JP2015169912A - 基板型導波路素子、及び、光変調器 - Google Patents

基板型導波路素子、及び、光変調器 Download PDF

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Abstract

【課題】第1のコアに入力されたTM偏波を第2のコアから出力する基板型導波路素子において、設計波長から外れたTM偏波に生じる損失を増加させることなく、偏波消光比を上昇できる基板型導波路素子を提供する。
【解決手段】第1のコア13の第2のコア14と並走する並走区間の少なくとも一部の区間における断面を、四角形の主要部13aと主要部13aから突出した四角形の突出部13bとからなる階段形状とし、第2のコア14の第1のコア13と並走する並走区間の少なくとも一部の区間における断面を、四角形の主要部14aと主要部14aから突出した四角形の突出部14bとからなる階段形状とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、第1のコアに入力されたTM偏波を第2のコアから出力する基板型導波路素子に関する。また、そのような基板型導波路素子を備えた光変調器に関する。
光通信により伝送される情報量は増加の一途を辿っている。こうした情報量の増加に対応するために、信号速度を高速化したり、波長多重によりチャンネル数を増やしたりする対策が進められている。特に、高速情報通信を目的とした次世代の100Gbpsデジタルコヒーレント伝送技術では、偏波多重によって単位時間あたりの情報量を倍増させることが検討されている。ここで、偏波多重とは、電界が互いに直交する2つの偏波(例えば、TM偏波とTE偏波)の各々に異なる情報を重畳することを指す。
しかしながら、偏波多重を行う場合、光変調器の構成が複雑化し、その結果、装置サイズの大型化や製造コストの上昇などの問題を招来する。そこで、加工が容易であり、かつ、集積化による装置サイズの小型化、及び、大量生産による製造コストの低下が可能なシリコン製の導波路を備えた基板型導波路素子によって、波多重方を行う光変調器を実現することが検討されている。
偏波多重を行う光変調器には、例えば、或る情報が重畳されたTM偏波と他の情報が重畳されたTE偏波とを合波する偏波ビームコンバイナが搭載される。基板型導波路素子をこのような偏波ビームコンバイナとして機能させる技術としては、例えば、非特許文献1に記載の技術が知られている。
図8に特許文献1に記載の基板型導波路素子5を示す。図8(a)は、基板型導波路素子5の断面図であり、図8(b)〜図8(c)は、基板型導波路素子5の平面図(下部クラッド51及び上部クラッド52の図示省略)である。
基板型導波路素子5は、図8(a)に示すように、シリカ(SiO2)製の下部クラッド51と、下部クラッド51上に形成されたシリコン(Si)製の2つのコア53〜54と、2つのコア53〜54を埋設するように下部クラッド51上に積層されたシリカ製の上部クラッド52とにより構成されている。2つのコア53〜54は、図8(a)に示すように、互いに合同な長方形の断面を有し、図8(b)〜図8(c)に示すように、一部の区間(同図において点線で囲まれた区間)において側面同士が互いに近接するように配置される。2つのコア53〜54の側面同士が互いに近接する区間のことを、以下、「並走区間」とも記載する。
基板型導波路素子5においては、2つのコア53〜54の並走区間の長さLがTM0偏波に対する結合長に一致するように設計されている。このため、図8(b)に示すように、第1のコア53にTM0偏波とTE0偏波とを入力すると、TM0偏波が第2のコア54から出力され、TE0偏波が第1のコア53から出力される。すなわち、基板型導波路素子5は、TM0偏波とTE0偏波とに分波する偏波ビームスプリッタとして機能する。また、図8(c)に示すように、第1のコア53にTM0偏波を入力し、第2のコア54にTE0偏波を入力すると、TM0偏波とTE0偏波とが第2のコア54から出力される。すなわち、基板型導波路素子5は、TM0偏波とTE0偏波とを合波する偏波ビームコンバイナとしても機能する。
なお、本明細書において、「TE偏波」とは、コアを伝播する光の進行方向に直交する方向のうち、上部クラッドと下部クラッドとの境界面に平行な方向の電界成分が主となる偏波モードのことを指す。特に、実効屈折率が最大となるTE偏波のことを、「TE0偏波」と呼ぶ。また、本明細書において、「TM偏波」とは、コアを伝播する光の進行方向に直交する方向のうち、上部クラッドと下部クラッドとの境界面に垂直な方向の電界成分が主となる偏波モードのことを指す。特に、実効屈折率が最大となるTM偏波のことを、「TM0偏波」と呼ぶ。
基板型導波路素子5においては、上述したように、第1のコア53に入力されたTM0偏波が第2のコア54から出力されるのに対して、第1のコア53に入力されたTE0偏波は主に第1のコア53から出力され、第2のコア54に入力されたTE0偏波は主に第2のコア54から出力される。以下、その理由を説明する。
まず、各偏波モード(以下、着目する偏波モードのことを「対象モード」と記載する)に対する基板型導波路素子5の結合効率Tは、2つのコア53〜54の並走区間の長さLの関数として、概ね(1)式によって与えられる。ここで、「結合効率」とは、第1のコア53に入力された対象モードのパワーに対する、第2のコア54から出力される対象モードのパワーの比(あるいは、第2のコア54に入力された対象モードのパワーに対する、第1のコア53から出力される対象モードのパワーの比)を意味する。(1)式におけるF及びqの定義は、(2)式及び(3)式に示すとおりである。
Figure 2015169912
Figure 2015169912
Figure 2015169912
ここで、δは、第1のコア53を導波する対象モードの実効屈折率(第2のコア54が存在しない場合の実効屈折率)と第2のコア54を導波する対象モードの実効屈折率(第1のコア53が存在しない場合の実効屈折率)との差をΔN、対象モードの波長をλとして、(4)式により定義される係数である。
Figure 2015169912
また、χ(「結合係数」と呼ばれる)は、第1のコア53のみが存在する場合(第2のコア54が存在しない場合)のコア断面の屈折率分布をN、第1のコア53及び第2のコア54の両方が存在する場合のコア断面の屈折率分布をN、第1のコア53を導波する対象モードの電界ベクトルをE、第2のコア54を導波する対象モードの電界ベクトルをEとして、(5)式により与えられる。
