JP6344007B2 - 非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法、及び非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、不純物として残留する塩素は、焼成工程で揮発し、焼成炉および周辺設備を腐食し、電池の短絡につながる製品への金属異物のコンタミを生じる可能性があり、できる限り低くすることが求められる。
一般式:NixCoyMnzMt(OH)2・・・(1)
(式中、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.3≦x≦0.4、0.3≦y≦0.4、0.3≦z≦0.4、0≦t≦0.1、x+y+z+t=1である。)
一般式:LiaNixCoyMnzMtO2・・・(2)
(式中、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは、0.95≦a≦1.20であり、0.3≦x≦0.4、0.3≦y≦0.4、0.3≦z≦0.4、0≦t≦0.1、x+y+z+t=1である。)
さらに、本発明の前駆体を用いた正極活物質の製造方法は、高容量であり、不可逆容量が小さく、クーロン効率および反応抵抗に優れた非水系電解質二次電池用正極活物質を容易に得ることを可能とするものであり、その工業的価値は極めて大きい。
(1)ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の組成
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体(以下、単に「前駆体」ともいう)の製造方法は、下記一般式(1)で表され、粒子内部に空隙構造を有することにより、中空構造または多孔質構造を有する正極活物質を得ることのできるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子(以下、単に「複合水酸化物粒子」ともいう)を、濃度0.1mol/L以上の炭酸塩水溶液で洗浄することを特徴とする。
一般式:NixCoyMnzMt(OH)2・・・(1)
(式中、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.3≦x≦0.4、0.3≦y≦0.4、0.3≦z≦0.4、0≦t≦0.1、x+y+z+t=1である。)
本発明に用いられる複合水酸化物粒子は、粒子内部に空隙構造を有することにより、中空構造または多孔質構造を有するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子(以下、単に「複合酸化物粒子」ともいう。)を得ることができる。中空構造または多孔質構造を有する複合酸化物粒子からなる正極活物質は、電解液との接触面積が増加するため、出力特性に優れる。
上記空隙構造、中空構造または多孔質構造は、複合水酸化物粒子/複合酸化物粒子の走査型電子顕微鏡を用いた断面観察により確認される。
ここで、空隙率は、複合水酸化物粒子/複合酸化物粒子の任意断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、画像解析することによって測定できる。例えば、複数の複合水酸化物粒子/複合酸化物粒子を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などにより該粒子の断面観察が可能な状態とした後、画像解析ソフト:WinRoof 6.1.1等により、上記二次粒子中の空隙部(中空構造の中空部もしくは多孔質構造の空隙部)を黒として測定し、二次粒子輪郭内の緻密部(中空構造の外殻部や空隙構造/多孔質構造を形成する一次粒子断面)を白として測定し、任意の20個以上の粒子に対して、[黒部分/(黒部分+白部分)]の面積を計算することで空隙率を求めることができる。
本発明に用いられる複合水酸化物粒子を製造する方法としては、上記式(1)を満たし、かつ、粒子内部に空隙構造を有する複合水酸化物が得られれば特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
ここで、核生成工程と粒子成長工程とを分離して行うとは、従来の連続晶析法のように、核生成反応と粒子成長反応とが同じ層内で同時期に進行するのではなく、主として核生成反応(核生成工程)が生じる時期と、主として粒子成長反応(粒子成長工程)が生じる時期とが明確に分離されていることをいう。
すなわち、核生成工程と粒子成長工程の初期の一部を酸化性雰囲気とすることで、微細一次粒子からなり、微細な空隙を多数含む中心部が形成され、その後の粒子成長工程において、酸化性雰囲気から切り替えて弱酸化性〜非酸化性の範囲の雰囲気とすることで、該中心部の外側に該微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子からなる外殻部を有する粒子構造を形成することができる。このような粒子構造を有する複合水酸化物粒子は、正極活物質を得る際の焼成工程において、中心部の微細一次粒子が外殻部に吸収されて中空構造を有する複合酸化物粒子となる。
本発明の前駆体の製造方法は、前記ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を濃度0.1mol/L以上、好ましくは0.15〜2.00mol/L、より好ましくは0.20〜1.50mol/Lの炭酸塩水溶液で洗浄することを特徴とする。
