JP6321896B1 - ポリアミド系フィルム、これを用いた積層体及び容器、ならびにその製造方法 - Google Patents

ポリアミド系フィルム、これを用いた積層体及び容器、ならびにその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】厚みの均一性に優れ、前記4方向における物性のバラツキが効果的に抑えられるとともに、耐電解液にも優れたポリアミド系フィルムを提供する。【解決手段】ポリアミド系基材層及びその少なくとも一方の面に形成された保護層を含むフィルムであって、(1)前記保護層は、ビニルアルコール単位を含有するビニルアルコール系ポリマー(A)と、不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)とを含み、(2)前記フィルムは、a)前記フィルムにおける任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であり、b)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下であるポリアミド系フィルムに係る。【選択図】図7

Description

本発明は、新規なポリアミド系フィルム及びその製造方法に関する。さらに、本発明は、前記ポリアミド系フィルムを含む積層体及び容器に関する。
各種の樹脂フィルムは、さまざまな加工を施すことによって包装体等の各種の製品とされている。例えば、薬剤(錠剤)等の包装体(プレススルーパック)には塩化ビニルフィルムが使用されている。また例えば、防湿性が要求される内容物を包装する場合にはポリプロピレンフィルムが使用されている。近年では、内容物の品質保持の観点からより優れたガスバリア性又は防湿性を付与することを目的として、樹脂フィルムに金属箔を積層してなる積層体が使用されている。例えば、基材層(樹脂フィルム)/金属箔層(アルミニウム箔)/シーラント層から構成される積層体が知られている。
工業分野においては、リチウムイオン電池の外装材は、従来より金属缶タイプが主流であるが、形状の自由度の低さ、軽量化の困難さ等の欠点が指摘されている。このため、基材層/金属箔層/シーラント層からなる積層体、あるいは基材層/基材層/金属箔層/シーラント層からなる積層体を外装体として用いることが提案されている。このような積層体は、金属缶と比較して柔軟で形状の自由度が高く、さらに薄膜化による軽量化が可能であり、かつ、小型化が容易であることから、広く用いられるようになっている。
上記用途で使用される積層体にはさまざまな性能が要求されており、特に防湿性は非常に重要な要素となる。ところが、防湿性を付与するアルミニウム箔等の金属箔は単体では延展性に乏しく、成型性に劣る。このため、基材層を構成する樹脂フィルムとしてポリアミド系フィルムを用いることにより延展性を付与し、成型性を高めている。
この場合の成型性とは、特にフィルムを冷間成型(冷間加工)する際の成型性である。すなわち、フィルムを成型することにより製品を製造する際、その成型条件として、a)樹脂を加熱下で溶融させて成型する熱間成型及びb)樹脂を溶融させることなく、固体のまま成型する冷間成型があるが、上記用途では冷間成型(特に絞り加工、張り出し加工)における成型性が求められる。冷間成型は、加熱工程がないので生産速度・コスト面で優れることに加え、樹脂の変性を防止できるという点で熱間成型よりも有利な成型方法である。このため、ポリアミド系フィルムとしても、冷間成型に適したフィルムの開発が進められている。
このようなポリアミド系フィルムとしては、延伸加工されたポリアミド系フィルムが知られている(例えば特許文献1〜2)。しかし、これらのポリアミド系フィルムは、チューブラー法で延伸することにより製造されたものである。すなわち、生産性が低いだけでなく、得られる延伸フィルムは厚みの均一性、寸法安定性等の点でいずれも十分に満足できるものではない。特に、フィルムの厚みにムラがある場合、そのフィルムと金属箔との積層体を冷間成型により加工しようとすると、金属箔の破断、ピンホール等の致命的な欠陥が生じるおそれがある。
これに対し、テンター法で延伸されたポリアミド系フィルムも提案されている(例えば特許文献3〜10)。テンター法は、チューブラー法に比べて生産性、寸法安定性等という点で有利である。
しかしながら、テンター法により延伸されたポリアミド系フィルムにおいても、フィルムの各方向において物性のバラツキ(異方性)がなお存在する。このため、冷間成型(特に深絞り成型)を行う際の成型性においては十分に満足できる性能を有しているとはいえない。
ポリアミド系フィルム14は、図1に示すような工程で製造される。まず、原料11が溶融混練工程11aで溶融されることにより溶融混練物12が調製される。溶融混練物12を成形工程12aによりシート状に成形して未延伸シート13が得られる。次いで、未延伸シート13を延伸工程13aで二軸延伸されることによってポリアミド系フィルム14が得られる。さらに、この延伸されたポリアミド系フィルム14は、例えば金属箔層15とシーラントフィルム16とを順に貼り合わせる積層工程14aを経て積層体17を作製した後、二次加工として冷間成型工程15aにおいて積層体17が所定の形状に加工されることにより各種の製品18(例えば容器等)となる。
このような延伸されたポリアミド系フィルム14において、その平面における各方向における物性のバラツキを軽減することが望ましいが、少なくとも90度ごとの4方向(任意の方向を基準(0度)として、その方向に対して時計回りで45度、90度及び135度の合計4方向)における物性のバラツキを減らすことが好ましい。例えば、二軸延伸されたポリアミド系フィルムでは、図4に示すように、任意の点Aを中心とし、二軸延伸時におけるMD(フィルムの流れ方向)を基準方向(0度方向)とすれば、(a)基準方向(0度方向)、(b)MDに対して時計回りに45度の方向(以下「45度方向」という。)、(c)MDに対して時計回りに90度の方向(TD:フィルムの流れ方向に対して直角方向)(以下「90度方向」という。)及び(d)MDに対して時計回りに135度の方向(以下「135度方向」という。)の4方向の物性のバラツキをなくすことが望ましい。
延伸されたポリアミド系フィルム14を含む積層体17を冷間成型工程15aに供する場合、ポリアミド系フィルム14が全方向へ引き伸ばされるため、ポリアミド系フィルム14における前記4方向の物性にバラツキがある場合、冷間成型時に全方向へ均一に伸ばすことが困難となる。すなわち、伸びやすい方向と伸びにくい方向とが存在することで、金属箔が破断したり、デラミネーション又はピンホールが発生する。このような問題が起こると、包装体等としての機能が果たせなくなり、被包装体(内容物)の損傷等につながるおそれがある。このため、各方向における物性のバラツキをできるだけ低減することが必要である。
この場合、冷間成型時の成型性に影響を与える物性の1つとしてフィルムの厚みがある。フィルムの厚みにバラツキがあるポリアミド系フィルムを含む積層体を冷間成型する場合は、相対的に薄い部分が破れてピンホールが生じたり、デラミネーションを引き起こすおそれが高くなる。このため、冷間成型に用いられるポリアミド系フィルムは、フィルム全体にわたって厚みを均一に制御することも必要不可欠である。
ここに、ポリアミド系フィルムの厚みの均一性については、チューブラー法よりもテンター法で延伸された場合の方がほうが優れるものの、上記の特許文献3〜10により得られたポリアミド系フィルムの厚み精度は十分に満足できるものではない。つまり、冷間成型時には上記したように縦横斜めの4方向に均一に伸ばすことが必要であるため、冷間成型に耐えられるだけの十分な厚みの均一性が必要である。とりわけ、フィルム厚みが薄くなればなるほど(特に厚み15μm以下)、厚みの均一性が成型性へ与える影響はより顕著になる。
一般に、フィルムの厚みの均一性はその厚みが厚いほど確保しやすいので、厚みの均一性を確保するために比較的厚めに設計するということも考えられる。ところが、近年において、冷間成型用に使用されるポリアミド系フィルム及びその積層体は、リチウムイオン電池の外装材を中心に広く使用されるようになっており、電池のさらなる高出力化、小型化、コスト削減の要請等に伴い、ポリアミド系フィルムの厚みをより薄くすることが求められている。しかし、厚みを薄くすれば、それだけ厚みの均一性を確保することが困難となる。
このように、より薄くても、厚みの均一性に優れるとともに前記4方向における物性のバラツキが比較的小さなポリアミド系フィルムの開発が切望されているものの、このようなフィルムは未だ開発されるに至っていないのが現状である。
一方、ポリアミド系フィルムがリチウムイオン二次電池の外装材として使用される場合は、上記のような物性のほか、耐電解液性という特性も要求される。例えば「基材層(ポリアミド系フィルム)/金属箔層/シーラント層」からなる積層体の形態でポリアミド系フィルムが使用される。そして、この積層体の基材層側が電池の外側、シーラント層側が内側(電池内部)となるように容器状に加工された後、外装材の内側(容器内部)に電池電解液が注入される。
このリチウムイオン二次電池を製造するに際し、電解液を容器内部に注入する工程、その注入後に外装材をヒートシールして密閉する工程等において、電解液がこぼれ、外装材の外側(すなわち、ポリアミド系フィルムに付着するおそれがある。ポリアミド系フィルムに電解液が付着した場合、白化、分解反応等によりポリアミド系フィルムが劣化し、外観不良あるいはリチウムイオン二次電池外装材に必要な強度が消失してしまうことがある。このため、ポリアミド系フィルムには、電解液に対する耐性(耐電解液性)も要求される。
そこで、耐電解液性を高めるため、基材層のさらに外側に耐電解液性を有した保護層を設けることが提案されている。例えば、保護層としてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いた外装材(特許文献11)、ポリエステルフィルムとポリアミドフィルムの積層体を延伸したフィルムを用いた外装材(特許文献12)、保護層として特定の樹脂からなるコーティング層を用いた外装材(特許文献13)等が提案されている。
しかしながら、これらの外装材においても、なお改善すべき点がある。例えば、特許文献11記載の外装材は、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが積層されているため、フィルムの単位面積当たりの重量が増加してしまい、近年における電池の軽量化の要請に十分応えることができない。また、前記フィルムの積層に伴い、成型性も低下するおそれがある。さらに、製造工程としても、接着剤を設ける工程、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムをラミネートする工程がさらに必要となり、加工が複雑でコスト高になる。
特許文献12に記載されるようなポリエステルフィルムとポリアミドフィルムの積層体を延伸したものでは、ポリアミド層の割合が減ってしまい、同じ厚みのポリアミドフィルムと比較すると、外装材の強度が低下するという問題がある。
特許文献13では、保護層として、ポリ塩化ビニリデン、ウレタン樹脂等の樹脂からなるコーティング層が用いられているものの、保護層としての耐電解液性の性能が不十分である。
特許第5487485号 特許第5226942号 特許第5467387号 特開2011−162702号 特開2011−255931号 特開2013−189614号 特許第5226941号 特開2013−22773号 国際公開WO2014/084248号 特許第3671978号 特開2002−56824号公報 特開2013−240938号公報 特開2000−123799号公報
従って、本発明の主な目的は、厚みの均一性に優れ、前記4方向における物性のバラツキが効果的に抑えられるとともに、耐電解液にも優れたポリアミド系フィルムを提供することにある。