Figure 2015169912
なお、結合係数χは、第1のコア53を導波する対象モードの電界ベクトルEと、第2のコア54を導波する対象モードの電界ベクトルEとの内積を、コア断面において積分したものである。したがって、2つのコア53〜54の各々を導波する対象モードのクラッドへの浸み出しが大きいほど、結合係数χは大きくなる。2つのコア53〜54の各々を導波する対象モード間の光結合が強いとは、(5)式により定義された結合係数χが大きくなることに他ならない。
また、(1)式に現れるsin(qL)は、2つのコア53〜54の並走区間の長さLが(6)式により定義されるLに一致するときに1になる。(6)式により定義されるLを「結合長」と呼ぶ。なお、結合長Lは、偏波モード毎に与えられる。以下、TM0偏波に対する結合長をL(TM0)と記載し、TE0偏波に対する結合長をL(TE0)と記載する。
Figure 2015169912
基板型導波路素子5において、第1のコア53に入力されたTM0偏波が第2のコア54から出力される理由は、以下のとおりである。すなわち、基板型導波路素子5においては、2つのコア53〜54の断面形状が同一である。このため、各偏波モードに対する2つのコア53〜54の実効屈折率差ΔNは0になる。したがって、(1)式に現れるFは1になる。また、基板型導波路素子5においては、2つのコア53〜54の並走区間の長さLがTM0偏波に対する結合長L(TM0)に一致するように設計されている。したがって、(1)式に現れるsin(qL)は1になる。このため、TM0偏波に対する結合効率T(TM0)は1になる。これは、第1のコア53に入力されたTM0偏波が漏れなく第2のコア54から出力されることを意味する。
ただし、各偏波モードに対する結合長Lは、波長依存性を有している。例えば、波長λが長くなると、2つのコア53〜54の各々を導波するTM0偏波の浸み出しが大きくなる。このため、波長λが長くなると、2つのコア53〜54の各々を導波するTM0偏波間の光結合が強くなり、その結果、TM0偏波に対する結合長L(TM0)は短くなる。ところで、2つのコア53〜54の並走区間の長さLは、予め定められた設計波長のTM0偏波に対する結合長L(TM0)に一致するように設計される。したがって、設計波長から外れたTM0偏波に損失が生じることは避けられない。ただし、2つのコア53〜54の各々を導波するTM0偏波間の光結合が強くなるほど、結合長L(TM0)の波長依存性は小さくなる。したがって、設計波長から外れたTM0偏波に生じる損失を小さく抑えるためには、2つのコア53〜54の各々を導波するTM0偏波間の光結合を強くすることが好ましい。
基板型導波路素子5において、第1のコア53に入力されたTE0偏波が主に第1のコア53から出力され、第2のコア54に入力されたTE0偏波が主に第2のコア54から出力される理由は、以下のとおりである。すなわち、TE0偏波に対する結合長L(TE0)は、TM0偏波に対する結合長L(TM0)とは一致せず、TM0偏波に対する結合長L(TM0)よりも長くなる。このため、TE0偏波に対する結合効率T(TE0)は、(7)式に示すように、TM0偏波に対する結合効率T(TM0)=1よりも小さくなる。このため、第1のコア53に入力されたTE0偏波は、その一部分のみが第2のコア54から出力され、残りの部分は第1のコア53から出力されることになる。同様に、第2のコア54に入力されたTE偏波は、その一部分のみが第2のコア54から出力され、残りこの部分は第2のコア54から出力されることになる。
Figure 2015169912
Hiroshi Fukuda, et al., "Ultrasmall polarization splitter based on silicon wire waveguides," OPTICS EXPRESS, Vol. 14, No. 25, 12401(2006).
従来の基板型導波路素子5を偏波ビームコンバイナとして機能させる際に重要となる性能指標としては、TM0偏波の損失及び偏波消光比が挙げられる。
TM0偏波の損失は、第2のコア54から出力されるTM0偏波のパワーが、第1のコア53に入力されるTM0偏波のパワーと比べてどれだけ減少するかを示す指標であり、その値は小さい方が好ましい。
一方、偏波消光比は、図9に示すように、同じパワーのTM0偏波とTE0偏波とを第1のコア53に入力したときに、第2のコア54から出力されるTM0偏波のパワーと比べて第2のコア54から出力されるTE0偏波のパワーがどれだけ小さくなるかを示す指標であり、(8)式により定義される。なお、(8)式における「出力ポート」とは、第2のコア54の出力端のことを指す。
Figure 2015169912
偏波消光比が低くなるほど、信号として第2のコア54に入力されたTE0偏波は、TM0偏波に混入したノイズとして第1のコア53に入力されたTE0偏波に汚染され易くなる。したがって、偏波消光比は、高い方が望ましい。
偏波ビームコンバイナ5の偏波消光比を向上させる第1の方法としては、非特許文献1に記載のように、複数の偏波ビームコンバイナ5を連結する方法が挙げられる。この方法を採用する場合、連結する偏波ビームコンバイナ5の段数に応じて偏波消光比が向上する。しかしながら、この方法を採用する場合、設計波長から外れたTM0偏波を一方のコアから他方のコアへと十分に遷移させることができず、その結果、広い波長範囲に亘ってTM0偏波の損失を小さく抑えることができない。また、連結する偏波ビームコンバイナ5の段数の増加に応じた装置サイズの大型化も避けられない。
また、偏波ビームコンバイナ5の偏波消光比を向上させる第2の方法としては、2つのコア53〜54の各々の幅を大きくしたり、2つのコア53〜54の間隔を広くしたりする方法が挙げられる。2つのコア53〜54の各々の幅を大きくすると、2つのコア53〜54の各々へのTE0偏波の閉じ込め及びTM0の偏波の閉じ込めが強くなる。この際、TE0偏波の閉じ込めが強くなる程度が、TM0偏波の閉じ込めが強くなる程度を上回るので、偏波消光比が向上する。また、2つのコア53〜54の間隔を広げると、2つのコア53〜54の各々を導波するTE0偏波間の光結合及びTM0偏波間の光結合が弱くなる。この際、TE0偏波間の光結合が弱まる程度が、TE0偏波間の光結合が弱まる程度を上回るので、偏波消光比が向上する。しかしながら、2つのコア53〜54の各々の幅を大きくしたり、2つのコア53〜54の間隔を広くしたりすると、上述したように、2つのコア53〜54の各々へのTM0偏波の閉じ込めが強くなったり、2つのコア53〜54の各々を導波するTM0偏波同士の光結合が弱くなったりすることが避けられない。このため、設計波長から外れたTM0偏波に生じる損失が大きくなるという問題を生じる。
