JP5728140B1 - 高次偏波変換素子、光導波路素子、及びdp−qpsk変調器 - Google Patents
高次偏波変換素子、光導波路素子、及びdp−qpsk変調器 Download PDFInfo
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Abstract
Description
本願は、2013年6月27日に、日本に出願された特願2013−135490号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
また、光通信によって伝送される情報量の増加に応じて送受信器などの光回路部品の必要個数も増加する。そのため、限られたスペースの中で光回路部品を増やすために、光回路部品を構成する光素子の小型化と、高密度集積化が必要となる。
こうした課題に対して、加工が容易であり、集積化による小型化、大量生産による低コスト等のメリットを持つ、シリコンを用いた基板型光導波路(シリコン光導波路)による光回路部品(光変調器など)の研究及び開発が進められている。
シリコン光導波路は、コアに屈折率の大きなシリコン系材料(Si、Si3N4など)を、クラッドにコアとの屈折率差が大きい材料(SiO2、空気、Si3N4など)を利用した、いわゆる比屈折率差の大きな光導波路である。比屈折率差が大きいとコアへの光の閉じ込めが大きくなるため、急峻な曲げが可能になり、光素子の小型化、高密度集積化に適している。
特性が異なるこれらのモードに対して、光変調操作を行う場合、単一の基板型光導波路素子だけでは困難である。モードごとに最適化された基板型光導波路素子を必要とした場合、基板型光導波路素子の開発の面で大きな労力が必要となる。
シリコン光導波路による偏波変換素子の技術として、TE0をTE1に変換し、その後TE1をTM0に変換する方法が提案されている。
非特許文献1のFig.2(a)及びFig.2(b)に、その実施例が示されている。
非特許文献1の開示する光導波路素子は方向性結合器部分(結合部)とテーパ状光導波路部分(テーパ部)から成り、結合部の出射端がテーパ部に接続された構造となる。結合部はTE0をTE1に変換し、テーパ部はTE1をTM0に変換する基板型光導波路素子である。これらの2つの部分において使用される光導波路の屈折率の、導波方向に垂直な断面分布は非特許文献1のFig.1(a)及びFig.1(c)のグラフ中に示されている。これらの図では、コアと呼ばれる矩形部分とそのコアの下部に位置し屈折率がコアよりも低い水平な下部クラッドと、屈折率がコアより低く下部クラッドとは異なるコアを覆う上部クラッドが示されている。
非特許文献1のFig.1(a)及びFig.1(c)には、コア幅に対する実効屈折率のグラフが示されている。コアはSiで屈折率が3.455、下部クラッドはSiO2で屈折率が1.445、上部クラッドは空気(屈折率が1.0)又はSi3N4(屈折率が2.0)、コアの高さは220nmとしている。
また、非特許文献1のFig.1(b)には上部クラッドと下部クラッドとが等しい屈折率を持つ上下対称な屈折率断面形状の光導波路の実効屈折率のグラフが示されている。
これらの図からも分かるように屈折率断面が上下非対称な屈折率断面構造を持つ場合、幅方向の変化に対する各モードの実効屈折率の変化のグラフにおいて、上下対称な屈折率断面構造を持つ導波路では縮退していたTE1とTM0の点が分離している。
例えば、非特許文献1のFig.1(a)のグラフには、導波路幅0.7μm付近で、導波路幅が広がる間に、実効屈折率が2番目に高いモードはTM0(基本TMモード)からTE1(高次TEモード)へ、また、実効屈折率が3番目に高いモードはTE1(高次TEモード)からTM0(基本TMモード)へ変化することが示されている。このため、TE1とTM0は実効屈折率曲線状で連続的に繋がるので、導波路幅を緩やかに変化させることで損失の小さい高次偏波変換を行うことが可能となる。この現象を利用しているのが、前述の偏波変換素子におけるテーパ部で、導波路幅をTE1からTM0に変換する範囲で、緩やかに変化させるテーパ構造にすることで、高次偏波変換を行っている。
非特許文献2はFig.11などにおいて、入出力部の断面の一方の端部がリブ導波路の断面構造をもち、他方の端部は矩形導波路の断面構造をもつ高次偏波変換素子を開示している。
前記開始部と前記終了部との間において、前記上部コアの幅方向の両端がそれぞれ前記下部コアの前記幅方向の両端と常に重ならなくてもよい。
前記開始部と前記終了部との間において、前記上部コアの幅方向の一つの端が前記下部コアの前記幅方向の一つの端と常に重なってもよい。
前記開始部において、前記コアの高さが210nm以上230nm以下であり、前記コアの幅が700nm以上であり、かつ、前記終了部において、前記コアの高さが210nm以上230nm以下であり、前記コアの幅が620nm以下であってもよい。
前記下部コアと前記上部コアがSiからなり、前記下部クラッドと前記上部クラッドがSiO2からなってもよい。
前記上部コアの幅が前記開始部から中間部まで減少し前記中間部から前記終了部まで一定で、かつ前記下部コアの幅が前記開始部から前記中間部まで一定で、前記中間部から前記終了部までの間で減少してもよい。
前記第1の光導波路のTE0の実効屈折率と前記第2の光導波路のTE0の実効屈折率の差が0.2以上であってもよい。
また、本発明の第3態様に係るDP−QPSK変調器は、前記光導波路素子を備える。
図1A〜図2Bに、本発明の高次偏波変換素子の構造を模式的に例示する。これらの高次偏波変換素子は、図1A及び図2Aに示すように、基板S上にコア2及びクラッド5を有する光導波路1を備える基板型光導波路素子から構成される。コア2の形状は、導波方向に垂直な断面において、コア形状が2つの幅を持つ矩形を重ねた形を成す。なお、本願では、単に「断面」と記載する場合は光の導波方向に垂直な断面を指す。