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の製法を採用することによって特異な物性を有するポリアミド系フィルムが得られるという知見に基づいて上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記のポリアミド系フィルム及、これを用いた積層体及び容器、ならびにその製造方法に係る。
1. ポリアミド系基材層及びその少なくとも一方の面に形成された保護層を含むフィルムであって、
(1)前記保護層は、ビニルアルコール単位を含有するビニルアルコール系ポリマー(A)と、不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)(但し、前記ビニルアルコール系ポリマー(A)を除く。)とを含み、
(2)前記フィルムは、
(2−1)前記フィルムにおける任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であり、かつ、
(2−2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下である、
ことを特徴とするポリアミド系フィルム。
2. 不飽和カルボン酸単位が、マレイン酸及び無水マレイン酸単位の少なくとも1種のマレイン酸系単位を含む、前記項1に記載のポリアミド系フィルム。
3. 前記保護層において、
(3−1)ビニルアルコール系ポリマー(A)中のビニルアルコール単位の含有量が40モル%以上であり、
(3−2)ビニル系ポリマー(B)中の不飽和カルボン酸単位の含有量が10モル%以上である、前記項1に記載のポリアミド系フィルム。
4. 前記保護層におけるビニルアルコール単位と不飽和カルボン酸単位とのモル比(ビニルアルコール単位/不飽和カルボン酸単位)が1/99〜60/40である、前記項1記載のポリアミド系フィルム。
5. 前記フィルムにおける任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である、前記項1又は2に記載のポリアミド系フィルム。
6. 平均厚みが16μm以下である、前記項1に記載のポリアミド系フィルム。
7. 少なくとも一方の表面の動摩擦係数が0.60以下である、前記項1に記載のポリアミド系フィルム。
8. 前記項1〜7のいずれかに記載ポリアミド系フィルム及びそのフィルム上に積層された金属箔を含む積層体。
9. 前記項8に記載の積層体を含む容器。
10. ポリアミド系基材層及びその少なくとも一方の面に形成された保護層を含むフィルムを製造する方法であって、
(1)ポリアミド樹脂を含む溶融混練物をシート状に成形することにより未延伸シートを得る工程
(2)前記未延伸シートをMD及びTDに逐次又は同時に二軸延伸することによって延伸フィルムを得る工程
を含み、かつ、
(3)下記式a)及びb);
a)0.85≦X/Y≦0.95
b)8.5≦X×Y≦9.5
(但し、Xは前記MDの延伸倍率を示し、Yは前記TDの延伸倍率を示す。)
の両方を満たし、
(4)MDの延伸を50〜74℃で行い、TDの延伸を70〜150℃で行い、
(5)a)未延伸シート又はb)MD及びTDの少なくとも一方が延伸されたフィルムの少なくとも一方の面にビニルアルコール単位を含有するビニルアルコール系ポリマー(A)と、不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)とを含む塗工液を塗布する工程を含む、
ことを特徴とするポリアミド系フィルムの製造方法。
本発明のポリアミド系フィルムは、厚みの均一性に優れるとともに、0度方向、45度方向、90度方向及び135度方向からなる4方向における伸長時の応力バランスに優れている。このため、例えば本発明のフィルムと金属箔とを積層した積層体は、金属箔が良好な延展性を有するものとなり、冷間成型にて絞り成型(特に深絞り成型又は張り出し成型)を行う際に、金属箔の破断、デラミネーション、ピンホール等が効果的に抑制ないしは防止されており、信頼性の高い高品質の製品(成形体)を得ることが可能となる。
特に、本発明のポリアミド系フィルムは、例えば厚みが15μm以下という極めて薄いものであっても、前記4方向における伸長時応力のバランスに優れるとともに、厚みの均一性に優れている。これにより、このフィルムと金属箔と積層した積層体は、冷間成型にてより高出力で小型化した製品を得ることが可能となり、コスト的にも有利になる。
さらに、本発明のポリアミド系フィルムは、優れた耐電解液性を発揮することもできる。すなわち、特定のポリマーを含有する保護層を有しているため、たとえ電解液が付着してもフィルムの劣化を抑制ないし防止することができる。その結果、例えばリチウムイオン二次電池外装材用として好適に用いることができる。これにより、信頼性の高い電池の提供に寄与することもできる。
本発明のポリアミド系フィルムの製造工程及び冷間加工工程の概要を示す模式図である。 本発明の製造方法に係る逐次二軸延伸により未延伸シートが延伸される工程を示す模式図である。 テンターによる延伸工程を図2のa方向からみた状態を示す図である。 フィルムにおける応力を測定する方向を示す図である。 フィルムにおける応力を測定するための試料を示す図である。 フィルムにおける平均厚みを測定する方法を示す図である。 本発明の積層体の実施形態に係る層構成を示す図である。
1.ポリアミド系フィルム
本発明のポリアミド系フィルム(以下「本発明フィルム」ともいう。)は、ポリアミド系基材層及びその少なくとも一方の面に形成された保護層を含むフィルムであって、
(1)前記保護層は、ビニルアルコール単位を含有するビニルアルコール系ポリマー(A)と、不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)(但し、前記ビニルアルコール系ポリマー(A)を除く。)とを含み、
(2)前記フィルムは、
(2−1)前記フィルムにおける任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であり、かつ、
(2−2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下である、
ことを特徴とする。
(A)ポリアミド系基材層の材質・組成
ポリアミド系基材層は、ポリアミド樹脂を主成分とする層であれば良く、特にポリアミド樹脂を含むフィルムを基材層として好適に採用することができる。ポリアミド樹脂は、複数のモノマーがアミド結合して形成されたポリマーである。その代表的なものとしては、例えば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、ポリ(メタキシレンアジパミド)等が挙げられる。また、ポリアミドとしては、例えば6−ナイロン/6,6−ナイロン、6−ナイロン/6,10−ナイロン、6−ナイロン/11−ナイロン、6−ナイロン/12−ナイロン等の2元以上の共重合体でも良い。また、これらが混合されたものであっても良い。上記の中でも、冷間成型性、強度、コスト等の観点から、a)6−ナイロンのホモポリマー、b)6−ナイロンを含むコポリマー又はc)これらの混合物が好ましい。
ポリアミド樹脂の数平均分子量は、特に限定されず、用いるポリアミド樹脂の種類等に応じて変更できるが、通常10000〜40000程度、特に15000〜25000とすることが望ましい。このような範囲内のポリアミド樹脂を用いることにより、比較的低温下でも延伸しやすくなる結果、比較的高い温度下で延伸する場合に生じ得る結晶化及びそれによる冷間成型性の低下等をより確実に回避することができる。
ポリアミド系基材層中におけるポリアミド樹脂の含有量は、通常は90〜100質量%であり、好ましくは95〜100質量%であり、より好ましくは98〜100質量%である。すなわち、本発明の効果を妨げない範囲内で、必要に応じてポリアミド樹脂以外の成分が含まれていても良い。例えば、ポリオレフィン類、ポリアミドエラストマー類、ポリエステルエラストマー類等の耐屈曲ピンホール性改良剤のほか、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、帯電防止剤、無機微粒子等の各種の添加剤を1種あるいは2種以上を添加しても良い。また、スリップ性を付与するための滑剤として、各種の無機滑剤及び有機滑剤の少なくとも1種が含まれていても良い。これら滑剤(粒子)を添加する方法としては、原料とするポリアミド樹脂中に粒子を含有させて添加する方法、押出機に直接添加する方法等を挙げることができ、このうちいずれかの一方の方法を採用しても良く、2つ以上の方法を併用しても良い。
(B)保護層
本発明フィルムは、ポリアミド系基材層の少なくとも一方の面に保護層を有する。特に、ポリアミド系基材層に直に隣接して保護層が形成されている。本発明では、保護層は、後記に示すように、基材層との密着性等の見地より、塗工液による塗布層であることが好ましい。
保護層は、ビニルアルコール単位を含有するビニルアルコール系ポリマー(A)(以下、特にことわりのない限り「A成分」ともいう。)と、不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)(以下、特にことわりのない限り「B成分」ともいう。)(但し、前記ビニルアルコール系ポリマー(A)を除く。)とを含む。
保護層中におけるA成分及びB成分の合計量は、特に制限されないが、通常は80〜100質量%程度とし、特に85〜98質量%とすることが好ましく、さらに90〜98質量%とすることがより好ましい。すなわち、保護層中には、本発明の効果を妨げない範囲内でA成分及びB成分以外の成分が含まれていても良い。例えば、後記に示すような各種の添加剤を1種あるいは2種以上を添加しても良い。
A成分
A成分は、ビニルアルコール単位−[CHCH(OH)]−を含有するビニルアルコール系ポリマーである。このようなポリマーとしては、実質的にビニルアルコール単位のみからなるホモポリマーのほか、ビニルアルコール単位と他のモノマー単位とのコポリマーが挙げられる。また、ビニルアルコール単位の水酸基以外の一部を化学的に修飾したものを用いることもできる。A成分の最も好適な例としては、上記ホモポリマー(すなわち、ポリビニルアルコール)を挙げることができる。これらは、いずれも公知又は市販のものを使用することもできる。
上記ホモポリマーは、ビニルアルコールのカルボン酸エステルの重合体を完全ケン化又は部分ケン化することによって得られる。上記エステルとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に好ましい。
また、上記コポリマーは、ビニルアルコールのカルボン酸エステルと、他のビニル系モノマーとの共重合体を完全ケン化又は部分ケン化することにより得られる。上記エステルと共重合させる他のビニル系モノマーとしては、例えばクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸及びその誘導体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和スルホン酸及びその誘導体;炭素数2〜30のオレフィン類、炭素数2〜30のアルキルビニルエーテル類、炭素数2〜30のビニルピロリドン類等が挙げられる。なお、前記の各誘導体としては、特にエステル、塩、無水物、アミド又はニトリル化合物が好ましい。
上記の重合体又は共重合体のケン化では、ケン化度は通常70モル%以上とし、特に90モル%以上とし、さらには98モル%以上とすることが耐電解液性を向上させるという点で好ましい。従って、例えばケン化度95〜100モル%の重合体又は共重合体を好適に用いることができる。また。ケン化の方法は、ビニルエステル部分をビニルアルコール単位に変えることができる限り特に制限されず、公知のアルカリケン化法及び酸ケン化法を適用することができる。