なお、上記の問題は、TM0偏波とTE0偏波とを合波する場合に限らず、より高次の偏波の偏波を合波する場合にも生じ得る。すなわち、TM偏波(次数を問わず)とTE偏波(次数を問わず)とを合波する偏波ビームコンバイナにおいても、上記の問題と同様の問題が生じ得る。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1のコアに入力されたTM偏波を第2のコアから出力する基板型導波路素子において、設計波長から外れたTM偏波に生じる損失を増加させることなく、偏波消光比を上昇させること、あるいは、偏波消光比を低下させることなく、設計波長から外れたTM偏波に生じる損失を減少させることにある。
本発明に係る基板型導波路素子は、下部クラッドと、上記下部クラッド上に形成された第1のコア及び第2のコアと、上記第1のコア及び上記第2のコアを埋設するように上記下部クラッド上に積層された上部クラッドとを備え、上記第1のコアに入力されたTM偏波を上記第2のコアから出力する基板型導波路素子であって、上記第1のコアは、上記第2のコアと並走する並走区間の少なくとも一部において、四角形の主要部と該主要部から突出した四角形の突出部であって、上記第2のコアから遠ざかる方向に突出した突出部とからなる階段形状の断面を有しており、上記第2のコアは、上記第1のコアと並走する並走区間の少なくとも一部において、四角形の主要部と該主要部から突出した四角形の突出部であって、上記第1のコアから遠ざかる方向に突出した突出部とからなる階段形状の断面を有している、ことを特徴とする。
上記のように、第1のコアの断面を第1のコアの突出部が第2のコアから遠ざかる方向に突出した階段形状とし、かつ、第2のコアの断面を第2のコアの突出部が第1のコアから遠ざかる方向に突出した階段形状とすることにより、各コアへのTE偏波の閉じ込め及びTM偏波の閉じ込めが強くなる。この際、TE偏波の閉じ込めが強くなる程度が、TM偏波の閉じ込めが強くなる程度を上回る。このため、各コアを伝播するTM偏波同士の光結合に比べて、各コアを伝播するTE偏波同士の光結合を弱くすることが可能になる。したがって、設計波長から外れたTM偏波の損失を増加させることなく、偏波消光比を上昇させること、あるいは、偏波消光比を低下させることなく、設計波長から外れたTM偏波の損失を低下させることが可能となる。
本発明に係る基板型導波路素子は、例えば、上記第1のコアに入力されたTM0偏波を上記第2のコアから出力する基板型導波路素子である。
本発明に係る基板型導波路素子において、上記第1のコアと上記第2のコアとの間の距離は、上記第1のコアの入力端から遠ざかるに従って次第に小さくなるか、又は、上記第1のコアの出力端に近づくに従って次第に大きくなる、ことが好ましい。
上記の構成によれば、第1のコア又は第2のコアにおいて生じ得る反射を抑制することができる。
本発明に係る基板型導波路素子において、上記第1のコアの突出部の幅は、上記第1のコアの入力端から遠ざかるに従って次第に大きくなるか、又は、上記第1のコアの出力端に近づくに従って次第に小さくなる、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記第1のコアを四角形の断面を有する導波路と接続する際に生じ得る損失を抑制することが可能である。
本発明に係る基板型導波路素子において、上記第2のコアの突出部の幅は、上記第2のコアの入力端から遠ざかるに従って次第に大きくなるか、又は、上記第2のコアの出力端に近づくに従って次第に小さくなる、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記第2のコアを四角形の断面を有する導波路と接続する際に生じ得る損失を抑制することが可能である。
本発明に係る基板型導波路素子において、上記上部クラッド及び上記下部クラッドは、シリカ製であり、上記第1のコア及び上記第2のコアは、シリコン製である、ことが好ましい。
上記の構成によれば、加工が容易であり、かつ、集積化による装置サイズの小型化、及び、大量生産による製造コストの低下が可能な基板型導波路素子を実現することができる。
また、上記の構成によれば、上部クラッド、下部クラッド、第1のコア、及び第2のコアが何れもシリカ製である石英系平面光導波路(PLC:planar lightwave circuit)と比べて、より高い偏波消光比を得ることができる。
クラッドがシリカ(屈折率1.44程度)製である場合、コアをシリコン(屈折率3.44程度)製としたとき(上記の構成)の方がコアをシリカ製としたとき(石英系平面光導波路)よりも高い偏波消光比を得られる理由は、以下のとおりである。すなわち、シリコン製のコアとシリカ製のクラッドとの比屈折率差は、シリカ製のコアとシリカ製のクラッドとの比屈折率差よりも大きくなる。比屈折率差が大きいほど、コア構造の変化に伴う閉じ込めの強さの変化は顕著となる。したがって、クラッドがシリカ製である場合、第1のコア及び第2のコアに突出部を設けた際のTE偏波とTM偏波の閉じ込めの強さの差は、コアをシリコン製としたときの方がコアをシリカ製としたときよりも大きくなる。これは、クラッドがシリカ製である場合、コアをシリコン製としたときの方がコアをシリカ製としたときよりも高い偏波消光比が得られることを意味する。
なお、TM偏波とTE偏波とを合波する偏波ビームコンバイナとして、上記の基板型導波路素子を備えている光変調器も本発明の範疇に含まれる。このような光変調器においても、上記の基板型導波路素子と同様の効果が得られる。
本発明によれば、設計波長から外れたTM偏波に生じる損失を増加させることなく、偏波消光比を上昇させること、あるいは、偏波消光比を低下させることなく、設計波長から外れたTM偏波に生じる損失を減少させることができる。
