以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の全ての図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
(第1の実施形態)
<基板型光導波路素子>
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば図1(A),(B)に示す基板型光導波路素子1について説明する。なお、図1(A)は、基板型光導波路素子1を示す平面図であり、図1(B)は、図1(A)中に示す線分Z1−Z1による基板型光導波路素子1の断面図である。図1(C)は、図1(A)中に示す線分Z2−Z2による基板型光導波路素子1の断面図である。
図1(A),(B),(C)に示す基板型光導波路素子1は、基板2の上に、Y分岐導波路3を形成するコア4と、コア4を覆うと共にコア4よりも屈折率が小さいクラッド5とを備えている。Y分岐導波路3は、互いに平行に並列した第1の導波路6及び第2の導波路7と、第1の導波路6及び第2の導波路7の一端に他端が接続された第3の導波路8とを有している。
基板型光導波路素子1では、例えば、Si−SiO2−SiからなるSOI(Silicon on insulator)ウェハを用いて作製できる。具体的に、このSOIウェハの最上層にあるSi層を加工することで、コア4(Y分岐導波路3)を形成することができる。SOIウェハを用いた場合、最下層にあるSiが基板2となり、中間にあるSiO2が後述する下部クラッド13となる。
コア4は、第1の導波路6を形成する断面矩形状の第1のリブ部9と、第2の導波路7を形成する断面矩形状の第2のリブ部10と、第3の導波路8を形成する断面矩形状の第3のリブ部11と、第1のリブ部9、第2のリブ部10及び第3のリブ部11よりも小さい厚み(低い高さ)で、第1のリブ部9と第2のリブ部10と第3のリブ部11との間で共有されるスラブ部12とを有している。
コア4(第1のリブ部9、第2のリブ部10、第3のリブ部11及びスラブ部12)は、クラッド5よりも屈折率が高い材料、好ましくはSiからなる。基板型光導波路素子1では、上述したSOIウェハの最上層にあるSi層を2段階でエッチングすることで、第1のリブ部9、第2のリブ部10、第3のリブ部11及びスラブ部12を一体に形成することができる。
第1の導波路6及び第2の導波路7は、第1のリブ部9及び第2のリブ部10の幅W1,W2がそれぞれの長さ方向において一定となり、且つ、第1のリブ部9と第2のリブ部10との間の間隔(スラブ部12の幅)Dが第1のリブ部9及び第2のリブ部10の長さ方向において一定となる直線状の導波路を形成している。すなわち、Y分岐導波路3において、第1の導波路6と第2の導波路7とは、同じ材質及び断面形状(幅及び厚み(高さ))を有する直線状の第1のリブ部9と第2のリブ部10とが互いに平行に並ぶことによって形成されている。また、第1のリブ部9の幅W1と第2のリブ部10の幅W2とは、同じ幅(W1=W2)を有している。
第3の導波路8は、第3のリブ部11の幅方向の中心Oと第1のリブ部9と第2のリブ部10との間の幅方向の中心O’が一致し、且つ、第1のリブ部9の幅W1と、第2のリブ部10の幅W2と、第1のリブ部9と第2のリブ部10との間の間隔Dとの合計(W1+W2+D)よりも第3のリブ部11の幅W3が大きい(すなわち「W3>W1+W2+D」の関係を満足する)直線状の導波路を形成している。すなわち、Y分岐導波路3において、第3の導波路8は、第1のリブ部9及び第2のリブ部10と同じ材質及び厚み(高さ)を有する直線状の第3のリブ部11によって形成されている。また、第3のリブ部11は、第1のリブ部9及び第2のリブ部10よりも幅方向の両側に同じ幅だけ突出した一対の突出部11a,11bを有している。
スラブ部12は、第1のリブ部9と第2のリブ部10との互いに対向する側面の間に亘って形成されている。これにより、第1の導波路6と第2の導波路7とは、第1のリブ部9と第2のリブ部10との幅方向の片側のみにスラブ部12が設けられた半リブ導波路を形成している。
クラッド5は、下部クラッド13と、上部クラッド14とを有している。第1の導波路6、第2の導波路7及び第3の導波路8(第1のリブ部9、第2のリブ部10、第3のリブ部11及びスラブ部12)は、下部クラッド13の面上に形成されている。上部クラッド14は、第1のリブ部9、第2のリブ部10、第3のリブ部11及びスラブ部12が形成された下部クラッド13の面上を覆っている。
クラッド5は、コア4よりも屈折率が低い材料、具体的には、SiO2やSiN、空気層(但し、空気層は上部クラッド14のみ適用可能。)などからなる。基板型光導波路素子1では、上述したSOIウェハのSiO2層が下部クラッド13を形成し、その上の空気層が上部クラッド14を形成している。また、上部クラッド14は、下部クラッド13の面上を覆うSiO2層により形成してもよい。
また、基板型光導波路素子1は、第1の導波路3の他端に一端が接続された第1の曲げ導波路15と、第2の導波路7の他端に一端が接続された第2の曲げ導波路16とを有している。
コア4は、第1の曲げ導波路15を形成する第1のリブ部9Aと、第2の曲げ導波路16を形成する第2のリブ部10Aと、第1のリブ部9A及び第2のリブ部10Aよりも小さい厚み(低い高さ)で、第1のリブ部9Aと第2のリブ部10Aとの間で共有されるスラブ部12Aとを有している。
第1の曲げ導波路15及び第2の曲げ導波路16は、長さ方向において幅及び厚み(高さ)が一定となる第1のリブ部9A及び第2のリブ部10Aにより面内で曲げるように形成されている。第1のリブ部9Aと第2のリブ部10Aとは、第1のリブ部9と第2のリブ部10とにそれぞれ連続して形成されている。すなわち、第1のリブ部9Aは、第1のリブ部9と同じ幅及び厚み(高さ)で断面矩形状に形成されている。一方、第2のリブ部10Aは、第2のリブ部10と同じ幅及び厚み(高さ)で断面矩形状に形成されている。
第1の曲げ導波路15と第2の曲げ導波路16とは、第1のリブ部9Aと第2のリブ部10Aとの間の間隔が第1の導波路6(第1のリブ部9)と第2の導波路7(第2のリブ部10)に接続される側に向かって連続的に小さくなるように、所定の曲率及び角度でS字状に曲がって形成されている。
スラブ部12Aは、スラブ部12と同じ厚み(高さ)でスラブ部12に連続して形成されている。スラブ部12Aは、第1のリブ部9Aと第2のリブ部10Aとの互いに対向する側面の間に亘って形成されている。これにより、第1の曲げ導波路15と第2の曲げ導波路16とは、第1のリブ部9Aと第2のリブ部10Aとの幅方向の片側のみにスラブ部12Aが設けられた半リブ導波路を形成している。
また、基板型光導波路素子1は、第3の導波路8の一端に他端が接続された第4の導波路17を有している。コア4は、第4の導波路17を形成する第3のリブ部11Aを有している。第4の導波路17は、第3の導波路8とは幅が異なる直線導波路18との間を連続的に接続するため、第3の導波路8に接続される側とは反対側に向かって第3のリブ部11Aの幅が連続的に小さくなるテーパ状の導波路(テーパ部)を形成している。第3のリブ部11Aは、第3の導波路8を形成する第3のリブ部11と、直線導波路18を形成する第3のリブ部11Bとに連続して形成されている。すなわち、第3のリブ部11Aの他端は、第3のリブ部11と同じ幅及び厚み(高さ)で断面矩形状に形成されている。一方、第3のリブ部11Aの一端は、第3のリブ部11Bと同じ幅及び厚み(高さ)で断面矩形状に形成されている。
直線導波路18は、第4の導波路17と外部の導波路(図示せず。)との間を接続するための導波路であり、長さ方向において幅及び厚み(高さ)が一定となる第3のリブ部11Bにより直線状に形成されている。
なお、本実施形態の基板型光導波路素子1において、第4の導波路17は、必ずしも必須な構成ではなく、第3の導波路8に同じ幅の導波路を接続する場合は不要となる。また、直線導波路18についても必須な構成ではなく、この直線導波路18とは異なる形状の導波路(例えば曲げ導波路など。)を接続することも可能である。