洗浄する際に濃度0.1mol/L以上の炭酸塩水溶液用いることで、複合水酸化物粒子中の不純物、特に硫酸根や塩素などを、炭酸塩水溶液中の炭酸とのイオン交換作用により、効率よく除去することができる。特に、上述した空隙構造を有する水酸化物粒子の場合、従来用いられてきた水や水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水溶液による洗浄では、粒子内部の前記不純物を除去することが困難であり、炭酸塩水溶液による洗浄が効果的である。
また、例えば、炭酸塩として炭酸ナトリウムを使用する場合、水溶液濃度は0.2mol/L以上が好ましく、0.25〜1.50mol/Lがより好ましい。炭酸ナトリウムは水への溶解度が高いため、その水溶液濃度を0.2mol/L以上とすることで、硫酸根や塩素などの不純物の除去をより効率的に行うことができる。
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体は、下記一般式(1)で表され、空隙構造を有するニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子からなり、硫酸根含有量が0.5質量%以下、ナトリウム含有量が0.015質量%以下であることを特徴とする。
一般式:NixCoyMnzMt(OH)2・・・(1)
(式中、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.3≦x≦0.4、0.3≦y≦0.4、0.3≦z≦0.4、0≦t≦0.1、x+y+z+t=1である。)
本発明の非水電解質二次電池用の正極活物質の製造方法は、1)上記前駆体とリチウム化合物を混合してリチウム混合物を得る混合工程と、2)前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中800〜1100℃の範囲で焼成して、下記一般式(2)で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子得る焼成工程とを含む。
一般式:LiaNixCoyMnzMtO2・・・(2)
(式中、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは、0.95≦a≦1.20であり、0.3≦x≦0.4、0.3≦y≦0.4、0.3≦z≦0.4、0≦t≦0.1、x+y+z+t=1である。)
なお、一般式(2)中のx、y、z及びtの値は、前述した複合水酸化物粒子の一般式(1)中のx、y、z及びtの値と同様の値をとることができる。
以下、各工程について説明する。
混合工程は、前駆体とリチウム化合物を混合してリチウム混合物を得る工程である。
前駆体とリチウム化合物の混合比としては、リチウム(Li)とリチウム以外の金属元素(Me)がモル比(Li/Me)で0.95〜1.20、好ましくは1.00〜1.15になるように調整することが好ましい。つまり、リチウム混合物におけるモル比(Li/Me)が、本発明の正極活物質におけるモル比(Li/Me)と同じになるように混合される。これは、焼成工程前後で、モル比(Li/Me)は変化しないので、この混合工程で混合するLi/Meが正極活物質におけるモル比(Li/Me)となるからである。なお、一般式(2)中のaの値は、Meの組成比(x+y+z+t)が1であるため、正極活物質におけるモル比(Li/Me)と同様の値となる。
前駆体は、複合水酸化物の状態でリチウム化合物と混合することができるが、焙焼工程を混合工程の前に追加し、前駆体の残留水分を除去してもよく、さらに該複合水酸化物を酸化物の形態に転換してもよい。
前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中800〜1100℃の範囲、好ましくは850〜1050℃の範囲、さらに好ましくは900〜1000℃の範囲で焼成する工程である。すなわち、800℃を超えるような温度で熱処理すればリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が生成されるが、800℃未満ではその結晶が未発達で構造的に不安定であり充放電による相転移などにより容易に構造が破壊されてしまう。一方、1100℃を超えると、異常粒成長が生じ、層状構造の崩壊、比表面積の低下を招じるため、リチウムイオンの挿入、脱離が困難となってしまう。
なお、焼成工程で、800℃以上に温度を上昇させる際、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物が複合酸化物の形態となり、リチウム化合物との反応が700℃程度で概ね終了することから、700℃までの焼成と、700℃以上の焼成を異なる設備、工程に分けて行っても良い。2つの工程に分けることで、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物とリチウム化合物との反応で生じる水蒸気、二酸化炭素等のガス成分を、結晶性を高めるための700℃以上の焼成に持ち込ませないことができ、より高結晶性の複合水酸化物粒子を得ることができる。
また、リチウム化合物の結晶水などを取り除いた上で、結晶成長が進む温度領域で均一に反応させるため、600〜900℃、焼成温度より低い温度で、1時間以上保持して仮焼してもよい。
(2)硫酸根含有量:ICP発光分析法により硫黄を定量分析し、硫黄は全て酸化して硫酸根(SO4 2−)になるものとして係数を乗じることによって求めた。