本発明の一実施形態に係る基板型導波路素子の構成を示す斜視図である。 (a)は、図1に示す基板型導波路素子が備える第1のコアを導波するTE0偏波(波長1580nm)の電界(Ex成分)分布を示すグラフである。(b)は、図1に示す基板型導波路素子が備える第1のコアを導波するTM0偏波(波長1580nm)の電界(Ey成分)分布を示すグラフである。(c)は、(a)及び(b)に示す電界分布を得るために用いた第1のコアの形状を示す断面図である。 (a)は、実施例に係る基板型導波路素子の平面図であり、(b)は、その基板型導波路素子の断面図である。 (a)は、比較例に係る基板型導波路素子の平面図であり、(b)は、その基板型導波路素子の断面図である。 (a)は、図3に示す基板型導波路素子(実施例)の偏波消光比を、2つのコアの突出部の幅Wsを変えながら算出することにより得たグラフである。(b)は、図4に示す基板型導波路素子(比較例)の偏波消光比を、2つのコアの幅Wを変えながら算出することにより得たグラフである。(c)は、図3に示す基板型導波路素子(実施例)及び図4に示す基板型導波路素子(比較例)におけるTM0偏波の損失(−10×log10(結合効率))を、入力するTM0偏波の波長を変えながら算出することにより得られたグラフである。(d)は、図3に示す基板型導波路素子(実施例)及び図4に示す基板型導波路素子(比較例)における偏波消光比を、入力するTM0偏波及びTE0偏波の波長を変えながら算出することにより得られたグラフである。 (a)は、図1に示す基板型導波路素子の第1の変形例を示す平面図であり、(b)は、図1に示す基板型導波路素子の第2の変形例を示す平面図である。 図1に示す基板型導波路素子を備えた光変調器の構成を示すブロック図である。 (a)は、従来の基板型導波路素子の断面図であり、(b)及び(c)は、その基板型導波路素子の平面図である。 図8に示す基板型導波路素子の平面図である。
本発明の一実施形態に係る基板型導波路素子について、図面に基づいて説明すれば以下のとおりである。なお、本実施形態においては、TM0偏波とTE0偏波とを合波する基板型導波路素子については説明するが、本発明の適用範囲は、これに限定されない。すなわち、本発明は、高次のTM偏波とTE偏波とを合波する基板型導波路素子にも適用することが可能である。この場合であっても、本実施形態に係る基板型導波路素子と同様の効果を得ることができる。
〔本実施形態に係る基板型導波路素子の構成〕
まず、本実施形態に係る基板型導波路素子1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、基板型導波路素子1の構成を示す斜視図である。
基板型導波路素子1は、図1に示すように、シリカ(SiO2)製の下部クラッド11と、下部クラッド11上に形成されたシリコン(Si)製の2つのコア13〜14と、2つのコア13〜14を埋設するように下部クラッド11上に積層されたシリカ(SiO2)製の上部クラッド12とを備えている。2つのコア13〜14は、図示した区間において側面同士が互いに近接するように配置される。2つのコア13〜14の側面同士が互いに近接する区間のことを、以下、「並走区間」とも記載する。
基板型導波路素子1においては、予め定められた設計波長において、以下の条件(1)〜(3)を満たすように、2つのコア13〜14が設計されている。
(1)2つのコア13〜14における、それぞれのTM0偏波の実効屈折率が一致する。
(2)2つのコア13〜14の並走区間の長さがTM0偏波の結合長L(TM0)に一致する。
(3)TE0偏波の2つのコア13〜14への閉じ込めがTM0偏波の2つのコア13〜14への閉じ込めと比べて強い。
条件(1)及び条件(2)を満たすことによって、第1のコア13に入力されたTM0偏波を全て第2のコア14から出力することが可能になる。その理由は、条件(1)を満たすことによって、(1)式に現れるFが1になり、条件(2)を満たすことによって、(1)式に現れるsin(qL)が1になるので、(1)式により定義される結合効率Tが1になるからである。
また、条件(3)を満たすことによって、2つのコア13〜14を伝播するTM偏波同士の光結合に比べて、2つのコア13〜14を伝播するTE偏波同士の光結合を弱くすることが可能になる。これにより、設計波長から外れたTM偏波の損失を増加させることなく、偏波消光比を上昇させること、あるいは、偏波消光比を低下させることなく、設計波長から外れたTM偏波の損失を低下させることが可能となる。
なお、条件(1)に関して、2つのコア13〜14における、それぞれのTM0偏波の実効屈折率は、(4)式により定義されるδが(5)式により定義されるχよりも小さくなる程度に一致していれば十分である。
基板型導波路素子1においては、条件(3)を満たすべく、第1のコア13及び第2のコア14の断面形状を以下のものとしている。すなわち、第1のコア13の断面形状を、長方形の主要部13aと、第2のコア14から遠ざかる方向に向かって主要部13aから突出した、主要部13aよりも高さの低い長方形の突出部13bとからなる階段形状としている。また、第2のコア14の断面形状を、長方形の主要部14aと、第1のコア13から遠ざかる方向に向かって主要部14aから突出した、主要部14aよりも高さの低い長方形の突出部14bとからなる階段形状としている。
また、基板型導波路素子1においては、条件(1)を満たすべく、第1のコア13の断面と第2のコア14の断面とを互いに合同にしている。なお、第1のコア13の断面と第2のコア14の断面とを互いに合同にすることによって、基板型導波路素子1を製造する際に必要となるエッチング回数を最小化する(2回にする)ことができるという副次的な効果が得られる。なぜなら、第1のコア13の主要部13aの高さと第2のコア14の主要部14aの高さとが一致し、かつ、第1のコア13の突出部13bの高さと第2のコア14の突出部14bの高さとが一致するからである。
次に、第1のコア13の断面及び第2のコア14の断面を階段形状とすることによって、条件(3)が満たされる理由について、図2を参照して説明する。図2(a)は、第1のコア13を導波するTE0偏波(波長1580nm)の電界(Ex成分)分布を示すグラフであり、図2(b)は、第1のコア13を導波するTM0偏波(波長1580nm)の電界(Ey成分)分布を示すグラフである。図2(c)は、図2(a)及び図2(b)に示す電界分布を得るために用いた第1のコア13の形状を示す断面図である。