また、基板型光導波路素子1では、上述したSOIウェハの最上層にあるSi層を2段階でエッチングすることで、上述した第1の導波路6、第2の導波路7及び第3の導波路8を形成する第1のリブ部9、第2のリブ部10、第3のリブ部11及びスラブ部12と共に、第1の曲げ導波路15、第2の曲げ導波路16、第4の導波路17及び直線導波路18を形成する第1のリブ部9A、第2のリブ部10A、第3のリブ部11A,11B及びスラブ部12Aを一体に形成することができる。
本実施形態の基板型光導波路素子1では、上述した第1の導波路6、第2の導波路7及び第3の導波路8からY分岐導波路3の突合せ結合部(分岐導波路構造)31が構成されている。また、本実施形態の基板型光導波路素子1では、上述した第1の導波路6及び第1の曲げ導波路15と、第1の導波路6及び第1の曲げ導波路15とからY分岐導波路3の2つの入力導波路32,33が構成され、上述した第3の導波路8、第4の導波路17及び直線導波路18からY分岐導波路3の1つの出力導波路34が構成されている。
Y分岐導波路3では、2つの入力導波路32,33に入力されるTE0モードの光と、出力導波路34から出力されるTE0モードの光とを突合せ結合部31で不連続に結合させる。また、入力導波路32,33の出力導波路34に接続される直前の電界分布が、出力導波路34の電界分布と効率良く結合するように、出力導波路34が2つの入力導波路32,33よりも幅方向の両側に突出した幅広形状となっている。すなわち、第3のリブ部11の幅W3は、第1のリブ部9の幅W1と、第2のリブ部10の幅W2と、第1のリブ部9と第2のリブ部10との間の間隔Dとの合計(W1+W2+D)よりも大きくなっている(W3>W1+W2+D)。この場合、入力側の電界分布に応じて、第3のリブ部11の幅W3を調整することによって、光を合波する際の損失を低減することが可能である。
また、本実施形態の基板型光導波路素子1では、2つの入力導波路32,33(第1の導波路6と第2の導波路7)の間に、第1のリブ部9及び第2のリブ部10よりも小さい厚み(低い高さ)で、第1のリブ部9と第2のリブ部10との間で共有されるスラブ部12を設けることによって、低損失な合波を可能としている。
すなわち、第1のリブ部9と第2のリブ部10との間にスラブ部12を設けた場合、第1のリブ部9(又は第2のリブ部10)からスラブ部12へと光が大きく浸み出すことになる。一方、スラブ部12は、第1のリブ部9と第2のリブ部10との間にのみ存在するため、第1のリブ部9(又は第2のリブ部10)のスラブ部12とは反対側から光が浸み出すことがない。
これにより、Y分岐導波路4では、隣接する第1のリブ部9と第2のリブ部10との間で光の閉じ込めを弱くし、これらの間で光の浸み出しを増加させることができる。その結果、一方の入力導波路32に入力したTE0モードの光が隣接する他方の入力導波路33に浸み出し、これら2つの入力導波路32,33の中央に寄った電界分布を持つことになる。このため、出力導波路34の中央に集中した電界分布を持つTE0モードの光を高効率に結合させることが可能となる。
また、本実施形態の基板型光導波路素子1では、上述した第1の曲げ導波路15及び第2の曲げ導波路16によって、2つの離れた入力導波路32,33を徐々に接近させる構成となっている。この場合、隣接する導波路への光の浸み出しを徐々に行い、急激な電界分布の変化による損失を避けることができる。これにより、離間した外部の導波路との接続が容易になる。
なお、本実施形態では、上述した第1の曲げ導波路15及び第2の曲げ導波路16を設けた構成となっているが、必ずしも2つの曲げ導波路を用いる必要はなく、例えば、2つの直線導波路を光の進行方向に対して斜めに配置して、これら2つの直線導波路を徐々に接近させる構成とすることも可能である。また、これらを組み合わせた構成としてもよい。
<Y分岐導波路>
次に、Y分岐導波路を用いた合成導波路による光の合波の原理について説明する。
なお、以下の説明では、上記基板型光導波路素子1と同等の部位については、必要に応じて図面等において同じ符号を付すものとする。また、一方の入力導波路32を「入力導波路1」、他方の入力導波路33を「入力導波路2」と呼ぶ。
2つの入力導波路1,2が十分に離れているとき、その一方の導波路1にTE0モードの光を入力した場合、このTE0モードの光は、隣接する入力導波路1,2の断面において、対称な電界分布を持つ偶モードと、反対称な電界分布を持つ奇モードとの2つの導波モード(これらを合わせてスーパーモードと呼ぶ。)が、同じパワーを持った重ね合わせとして表現される。
ここで、隣接する入力導波路1,2が十分に離れているときの上記Y分岐導波路3におけるTE0モードによる偶モードの電界分布(EX成分)をシミュレーションにより求めたグラフを図2(A),(B)に示し、奇モードの電界分布(EX成分)をシミュレーションにより求めたグラフを図3(A),(B)に示す。なお、図2(B)及び図3(B)は、図2(A)及び図3(A)におけるY=0[μm]の位置でのEX成分を示すグラフである。また、各グラフにおいて、Xは幅方向、Yは高さ方向の座標[μm]を表す。
また、本シミュレーションで用いたY分岐導波路3の各部の寸法を図4に示す。本シミュレーションでは、有限要素法(FEM:finite element method)を用い、波長を1550nmとし、コア4(リブ部9,10及びスラブ部12)をSi(屈折率3.48)とし、クラッド5(下部クラッド13及び上部クラッド14)をSiO2(屈折率1.44)とし、リブ部9,10の厚み(高さ)を220nm、スラブ部12の厚み(高さ)を95nmとし、リブ部9,10の幅を400nmとし、スラブ部12の幅を2000nmとして計算を行った。
図2(A),(B)及び図3(A),(B)には、Y分岐導波路3の幅方向における電界成分(EX成分)のみが示されている。これは、TEモードではEX成分が最も大きく支配的であるためであり、その特徴はEX成分で主に表されるからである。
図2(A),(B)及び図3(A),(B)のグラフからわかるように、入力導波路1(図4中の右側)にTE0モードの光が入力された場合の電界分布は、偶モードと奇モードが位相差0[rad]を持って重ね合わされたものとなる。一方、入力導波路2(図4中の左側)にTE0モードの光が入力された場合の電界分布は、偶モードと奇モードが位相差π[rad]を持って重ね合わされものとなる。
これらのスーパーモードを持つ2つの入力導波路1,2は、突合せ結合部31に向かって徐々に接近する。このとき、一方の入力導波路1から浸み出し光が他方の入力導波路2に移ることにより、スーパーモードは2つの入力導波路1,2の中央に寄った分布へと移り変わる。
次に、隣接する入力導波路1,2が接近しているときの上記Y分岐導波路3におけるTE0モードによる偶モードの電界分布(EX成分)をシミュレーションにより求めたグラフを図5(A),(B)に示し、奇モードの電界分布(EX成分)をシミュレーションにより求めたグラフを図6(A),(B)に示す。なお、図5(B)及び図6(B)は、図5(A)及び図6(A)におけるY=0[μm]の位置でのEX成分を示すグラフである。また、本シミュレーションで用いたY分岐導波路3の各部の寸法を図7に示す。本シミュレーションのそれ以外の条件は、上記図4に示す場合と同様である。
図5(A),(B)及び図6(A),(B)のグラフからは、偶モードにおいて、隣接する入力導波路の間に光が集まっているのがわかる。
これに対して、従来の一般的な矩形導波路を用いたY分岐導波路(上記図35(A)を参照。)では、更に隣接する入力導波路の間隔が光の進行方向に沿って徐々に狭まっていく。このとき、偶モードでは、出力導波路のTE0モードの光に連続的に変化する。一方、奇モードでは、出力導波路のTE1モードの光に連続的に変化する。なお、TE1モードは、TEモードの中で実効屈折率が2番目に高いモードを表す。
