JP6424018B2 - モード変換素子及び光導波路素子 - Google Patents
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Description
しかしながら、偏波多重を含む高速通信の変調方式は複雑な構成の光変調器が必要になり、装置の大型化、高額化といった課題が生じる。こうした課題に対して、加工が容易であり、集積化による小型化、大量生産による低コスト等のメリットを持つシリコンを用いた基板型光導波路による光変調器が研究されている。
これらのモードの中で多くの場合に使用されるのは、TE0とTM0である。ここで、TE0はTEモードの中で実効屈折率が一番大きなモードを、TM0はTMモードの中で実効屈折率が一番大きなモードを指すとする。特性が異なるこれらのモードに対して、光変調操作を行う場合、単一の基板型光導波路素子だけでは困難であり、各モードごとに最適化された基板型光導波路素子が必要となるが、これは基板型光導波路素子の開発の面で大きな労力が必要となる。
このような偏波変換を基板上で行う技術として、TE0をTE1に変換し(以下、TE0−TE1モード変換と呼ぶ)、その後TE1をTM0に変換するものがある。ここで、TE1は2番目に実効屈折率の高いTEモードを表すものとする。このような変換素子は、TE0をTE1に変換させる素子とTE1をTM0に変換させる素子の二つが必要になる。
ここでは、隣り合う2つの直線導波路を有し、それらのコアの幅が互いに異なる非対称方向性結合器を用いたものがTE0−TE1モード変換素子として使用されている。
図18(非特許文献1のFig.2(a)を引用)に、その概略を示す。ここに示す変換素子210は、コア211、212及びクラッド215を有する。コア211、212の長さ方向の一部は並設されて方向性結合器218を構成している。クラッド215は下部クラッド217と上部クラッド216とを有する。
非対称方向性結合器においては、一方のコアのTE0と他方のコアのTE1をある波長において高い効率で結合させるために、この波長において、それぞれのモードの実効屈折率が等しくなるようコア幅を調整している。
しかしながら、リソグラフィとエッチングによるコアの作製プロセスにおいては、コアの幅が設計値に対して変動するといった製造誤差が生じ、これにより、TE0とTE1の実効屈折率にズレが生じて結合効率が低下し、TE0とTE1の間で十分な変換が行えなくなることがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製造誤差により導波路構造が変化した場合でもモード変換の特性を確保できるモード変換素子及び光導波路素子を提供することを課題とする。
ここでモードとは、TEモードとTMモードを合わせた総称とする。 また、モードの変換は、TEiとTEj(i≠j)、TMiとTMj(i≠j)、TEiとTMj(i,jは同じでも異なっていてもよい)の変換を含む。i,jは0以上の整数である。モード変換素子は、モード変換を行う素子を指し、TE0−TE1モード変換素子を含む。
前記入力側および出力側コアは、それぞれ前記方向性結合器の全長において、一定の曲げ半径を有する円弧状に形成されていることが好ましい。
前記入力側コアには、n番目(nは自然数)に実効屈折率が大きいTEモードであるTE(n−1)が導波し、前記出力側コアには、m番目(mは自然数。m>n)に実効屈折率が大きいTEモードであるTE(m−1)が導波し、前記入力側コアのTE(n−1)と、前記出力側コアのTE(m−1)が結合可能であることが好ましい。
前記入力側コアには、n番目(nは自然数)に実効屈折率が大きいTMモードであるTM(n−1)が導波し、前記出力側コアには、m番目(mは自然数。m>n)に実効屈折率が大きいTMモードであるTM(m−1)が導波し、前記入力側コアのTM(n−1)と、前記出力側コアのTM(m−1)が結合可能であってもよい。
前記入力側コアと出力側コアは、高さが互いに等しいことが好ましい。
前記入力側コアには、TE0が導波し、かつ前記出力側コアには、TE1が導波し、前記入力側コアのTE0と、前記出力側コアのTE1が結合可能であることが好ましい。
本発明のモード変換素子は、前記入力側および出力側コア、および前記下部クラッドの上に上部クラッドが設けられ、前記コアがSiからなり、前記下部クラッドと前記上部クラッドがSiO2からなることが好ましい。