A成分におけるビニルアルコール単位の含有量は、40モル%以上含まれていることが好ましく、特に60モル%以上であることがより好ましい。これにより、ビニルアルコール単位の水酸基(OH基)がB成分と反応して架橋構造を形成する反応性基として効果的に機能させることができる。その結果、より高い耐電解液性等を発現させることが可能となる。
なお、本発明では、ビニルアルコール単位の含有量は、上記架橋構造の形成に寄与しているビニルアルコール単位と、上記架橋構造の形成に寄与していないビニルアルコール単位との合計量を示す。
B成分
B成分は、不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)(但し、前記ビニルアルコール系ポリマー(A)を除く。)である。このようなポリマーとしては、実質的に不飽和カルボン酸単位のみからなるポリマーのほか、不飽和カルボン酸単位と不飽和カルボン酸単位以外のモノマー単位とのコポリマーが挙げられる。また、不飽和カルボン酸単位のカルボキシル基以外の一部を化学的に修飾したものを用いることもできる。これらは、いずれも公知又は市販のものを使用することもできる。
不飽和カルボン酸単位としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基又は酸無水物基を有する化合物も用いることができる。これらの中でも、より高い耐電解液性等が得られるという見地より、不飽和カルボン酸単位としてマレイン酸及び/又は無水マレイン酸を用いることが好ましい。
上記に示した実質的に不飽和カルボン酸単位のみからなるポリマーは、同じ不飽和カルボン酸単位からなるホモポリマー(B1成分)のほか、互いに異なる2種以上の不飽和カルボン酸単位を含むコポリマー(B2成分)が挙げられる。B1成分又はB2成分としては、例えばポリアクリル酸等を好適に用いることができる。
上記に示した不飽和カルボン酸単位と不飽和カルボン酸単位以外のモノマー単位とのコポリマー(B3成分)としては、不飽和カルボン酸とオレフィンとのコポリマーを好適に用いることができる。オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。従って、例えばオレフィン−マレイン酸共重合体を好適に用いることができる。特に、エチレン−マレイン酸共重合体(EMA)を用いることがより好ましい。
オレフィン−マレイン酸共重合体(特にEMA)自体も公知の製造方法に従って得ることができる。例えば、溶液ラジカル重合等の重合方法に従って、無水マレイン酸とオレフィン(エチレン等)とを重合することにより製造することができる。また、EMA等は、市販品を使用することもできる。ちなみに、オレフィン−マレイン酸共重合体中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、湿潤時ないしは水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。このため、本発明においては、特記しない限り、マレイン酸単位と無水マレイン単位とを総称して「マレイン酸系単位」という。本発明では、前記のとおり、不飽和カルボン酸単位としてマレイン酸系単位を含むことが望ましい。
なお、本発明では、上記B3成分に関し、分子中に不飽和カルボン酸単位とビニルアルコール単位とを含むコポリマーについては、本発明ではA成分として取り扱う。
B成分における不飽和カルボン酸単位の含有量は、用いる不飽和カルボン酸単位の種類等によるが、通常は10モル%以上とし、特に20モル%以上とすることがより好ましく、また30モル%以上とすることが好ましく、さらに35モル%以上とすることが最も好ましい。従って、不飽和カルボン酸単位としてマレイン酸及び/又は無水マレイン酸単位を採用する場合も、通常は10モル%以上とし、特に20モル%以上とすることがより好ましく、また30モル%以上とすることが好ましく、さらに35モル%以上とすることが最も好ましい。これにより、不飽和カルボン酸単位のカルボキシル基の一部又は全部が、A成分の水酸基の一部又は全部と反応して架橋構造を形成できる結果、より優れた耐電解液性が得られる。上記含有量の上限値は、特に制限されないが、通常は60モル%程度とすれば良い。
なお、本発明では、不飽和カルボン酸単位の含有量は、上記架橋構造の形成に寄与している不飽和カルボン酸単位と、上記架橋構造の形成に寄与していない不飽和カルボン酸単位との合計量を示す。
また、B成分として、特にEMAの重量平均分子量は、限定的ではないが、より高い耐電解液が得られるという点では1,000〜1,000,000であることが好ましく、3,000〜500,000 であることがより好ましく、7,000〜300,000であることがさらに好ましく、10,000〜200,000であることが特に好ましい。
本発明におけるA成分とB成分との比率は、限定的ではないが、前記ビニルアルコール単位と不飽和カルボン酸単位とのモル比(ビニルアルコール単位/不飽和カルボン酸単位)で1/99〜60/40の範囲となるように両成分を配合することが好ましく、中でも20/80〜50/50の範囲となるようにすることが好ましい。モル比率がこの範囲を外れる場合には、フィルムの耐電解液特性発現のために有効な架橋密度を得ることが困難となりやすい。
保護層では、前記のように、A成分及びB成分以外の成分が含まれていても良いが、特に無機滑剤及び有機滑剤の少なくとも1種を含有していることが好ましい。これらの滑剤を保護層中に含有させることによって、動摩擦係数を最適範囲に制御することが可能となり、より効果的に本発明フィルムの滑り性を高めることが可能となる。
特に、本発明フィルムは、保護層側を成型時に金型に接する面にすることが好ましいことから、滑りやすいこと(動摩擦係数が小さいこと)が好ましい。例えば、本発明フィルムを最外層とする積層体を冷間成型する場合、本発明フィルムと成型金型が接触するため、本発明フィルムが滑りにくい(すなわち、摩擦係数が大きい)場合は、成型金型が押し込まれる際に本発明フィルムを含む積層体表面にシワが生じたり、その積層体がデラミネーションを引き起こすおそれが高くなる。しかも、積層体全体を均一に成型することが難しくなるため、ピンホールの発生が懸念される。このため、本発明フィルムが成型金型と接触する表面に積層される保護層に無機滑剤及び有機滑剤の少なくとも1種を含有させることによって、より高い滑り性を付与することができ、その結果としてデラミネーション、ピンホール等の発生を未然に防止することができる。かかる見地より、以下に示すように、所定の有機滑剤又は無機滑剤の特定量を保護層に含有させることが望ましい。
有機滑剤
有機滑剤としては、特に限定されず、例えば炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族ビスアミド系、金属石鹸系等の各種の有機滑剤のほか、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等の樹脂系の有機滑剤が挙げられる。本発明では、特にポリアミド樹脂成分との溶融混練時に自らも溶融し得る有機滑剤(例えば融点150℃以下)が好ましく、このような有機滑剤として脂肪族ビスアミド系滑剤等を好適に用いることができる。
本発明のポリアミド系フィルムにおける保護層中の有機滑剤の含有量は、通常は0.02〜0.25質量%であることが好ましく、中でも0.03〜0.15質量%であることがより好ましい。有機滑剤の含有量が0.02質量%未満の場合は、滑り性を向上させる効果が十分に得られないおそれがある。一方、有機滑剤の含有量が0.25質量%を超える場合は、過剰な有機滑剤がフィルム表面にブリードアウトすることにより、接着剤及び印刷インキの密着性が低下し、ラミネート時における接着剤との接着力低下又は印刷不良を引き起こし、特に接着力が低下した場合は冷間成型性の低下を招くことがある。本発明では、特に上記の有機滑剤の含有量は、脂肪族ビスアミド系滑剤の少なくとも1種の合計含有量とすることが望ましい。
無機滑剤
本発明における無機滑剤としては、例えば二酸化ケイ素、クレー、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、カオリナイト、ハイドロタルサイト、酸化物系ガラス等が挙げられる。この中でも、特に二酸化ケイ素(シリカ)が好ましい。
無機滑剤は、通常は粉末の形態であるが、その平均粒子径は一般的に0.5〜4.0μmのものが好ましい。平均粒子径が0.5μm未満の場合はフィルム表面を粗くする効果が小さく、滑り性改良の効果が十分に得られない。一方、平均粒子径が4.0μmを超える場合は、透明性が悪化するおそれがある。
無機滑剤の粒子形状は特に限定されず、例えば球状、フレーク状、不定形状、バルーン状(中空状)等のいずれであっても良い。従って、本発明では、例えばガラスビーズ、ガラスバルーン等も使用することができる。
本発明のポリアミド系フィルムにおける保護層中の無機滑剤の含有量は、通常0.05〜30質量%であることが好ましく、0.1〜15質量%であることがより好ましく、特に0.1〜10質量%であることがより好ましい。無機滑剤の含有量が0.05質量%未満の場合は、無機滑剤を添加することによる滑り性の向上効果が十分に得られなくなるおそれがある。一方、無機滑剤の含有量が30質量%を超える場合は、フィルム表面が粗れすぎる傾向になるため、インキ密着性が低下したり、フィルムの透明性が失われるため、印刷加工による意匠性付与が困難となることがある。また、フィルム製造時に巻ズレが生じやすいものとなるおそれもある。
本発明における保護層の厚みは、本発明のポリアミド系フィルムの用途、使用目的等に応じて適宜設定することができる。例えば、ポリアミド系フィルムを電池の外装材として用いる場合等は、その基材層を電解液から保護する目的でフィルムの耐電解液性をより高めるために、通常0.05μm以上であることが好ましく、中でも0.1〜2.0μmであることがより好ましく、特に0.1〜1.0μmであることが最も好ましい。保護層の形成方法において、後述するようなMDの延伸とTDの延伸の間にコーティング工程を設ける場合(いわゆるインラインコーティングする場合)には、保護層の厚みは0.1〜1.0μmであることが好ましい。
(C)本発明フィルムの物性
本発明フィルム(特にポリアミド系基材層)は、好ましくは分子配向が二軸配向したものである。このようなフィルムは、基本的には二軸延伸によって得ることができる。特に、ロール及びテンターを用いて二軸延伸されたフィルムが好適である。
(C−1)応力特性
本発明フィルムは、二次加工時における伸長時の応力バランスが非常に優れていることを示す指標として、前記A値及びB値を同時に満足することを必須とする。前記A値及びB値が上記範囲を超えるものとなると、ポリアミド系フィルムの全方向での応力バランスが悪く、均一な成型性を得ることが困難となる。均一な成型性が得られない場合、例えば本発明フィルムと金属箔とを積層した積層体を冷間成型する場合において、金属箔に十分な延展性が付与されない(すなわち、ポリアミド系フィルムが金属箔に追従しにくくなる)ため、金属箔の破断、あるいはデラミネーション、ピンホール等の不具合が発生しやすくなる。
前記A値は、通常は35MPa以下であるが、特に30MPa以下、さらには25MPa以下であることが好ましく、20MPa以下であることが最も好ましい。なお、前記A値の下限値は限定的ではないが、通常は15MPa程度である。
前記B値は、通常は40MPa以下であるが、特に38MPa以下、さらには34MPa以下であることが好ましく、30MPa以下であることが最も好ましい。なお、前記B値の下限値は限定的ではないが、通常は20MPa程度である。
また、5%伸長時における前記4方向の応力は、特に限定されないが、積層体の冷間成型性という点において、いずれも35〜130MPaの範囲内であることが好ましく、40〜90MPaの範囲内であることがより好ましく、中でも45〜75MPaの範囲内であることが最も好ましい。