ここで、矩形導波路のTE0モードによる電界分布(EX成分)をシミュレーションにより求めたグラフを図8(A),(B)に示し、TE1モードによる電界分布(EX成分)をシミュレーションにより求めたグラフを図9(A),(B)に示す。なお、図8(B)及び図9(B)は、図8(A)及び図9(A)におけるY=0[μm]の位置でのEX成分を示すグラフである。また、本シミュレーションで用いた矩形導波路の寸法を図10に示す。本シミュレーションのそれ以外の条件は、上記図4に示す場合と同様である。
図8(A),(B)及び図9(A),(B)のグラフから、TE0モードでは中央にピークを持った幅方向に対称な電界分布を持ち、TE1モードでは離れたところに2つのピークを持った幅方向に反対称な電界分布を持つことがわかる。なお、このような電界分布の特徴は、導波路の幅を変化させた場合も成り立ち、導波路の幅が変化することによって、TE0モード及びTE1モードによる電界分布も幅方向に変化することになる。
従来の一般的なY分岐導波路では、2つの入力導波路1,2から1つの出力導波路へと連続的に変化させることから、偶モードから出力導波路のTE0モードへの変換(又は奇モードから出力導波路のTE1モードへの変換)も連続的に行われる。したがって、Y分岐導波路の長さを十分長く取ることで、原理的に非常に低損失な合波が可能となる。このような変換は、一般的に断熱変化による変換と呼ばれる。
一方、上記図35(A)に示すY分岐導波路や、図1に示すY分岐導波路3のように、2つの入力導波路の間隔を一定にしたまま、出力導波路に不連続に接続するY分岐導波路の場合、以下の原理による変換が行われる。
すなわち、異なる断面を持つ導波路を接続した場合に、入力側導波路のある導波モードが、出力側導波路のある導波モードへ変換する割合を示す変換効率Tは、下記式(1)のように表される。(但し、TEモードの変換を考えた場合、TEモードはEx成分が主成分であることから、それ以外の成分の寄与を無視している。)
ここで、上記式(1)中における記号は以下のように定める。*は複素共役を表し、積分は2つの入力導波路と出力導波路との境界の断面全体で行っている。
Ex入力部:入力導波路におけるTEモードのEx成分
Ex出力部:出力導波路におけるTEモードのEx成分
K:その他定数
このような変換は、突合せ結合と呼ばれる。上記式(1)から、電界分布の重なりが大きいほど大きな変換効率が得られることがわかる。また、入力導波路の偶モードは、幅方向に対称な電界分布を持つことから、出力導波路のTE1モードには結合せず、反対に、入力導波路の奇モードは、幅方向に反対称な電界分布を持つことから、出力導波路のTE0モードには結合しないことがわかる。このため、TE0モードの光を一方の入力導波路に入力したときの出力導波路から出力されるTE0モードの光の変換効率は、50%以下となる。このうち50%の損失は原理損である。また、同様にTE0モードの光を一方の入力導波路に入力したときの出力導波路から出力されるTE1モードの光の変換効率も同様である。
このような2つの入力導波路を出力導波路に不連続に接続したY分岐導波路では、変換効率を高めるのに電界分布が一致している方がよい。特に、入力側導波路の偶モードを電界分布が中央に寄った出力側導波路のTE0モードに高い効率で変換するためには、入力導波路の偶モードの電界が中央に寄った分布を持つことが必要である。そのためには、2つの入力導波路の結合係数を高める必要がある。
結合係数を高めるためには、2つの入力導波路の幅を狭めて、光の閉じ込めを弱くし、外部への光の浸み出しを大きくしたり、2つの入力導波路の間隔を狭めたりすればよい。しかしながら、実際に作製することを考慮した場合、導波路の幅が狭すぎると再現性が低下したり、リソグラフィの精度に依存し、マスクの設計通りの導波路が作製できなかったりするといった問題がある。このため、作製可能な最小の導波路の幅が存在する。また、導波路の間隔についても、2つの入力導波路が接近し過ぎると、隣接する導波路の影響を受け再現性が低下する。さらに、リソグラフィやエッチングの関係から作製可能な最小の導波路の間隔が存在する。したがって、入力導波路の結合係数を高めるのには限度がある。
以上のような条件の下で、入力導波路の偶モードから出力導波路のTE0モードへの変換効率を高める方法として、上記非特許文献1に記載のY分岐導波路では、図36(A)に示すように、出力導波路303が2つの入力導波路301,302よりも幅方向の両側に突出した幅広形状となっている。すなわち、出力導波路303の幅は、2つの入力導波路301,302の幅と、2つの入力導波路301,302の間隔との合計よりも大きくなっている。
これにより、入力導波路301,302の結合係数が十分高められず、偶モードが十分中央に寄らない場合において、出力導波路303の幅を広げることにより、TE0モードの電界分布を幅方向に拡張することで、偶モードとの一致性を高めることができる。
しかしながら、上記非特許文献1に記載のY分岐導波路では、2つの入力導波路301,302が矩形導波路により形成されている。また、平板型石英導波路(コアとクラッドの屈折率差0.3%)を想定している。
このような矩形導波路では、コアとクラッドの屈折率差が小さいことから光の閉じ込めが弱くなり、大きな結合係数が得られる。一方、コアとクラッドの屈折率差が大きいシリコン細線導波路の場合、コアへの光の閉じ込めが大きいため、変換効率を高めるためには、更なる改善が必要となる。(但し、本発明の適応範囲は、シリコン細線導波路のようなコアとクラッドの屈折率差が大きい導波路に限らず、一般的な全反射による光導波路全般に及ぶ。)
(本発明による効果)
次に、以上のような内容を踏まえて、本発明による効果について説明する。
本発明では、隣接する2つ入力導波路の間にリブ部と同じ材料で、リブ部よりも厚みが小さい(高さが低い)スラブ部を設けることにより、2つの入力導波路が半リブ導波路により形成されている。この場合、隣接する入力導波路への光の浸み出しを増加させ、入力導波路の幅と間隔を変えることなく、結合係数を高めることが可能である。これにより、入力導波路の偶モードから出力導波路のTE0モードへの変換効率を高めることができる。
ここで、2つの入力導波路の幅及び間隔を一定としたときの、矩形導波路を用いた分岐導波路におけるTE0モードによる偶モードの電界分布(EX成分)をシミュレーションにより求めたグラフを図11(A),(B)に示し、半リブ導波路を用いた分岐導波路におけるTE0モードによる偶モードの電界分布(EX成分)をシミュレーションにより求めたグラフを図12(A),(B)に示す。なお、図11(B)及び図12(B)は、図11(A)及び図12(A)におけるY=0[μm]の位置でのEX成分を示すグラフである。また、本シミュレーションでは、矩形導波路を用いたY分岐導波路の各部の寸法を図13に示し、半リブ導波路を用いたY分岐導波路の各部の寸法を図14に示す。本シミュレーションのそれ以外の条件は、上記図4に示す場合と同様である。
図11(A),(B)及び図12(A),(B)のグラフから、同じ入力導波路の幅及び間隔で比較した場合、矩形導波路を用いたY分岐導波路よりも半リブ導波路を用いたY分岐導波路の方が中央に寄った電界分布を持つことがわかる。したがって、半リブ導波路を用いたY分岐導波路では、入力導波路の偶モードから出力導波路のTE0モードへの変換効率を高めることが可能である。
また、本発明によるその他の効果としては、以下の効果1〜7が挙げられる。
[効果1]
本発明による効果1としては、波長依存性が小さいことが挙げられる。一般に、波長が変化すると、光の閉じ込めの程度が変化し、結合係数が変化する。例えば、波長が長くなると、コアからの光の浸み出しが増加し、結合係数が増加する。逆に、波長が短くなると、コアからの光の浸み出しが減少し、結合係数が減少する。このため、波長によって変換効率が変化する。一方、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplex)通信を想定した場合、そこで用いられる機能素子は、波長に対する変換効率の依存性が小さい方がよい。