本発明は、前記モード変換素子を備えたDP−QPSK変調器を提供する。
本発明は、前記モード変換素子を備えた偏波ダイバーシティ・コヒーレント受信機を提供する。
本発明は、前記モード変換素子を備えた偏波ダイバーシティ方式を提供する。
具体的には、第1に、2つのコアのうち外周側のコアの実効屈折率を実効的に増加させることで、位相整合を満たすコア幅を小さくし、それによってクラッド部分に浸みだす光を増加させ、結合係数を増加させることができる。
第2に、一方のコアの実効屈折率を増大させることで、コア幅が変化したときに生じる実効屈折率のずれを補正することができる。
従って、コアの幅が変化した場合でもモード変換の特性を確保できる。
図1は、本発明のモード変換素子の一実施形態であるモード変換素子10を示すもので、(a)は平面図、(b)は断面図である。
以下の説明では、図1(b)に示す、光の導波方向に垂直な断面において、入力側コア1と出力側コア2とが向かい合う方向の寸法を幅といい、前記向かい合う方向に垂直な方向の寸法を高さという。
図1(b)において、前記幅は基板Sに平行な方向の寸法であり、前記高さは基板Sに垂直な方向の寸法である。以下、高さ方向(図1(b)の上方)を上方とし、その反対方向を下方として各構造の位置関係を説明することがある。
コア1,2は、クラッド5よりも屈折率が高い材料、好ましくはSi(シリコン)からなる。コア1,2は、Si−SiO2−SiからなるSOI(Silicon on insulator)ウェハの最上層のシリコン(Si)層を加工して形成することができる。
コア1,2は、高さが一定である断面矩形状とすることができる。
出力側コア2の幅Wbは、入力側コア1の幅Waより広くすることができる。
入力側コア1の高さHaと出力側コア2の高さHbとの関係は、特に限定されず、Ha>Hb、Ha=Hb、Ha<Hbのいずれでもよいが、HaとHbとの差は極端に大きくないことが望ましい。特にHa=Hbの場合、SOIウェハの最上層のSi層をコアとして用いるときに、Si層の高さをそのままコアの高さにすることができるので、加工の手間が省け好ましい。図示例では、コア1,2の高さHa,Hbは互いに等しい。
入力側コア1および出力側コア2の長さ方向の少なくとも一部は、互いに並設されて方向性結合器8(非対称方向性結合器)を構成している。コア1,2が並設されている部分を結合部という。
方向性結合器8におけるコア1,2は、長さ方向にわたって一定の半径を有する円弧状に形成された曲げ導波路である。図示例では、コア1,2は、中心Oを中心とする円弧状に形成されている。
なお、曲げ導波路は、平面視において滑らかな曲線をなす形状のコアを有する。曲げ導波路のコアがなす形状は、円弧状に限らず、任意の曲線であってよい。例えば楕円弧状、放物線状、双曲線状などの高次曲線状(例えば二次曲線状)を採用できる。
また、図示例のコア1,2は一定の間隔をおいて形成されているが、コア1,2の間隔は必ずしも一定でなくてもよい。
本実施形態のモード変換素子10では、図1(a)に示すように、曲げ導波路の採用によって、製造誤差等によるコア1,2の幅の変動を原因とするモード変換特性(結合効率など)の低下を抑えることができる。
具体的には、次の2つの効果が得られる。
第1は、2つのコアのうち外周側のコアを導波するモードの実効屈折率を実効的に増加させることで、位相整合を満たすコア幅を小さくし、それによってクラッド部分に浸みだす光を増加させ、結合係数を増加させる効果である。
第2は、一方のコアの実効屈折率を増大させることで、コア幅が変化したときに生じる実効屈折率のずれを補正する効果である。
図17に示すモード変換素子50のように、平行な2つの直線導波路(コア11,12)からなる方向性結合器の結合効率T(モードの変換効率と同じ。入力されたモードのパワーに対する、出力されるモードのパワーの比)は、次式で表される(参考文献[1]:栖原 敏明著「光波工学」コロナ社)。
λは波長を表す。λと、βi、Niとの間には「βi=(2π/λ)Ni(i=1,2)」という関係がある。
χは方向性結合器における結合対象のモードの結合の強さを表し、結合係数と呼ばれ次式で求められる。
式(5)は、2つのコア(直線導波路)の一方の断面において、両方のモードの電界の内積を積分するものであって、この式より、クラッド部分に浸みだす電界が大きいほど結合が強くなることがわかる。
