以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1中の油圧ショベル1は、建設機械の代表例であり、例えば市街地等の狭い作業現場での掘削作業に好適に用いられる小型の油圧ショベル(ミニショベル)となっている。この油圧ショベル1の車体は、クローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより構成され、上部旋回体3の旋回半径が下部走行体2の車幅内にほぼ収まるようになっている。上部旋回体3の前部側には、スイングポスト4を介して左,右方向に揺動可能に支持された作業装置5が設けられ、この作業装置5を用いて土砂の掘削作業等を行うものである。
ここで、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム6、キャブ9、カウンタウエイト10、エンジン11、冷却ファン31、熱交換器32、シュラウド33等を含んで構成されている。
旋回フレーム6は、上部旋回体3のベースとなるもので、この旋回フレーム6は強固な支持構造体として形成されている。図2に示すように、旋回フレーム6は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板6Aと、該底板6A上に前,後方向に延びて立設され、左,右方向の間隔が前方に向けて徐々に狭まるように配置された左前縦板6B,右前縦板6Cと、底板6A上に左,右方向に延びて立設され左,右の前縦板6B,6Cの後端に固着された横板6Dと、横板6Dの後側で底板6A上に立設された略U字状の後板6Eと、底板6Aの左側方に配置され前,後方向に延びた略円弧状の左サイドフレーム6Fと、底板6Aの右側方に配置され前,後方向に延びた略円弧状の右サイドフレーム6Gと、底板6Aと左サイドフレーム6Fとの間に前,後方向に間隔をもって配置され両者間を連結する複数の左張出しビーム6Hと、底板6Aと右サイドフレーム6Gとの間に前,後方向に間隔をもって配置され両者間を連結する複数の右張出しビーム6Jとを含んで構成されている。
ここで、後板6Eは、横板6Dを挟んで左前縦板6Bの後側に配置される左後縦板6E1と、横板6Dを挟んで右前縦板6Cの後側に配置される右後縦板6E2と、左,右の後縦板6E1,6E2間を連結して左,右方向に延び、横板6Dと前,後方向で対面する後横板6E3とにより構成されている。横板6Dと後横板6E3との間には、底板6Aと横板6Dとに接合されたL字状のエンジン取付台座7Aと、底板6Aと後横板6E3とに接合されたL字状のエンジン取付台座7Bが設けられている(図6参照)。また、後板6Eの左後縦板6E1には、前,後に離間して2個のL字状のエンジン取付台座7C,7Dが設けられている(図8参照)。これら4個のエンジン取付台座7A,7B,7C,7Dには、後述のエンジン11が取付けられる。一方、右サイドフレーム6Gの後側と後板6Eの右後縦板6E2との間には熱交換器取付台座8が配設され、この熱交換器取付台座8上には後述の熱交換器32が取付けられる。
キャブ9は、旋回フレーム6の左側に搭載され、油圧ショベル1を操縦するオペレータの運転室を画成している。キャブ9内には、オペレータが着席する運転席9A、下部走行体2を走行操作するための操作レバー(図示せず)、作業装置5を操作するための操作レバー9B等が配設されている。カウンタウエイト10は、旋回フレーム6の後端部に設けられている。カウンタウエイト10は重量物として形成され、作業装置5との重量バランスをとるものである。
原動機としてのエンジン11は、カウンタウエイト10の前側に位置して旋回フレーム6上に搭載されている。エンジン11は、クランク軸11Aの軸線が左,右方向に延びる横置き状態で配置され、旋回フレーム6上に配設された各エンジン取付台座7A,7B,7C,7Dに、後述の左マウント部材12、右前マウント部材14、右後マウント部材16を介して支持されている。エンジン11の左,右方向の一側(左側)には、油圧ポンプ(図示せず)が取付けられ、該油圧ポンプは、エンジン11によって駆動されることにより、油圧ショベル1に設けられた各種の油圧アクチュエータに作動用の圧油を供給する。また、エンジン11の左,右方向の他側(右側)には、後述の冷却ファン31が設けられている。
