に進んで、上記第1の運転を実行し、しかる後にステップS69に進む。
上記ステップS65の判定がNOであるとき、及び、上記ステップS66の判定がYESであるときに進むステップS68では、上記第2の運転を実行し、しかる後にステップS69に進む。
上記ステップS69では、エンジン回転数、エンジン要求出力、吸入空気量、空気過剰率λ、使用燃料(比率)等から、当該使用燃料の噴射量を計算する。
次のステップS70では、フラグFが0になったか否かを判定し、ステップS70の判定がNOであるときには、上記ステップS51に戻る一方、ステップS70の判定がYESであるときには、図8及び図9の処理動作を終了する(エンジン10を停止する)。
したがって、本実施形態では、上記高エンジン出力要求時において、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比でもって、エンジン回転数を上記所定回転数よりも上昇させかつ該所定回転数に対する上昇量を、予め設定された設定回転数以下にすることで、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能であるときには、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比でもって、エンジン回転数を、該高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能な回転数に高める第1の運転を実行するようにしたので、エンジン回転数を上昇させても、その上昇量が小さいので、車両1の乗員にエンジン音の上昇による違和感を与えないようにすることができるとともに、燃費の悪化を出来る限り抑制することができる。
一方、上記高エンジン出力要求時において、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比では、エンジン回転数の上記所定回転数に対する上昇量を上記設定回転数よりも大きくしないと、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成することができないときに、その高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能な回転数に高めると、車両1の乗員にエンジン音の上昇による違和感を与える。そこで、第2の運転を実行して、エンジンを所定回転数で運転することで、車両の乗員にエンジン音の上昇による違和感を与えないようにする。但し、上記所定回転数での運転では、高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成できないので、第1燃料の供給割合を高くしかつエンジンの燃焼室内の燃焼空燃比をストイキ空燃比にすることで、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成するようにする。この場合、エンジンの効率は上記エンジン定常運転時よりも低下するものの、エンジンを所定回転数で運転することで、燃費の悪化を出来る限り抑制することができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態では、エンジン10をロータリピストンエンジンとしたが、往復動型エンジンとすることも可能である。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
本発明は、第1燃料と第2燃料とがそれぞれ供給可能に構成されたエンジンと、該エンジンにより駆動されて発電する発電機と、該発電機による発電電力を充電するバッテリと、該バッテリの放電電力及び上記発電機による発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される車両駆動用の駆動モータとを有するシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置に有用である。
1 シリーズハイブリッド車両
10 エンジン
20 発電機
30 バッテリ
40 駆動モータ
100 コントロールユニット(制御手段)(バッテリ残存容量検出手段)
101 バッテリ電流・電圧センサ(バッテリ残存容量検出手段)
106 エンジン水温センサ(エンジン水温検出手段)

Claims (5)

  1. 第1燃料と第2燃料とがそれぞれ供給可能に構成されたエンジンと、該エンジンにより駆動されて発電する発電機と、該発電機による発電電力を充電するバッテリと、該バッテリの放電電力及び上記発電機による発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される車両駆動用の駆動モータとを有するシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置であって、
    上記第1燃料は、上記第2燃料に対して、単位体積当たりの発熱量が高い燃料であり、
    上記エンジンの作動を制御する制御手段を備え、
    上記制御手段は、上記第1及び第2燃料を所定の比率でもって上記エンジンに供給しかつ該エンジンの燃焼室内の燃焼空燃比を所定のリーン空燃比にしながら該エンジンを所定回転数で運転するエンジン定常運転時よりもエンジン出力を高くする要求がなされる高エンジン出力要求時において、
    上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比でもって、エンジン回転数を上記所定回転数よりも上昇させかつ該所定回転数に対する上昇量を、予め設定された設定回転数以下にすることで、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能であるときには、上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比でもって、エンジン回転数を、該高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成可能な回転数に高める第1の運転を実行する一方、
    上記所定の比率及び上記所定のリーン空燃比では、エンジン回転数の上記所定回転数に対する上昇量を上記設定回転数よりも大きくしないと、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力を達成することができないときには、上記エンジンを上記所定回転数で運転しつつ、上記所定の比率に対して上記第1燃料の供給割合を高くしかつ該エンジンの燃焼室内の燃焼空燃比をストイキ空燃比にする第2の運転を実行する
    ように構成されていることを特徴とするシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置。
  2. 請求項1記載のシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置において、
    上記第1燃料は、上記第2燃料に対して、同じ燃焼空燃比下で上記エンジンからのNOx排出量が少なくかつ着火性が低い燃料であり、
    上記制御手段は、上記第2の運転の実行時において、上記高エンジン出力要求時のエンジン出力が高いほど、上記第1燃料の供給割合を高くするように構成されていることを特徴とするシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置。
  3. 請求項2記載のシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置において、
    上記エンジンの排気通路に設けられ、該エンジンの排気ガスを浄化するNOx吸蔵還元触媒を更に備え、
    上記NOx吸蔵還元触媒は、上記エンジンの排気ガス中のNOxをリーン空燃比雰囲気下で吸蔵するとともに、該吸蔵したNOxを、ストイキ空燃比雰囲気下又はリッチ空燃比雰囲気下で放出し還元するものであり、
    上記制御手段は、上記高エンジン出力要求時において上記NOx吸蔵還元触媒からのNOxの放出要求があったときには、上記第1の運転又は上記第2の運転を実行する条件に関係なく、上記第2の運転を実行するように構成されていることを特徴とするシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置。
  4. 請求項2又は3記載のシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置において、
    上記エンジンの冷却水の温度を検出するエンジン水温検出手段を更に備え、
    上記制御手段は、上記第2の運転の実行時において、上記エンジン水温検出手段による上記冷却水の温度が低いほど、上記第1燃料の供給割合を高くする度合いを低くするように構成されていることを特徴とするシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載のシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置において、
    上記バッテリの残存容量を検出するバッテリ残存容量検出手段を更に備え、
    上記車両は、上記バッテリの放電電力によって走行するバッテリ走行モードと、上記エンジンを運転して該エンジンの出力によって上記発電機を介して上記バッテリを充電しながら走行する充電走行モードとを有するものであり、
    上記制御手段は、上記バッテリ走行モード時に、上記バッテリ残存容量検出手段により検出されるバッテリの残存容量が第1所定値よりも低くなったときには、上記充電走行モードに切り換える一方、上記充電走行モード時に、上記バッテリ残存容量検出手段により検出されるバッテリの残存容量が、上記第1所定値よりも高い値に設定された第2所定値よりも高くなったときに、上記バッテリ走行モードに切り換える走行モード切換制御部を含み、
    上記高エンジン出力要求がなされるのは、上記充電走行モード時において、上記バッテリ残存容量検出手段により検出されるバッテリの残存容量が、上記第1所定値よりも低い値に設定された第3所定値以下になったときから上記第1所定値になるまでの間であることを特徴とするシリーズハイブリッド車両のエンジン制御装置。
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