以下、上側の断面矩形状の部分を上部コア3、下側の断面矩形状の部分を下部コア4と呼び、下部コア4と下部クラッド7が接する部分を下底4a、上部コア3の上部を上底3aと呼ぶ。上部コア3は下部コア4と同じ材料からなる。クラッド5は、基板Sとコア2の間に設けられた下部クラッド7と、コア2及び下部クラッド7の上に設けられた上部クラッド6を有する。
つまり、基板S上に設けられる下部クラッド7上に、下部コア4と上部コア3とを有するコア2が設けられる。さらに、コア2及び下部クラッド7の上に上部クラッド6が設けられる。
このような断面を持つ光導波路のコア形状の一例を図1B及び図2Bに示す。図1Bは図1Aの断面を有する光導波路のコア形状の一例であり、図2Bは図2Aの断面を有する光導波路のコア形状の一例である。
すなわち、(1)終了部9における上部コア3の幅が開始部8における上部コア3の幅より小さいこと、(2)終了部9における下部コア4の幅が開始部8における下部コア4の幅より小さいこと、の少なくとも1つを満足することが好ましい。
なお、本願において「連続的に減少」とは、図2Aの上部コア3の幅及び下部コア4の幅のように開始部8から終了部9にかけて常に減少している場合だけでなく、図4Aの上部コア3の幅及び下部コア4の幅のように一定幅の部分がある場合も含まれる。
なお、以下においても開始部8からTE1を入力すると、終了部9からTM0として出力される構造であれば、終了部9にTM0を入力すると開始部8からTE1が出力される。
上下非対称な構造としては、図1A〜図2Bに示すように、上部コア3の幅が下部コア4の幅より小さい構造に限られず、上部コア3の幅が下部コア4の幅より大きい構造とすることもできる。下部コア4の上により幅の小さい上部コア3を設ける場合、基板(及び下部クラッド)の上に設けたコア材料層の上部から一部をエッチング等で除去する方法により、同じ材料からなる上部コア3と下部コア4を容易に作製することができる。従って、下部コア4の上により幅の小さい上部コア3を設けることが好ましい。
この観点からは、図2A及び2Bに示すように、コアの幅方向の両端に段差を設けることが好ましい。さらに、下部コア4の幅が上部コア3の幅よりも大きく、上部コア3の下辺が下部コア4の上辺に含まれる場合は、図2Aの断面図に示すように、リブ導波路を作製するプロセスを利用することができる。
一方、図1A及び1Bに示すように、下部コア4と上部コア3の幅方向の一つの端が重なるようなコア形状では、段差が幅方向の反対側の一つの端のみに生じ、下部コア4の張り出しが大きくなる。従って、製造プロセスの要求精度が下がり、生産効率を高めることができる。
上部コア3と下部コア4は同じ材料からなることが好ましい。例えば、上部コア3と下部コア4をともにSiで構成することができる。コアのSiは、意図的な不純物(ドーパント)あるいは不可避の不純物を含んでもよい。
上部クラッドと下部クラッドとが同じ材料でないとしても、上部クラッドと下部クラッドとを同じ元素種から構成することもできる。ここで、「2つの材料が同じ元素種から構成される」ことの定義は、2つの材料を構成する元素がすべて同じであることをいう。例えば、シリコン(Si)の元素種はSiのみであり、シリカ(SiO2)の元素種はSi及びOである。Si及びOの2つの元素種から構成される材料は、SiO2と同じ元素種ということができるが、Siのみから構成される材料(Si等)や、Si及びO以外の元素種を含む材料(Si3N4等)は、SiO2と同じ元素種とはいえない。
上下対称な光導波路形状では、TE1の実効屈折率曲線とTM0の実効屈折率曲線とが交わり、TE1とTM0の実効屈折率は縮退する。この場合、この交点の前後でモードの変換は生じない。
一方で、上下非対称なコア形状をもつ光導波路の場合、非特許文献1で述べているように屈折率断面の屈折率分布が上下非対称になるため、上下対称なコア形状を持つ導波路では縮退していたTE1とTM0の点が分離している。このとき、TE1とTM0は同一の実効屈折率曲線上で連続的に繋がるので、導波路幅を緩やかに変化させることで高次偏波変換を行うことが可能となる。なお、詳細な具体例は、計算例1及び各実施例で述べる。
なお、図4Aでは、下部コア4が上部コア3の外側に出る階段状の部分に網かけを付けている。後述する図5A等でも、同様に平面図に網かけを付けた場合がある。
開始部8と終了部9との間のうち開始部8と終了部9とを除く部分では、上部コア3の幅方向の両端がそれぞれ下部コア4の幅方向の両端と常に重ならず、リブ構造と同様になっている。すなわち、図4Cに示すように、下部コア4の幅が上部コア3の幅よりも大きくなり、導波方向に垂直な断面における上部コア3の下辺が下部コア4の上辺に含まれている。上底から下底までの距離は、開始部8と終了部9のコア高さH1に等しく、下部コア4の高さH2は一定である。
この構造は、実効屈折率差が小さく偏波変換効率が低下するが、第1実施形態の構造に比べて上部コアに覆われていない下部コアの部分が広く、製造において第1実施形態のものより要求精度が下がり、再現性の高い構造の作製が可能である。
図7Aは、図5Aと同様に、上部コア3の片側に下部コア4がはみ出した段差部を有する。図7Bは、図4Aと同様に、上部コア3の両側に下部コア4がはみ出した段差部を有するが、上部コア3が下部コア4に対して幅方向の中心になくてもよく、左右非対称である。図7Cでは、上部コア3及び下部コア4のテーパ部分における幅の変化が連続的な変化であるが、線形(直線)でなくて曲線状である。つまり、開始部8から終了部9に向けて曲線状に上部コア3の幅が狭まっている。さらに、図7Dでは、開始部8から終了部9に向けて曲線状に上部コア3及び上部コア3の幅が狭まっている。
図4A,図5A,及び図7A〜7Dでは、開始部8と終了部9との間のうち開始部8と前記終了部9とを除く部分で上部コア3の幅が下部コア4の幅よりも常に狭い。そのため、2回のエッチングによって、作成することが可能となる。そのため、例えば、SOI基板の上位層であるSI層をエッチングで削り、その上からSiO2を堆積させることで作製可能である。