15%伸長時における前記4方向の応力は、特に限定されないが、積層体の冷間成型性という点において、いずれも55〜145MPaの範囲内であることが好ましく、60〜130MPaの範囲内であることがより好ましく、中でも65〜115MPaの範囲内であることが最も好ましい。
本発明フィルムにおいて、5%及び15%伸長時における前記4方向の応力が上記範囲を満たさない場合は、十分な冷間成型性が得られないことがある。
本発明フィルムにおける前記4方向の応力は、次のように測定する。まず、ポリアミド系フィルムを23℃×50%RHで2時間調湿した後、図5に示すように、フィルム上の任意の位置を中心点Aとし、フィルムの基準方向(0度方向)を任意で特定し、その基準方向(a)から時計回りに45度方向(b)、90度方向(c)及び135度方向(d)の各方向を測定方向とし、中心点Aからそれぞれの測定方向に100mm、測定方向に対して垂直方向に15mmの短冊状に裁断したものを試料とする。
例えば、図5に示すように、0度方向では中心点Aから30mm〜130mmの範囲で試料41(縦100mm×横15mm)のように切り取る。他の方向についても同様に試料を切り取る。これらの試料について、50N測定用のロードセルとサンプルチャックとを取り付けた引張試験機(島津製作所社製AG−1S)を用い、引張速度100mm/minにて、5%及び15%伸長時の応力をそれぞれ測定する。なお、上記の基準方向は、フィルム製造時の延伸工程におけるMDが判明しているときには、MDを基準方向とする。
上記のような特性値を満足する本発明のポリアミド系フィルムは、縦方向及び横方向の少なくとも一方向がテンターにより延伸する工程を含む二軸延伸方法より得られるものであることが好ましい。
一般に、二軸延伸方法としては、縦方向と横方向の延伸工程を同時に実施する同時二軸延伸方法と、縦方向の延伸工程を実施した後、横方向の延伸工程を実施する逐次二軸延伸方法がある。なお、前記の説明では、縦方向が先の工程として例示されているが、本発明では縦方向及び横方向のいずれが先であっても良い。
本発明フィルムは、延伸条件設定の自由度等の見地より、逐次二軸延伸方法により得られるものであることが好ましい。従って、本発明フィルムは、縦方向及び横方向の少なくとも一方向がテンターにより延伸される工程を含む逐次二軸延伸によって得られるものであることが好ましい。特に、本発明フィルムは、後記に示す本発明の製造方法によって製造されることが望ましい。
(C−2)平均厚み及び厚み精度
本発明フィルムは、厚み精度(厚みの均一性)が非常に高いものであることを示す指標として、後記に示す8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下であり、特に0.180μm以下であることが好ましく、さらには0.160μm以下であることがより好ましい。上記の厚み精度を示す標準偏差が0.200μm以下である場合、フィルム表面の厚みのバラツキが非常に小さいものとなり、例えばフィルムの厚みが15μm以下の場合であっても、金属箔と貼り合わせた積層体とし、深絞り冷間成型を行った際にデラミネーション、ピンホール等の不具合が発生せず、良好な成型性を得ることができる。標準偏差が0.200μmを超える場合、厚み精度が低いため、特にフィルムの厚みが小さい場合、金属箔と貼り合わせた際に、金属箔に十分な延展性を付与することができず、デラミネーション又はピンホールの発生が顕著となり、良好な成型性が得られないことがある。
上記厚み精度の評価方法は、ポリアミド系フィルムを23℃×50%RHで2時間調湿した後、図6に示すように、フィルム上の任意の位置を中心点Aとし、基準方向(0度方向)を特定した後、中心点Aから基準方向(a)、基準方向に対して時計回りに45度方向(b)、90度方向(c)、135度方向(d)、180度方向(e)、225度方向(f)、270度方向(g)及び315度方向(h)の8方向へそれぞれ100mmの直線L1〜L8の合計8本引く。それぞれの直線上において、中心点から10mm間隔で厚みを、長さゲージ 「HEIDENHAIN‐METRO MT1287」(ハイデンハイン社製)により測定する(10点測定する)。図6では、一例として、45度方向のL2を測定する場合の測定点(10点)をとった状態を示す。そして、全部の直線において測定して得られたデータ80点の測定値の平均値を算出し、これを平均厚みとし、平均厚みに対する標準偏差値を算出するものである。なお、上記の基準方向は、フィルム製造時の延伸工程におけるMDが判明しているときには、MDを基準方向とする。
本発明において、平均厚み及び標準偏差は、ポリアミド系フィルムのいずれかの一箇所のA点を基準とすれば良いが、特に得られたフィルムロールに巻き取られたポリアミド系フィルムにおいて、下記の3点のいずれにおいても上記範囲内の平均厚み及び標準偏差であることがより望ましい。3点としては、a)巻幅の中心付近であって、かつ、巻量の半分にあたる位置、b)巻幅の右端付近であって、かつ、巻量の半分にあたる位置、及びc)巻幅の左端付近であって、かつ、巻終わり付近の位置である。
また、本発明フィルムの平均厚みは、30μm以下であることが好ましく、中でも26μm以下であることが好ましく、さらには16μm以下であることが好ましく、15.2μm以下であることがよりこのましく、13μm以下であることが好ましく、12.2μm以下であることが最も好ましい。
本発明フィルムは、金属箔と貼り合せる積層体とすることが好適であり、冷間成型用途に用いることが好適なものであるが、後述するようなテンターを用いる二軸延伸を特定の条件を満足する延伸条件で行うことにより、厚みの小さいフィルムであっても、前記4方向における伸長時の応力バランスに優れ、かつ、前記4方向における厚み精度(厚みの均一性等)が非常に高いものを得ることができる。
フィルムの平均厚みが30μmを超える場合は、ポリアミド系フィルム自身の成型性が低下し、小型の電池外装材に用いることが困難な場合があり、またコスト面でも不利となるおそれがある。一方、フィルムの厚みの下限は特に限定するものではないが、平均厚みが2μm未満では、金属箔と貼り合わせた際における金属箔への延展性付与が不十分となりやすく、成型性に劣るものとなるおそれがあるため、通常は2μm程度とすれば良い。
本発明のポリアミド系フィルムは、金属箔と貼り合わせた積層体とし、冷間成型用途に用いることが好適なものであるが、上記特性を満足する本発明のポリアミド系フィルムを用いると、金属箔に十分な延展性を付与することができる。この効果により、冷間成型時(この中でも絞り成型(特に深絞り成型)時等における成型性が向上し、金属箔の破断を防止することができ、デラミネーション、ピンホール等の不具合の発生も抑制ないしは防止することができる。
ポリアミド系フィルムの厚みは、小さくなるほど金属箔に十分な延展性を付与することが困難となる。特に、20μm以下の極めて薄いフィルムでは、伸長時の応力にバラツキがあったり、厚み精度が低いので、冷間成型時の押し込み力によってポリアミド系フィルム又は金属箔の破断が顕著となる。つまり、薄いフィルムほど伸長時の応力のバラツキが大きくなり、厚みのバラツキも大きくなる傾向にあることから、より高度な制御が要求される。
この場合において、ポリアミド系フィルムを製造する一般的な方法であるチューブラー法あるいはテンター法を用いる従来の製造方法では、15μm以下の厚みであって、なおかつ、伸長時の応力のバラツキが小さく、厚み精度が高いものを製造することは困難である。このことは、例えば特許文献1〜10のいずれにおいても、具体的な実施例として記載されているポリアミド系フィルムは、最少で15μmの厚みのものしか開示されていないことからも明らかである。
これに対し、本発明では、後記に示すような特定の製造方法を採用することにより、特に厚みが16μm以下のものであっても、上記4方向における伸長時の応力バランスに優れ、かつ、厚みの均一性が高いポリアミド系フィルムを提供することに成功したものである。このような特殊なポリアミド系フィルムが提供できる結果、金属箔と積層した積層体を例えば電池(例えばリチウムイオン電池)の外装体等に用いる場合には例えば電極数、電解液等の容量を増やせるほか、電池自体の小型化、低コスト化等にも寄与することができる。
(C−3)動摩擦係数(滑り性)
本発明フィルムは、冷間成型時の成形性(滑り性)に優れていることを示す指標として、少なくとも一方の表面の動摩擦係数を0.60以下とし、中でも0.55以下とすることが好ましく、さらには0.50以下とすることが好ましい。動摩擦係数を0.60以下に制御することにより、冷間成型を高湿度(例えば90%以上の湿度)の環境下で行う際においても、滑り性が良好となり、例えばシワ、デラミネーション、ピンホール等を効果的に抑制又は防止することができる。動摩擦係数が0.60を超える場合は、特に高湿度の環境下で冷間成型を行うと、シワが生じたり、デラミネーションを引き起こす。しかも、積層体全体を均一に成型することが難しくなり、ピンホール等も発生しやすくなる。なお、動摩擦係数の下限値は特に制限されないが、通常は0.05程度とすれば良い。
本発明における動摩擦係数の測定は、JIS K7125に従って行った。より具体的には、ポリアミド系フィルムのサンプルを23℃×50%RHで2時間調湿した後、同温湿度条件下で測定を実施した。本発明フィルムを最外層として含む積層体の場合は、その最外層となる面(通常は保護層面)を測定面とした。動摩擦係数の算出においては、前記(C−1)応力特性の測定の際に特定した4方向のそれぞれについて各2点ずつサンプルを採取し、計8点測定し、その平均値とする。
(C−4)沸水収縮率及び弾性率
本発明フィルムは、沸水収縮率がMD:2.0〜5.0%及びTD:2.5〜5.5%であることが好ましく、その中でもMD:2.0〜4.0%及びTD:2.5〜4.5%であることがより好ましい。
また、弾性率は、MD:1.5〜3.0GPa及びTD:1.5〜2.5GPaであることが好ましく、その中でもMD:1.8〜2.7GPa及びTD:1.8〜2.2GPaであることがより好ましい。
本発明フィルムを金属箔と貼り合わせて、金属箔に十分な延展性を付与するには、上記のような沸水収縮率と弾性率を有することが好ましい。すなわち、上記のような沸水収縮率と弾性率を有する場合には、ポリアミド系フィルムにより高い柔軟性が付与され、金属箔と貼り合わせた際に、より効果的に金属箔に延展性を付与することができる。
これに対し、沸水収縮率が2.0%未満である場合は、ポリアミド系フィルムが変形しにくく、柔軟性に乏しくなるため、冷間成型時に破断、デラミネーション等が発生しやすくなる。また、沸水収縮率が5.5%を超えると柔軟性が高くなりすぎるため、十分な延展性が付与できなくなることで成型性が低下するおそれがある。
弾性率が1.5GPa未満であると、柔軟性が高くなりすぎるため、十分な延展性が付与できなくなることで成型性が低下する場合がある。また、弾性率が3.0GPaを超えると柔軟性に乏しくなるため、冷間成型時に破断、デラミネーション等が発生するおそれがある。
本発明における沸水収縮率の測定は、以下のようにして行う。ポリアミド系フィルムを23℃×50%RHで2時間調湿した後、フィルムのMDを特定し、MD方向とその方向に対して直角方向をTDとし、それぞれの測定方向に150mm(標線間距離100mm)、測定方向に対して垂直方向に15mmの短冊状に裁断し、標線間距離(A)を測定した後、ガーゼに試験片を包み込み100℃×5分の熱水処理を実施する。処理後、すぐに流水にて冷却、水を切り、23℃×50%RHで2時間調湿した後、標線間距離(B)を測定し、下記式にて収縮率を算出した。
収縮率=[(A−B)/A]×100