図3ないし図6に示すように、エンジン11は、熱交換器32と左,右方向で対向する正面11Bと、正面11Bに対して左,右方向の反対側に位置する背面11Cと、旋回フレーム6の横板6Dと前,後方向で対面する前側面11Dと、前側面11Dに対して前,後方向の反対側に位置する後側面11Eとを有している。
エンジン11の背面11C側に設けられたフライホイールハウジング11Gには、エンジン11を旋回フレーム6のエンジン取付台座7C,7Dに取付けるための左マウント部材12が固定されている。この左マウント部材12は、図8に示すように、エンジン11から旋回フレーム6に伝わる振動を抑えるために前,後方向に間隔をもって配置された前,後の防振部材12Aと、各防振部材12Aを介して旋回フレーム6のエンジン取付台座7C,7Dに取付けられる前フレーム取付板12B,後フレーム取付板12Cと、これら前,後のフレーム取付板12B,12Cに一体に固定され、複数のボルト13を用いてフライホイールハウジング11Gに取付けられる円板状のエンジン取付板12Dとを含んで構成されている。
右前マウント部材14は、旋回フレーム6のエンジン取付台座7Aとエンジン11の前側面11Dとの間に設けられ、エンジン取付台座7Aに対してエンジン11を弾性的に支持するものである。ここで、図8および図9に示すように、右前マウント部材14は、エンジン11から旋回フレーム6に伝わる振動を抑える防振部材14Aと、旋回フレーム6のエンジン取付台座7Aと上,下方向で対面し、防振部材14Aを介してエンジン取付台座7Aに取付けられる車体取付部としての車体取付板14Bと、エンジン11の前側面11Dと対面した状態で車体取付板14Bに固定され、複数(例えば4本)のボルト15を用いてエンジン11の前側面11Dに締結される原動機取付部としての原動機取付板14Cと、原動機取付板14Cから熱交換器32に向けて左,右方向に張出す張出し板14Dとを含んで構成されている。
この場合、原動機取付板14Cと張出し板14Dとは1枚の板体を用いて一体形成され、車体取付板14Bと原動機取付板14Cとの接合部は補強板14Eによって補強されている。原動機取付板14Cには、ボルト15用の4個のボルト挿通孔14C1が穿設されている。また、張出し板14Dの先端(熱交換器32側の端部)には、上,下方向に離間して2個のボルト挿通孔14D1が穿設され、これら各ボルト挿通孔14D1が設けられた部位に、後述する右前マウント側ブラケット37が取付けられる構成となっている。
右後マウント部材16は、旋回フレーム6のエンジン取付台座7Bとエンジン11の後側面11Eとの間に設けられ、エンジン取付台座7Bに対してエンジン11を弾性的に支持するものである。この右後マウント部材16は、エンジン11を挟んで右前マウント部材14と前,後方向で対向する位置に配置されている。ここで、図8および図10に示すように、右後マウント部材16は、エンジン11から旋回フレーム6に伝わる振動を抑える防振部材16Aと、旋回フレーム6のエンジン取付台座7Bと上,下方向で対面し、防振部材16Aを介してエンジン取付台座7Bに取付けられる車体取付部としての車体取付板16Bと、エンジン11の後側面11Eと対面した状態で車体取付板16Bに固定され、複数(例えば4本)のボルト17を用いてエンジン11の後側面11Eに締結される原動機取付部としての原動機取付板16Cと、原動機取付板16Cの熱交換器32側の端部に溶接等の手段を用いて固着され、後述のコンプレッサ25を支持するコンプレッサ支持部材としてのコンプレッサ支持板16Dとを含んで構成されている。
この場合、原動機取付板16Cには、ボルト17用の4個のボルト挿通孔16C1が穿設されている。また、車体取付板16Bと原動機取付板16Cとの接合部は補強板16Eによって補強されている。一方、コンプレッサ支持板16Dには、コンプレッサ25を取付けるための半円弧状をなす切欠き部16D1が設けられ、切欠き部16D1の上,下方向の両端部には、ボルト挿通孔16D2が穿設されている。また、コンプレッサ支持板16Dの上端側には、ボルト挿通孔16D2の近傍に位置して2個のボルト孔(雌ねじ孔)16D3が螺設され、これら各ボルト孔16D3が設けられた部位に、後述する右後マウント側ブラケット38が取付けられる構成となっている。
このように、エンジン11の背面11C側に取付けられた左マウント部材12が、防振部材12Aを介してエンジン取付台座7C,7Dに取付けられ、エンジン11の前側面11Dに取付けられた右前マウント部材14が、防振部材14Aを介してエンジン取付台座7Aに取付けられ、エンジン11の後側面11Eに取付けられた右後マウント部材16が、防振部材16Aを介してエンジン取付台座7Bに取付けられることにより、エンジン11が旋回フレーム6に対して弾性的に支持されている。