また、光の進行方向に対して、図4Aのようにコア幅の変化は段階的でもよいし、図7Dのように連続的でもよい。コア幅の変化が段階的な方が設計が容易である。一方、コア幅の変化が連続的な場合はより滑らかに導波路構造を変化させることができ、さらなる低損失化が可能となる。
また、下部コアの上部コアに対してはみ出している部分は、図4A等のように光の進行方向に対して、両側の張り出していても良いし、図5Aのように片側だけ張り出していてもよい。両側に張り出している場合の方が高い高次偏波変換効率を持つ。片側に張り出している場合は、下部コアの張り出しをより広く保つことができるので、製造時に要求される解像度を緩和できる。
図39(b)は開始部から終了部までの断面が常に矩形で開始部8から終了部9にかけて幅が狭くなるコア2を有するテーパ導波路であり、図39(a)は図39(b)のテーパ導波路に高次偏波変換部74が埋め込まれた高次偏波変換素子である。
まず、高次偏波変換を行う場合、開始部8(入力断面)では、TE0の実効屈折率がTE1の実効屈折率よりも大きく、TE1の実効屈折率がTM0の実効屈折率よりも大きく、終了部9(出力断面)では、TE0の実効屈折率がTM0の実効屈折率よりも大きく、TM0の実効屈折率がTE1の実効屈折率より大きい必要がある。さらに、開始部8と終了部9との間のコア2が、連続的に導波路が接続された構造を有し、かつ図39(a)のように上部コア3と下部コア4の2段テーパ導波路構造を有する必要がある。なお、以下2段テーパ導波路構造を持つ部分を2段テーパ部73と呼ぶ。
一方、図39(b)で示すように上部コア3と下部コア4の幅が異なる場合、2段テーパ部73の断面は上下非対称な屈折率分布を持つ。上下非対称な屈折率分布では、TE1とTM0の実効屈折率は入れ替わらず(縮退点を持たず)、ハイブリッドモードと呼ばれるTE1とTM0が入り交じった導波モードが生じる。このハイブリッドモードを利用することで、高次偏波変換が行われる。なお、以下ではハイブリッドモードが生じる部分を高次偏波変換部74と呼ぶ。ただし、高次偏波変換を高い変換効率で行うには、高次偏波変換部74において、電界の連続的な変化(断熱変換)が行われるようにテーパ長を長くする必要がある。
この場合、上部コア3と下部コア4の高さを一定としたとき、開始部8と終了部9との実効屈折率の順番の条件を満たす場合、常に開始部8の上部コア3の幅は、終了部9の上部コア3の幅に比べて大きくなる。また、常に開始部8の下部コア4の幅は、終了部9の下部コア4の幅に比べて大きくなる。
これは次の理由による。
コア2の幅が狭いほど、幅方向の電界成分が支配的なTE1の光閉じ込めが弱くなる。光閉じ込めが弱いと、クラッド5に電界が広がり、コア2よりもクラッド5の屈折率の影響を受けるため、実効屈折率が低下する。それに対して、TM0は高さ方向の電界成分が支配的であるため、コア幅の狭窄化による実効屈折率の変化はTE1よりも小さい。そのため、前述の前提条件を満たすときは、常に開始部8のコアの幅は、終了部9のコア幅に比べて大きくなる。
例えば、図40に示すように、構造が定まった開始部8と終了部9に対して、上記実施形態の高次偏波変換素子を用いる際に全素子長に対する高次偏波変換部74の割合も任意に設計可能である。これは、光の導波方向に対する2段テーパの変化の仕方を調整することで可能となる。高次偏波変換素子全体に占める高次偏波変換部の割合が大きいほど、高次偏波変換の効率が高まる。そのため、より短い距離で高効率な変換が可能となる。ただし、損失が十分小さくなるように高次偏波変換部以外の部分の導波路を設定する必要がある。
また、側壁荒れの影響は、上部コア3と下部コア4との幅が大きいほど小さい。コア幅が大きいと、光がコア内部により閉じ込められ、その結果、コアの幅が変動した影響を小さくできるためである。その場合、開始部8に近いほどコア幅が大きいため、図42Bのように開始部8に近い位置に高次偏波変換部74を設けることで、側壁荒れによる高次偏波変換の効率低下を抑制することが可能となる。
一方、上記実施形態では、上部コア3及び下部コア4が開始部8の幅よりも広がることはない。従って、開始部で導波しない高次モードは、それ以降も導波モードとはならず、上記の問題は生じない。
図8Aは、上部コア3の片側に下部コア4がはみ出した段差部を有する。図8Bは、上部コア3の両側に下部コア4がはみ出した段差部を有するが、上部コア3が下部コア4に対して幅方向の中心にはなく、左右非対称である。図8Cでは、テーパ部分における上部コア3及び下部コア4の幅の変化が連続的な変化であるが、線形(直線)でなくて曲線状である。
第3実施形態の光導波路の場合、寸法の具体例として、開始部の断面において、リブ導波路のスラブとなる下部コアの高さが75〜115nmであり、コア全体の高さが210〜230nmであり、上部コアの幅が600nm以上であること、及び終了部の断面において、コア全体の高さが210〜230nmであり、コア全体の幅が620nm以下であることが好ましい。このように、コア全体の高さ及び下部コアの高さを特定の値に統一して、コア幅のみを変更するようにすれば、SOI基板など特定の厚さのコア材料(Si)層を有する基板からエッチング等により下部コアを有する光導波路を作製する工程が容易になる。製造誤差を±10nmとした場合、開始部及び終了部の断面におけるコア全体の高さは、210nmから230nm程度が好ましく、下部コアの高さは、80nmから110nm程度が好ましい。
開始部における上部コアの幅は、終了部におけるコア全体の幅より広いことが好ましく、700nm以上がより好ましい。開始部における上部コアの幅が終了部におけるコア全体の幅以下である場合、開始部における下部コアの幅が終了部におけるコア全体の幅より広いことが好ましい。
また、本発明の高次偏波変換素子の第4実施形態の改変例を図10A〜10Cに示す。図10A〜10Cはそれぞれコアの平面図である。
なお、コア形状の左右に関する対称性は必ずしも必要とせず、図10A〜10Cに示すように、上部コア3が下部コア4に対して中心になくてもよく、また、テーパ部分は連続的な変化であれば線形(直線)でなくてもよい。