また、本発明における弾性率の測定は、以下のようにして行う。ポリアミド系フィルムを23℃×50%RHで2時間調湿した後、フィルムのMDを特定し、MDに対して直角方向をTDとし、それぞれの測定方向に300mm(標線間距離250mm)、測定方向に対して垂直方向に15mmの短冊状に裁断し、1kN測定用のロードセルとサンプルチャックとを取り付けた引張試験機(島津製作所社製AG−IS)を用い、試験速度25mm/minにて、測定を実施し、荷重―伸び曲線の勾配から弾性率を算出する。
(D)本発明フィルムを含む積層体
本発明フィルムは、公知又は市販のポリアミド系フィルムと同様にして各種の用途に用いることができる。この場合、本発明フィルムをそのままの状態又は表面処理した状態で使用できるほか、他の層を積層してなる積層体の形態で使用することもできる。
積層体の形態をとる場合、その代表例として本発明フィルム及びそのフィルム上に積層された金属箔を含む積層体(本発明の積層体)が挙げられる。この場合、本発明フィルムと金属箔とは直接に接するように積層されていても良いし、他の層を介在させた状態で積層されていても良い。特に、本発明では、本発明フィルム/金属箔/シーラントフィルムの順に積層した積層体であることが好ましい。この場合、本発明フィルムの保護層を有する表面は最外層(金属箔と貼り合わせる面とは異なる面)となるようにすることが好ましい。また、各層間には必要に応じて接着剤層を介在させても良いし、介在させなくても良い。
例えば、図7に示すように、ポリアミド系基材層51と保護層52とが積層されているポリアミド系フィルム50において、保護層52が形成されていない面に金属箔53及びシーラント層54が順に積層されている。そして、シーラント層54が電解液と接触する側(面)とし、保護層52が最外層となるように容器(電池容器)が作製される。この場合、前記のように、必要に応じてポリアミド系基材層と金属箔の層間に接着剤層を介在させても良い。また、必要に応じてプライマー層を形成することもできる。例えば、保護層/ポリアミド系基材層/プライマー層/接着剤層/金属箔となるように、プライマー層及び接着剤層をポリアミド系基材層と金属箔との間に介在させても良い。
本発明フィルムは、そのまま使用することができるが、前記のように、ポリアミド系基材層の保護層を有していない面の全面又は一部にプライマー層(アンカーコート層:AC層)を有していても良い。このようなプライマー層を有するフィルム表面に接着剤を塗布して金属箔を貼り合わせると、ポリアミド系フィルムと金属箔との接着性をより高めることができる。これにより、金属箔により十分な延展性を付与することができる。
このため、ポリアミド系フィルム又は金属箔が破断しにくくなることに加えて、デラミネーション又はピンホールの発生をより効果的に防止することができる。このようなプライマー層を含むフィルムも、本発明のポリアミド系フィルムに包含される。
金属箔としては、各種の金属元素(アルミニウム、鉄、銅、ニッケル等)を含む金属箔(合金箔を含む。)が挙げられるが、特に純アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好適に用いられる。アルミニウム合金箔については、鉄を含有していること(アルミニウム−鉄系合金等)が好ましく、他の成分については前記積層体の成型性を損なわない範囲で、JIS等に規定されている公知の含有量の範囲であればいずれの成分を含んでいても良い。
金属箔の厚みは、特に限定されないが、成型性等の観点より15〜80μmであることが好ましく、特に20〜60μmとすることがより好ましい。
本発明の積層体を構成するシーラントフィルムは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、ポリ塩化ビニル等のヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を採用することが好ましい。シーラントフィルムの厚みは、限定的ではないが、通常20〜80μmであることが好ましく、特に30〜60μmであることがより好ましい。
本発明の積層体は、各層の層間に接着剤層を介在させることができる。例えば、ポリアミド系フィルム/金属箔の間、金属箔/シーラントフィルムの層間等にはウレタン系接着剤層、アクリル系接着剤層等の接着剤層を用いて各層が積層されることが望ましい。
この場合、本発明のポリアミド系フィルムがフィルム表面の少なくとも片面にプライマー層を有する場合、プライマー層面上に金属箔が積層されることが好ましい。より具体的には、プライマー層面上にウレタン系接着剤層、アクリル系接着剤層等の接着剤層を介して金属箔が積層されていることが好ましい。
本発明の積層体は、特に本発明フィルムを含むものであることから、冷間成型である絞り成型(特に深絞り成型又は張り出し成型)に好適に用いることができる。ここに、絞り成型は、基本的には1枚の積層体から円筒、角筒、円錐等の形状を有する底付き容器を成型する方法である。このような容器は、一般に継ぎ目がないという特徴を有する。
(E)本発明の積層体を含む容器
本発明は、本発明の積層体を含む容器も包含する。例えば、本発明の積層体を用いて成型された容器も、本発明に包含される。この中でも冷間成型することにより得られる容器であることが好ましい。特に、冷間成型として絞り成型(絞り加工)又は張り出し成型(張り出し加工)により製造される容器であることが好ましく、特に絞り成型により製造される容器が好ましい。
すなわち、本発明に係る容器は、本発明の積層体から容器を製造する方法であって、前記積層体を冷間成型する工程を含むことを特徴とする容器の製造方法により好適に製造することができる。従って、例えば本発明の積層体から継ぎ目のない容器等を製造することができる。
この場合の冷間成型方法自体は、限定的でなく、公知の方法に従って実施することができる。例えば、積層体に含まれる樹脂を溶融させることなく、固体のままで成型する方法を採用すれば良い。かかる条件を満たす限り、成型温度(積層体の温度)は、用いる樹脂の物性(例えばガラス転移点等)に応じて適宜設定することができる。一般的には、成型温度は50℃以下とすることが好ましく、さらに45℃以下とすることがより好ましい。従って、例えば成型温度を常温(20〜30℃程度)としたうえで冷間成型を実施することもできる。また例えば樹脂のガラス転移点以下の温度で冷間成型を実施することができる。
より具体的な成型方法(加工方法)としては、例えば円筒絞り加工、角筒絞り加工、異形絞り加工、円錐絞り加工、角錐絞り加工、球頭絞り加工等の絞り加工を好ましく採用することができる。また、絞り加工としては、浅絞り加工と深絞り加工に分類されるが、本発明の積層体は、特に深絞り加工にも適用することができる。
これらの絞り加工は、通常の金型を用いて実施することができる。例えば、パンチ、ダイス及びブランクホルダーを含むプレス機械を用い、a)前記ダイスとブランクホルダー間に本発明の積層体を配置する工程及びb)前記パンチを前記積層体に押し込むことにより容器状に変形させる工程を含む方法により絞り加工を実施することができる。
このようにして得られる容器は、金属箔の破断、デラミネーション、ピンホール等の不具合が効果的に抑制されているので、高い信頼性を得ることができる。このため、本発明に係る容器は、各種の工業製品の包装材料をはじめとして、様々な用途に使用できる。特に、深絞り成型による成型体はリチウムイオン電池の外装体、張り出し成型による成型体はプレススルーパック等に好適に用いられる。
特に、本発明フィルムをリチウムイオン電池の外装材として好適に用いることができる。本発明フィルムを外装材として用いる場合、その保護層によって本発明フィルム(特にポリアミド系基材層)を電解液から保護することができる。その結果、外装材の腐食等により生じる問題を効果的に抑制ないしは防止することができる。
一般に、リチウムイオン二次電池に使用される電解液は、イオン性物質(特にリチウム塩)を炭酸エステル等の極性溶媒に溶解させて調製される電気伝導性液体である。リチウム塩としては、水と反応することによりフッ酸(フッ化水素)を生じるリチウム塩が挙げられる。より具体的には、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)等のフッ素含有リチウム塩が例示される。そのため、空気中で電解液が付着した場合には、空気中の水分と電解液中のフッ素含有リチウム塩とが反応してフッ酸が発生する。このフッ酸によって、リチウムイオン二次電池外装材に使用されているポリアミドフィルムが溶解する。これに対し、本発明フィルムは、ポリアミド系基材層が上記特定の保護層により覆われているため、かりに電解液が外装材に接触したとしても、高い耐電解液性により外装材を効果的に保護できる結果、信頼性の高いリチウムイオン二次電池を提供することが可能となる。
2.本発明フィルムの製造方法
本発明のポリアミド系フィルムは、以下に示す製造方法を採用することによって、前記したような特性値を満足するものを得ることが可能である。より具体的には、ポリアミド系基材層及びその少なくとも一方の面に形成された保護層を含むフィルムを製造する方法であって、
(1)ポリアミド樹脂を含む溶融混練物をシート状に成形することにより未延伸シートを得るシート工程(成形工程)、
(2)前記未延伸シートをMD及びTDに逐次又は同時に二軸延伸することによって延伸フィルムを得る工程(延伸工程)
を含み、かつ、
(3)下記式a)及びb);
a)0.85≦X/Y≦0.95
b)8.5≦X×Y≦9.5
(但し、Xは前記MDの延伸倍率を示し、Yは前記TDの延伸倍率を示す。)
の両方を満たし、
(4)a)未延伸シート又はb)MD及びTDの少なくとも一方が延伸されたフィルムの少なくとも一方の面に、ビニルアルコール単位を含有するビニルアルコール系ポリマー(A)と不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)とを含む塗工液を塗布する工程(塗布工程)を含む、
ことを特徴とする。
シート成形工程
シート成形工程では、ポリアミド樹脂を含む溶融混練物をシート状に成形することにより未延伸シートを得る。
ポリアミド樹脂としては、前記で述べたような各種の材料を用いることができる。また、各種の添加剤も溶融混練物中に含有させることができる。溶融混練物の調製自体は、公知の方法に従って実施すれば良い。例えば、加熱装置を備えた押出機にポリアミド樹脂を含む原料を投入し、所定温度に加熱することによって溶融させた後、その溶融混練物をTダイにより押し出し、キャスティングドラム等により冷却固化させることによってシート状の成形体である未延伸シートを得ることができる。
この場合の未延伸シートの平均厚みは特に限定されないが、一般的には15〜250μm程度とし、特に50〜235μmとすることが好ましい。このような範囲内に設定することによって、より効率的に延伸工程を実施することができる。
延伸工程
延伸工程では、前記未延伸シートをMD及びTDに逐次又は同時に二軸延伸することによって延伸フィルムを得る。
前記のとおり、MD及びTDの少なくとも一方向がテンターにより延伸される工程を含む逐次二軸延伸により得られるものであることが好ましい。これにより、より均一なフィルム厚みを得ることが可能となる。
テンター自体は、従来よりフィルムの延伸のために使用されている装置であり、未延伸シートの両端を把持しながら縦方向及び/又は横方向に拡幅させる装置である。テンターを用いる場合においても、同時二軸延伸及び逐次二軸延伸の2つの方法がある。テンターを用いる同時二軸延伸は、未延伸フィルムの両端を把持しながらMDへ延伸すると同時にTDへも延伸することにより、MD及びTDの二軸延伸をテンターにより同時に行う方法である。
一方、テンターを用いる逐次二軸延伸は、1)回転速度が異なる複数のロールに未延伸シートを通過させることによりMDを延伸した後、その延伸されたフィルムをテンターによりTDへ延伸する方法、2)未延伸シートをテンターによりMDを延伸した後、その延伸されたフィルムをテンターによりTDへ延伸する方法等があるが、得られるフィルムの物性、生産性等の点で前記1)の方法が特に好ましい。前記1)の方法については、図2に示すような工程により未延伸フィルムの逐次二軸延伸が行われる。
