以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〈紙幣処理装置の概略構成〉
図1は、紙葉類結束装置としての紙幣処理装置100の外観図を示し、図2は、紙幣処理装置100の概略構成図を示す。
紙幣処理装置100は、例えば銀行のテラーカウンタに設置され、オペレータによって使用される。紙幣処理装置100は、バラ状態の紙幣を取り込み、所定の種類の紙幣を集積し、該紙幣を所定の結束枚数で結束して投出する。
紙幣処理装置100は、紙幣が載置され、該紙幣を取り込むホッパ部2と、紙幣を識別する識別部3と、結束対象の紙幣を集積する結束スタッカ4と、結束対象でない紙幣を集積する非結束スタッカ5と、リジェクト紙幣を集積するリジェクトスタッカ6と、ホッパ部2から取り込まれた紙幣を、識別部3、結束スタッカ4、非結束スタッカ5及びリジェクトスタッカ6に搬送する第1搬送部7と、結束スタッカ4に集積された紙幣を所定の位置まで搬送する第2搬送部8と、第2搬送部8により搬送された紙幣を結束する結束部9と、結束された紙幣(以下、「結束紙幣」という)を搬送する第3搬送部10と、結束紙幣を投出する投出部11と、識別部3、結束スタッカ4、非結束スタッカ5、リジェクトスタッカ6、第1搬送部7、第2搬送部8、結束部9及び第3搬送部10を収容する箱状の筐体12とを備えている。
筐体12は、上面121と、下面122と4つの側面とを有している。筐体12は、卓上型である。つまり、筐体12の下面122には、キャスタ等が設けられておらず、卓上に設置される構造となっている。
筐体12の4つの側面のうちの1つの側面である第1側面123には、ホッパ部2及び投出部11が設けられている。4つの側面のうちの1つの側面である第2側面124には、詳しくは後述する結束スタッカ4の第1取出口47及び非結束スタッカ5の第2取出口53が設けられている。第1側面123と第2側面124とは、隣接している。
筐体12の内部は、紙幣の識別及び分類に関する処理を行う第1処理部126と、結束対象の紙幣の結束に関する処理を行う第2処理部127とに別れている。第2処理部127は、第1処理部126の上方に設けられている。第1処理部126には、ホッパ部2、識別部3、非結束スタッカ5及びリジェクトスタッカ6が含まれる。第2処理部127には、結束スタッカ4、第2搬送部8、結束部9及び第3搬送部10が含まれる。第1搬送部7の大部分は、第1処理部126に含まれている。
結束スタッカ4は、第1結束スタッカ4Aと第2結束スタッカ4Bとの2つのスタッカを含んでいる。第1結束スタッカ4Aと第2結束スタッカ4Bはともに、結束対象の紙幣を集積する。結束対象の紙幣として集積する紙幣は、適宜設定することができる。結束対象の紙幣は、所定の種類の紙幣である。所定の種類は、金種、正券か損券か、紙幣の表裏、紙幣の向き、新券か旧券かなどによって特定される。ここでは、結束対象の紙幣は、所定の金種(例えば、100元)であって且つ正券の紙幣である。ここで、識別部3によって正常な紙幣として識別された紙幣を「正常紙幣」と、識別部3で正常な紙幣として識別されなかった紙幣を「異常紙幣」と、斜行や重送等により搬送状態が異常な紙幣を「搬送異常紙幣」と称する。例えば、正常な紙幣か否かを判断する条件の1つとしては、記番号が識別可能であるか否かが挙げられる。ただし、それとは異なる条件をもって正常な紙幣か否かを判断してもよいし、それに別の条件を加えて正常な紙幣か否かを判断してもよい。また、正常紙幣であっても搬送先(結束スタッカ、非結束スタッカ等)が指定されていない種類の紙幣を「指定外紙幣」と称する。また、正常紙幣のうち、汚れや破れ等が比較的少ない状態の紙幣を「正券」と、正常紙幣のうち、汚れや破れ等が比較的多い状態の紙幣を「損券」と称する。結束スタッカ4は、集積部の一例である。
第1及び第2結束スタッカ4A,4Bは、第2処理部127内において実質的に上下方向に並んで配置されている。第1結束スタッカ4Aは、第2結束スタッカ4Bの上方に位置している。第1結束スタッカ4Aと第2結束スタッカ4Bとは、同様の構成をしている。2つのスタッカを区別しないときには、単に「結束スタッカ4」と称する。結束スタッカ4の詳細な構成については後述する。
非結束スタッカ5は、第1及び第2非結束スタッカ5A,5Bの2つのスタッカを含んでいる。第1及び第2非結束スタッカ5A,5Bは、第1処理部126内において実質的に水平方向に並んで配置されている。第2非結束スタッカ5Bの方が第1非結束スタッカ5Aよりもホッパ部2に近い位置に配置されている。2つのスタッカを区別しないときには、単に「非結束スタッカ5」と称する。非結束スタッカ5に集積する紙幣は適宜設定することができる。ここでは、第1非結束スタッカ5Aは、前記所定の金種であって且つ損券を集積する。第2非結束スタッカ5Bは、前記所定の金種以外の金種の紙幣を集積する。
リジェクトスタッカ6は、リジェクト紙幣を集積する。リジェクトスタッカ6は、第1及び第2非結束スタッカ5A,5Bよりもホッパ部2に近接している。リジェクトスタッカ6は、第1及び第2非結束スタッカ5A,5Bよりも少し上方に位置している。リジェクトスタッカ6に集積する紙幣は適宜設定することができる。ここでは、リジェクトスタッカ6は、「指定外紙幣」、「異常紙幣」及び「搬送異常紙幣」をリジェクト紙幣として集積する。
ホッパ部2は、第1側面123のうち第1処理部126に対応する部分に設けられ、投出部11は、第1側面123のうち第2処理部127に対応する部分に設けられている。
ホッパ部2は、紙幣が載置される載置台21と、載置台21上に載置された紙幣を案内する2つのガイド部22,22と、取込ローラ23と、紙幣を取り込む取込口24と、載置台21上の紙幣を検知する紙幣センサ25とを有している。本実施形態では、紙幣が短手方向に取り込まれていくように、紙幣がホッパ部2に載置される。
取込口24は、図1に示すように、載置台21と第1側面123とが交わる隅部に形成されている。載置台21は、取込口24に近づくに従って下方に位置するように傾斜している。これにより、載置台21上の紙幣は、自然と取込口24の方へ向かうようになっている。載置台21上に載置された紙幣は、取込口24から筐体12内へ取り込まれる。