一方、エンジン11の上面11Fには、エンジン11を吊上げるときに吊上げ用のロープを係止するための吊り部材18が設けられている。この吊り部材18は、図11に示すように、エンジン11に固定される逆U字状の枠体18Aと、該枠体18Aに固着されたロープ係止具18Bとを含んで構成されている。枠体18Aには4個のボルト挿通孔18Cが設けられ、枠体18Aは、各ボルト挿通孔18Cに挿通されたボルト19を用いてエンジン11の上面11Fおよび前側面11Dに取付けられる。吊り部材18の枠体18Aには2個の溶接ナット18Dが固着されており、これら各溶接ナット18Dが設けられた部位に、後述する原動機側ブラケット39が取付けられる構成となっている。
この場合、エンジン11の背面11Cの上端側には、吊り部材18のロープ係止具18Bから左,右方向に離間した部位に他のロープ係止具20が設けられている(図5参照)。従って、このロープ係止具20と吊り部材18のロープ係止具18Bとに吊上げ用のロープを係止することにより、このロープを用いてエンジン11を安定して吊上げることができる構成となっている。
一方、図6に示すように、エンジン11の正面11B側には、クランク軸11Aの端部が突出し、このクランク軸11Aの端部には駆動プーリ21が固定されている。また、エンジン11の正面11B側には、冷却ファン31の回転軸31Aに取付けられた従動プーリ22、および他の従動プーリ23が回転可能に設けられている。一方、エンジン11の前側面11D側には、エンジン11の回転によって発電を行うオルタネータ24が配置されている。エンジン11の後側面11E側には、エンジン11の回転によって空調用の空気を圧縮するコンプレッサ25が配置されている。
ここで、コンプレッサ25は、図10に示すように、取付フランジ25Aを有し、この取付フランジ25Aには、右後マウント部材16のコンプレッサ支持板16Dに設けられたボルト挿通孔16D2に対応する2個のボルト挿通孔25Bが穿設されている。そして、コンプレッサ25は、コンプレッサ支持板16Dの切欠き部16D1内に配置された状態で、取付フランジ25Aのボルト挿通孔25Bとコンプレッサ支持板16Dのボルト挿通孔16D2とに挿通されたボルト25Cを用いて、コンプレッサ支持板16Dに締結されている。
また、エンジン11の正面11B側には、駆動プーリ21、従動プーリ22、オルタネータ24に巻回されたファンベルト26と、駆動プーリ21、他の従動プーリ23、コンプレッサ25に巻回されたエアコンベルト27が配置されている。ファンベルト26は、エンジン11の回転を冷却ファン31、オルタネータ24に伝達するものであり、エアコンベルト27は、エンジン11の回転をコンプレッサ25に伝達するものである。さらに、エンジン11の正面11B側には、熱交換器32とエンジン11のウォータジャケット(図示せず)との間でエンジン冷却水を循環させるウォータポンプ28と、熱交換器32とウォータポンプ28との間を接続するラジエータホース29,30とが配置されている。この場合、小型の油圧ショベル1に搭載されるエンジン11は小型であるため、上述した駆動プーリ21、従動プーリ22,23、ファンベルト26、エアコンベルト27等の付属部品は、エンジン11のうち冷却ファン31に対向する正面11Bの、ほぼ全面に亘って配置されている。
冷却ファン31は、エンジン11の左,右方向の他側(右側)に取付けられ、エンジン11によって駆動されるものである。この冷却ファン31は吸込式のファンからなり、エンジン11(クランク軸11A)の回転が駆動プーリ21、ファンベルト26、従動プーリ22を介して伝達されることにより回転駆動される。これにより、冷却ファン31は外気を吸込み、この外気を冷却風Fとして熱交換器32に供給するものである。
熱交換器32は、冷却ファン31と対向して旋回フレーム6に搭載され、エンジン冷却水、作動油等の加熱された流体を冷却するものである。ここで、熱交換器32は、旋回フレーム6の熱交換器取付台座8上に取付けられた略四角形状の支持枠体32Aと、この支持枠体32A内に配設されたラジエータ32B、オイルクーラ32C等により構成されている。ラジエータ32Bは、エンジン11のウォータジャケットとの間で循環するエンジン冷却水の熱を、冷却ファン31からの冷却風F中に放熱することにより、加熱されたエンジン冷却水を冷却する。一方、オイルクーラ32Cは、油圧ショベル1に設けられた各種の油圧アクチュエータから作動油タンク(図示せず)に環流する作動油(戻り油)の熱を、冷却ファン31からの冷却風F中に放熱することにより、加熱された作動油を冷却する。