図2(a)に示すグラフを参照すると、階段形状の断面を有するコア13,14を導波するTE0偏波に関して、突出部13b,14bに形成される電界が強い(TM0偏波と比較して強い)こと、及び、コア外への電界の浸み出し、特に、突出部13b,14b側と反対側への(すなわち、他方のコア14,13側への)電界の浸み出しが少ないことが見てとれる。また、図2(b)に示すグラフを参照すると、階段形状の断面を有するコア13,14を伝播するTM0偏波に関して、突出部13b,14bに形成される電界が弱い(TE0偏波と比較して弱い)こと、及び、コア外への電界の浸み出し、特に、突出部13b,14b側と反対側への(すなわち、他方のコア14,13側への)電界の浸み出しが多いことが見て取れる。
ここで注目すべきは、第1のコア13及び第2のコア14の何れにおいても、TE0偏波のコア外への浸み出しがTM0偏波のコア外への浸み出しと比べて有意に少ない点、換言すれば、TE0偏波のコア内への閉じ込めがTM0偏波のコア内への閉じ込めと比べて有意に強い点である。これにより、2つのコア13〜14を伝播するTM偏波同士の光結合に比べて、2つのコア13〜14を伝播するTE偏波同士の光結合を弱くすることが可能になる。
〔補足事項〕
従来の基板型導波路素子5において、1段分の方向性結合器で偏波消光比を向上するための方法としては、コア53〜54の幅を広げる、または、コア53〜54の間隔を広げる、という方法が挙げられる。このうち、基板型導波路素子1に関係する方法は、コア53〜54の幅を増やす方法であるため、以下に比較として取り上げる。なお、コア53〜54の間隔を広げる方法は、一般的な方向性結合器で使用可能なため、ここでは取り上げない。
コア53〜54の幅を広げることにより、偏波消光比を上げることができる理由について説明する。TE0の電界は、幅方向(x方向)の電界成分(Ex)が主であり、TM0の電界は、高さ方向(y方向)の電界成分(Ey)が主である。一般的にコアを大きくすると、光(電界)の閉じ込めが大きくなるが、特にコア53〜54の幅を大きくした場合には、TM0よりも、TE0の方がその傾向が大きい。これは、電界のコアとクラッドとの間の境界条件から説明できる。マクスウェルの方程式より、コア側面(左右両方)における電界の境界条件は、以下の式(9)、及び式(10)のように表される。
Figure 2015169912
Figure 2015169912
ここで、Ex cl(側面)は、側面境界上のクラッド側のEx、Ex co(側面)は、側面境界上のコア側のEx、Ey cl(側面)は、側面境界上のクラッド側のEy、Ey co(側面)は、側面境界上のコア側のEy、Ncoは、コアの屈折率、Nclは、クラッドの屈折率をそれぞれ表している。
TE0は、式(9)が大きく関係し、TM0は、式(10)が大きく関係する。式(9)を見ると、Nco>Nclである為、コア側面境界でExは不連続になり、Ex cl(側面)>Ex co(側面)より、クラッド側に大きく電界が分布する。その為、コア53〜54の幅が大きくなると、外側に大きく分布していたExがコアに分布することになり、コアに大きく電界が閉じ込められる。一方で、式(10)を見ると、Eyはコア側面境界で連続的に変化する。その為、コア53〜54の幅の変化に対して、Ex成分ほどの変化はない。従って、コア53〜54の幅を大きくすると、Eyが主電界であるTM0に比べて、Exが主電界であるTE0の方が、コアへの光閉じ込めが大きくなる。その結果、結合係数χの減少量が、TM0よりもTE0の方が大きくなり、偏波消光比を上げることが出来る。しかしながら、上記の方法ではTM0の結合係数χも減少する為、広い波長帯域にわたって、低い損失を維持することができない。
そこで、基板型導波路素子1は、第1のコア13及び第2のコア14の幅を広げるのではなく、第1のコア13及び第2のコア14の断面形状を階段形状とすることにより、上記の問題を解決した。これは、以下の理由による。まず、高さ方向の閉じ込めについて述べる。マクスウェルの方程式より、コア上下面における電界の境界条件は、以下の式(11)、及び式(12)のように表される。
Figure 2015169912
Figure 2015169912
ここで、Ex cl(上下面)は、上下面境界上のクラッド側のEx、Ex co(上下面)は、上下面境界上のコア側のEx、Ey cl(上下面)は、上下面境界上のクラッド側のEy、Ey co(上下面)は、上下面境界上のコア側のEyをそれぞれ表している。
コアの上下面境界上においては、コアの側面境界上とは異なり、Eyが不連続で、かつ、Exが連続的である。その為、高さ方向の変化に関しては、TE0よりもTM0の方が大きく、コアの高さが低いと、コアへの電界の閉じ込めが小さくなる。従って、コアの断面を階段形状とすることにより、TM0の閉じ込めは弱くなり、TE0の閉じ込めは強くなる効果が得られる。
〔副次的な効果と変形例〕
なお、本実施形態に係る基板型導波路素子1は、上述した効果の他に、以下の副次的な効果も奏する。
(1)第1のコア13において、突出部13bの高さ(厚み)は、主要部13aの高さ(厚み)よりも低く、かつ、第2のコア14において、突出部14bの高さ(厚み)は、主要部14aの高さ(厚み)よりも低ければ(薄ければ)よい。したがって、例えば、リブ型位相変調器を含むシリコン光変調器の一部として基板型導波路素子1を構成する場合に、第1のコア13の突出部13bの高さ、及び、第2のコア14の突出部14bの高さを、リブ型位相変調器のリブの高さと一致させることができる。この場合、第1のコア13の突出部13b及び第2のコア14の突出部14bをリブ型位相変調器のリブと一括して形成することができるので、シリコン光変調器の製造が容易になる。
(2)エッチングにより2つのコア13〜14を形成する場合、これら2つのコア13〜14の形状がマスク形状と相違することがある。この際、これら2つのコア13〜14における製造誤差の生じ方は、互いに対称となることが一般的である。基板型導波路素子1は、このような左右対称な製造誤差に強い(製造誤差が結合効率Tに与える影響が小さい)。なぜなら、左右対称な製造誤差が生じても、2つのコア13〜14の合同性が崩れることはないので、(4)式により定義されるδを0に保つことができ、その結果、結合効率Tを変化させる因子が(5)式により定義されるχのみに限定されるからである。また、エッチングによりコア13〜14を形成する場合、コア13〜14の断面の角が直角にならず、コア13〜14の側面が傾斜することがある。しかしながら、コア13〜14の側面が傾斜する場合であっても、その傾斜は左右対称に生じるので、本発明の効果が損なわれることはない。