これは、式(4)において、2つの結合対象のモードの実効屈折率N1とN2を同程度にすることを表し、位相整合と呼ばれる。ここで、同程度とは、Δ<χが成り立つような場合をいう。以降、位相整合が満たされる場合を結合が可能であるとする。
高さが一定の矩形状導波路(コア)を持つ光導波路(例えば、コアがSi、クラッドがSiO2からなる光導波路)に関して、一般的に全てのモード(TEモードとTMモード)は、コア幅の増加に対して、実効屈折率が増加する。
そのため、並列させた2つの矩形状のコアにおいて、ある波長で、それぞれのコア幅を調整することで(例えば2つのコアの幅を互いに異なるように調整することで)、それぞれのモードの実効屈折率を互いに同程度にすることが可能である。このようにして、異なるモードを結合させることができる。
非対称方向性結合器は、このように異なるモード同士の実効屈折率を同程度にすることで位相整合を満たし、高効率な結合を可能にしている。
ここでは、TE0、TE1、TM0の3つのモードを示している。この図より、どのモードも幅に対して実効屈折率が単調に増加することがわかる。非対称方向性結合器の設計にあたっては、以下のようにして位相整合を図ることができる。
このようにして、2つの異なるTEモードが結合可能な非対称方向性結合器を設計することができる。
この例では、コアはSi(屈折率:3.47)からなり、上部クラッドおよび下部クラッドはSiO2(屈折率:1.44)からなり、コアの高さは220nmとし、光の波長は1550nmとした。
図5にその一例を示す。この図では、TE0とTE1の実効屈折率の値に対する、実効屈折率のコア幅に対する変化量(実効屈折率をコア幅で微分した値)を示している。実効屈折率は、図4に示したように、高さ一定の矩形導波路のコア幅を変化させることで変えている。
この例では、コアはSi(屈折率:3.47)からなり、上部クラッドおよび下部クラッドはSiO2(屈折率:1.44)からなり、コアの高さは220nmとし、光の波長は1550nmとした。
このため、高さが同じ2つのコアの幅を調整することで、異なるモードの実効屈折率を同程度にしても、製造誤差によってコア幅が変化すると、それぞれの実効屈折率はズレが生じ、式(1)〜(4)より、結合効率の低下を招いてしまう。
なお、この問題は、2つのコアが高さも幅も互いに等しく、かつ同じモードの結合を取り扱う対称な方向性結合器では生じない問題であり、異なるモードの結合を扱う非対称方向性結合器に特異的に生じる問題である。また、上記の問題は、矩形状のコアを有する導波路に限定された問題ではなく、リブ導波路や、円系/楕円形コアを有する光ファイバなど、コアとクラッドからなる光導波路の一般的な問題である。
位相整合を考えた場合、2つの隣接するコアを曲げると、外側のコアのモードの実効屈折率が内側のコアのモードの実効屈折率に対して、2つのコアの曲げ半径の比に関係した量だけ実効的に増加する。これは以下の理由による。
位相整合条件とは、2つのコアを伝搬する異なるモードの光の位相速度を一致させる条件を意味する。
2つの光の速度が近いほど干渉による結合は大きくなり、2つの光の速度のずれが大きいと干渉が生じず結合は低下する。
速度の低下は実効屈折率の増加と等価(位相速度=真空中の光速/実効屈折率)であるため、速度整合(すなわち位相整合)を考えた場合、外側の導波路の実効屈折率が実効的に増加することになる。
まず、図1に示すように、中心が同じで、それぞれ一定の半径の円弧状に曲げた2つのコアを有する非対称方向性結合器の結合効率を導出する。ここでも、参考文献[1](栖原 敏明著「光波工学」コロナ社)を参考にしている。
図1において、コア1,2の半径Ra、Rbは、曲げの中心Oからそれぞれのコアの幅方向中央までの長さとする。
また、コア1,2の間隔をGとすると、Gはコア1,2が隣接する区間では一定である。コア1の幅をWa、コア2の幅をWbとしたとき、Rb=Ra+G+Wa/2+Wb/2となる。
図1に示す座標系では、伝播する光の位相はθにのみ依存し、またθの変化に対して振幅が変化することを考慮すると、参考文献[1]のp.131の式(5.1)は次のように書き換えられる。
a(θ)、b(θ)はそれぞれのモードの電界分布のθで変化する項を示し、Ea(r,y)、Eb(r,y)はr,yで変化する項を示している。