また、紙幣センサ25は、取込口24の近傍に設けられている。紙幣センサ25は、光を送信する送信部と光を受信する受信部とを有し、送信部から出射されて受信部に到達する光が遮断されることによって紙幣を検知する。尚、後述する第1紙幣センサ45、第2紙幣センサ46、集積センサ52、集積センサ62、通過センサ74、第1テープセンサ9210及び第2テープセンサ9211も同様の構成をしている。紙幣センサ25は、載置台21上に載置された紙幣により光が遮断されるように配置されている。つまり、紙幣センサ25は、光が遮断されることによって、載置台21上に紙幣が載置されていることを検知することができる。
ガイド部22,22は、その間隔を調整可能に構成されている。つまり、ガイド部22,22の間隔は、載置台21上に載置された紙幣に合わせて調整される。
取込ローラ23は、キッカローラ23aと、フィードローラ23bと、ゲートローラ23cとを有している。キッカローラ23aは、部分的に載置台21から露出しており、載置台21上の紙幣のうち一番下の紙幣と接触している。キッカローラ23aは、載置台21上に載置された紙幣のうち一番下の紙幣を取込口24へ送り込む。こうして、紙幣が1枚ずつ取込口24から取り込まれていく。取込口24から送り込まれた紙幣は、フィードローラ23bとゲートローラ23cとで1枚ずつに分離されて、筐体12内へ取り込まれる。取り込まれた紙幣は、第1搬送部7へ送られる。
投出部11は、結束紙幣が投出される投出口111を有している。投出部11においては、投出口111を介して、結束紙幣が紙幣の短手方向に投出される。
第1搬送部7は、搬送ベルト等で構成されている。第1搬送部7は、主搬送路71と、主搬送路71から分岐する第1〜第4分岐路72a〜72dと、主搬送路71からの分岐箇所に設けられた振り分け機構73と、紙幣の通過を検知する複数の通過センサ74とを有している。第1搬送部7は、紙幣をその短手方向に搬送していく。第1搬送部7は、搬送部の一例である。
主搬送路71は、取込ローラ23から第1結束スタッカ4Aまで延びている。第1分岐路72aは、主搬送路71の最も上流側に位置しており、第1分岐路72aから下流側に向かって、第2分岐路72b、第3分岐路72c、第4分岐路72dがこの順で位置している。第1〜第4分岐路72a〜72dのそれぞれを区別しないときには、単に分岐路72と称する。第1分岐路72aは、リジェクトスタッカ6まで延びている。第2分岐路72bは、第2非結束スタッカ5Bまで延びている。第3分岐路72cは、第1非結束スタッカ5Aまで延びている。第4分岐路72dは、第2結束スタッカ4Bまで延びている。
振り分け機構73は、ソレノイド(図示省略)によって駆動される。振り分け機構73は、主搬送路71を搬送中の紙幣を分岐路72へ分岐させるか否かを振り分ける。各振り分け機構73の上流側には、通過センサ74が設けられている。通過センサ74は、紙幣センサ25と同様の構成をしている。つまり、通過センサ74の受信部における光の受信が中断され、その後に光の受信が再開されたことをもって、紙幣の通過を検知することができる。振り分け機構73は、紙幣を分岐路72へ導く際には、その直上流の通過センサ74が紙幣の通過を検知したことをもって作動する。
識別部3は、主搬送路71のうち第1分岐路72aよりも上流側に設けられている。識別部3は、搬送される紙幣の一枚一枚について、その金種、真偽及び正損を識別するように構成されている。識別部3は、詳細な図示は省略するが、紙幣処理装置100内においてユニット化されており、この識別部3には、紙幣処理装置100全体の制御を行う制御部120とは別の制御基板を有している。この制御基板には、紙幣の識別に必要な情報を含むと共に、識別部3が識別を行う際に参照する識別用テンプレート33が含まれている(図7参照)。また、識別部3は、ラインセンサ31及び磁気センサ32を有し、紙幣の特徴を取得する。識別部3は、紙幣の特徴が、識別用テンプレート33に含まれる各種紙幣の特徴と一致するかを判定し、金種、真偽、及び正損を識別する。
尚、識別部3は、紙幣の特徴を取得するためのセンサであれば、ラインセンサ及び磁気センサに限られず、赤外線センサ及び紫外線センサ等のセンサを有していてもよい。ラインセンサ31は、紙幣に印字されている記番号を光学的に読み取る機能も有している。尚、識別部3におけるセンサ以外の機能を、後で述べる制御部120が行ってもよい。
結束部9は、集積された紙幣を結束する。詳しくは後述するが、結束部9は、テープ輪Lを作成し、該テープ輪Lの中へ紙幣が搬送された後にテープを引き戻し、紙幣をテープで結束する。
第2搬送部8は、結束スタッカ4に集積された紙幣を把持して、該紙幣をテープ輪Lの中へ搬送する。第2搬送部8は、紙幣を把持する把持ユニット81と、把持ユニット81を水平方向であって且つ紙幣の短手方向(以下、「第1水平方向」という)へ移動させる第1水平移動機構と、把持ユニット81を水平方向であって且つ紙幣の長手方向(以下、「第2水平方向」という)へ移動させる第2水平移動機構と、把持ユニット81を上下方向へ移動させる上下移動機構とを有している。第2搬送部8は、紙葉類搬送部の一例である。
把持ユニット81は、上アーム部81aと、上アーム部81aと相対向する下アーム部81bと、上アーム部81aを上下方向へ移動させる把持機構とを有している。図15に示すように、上アーム部81aは、互いに平行に延びる3本の指部と、3本の指部を連結する連結部とを有している。同様に、下アーム部81bは、互いに平行に延びる3本の指部と、3本の指部を連結する連結部とを有している。把持機構は、上アーム部81aを上下方向に移動可能に支持すると共に、モータ及び駆動ベルトによって上アーム部81aを上下に移動させる。これにより、上アーム部81aと下アーム部81bとで紙幣を把持することができる。
第1水平移動機構は、把持ユニット81を第1水平方向に移動可能に支持しており、モータ及び駆動ベルトによって把持ユニット81を第1水平方向に移動させる。
上下移動機構は、第1水平移動機構を上下方向に移動可能に支持しており、モータ及び駆動ベルトによって第1水平移動機構を上下方向に移動させる。
第2水平移動機構は、上下移動機構を第2水平方向に移動可能に支持しており、モータ及び駆動ベルトによって上下移動機構を第2水平方向に移動させる。