(3)基板型導波路素子1は、左右非対称な製造誤差にも強い。左右非対称な製造誤差としては、階段状のコアを作製するために行う2回のエッチングの各々に用いるマスクのずれが挙げられる。このようなマスクのずれが生じた場合、コア13〜14の1段目が2段目に対してずれてしまい、コア13〜14の断面形状が左右非対象になる。そうすると、実効屈折率差ΔNが0にならず、結合効率が低下し得る。しかしながら、第1のコア13の突出部13b、及び、第2のコア14の突出部14bは、TM0偏波(高さ方向の電界成分が主となる)の閉じ込めに対して大きな影響を与えるものではないため、実効屈折率差ΔNは小さい値でとどまる。そのため、コア13〜14の断面形状が左右非対象になったとしても、本発明の効果が大きく損なわれることはない。また、コア13〜14の側面が左右非対称に傾斜する場合もあるが、これもTM0偏波の閉じ込めに対して大きな影響を与えるものではないため、本発明の効果が大きく備われることはない。
また、本実施形態においては、第1のコア13の断面を突出部13bが主要部13aの下端から突出した階段形状(L字型)としているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、第1のコア13の断面を突出部13bが主要部13aの上端から突出した階段形状(逆L字型)、又は、突出部13bが主要部13aの中間部(上端と下端との間)から突出した階段形状(T字型)としても構わない。また、本実施形態においては、第2のコア14の断面を突出部14bが主要部14aの下端から突出した階段形状(L字型)としているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、第2のコア14の断面を突出部14bが主要部14aの上端から突出した階段形状(逆L字型)、又は、突出部14bが主要部14aの中間部(上端と下端との間)から突出した階段形状(T字型)としても構わない。これらの場合であっても、上述した条件(1)及び条件(3)が同時に満たされる。ただし、第1のコア13の断面を突出部13bが主要部13aの下端から突出した階段形状とし、かつ、第2のコア14の断面を突出部14bが主要部14aの下端から突出した階段形状とした方が、基板型導波路素子1の製造をより容易にすることができる。なぜなら、2つのコア13〜14の断面形状を上記のように構成した場合、2つのコア13〜14を2回のエッチングによって形成することができるからである。
また、本実施形態においては、第1のコア13の主要部13a及び突出部13b、並びに、第2のコア14の主要部14a及び突出部14bの断面形状を長方形としたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第1のコア13の主要部13a及び突出部13b、並びに、第2のコア14の主要部14a及び突出部14bの断面形状は、台形その他の四角形であればよい。なお、ここでいう「四角形」は、巨視的に見たときに四角形と見做せる図形であればよく、微視的に見たときに辺が曲がったり角が丸まったりしていても構わない。
〔実施例〕
本実施形態に係る基板型導波路素子1の一実施例について、図3〜図5を参照して説明する。
図3(a)は、実施例に係る基板型導波路素子1の平面図であり、図3(b)は、その基板型導波路素子1の断面図である。
本実施例においては、以下の手順に従って、基板型導波路素子1が備える2つのコア13〜14の断面形状を設計した。まず、第1のコア13の断面形状を図3(b)に示す階段形状に決定した。次に、第2のコア14の断面形状を図3(b)に示す階段形状、すなわち、第1のコア13の断面形状と合同な階段形状に決定した。なお、2つのコア13〜14の並走区間の長さLは、波長1580nmのTM0偏波に対する結合長Lに一致させた。第1のコア13の突出部13b、及び、第2のコア14の突出部14bの幅Wsは、例えば、550nmである。
なお、本実施例に係る基板型導波路素子1は、例えば以下のように製造することができる。まず、シリカ(Si02)層を2枚のシリコン(Si)層で挟み込んだSOI(Silicon on insulator)基板を用意する(中間のシリカ層を下部クラッド11として用い、上部のシリコン層を2つのコア13〜14として用いる)。次に、このSOI基板の上部のシリコン層に2回のエッチングを施すことによって、2つのコア13〜14を形成する。次に、2つのコア13〜14を埋設するように他のシリカ層を下部クラッド11上に積層し、これを上部クラッド12とする。
以上のように設計・製造された基板型導波路素子1において、第1のコア13の突出部13b及び第2のコア14の突出部14bの幅Wsを変化させながら、波長1580nmでの偏波消光比を算出し、図5(a)に示すグラフを得た。なお、各Wsに対する偏波消光比の算出に際し、2つのコア13〜14の並走区間の長さLは、そのWsに応じて決まるTM0偏波の結合長Lに一致させた。
図5(a)に示すグラフにおいて、Ws=400nmの場合は、第1のコア13の突出部13b及び第2のコア14の突出部14bの幅Wsと、第1のコア13の主要部13a及び第2のコア14の主要部14aの幅とが一致している。すなわち、2つのコア13〜14の断面が四角形状である(2つのコア13〜14が突出部を有していない)ことを意味している。図5(a)に示すグラフから、第1のコア13に突出部13bを設け、かつ、第2のコア14に突出部14bを設けることにより偏波消光比が上昇していること、及び、第1のコア13の突出部13b及び第2のコア14の突出部14bの幅Wsを増加させることにより偏波消光比が上昇していることが読み取れる。
図4(a)は、比較例に係る基板型導波路素子2の平面図であり、図4(b)は、その基板型導波路素子2の断面図である。本実施例に係る基板型導波路素子1により、TM0偏波の損失の波長依存性が改善していることについて、比較例を用いて説明する。なお、以下の説明において、本実施例に係る基板型導波路素子1は、幅Wsが550nmであり、波長1580nmでの偏波消光比は、13.2dBである。
本比較例に係る基板型導波路素子2は、シリコン製の下部クラッド21と、下部クラッド21上に形成された、シリカ製の2つのコア23〜24と、2つのコア23〜24を埋設するように下部クラッド21上に積層された、シリコン製の上部クラッド22とを備えている。2つのコア23〜24の断面形状は、互いに合同な長方形状である。