Na、Nbはそれぞれの曲げ導波路が独立に存在する際の、コア断面(コアの径方向に沿う断面)に垂直な方向(図2の矢印参照)に光が伝搬する際の実効屈折率を示している。
曲げ導波路に関する式(15)の「(Rb/Ra)Nb」は、外側のコアの実効屈折率Nbに(Rb/Ra)(>1)が乗算されているため、Nbの波長に対する実効屈折率変化量も(Rb/Ra)倍され、波長に対する実効屈折率のずれを補償することができる。
本明細書において「実効的に実効屈折率が増加する」とは、このように、位相整合を考慮した場合に、外側のコアの実効屈折率が見かけ上大きくなることをいう。なお、曲げ導波路における位相整合は、Δ’<χ’が成り立つときをいうものとする。
具体的には、例えば、コア1を結合対象の低次のTEモード(またはTMモード)、コア2を結合対象の高次のTEモード(またはTMモード)が導波するように定める。このため、コア2の方がコア1より幅が太くなる。
このとき、次の2つの理由により、製造誤差によるコア幅の変化によって2つのコアの結合対象のモードの実効屈折率がずれ、それによって結合効率の低下する問題を解決する。
同じモードを考えた場合、コア幅は狭いほどコアへの閉じ込めが弱くなり、電界はクラッドに浸み出す。そのため、コア幅が狭くすることができることにより、隣接するコアへ漏れる光が増大し、結合係数χが向上する。これにより、製造誤差により実効屈折率がずれ、位相整合の度合いが低下してもχが大きくなるため、結合効率低下を抑えることができる。
従って、コアの幅が変化した場合でもモード変換の特性を確保できる。
本発明で扱うモードの変換は、TEiとTEj(i≠j)、TMiとTMj(i≠j)、TEiとTMj(i,jは同じでも異なっていてもよい)の変換を含む。
なお、本発明のモード変換素子は、基板型導波路に限らず、2本の光ファイバを融着した光ファイバカプラや、2つのコアを有するマルチコアファイバによって構成することが可能である。これは、結合効率を表す式(8)〜(11)、もしくは(12)〜(16)が、特定の光導波路構造を規定しなくても成り立つためである。
しかしながら、一回のエッチングでコアを作製する場合は、コアの高さは一定とし、コア幅を変えることで位相整合を図ることが好ましい。逆に言うと、コア幅のみで位相整合を満たすようにすれば、一回のエッチングプロセスでコアを形成可能であり、製造の単純化を図ることができる。
<実施例1>
実施例1のモード変換素子10は、曲げ導波路を用いた非対称方向性結合器を備えており、図1に示す構造を有する。
本実施例のモード変換素子10は、SOIウェハの中間のSiO2層(屈折率:1.44)を下部クラッドとし、Si層(屈折率:3.47)をコア1,2として用いる。コア1,2の形成後、上部クラッドとしてSiO2層を設ける。
本実施例では、TE0とTE1のモード変換における変換効率をシミュレーションした。以下のシミュレーションは有限要素法(FEM:finite element method)による。
比較のため、図17に示すように、直線的に形成されたコア11,12(入力側コア11および出力側コア12)以外は実施例1と同様の構成を有するモード変換素子50についても、同様のシミュレーションを行った。
ここに示すモード変換素子50では、入力側コア11および出力側コア12は、互いに並設されて方向性結合器18(非対称方向性結合器)を構成している。
ここでは、入力側コアの幅を、実施例1、比較例1ともに400nmとしている。また、コア間隔は300nm、実施例1のコア1の半径Raを40μmとした。このとき、波長1550nmにおいて、実効屈折率が入力側コアと同程度になるように出力側コアの幅を定めた。結果を表1に示す。
このときの結合係数χは、実施例1では、χ’=0.042[rad/μm]、比較例1では、χ=0.038[rad/μm]となる。これらはともに、Δ’<χ’(Δ<χ)が成り立つため、位相整合の条件が満たされている。
この図より、実施例1(曲げ導波路)の方が、製造誤差δに対してΔ’が低く抑えられていることがわかる。
これは、前述したように、コア2を導波するモードの実効屈折率が定数倍されることにより、異なるモードの製造誤差による実効屈折率変化量を補償しているからである。
そのため、出力側コア2のTE1はよりクラッド部分に浸み出し、結合が向上する。
これを確認するために、直線導波路(比較例1)におけるχと、曲げ導波路(実施例1)におけるχ'とを、製造誤差δに関して比較した結果を図7に示す。