第4実施形態の光導波路の場合、第1〜3実施形態の同様の趣旨に基づいて、開始部の断面において、コア全体の高さが220nmに等しく、コア全体の幅が700nm以上であり、終了部の断面において、コア全体の高さが220nmに等しく、下部コアの高さが95nmに等しく、上部コアの幅が620nm以下であることが好ましい。
また、本発明の第5実施形態に係る高次偏波変換素子改変例を図12A〜12Cに示す。図12A〜12Cはそれぞれコアの平面図である。
なお、コア形状の左右に関する対称性は必ずしも必要とせず、図12A〜12Cに示すように、上部コア3が下部コア4に対して中心になくてもよく、また、テーパ部分(上部コア3が下部コア4の幅)は連続的な変化であれば線形(直線)でなくてもよい。
第5実施形態の光導波路の場合、第3実施形態の同様の趣旨に基づいて、開始部の断面において、下部コアの高さが95nmであり、コア全体の高さが220nmであり、上部コアの幅が600nm以上であること、及び終了部の断面において、下部コアの高さが95nmであり、コア全体の高さが220nmであり、上部コアの幅が620nm以下であることが好ましい。開始部における上部コアの幅は、終了部における上部コアの幅より広いことが好ましく、700nm以上がより好ましい。開始部における上部コアの幅が終了部における上部コアの幅以下である場合、開始部における下部コアの幅が終了部における上部コアの幅より広いことが好ましい。
本発明の高次偏波変換素子は、同一基板上の光導波路において、他の素子と組み合わせて用いることができる。例えば、非対称方向性結合器と本発明の高次偏波変換素子とを組み合わせることで偏波変換素子を実現することが可能である。この偏波変換素子は、TE 0を非対称方向性結合器によってTE1に変換し、TE1を高次偏波変換素子によってTM0に変換する。
図13A及び13Bに、本発明の高次偏波変換素子を非対称方向性結合器と組み合わせた偏波変換素子の一例を示す。図13Aはコアの平面図であり、図13Bは非対称方向性結合器における断面図である。この構造の詳細は、実施例6として後述する。
第1の光導波路11にはTE0が導波する。また、第2の光導波路12にはTE1が導波する。第1の光導波路11のTE0と第2の光導波路12のTE1とが近い実効屈折率を持つため、第1の光導波路11から第2の光導波路12へと結合可能である。第1の光導波路11に接続される入力側の導波路を第1のポート11aとし、第2の光導波路12に接続される入力側の導波路を第2のポート12aとする。第2の光導波路12の出力側にある第3のポート12bは、高次偏波変換素子10の開始部8に接続される。図13Aに示す高次偏波変換素子10は、一例として図4A〜4Dと同様な構造を示しているが、特にこれに限定されない。
一方、第2のポート12aにTE0を入力すると、非対称方向性結合器13では、第2の光導波路12のTE0の実効屈折率が第1の光導波路11のどのモードの実効屈折率とも大きく異なる。そのため、モード結合や変換が起きない。さらに高次偏波変換素子10においてもTE0はモード変換しないため、第3のポート12bから入力されるTE0は高次偏波変換素子10の終了部9までほとんど損失無く透過する。従って、第1のポート11aと第2のポート12aへ同時にTE0を入力すると、本構造の出力部である高次偏波変換素子10の終了部9では、TE0とTM0とが合波した出力が得られる。つまり、本構造は、偏波変換と偏波合波の機能を兼ね備えた素子として動作することも可能である。
第2の光導波路12のTE0の実効屈折率が第1の光導波路11のモードの実効屈折率とも異なる程度としては、非対称方向性結合器13の第1の光導波路11のTE0の実効屈折率と第2の光導波路12のTE0の実効屈折率の差が0.2以上であることが好ましい。
この偏波変換素子では、非対称方向性結合器13rがリブ型導波路から構成される。2つの光導波路のリブ11r,12rの間にスラブ13sが形成され、各リブ11r,12rの外側にもそれぞれスラブ11s,12sが形成されている。
本実施形態の偏波変換素子は、参考文献(P. Dong, C. Xie, L. Chen, L. L. Buhl, and Y.-K. Chen, “112-Gb/s Monolithic PDM-QPSK Modulator in Silicon,” European Conference and Exhibition on Optical Communication, Vol. 1, p. Th.3.B.1, June 16, 2012)に開示されているような偏波多重4値位相変調(DP−QPSK:Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)に使用することが可能である。図15にDP−QPSK変調器の一例を模式的に示す。このDP−QPSK変調器20は、通常の光導波路にTE0とTM0の2つのモードが存在できることを利用して、TE0/TM0の両モードに独立したQPSK信号を有する、DP−QPSK変調を行う。具体的には、入力部21からTE0で入力した光を2つの光導波路22,22に分岐し、QPSK変調器23,23により各々QPSK信号に変調した後、光導波路24,24の片側のTE0を偏波変換素子25によりTM0に変換させて、2つのモードを偏波ビームコンバイナで同一の光導波路上に合成し、TE0とTM0に独立した信号を出力部26に出力する。
なお、TE0とTM0を変調する方式はQPSKに限らず、複雑な構成を持つ変調器であっても、本実施形態の偏波変換素子を用いて偏波多重を行うことが可能である。
本実施形態の偏波変換素子は、参考文献(C. Doerr et al., “Packaged Monolithic Silicon 112-Gb/s Coherent Receiver,” IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 23,