(3)Na、Cl含有量:原子吸光分析法で測定した。
(4)充放電容量、クーロン効率:
充放電容量は、コイン型電池を作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(open circuit voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.5mA/cm2としてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を放電容量、このときの充電容量に対する放電容量の比率(放電容量/充電容量)をクーロン効率(%)とした。
(5)反応抵抗:
反応抵抗は、コイン型電池を充電電位4.1Vで充電して、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用して交流インピーダンス法ナイキストプロットを作成し、等価回路を用いてフィッティング計算して、正極抵抗の値を算出した。
[正極活物質の前駆体の製造]
(核生成工程)
反応槽(34L)内に、水を半分の量まで入れて傾斜パドルタイプの攪拌羽根を使用して500rpmで撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。このときの反応槽内は、大気雰囲気(酸素濃度:21容量%)とした。この反応槽内の水に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えて、液温25℃基準で、槽内の反応液のpH値が13.0となるように調整した。さらに、該反応液中のアンモニア濃度を15g/Lに調節して反応前水溶液とした。
次に、硫酸ニッケル、塩化コバルト、硫酸マンガン(金属元素モル比でNi:Co:Mn=40:30:30)を水に溶かして得た2.0mol/Lの混合水溶液を、反応槽内の反応前水溶液に88ml/分の割合で加えて、反応水溶液とした。同時に、25質量%アンモニア水および25質量%水酸化ナトリウム水溶液も、この反応水溶液に一定速度で加え、反応水溶液(核生成用水溶液)中のアンモニア濃度を上記値に保持した状態で、pH値を13.0(核生成pH値)に制御しながら、15秒間晶析(核生成)させた。
核生成終了後、反応水溶液のpH値が液温25℃基準で11.6になるまで、25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給のみを一時停止した。
反応水溶液のpH値が11.6に到達した後、反応水溶液(粒子成長用水溶液)に、再度、25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給を再開し、アンモニア濃度を上記値に保持してpH値を液温25℃基準で11.6に制御したまま、30分間の晶析を継続し粒子成長を行った後、給液を一旦停止し、反応槽内空間の酸素濃度が0.2容量%以下となるまで窒素ガスを5L/分で流通させた。その後、給液を再開し、成長開始からあわせて2時間晶析を行った。
反応槽内が満液になったところで、晶析を停止するとともに、撹拌を止めて静置することで、生成物の沈殿を促した。その後、反応槽から上澄み液を半量抜き出した後、晶析を再開し、2時間晶析を行った後(粒子成長:計4時間)、晶析を終了させた。そして、生成物を水洗、濾過、乾燥させてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得た。
上記晶析において、pHは、pHコントローラにより水酸化ナトリウム水溶液の供給流量を調整することで制御され、変動幅は設定値の上下0.2の範囲内であった。
得られた複合水酸化物粒子は、空隙構造を有し、1μm以下の一次粒子が凝集した球状の平均粒径が9.3μmの二次粒子からなり、空隙率が56%であった。また、その組成はニッケルとコバルトとマンガンとのモル比が40:30:30であった。
得られた複合水酸化物粒子をフィルタープレスろ過機により固液分離し、25℃、pH11.5(25℃基準)の0.28mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を、複合水酸化物粒子1000gに対して3000mLの割合で該フィルタープレスろ過機に通液することにより洗浄し、さらに、純水を通液して洗浄した。洗浄後のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物(前駆体)の組成、不純物量等の結果を表1に示す。
(混合工程)
上記で得られた複合水酸化物を、リチウム化合物と、リチウムニッケル複合酸化物の各金属成分のモル比がNi:Co:Mn:Li=0.40:0.30:0.30:1.08となるように、リチウムニッケル複合水酸化物と水酸化リチウム一水和物(和光純薬製)を秤量し、混合した。
(焼成工程)
得られた混合物を、電気炉を用いて大気雰囲気中で900℃で9時間焼成した。その後、室温まで炉内で冷却した後、解砕処理を行い、一次粒子が凝集した球状のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子からなる正極活物質を得た。