本発明の半リブ導波路を用いたY分岐導波路では、従来の矩形導波路を用いたY分岐導波路に比べて、結合係数を高めることができる。したがって、本発明では、波長に対する結合係数の変化量が小さくなるため、波長依存性が小さいといった効果が得られる。
[効果2]
本発明による効果2としては、製造誤差に強いことが挙げられる。Y分岐導波路を実際に作製した場合、設計段階の値に対して、リブ部の幅が変化したり、リブ部の高さが変化したり、リブ部の断面形状が少し傾きを持った台形状になったりする。このような場合、導波路の形状変化に伴って光の閉じ込めの程度が変化し、結合係数が変化する。このような変化に対して、変換効率が低下することは好ましくない。
これに対して、本発明の半リブ導波路を用いたY分岐導波路では、従来の矩形導波路を用いたY分岐導波路に比べて、結合係数を高めることができる。したがって、本発明では、製造誤差によって結合係数が変化しても、変換効率の低下が従来よりも抑えられるため、製造誤差に強いといった効果が得られる。
[効果3]
本発明による効果3としては、奇モードからTE1モードへの変換効率が高いことが挙げられる。本発明の半リブ導波路を用いたY分岐導波路では、従来の矩形導波路を用いたY分岐導波路に比べて、高い結合係数を有することから、入力導波路の偶モードから出力導波路のTE0モードへの変換効率だけでなく、入力導波路の奇モードから出力導波路のTE1モードへの変換効率も高めることができる。この場合、後述するTE1モードの発生を利用したデバイスやシステムへの利用を図ることによって、低損失な合波(変換)が可能となる。
[効果4]
本発明による効果4としては、他のリブ導波路の作製プロセスが流用可能なことが挙げられる。本発明の半リブ導波路を用いたY分岐導波路では、上述したSOIウェハの最上層にあるSi層を2段階でエッチングすることで作製可能なため、従来の矩形導波路を用いたY分岐導波路に比べて、製造プロセスが増加することになる。しかしながら、スラブ部の高さに制限がないことから、外部の導波路として、例えばリブ部の幅方向の両側にスラブ部が設けられた導波路(いわゆるリブ導波路)などがある場合、これらを一括して作製できるため、実質的に製造プロセスの増加にはつながらない。
[効果5]
本発明による効果5としては、デバイス長が短いことが挙げられる。本発明のように、2つの入力導波路の間隔を一定にしたまま、出力導波路に不連続に接続するY分岐導波路の場合、従来の一般的なY分岐導波路のように、2つの入力導波路から1つの出力導波路へと連続的に変化させるのに十分な長さを確保する必要がないため、デバイス長を短くすることができる。
特に、従来の一般的なY分岐導波路では、2つの入力導波路が出力導波路に接続される部分において、偶モードからTE0モードへと電界分布の形状を大きく変えるため、この部分において非常に緩やかな変化が必要となる。これに対して、本発明では、このような部分が少ない点で、デバイス長に関して大きな利点となる。
[効果6]
本発明による効果6としては、低損失な合波が可能なことが挙げられる。Y分岐導波路を実際に作製した場合、導波路の側壁の荒れの影響で光が散乱し、損失が生じるという問題がある。特に、デバイスのサイズが小さいシリコン細線導波路において顕著である。これに対して、本発明の半リブ導波路を用いたY分岐導波路では、従来の矩形導波路を用いたY分岐導波路に比べて、導波路の側壁が少ない。このため、従来よりも側壁荒れによる損失が小さく、低損失な合波が可能である。
[効果7]
本発明による効果7としては、TM0モードによる合波が可能なことが挙げられる。この場合、2つの入力導波路のTM0モードによる偶モード又は奇モードから出力導波路のTM0モード又はTM1モードへの変換効率を計算することで、所望の損失を持つTM0モードによる合波が可能となる。
(第2の実施形態)
<基板型光導波路素子>
次に、本発明の第2の実施形態として図15(A),(B),(C)に示す基板型光導波路素子101Aについて説明する。なお、図15(A)は、基板型光導波路素子101Aを示す平面図であり、図15(B)は、図15(A)中に示す線分Z1−Z1による基板型光導波路素子101Aの断面図である。図15(C)は、図15(A)中に示す線分Z2−Z2による基板型光導波路素子101Aの断面図である。また、以下の説明では、上記図1(A),(B),(C)に示す基板型光導波路素子1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
図15(A),(B),(C)に示す基板型光導波路素子101Aでは、第1のリブ部9,9Aと第2のリブ部10,10Aとの互いに対向する側面とは反対側の側面にスラブ部12Bが連続して設けられた構成となっている。それ以外は、上記基板型光導波路素子1と基本的に同じ構成を有している。すなわち、Y分岐導波路3の2つの入力導波路32,33は、第1のリブ部9,9Aと第2のリブ部10,10Aとの幅方向の両側にスラブ部12,12A,12Bが設けられることによって、リブ導波路を形成している。
本実施形態の基板型光導波路素子101Aでは、上記基板型光導波路素子1と同様の効果を得ることができる。また、入力導波路32,33をリブ導波路で形成した場合、2つの入力導波路32,33の結合係数は、矩形導波路の場合よりも高くなるため、損失が小さくなる。一方、リブ導波路は、リブ部の幅方向の両側にスラブ部が存在するため、リブ部の間のスラブ部だけでなく、その反対側のスラブ部にも光が大きく浸み出しことになる。したがって、リブ導波路の場合、2つの入力導波路32,33の結合係数は、半リブ導波路の場合よりも低くなるため、損失が大きくなる。しかしながら、リブ導波路の場合、導波路の側壁が少ないことから、側壁荒れによる損失の影響が小さい。この点で半リブ導波路よりも有利となる。
(第3の実施形態)
<基板型光導波路素子>
次に、本発明の第3の実施形態として図16(A),(B)に示す基板型光導波路素子101Bについて説明する。なお、図16(A)は、基板型光導波路素子101Bを示す平面図であり、図16(B)は、基板型光導波路素子101Bが備えるテーパ導波路102を示す平面図である。また、以下の説明では、上記図1(A),(B),(C)に示す基板型光導波路素子1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
本実施形態の基板型光導波路素子101Bは、第1の曲げ導波路15と第2の曲げ導波路16とに、それぞれテーパ導波路102が接続された構成となっている。それ以外は、上記基板型光導波路素子1と基本的に同じ構成を有している。
テーパ導波路102は、半リブ導波路と矩形導波路との間で、導波路構造が連続的に変化することによって、リブ導波路から半リブ導波路に変換(又は半リブ導波路からリブ導波路に変換)される導波路を形成している。
具体的に、このテーパ導波路102は、第1のリブ部9Aの第2のリブ部10Aと対向する側の側面に連続して設けられた第1のスラブ部12Cと、第2のリブ部10Aの第1のリブ部9Aと対向する側の側面に連続して設けられた第2のスラブ部12Dとを有している。第1のスラブ部12C及び第2のスラブ部12Dは、スラブ部12Aに連続して設けられ、且つ、それぞれの幅がスラブ部12Aに向かって連続的に大きくなっている。
第1のスラブ部12Cと第2のスラブ部12Dとは、第1のリブ部9Aと第2のリブ部10Aとの中途部から、一定のテーパ角を有して徐々に幅を拡大させながら、スラブ部12Aまで延長して設けられている。
本実施形態の基板型光導波路素子101Bでは、上記基板型光導波路素子1と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の基板型光導波路素子101Bでは、テーパ導波路102を用いることで、矩形導波路と半リブ導波路との間でスラブ部12C,12Dの幅を連続的に変化させることができる。これにより、矩形導波路と半リブ導波路との接続が容易なものとなる。