pp. 762-764, 2011)で開示されているような、TE0とTM0を同時に伝送した偏波多重信号のSi光導波路上のコヒーレント受信機に使用することが可能である。図16に、偏波ダイバーシティ・コヒーレント受信機の一例を模式的に示す。このコヒーレント受信機30は、TE0とTM0とを同時に伝送した偏波多重信号の光導波路31を、偏波変換と偏波ビームスプリッタが同時に行える偏波変換素子32に接続し、光導波路33の一方にはTE0の信号を分岐させる。また、光導波路33の他方にはTM0から変換したTE 0の信号を分岐させる。局発光34として、一般的に用いられる半導体レーザ光源は片偏波のみ、例えばTE0(local)の出力を用いる。このような光源を用いる場合、通常局発光の偏波変換が必要となる。しかし、図16のコヒーレント受信機30では、信号光は偏波分離後の光導波路33にいずれもTE0の信号(signal)が導波されるので、局発光の偏波変換が不要になる。信号光と局発光は、光合波部35を経て、結合部36から出力される。
偏波変換素子32に光導波路型の構造を用いる場合、結合部36における素子外部との光の結合には、基板側方より結合する逆テーパ型のモードフィールド変換器など、偏波分離機能を持たない結合器を利用することが可能である。結合器には、例えば参考文献(Qing Fang, et al., “Suspended optical fiber-to-waveguide mode size converter for silicon photonics,” Optics Express, Vol. 18, Issue 8, pp. 7763-7769 (2010))に開示されている、逆テーパ型の構造が開示できる。
本実施形態の偏波変換素子は、参考文献(Hiroshi Fukuda et al., “Silicon photonic circuit with polarization diversity,” Optics Express, Vol. 16, Issue 7, pp. 4872-4880 (2008))で開示されているような、TE0とTM0が同時に伝送される偏波多重伝送や、片方の偏波がランダムに伝送されるときに、両モードに対して同様の操作を与えるための素子を利用したい場合、図17に示すような偏波ダイバーシティ方式を実行するために用いることができる。図17に示す偏波ダイバーシティ方式40では、TE0とTM0が同時に伝送される偏波多重信号の光導波路41を、偏波変換と偏波ビームスプリッタが同時に行える偏波変換素子42に接続し、光導波路43の一方にはTE0の信号を分岐させる。また、光導波路43の他方にはTM0から変換したTE0の信号を分岐させる。素子44で操作されたTE0の信号光は、光導波路45から偏波変換素子46で合成して、TE0とTM0が同時に伝送される偏波多重信号の光導波路47に出力する。
偏波変換素子46には、図15に示すDP−QPSK変調器20と同様に、偏波変換と偏波ビームコンバイナが同時に行える本発明の偏波変換素子を用いることができる。
分岐部と本実施形態の高次偏波変換素子を組み合わせることで、偏波変換が可能である。分岐部としては、2×1のMMI(マルチモード干渉計)及びY分岐が挙げられる。これらは、2つの入力部分に入力する電界の位相を調整することで、TE1を発生させることが可能である。もしくは、片側からのみTE1を入力してもよい。そのため、この後段に本実施形態の高次偏波変換素子を接続することで、このTE1をTM0に変換することができ、偏波変換の機能を持たせることが可能となる。
また、参考文献(Wangqing Yuan, et al., “Mode-evolution-based polarization rotator-splitter design via simple fabrication process,” Optics Express, Vol. 20,Issue 9, pp. 10163-10169 (2012))では、非対称なY分岐と高次偏波変換素子とを接続することで偏波ビームスプリッタと偏波変換の機能を同時に実現しているが、非対称なY分岐と本実施形態を用いることでも同様の効果を実現することが可能である。
各入力部分51,52に入力する2つのTE0の位相差をπとすることが好ましい。入力が非対称(反対称)なモード分布を持つことにより、合波後は対称なモード分布を持つTE0は発生しなくなる。これにより、合波後に不必要となるTE0の発生を防ぎ、偏波消光比の低下を抑制することができる。
本発明と同様の原理で、実効屈折率曲線においてTE2n+1モード(nは0以上の整数)とTM0が交わる縮退点を本発明と同様の上下非対称構造によって分離することができ、その間をテーパ化することで変換を行うことができる。ここで、TE2n+1は、TEモード(TE0,TE1,TE2,・・・)の中で(2n+2)番目に実効屈折率が高いモードをいう。TE1モードは、n=0のTE2n+1モードである。
TEモードの奇数次のモードが変換対象になるのは以下の理由による。矩形状コア(幅方向と高さがともに対称な構造(屈折率分布))を伝搬するTM0は、その電界のx成分(Ex)は、幅方向と高さ方向でともに反対称な分布になる。一方、TE1を含む奇数次のTEモードのExは、幅方向に対して反対称、高さ方向に対しては対称な電界分布になる。そのため、屈折率分布を高さ方向に対して非対称にすることで、TE2n+1の高さ方向の対称性が崩れ、TM0と相互作用して縮退点付近でそれぞれのモードが混ざり、縮退点が分離する。そのため、本発明と同様の構造により、TE2n+1モードは、TM0との間で変換が可能である。
<計算例1>
図2A及び2Bに示すようなコア形状が凸型の光導波路の下底を変化させたとき、実効屈折率が高い順に4つのモードの実効屈折率の変化のグラフを図18に示す。波長は1.55μm、コアはSiで屈折率が3.48、上部クラッド及び下部クラッドはSiO2で屈折率が1.44、光導波路の高さが0.22μm、下部コアの高さが0.095μm、上部コアの幅が0.5μmとし、上部コアは下部コアの中心に位置している。