次に、冷却ファン31と熱交換器32との間に冷却風通路を形成するシュラウドについて説明する。
シュラウド33は、冷却ファン31を外周側から覆った状態で、エンジン11と熱交換器32との間に配置されている。図8および図12に示すように、シュラウド33は、熱交換器32を構成する支持枠体32Aに取付けられた熱交換器側シュラウド34と、冷却ファン31を外周側から全周に亘って取囲むファン側シュラウド35とを含んで構成されている。このシュラウド33は、冷却ファン31と熱交換器32との間に冷却風通路36を形成し、冷却ファン31による冷却風の流れを整えるものである。
熱交換器側シュラウド34は、熱交換器32の支持枠体32Aのうち冷却ファン31と対向する面に取付けられる矩形の枠状をなす取付枠部34Aと、この取付枠部34Aの中央部から冷却ファン31に向けて突出する円筒部34Bとを有している。ここで、円筒部34Bの突出端側の内周面には、樹脂材料を用いて形成された環状のシールラバー34Cが全周に亘って設けられている(図7参照)。
ファン側シュラウド35は、冷却ファン31の外径寸法よりも大きな内径寸法を有し、かつ熱交換器側シュラウド34の円筒部34Bの内径寸法よりも小さな外径寸法を有する円筒状に形成されている。ファン側シュラウド35の内周面は、冷却風の流れを円滑にして吸気音(風切音)や風量を調整するため、ベルマウス形状を有している。ファン側シュラウド35の熱交換器32側の端縁35Aは、熱交換器側シュラウド34の円筒部34B内に挿入され、この端縁35Aには、樹脂材料を用いて形成された環状のモール35Bが全周に亘って設けられている(図7参照)。
ファン側シュラウド35のエンジン11側の端縁には、周方向に離間して3個のフランジ部35C1,35C2,35C3が設けられ、これら各フランジ部35C1,35C2,35C3には、それぞれ1個のボルト挿通孔35D1,35D2,35D3が穿設されている(図9〜図11参照)。ここで、2個のフランジ部35C1,35C2は、円筒状をなすファン側シュラウド35の径方向に離間してエンジン11を前,後から挟むように、それぞれファン側シュラウド35の下部側に配置されている。また、残余のフランジ部35C3は、2個のフランジ部35C1,35C2間に位置してファン側シュラウド35の頂部側に配置されている。なお、ファン側シュラウド35のフランジ部は3個に限るものではなく、4個以上のフランジ部を設ける構成としてもよい。
これら各フランジ部35C1,35C2,35C3を、エンジン11側に設けられた後述の各ブラケット37,38,39の先端に取付けることにより、エンジン11に対してファン側シュラウド35が支持されている。これにより、エンジン11に設けられた冷却ファン31の振動系と、エンジン11側に支持されたファン側シュラウド35の振動系とが等しくなり、冷却ファン31の外周縁とファン側シュラウド35の内周面との間に形成される隙間(チップクリアランス)40を可及的に小さくできる構成となっている。また、ファン側シュラウド35の端縁35Aを、熱交換器側シュラウド34の円筒部34B内に挿入した状態で、ファン側シュラウド35の端縁35Aに設けたモール35Bは、円筒部34Bの内周面に設けたシールラバー34Cに隙間なく密着する構成となっている。
次に、エンジン11を支持する右前マウント部材14、右後マウント部材16とファン側シュラウド35との間にそれぞれ設けられた2個のマウント側ブラケットと、エンジン11に設けられた吊り部材18とファン側シュラウド35との間に設けられた原動機側ブラケットについて説明する。
2個のマウント側ブラケットのうち一方のブラケットである右前マウント側ブラケット37は、右前マウント部材14とファン側シュラウド35のフランジ部35C1との間に設けられている。図8および図9に示すように、右前マウント側ブラケット37は、右前マウント部材14の張出し板14Dと前,後方向で対向し上,下方向に延びたマウント取付板部37Aと、マウント取付板部37AからL字状に折曲げられファン側シュラウド35のフランジ部35C1と左,右方向で対向するシュラウド取付板部37Bとを含んで構成されている。