この図より、実施例1(曲げ導波路)の方が、結合係数が高くなっていることがわかる。
この図より、Δ’(Δ)とχ’(χ)がそれぞれ向上しているため、実施例1(曲げ導波路)では製造誤差に対する結合効率の劣化が低減されていることがわかる。
また、実施例1では結合長を短くできるため、モード変換素子10の小型化を図ることができる。
図9は、モード変換素子10の第1変形例であるモード変換素子10Aを示す図である。
モード変換素子10Aでは、方向性結合器8の入力側コア1の入力側の端部には直線導波路13aが接続され、入力側コア1の出力側の端部には曲げ導波路13bが接続されている。
方向性結合器8の出力側コア2の入力側の端部には曲げ導波路14aが接続され、出力側コア2の出力側の端部には直線導波路14bが接続されている。
方向性結合器8の入力側では、入力側コア1に接続された直線導波路13aと、出力側コア2に接続された曲げ導波路14aとは、方向性結合器8に近づくほど互いに接近している。
方向性結合器8の出力側では、入力側コア1に接続された曲げ導波路13bと出力側コア2に接続された直線導波路14bとは、方向性結合器8から離れるほど互いに離間している。
モード変換素子10Aでは、方向性結合器8の一方側および他方側において、2つのコアが徐々に接近/離間して形成されているため、不要な光の反射を抑えることができる。
図10は、モード変換素子10の第2変形例であるモード変換素子10Bを示す図である。
モード変換素子10Bでは、方向性結合器8の入力側コア1の入力側の端部に、直線導波路13aに代えて曲げ導波路13cが接続されていること、および、出力側コア2の出力側の端部に直線導波路14bに代えて曲げ導波路14cが接続されている点で、図9に示すモード変換素子10Aと異なる。
方向性結合器8の入力側では、曲げ導波路13cと曲げ導波路14aとは、方向性結合器8に近づくほど互いに接近している。方向性結合器8の出力側では、曲げ導波路13bと曲げ導波路14cとは、方向性結合器8から離れるほど互いに離間している。
モード変換素子10Bでは、方向性結合器8の一方側および他方側において、2つのコアが徐々に接近/離間して形成されているため、不要な光の反射を抑えることができる。
なお、コア1,2の入力側および出力側に曲げ導波路または直線導波路を接続する構造は、図9および図10に示すものに限定されず、これら以外の組み合わせの導波路(曲げ導波路、直線導波路)をコア1,2に接続してもよい。
図11は、モード変換素子10と、高次偏波変換素子101とを組み合わせた光導波路素子の一例を示す。
方向性結合器8の入力側コア1に接続される入力側の導波路をポート1aとし、方向性結合器8の出力側コア2の入力側に接続される導波路をポート2aとする。出力側コア2の出力側にあるポート2bは、高次偏波変換素子101に接続される。なお、高次偏波変換とは、TE1とTM0との間の変換をいう。
コア102は例えばSiからなる。下部クラッド103は例えばSiO2からなる。上部クラッド104は例えば空気からなる。
高次偏波変換を行うには、上部クラッド104と下部クラッド103が互いに異なる屈折率を持つことが必要である。
高次偏波変換素子101では、TE0(およびTE0’)は別のモードへの変換が行われないため、ポート1a、2aにそれぞれTE0、TE0’を入力すると、高次偏波変換素子101の出力側から、TM0とTE0’とが合波した出力が得られる。これにより、この光導波路素子は、偏波多重を行うための素子として用いることが可能である。
図11の光導波路素子においては、高次偏波変換素子101に代えて、図13に示す高次偏波変換素子111(特願2013−135490を参照)を用いることもできる。
図13(a)にコア112の平面図、図13(b)〜図13(d)にそれぞれコア112の終了部、中間部、開始部の断面図を示す。コア112の周囲には図示しないクラッドが設けられている。図13(a)では下部コア114に網かけを付した。
開始部118のコア幅W1は終了部119のコア幅W2より大きい。開始部118と終了部119のコア高さはいずれもH1であり、下部コア114の高さH2はコア高さH1より低い。
中間部120から終了部119までの区間L2では、下部コア114の幅は中間部120から終了部119にかけて徐々に小さくなる一方、上部コア113の幅は一定である。