図18から分かるように、コア断面形状の上下非対称性のため、TE1とTM0は縮退することなく、実効屈折率差を常に持つ。図18において、破線の楕円(下底0.7μm付近)として、モード変換部の概略範囲を示した。このモード変換部では、実効屈折率が2番目に高いモードは、下底が狭いときTM0となり、下底が広いときTE1となる。逆に、実効屈折率が3番目に高いモードは、下底が狭いときTE1となり、下底が広いときTM0となる。よって、同一の実効屈折率曲線(実効屈折率が2番目に高いモードまたは3番目に高いモードのいずれか)をたどることで、それぞれのモードは変換可能である。
以上より、連続的にTE1とTM0とが変換していく様子を見ることができる。このことからも、TE1とTM0の間で相互に偏波を変換することが可能であることが分かる。
比較例1では、図3A及び3Bに示す導波路101において、コア102がSi、下部クラッド103の材料がSiO2であり、上部クラッド104が空気からなり、コア102の高さH0が0.22μm、開始部の幅W1が0.84μmであり、終了部の幅W2が0.5μmであり、長手方向の長さL0が35μmであり、開始部の矩形導波路からコア幅を長さ方向に対して線形に変化させた構造とした。有限差分時間領域(Finite-Difference Time Domain:FDTD)法によるシミュレーションにより求めた高次偏波変換の変換損失(出力されるTM0のパワー/入力されるTE1のパワー、で表される比)は0.587dBであった。
計算例1を踏まえて、上部コアが下部コアの中心にくる構造(上述した第1実施形態を参照)を有する実施例1の導波路素子を作製する。
図4A〜4Dに本実施例の素子の図を示す。本実施例では、Si−SiO2−SiからなるSOI(Silicon on insulator)基板をもとに導波路を作製する。中間のSiO2層を下部クラッドとして、上部のSi層をコアとして用いる。コア形成後、上部クラッドとしてSiO2層を設ける。
図18及び図23によれば、実効屈折率が2番目に高いモードと3番目に高いモードとが最も接近する点における両モードの実効屈折率差は0.16である。
また、上部コアが幅方向に+60nmずれた場合でも(上部コアが下部コアの無い範囲にずれた場合は、その範囲に下部コアが新たに作られるとする)、最も接近する点の実効屈折率差は0.15であり、実効屈折率曲線は分離する(縮退しない)ので、高次偏波変換が可能である。
図5A〜5Dに示すように、上部コアと下部コアの端が一致する構造(上述した第2実施形態を参照)の高次偏波変換素子を、実施例1と同様の方法で作製する。
下部コア4の高さH2が0.095μmであり、上部コア3の高さ(H1−H2の差)が0.125μmであり、下部コア4と上部コア3とを合わせたコア高さH1は0.22μmである。開始部8では上部コア及び下部コアの幅W1が0.84μmであり、区間L2(長さ15μm)で上部コア3の幅W2が0.5μmである。区間L1(長さ20μm)で下部コア4の幅W1は0.84μmであり、区間L1とL2の全長にわたって上部コアと下部コアの端が一致するように位置する。終了部9では上部コアと下部コアの幅W2がともに0.5μmである。
図6A〜6Cに示すように、開始部8の断面形状がリブ導波路で、終了部9の断面形状が矩形導波路となり、上部コア3と下部コア4との幅方向の中心が一致する構造(上述した第3実施形態を参照)の高次偏波変換素子を、実施例1と同様の方法で作製する。
下部コア4の高さH2が0.095μmであり、上部コア3の高さ(H1−H2の差)が0.125μmであり、下部コア4と上部コア3とを合わせたコア高さH1は0.22μmである。開始部8では、上部コア3の幅W1aが1μmであり、下部コア4の幅W1が4μmである。終了部9では、上部コアと下部コアとの幅W2がともに0.5μmである。開始部8の最大のコア幅が4μmであり、有限ではあるが、この断面を通るTE1の分布は開始部8の下部コア4の両端よりも十分内側にある。そのため、スラブ幅が十分に大きく、リブ導波路とみなすことが可能である。
図9A〜9Cに示すように、開始部8の断面形状が矩形導波路で、終了部9の断面形状が凸型となり、上部コア3と下部コア4の幅方向の中心が一致する構造(上述した第4実施形態を参照)の高次偏波変換素子を、実施例1と同様の方法で作製する。
下部コア4の高さH2が0.095μm、上部コア3の高さ(H1−H2の差)が0.125μm、合わせたコア高さH1は0.22μmである。開始部8では、上部コアと下部コアの幅W1がともに0.8μmである。終了部9では、上部コア3の幅W2aが0.44μmであり、下部コア4の幅W2が0.5μmである。この場合、下底と上底(単位μm)の寸法関係は、「上底=0.8−1.2×(0.8−下底)」である。
図11A〜11Cに示すように、開始部8と終了部9の断面形状が凸型となり、上部コア3と下部コア4の幅方向の中心が一致する構造(上述した第5実施形態を参照)の高次偏波変換素子を、実施例1と同様の方法で作製する。
下部コア4の高さH2が0.095μm、上部コア3の高さ(H1−H2の差)が0.125μmであり、合わせたコア高さH1は0.22μmである。開始部8では、上部コア3の幅W1aが0.7μmであり、下部コア4の幅W1が1.1μmである。終了部9では、上部コア3の幅W2aが0.3μmであり、下部コア4の幅W2が0.7μmである。この場合、上底と下底(単位μm)の寸法関係は、「下底=上底+0.4」である。
図13A及び13Bに、実施例1の高次偏波変換素子を非対称方向性結合器と組み合わせた偏波変換素子の1つの実施例を示す。
図13Bに示す非対称方向性結合器13の断面において、第1の光導波路11のコア幅Eは0.4μmであり、第2の光導波路12のコア幅Fは0.84μmであり、第1の光導波路11及び第2の光導波路12のコアの高さHはともに0.22μmであり、2つの導波路の間隔Gは0.35μmとする。
第1の光導波路11は、長さL=54μmの直線部とそれに接続される半径40μmの曲げ半径を持つ曲げ導波路からなる。第2の光導波路12は、長さL=54μmの直線部とそれに接続される半径40μmの曲げ半径を持つ曲げ導波路からなる。各導波路の直線部は互いに平行で、両端面がそれぞれ同一平面上にある。