右前マウント側ブラケット37の基端となるマウント取付板部37Aの下端側には、右前マウント部材14の張出し板14Dに設けられた2個のボルト挿通孔14D1に対応する2個の溶接ナット37Cが設けられている。一方、右前マウント側ブラケット37の先端となるシュラウド取付板部37Bの上端側には、ファン側シュラウド35のフランジ部35C1に設けられたボルト挿通孔35D1に対応する1個の溶接ナット37Dが設けられている。
右前マウント側ブラケット37は、マウント取付板部37Aを右前マウント部材14の張出し板14Dに当接させた状態で、張出し板14Dのボルト挿通孔14D1に挿通した2本のボルト37Eを溶接ナット37Cに螺着することにより、右前マウント部材14に固定される。この状態で、ファン側シュラウド35のフランジ部35C1を、右前マウント側ブラケット37のシュラウド取付板部37Bに当接させ、フランジ部35C1のボルト挿通孔35D1に挿通したボルト37Fを溶接ナット37Dに螺着する。これにより、ファン側シュラウド35のフランジ部35C1は、右前マウント側ブラケット37を介して右前マウント部材14に支持されている。
2個のマウント側ブラケットのうち他方のブラケットである右後マウント側ブラケット38は、右後マウント部材16とファン側シュラウド35のフランジ部35C2との間に設けられている。図8および図10に示すように、右後マウント側ブラケット38は、右後マウント部材16のコンプレッサ支持板16Dと左,右方向で対向し上,下方向に延びたマウント取付板部38Aと、マウント取付板部38Aから逆U字状に折曲げられファン側シュラウド35のフランジ部35C2と左,右方向で対向するシュラウド取付板部38Bと、マウント取付板部38Aとシュラウド取付板部38Bとの間を連結する補強板部38Cとを含んで構成されている。
右後マウント側ブラケット38の基端となるマウント取付板部38Aには、右後マウント部材16のコンプレッサ支持板16Dに設けられた2個のボルト孔16D3に対応する2個のボルト挿通孔38Dが設けられている。一方、右後マウント側ブラケット38の先端となるシュラウド取付板部38Bには、ファン側シュラウド35のフランジ部35C2に設けられたボルト挿通孔35D2に対応する1個の溶接ナット38Eが設けられている。
右後マウント側ブラケット38は、マウント取付板部38Aを右後マウント部材16のコンプレッサ支持板16Dに当接させた状態で、ボルト挿通孔38Dに挿通した2本のボルト38Fをコンプレッサ支持板16Dのボルト孔16D3に螺着することにより、右後マウント部材16に固定される。この状態で、ファン側シュラウド35のフランジ部35C2を、右後マウント側ブラケット38のシュラウド取付板部38Bに当接させ、フランジ部35C2のボルト挿通孔35D2に挿通したボルト38Gを溶接ナット38Eに螺着する。これにより、ファン側シュラウド35のフランジ部35C2は、右後マウント側ブラケット38を介して右後マウント部材16に支持されている。
原動機側ブラケット39は、エンジン11の上面11Fに設けられた吊り部材18とファン側シュラウド35のフランジ部35C3との間に設けられている。図8および図11に示すように、原動機側ブラケット39は、吊り部材18の枠体18Aと左,右方向で対向する吊り部材取付板部39Aと、吊り部材取付板部39Aから斜め上向きに折曲げられファン側シュラウド35のフランジ部35C3と左,右方向で対向するシュラウド取付板部39Bと、吊り部材取付板部39Aとシュラウド取付板部39Bとの間を連結する補強板部39Cとを含んで構成されている。
原動機側ブラケット39の基端となる吊り部材取付板部39Aと補強板部39Cには、吊り部材18の枠体18Aに設けられた2個の溶接ナット18Dに対応する2個のボルト挿通孔39Dが設けられている。一方、原動機側ブラケット39の先端となるシュラウド取付板部39Bには、ファン側シュラウド35のフランジ部35C3に設けられたボルト挿通孔35D3に対応する1個の溶接ナット39Eが設けられている。