また、基板型光導波路素子101Bの変形例を図16(C)に示す。図16(C)に示す基板型光導波路素子101Bでは、第1の曲げ導波路15と第2の曲げ導波路16とが、所定の曲率で互いに離間する方向に直角に曲がって形成されている。この場合も、第1のスラブ部12C及び第2のスラブ部12Dは、スラブ部12Aに連続して設けられ、且つ、それぞれの幅がスラブ部12Aに向かって連続的に大きくなっている。
一方、図16(D)に示すようなテーパ導波路103を用いた場合は、リブ導波路から半リブ導波路に変換される導波路構造、若しくは半リブ導波路からリブ導波路に変換される導波路構造が得られる。
(第4の実施形態)
<基板型光導波路素子>
次に、第4の実施形態として、図17(A),(B),(C)に示す基板型光導波路素子101Cについて説明する。なお、図17(A)は、基板型光導波路素子101Cを示す平面図であり、図17(B)は、図17(A)中に示す線分Z1−Z1による基板型光導波路素子101Cの断面図である。図17(C)は、図17(A)中に示す線分Z2−Z2による基板型光導波路素子101Cの断面図である。また、以下の説明では、上記図1(A),(B),(C)に示す基板型光導波路素子1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
図17(A),(B),(C)に示す基板型光導波路素子101Cでは、第3のリブ部11の両側の側面にスラブ部12Eが連続して設けられた構成となっている。それ以外は、上記基板型光導波路素子1と基本的に同じ構成を有している。すなわち、Y分岐導波路3の1つの出力導波路34は、第3のリブ部11の両側の側面にスラブ部12Eが設けられることによって、リブ導波路を形成している。
本実施形態の基板型光導波路素子101Cでは、上記基板型光導波路素子1と同様の効果を得ることができる。また、出力導波路34をリブ導波路により形成した場合、外部のリブ導波路に対する出力導波路34の接続が容易となり、導波路構造の変換が不要となるため、デバイス長を短くすることができる。また、上述した側壁荒れによる損失を小さくすることができる。
(第5の実施形態)
<基板型光導波路素子>
次に、第5の実施形態として、図18(A),(B),(C)に示す基板型光導波路素子101Dについて説明する。なお、図18(A)は、基板型光導波路素子101Dを示す平面図であり、図18(B)は、図18(A)中に示す線分Z1−Z1による基板型光導波路素子101Dの断面図である。図18(C)は、図18(A)中に示す線分Z2−Z2による基板型光導波路素子101Dの断面図である。また、以下の説明では、上記図1(A),(B),(C)に示す基板型光導波路素子1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
図18(A),(B),(C)に示す基板型光導波路素子101Dでは、第1のリブ部9,9Aと第2のリブ部10,10Aとの互いに対向する側面とは反対側の側面にスラブ部12Bと、第3のリブ部11の両側の側面にスラブ部12Eとがそれぞれ連続して設けられた構成となっている。それ以外は、上記基板型光導波路素子1と基本的に同じ構成を有している。すなわち、Y分岐導波路3の2つの入力導波路32,33は、第1のリブ部9,9Aと第2のリブ部10,10Aとの幅方向の両側にスラブ部12,12A,12Bが設けられることによって、リブ導波路を形成している。また、Y分岐導波路3の1つの出力導波路34は、第3のリブ部11の両側の側面にスラブ部12Eが設けられることによって、リブ導波路を形成している。
本実施形態の基板型光導波路素子101Dでは、上記基板型光導波路素子1と同様の効果を得ることができる。また、入力導波路32,33及び出力導波路34をリブ導波路により形成した場合、上記基板型光導波路素子101A及び上記基板型光導波路素子101Cと同様の効果を得ることができる。
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態として、図19(A)に示すマッハツェンダ型光変調器(MZM:Mach-Zehnder Modulator)50A及びそのモニター構造と、図19(B)に示すマッハツェンダ型光変調器50B及びそのモニター構造とについて説明する。なお、図19(A)は、マッハツェンダ型光変調器50A及びそのモニター構造を示す模式図である。図19(B)は、マッハツェンダ型光変調器50B及びそのモニター構造を示す模式図である。
図19(A)に示すマッハツェンダ型光変調器50Aは、光が入力される入力部51と、入力部51から入力された光を分波する分波部52と、分波部52で分波された光を位相変調する2つの位相変調部53,54と、2つの位相変調部53,54で位相変調された光を合波する合波部55と、合波部55で合波された光を出力する出力部56とを備えている。
図19(A)に示すマッハツェンダ型光変調器50Aでは、合波部55に、上記Y分岐導波路3を備えた基板型光導波路素子1を用いることによって、低損失な合波が可能となっている。
また、図19(A)に示すマッハツェンダ型光変調器50Aでは、出力部56の後段に位置して、TE1モードの光を分離する高次モードスプリッタ57と、高次モードスプリッタで分離されたTE1モードの光を検出する光検出器(PD:Photo Detector)58とを配置したモニター構造を採用している。
このモニター構造では、TE0モードの光(図19(A)中の矢印TE0で表す。)と、TE1モードの光(図19(A)中の矢印TE1で表す。)とが、出力部56から同時に出力されるとき、TE1モードの光を分離して検出する。具体的に、このモニター構造では、光変調器50Aで光が打ち消し合う場合にTE1モードの光が発生することを利用して、このTE1モードの光を高次モードスプリッタ57で分離した後、この分離されたTE1モードの光を光検出器58が検出し、電気信号に変換することで、光変調器50Aの駆動条件をモニターすることができる。
図19(A)に示すマッハツェンダ型光変調器50Aでは、合波部55に、上記Y分岐導波路3を備えた基板型光導波路素子1を用いることによって、TE0モードの光だけでなく、TE1モードの光も低損失に発生させることが可能である。したがって、このモニター構造では、光検出器58で検出されるTE1モードの光のパワーが大きくなるため、ノイズに強い、より正確なモニター制御を効率良く行うことができる。
図19(B)に示すマッハツェンダ型光変調器50Bは、光が入力される第1の入力部51Aと、第1の入力部51Aから入力された光を分波する第1の分波部52Aと、第1の分波部52Aで分波された光を位相変調する2つの位相変調部53,54と、2つの位相変調部53,54で位相変調された光を合波する第1の合波部55Aと、第1の合波部55Aで合波された光を出力する第1の出力部56Aとをそれぞれ有する第1の光変調部59及び第2の光変調部60とを備えている。
また、図19(B)に示すマッハツェンダ型光変調器50Bは、第1の光変調部59及び第2の光変調部60の前段に位置して、光が入力される第2の入力部51Bと、第2の入力部51Bから入力された光を第1の光変調部59の第1の入力部51A側と第2の光変調部60の第1の入力部51A側とに分波する第2の分波部52Bと、第1の光変調部59及び第2の光変調部60の後段に位置して、第1の光変調部59の第1の出力部56Aから出力された光と、第2の光変調部60の第1の出力部56Aから出力された光とを合波する第2の合波部55Bと、第2の合波部55Bで合波された光を出力する第2の出力部56Bとを備えている。
さらに、図19(B)に示すマッハツェンダ型光変調器50Bは、第1の光変調部59と第2の光変調部60との何れか一方(本実施形態では第2の光変調部60)の第1の合波部55Aから出力された光の位相差を調整する位相調整部61を備えている。