第1のポート11aに入力したTE0が、非対称方向性結合器13で第2の光導波路12のTE1に結合し、第3のポート12bよりTE1として出力されるとき、TE0からTE1に変換される変換損失を、FDTD法によるシミュレーションで求めた。本構造によれば、変換損失は、波長が1550nmのとき、0.105dBとなった。このことより、本構造によってTE0とTE1との間の変換が可能であることが分かる。
高次偏波変換素子10の変換損失が実施例1で述べたように0.004dBであるので、非対称方向性結合器13と高次偏波変換素子10を合わせた偏波変換素子として全体の変換損失は、0.109dBとなり、偏波変換が可能であることが分かる。
図14A及び14Bに示すように非対称方向性結合器がリブ型導波路である偏波変換素子も作製可能である。図14A及び図14Bに示す非対称方向性結合器13rにおいて、リブ型導波路の長さLrは20.8μmである。第1の光導波路のリブ11rの幅W1rは0.4μmであり、第2の光導波路のリブ12rの幅W2rは0.95μmであり、リブ11r,12rの高さH1rは0.22μmである。第1の光導波路の外側のスラブ11sの幅W1sは0.8μm以上、第2の光導波路の外側のスラブ12sの幅W2sは1.1μm以上、2つの導波路の間のスラブ13sの幅W3sは0.3μm、スラブの高さH1sは0.095μmである。
図32に示す、TE1(TE1)を発生させる変換合波素子を、実施例1と同様に、Si−SiO2−SiからなるSOI(Silicon on insulator)基板をもとに作製する。中間のSiO2層を下部クラッドとして、上部のSi層をコアとして用いる。コア形成後、上部クラッドとしてSiO2層を設ける。
入力部分51,52の幅Wcは600nmであり、入力部分51と入力部分52との間隔Wdは350nmであり、合波部53の幅Waは1700nmであり、出力部分55の幅Wbは840nmである。合波部53の長さLaは1000nmであり、テーパ部分54の長さLbは6000nmである。
図33に示す、対称方向性結合器を、実施例1と同様に、Si−SiO2−SiからなるSOI(Silicon on insulator)基板をもとに作製する。中間のSiO2層を下部クラッドとして、上部のSi層をコアとして用いる。コア形成後、上部クラッドとしてSiO 2層を設ける。各導波路61,62の幅Wは500nmであり、導波路61,62の間隔Gは350nmである。
FDTD法によるシミュレーションの結果、導波路コアの製造誤差が±25nmでも、過剰損失は小さく、1530〜1630nm(Cバンド及びLバンドに相当)という広い波長範囲で、TM0の結合損失は0.6dB未満、TE0の結合損失は12dB以上となった。このことから、本構造が高い製造トレランスと小さな波長依存性を有することが分かる。
第1実施形態に基づく構造を有する実施例10の高次偏波変換素子を図43Aに示し、その中央部(Z=0.5)における断面図を43Bに示す。ここで、図43Aの座標は、素子全長を1とした規格化された値を示している。コア2はSiで形成され、クラッド5はSiO2で形成される。開始部8(Z=0)における幅W1=850nm、終了部9(Z=1)の幅W2=500nm、中央部(Z=0.5)における上部コア3の幅及び下部コア4の幅をそれぞれW3=500nm、W4=850nmに設定した。上部コア3の幅及び下部コア4ともに開始部、中央部、終了部は直線で結ばれている。また、コア2の高さ及び下部コア4の高さはそれぞれH1=220nm、H2=90nmで一定とした。
図43A及び43Bに示す高次偏波変換素子は、SOI基板のSI層をエッチングで削り、その上からSiO2を堆積させることで作製可能である。本実施例で上記実施形態に係る高次偏波変換が可能であることをシミュレーションを用いて示す。
まず、高次偏波変換部の定義について述べる。導波モードの支配的な電界成分がExかEyかを定量化に示すために、以下の式(1)及び式(2)のようにそれぞれの割合を示す量RTE、RTMを定義する。
ここで、Hx、Hyはそれぞれ幅方向と高さ方向の磁界成分であり、積分は幅方向、高さ方向を含む平面全体で行う場合を想定する。Ex(Ey)が支配的な導波モードでは、Hy(Hx)が支配的であり、電界成分と磁界成分の積の積分値は、電力の次元を持つことから、RTE(RTM)は、Ex(Ey)の電力割合を示している。本明細書では、Ex(Ey)が支配的であるとは、RTE(RTM)が0.7以上の場合をいい、0.3<RTE<0.7(0.3<RTM<0.7)のとき、ハイブリッドモードと呼ぶ。したがって、高次偏波変換部は、光の進行方向に対して、0.3<RTE<0.7(0.3<R TM<0.7)の導波モードを持つ範囲と定義される。
図43Aの高次偏波変換部を調べるため、光の進行方向の座標(z)に対して、実施例10の高次偏波変換素子を導波するモードの実効屈折率のグラフ(実効屈折率の大きい順に、#0、#1、#2と呼称している)と、#1のRTE、RTMを計算した。それぞれの結果を図44及び45に示す。図44は本実施例の実効屈折率を示し、図45は本実施例のRTE、RTMを示す。図44において、#0はTE0であり、#1は開始部8でTE1、#2は開始部8でTM0となる。図44より、#1の実効屈折率は、光の進行方向に対して単調に減少し、効率的に終了部の実効屈折率へと接続されていることが分かる。図45を見ると、開始部ではEx成分が支配的であるが、素子の中央付近でハイブリッドモードが生じ、その後終了部にかけてEy成分が支配的となる。即ち、2段テーパ導波路構造により、高次偏波変換が可能であることが示されている。また、ハイブリッドモードが素子の中央部にあることから、高次偏波変換部は、その中央部に位置することも示される。
続いて、実施例10に対する比較例2の高次偏波変換素子の構造を図46Aに示し、その中央部(Z=0.5)における断面図を46Bに示す。ここで、図46A及びBにおいてコア2の幅以外は実施例10と同様である。比較例2において開始部8(Z=0)における幅W1=850nm、終了部9(Z=1)の幅W2=500nm、中央部(Z=0.5)における上部コア3の幅及び下部コアの幅をそれぞれW3=550nm、W4=1550nmに設定した。