このように、把持ユニット81は、第1水平移動機構、第2水平移動機構及び上下移動機構によって直交する3軸に沿った方向に移動可能に構成されている。
第3搬送部10は、結束紙幣を投出部11まで搬送する。第3搬送部10は、上把持部101と、下把持部102と、上把持部101及び下把持部102を第1水平方向へ移動させる水平移動機構とを有している。水平移動機構は、上把持部101を第1水平方向へ移動させる際に上把持部101を上下方向にも移動させる。詳しくは、第3搬送部10は、結束部9の側方を第1水平方向へ通過するように構成されている。第3搬送部10は、結束部9に対して投出部11と反対側に位置するときには、上把持部101は下把持部102から上方へ十分に離間している。上把持部101は、この位置から結束部9の結束紙幣へ近づくにつれて下方へ移動し、結束紙幣に到達したときには上把持部101と下把持部102とで結束紙幣を把持した状態となる。上把持部101及び下把持部102は、結束紙幣を把持した状態で結束紙幣を投出部11近傍まで搬送する。上把持部101は、投出部11の近傍において、投出部11へ近づくにつれて上方へ移動する。その結果、上把持部101と下把持部102とで把持された結束紙幣は、投出部11において上把持部101及び下把持部102による把持が解除され、投出部11へ投出される。
筐体12の第2側面124には、図1に示すように、紙幣処理装置100への情報を入力する操作部であり且つ紙幣処理装置100の情報を表示する表示部であるタッチパネル17が設けられている。タッチパネル17は、紙幣処理装置100を操作するオペレータに対するヒューマンインターフェース部分である。
〈結束スタッカ4の詳細構成〉
図3に、結束スタッカ4及び結束部9の概略構成図を示す。
結束スタッカ4は、紙幣Bを積み重ねて集積する。結束スタッカ4は、図1〜3に示すように、紙幣Bを集積する容器40と、容器40内に配置され、紙幣Bが載置されるステージ41と、搬送されてきた紙幣Bを容器40へ搬入する羽根車42と、後述する第1取出口47を開閉する扉43と、容器40の天井を規定する天板44と、容器40内の紙幣Bを検知する第1紙幣センサ45と、容器40内の所定高さの紙幣Bを検知する第2紙幣センサ46とを有している。
容器40は、紙幣Bの搬送方向における前側の前壁部40aが搬送方向において前後に移動可能に構成されている。前壁部40aの位置は、結束対象に設定された紙幣Bの短手方向寸法に応じて調整される。具体的には、容器40内に搬入される紙幣Bが前壁部40aに当たって、そのまま容器40の底に落下していき、最終的に紙幣Bが前壁部40aに当接した状態で集積される位置に前壁部40aが配置される。また、前壁部40aは、上下に開閉するように構成されている。前壁部40aは、集積された紙幣Bを第2搬送部8により搬送する際に開いた状態となる。
ステージ41は、上下に移動可能に構成されている。例えば、ステージ41は、紙幣Bの集積量に応じて上下に移動する。
容器40は、筐体12の第2側面124に開口している。つまり、第2側面124には、図1に示すように、結束スタッカ4に集積された紙幣Bを筐体12の外部に取り出すための第1取出口47が設けられている。
扉43は、結束スタッカ4ごとに個別に設けられている。扉43は、第1取出口47を開放する開状態と第1取出口47を閉鎖する閉状態との間で所定の回転軸回りに回動自在に構成され、手動で開閉される。扉43は、外部から内部を目視可能な材料で構成されている。例えば、扉43は、透明又は半透明な材料(例えば、ガラスや樹脂)で構成されている。
羽根車42は、可撓性を有する複数の羽を有しており、容器40内に落下する紙幣Bの、搬送方向後側の端部を叩いて、紙幣Bの落下を促進させる役割を有している。紙幣Bが容器40内に連続的に搬入される場合であっても、後の紙幣Bが先の紙幣Bの後端部に入り込むことを防止し、紙幣Bを1枚ずつ順に上方に積み重ねていくことができる。
第1紙幣センサ45は、1つの結束スタッカ4につき複数設けられている。本実施形態では、容器40内において紙幣Bの搬送方向における異なる位置に2つの第1紙幣センサ45,45が設けられている。第1紙幣センサ45は、紙幣センサ25と同様の構成をしている。各第1紙幣センサ45は、容器40内の紙幣Bの集積方向に光を送信するように配置されている。つまり、第1紙幣センサ45は、光が遮断されることによって、容器40内に紙幣Bが存在することを検知することができる。また、搬送方向の異なる位置に2つの第1紙幣センサ45,45を設けることによって、容器40内において搬送方向における紙幣Bの位置にばらつきがあったとしても、何れかの第1紙幣センサ45により紙幣Bの存在を検知することができる。尚、第1紙幣センサ45は、紙幣Bの搬送方向及び紙幣Bの厚み方向の両方に直交する方向(図2における紙面奥行き方向)における異なる位置に複数設けられていてもよい。
第2紙幣センサ46は、容器40内において所定の高さに位置する紙幣Bを検知するように構成されている。第2紙幣センサ46は、紙幣センサ25と同様の構成をしている。第2紙幣センサ46は、前記所定の高さよりも高い位置に紙幣Bが存在するときには、送信部から受信部に向かう光が該紙幣Bにより遮断される一方、紙幣Bが前記所定の高さよりも高い位置に存在しないときには、送信部からの光が受信部に到達するように配置されている。
〈結束部9の詳細構成〉
結束部9は、図3に示すように、テープ供給部91から供給されるテープTでテープ輪Lを作成するテープ輪作成部92と、紙幣Bを前記テープTで結束するときに該紙幣Bを集積方向に押圧するクランプ部94と、テープTを紙幣Bに巻き付けた状態でテープT同士を接合するヒータ95と、テープTを紙幣Bに巻き付けられていない位置で切断するカッタ96と、テープTに印刷する印刷部97と、テープTに押印する押印部98と、を有している。
テープ供給部91は、テープTがリールに巻き付けられたテープリール911と、テープリール911から引き出されるテープTを搬送するテープ搬送部912とを有している。テープ搬送部912は、テープTを所定の搬送経路に沿って搬送する。テープ搬送部912は、ガイド(図示省略)と複数のローラ対とを有している。