図19(B)に示すマッハツェンダ型光変調器50Bでは、第1の合波部55Aと第2の合波部55Bとの何れか(本実施形態では第2の合波部55B)に、上記Y分岐導波路3を備えた基板型光導波路素子1を用いることによって、低損失な合波が可能となっている。
また、図19(B)に示すマッハツェンダ型光変調器50Bでは、上記図19(A)に示すマッハツェンダ型光変調器50Aと同様に、第2の出力部56Bの後段に位置して、高次モードスプリッタ57と、光検出器58とを配置したモニター構造を採用している。
このモニター構造では、TE0モードの光(図19(B)中の矢印TE0で表す。)と、TE1モードの光(図19(B)中の矢印TE1で表す。)とが、第2の出力部56Bから同時に出力されるとき、TE1モードの光を分離して検出する。具体的に、このモニター構造では、光変調器50Bで光が打ち消し合う場合にTE1モードの光が発生することを利用して、このTE1モードの光を高次モードスプリッタ57で分離した後、この分離されたTE1モードの光を光検出器58が検出し、電気信号に変換することで、光変調器50Bの駆動条件をモニターすることができる。
図19(B)に示すマッハツェンダ型光変調器50Bでは、第1の合波部55Aと第2の合波部55Bとの何れか(本実施形態では第2の合波部55B)に、上記Y分岐導波路3を備えた基板型光導波路素子1を用いることによって、TE0モードの光だけでなく、TE1モードの光も低損失に発生させることが可能である。したがって、このモニター構造では、光検出器58で検出されるTE1モードの光のパワーが大きくなるため、ノイズに強い、より正確なモニター制御を効率良く行うことができる。
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態として、図20(A)に示すマッハツェンダ型光変調器70A及びそのモニター構造と、図20(B)に示すマッハツェンダ型光変調器70B及びそのモニター構造とについて説明する。なお、図20(A)は、マッハツェンダ型光変調器70A及びそのモニター構造を示す模式図である。図20(B)は、マッハツェンダ型光変調器70B及びそのモニター構造を示す模式図である。また、以下の説明では、上記図20(A),(B)に示すマッハツェンダ型光変調器50A,50Bと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
図20(A)に示すマッハツェンダ型光変調器70Aは、上記光変調器50Aの構成に加えて、更に、合波部55から出力された光の位相差を調整する位相調整部61を備えている。
図20(A)に示すマッハツェンダ型光変調器70Aでは、合波部55に、上記Y分岐導波路3を備えた基板型光導波路素子1を用いることによって、低損失な合波が可能となっている。
また、図20(A)に示すマッハツェンダ型光変調器70Aでは、出力部56の後段に位置して、TE1モードの光をTM0モードの光に変換する高次偏波変換部71と、TE0モードの光を分離する偏波ビームスプリッタ(PBS:Polarizing Beam Splitter)72と、偏波ビームスプリッタ72で分離されたTE0モードの光を検出する光検出器58とを配置したモニター構造を採用している。
このモニター構造では、TE0モードの光(図20(A)中の矢印TE0で表す。)と、TE1モードの光(図20(A)中の矢印TE1で表す。)とが、出力部56から同時に出力されるとき、TE1モードの光をTM0モード(図20(A)中の矢印TM0で表す。)の光に変換した後、TE0モードの光を分離して検出する。
具体的に、このモニター構造では、光変調器70Aで光が打ち消し合う場合にTE1モードの光が発生することを利用して、このTE1モードの光を高次偏波変換部71でTM0モードの光に変換して出力する。高次偏波変換部71としては、例えば、下記参考文献[1](Daoxin Dai, et al., "Novel concept for ultracompact polarization splitter-rotator based on silicon nanowires," Optics Express, Vol. 19, No. 11, 2011, 10940-10949)や、特願2013−135490に開示されている高次偏波変換素子を用いることができる。
高次偏波変換部71では、TE0モードの光が入力された場合は、他の導波モードへの変換は行われない。このため、光変調器70Aで発生したTE0モードの光は、高次偏波変換部71の後段にそのまま出力される。その後、高次偏波変換部71から出力されたTE0モードの光とTM0モードの光とを偏波ビームスプリッタ72で分離する。そして、分離されたTE0モードの光を光検出器58が検出し、電気信号に変換することで、光変調器70Aの駆動条件をモニターすることができる。
図20(A)に示すマッハツェンダ型光変調器70Aでは、合波部55に、上記Y分岐導波路3を備えた基板型光導波路素子1を用いることによって、TE0モードの光だけでなく、TE1モードの光も低損失に発生させることが可能である。したがって、このモニター構造では、高次偏波変換部71から出力されるモニター用のTE0モードの光と、信号用のTM0モードの光とのパワーを高く維持できる。
図20(B)に示すマッハツェンダ型光変調器70Bは、上記光変調器50Bの構成を備えている。図20(A)に示すマッハツェンダ型光変調器70Aでは、第1の合波部55Aと第2の合波部55Bとの何れか(本実施形態では第2の合波部55B)に、上記Y分岐導波路3を備えた基板型光導波路素子1を用いることによって、低損失な合波が可能となっている。
また、図20(A)に示すマッハツェンダ型光変調器70Bでは、上記図20(A)に示すマッハツェンダ型光変調器70Aと同様に、第2の出力部56Bの後段に位置して、高次偏波変換部71と、偏波ビームスプリッタ72と、光検出器58とを配置したモニター構造を採用している。
このモニター構造では、TE0モードの光(図20(B)中の矢印TE0で表す。)と、TE1モードの光(図20(B)中の矢印TE1で表す。)とが、出力部56から同時に出力されるとき、TE1モードの光をTM0モード(図20(B)中の矢印TM0で表す。)の光に変換した後、TE0モードの光を分離して検出する。
具体的に、このモニター構造では、光変調器70Bで光が打ち消し合う場合にTE1モードの光が発生することを利用して、このTE1モードの光を高次偏波変換部71でTM0モードの光に変換して出力する。高次偏波変換部71では、TE0モードの光が入力された場合は、他の導波モードへの変換は行われない。このため、光変調器70Bで発生したTE0モードの光は、高次偏波変換部71の後段にそのまま出力される。その後、高次偏波変換部71から出力されたTE0モードの光とTM0モードの光とを偏波ビームスプリッタ72で分離する。そして、分離されたTE0モードの光を光検出器58が検出し、電気信号に変換することで、光変調器70Bの駆動条件をモニターすることができる。
図20(B)に示すマッハツェンダ型光変調器70Bでは、第1の合波部55Aと第2の合波部55Bとの何れか(本実施形態では第2の合波部55B)に、上記Y分岐導波路3を備えた基板型光導波路素子1を用いることによって、TE0モードの光だけでなく、TE1モードの光も低損失に発生させることが可能である。したがって、このモニター構造では、高次偏波変換部71から出力されるモニター用のTE0モードの光と、信号用のTM0モードの光とのパワーを高く維持できる。
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態として、図21(A)に示すマッハツェンダ型出力偏波変換素子80Aと、図21(B)に示すマッハツェンダ型出力偏波変換素子80Bとについて説明する。なお、図21(A)は、マッハツェンダ型出力偏波変換素子80Aを示す模式図である。図21(B)は、マッハツェンダ型出力偏波変換素子80Bを示す模式図である。