まず、図2に示すように、未延伸シート13が複数のロール21を通過することによりMD(縦方向)に延伸される。これら複数のロールは回転速度が異なるため、その速度差により未延伸シート13がMDに延伸される。すなわち、未延伸シートを低速ロール群から高速ロール群へ通過させることで延伸するものである。
なお、図2では、ロール数は5個であるが、実際はそれ以外の個数であっても良い。また、ロールは、例えば順に予熱用ロール、延伸用ロール及び冷却用ロールというかたちで互いに機能が異なるロールを設置することもできる。これらの各機能を有するロールの個数も適宜設定することができる。また、延伸用ロールを複数設ける場合、多段階で延伸できるような設定としても良い。例えば、1段目を延伸倍率E1とし、2段目を延伸倍率E2という2段階の延伸によりMDの延伸倍率を(E1×E2)の範囲内で適宜設定することが可能となる。このようにして第1延伸フィルム13’が得られる。
次に、ロール21を通過した第1延伸フィルム13’は、テンター22に導入されることによりTDに延伸される。より具体的には、図3に示すように、テンター22に導入された第1延伸フィルム13’は、入口付近においてその両端をガイドレールに固定されたリンク装置34に接続されたクリップに把持され、流れ方向の順に予熱ゾーン31、延伸ゾーン32及び弛緩熱処理ゾーン33を通過する。予熱ゾーン31で第1延伸フィルム13’は一定の温度に加熱された後、延伸ゾーン32でTDに延伸される。その後、弛緩熱処理ゾーン33において、一定の温度で弛緩処理が行われる。このようにして第2延伸フィルム14(本発明フィルム)が得られる。その後、ガイドレールに固定されたリンク装置34は、テンター22の出口付近で第2延伸フィルム14から外され、テンター22の入口付近に戻される。
このように、テンターを用いる逐次二軸延伸は、MDをロールによって延伸することから生産性、設備面等において有利であり、TDをテンターによって延伸することからフィルム厚みの制御等において有利となる。
本発明のポリアミド系フィルムの製造方法では、延伸工程において、下記式a)及びb);
a)0.85≦X/Y≦0.95
(好ましくは0.89≦X/Y≦0.93)
b)8.5≦X×Y≦9.5
(好ましくは8.7≦X×Y≦9.1)
(但し、Xは前記MDの延伸倍率を示し、Yは前記TDの延伸倍率を示す。)両方を満たすことが好ましい。
上記a)及びb)の条件のいずれか一方でも満足しない場合は、得られるポリアミド系フィルムは4方向の応力のバランスが悪いものとなり、本発明フィルムを得ることが困難となる。
延伸工程における温度条件は、例えば、前記の同時二軸延伸を行う際には180℃〜220℃の温度範囲で延伸することが好ましい。また例えば、前記の逐次二軸延伸を行う際には、MDの延伸を50〜120℃(特に50〜80℃、さらに50〜70℃、またさらに50〜65℃)の温度範囲で行うことが好ましく、TDの延伸を70〜150℃(特に70〜130℃、さらに70〜120℃、またさらに70〜110℃)の温度範囲で行うことが好ましい。このような温度範囲に制御することによって、より確実に本発明フィルムを製造することが可能となる。これらの温度は、例えば図2に示すロール21(予熱用ロール)、図3に示すテンターの予熱ゾーン31等にて予熱しながら設定・制御することができる。
また、テンターを用いる同時二軸延伸及び逐次二軸延伸ともに、延伸後は弛緩熱処理を行うことが好ましい。弛緩熱処理は、温度180〜230℃の範囲で弛緩率2〜5%とすることが好ましい。これらの温度は、図3に示すテンターの弛緩熱処理ゾーンにて設定・制御することができる。延伸時の温度範囲を上記のようなものとするための手段としては、フィルム表面に熱風を吹き付ける方法や遠赤外線又は近赤外線ヒーターを用いる方法、及びそれらを組み合わせる方法等があるが、本発明の加熱方法としては、熱風を吹き付ける方法を含むことが好ましい。
<延伸工程における実施の形態>
本発明における延伸工程としては、MDをロールによって延伸し、TDをテンターによって延伸する逐次二軸延伸工程を好適に採用することができる。この方法を採用し、かつ下記に示す温度条件を満足することにより、前記4方向の伸長時の応力バランスをより優れたものとすることが可能となり、かつ、前記4方向の厚み精度をより高いものとすることが可能となるため、特に平均厚み15μm以下の本発明フィルムをより確実かつ効率的に得ることができる。
MDの延伸
まず、MDの延伸における温度は、ロールを用いて50〜70℃の温度範囲で延伸することが好ましく、中でも50〜65℃とすることがより好ましい。
MDの延伸は、2段階以上の多段延伸を行うことが好ましい。この場合、延伸倍率を段階的に上げていくことが好ましい。すなわち、n段目の延伸橋率よりも(n+1)段目の延伸倍率の方が高くなるように制御することが好ましい。これによって全体をよりいっそう均一に延伸することができる。例えば、2段階で延伸する場合、1段目を延伸倍率1.1〜1.2とし、2段目を延伸倍率2.3〜2.6という2段階の延伸により縦方向の延伸倍率を2.53〜3.12の範囲内で適宜設定することができる。
さらには、MDの延伸において、温度勾配を設けることが好ましい。特に、フィルムの引き取り方向に沿って、順次温度を上げていくことが好ましく、MDの延伸部全体において、その温度勾配(フィルムの走行方向のはじめ(入口)の温度T1とおわり(出口)の温度T2との温度差)は、通常2℃以上であることが好ましく、3℃以上であることがより好ましい。このとき、フィルムの走行方向のはじめ(入口)とおわり(出口)までのフィルムの走行時間(加熱時間)は、通常1〜5秒間であることが好ましく、特に2〜4秒間であることがより好ましい。
TDの延伸
TDの延伸は、図3に示すような各ゾーンが形成されるテンターにより延伸を行う。このとき、予熱ゾーンの温度は60〜70℃とすることが好ましい。そして、延伸ゾーンの温度を70〜130℃の温度範囲とすることが好ましく、特に75〜120℃の温度範囲とすることがより好ましく、さらには80〜110℃の温度範囲とすることが最も好ましい。
また、延伸ゾーンにおいても、フィルムの引き取り方向に沿って、順次温度を上げていくことが好ましい。特に、延伸ゾーン全体において、その温度勾配(フィルムの走行方向のはじめ(入口)の温度T1とおわり(出口)の温度T2との温度差)は、通常5℃以上とすることが好ましく、さらに8℃以上とすることがより好ましい。このとき、延伸ゾーンにおけるフィルムの走行方向のはじめ(入口)とおわり(出口)までのフィルムの走行時間(加熱時間)は、通常1〜5秒間であることが好ましく、特に2〜4秒間であることがより好ましい。
延伸後のフィルムに、さらに弛緩熱処理を行うことが好ましい。弛緩熱処理ゾーンにおいて弛緩熱処理を行い、その熱処理温度は通常180〜230℃の範囲とすることが好ましく、中でも180〜220℃の範囲とすることがより好ましく、さらには180〜210℃とすることが最も好ましい。また、弛緩率は、通常2〜5%とすることが好ましい。
塗布工程
塗布工程では、a)未延伸シート又はb)MD及びTDの少なくとも一方が延伸されたフィルムの少なくとも一方の面に対し、ビニルアルコール単位を含有するビニルアルコール系ポリマー(A)と不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)とを含む塗工液を塗布する。
塗工液としては、A成分及びB成分を含むものであれば良く、例えばA成分及びB成分が溶媒に溶解した混合溶液、A成分及びB成分が溶媒に分散した分散液等のいずれであっても良いが、特に混合溶液を好適に用いることができる。
塗工液に用いる溶媒としては、水のほか、例えば低級アルコール(特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等)、メチルエチルケトン、酢酸メチル、ベンゼン、トルエン等の溶媒の少なくとも1種を用いることができる。特に、A成分及びB成分が水溶性である場合は、水を溶媒として用いることが工程の環境又は溶媒コストの面から好ましい。他方、溶解性の向上、乾燥工程の短縮化、溶液の安定性改善等の目的により、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒(例えば水にアルコール等の水溶性有機溶媒を少量添加したもの)が有効である。また、本発明フィルムの耐電解液特性を高めるためには、A成分とB成分との間にエステル結合による架橋反応が起こることが必要であるが、架橋反応を促進させるために、酸等の触媒を添加することもできる。
また、塗工液を調製する場合、B成分の不飽和カルボン酸のカルボキシル基に対して、0.1〜20当量%のアルカリ化合物を加えることが好ましい。特に1価のアルカリ金属の化合物であることがより好ましく、ナトリウム又はカリウムを含むアルカリ化合物であることが最も好ましい。不飽和カルボン酸は、カルボキシル基の含有量が多いと親水性が高くなるので、アルカリ化合物を添加しなくても水溶液にすることができるが、アルカリ化合物を適正量添加することにより、得られる積層体の耐電解液性を格段に向上することができる。アルカリ化合物は、不飽和カルボン酸のカルボキシル基を中和できるものであれば良く、例えば水酸化ナトリウム等を好適に用いることができる。また、アルカリ化合物の添加量は、不飽和カルボン酸のカルボキシル基に対して、0.1〜20モル%であることが好ましい。
塗工液の調製は、撹拌機を備えた溶解釜等を用いて、公知の方法で行うことができる。例えば、A成分及びB成分とを別々の水溶液として調製し、塗工前に両者を混合する方法等を好適に採用することができる。この場合、上記アルカリ化合物をB成分の水溶液に加えておくと、その水溶液の安定性をより向上させることができる。
塗工液の濃度(固形分濃度)は、塗工液の粘度又は反応性、用いる装置の仕様等によって適宜変更することができるが、5〜70質量%の範囲内で設定することができる。塗工液の濃度が低すぎると所望の厚みの層を得ることが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要する。一方、塗工液の濃度が高すぎると、混合操作、保存性等に支障が生じることがある。
塗工液の塗布方法としては、特に限定されず、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング等の通常の方法を用いることができる。
塗工は、a)未延伸シート又はb)MD及びTDの少なくとも一方が延伸されたフィルムの少なくとも一方の面に対して行えば良い。すなわち、未延伸シートに対して塗工する場合、MD又はTDのいずれかが延伸されたフィルムに対して塗工する場合、MD及びTDの両方が延伸されたフィルムに対して塗工する場合等のいずれであっても良い。従って、塗布工程は、上記のような延伸工程、弛緩熱処理工程を経て得られた延伸フィルムに行っても良いし、あるいはフィルムの延伸前又は延伸工程の間に行っても良い。
さらに、本発明において、フィルムの少なくとも一方の面に形成された、ポリマー(A)とポリマー(B)からなる保護層においては、両ポリマーを架橋反応させるために、コーティング後に熱処理を行うことが好ましい。その場合の熱処理温度は、限定的ではないが、通常180〜230℃の雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理温度が低すぎると架橋反応を充分に進行させることができず、十分な耐電解液性を有するフィルムを得ることが困難になる。一方、熱処理温度が高すぎると、保護層を脆化させるおそれがある。