テープ輪作成部92は、テープTでテープ輪Lを作成し、集積された紙幣Bが該テープ輪Lの中に配置された後に該テープTを引き戻して該テープTを該紙幣Bに巻き付ける。テープ輪作成部92は、テープTの送り出し及び引き戻しを行う送り出しローラ対920と、テープTの先端部を把持するテープ把持部921と、テープTでテープ輪Lを作成する際にテープ輪Lの形状を規定するガイド部925と、テープTの先端を検知する第1テープセンサ9210と、大テープ輪L2が作成されたことを検知する第2テープセンサ9211とを有している。テープ輪作成部92は、テープ把持部921によりテープTで小テープ輪L1を作成した後、送り出しローラ対920によりテープTを送り出すことによって該小テープ輪L1を大きくして大テープ輪L2を作成する。その際、ガイド部925は、テープTを案内して、大テープ輪L2の形を規定し、第2テープセンサ9211は、大テープ輪L2の形成を検知する。
送り出しローラ対920は、テープ送りモータ9212(図7参照)により駆動され、テープ輪Lを作成する際にテープTを送り出す。送り出しローラ対920は、テープ搬送部912の下流端部に位置し、テープ搬送部912の一部も構成する。送り出しローラ対920は、送り出し部の一例である。尚、テープ搬送部912のローラ対も、テープ送りモータ9212によりベルト及びギア等を介して駆動される。
また、テープリール911には、テープTの巻き戻し方向にテープリール911を回転させるテープリールモータ9111(図7参照)が設けられており、紙幣Bがテープ輪Tの中へ配置された後に、テープTを紙幣Bに巻き付ける際には、このテープリールモータ9111とテープ送りモータ9212とがテープTを巻き戻す方向に回転する。テープ送りモータ9212及びテープリールモータ9111は共に、ステッピングモータにより構成されている。
第1テープセンサ9210は、テープTの搬送路中であって、送り出しローラ対920とテープ把持部921との間に設けられている。第1テープセンサ9210は、紙幣センサ25と同様の構成をしている。第1テープセンサ9210は、光が遮断されることによってテープTを検知する。例えば、送り出しローラ対920がテープTを引き戻し、第1テープセンサ9210において光が遮断された状態から光が受信される状態となったことをもってテープTの先端を検知することができる。
テープ把持部921は、送り出しローラ対920から送り出されるテープTを受け取ることが可能な位置に配置されている。テープ把持部921は、テープTを把持した状態で回転可能に構成されている。テープ把持部921は、送り出しローラ対920から送り出されたテープTの先端部を把持した状態で回転することによってテープ輪Lを作成する。
図4に、テープ把持部921の斜視図を示す。図4(A)は、テープ把持部921の閉状態を示し、図4(B)は、テープ把持部921の開状態を示す。詳しくは、テープ把持部921は、ベース部922と、可動部923と、回転シャフト924とを有している。ベース部922は、平板状のベース板922aと、ベース板922aに一体的に設けられたベースブロック922bとを有している。ベース板922aには、互いに平行に延びる第1及び第2凹溝922c,922dが形成されている。第1及び第2凹溝922c,922dは、テープ幅方向に延びている。ベースブロック922bには、回転シャフト924が回転自在に挿通されている。回転シャフト924は、テープ幅方向に延びており、モータにより回転駆動される。可動部923は、ベース板922aと対向して配置されると共に、回転シャフト924の先端に回転シャフト924に対して回転不能に固定されている。可動部923は、回転シャフト924を介して回転駆動される。可動部923は、回転シャフト924の先端に取り付けられる取付部923aと、取付部923aのうち回転シャフト924から偏心した位置に設けられ、回転シャフト924と平行(即ち、テープ幅方向)に延びる押え部923bと、押え部923bの両端に設けられた第1及び第2ガイド部923c,923dとを有している。第1ガイド部923cは、取付部923aとの間にガイド溝923eを形成している。
回転シャフト924がその軸回りの一方側に回転すると、可動部923は、図4(A)に示すようにベース板922aと重なり合った状態となる。この状態をテープ把持部921の閉状態と称する。一方、回転シャフト924がその軸回りの他方側に回転すると、可動部923は、図4(B)に示すようにベース板922aとの間に隙間が形成された状態となる。この状態をテープ把持部921の開状態と称する。テープ把持部921が開状態のときに、可動部923とベース板922aとの間にテープTが挿入可能となる。その後、テープ把持部921を閉状態とすることによって、可動部923とベース板922aとの間でテープTを把持する。可動部923は、ベース板922aと重なり合った状態、即ち、閉状態でベース部922に対してロック可能に構成されている。可動部923がロックされると、可動部923とベース部922とは相対回転が不能となり、可動部923とベース板922aとが重なり合った状態が維持される。可動部923がロックされた状態で回転シャフト924が回転すると、テープ把持部921は、ベース板922aと可動部923とでテープTを挟持した状態で回転シャフト924回りに回転する。
テープ把持部921の閉状態において、可動部923の押え部923bは、ベース板922aのうち第2凹溝922dに隣接する部分と重なり合っている。つまり、第2凹溝922dは、押え部923bに隣接する位置において露出している。このとき、第1及び第2ガイド部923c、923dは、ベース板922aに直交する方向へ延びている。同様に、ガイド溝923eも、ベース板922aに直交する方向へ延びている。
ガイド部925は、大テープ輪L2を作成するときに、該大テープ輪L2の外周面に接触して該大テープ輪L2の形状を規定する。ガイド部925は、大テープ輪L2を略長方形状、詳しくは、角部が湾曲した長方形状に規定する。
図5に、テープ輪作成部92の斜視図を示す。ガイド部925は、大テープ輪L2の下側から大テープ輪L2の外周面に接触する下ガイド部926と、水平方向から大テープ輪L2の外周面に接触する第1側方ガイド部927及び第2側方ガイド部928と、長方形の4つの角部に対応する4つの第1〜第4コーナーガイド部929a〜929dとを有している。