図21(A)に示すマッハツェンダ型出力偏波変換素子80Aは、光が入力される入力部81と、入力部81から入力された光を分波する分波部82と、分波部82で分波された光を合波する合波部83と、合波部83で合波された光を出力する出力部84とを有するマッハツェンダ干渉計(MZI:Mach-Zehnder Interferometer)85を備えている。
また、図21(A)に示すマッハツェンダ型出力偏波変換素子80Aは、TE0モードの光(図21(A)中の矢印TE0で表す。)と、TE1モードの光(図21(A)中の矢印TE1で表す。)とが出力部84から同時に出力されるとき、TE1モードの光をTM0モードの光に変換する高次偏波変換部86と、分波部82で分波された光のうち何れか一方の光の位相差を調整する位相調整部87とを備えている。
図21(A)に示すマッハツェンダ型出力偏波変換素子80Aでは、マッハツェンダ干渉計85の入力部81からTE0モードの光(図21(A)中の矢印TE0で表す。)が入力され、マッハツェンダ干渉計85の出力部84から出力される光の偏波モードを位相調整部87の調整によって、TE0モードの光(図21(A)中の矢印TE0で表す。)と、TM0モードの光(図21(A)中の矢印TM0で表す。)との何れかに切り替えることができる。
図21(A)に示すマッハツェンダ型出力偏波変換素子80Aでは、合波部83に、上記Y分岐導波路3を備えた基板型光導波路素子1を用いることによって、TE0モードの光とTM0モードの光とを低損失に発生させることが可能である。したがって、この出力偏波変換素子80Aでは、最終的に出力されるTE0モードの光とTM0モードの光とのパワーを高めることができる。
図21(B)に示すマッハツェンダ型出力偏波変換素子80Bは、上記マッハツェンダ干渉計85の構成に、分波部82で分波された光を位相変調する2つの位相変調部88,89を追加することによって、光変調部(MZM)90が構成されている。
図21(B)に示すマッハツェンダ型出力偏波変換素子80Bでは、光変調部90の入力部81からTE0モードの光(図21(A)中の矢印TE0で表す。)が入力され、光変調部90の出力部84から出力される光の偏波モードを位相調整部87の調整によって、TE0モードの光(図21(A)中の矢印TE0で表す。)と、TM0モードの光(図21(A)中の矢印TM0で表す。)との何れかに切り替えることができる。
図21(B)に示すマッハツェンダ型出力偏波変換素子80Bでは、合波部83に、上記Y分岐導波路3を備えた基板型光導波路素子1を用いることによって、TE0モードの光とTM0モードの光とを低損失に発生させることが可能である。したがって、この出力偏波変換素子80Bでは、最終的に出力されるTE0モードの光とTM0モードの光とのパワーを高めることができる。
なお、上記Y分岐導波路3では、出力導波路34の幅を調整することによって、TE0モードの光とTM0モードの光との損失を調整することができる。このため、出力偏波変換素子80A,80Bでの損失を加味して、最終的に出力されるTE0モードの光とTM0モードの光とのパワーのアンバランスを解消することも可能である。
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、上記Y分岐導波路3を光の合波を行う合波導波路として用いる場合に限らず、上記Y分岐導波路3を光の分波を行う分波導波路として用いることも可能である。すなわち、上記Y分岐導波路3では、第3の導波路8、第4の導波路17及び直線導波路18から1つの入力導波路を構成し、第1の導波路6及び第1の曲げ導波路15と、第1の導波路6及び第1の曲げ導波路15とから2つの出力導波路を構成してもよい。上記Y分岐導波路3では、分波導波路として用いた場合でも、低損失な分波が可能である。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(実施例1)
実施例1は、上記実施形態1の基板型光導波路素子1に対応した実施例であり、このY分岐導波路3における各部の寸法は、図22(A),(B),(C)に示すとおりである。なお、図22(A)は、その各部の寸法を示す平面図である。図22(B)は、その各部の寸法を示す図22(A)中の線分Z3−Z3による入力導波路32,33の断面図である。図22(C)は、その各部の寸法を示す図22(A)中の線分Z4−Z4による出力導波路34の断面図である。
先ず、2つの入力導波路32,33の偶モードと奇モードとが、それぞれ出力導波路34のTE0モードとTE1モードとに変換されるときの出力導波路34(第3の導波路8)の幅X[nm]に対する過剰損失(=−変換効率[dB])の変化をシミュレーションにより求めたグラフを図23に示す。なお、本シミュレーションの条件は、上記図22(A),(B),(C)に示す寸法とする以外は、上記図4に示す場合と同様である。本シミュレーションでは、計算は有限要素法(FEM)を用いて、突合せ結合部31による変換効率を計算している(上記式(1)の近似を行わない正確な計算による。)。
なお、図23中のグラフにおいて、実線で示すTE0は、偶モードからTE0モードへの変換時の過剰損失を表し、破線で示すTE1は、奇モードからTE1モードへの変換時の過剰損失を表す。また、X=1100nmのとき、出力導波路34の一対の突出部11a,11bは無い場合である。
図23に示すグラフから、X=1100nmのときから出力導波路34の幅Xが大きるに従って、電界分布の重なりが大きくなり、過剰損失が徐々に低下しながら、ある最小値を取ることがわかる。そこから更に、出力導波路34の幅Xが大きくなると、出力導波路34のTE0モードの電界分布が広がることによって、今度は過剰損失が徐々に増加することがわかる。したがって、過剰損失を低減するためには、出力導波路34の幅Xを1100nmより大きくし(すなわち一対の突出部11a,11bがある状態とし)、なお且つ、あまり大きくし過ぎない方がよい。
そこで、TE0モードの過剰損失が最小値を取る場合(X=約1500nm)を考える。この場合の過剰損失は、偶モードからTE0モードへの変換で0.24dBとなり、奇モードからTE1モードへの変換で0.32dBとなった。
なお、TE1モードの最小値は、TE0モードが最小値を取る場合のX値とは一致しない。これは、TE1モードでは、2つの入力導波路32,33の奇モードの2つのピークが、出力導波路34のTE1モードの2つのピークに合うようなX値が最適値であるのに対し、TE0モードでは、偶モードの中心からの広がりと、その程度を考慮してX値が定まるためであり、損失の低下の理由がそれぞれ異なるためである。このため、TE0モードだけでなく、TE1モードでも低損失に動作させたい場合は、要求仕様に応じてX値を適宜調整する必要がある。
次に、X=1500nmのときの過剰損失の波長依存性について、波長に対する過剰損失の変化をシミュレーションにより求めたグラフを図24及び図25に示す。なお、図24は、偶モードからTE0モードへの変換時における過剰損失を表すグラフであり、図25は、奇モードからTE1モードへの変換時における過剰損失を表すグラフである。
また、図24及び図25に示すグラフにおいて、実線で示すTE0,TE1は、導波路幅の変化が0nmの場合(設計通りの場合)を表し、点線で示すTE0,TE1は、導波路幅が製造誤差により−30nmで変化した場合を表し、破線で示すTE0,TE1は、導波路幅が製造誤差により+30nmで変化した場合を表す。なお、導波路幅の変化は、Y分岐導波路を構成する全ての導波路幅が、幅方向の中心位置を保ったまま、対称に幅方向に変化した場合を想定している。これは、リソグラフィとエッチングによって製造する場合の典型的な製造誤差である。