高次偏波変換素子111では、開始部118の断面の導波モードは、実効屈折率がTE0、TE1、TM0の順に小さくなり、終了部119の断面の導波モードは、実効屈折率がTE0、TM0、TE1の順に小さくなる。その間を上下非対称なコア断面によるテーパ導波路で構成しているため、TE1とTM0の変換が可能となる。
(DP−QPSK変調器)
本発明のモード変換素子は、参考文献[2](P. Dong, C. Xie, L. Chen, L. L. Buhl, andY.−K. Chen, “112−Gb/s Monolithic PDM−QPSK Modulator in Silicon,” European Conference and Exhibition on Optical Communication, Vol. 1, p. Th.3.B.1, June 16, 2012)で開示されているような偏波多重4値位相変調(DP−QPSK:Dual Polarization−Quadrature Phase Shift Keying)に使用することが可能である。
図14にDP−QPSK変調器の一例を模式的に示す。このDP−QPSK変調器20は、通常の光導波路にTE0とTM0の2つのモードが存在できることを利用して、TE0/TM0の両モードに独立したQPSK信号を有する、DP−QPSK変調を行う。具体的には、入力部21からTE0で入力した光を2つの光導波路22,22に分岐し、QPSK変調器23,23により各々QPSK信号に変調した後、光導波路24,24の片側のTE0を偏波変換素子25によりTM0に変換させて、2つのモードを偏波ビームコンバイナで同一の光導波路上に合成し、TE0とTM0に独立した信号を出力部26に出力する。
(偏波ダイバーシティ・コヒーレント受信機)
本発明の偏波変換素子は、参考文献[3](C. Doerr et al., “Packaged Monolithic Silicon 112−Gb/s Coherent Receiver,” IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 23, pp. 762−764, 2011)で開示されているような、TE0とTM0を同時に伝送した偏波多重信号のSi光導波路上のコヒーレント受信機に使用することが可能である。
図15に、偏波ダイバーシティ・コヒーレント受信機の一例を模式的に示す。このコヒーレント受信機30は、TE0とTM0を同時に伝送した偏波多重信号の光導波路31を、偏波変換と偏波ビームスプリッタが同時に行える偏波変換素子32に接続し、光導波路33,33の一方にはTE0の信号を、また、光導波路33,33の他方にはTM0から変換したTE0の信号を分岐させる。局発光34として、一般的に用いられる半導体レーザ光源は片偏波のみ、例えばTE0(local)の出力を用いる。このような光源を用いる場合、従来では局発光の偏波変換が必要となる。
しかし、このコヒーレント受信機30では、信号光は偏波分離後にいずれもTE0の信号(signal)となるので、局発光の偏波変換が不要になる。信号光と局発光は、光合波部35を経て、結合部36から出力される。
偏波変換素子32に光導波路型の構造を用いる場合、結合部36における素子外部との光の結合には、基板側方より結合する逆テーパ型のモードフィールド変換器など、偏波分離機能を持たない結合器を利用することが可能である。結合器には、例えば参考文献[4](Qing Fang, et al., “Suspended optical fiber−to−waveguide mode size converter for silicon photonics,” Optics Express, Vol. 18, Issue 8, pp. 7763−7769 (2010))に開示されている、逆テーパ型の構造が開示できる。
(偏波ダイバーシティ方式)
本発明の偏波変換素子は、参考文献[5](Hiroshi Fukuda et al., “Silicon photoniccircuit with polarization diversity,” Optics Express, Vol. 16, Issue 7, pp. 4872−4880 (2008))で開示されているような、TE0とTM0が同時に伝送される偏波多重伝送や、片方の偏波がランダムに伝送されるときに、両モードに対して同様の操作を与えるための素子を利用したい場合、偏波ダイバーシティ方式を実行するために用いることができる。