下ガイド部926は、テープTの幅方向の位置を規制する一対の側壁926a,926aと底壁926b(図11〜14及び16参照)とを有し、溝状に形成されている。底壁926bの幅は、テープ幅よりも広い。図17に示すように、底壁926bには、テープTの摺動性を向上させる複数のローラ926c,926c,…が設けられている。底壁926bには、後述する押印部98のスタンプ981が貫通する貫通孔926dが設けられている。底壁926bの長手方向両端部には、第1コーナーガイド部929a及び第2コーナーガイド部929bが設けられている。第1コーナーガイド部929aは、下ガイド部926と第1側方ガイド部927とで形成される角部に位置するテープTを湾曲させる。第2コーナーガイド部929bは、下ガイド部926と第2側方ガイド部928とで形成される角部に位置するテープTを湾曲させる。第1コーナーガイド部929a及び第2コーナーガイド部929bはそれぞれ、2枚の板で構成されている(図5も参照)。2枚の板はそれぞれ、凹状に湾曲する端縁を有し、互いに対向する状態で底壁926bに立設されている。
下ガイド部926は、移動機構が設けられており、移動機構によって上下に移動可能に構成されている。この移動機構は、後述する下クランプ部943,944の移動機構と共通である。
第1側方ガイド部927は、下ガイド部926の長手方向の結束スタッカ4側の端部において上下方向に延びている。第1側方ガイド部927は、側壁927aと底壁927bとを有し、溝状に形成されている。側壁927aは、テープTの幅方向の位置を規制する。底壁927bの幅は、テープ幅よりも広い。底壁927bには、第1コーナーガイド部929aが通過する2本のスリットが形成されている。
第2側方ガイド部928は、下ガイド部926の長手方向の投出部11側の端部において上下方向に延びている。第2側方ガイド部928は、略平板状に形成され、第1側方ガイド部927の側壁927aに相当する部分が設けられていない。第2側方ガイド部928は、支持部によって上下に移動可能に支持されると共に、リンクを介して下ガイド部926に連結されている。これにより、第2側方ガイド部928は、下ガイド部926の上昇に連動して上昇し、下ガイド部926の下降に連動して下降する。尚、第2側方ガイド部928の移動量は、リンクにより増幅されている。第2側方ガイド部928は、結束紙幣Bを搬送するときに、該結束紙幣Bの搬送を阻害しないように上方へ退避するように構成されている。
また、第1コーナーガイド部929a及び第2コーナーガイド部929bの上方であって、テープ把持部921と略同じ高さには、第3コーナーガイド部929c及び第4コーナーガイド部929dが設けられている。第3コーナーガイド部929cは、第1側方ガイド部927に隣接して設けられている。第3コーナーガイド部929cは、詳細な図示は省略するが、2枚の板を有している。2枚の板は、凹状に湾曲する端縁を有し、互いに対向する状態で底壁927bに立設されている。第4コーナーガイド部929dは、第2側方ガイド部928に隣接して設けられている。第4コーナーガイド部929dは、凹状に湾曲した湾曲面を有するブロックで形成されている。以下、第1〜第4コーナーガイド部929a〜929dを特に区別しないときには、単にコーナーガイド部929と称する場合がある。
第2テープセンサ9211は、紙幣センサ25と同様の構成をし、光が遮断されることによってテープTを検知する。第2テープセンサ9211の受信部は、図5に示すように、第4コーナーガイド部929dに取り付けられている。第2テープセンサ9211の送信部は、該送信部からの光が第4コーナーガイド部929dに案内されているテープTによって遮断される位置に配置されている。つまり、第2テープセンサ9211は、送信部が光を送信しても受信部が光を受信しないことをもって、第4コーナーガイド部929dがテープTを案内していること、即ち、テープ輪Lが所定の大きさになったことを検知する。
クランプ部94は、紙幣Bを前記テープTで結束するときに該紙幣Bを集積方向に押圧する。クランプ部94は、紙幣Bのうち、テープTで結束される結束予定部分の近傍部分を押圧する。クランプ部94は、図5,6に示すように、テープ輪Lの中へ搬送された紙幣Bの上方に設けられた一対の上クランプ部941,942と、該紙幣Bの下方に設けられた一対の下クランプ部943,944と、一方の上クランプ部942及び下クランプ部943,944を上下に移動させる移動機構とを有している。
上クランプ部941,942は、テープ幅方向において、テープTの両側に設けられている。第2搬送部8から遠い方の上クランプ部941は、固定されており、上下に移動不能である。一方、第2搬送部8に近い方の上クランプ部942は、上下に移動可能に構成されている。両者を区別する場合には、前者を固定上クランプ部941と称し、後者を可動上クランプ部942と称する。
固定上クランプ部941は、第1及び第2当接部941a,941bを有している。第1及び第2当接部941a,941bは、紙幣Bの短手方向に並んでいる。第1当接部941aと第2当接部941bとは、同じ高さに位置している。尚、第1当接部941aと第2当接部941bとの間には、テープ把持部921のベース部922が配置されている。ベース部922は、第1及び第2当接部941a,941bよりも低い位置に位置している。
一方、可動上クランプ部942は、第1〜第3当接部942a〜942cを有している。第1〜第3当接部942a〜942cは、紙幣Bの短手方向に並んでいる。第3当接部942cは、該短手方向において第1当接部942aと第2当接部942bとの間に位置している。第1当接部942aと第2当接部942bとは、同じ高さに位置している。第3当接部942cは、第1当接部942a及び第2当接部942bよりも低い位置に位置している。可動上クランプ部942は、第1当接部942a及び第2当接部942bが固定上クランプ部941の第1当接部941a及び第2当接部941bと同じ高さになるクランプ位置と、第3当接部942cが固定上クランプ部941の第1当接部941a及び第2当接部941bよりも高くなる退避位置との間で上下に移動する。尚、可動上クランプ部942がクランプ位置に位置するときには、第3当接部942cは、テープ把持部921のベース部922と略同じ高さに位置している。