また、熱処理時間は、通常は5分間以下であることが好ましく、1秒間〜5分間であることがより好ましく、3秒間〜2分間であることがさらに好ましい。熱処理時間が短すぎると、上記架橋反応を十分に進行させることができず、耐電解液性を有する保護層を得ることが困難になり、一方、熱処理時間が長すぎると生産性が低下する。
従って、本発明においては、延伸フィルムを弛緩熱処理する工程より前に、コーティング工程を行うことが好ましい。この中でも、MDの延伸の後、MD延伸されたフィルムに塗工液の塗布を行い、次いでTDの延伸を行う方法(インラインコーティング)を採用することが好ましい。なお、延伸前又は延伸途中にコーティングを行ったフィルムを延伸・熱処理する際にも、前記と同様の延伸・熱処理条件を採用するものである。
なお、本発明の製造方法では、延伸工程として、厚みの均一性の保持等の観点より、上記以外の延伸方法は採用されないことが望ましい。例えば、チューブラー法(インフレーション法)による延伸工程を含まないことが望ましい。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。本発明における各種特性値の測定及び評価は以下のとおりに行った。
(1)ポリアミド系フィルムの5%伸長時及び15%伸長時の4方向の応力
ポリアミド系フィルムの5%伸長時及び15%伸長時の4方向の応力は、MDを基準方向(0度方向)としたうえで、前記で説明した方法で測定し、算出した。
なお、測定に用いたサンプルフィルムとしては、得られたフィルムロールに巻き取られたポリアミド系フィルムにおいて、巻幅の中心付近であって、かつ、巻量の半分にあたる位置で採取したものを用いた。
(2)ポリアミド系フィルムの平均厚みと標準偏差
ポリアミド系フィルムの平均厚みと標準偏差は、前記の方法でそれぞれ測定し、算出した。なお、測定に用いたサンプルフィルムは、次の3種類であった。
得られたフィルムロールに巻き取られたポリアミド系フィルムにおいて、a)巻幅の中心付近であって、かつ、巻量の半分にあたる位置で採取したものを「A」と表記し、b)巻幅の右端付近であって、かつ、巻量の半分にあたる位置で採取したものを「B」と表記し、c)巻幅の左端付近であって、かつ、巻終わり付近の位置で採取したものを「C」と表記した。
(3)ポリアミド系フィルムの沸水収縮率、弾性率
ポリアミド系フィルムの沸水収縮率、弾性率は、前記で示した方法により測定した。なお、測定に用いたサンプルフィルムとしては、得られたフィルムロールに巻き取られたポリアミド系フィルムにおいて、巻幅の中心付近であって、かつ、巻量の半分にあたる位置で採取したものを用いた。
(4)ポリアミド系フィルムの動摩擦係数
ポリアミド系フィルムの動摩擦係数は、前記で示した方法により測定した。なお、測定に用いたサンプルフィルムとしては、得られたフィルムロールに巻き取られたポリアミド系フィルムにおいて、巻幅の中心付近であって、かつ、巻量の半分にあたる位置で採取したものを用いた。
なお、実施例1、6、7、13、42〜53のみを測定対象とした。いずれもポリアミド系フィルムのコート層の表面で測定を行った。
(5)保護層の厚み
得られたポリアミド系フィルムをエポキシ樹脂中に包埋し、凍結ウルトラミクロトームで厚み100nmの切片を採取した。切削温度は−120℃とし、切削速度は0.4mm/分とした。採取した切片をRuO溶液で1時間気相染色し、JEM−1230 TEM(日本電子社製)を用いて、透過測定にて加速電圧100kVで保護層厚みを測定した。このとき、保護層の厚みを測定する箇所を任意の5点選択し、5点の測定値の平均値を厚みとした。
なお、測定に用いたサンプルフィルムとしては、得られたフィルムロールに巻き取られたポリアミド系フィルムにおいて、巻幅の中心付近であって、かつ、巻量の半分にあたる位置で採取したものを用いた。
(6)積層体の成型性〔絞り深さ(エリクセン試験)〕
JISZ2247に基づいて、エリクセン試験機(安田精機製作所社製No.5755)を用い、得られた積層体に鋼球ポンチを所定の押し込み深さで押し付け、エリクセン値を求めた。エリクセン値は0.5mmごとに測定した。エリクセン値が5mm以上である場合が好適であり、特に8mm以上である場合を深絞り成型により好適であると判断した。
(7)耐電解液性能
得られたポリアミド系フィルムを用いて、下記に示す放置時間を6時間、12時間、24時間の3種類について耐電解液性能を評価した。具体的には、ガラスシャーレ(直径200mm)の開口部を、保護層が表面になるようにポリアミド系フィルムで覆い、保護層上に、電解液(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/メチルエチルカーボネート=1/1/1(体積比)からなる混合液にLiPFを配合させた液、濃度1モル/L)を10ml滴下し、保護層に電解液を付着させ、室温(23℃)でそれぞれの時間放置した。その後、保護層上の電解液をガーゼで拭き取り、外観を目視観察した。
また、それぞれの時間放置後、外観を目視観察した後のポリアミド系フィルムについて、(1)と同様にして15%伸長時のMD方向の応力(応力2)を測定した。電解液を滴下する前のポリアミド系フィルムの15%伸長時のMD方向の応力(応力1)の値を用いて、下記式にて応力保持率を算出した。
応力保持率(%)=(応力2/応力1)×100
そして、耐電解液性能の総合評価を以下の3段階で行った。
○:外観変化がなく、応力保持率が95%以上である場合
△:外観に変化はないが、応力保持率が95%未満、90%以上である場合
×:外観に変化(白化)が見られる、応力保持率が90%未満である場合
調製例1
まず保護層形成用混合溶液(コート液)を調製した。ポリビニルアルコール(PVA)として(クラレ社製、ポバール105(ケン化度98〜99モル%、平均重合度約500))を熱水に溶解した後、室温に冷却することにより、固形分15質量%のPVA水溶液を得た。また、EMA(重量平均分子量60000、マレイン酸単位45〜50%)と水酸化ナトリウムとを熱水に溶解後、室温に冷却することにより、カルボキシル基の10モル%が水酸化ナトリウムにより中和された、固形分15質量%のEMA水溶液を調製した。次いで、PVA中のビニルアルコール単位及びEMAのマレイン酸単位のモル比が30:70となるように両水溶液を混合し、室温で撹拌してコート液1を調製した。
調製例2
PVA中のビニルアルコール単位及びEMAのマレイン酸単位のモル比が10:90となるように両水溶液を混合した以外は、コート液1と同様にしてコート液2を調製した。
調製例3
PVA中のビニルアルコール単位及びEMAのマレイン酸単位のモル比が50:50となるように両水溶液を混合した以外は、コート液1と同様にしてコート液3を調製した。
調製例4
PVA水溶液の代わりに、クラレ社製 エクセバールRS2117(ケン化度97.5〜99モル%)を熱水に溶解後、室温に冷却することにより、固形分10質量%のエクセバール(EVOH)水溶液を作成した以外は、コート液1と同様にして、ビニルアルコール単位及びEMAのマレイン酸単位のモル比が30:70となるように両水溶液を混合し、コート液4を調製した。
調製例5
EMAの代わりに、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体(Ashland Specialty Ingredients社製「GANTREZ AN119」)と水酸化ナトリウムを熱水に溶解後、室温に冷却することによりカルボキシル基の10モル%が水酸化ナトリウムにより中和された、固形分10質量%の水溶液を得た。次いで、コート液1と同様にして、PVA中のビニルアルコール単位及びGANTREZのマレイン酸単位のモル比が30:70となるように両水溶液を混合し、室温で撹拌してコート液5を調製した。
調製例6
コート液1と同様にして得られたコート液中に無機滑剤としてシリカを添加し、保護層中のシリカの含有量が0.6質量%となるようにしてコート液6を調製した。
調製例7
コート液1と同様にして得られたコート液中に無機滑剤としてシリカを添加し、保護層中のシリカの含有量が1.8質量%となるようにしてコート液7を調製した。
調製例8
コート液1と同様にして得られたコート液中に無機滑剤としてシリカを添加し、保護層中のシリカの含有量が6.0質量%となるようにしてコート液8を調製した。
実施例1
(1)ポリアミド系フィルムの作製
ユニチカ社製ポリアミド6樹脂(A1030BRF、相対粘度3.1)及びシリカ6質量%含有ナイロン6樹脂(A1030QW、相対粘度2.7)を原料として用い、A1030BRF/シリカ含有ナイロン樹脂=98.7/1.3(質量比)の組成比率にて押出機内で溶融混練し、Tダイへ供給してシート状に吐出した。20℃に温度調節した金属ドラムに前記シートを巻き付け、冷却して巻き取ることにより未延伸シートを製造した。このとき、延伸後に得られるポリアミド系フィルムの厚みが15μmとなるように、ポリアミド樹脂の供給量等を調整した。
次いで、得られた未延伸シートを逐次二軸延伸により延伸工程を実施した。より具体的には、前記シートのMDについてはロールを用いて延伸した後、TDについてはテンターを用いて延伸する方法により延伸を行った。
まず、MDの延伸は、前記シートを複数個の延伸用ロールに通過させることにより、MDへ全延伸倍率2.85倍となるように延伸した。このとき、2段階で延伸を行い、1段目の延伸倍率を1.1とし、2段目の延伸倍率を2.59とし、全延伸倍率(MD1×MD2)1.1×2.59=2.85倍とした。加熱条件は、フィルムの引き取り方向に沿って、走行方向のはじめ(T1)が58℃、おわり(T2)が61℃となるように温度勾配を設けて延伸を行った。このとき、フィルムの走行方向のはじめ(入口)とおわり(出口)までのフィルムの走行時間(加熱時間)は約3秒間であった。
MDの延伸後、グラビアコーターでコート液1を延伸後の保護層の厚みが0.3μmになるようにフィルム片面にコーティングした。
その後、TDの延伸を行った。TDの延伸は、図3に示すようなテンターを用いて実施した。まず予熱ゾーン(予熱部)の温度を70℃として予熱を行いながら、延伸ゾーンにおいてTDへ3.2倍延伸した。このとき、延伸ゾーン(延伸部)では、フィルムの引き取り方向に沿って、走行方向のはじめ(T1)が78℃、おわり(T2)が100℃となるように温度勾配を設けた。このとき、延伸ゾーンにおけるフィルムの走行方向のはじめ(入口)とおわり(出口)までのフィルムの走行時間(加熱時間)は約3秒間であった。
延伸ゾーンを通過したフィルムは、弛緩熱処理ゾーン(熱処理部)において温度202℃で3秒間及び弛緩率3%の条件で弛緩熱処理された。このようにして1000m以上連続製造することにより、ポリアミド系基材層の片面に厚み0.3μmの保護層が形成された二軸延伸ポリアミド系フィルム(巻量2000m)を得た。得られたフィルムはロール状に巻き取られた。
(2)積層体の作製
前記(1)で得られた二軸延伸ポリアミド系フィルム(保護層がない面)に、二液型ポリウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製「TM‐K55/CAT−10L」)を塗布量が5g/mとなるように塗布した後、80℃で10秒間乾燥した。その接着剤塗布面に金属箔(厚み50μmのアルミニウム箔)を貼り合せた。次に、ポリアミド系フィルムとアルミニウム箔の積層体のアルミニウム箔側に上記接着剤を同様の条件で塗布した後、その塗布面にシーラントフィルム(未延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製 GHC 厚み50μm))を貼り合わせ、40℃の雰囲気下で72時間エージング処理を施し、積層体(ポリアミド系フィルム/アルミニウム箔/シーラントフィルム)を作製した。
実施例2〜22、比較例1〜14
製造条件及び延伸後のポリアミド系フィルムの目標厚みを表1〜2、表5に示したものに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。なお、これら各表中の平均厚み及び厚み精度、保護層の厚みの単位はいずれも「μm」である。