本比較例においては、以下の手順に従って、基板型導波路素子2が備える2つのコア23〜24の断面形状を設計した。まず、2つのコア23〜24の高さを、本実施例に係る基板型導波路素子1が備える2つのコア13〜14の高さと同じ220nmとした。また、2つのコア23〜24の間隔を、本実施例に係る基板型導波路素子1が備える2つのコア13〜14の間隔と同じ350nmとした。次に、2つのコア23〜24の幅Wを変化させながら、波長1580nmでの偏波消光比を算出し、図5(b)に示すグラフを得た。なお、各Wに対する偏波消光比の算出に際し、2つのコア23〜24の並走区間の長さLは、そのWに応じて決まるTM0偏波の結合長Lに一致させた。図5(b)に示すグラフからは、2つのコア23〜24の幅Wを458nmとしたときに、偏波消光比が本実施例に係る基板型導波路素子1と同じ値13.2dBとなることが読み取れる。そこで、2つのコア23〜24の幅Wを、458nmとした。
図5(c)は、本実施例に係る基板型導波路素子1及び本比較例に係る基板型導波路素子2におけるTM0偏波の損失(−10×log10(結合効率))を、入力するTM0偏波の波長を変えながら算出することにより得られたグラフである。図5(c)において、本実施例に係る基板型導波路素子1に対応するグラフは、「本発明」タグをつけて実線で描かれたグラフであり、比較例に係る基板型導波路素子2に対応するグラフは、「従来技術」のタグをつけて点線で描かれたグラフである。
図5(c)を参照すると、設計波長(1580nm)の周辺帯域(1480nm〜1680nm)において、本実施例に係る基板型導波路素子1の方が本比較例に係る基板型導波路素子2よりも、TM0偏波の損失が小さくなることが確かめられる。特に、比較例に係る基板型導波路素子2では、周辺帯域におけるTM0偏波の最大損失が1.05dBに達するのに対して、実施例に係る基板型導波路素子1では、周辺帯域におけるTM0偏波の最大損失が0.85dBに抑えられる。このことから、本実施例に係る基板型導波路素子1においては、入力するTM0偏波の波長が設計波長から外れたときに生じるTM0偏波の損失の増大を小さく抑え得ることが確かめられる。
図5(d)は、本実施例に係る基板型導波路素子1及び本比較例に係る基板型導波路素子2における偏波消光比を、入力するTM0偏波及びTE0偏波の波長を変えながら算出することにより得られたグラフである。図5(d)において、本実施例に係る基板型導波路素子1に対応するグラフは、「本発明」タグをつけて実線で描かれたグラフであり、比較例に係る基板型導波路素子2に対応するグラフは、「従来技術」のタグをつけて点線で描かれたグラフである。
図5(d)を参照すると、設計波長(1580nm)の周辺帯域(1480nm〜1680nm)において、本実施例に係る基板型導波路素子1及び本比較例に係る基板型導波路素子2における偏波消光比が同程度であることが確かめられる。
〔変形例1〕
図1に示す基板型導波路素子1においては、直線的なコア13〜14(直線導波路)を備える構成が採用されているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、曲がったコア13〜14(曲げ導波路)を備える構成も本発明の範疇に含まれる。
このような基板型導波路素子1の例を、図6(a)に示す。図6(a)は、本変形例に係る基板型導波路素子1の平面図である。
本変形例に基板型導波路素子1は、直線的なコア13〜14により構成される並走区間の入力端側/出力端側に、曲がったコア13〜14により構成される接近区間/離反区間を設けた構成である。接近区間においては、2つのコア13〜14の間の距離が入力端から遠ざかるに従って次第に小さくなり、離反区間においては、2つのコア13〜14の間の距離が出力端に近づくに従って次第に大きくなる。
このように2つのコア13〜14が徐々に接近/離反する構成を採用することによって、2つのコア13〜14の入出力部において生じ得る反射を低減することができる。
なお、本変形例においては、第1のコア13の入力端側及び出力端側、並びに、第2のコア14の入力端側及び出力端側の4ヶ所すべてを曲げる構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、第1のコア13の入力端側及び出力端側、並びに、第2のコア14の入力端側及び出力端側の4ヶ所のうち一部の箇所を曲げる構成としてもよい。
〔変形例2〕
図1に示す基板型導波路素子1においては、第1のコア13における突出部13bの幅(コア13を伝播する光の進行方向に直交する方向のうち、下部クラッド11と上部クラッド12との境界面に平行な方向の幅)、及び、第2のコア14における突出部14bの幅(コア14を伝播する光の進行方向に直交する方向のうち、下部クラッド11と上部クラッド12との境界面に平行な方向の幅)が一定となる構成が採用されているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、第1のコア13における突出部13bの幅、及び、第2のコア14における突出部14bの幅が変化する構成も、本発明の範疇に含まれる。
このような基板型導波路素子1の例を、図6(b)に示す。図6(b)は、本変形例に係る基板型導波路素子1の平面図である。
本変形例に係る基板型導波路素子1は、図6(a)に示す基板型導波路素子1と同様、コア13〜14が真っ直ぐな並走区間の入力端側/出力端側に、コア13〜14が曲がった接近区間/離反区間を設けた構成である。ただし、接近区間においては、第1のコア13の突出部13bの幅が入力端から遠ざかるに次第に大きくなり、離反区間においては、第1のコア13の突出部13bの幅が出力端に近づくに従って次第に小さくなるテーパー形状を採用している。
このように、第1のコア13における突出部13bの幅が徐々に変化する構成を採用することによって、第1のコア13を外部の導波路と接続する際に生じ得る損失を小さく抑えることが可能になる。
さらに、接近区間において、第2のコア14の突出部14bの幅が入力端から遠ざかるに次第に大きくなり、離反区間においては、第2のコア14の突出部14bの幅が出力端に近づくに従って次第に小さくなるテーパー形状を採用している。このように、第2のコア14における突出部14bの幅が徐々に変化する構成を採用することによって、第2のコア14を外部の導波路と接続する際に生じ得る損失を小さく抑えることが可能になる。