下クランプ部943,944は、テープ幅方向において、テープTの両側に設けられている。第2搬送部8から遠い方の下クランプ部943と第2搬送部8に近い方の下クランプ部944とは、同じ構成をしている。下クランプ部943は、第1及び第2当接部943a,943bを有している。第1及び第2当接部943a,943bは、紙幣Bの短手方向に並んでいる。第1当接部943aと第2当接部943bとは、同じ高さに位置している。第1及び第2当接部943a,943bはそれぞれ、固定上クランプ部941の第1及び第2当接部941a,941bと対向している。下クランプ部944は、第1及び第2当接部944a,944bを有している。第1及び第2当接部944a,944bは、紙幣Bの短手方向に並んでいる。第1当接部944aと第2当接部944bとは、同じ高さに位置し且つ、下クランプ部943の第1当接部943aと第2当接部943bとも同じ高さに位置している。第1及び第2当接部944a,944bはそれぞれ、可動上クランプ部942の第1及び第2当接部942a,942bと対向している。
下クランプ部943,944は、上下に移動可能に構成されている。本実施形態では、下クランプ部943,944は、ガイド部925の下ガイド部926に取り付けられており、下ガイド部926と一体的に上下に移動する。つまり、下クランプ部943,944を上下に移動させる移動機構は、下ガイド部926の移動機構と共通である。
ヒータ95は、テープTを紙幣Bに巻き付けた状態でテープT同士を接合する。ヒータ95は、テープT同士を熱溶着する。ヒータ95は、接合部の一例である。
カッタ96は、テープTを紙幣Bに巻き付けられていない部分、即ち、テープTのうち紙幣Bを結束して余った部分を切断する。カッタ96の先端は、鋸歯状の切断刃が設けられている。カッタ96は、図5に示すように、両側端縁において外方に突出するガイド片96aを有している。カッタ96は、切断部の一例である。
ヒータ95及びカッタ96は、ユニット化されて、テープ輪Lの中へ配置される紙幣Bに対して押印部98とは反対側、具体的には、紙幣Bの集積方向において押印部98とは反対側、即ち、テープ把持部921の上方に配置されている。
より詳しくは、ヒータ95及びカッタ96は、第1及び第2テープ押え991,992と共にユニット化されている。第1及び第2テープ押え991,992は、第1水平方向に並んで配設されている。第1及び第2テープ押え991,992はそれぞれ、平板状の部材であり、下端面がテープ幅方向に延びている。ヒータ95及びカッタ96は、第1及び第2テープ押え991,992の間に配設されている。
ヒータ95、カッタ96、第1テープ押え991及び第2テープ押さえ992は、上下方向に移動可能に構成されている。テープTの接合及び切断時に、ヒータ95、カッタ96、第1テープ押え991及び第2テープ押さえ992は、テープ把持部921へ向かって下降する。図17に示すように、第1テープ押え991は、ベース部922に設けられた第1凹溝922cに嵌まり、第1凹溝922cの底面との間でテープTを挟持するように構成されている。第2テープ押え992は、可動部923との間でテープTを挟持するように構成されている。ヒータ95は、ベース部922に設けられた第1凹溝922cと第2凹溝922dとの間の部分でテープTを接合する。カッタ96は、ベース部922の第2凹溝922d内に進入してテープTを切断する。
印刷部97は、図3に示すように、テープ搬送部912に設けられている。印刷部97は、テープ搬送部912により搬送されるテープTに印字を行う印刷ヘッドを有している。印刷部97は、例えば、結束される紙幣Bに関連する情報(例えば、金種、日時、連続番号等)をテープTに印字する。印刷部97の印字位置は、印字が押印部98による押印と重ならないように、押印部98による押印予定部分に対してテープ幅方向にずれている。印刷部97はまた、図18に例示するように、紙幣Bに巻き付けられるテープTの長さ方向の、所定の範囲に印字が行われるよう、テープ搬送部912によるテープTの搬送と同期して印字を行う。具体的には、結束紙幣の表面(又は裏面)に印刷が位置し、その側面に印刷が位置しないように、結束紙幣の表面において短手方向の一端から所定距離を空けた位置を印刷開始位置とし、そこから短手方向の他端までが印刷範囲となる。
押印部98は、前記クランプ部94で紙幣Bを圧縮し且つ該紙幣BにテープTを巻き付けた状態で該テープTに押印する。押印部98は、例えば、結束される紙幣Bに関連する印(例えば、金融機関印、正券又は孫権などの紙幣の種類を表す印等)をテープTに押印する。押印部98は、図5に示すように、テープ輪Lの中へ配置される紙幣Bに対してヒータ95及びカッタ96とは反対側、具体的には、紙幣Bの集積方向においてヒータ95及びカッタ96とは反対側に配置されている。押印部98は、スタンプ981と、スタンプ981を上下方向に移動させる移動機構982とを有している。移動機構982がスタンプ981を上方へ移動させることによって、スタンプ981は、紙幣Bに巻き付けられたテープTに紙幣Bの集積方向から押印する。押印部98は、下ガイド部926と一体的に設けられており、下ガイド部926が上下方向に移動するときに下ガイド部926と一体的に上下方向に移動する。スタンプ981は、下ガイド部926の短手方向、即ち、テープTの幅方向において、下ガイド部926の一対の側壁926a,926aの間に配置されている。ただし、スタンプ981は、通常状態においては、下ガイド部926の底壁926bの貫通孔926dの下方に配置され、底壁926bよりも上方へ突出していない。スタンプ981は、移動機構982により上方へ移動させられることによって、貫通孔926dを貫通して、底壁926bよりも上方へ突出した状態となり、テープTに押印する(図17も参照)。
〈紙幣処理装置のシステム構成〉
図7に、紙幣処理装置100の概略構成を示すブロック図を示す。