原動機側ブラケット39は、吊り部材取付板部39Aと補強板部39Cを吊り部材18の枠体18Aに当接させた状態で、ボルト挿通孔39Dに挿通した2本のボルト39Fを溶接ナット18Dに螺着することにより、吊り部材18に固定される。この状態で、ファン側シュラウド35のフランジ部35C3を、原動機側ブラケット39のシュラウド取付板部39Bに当接させ、フランジ部35C3のボルト挿通孔35D3に挿通したボルト39Gを溶接ナット39Eに螺着する。これにより、ファン側シュラウド35のフランジ部35C3は、原動機側ブラケット39を介して吊り部材18に支持されている。
この場合、右前マウント側ブラケット37は、旋回フレーム6にエンジン11を支持する右前マウント部材14に取付けられ、右後マウント側ブラケット38は、旋回フレーム6にエンジン11を支持する右後マウント部材16に取付けられ、原動機側ブラケット39は、エンジン11の上面11Fに固定された吊り部材18に取付けられている。このため、エンジン11のうち冷却ファン31と対面する正面11Bに、駆動プーリ21、従動プーリ22,23、ファンベルト26、エアコンベルト27等が配置されることにより、エンジン11の正面11Bにファン側シュラウド35を支持するブラケットを取付けるためのスペースが確保できない場合でも、2個のマウント側ブラケット37,38と1個の原動機側ブラケット39とを用いて、ファン側シュラウド35をエンジン11側に取付けることができる構成となっている。
一方、図12に示すように、右前マウント側ブラケット37のシュラウド取付板部37Bと右後マウント側ブラケット38のシュラウド取付板部38Bとは、ファン側シュラウド35の径方向に離間して当該ファン側シュラウド35の下部側にそれぞれ取付けられ、原動機側ブラケット39のシュラウド取付板部39Bは、右前マウント側ブラケット37と右後マウント側ブラケット38との間に位置してファン側シュラウド35の頂部側に取付けられている。これにより、大径な円筒状をなすファン側シュラウド35を、3個のブラケット37,38,39を用いて安定して支持することができる構成となっている。
本実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
まず、油圧ショベル1を操縦するオペレータは、キャブ9内の運転席9Aに着席してエンジン11を始動させる。この状態で、走行用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、下部走行体2によって油圧ショベル1を前進または後退させることができ、作業用の操作レバー9Bを操作することにより、作業装置5を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
ここで、油圧ショベル1の稼働時には、エンジン11によって冷却ファン31が駆動され、この冷却ファン31の回転によって吸込まれる外気が冷却風Fとなって、熱交換器32のラジエータ32B,オイルクーラ32C等に供給されることにより、エンジン冷却水、作動油等を冷却することができる。一方、熱交換器32を通過した冷却風Fは、熱交換器側シュラウド34、ファン側シュラウド35によって形成された冷却風通路36を通過してエンジン11側に導かれ、該エンジン11、油圧ポンプ(図示せず)等を冷却した後、外部に排出される。
ここで、図6に示すように、エンジン11のうち冷却ファン31と対面する正面11B側には、駆動プーリ21、従動プーリ22,23、ファンベルト26、エアコンベルト27、ウォータポンプ28等の多数の付属部品が配置されている。このため、エンジン11の正面11B側には、ファン側シュラウド35を支持する複数のブラケットを取付けるだけのスペースを確保することができないという問題がある。
これに対し、本実施の形態では、ファン側シュラウド35をエンジン11側に支持するために3個のブラケット(右前マウント側ブラケット37、右後マウント側ブラケット38、原動機側ブラケット39)を備え、右前マウント側ブラケット37は、旋回フレーム6上でエンジン11を支持する右前マウント部材14に取付け、右後マウント側ブラケット38は、旋回フレーム6上でエンジン11を支持する右後マウント部材16に取付け、原動機側ブラケット39は、エンジン11の上面11Fに固定された吊り部材18に取付ける構成としている。
このように、本実施の形態では、多数の付属部品が配置されたエンジン11の正面11Bにブラケットを取付けることなく、旋回フレーム6上でエンジン11を支持する右前マウント部材14に右前マウント側ブラケット37の基端を取付け、右後マウント部材16に右後マウント側ブラケット38の基端を取付けると共に、エンジン11の上面11Fに設けた吊り部材18に原動機側ブラケット39の基端を取付け、これら右前マウント側ブラケット37、右後マウント側ブラケット38、原動機側ブラケット39の先端に、ファン側シュラウド35を取付けることができる。