実施例23〜28
保護層の厚みを表7に示したものに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。なお、表7中の平均厚み及び厚み精度、保護層の厚みの単位はいずれも「μm」である。
実施例29
保護層の厚みを表8に示したものに変更した以外は、実施例5と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。なお、表8中の平均厚み及び厚み精度、保護層の厚みの単位はいずれも「μm」である。
実施例30
保護層の厚みを表8に示したものに変更した以外は、実施例7と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
実施例31
保護層の厚みを表8に示したものに変更した以外は、実施例12と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
実施例32
保護層の厚みを表8に示したものに変更した以外は、実施例11と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
実施例33
保護層の厚みを表8に示したものに変更した以外は、実施例13と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
実施例34
保護層の厚みを表8に示したものに変更した以外は、実施例15と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
実施例35
保護層の厚みを表8に示したものに変更した以外は、実施例6と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
実施例36
保護層の厚みを表8に示したものに変更した以外は、実施例22と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
実施例37〜40
MDの延伸後、コート液1に代えて、表8に示すコート液2〜5のいずれかを用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
実施例41
ユニチカ社製ポリアミド6樹脂(A1030BRF)、ユニチカ社製ポリアミド66樹脂(A226)及びシリカ6質量%含有ナイロン6樹脂(A1030QW)の組成比がA1030BRF/A226/A1030QW=89.0/9.7/1.3(質量比)である組成物を原料とした用い、製造条件を表3に示したものに変更した以外は、実施例30と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて実施例1と同様にして積層体を作製した。
実施例42、46、50
MDの延伸後、コート液1に代えて、表9に示すコート液6〜8のいずれかを用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。なお、表9中の平均厚み及び厚み精度、保護層の厚みの単位はいずれも「μm」である。
実施例43、47、51
MDの延伸後、コート液1に代えて、表9に示すコート液6〜8のいずれかを用いた以外は、実施例7と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
実施例44、48、52
MDの延伸後、コート液1に代えて、表9に示すコート液6〜8のいずれかを用いた以外は、実施例13と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
実施例45、49、53
MDの延伸後、コート液1に代えて、表9に示すコート液6〜8のいずれかを用いた以外は、実施例21と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
比較例15
コート液1をコートしない条件に変更した以外は、実施例7と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
比較例16
コート液1をコートしない条件に変更した以外は、実施例8と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
比較例17
コート液1に代えて、アニオン型水分散性ポリウレタン樹脂(DIC社製「ハイドランKU400SF」,Tmf=約0℃、Tsf=80℃)100質量部に対して、トリ(メトキシメチル)メラミン樹脂(DIC社製「ベッカミンAPM」,Tts=150℃)7質量部を混合して得られる水性塗剤に変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリアミド系フィルムを得た。得られたポリアミド系フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体を作製した。
試験例1
各実施例及び比較例で得られたポリアミド系フィルム及び積層体の物性について評価した。その評価結果を表6〜15に示す。なお、表1〜15において、温度の単位は「℃」、平均厚み及び厚み精度の単位は「μm」、保護層の厚みの単位は「μm」、応力の単位は「MPa」、沸水収縮率の単位は「%」、弾性率の単位は「GPa」、絞り深さの単位は「mm」をそれぞれ示す。
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これらの結果からも明らかなように、実施例1〜53では、特にポリアミド系フィルムの延伸倍率が所定の範囲であったため、得られたポリアミド系フィルムは、一軸引張試験において0度方向、45度方向、90度方向及び135度方向へ5%伸長時の応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であり、かつ、15%伸長時の応力の最大値と最小値の差が40MPa以下を満たしたものとなった。そして、これらのポリアミド系フィルムを用いて得られた積層体は、エリクセン値が高く、冷間成型したときに全方向へ均一な延展性を有していた。つまり、これらの実施例のポリアミド系フィルムは、アルミニウム箔の破断、デラミネーション、ピンホール等が発生することがなく、優れた成型性を有していた。
また、実施例1〜53で得られたポリアミド系フィルムは片面にビニルアルコール単位を含有するビニルアルコール系ポリマー(A)と、不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)を含有する保護層を有するものであることから、これらのポリアミド系フィルムを用いた積層体は耐電解液性にも優れていた。
実施例42〜53で得られたポリアミド系フィルムは、保護層中に無機滑剤を含有するものであることから、動摩擦係数が低く、これらのポリアミド系フィルムを用いた積層体は、滑り性に優れており、特に冷間成型性に優れていた。
一方、比較例1〜14では、特にポリアミド系フィルムの延伸倍率が所定の範囲を満足するものではなかったため、得られたポリアミド系フィルムは、一軸引張試験において0度方向、45度方向、90度方向及び135度方向へ5%伸長時の応力の最大値と最小値の差が35MPa以下でかつ、15%伸長時の応力の最大値と最小値の差が40MPa以下を満たさないものとなった。このため、これら比較例のポリアミド系フィルムを用いて得られた積層体は、エリクセン値が低く、冷間成型したときに全方向へ均一な延展性が得られず、成型性に劣っていた。
また、比較例15〜17では、ビニルアルコール単位を含有するビニルアルコール系ポリマー(A)と、不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)を含有する保護層を有していないため、耐電解液性に劣っており、電解液によりポリアミド系フィルムに穴が生じた。

Claims (10)

  1. ポリアミド系基材層及びその少なくとも一方の面に形成された保護層を含むフィルムであって、
    (1)前記保護層は、ビニルアルコール単位を含有するビニルアルコール系ポリマー(A)と、不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)(但し、前記ビニルアルコール系ポリマー(A)を除く。)とを含み、
    (2)前記フィルムは、
    (2−1)前記フィルムにおける任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度及び135度の4方向において、一軸引張試験による5%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が35MPa以下であり、かつ、
    (2−2)前記4方向において、一軸引張試験による15%伸長時の各応力の最大値と最小値の差が40MPa以下である、
    ことを特徴とするポリアミド系フィルム。
  2. 不飽和カルボン酸単位が、マレイン酸及び無水マレイン酸単位の少なくとも1種のマレイン酸系単位を含む、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
  3. 前記保護層において、
    (3−1)ビニルアルコール系ポリマー(A)中のビニルアルコール単位の含有量が40モル%以上であり、
    (3−2)ビニル系ポリマー(B)中の不飽和カルボン酸単位の含有量が10モル%以上である、
    請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
  4. 前記保護層におけるビニルアルコール単位と不飽和カルボン酸単位とのモル比(ビニルアルコール単位/不飽和カルボン酸単位)が1/99〜60/40である、
    請求項1記載のポリアミド系フィルム。
  5. 前記フィルムにおける任意の点から特定の方向を0度とし、その方向に対して時計回りに45度、90度、135度、180度、225度、270度及び315度の8方向の厚みの標準偏差が0.200μm以下である、請求項1又は2に記載のポリアミド系フィルム。
  6. 平均厚みが16μm以下である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
  7. 少なくとも一方の表面の動摩擦係数が0.60以下である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載ポリアミド系フィルム及びそのフィルム上に積層された金属箔を含む積層体。
  9. 請求項8に記載の積層体を含む容器。
  10. ポリアミド系基材層及びその少なくとも一方の面に形成された保護層を含むフィルムを製造する方法であって、
    (1)ポリアミド樹脂を含む溶融混練物をシート状に成形することにより未延伸シートを得る工程
    (2)前記未延伸シートをMD及びTDに逐次又は同時に二軸延伸することによって延伸フィルムを得る工程
    を含み、かつ、
    (3)下記式a)及びb);
    a)0.85≦X/Y≦0.95
    b)8.5≦X×Y≦9.5
    (但し、Xは前記MDの延伸倍率を示し、Yは前記TDの延伸倍率を示す。)
    の両方を満たし、
    (4)MDの延伸を50〜74℃で行い、TDの延伸を70〜150℃で行い、
    (5)a)未延伸シート又はb)MD及びTDの少なくとも一方が延伸されたフィルムの少なくとも一方の面にビニルアルコール単位を含有するビニルアルコール系ポリマー(A)と、不飽和カルボン酸単位を含有するビニル系ポリマー(B)とを含む塗工液を塗布する工程を含む、
    ことを特徴とするポリアミド系フィルムの製造方法。
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