紙幣処理装置100は、例えば周知のマイクロコンピュータをベースとした制御部120を備えている。制御部120は、各種の情報を記憶する記憶部1201を有している。制御部120には、前述したホッパ部2、識別部3、結束スタッカ4、非結束スタッカ5、リジェクトスタッカ6、第1搬送部7、第2搬送部8、結束部9、第3搬送部10及びタッチパネル17が、信号の送受信可能に接続されている。また、制御部120には、紙幣センサ25、第1紙幣センサ45、第2紙幣センサ46、非結束スタッカ5の紙幣の有無を検知する集積センサ52、リジェクトスタッカ6の紙幣の有無を検知する集積センサ62、通過センサ74、第1テープセンサ9210及び第2テープセンサ9211が接続され、それらの検出信号が入力されるように構成されている。制御部120は、タッチパネル17からの入力信号及び各種センサからの検知信号等に基づいて制御信号を生成し、ホッパ部2等へ該制御信号を出力する。ホッパ部2等は、その制御信号に従って動作する。例えば、結束スタッカ4を例に挙げると、容器40の前壁部40a、ステージ41及び羽根車42が制御部120により制御される。
〈紙幣処理装置の動作説明〉
以下、紙幣処理装置100の入金処理について説明する。入金処理においては、バラ状態の紙幣が分類され、所定のスタッカに集積され、さらには、所定の紙幣については結束される。以下では、結束対象の所定の一種類の正券紙幣を第1及び第2結束スタッカ4A,4Bに所定枚数ずつ交互に集積し、該所定枚数集積した紙幣を順次、結束部9により結束する同一種類結束処理について説明する。
紙幣処理装置100は、テラーカウンタ上であって、オペレータがテラーカウンタを挟んで顧客と正対したときにオペレータの少し左側(顧客の右側)に設置される。このとき、紙幣処理装置100は、筐体12の第1側面123が顧客の方を向くように設置される。この状態においては、筐体12の第2側面124は、オペレータの方を向いている。ただし、紙幣処理装置100はオペレータの少し左側に位置するので、顧客も第2側面124を視認することができる。
まず、オペレータは顧客から入金すべきバラ状態の紙幣を受け取り、該紙幣をホッパ部2へ載置する。このとき、バラ状態の紙幣に複数種類の紙幣が混在していたとしても、それらを分類することなく、ホッパ部2へ載置する。オペレータは、紙幣の寸法に合わせて、ガイド部22を調整する。続いて、オペレータは、タッチパネル17を操作して、紙幣の取込を開始する。尚、紙幣センサ25がホッパ部2への紙幣の載置を検知すると、紙幣処理装置100が自動的に紙幣の取込を開始するようにしてもよい。
ホッパ部2に載置された紙幣は、取込ローラ23が作動することにより1枚ずつ取込口24から、筐体12内へ取り込まれていく。取り込まれた紙幣は、第1搬送部7により搬送され、識別部3を通過する。識別部3は、通過する紙幣の紙幣種別を取得し、その紙幣種別を制御部120へ通知する。
制御部120は、紙幣の種類に応じて、紙幣に対応する搬送先を決定する。具体的には、紙幣が結束対象の所定金種の紙幣であって且つ正券紙幣であるときには、制御部120は、搬送先を結束スタッカ4(4A及び4Bの何れか一方)とする。紙幣が結束対象の所定金種の紙幣であって且つ損券紙幣であるときには、制御部120は、搬送先を第1非結束スタッカ5Aとする。紙幣が所定金種以外の金種の紙幣であるときには、制御部120は、搬送先を第2非結束スタッカ5Bとする。紙幣がリジェクト紙幣であるときには、制御部120は、搬送先をリジェクトスタッカ6とする。
制御部120は、紙幣が搬送先となるスタッカに搬送されるように第1搬送部7を制御する。具体的には、制御部120は、搬送先となるスタッカへ繋がる分岐路72に対応する振り分け機構73を該紙幣が主搬送路71から該分岐路72へ導かれるように制御する。制御部120は、該分岐路72の直前の通過センサ74が紙幣を検知したときに、該振り分け機構73を切り替える。そうして、紙幣をスタッカ内に搬入する。
結束スタッカ4に搬送される紙幣は、2つの結束スタッカ4のうち一方の結束スタッカ4へ搬送される。一方の結束スタッカ4に集積された紙幣の枚数が所定の結束枚数(例えば、100枚)に達すると、それ以降の紙幣は、他方の結束スタッカ4へ搬送される。ここでは、紙幣がまず第1結束スタッカ4Aへ搬送されるものとする。各第1結束スタッカ4Aにおいては、紙幣が搬送されてくると、羽根車42の回転によって、紙幣が1枚ずつ上方に重ねられていく。このとき、ステージ41上の最も上の紙幣が第2紙幣センサ46により検知されると、ステージ41は、所定量だけ下降し、第2紙幣センサ46が紙幣を検知していない状態となる。その後、紙幣がさらに積み重ねられ、第2紙幣センサ46が紙幣を検知するようになると、再びステージ41が所定量だけ下降する。この処理を繰り返すことにより、結束スタッカ4内に落下する紙幣の落下距離を一定の範囲に保つことができるので、自然落下する紙幣の落下位置及び落下したときの姿勢を一定にすることができる。
第1結束スタッカ4Aに集積された紙幣が結束枚数に達すると、制御部120は、第2搬送部8を制御し、把持ユニット81により第1結束スタッカ4A内の紙幣を把持し、該紙幣を結束部9へ搬送する。その後、制御部120は、結束部9を制御して、紙幣をテープTで結束する。
尚、第1結束スタッカ4Aに集積された紙幣が結束枚数に達すると、それ以降の紙幣は第2結束スタッカ4Bに集積される。その後、第2結束スタッカ4Bに集積された紙幣が結束枚数に達したときには、それ以降の紙幣は再び第1結束スタッカ4Aに集積されるようになる。このときまでには、第1結束スタッカ4A内の紙幣の搬出が完了しているので、第1結束スタッカ4A内は空の状態になっている。このように、2つの結束スタッカ4を設けることによって、紙幣の集積を連続して行いつつ、結束処理を行うことができる。
続いて、制御部120は、第3搬送部10を制御して、結束紙幣を投出口111から投出する。
所定金種の紙幣であって且つ損券紙幣は、第1非結束スタッカ5Aへ搬送され、第1非結束スタッカ5Aに集積される。同様に、所定金種以外の金種の紙幣は、第2非結束スタッカ5Bへ搬送され、第2非結束スタッカ5Bに集積される。リジェクト紙幣も、リジェクトスタッカ6へ搬送され、リジェクトスタッカ6に集積される。