この結果、エンジン11の正面11B側に配置された付属部品との干渉を気にすることなく、右前マウント側ブラケット37、右後マウント側ブラケット38、原動機側ブラケット39を用いてエンジン11側にファン側シュラウド35を容易に取付けることができる。しかも、右前マウント側ブラケット37、右後マウント側ブラケット38、原動機側ブラケット39は、エンジン11の正面11B側に配置された付属部品を避ける必要がない。この結果、右前マウント側ブラケット37、右後マウント側ブラケット38、原動機側ブラケット39を用いて、ファン側シュラウド35をエンジン11側に取付けるときの作業性を高めることができる。さらに、各ブラケット37,38,39の形状を簡素化することができ、製造コストの低減にも寄与することができる。
また、本実施の形態によれば、右前マウント部材14は、防振部材14Aと、該防振部材14Aを介して旋回フレーム6に取付けられる車体取付板14Bと、該車体取付板14Bに固定され、エンジン11の前側面11Dに取付けられる原動機取付板14Cと、該原動機取付板14Cから熱交換器32に向けて張出す張出し板14Dとを含んで構成し、右前マウント側ブラケット37は、右前マウント部材14の張出し板14Dに取付ける構成としている。このように、右前マウント部材14の原動機取付板14Cから張出した張出し板14Dを利用して右前マウント側ブラケット37を固定することにより、この右前マウント側ブラケット37を、簡単な形状を有する1個の部品として形成することができる。
同様に、右後マウント部材16は、防振部材16Aと、該防振部材16Aを介して旋回フレーム6に取付けられる車体取付板16Bと、該車体取付板16Bに固定され、エンジン11の後側面11Eに取付けられる原動機取付板16Cと、該原動機取付板16Cに設けられ、空調装置のコンプレッサ25を支持するコンプレッサ支持板16Dとを含んで構成し、右後マウント側ブラケット38は、右後マウント部材16のコンプレッサ支持板16Dに取付ける構成としている。このように、右後マウント部材16に設けられたコンプレッサ支持板16Dを利用して右後マウント側ブラケット38を固定することにより、この右後マウント側ブラケット38を、簡単な形状を有する1個の部品として形成することができる。この結果、右前マウント側ブラケット37および右後マウント側ブラケット38の部品点数が増大するのを抑えることができ、製造コストの低減にも寄与することができる。
さらに、本実施の形態によれば、右前マウント側ブラケット37の先端であるシュラウド取付板部37Bと、右後マウント側ブラケット38の先端であるシュラウド取付板部38Bは、ファン側シュラウド35の径方向に離間してそれぞれ当該ファン側シュラウド35の下部側に取付けられている。また、原動機側ブラケット39の先端であるシュラウド取付板部39Bは、右前マウント側ブラケット37と右後マウント側ブラケット38との間に位置してファン側シュラウド35の頂部側に取付けられている。これにより、大径な円筒状をなすファン側シュラウド35を、3個のブラケット(右前マウント側ブラケット37、右後マウント側ブラケット38、原動機側ブラケット39)を用いて安定して支持することができる。
なお、上述した実施の形態では、2個のマウント側ブラケット37,38と1個の原動機側ブラケット39からなる3個のブラケットを用いてファン側シュラウド35を支持した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、2個のマウント側ブラケット37,38と2個以上の原動機側ブラケットからなる4個以上のブラケットを用いてファン側シュラウド35を支持する構成としてもよい。
また、実施の形態では、原動機としてエンジン11を用いた場合を例示しているが、本発明はこれに限らず、原動機として電動モータを用いる構成としてもよい。さらに、上述した実施の形態では、建設機械として油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えばホイールローダ、油圧クレーン、ブルドーザ等の他の建設機械に適用してもよい。