図24及び図25に示すグラフから、偶モードからTE0モードへの変換時における過剰損失の変化は、波長1480〜1680nmの範囲で0.20dBとなった。また、導波路幅が±30nmで変動したとき、偶モードからTE0モードへの変換時における過剰損失の変化は、波長1480〜1680nmの範囲で最大0.027dBとなった。
この結果は、後述する比較例1で示す非特許文献1に記載の矩形導波路を用いたY分岐導波路(上記図36(A)を参照。)の場合と比べて非常に小さい。
上記実施例1では、突合せ結合部31での変換効率を計算したが、実際は、曲げ導波路やテーパ部などの損失も計算する必要がある。しかしながら、一般的な議論として、曲げ導波路の曲率を大きくしたり、テーパ部のテーパ長を長くしたりすることで、十分な低損失化が可能である。したがって、本実施例では、最も損失に影響する突合せ結合部31に限定して計算を行った。
次に、X=1500nmとし、TE0モードの光を一方の入力導波路32に入力したときの出力導波路34から出力されるTE0モードの光の過剰損失をシミュレーションにより計算した。そのときの電界分布を表すグラフを図26に示す。なお、波長は1580nmとし、計算にはFDTD(Finite-difference time-domain)法を用いた。
出力導波路34から出力されるTE0モードの光の過剰損失(3dBの原理損を除く。)は、0.23dBとなり、突合せ結合部31での過剰損失は、0.21dBとなった。このことから、突合せ結合部31の過剰損失が支配的であり、この値が全体の損失を示していることがわかる(但し、計算誤差により厳密な一致は見ていない。)。したがって、上記図23、図24及び図25に示すグラフの結果においても、突合せ結合部31の過剰損失を全体の損失と見なしても差し支えない。
なお、図26に示すグラフでは、突合せ結合部31においてTE0モードの光だけでなくTE1モードの光も発生しているため、合波後の電界分布は、TE0モードの光とTE1モードの光とが重畳したものとなり、複雑な様相を呈している。
次に、合波後の電界分布をより明確に示すため、X=1500nmとし、TE0モードの光を2つの入力導波路32,33に入力したときの位相差が0radの場合の電界分布をシミュレーションにより求めたグラフを図27に示し、位相差がπradの場合の電界分布をシミュレーションにより求めたグラフを図28に示す。
図27に示すグラフから、位相差が0radの場合は、2つの入力導波路32,33に入力した奇モードの位相が逆相になるため、互いに打ち消し合う。一方、偶モードの位相は同相となるため、互いに強め合う。その結果、出力導波路34では、TE1モードの光が出力されず、合波後のTE0モードの光を明確に見ることができる。一方、図28に示すグラフから、位相差がπradの場合は、出力導波路34において、TE0モードの光が出力されず、合波後のTE1モードの光を明確に見ることができる。
以上のように、実施例1の結果から、低損失な合波が可能であることが明らかとなった。
(比較例1)
比較例1は、上記非特許文献1に記載の矩形導波路を用いたY分岐導波路に対応した比較例であり、このY分岐導波路における各部の寸法は、図29(A),(B),(C)に示すとおりである。なお、図29(A)は、その各部の寸法を示す平面図である。図29(B)は、その各部の寸法を示す図29(A)中の線分Z3’−Z3’による入力導波路の断面図である。図29(C)は、その各部の寸法を示す図29(A)中の線分Z4’−Z4’による出力導波路の断面図である。すなわち、比較例1におけるY分岐導波路の各部の寸法は、実施例1におけるY分岐導波路の各部の寸法と同じである。また、過剰損失の計算は、突合せ結合部31のものを用いている。
先ず、上記図23に示す場合と同様に、上記非特許文献1に記載の矩形導波路を用いたY分岐導波路について、出力導波路の幅X[nm]に対する過剰損失の変化をシミュレーションにより求めたグラフを図30に示す。なお、図30に示すグラフの見方は、上記図23に示す場合と同様である。
図30に示すグラフから、出力導波路の幅X[nm]に対する過剰損失の変化は、上記図23に示すグラフと同様の傾向が見られた。具体的には、X=約1850nmのとき、TE0モードの過剰損失が最小値を取り、このときの過剰損失は、偶モードからTE0モードへの変換で0.63dB、奇モードからTE1モードへの変換で0.81dBとなった。
この結果から、実施例1のY分岐導波路では、比較例1のY分岐導波路に比べて、低損損失での変換が可能であることがわかる。これは、実施例1のY分岐導波路の方が、2つの入力導波路の結合係数が大きく、偶モードが中央に寄った電界分布を持つためである。
また、TE0モードの過剰損失が最小となるX値は、実施例1では約1500nmであったのに対し、比較例1では約1850nmと大きくなっている。これは、矩形導波路では結合が弱く、偶モードの電界分布が中央より広がった点に分布するため、出力導波路の幅をより広めて、TE0モードの分布を広げた場合の方が、結合が高まるためである。
一方、奇モードでは、その電界分布の違いから最小となるX値は、実施例1と比較例1との間で偶モードほどの差は生じていない。このため、TE0モード及びTE1モードの過剰損失が最小となるX値は、その差が実施例1よりも比較例1の方が大きくなっている。したがって、実施例1では、比較例1よりもTE0モード及びTE1モードの光を低損失に変換することが可能である(上記効果3を参照。)。
次に、上記図24及び図25に示す場合と同様に、上記非特許文献1に記載の矩形導波路を用いたY分岐導波路について、波長に対する過剰損失の変化をシミュレーションにより求めたグラフを図31及び図32に示す。なお、図31は、偶モードからTE0モードへの変換時における過剰損失を表すグラフであり、図32は、奇モードからTE1モードへの変換時における過剰損失を表すグラフである。なお、図31及び図32に示すグラフの見方は、上記図24及び図25に示す場合と同様である。
図31及び図32に示すグラフから、偶モードからTE0モードへの変換時における過剰損失の変化は、波長1480〜1680nmの範囲で0.61dBとなった。また、導波路幅が±30nmで変動したとき、偶モードからTE0モードへの変換時における過剰損失の変化は、波長1480〜1680nmの範囲で最大0.19dBとなった。
この結果から、実施例1では、比較例1に比べて、製造誤差に強いことがわかる。これは、上記効果2による。
したがって、実施例1のY分岐導波路では、比較例1のY分岐導波路よりも優れていることが明らかとなった。
(実施例2)
実施例2は、上記第2の実施形態の基板型光導波路素子101に対応した実施例であり、このY分岐導波路における各部の寸法は、図33(A),(B),(C)に示すとおりである。なお、図33(A)は、その各部の寸法を示す平面図である。図33(B)は、その各部の寸法を示す図33(A)中の線分Z5−Z5による断面図である。図33(C)は、その各部の寸法を示す図33(A)中の線分Z6−Z6による断面図である。すなわち、実施例2におけるY分岐導波路の各部の寸法は、実施例1におけるY分岐導波路の各部の寸法と同じである。また、過剰損失の計算は、突合せ結合部31のものを用いている。
上記図23に示す場合と同様に、実施例2のY分岐導波路について、出力導波路の幅X[nm]に対する過剰損失の変化をシミュレーションにより求めたグラフを図34に示す。なお、図34に示すグラフの見方は、上記図23に示す場合と同様である。
図34に示すグラフから、出力導波路の幅X[nm]に対する過剰損失の変化は、上記図23に示すグラフと同様の傾向が見られた。具体的には、X=約1900nmのとき、TE0モードの過剰損失が最小値を取り、このときの過剰損失は、偶モードからTE0モードへの変換で0.32dB、奇モードからTE1モードへの変換で0.49dBとなった。
この結果から、実施例2のY分岐導波路では、比較例1のY分岐導波路に比べて、低損損失での変換が可能であることがわかる。一方、実施例1のY分岐導波路に比べて、損失が大きいことがわかる。