図16に示す偏波ダイバーシティ方式40では、TE0とTM0が同時に伝送される偏波多重信号の光導波路41を、偏波変換と偏波ビームスプリッタが同時に行える偏波変換素子42に接続し、光導波路43,43の一方にはTE0の信号を、また、光導波路43,43の他方にはTM0から変換したTE0の信号を分岐させる。素子44,44で操作されたTE0の信号光は、光導波路45,45から偏波変換素子46で合成して、TE0とTM0が同時に伝送される偏波多重信号の光導波路47に出力する。
偏波変換素子46には、DP−QPSK変調器と同様に、偏波変換と偏波ビームコンバイナが同時に行える本発明の偏波変換素子を用いることができる。
Claims (11)
- 下部クラッドと、前記下部クラッド上に形成され、前記下部クラッドより屈折率が大きい一対のコアと、を備え、
前記一対のコアは、コア幅が互いに異なり、且つ互いに離間して形成され、これらのうち一方は入力側コアであり、他方は出力側コアであり、
前記入力側および出力側コアは、少なくとも一部が並設されることによって方向性結合器を構成し、
前記方向性結合器は、前記入力側コアから前記出力側コアに、異なるモード間での結合が可能であり、
前記入力側および出力側コアは、前記方向性結合器の少なくとも一部において、前記入力側コアを内周側とし、かつ前記出力側コアを外周側として曲がって形成された曲げ導波路とされていることを特徴とするモード変換素子。 - 前記入力側および出力側コアは、それぞれ前記方向性結合器の全長において、一定の曲げ半径を有する円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のモード変換素子。
- 前記入力側コアには、n番目(nは自然数)に実効屈折率が大きいTEモードであるTE(n−1)が導波し、
前記出力側コアには、m番目(mは自然数。m>n)に実効屈折率が大きいTEモードであるTE(m−1)が導波し、
前記入力側コアのTE(n−1)と、前記出力側コアのTE(m−1)が結合可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のモード変換素子。 - 前記入力側コアには、n番目(nは自然数)に実効屈折率が大きいTMモードであるTM(n−1)が導波し、
前記出力側コアには、m番目(mは自然数。m>n)に実効屈折率が大きいTMモードであるTM(m−1)が導波し、
前記入力側コアのTM(n−1)と、前記出力側コアのTM(m−1)が結合可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のモード変換素子。 - 前記入力側コアと出力側コアは、高さが互いに等しいことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のモード変換素子。
- 前記入力側コアには、TE0が導波し、かつ前記出力側コアには、TE1が導波し、前記入力側コアのTE0と、前記出力側コアのTE1が結合可能であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のモード変換素子。
- 前記入力側および出力側コア、および前記下部クラッドの上に上部クラッドが設けられ、
前記コアがSiからなり、前記下部クラッドと前記上部クラッドがSiO2からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のモード変換素子。 - 請求項1〜7のうちいずれか1項に記載のモード変換素子と、前記出力側コアに接続された高次偏波変換素子とを有することを特徴とする光導波路素子。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のモード変換素子を備えたDP−QPSK変調器。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のモード変換素子を備えた偏波ダイバーシティ・コヒーレント受信機。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のモード変換素子を備えた偏波ダイバーシティ方式。
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