この正極活物質を、樹脂に埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工を行ったものについて、倍率を5000倍としたSEMによる断面観察を行ったところ、一次粒子が焼結して構成された外殻部と、その内部に中空部を備える中空構造となっていることを確認した。この観察から求めた、正極活物質の空隙率は59%であった。この正極活物質を用いて、下記方法で電池を作製した。前駆体の物性結果を表1に、活物質の物性結果を表2に示す。得られた正極活物質の組成、不純物量を表2に示す。
正極活物質粉末90重量部にアセチレンブラック5重量部及びポリ沸化ビニリデン5重量部を混合し、n−メチルピロリドンを加えペースト化した。これを20μm厚のアルミニウム箔に乾燥後の活物質重量が0.05g/cm2なるように塗布し、120℃で真空乾燥を行い、その後、これより直径1cmの円板状に打ち抜いて正極とした。
負極としてリチウム金属を、電解液には1MのLiClO4を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液を用いた。また、ポリエチレンからなるセパレータに電解液を染み込ませ、露点が−80℃に管理されたArガス雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電池を作製した。図1に2032型のコイン電池の概略構造を示す。ここで、コイン電池は、正極缶5中の正極(評価用電極)1、負極缶6中のリチウム金属負極3、電解液含浸のセパレーター2及びガスケット4から構成される。得られた電池の各特性(放電容量、クーロン効率、反応抵抗)を表2に示す。
炭酸ナトリウム水溶液をpH11.8(25℃基準)の0.47mol/L(50g/L)に変更してで洗浄したこと以外は、実施例1と同様に行い、正極活物質を製造して評価した。評価結果を表1および2に示す。
炭酸ナトリウム水溶液をpH12.0(25℃基準)の1.12mol/Lに変更して洗浄したこと以外は、実施例1と同様に行い、正極活物質を製造して評価した。評価結果を表1および2に示す。
前駆体の製造時の核生成工程において、混合水溶液の金属元素モル比をNi:Co:Mn=34:33:33としたこと以外は、実施例1と同様に行い、正極活物質を製造して評価した。評価結果を表1および2に示す。
得られた複合水酸化物粒子は、空隙構造を有し、1μm以下の一次粒子が凝集した球状の平均粒径が9.8μmの二次粒子からなり、空隙率が46%であった。また、その組成はニッケルとコバルトとマンガンとのモル比が34:33:33であった。また、正極活物質は、中空構造または多孔質構造を有し、その空隙率は52%であった。評価結果を表1および2に示す。
炭酸ナトリウム水溶液をpH11.0(25℃基準)の0.09mol/Lに変更して洗浄したこと以外は、実施例1と同様に行い、正極活物質を製造して評価した。評価結果を表1および2に示す。
実施例1の炭酸ナトリウム水溶液をpH13.5(25℃基準)の1.60mol/L水酸化ナトリウム水溶液に変更してで洗浄したこと以外は、実施例1と同様に行い、正極活物質を製造して評価した。評価結果を表1および2リチウムニッケル複合酸化物を製造し、得られたリチウムニッケル複合酸化物を用いて電池を作製した。結果を表1に示す。
炭酸ナトリウム水溶液をpH14.0(25℃基準)の3.39mol/L水酸化ナトリウム水溶液に変更して洗浄したこと以外は、実施例1と同様に行い、正極活物質を製造して評価した。評価結果を表1および2に示す。
(比較例4)
上部にオーバーフロー用配管を備えた連続晶析用の反応槽を用いて、25℃におけるpHを12.5の一定値に保ちながら、実施例4と同様の混合水溶液とアンモニア水溶液および水酸化ナトリウム水溶液を一定流量で連続的に加えて、槽内の平均滞留時間を10時間としてオーバーフローするスラリーを連続的に回収する方法により晶析を行った。反応槽内が平衡状態になってからスラリーを回収して固液分離し、さらに生成物を水洗、濾過、乾燥させてニッケル複合水酸化物粒子を得たこと、焼成後に水洗工程を行わなかった以外は、実施例1と同様に行い、正極活物質(リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物)を製造して評価した。評価結果を表1および2に示す。
得られた複合水酸化物粒子は、空隙構造が観察されず、緻密な粒子構造を有し、1μm以下の一次粒子が凝集した球状の平均粒径が8.1μmの二次粒子からなり、空隙率が4%であった。また、その組成はニッケルとコバルトとマンガンとのモル比が0.34:0.33:0.33であった。また、正極活物質は緻密な粒子構造を有し、その空隙率は3%であった。
これに対して、本発明の要件の一部又はすべてを満たしていない比較例1〜3では、粒子内に空隙の多い構造を有し、十分な洗浄がされなかったため、複合水酸化物及び複合酸化物の不純物量が多く、容量が低下している。また、水酸化ナトリウムで洗浄を行った比較例2および3では、水酸化ナトリウム溶液の濃度を高くすることでSO4量は低下したもののナトリウム根が残った結果、容量が低下し、反応抵抗も高い。
一方、比較例4では、緻密な粒子構造を有する複合水酸化物粒子を、炭酸ナトリウムにより十分な洗浄を行っているため、実施例と比較して、より不純物量は少ないが、得られた正極活物質は、空隙の少ない構造を有するため、電解液との接触面積が減少し、同様の組成比を有する実施例4と比較し、電池特性が低下している。
2 セパレーター(電解液含浸)
3 リチウム金属負極
4 ガスケット
5 正極缶
6 負極缶
Claims (10)