なお、本変形例においては、第1のコア13の高さ(コア13を伝播する光の進行方向に直交する方向のうち、下部クラッド11と上部クラッド12との境界面に垂直な方向の幅)が一定となる構成を採用しているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、接近区間において、第1のコア13の突出部13bの高さが入力端から遠ざかるに従って次第に高くなり、離反区間において、第1のコア13の突出部13bの高さが出力端に近づくに従って次第に低くなる構成としてもよい。また、本変形例においては、第2のコア14の高さ(コア14を伝播する光の進行方向に直交する方向のうち、下部クラッド11と上部クラッド12との境界面に垂直な方向の幅)が一定となる構成を採用しているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、接近区間において、第2のコア14の突出部14bの高さが入力端から遠ざかるに従って次第に高くなり、離反区間において、第2のコア14の突出部14bの高さが出力端に近づくに従って次第に低くなる構成としてもよい。
〔光変調器〕
本実施形態に係る基板型導波路素子1を偏波ビームコンバイナとして含む光変調器3について、図7を参照して説明する。図7は、そのような光変調器3の構成を示すブロック図である。
光変調器3は、DP−QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)変調器であり、図7に示すように、(1)TE0偏波をQPSK変調する2つのQPSK変調器31〜32と、(2)第2のQPSK変調器32により変調されたTE0偏波をTM0偏波に変換する偏波ローテータ33と、(3)第1のQPSK変調器により変調されたTE0偏波と偏波ローテータ33により得られたTM0偏波とを合波する偏波ビームコンバイナ34とを備えている。QPSK変調器31〜32、偏波ローテータ33、及び、偏波ビームコンバイナ34は、何れも、シリコン製の導波路として共通の下部クラッド上に一体的に形成される。なお、QPSK変調器31〜32は、これに限定されず、その他の変調器(OOK(On Off Keying)変調器、BPSK(Binary Phase Shift Keying)変調器、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調器など)に置き換えても構わない。
光変調器3においては、偏波ビームコンバイナ34として、本実施形態に係る基板型導波路素子1を備えている。このため、光変調器3において、設計波長から外れたTM0偏波に生じる損失を増加させることなく、偏波消光比を上昇させること、あるいは、偏波消光比を低下させることなく、設計波長から外れたTM0偏波に生じる損失を減少させることが可能である。
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、偏波ビームコンバイナ又は偏波ビームスプリッタとして好適に利用することができる。例えば、シリコン製の導波路により構成された光変調器における偏波ビームコンバイナとして好適に利用することができる。
1 基板型導波路素子
11 下部クラッド
12 上部クラッド
13 第1のコア
13a 主要部
13b 突出部
14 第2のコア
14a 主要部
14b 突出部
3 光変調器
31 第1のQPSK変調器
32 第2のQPSK変調器
33 偏波ローテータ
34 偏波ビームコンバイナ(基板型導波路素子)

Claims (7)

  1. 下部クラッドと、上記下部クラッド上に形成された第1のコア及び第2のコアと、上記第1のコア及び上記第2のコアを埋設するように上記下部クラッド上に積層された上部クラッドとを備え、上記第1のコアに入力されたTM偏波を上記第2のコアから出力する基板型導波路素子であって、
    上記第1のコアは、上記第2のコアと並走する並走区間の少なくとも一部において、四角形の主要部と該主要部から突出した四角形の突出部であって、上記第2のコアから遠ざかる方向に突出した突出部とからなる階段形状の断面を有しており、
    上記第2のコアは、上記第1のコアと並走する並走区間の少なくとも一部において、四角形の主要部と該主要部から突出した四角形の突出部であって、上記第1のコアから遠ざかる方向に突出した突出部とからなる階段形状の断面を有している、
    ことを特徴とする基板型導波路素子。
  2. 上記第1のコアに入力されたTM0偏波を上記第2のコアから出力する基板型導波路素子である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の基板型導波路素子。
  3. 上記第1のコアと上記第2のコアとの間の距離は、上記第1のコアの入力端から遠ざかるに従って次第に小さくなるか、又は、上記第1のコアの出力端に近づくに従って次第に大きくなる、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板型導波路素子。
  4. 上記第1のコアの突出部の幅は、上記第1のコアの入力端から遠ざかるに従って次第に大きくなるか、又は、上記第1のコアの出力端に近づくに従って次第に小さくなる、
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の基板型導波路素子。
  5. 上記第2のコアの突出部の幅は、上記第2のコアの入力端から遠ざかるに従って次第に大きくなるか、又は、上記第2のコアの出力端に近づくに従って次第に小さくなる、
    ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の基板型導波路素子。
  6. 上記上部クラッド及び上記下部クラッドは、シリカ製であり、上記第1のコア及び上記第2のコアは、シリコン製である、
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の基板型導波路素子。
  7. TM偏波とTE偏波とを合波する偏波ビームコンバイナとして、請求項1〜6の何れか1項に記載の基板型導波路素子を備えている、
    ことを特徴とする光変調器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018028566A (ja) * 2016-08-15 2018-02-22 沖電気工業株式会社 光導波路素子

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