図47に、比較例2の構造に対して、光の進行方向の座標(z)に対して、実施例の構造中を導波するモードの実効屈折率(実効屈折率の大きい順に、#0、#1、#2と呼称している)を計算した結果を示す。また、図48に#1のRTE、RTMを計算した結果を示す。図47及び48より、高次偏波変換部は実施例10に比べ終了部9側で生じていることが分かる。さらに、全素子長に占める高次偏波変換部の割合が狭いことが分かり、高次偏波変換効率が低いことが示唆される。
実施例10と比較例2の具体的な高次偏波変換効率と、そのときの全素子長の長さをシミュレーションで計算した結果を図49に示す。導波光の波長は1550nmとした。図49より、同じ変換効率で比較した場合、実施例10の方がより短い距離で高い変換効率を得ていることが分かる。例えば、90%の変換効率を得るのに必要な素子長は、実施例10では7um、比較例2では22.5umとなり、本実施例10では比較例2の1/3以下の素子長の短尺化を可能とする。
したがって、平面上に光素子を集積する光回路部品においては、1/9以下の面積削減が可能である。
上記実施例10に基づくデバイスを試作し、評価を行った。本実施例の高次偏波変換素子の構造はコア2の幅及び高さ以外は実施例10と同様である。本実施例において開始部8(Z=0)における幅W1=860nm、終了部9(Z=1)の幅W2=500nm、中央部(Z=0.5)における上部コア3の幅及び下部コアの幅をそれぞれW3=500nm、W4=860nmであった。また、コア2の高さ及び下部コア4の高さはそれぞれH1=220nm、H2=95nmであった。
図51にその測定結果を示す。図51より、1520−1640nmの波長範囲で、92%以上の高い変換効率が得られることが確かめられた。
Claims (10)
- 基板型光導波路を構成する高次偏波変換素子であって、
基板と、
前記基板上に設けられる下部クラッドと、
前記下部クラッド上に設けられ、断面矩形状で一定の高さを有する下部コアと、前記下部コアと同じ材料で形成されかつ前記下部コアの上に連続して配置される断面矩形状で一定の高さを有する上部コアとを有するコアと、
前記コア及び前記下部クラッドの上に設けられ、前記下部クラッドと同じ材料で形成される上部クラッドと、を備え、
前記コアは、前記下部コアの幅と前記上部コアの幅とが同じである開始部から、前記下部コアの幅と前記上部コアの幅とが同じである終了部まで光が導波可能な光導波路を構成し、
前記開始部と前記終了部では、前記上部コアの幅方向の両端がそれぞれ前記下部コアの幅方向の両端と重なり、前記コアの断面が矩形状であり、
少なくとも前記上部コアの幅及び前記下部コアの幅のうちの一方は、前記開始部と前記終了部との間で前記光の導波方向に対して連続的に減少しかつ前記上部コアの幅及び前記下部コアの幅の両方が前記開始部から前記終了部まで増加せず、
前記開始部において、TE0の実効屈折率がTE1の実効屈折率よりも大きく、前記TE1の実効屈折率がTM0の実効屈折率よりも大きく、
前記光導波路の終了部において、前記TE0の実効屈折率が前記TM0の実効屈折率よりも大きく、前記TM0の実効屈折率が前記TE1の実効屈折率よりも大きく、
前記開始部と前記終了部との間の前記光導波路のうち前記開始部と前記終了部とを除く部分において、前記コアは前記上部コアの幅と前記下部コアの幅とが異なる上下非対称な構造を有し、
前記高次偏波変換素子は、前記開始部のTE1と前記終了部のTM0との間で高次偏波変換をする高次偏波変換素子。 - 前記開始部と前記終了部との間の前記光導波路のうち前記開始部と前記終了部とを除く部分において、前記下部コアの幅が前記上部コアの幅よりも常に大きくなり、前記光が導波する方向に垂直な断面において前記上部コアの下辺が前記下部コアの上辺に常に含まれる請求項1に記載の高次偏波変換素子。
- 前記開始部と前記終了部との間の前記光導波路のうち前記開始部と前記終了部とを除く部分において、前記上部コアの幅方向の両端がそれぞれ前記下部コアの前記幅方向の両端と常に重ならない請求項2に記載の高次偏波変換素子。
- 前記開始部と前記終了部との間において、前記上部コアの幅方向の一つの端が前記下部コアの前記幅方向の一つの端と常に重なる請求項2に記載の高次偏波変換素子。
- 前記開始部において、前記コアの高さが210nm以上230nm以下であり、前記コアの幅が700nm以上であり、かつ、前記終了部において、前記コアの高さが210nm以上230nm以下であり、前記コアの幅が620nm以下である請求項1に記載の高次偏波変換素子。
- 前記下部コアと前記上部コアがSiからなり、前記下部クラッドと前記上部クラッドがSiO2からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の高次偏波変換素子。
- 前記上部コアの幅が前記開始部から中間部まで減少し前記中間部から前記終了部まで一定で、かつ前記下部コアの幅が前記開始部から前記中間部まで一定で、前記中間部から前記終了部までの間で減少する請求項1〜6のいずれか1項に記載の高次偏波変換素子。
- 光導波路素子であって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の高次偏波変換素子と、
前記高次偏波変換素子が接続されていない第1の光導波路と、前記高次偏波変換素子の前記開始部と接続された第2の光導波路とで構成される方向性結合器と、を備え、
前記第1の光導波路にはTE0が導波し、前記第2の光導波路にはTE1が導波し、前記第1の光導波路のTE0が前記第2の光導波路のTE1と結合可能である光導波路素子。 - 前記第1の光導波路のTE0の実効屈折率と前記第2の光導波路のTE0の実効屈折率の差が0.2以上である請求項8に記載の光導波路素子。
- 請求項8又は9に記載の光導波路素子を備えたDP−QPSK変調器。
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