- 下記の一般式(1)で表され、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子からなり、中空構造または多孔質構造を有する非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法であって、
ニッケル、コバルトおよびマンガン、並びに必要に応じて元素Mを含む金属化合物の混合水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液とを供給し、その際、反応溶液に、アルカリ性に保持するのに十分な量の水酸化ナトリウムの水溶液を適宜供給して、中和晶析することにより、粒子内部に空隙構造を有するニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得ることと、
前記ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を、炭酸塩濃度が0.1mol/L以上の炭酸塩水溶液で洗浄すること、を備え、
前記ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む金属化合物は、少なくとも硫酸塩を含む、ことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
一般式:NixCoyMnzMt(OH)2・・・(1)
(式中、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.3≦x≦0.4、0.3≦y≦0.4、0.3≦z≦0.4、0≦t≦0.1、x+y+z+t=1である。) - 前記洗浄後の前記ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子の硫酸根含有量を0.5質量%以下、かつ、ナトリウム含有量を0.020質量%以下とすることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
- 前記ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子は、断面観察において計測される空隙率が15%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
- 前記炭酸塩水溶液は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素ナトリウムから選ばれる少なくとも1種の水溶液であり、前記炭酸塩水溶液のpHが11.2以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
- 前記洗浄は、液温度15〜50℃の範囲で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
- 前記中和晶析において、前記反応溶液のpH値を制御することにより、核を生成させる核生成工程と、前記生成された核を成長させる粒子成長工程とを分離して行う
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。 - 前記核生成工程におけるpH値を、液温25℃基準で12.0〜14.0となるように制御し、前記粒子成長工程におけるpH値を、液温25℃基準で10.5〜12.5、かつ、核生成工程のpH値より低い値となるように制御することを特徴とする請求項6に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
- 前記混合水溶液は、ニッケル、マンガンおよびコバルトのいずれか少なくとも1種の塩化物を含むことを特徴とする請求項7に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
- 下記の一般式(2)で表され、中空構造または多孔質構造を有するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により、非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体を得る工程と、
前記非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体をリチウム化合物と混合してリチウム混合物を得る混合工程と、
前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中800〜1100℃の範囲で焼成して、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を得る焼成工程と、
を含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
一般式:LiaNixCoyMnzMtO2・・・(2)
(式中、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは、0.95≦a≦1.20であり、0.3≦x≦0.4、0.3≦y≦0.4、0.3≦z≦0.4、0≦t≦0.1、x+y+z+t=1である。) - 前記リチウム化合物は、リチウムの水酸化物、オキシ水酸化物、酸化物、炭酸塩、硝酸塩及びハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
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