以上の処理が、ホッパ部2に載置された紙幣が無くなるまで続けられる。ホッパ部2の紙幣の有無は、紙幣センサ25によって検知される。
ホッパ部2に載置された紙幣の処理が完了すると、リジェクト紙幣の取込及び識別を再度行う。つまり、オペレータは、リジェクト紙幣をリジェクトスタッカ6から抜き出して、ホッパ部2へ載置し、再び取込を行う。リジェクト紙幣は、何らかの理由で正常な紙幣として識別されなかった紙幣であるので、再び取込及び識別を試みる。それでも尚、リジェクト紙幣として識別される紙幣は、再びリジェクトスタッカ6に集積される。オペレータは、再び集積された紙幣を顧客に返却する。
尚、第1及び第2非結束スタッカ5A,5Bに集積された紙幣については、再度の取込を行わない。
こうして、ホッパ部2に載置された紙幣の処理とリジェクト紙幣の再処理が完了すると、同一種類結束処理が完了し、顧客から渡された入金すべき紙幣の計数及び分別が終了する。タッチパネル17には、計数された金額が表示される。オペレータは、顧客からその金額の承認を得るか、又は、その金額と顧客が記載した入金伝票に記載された金額との一致を確認すると、タッチパネル17により入金額の確定操作を行う。確定操作が行われると、確定した入金額が上位装置(図示省略)へ通知され、入金処理が完了する。
入金処理の完了後は、オペレータは、投出部11に集積されている結束紙幣、結束スタッカ4に集積されている紙幣及び非結束スタッカ5に集積されている紙幣を取り出して所定の収納場所に収納する。
以上の処理により、複数種類の紙幣が混在し且つバラ状態であった紙幣は、所定金種の正券紙幣と、所定金種の損券紙幣と、所定金種以外の金種の紙幣と、リジェクト紙幣とに分類され、所定金種の正券紙幣については結束枚数ごとに結束された状態となる。
〈集積後の処理の詳細説明〉
以下に、紙幣が結束スタッカ4に集積されてから投出部11へ投出されるまでの処理を詳細に説明する。
−集積紙幣の圧縮−
図8は、結束スタッカにおける紙幣の圧縮処理の説明図であり、(A)は、紙幣の集積完了直後の状態を示し、(B)は、紙幣の圧縮完了後の状態を示す。尚、図8においては、第1紙幣センサ45の図示を省略している。
図8(A)に示すように、結束スタッカ4において紙幣の集積が完了した直後は、ステージ41が比較的下方に位置し、ステージ41上の紙幣Bのうち最も上の紙幣は、天板44から離れている。
紙幣Bの集積が完了すると、ステージ41は上昇し、集積された紙幣Bをステージ41と天板44とで圧縮する。制御部120は、ステージ41を、図8(B)に示すように、ステージ41と天板44との距離が所定値T1となる位置まで上昇させる。その結果、ステージ41上の紙幣Bは、前記所定値T1と同じ厚みまで圧縮される。尚、紙幣Bが新札である場合など、ステージ41上に自由落下して集積された紙幣Bの厚みが前記所定値T1に達していない場合には、ステージ41が前述の如く上昇しても、該紙幣Bは圧縮されない。ステージ41及び天板44は、圧縮部の一例である。
−結束部までの紙幣の搬送−
結束スタッカ4において紙幣Bの集積が完了すると、第2搬送部8は、紙幣Bを結束スタッカ4から結束部9へ搬送する。図9に、第2搬送部8が紙幣Bを結束スタッカ4から抜き出した状態の図を示す。図10に、第2搬送部8が紙幣Bをテープ輪Lの側方まで搬送した状態の図を示す。
詳しくは、紙幣Bの集積が完了すると、第2搬送部8は、紙幣Bの集積が完了した結束スタッカ4まで移動し、結束スタッカ4内の紙幣Bを把持し、図9に示すように結束スタッカ4から抜き出す。ここでは、第1結束スタッカ4Aにおいて紙幣Bの集積が完了したとする。そして、第2搬送部8の把持ユニット81は、第1結束スタッカ4A内の紙幣Bを把持する。結束スタッカ4のステージ41及び天板44には、把持ユニット81が挿通可能な隙間が設けられている。そのため、把持ユニット81は、ステージ41と天板44とで挟持された状態の紙幣Bを把持することができる。把持ユニット81は、ステージ41と天板44とで圧縮された紙幣Bを集積方向から挟持してさらに圧縮する。すなわち、把持ユニット81で把持された紙幣Bの厚みT2は、ステージ41と天板44とで圧縮された紙幣Bの厚みT1よりも薄くなる。尚、ステージ41は、把持ユニット81が紙幣Bを挟持した後、下降する。第2搬送部8は、把持した紙幣Bを第1水平方向へ第1結束スタッカ4Aから抜き出す。このとき、第2搬送部8は、紙幣Bを所定の第1位置(図9に示す位置)まで第1水平方向へ移動させる。この第1位置は、後述する紙幣Bを大テープ輪L2の中へ搬送する際の第1水平方向位置と一致している。
続いて、第2搬送部8は、図10に示すように、紙幣Bを所定の第2位置まで上下方向へ移動させる。この第2位置は、紙幣Bを大テープ輪L2の中へ搬送する位置である。第2位置においては、紙幣Bの長手方向を向いて見たときに、紙幣Bは大テープ輪L2の中央付近に位置している。
−テープ輪の作成−
制御部120は、第2搬送部8が紙幣Bを結束スタッカ4から第2位置まで搬送する間にテープ輪Lを作成する。図11に、テープ把持部921がテープTの先端部を把持した状態の図を示す。図12に、テープ把持部921がテープTの先端部を把持した状態で回転し始めた状態の図を示す。図13は、テープ把持部921が小テープ輪L1を作成した状態の図を示す。図14は、大テープ輪L2の作成が完了した状態の図を示す。
まず、送り出しローラ対920は、第1テープセンサ9210がテープTの先端を検知するまでテープTを引き戻す。テープTの先端が検知されると、送り出しローラ対920がテープTを送り出す。このとき、テープ把持部921は、可動部923とベース板922aとの間に隙間を空けた状態で且つその隙間に送り出しローラ対920から送り出されたテープTが入り込む姿勢で待機している。テープTの先端部が可動部923とベース板922aとの間に入り込むと、回転シャフト924が回転駆動され、図11に示すように、可動部923とベース板922aとでテープTの先端部を把持する。可動部923は、ベース板922aと共にテープTの先端部を把持した状態でロックされる。テープTの先端部は、略水平な状態でテープ把持部921に把持されている。
また、送り出しローラ対920による送り出しと並行して、印刷部97がテープTに印字を行う。こうして、図18に示すように、テープTにおける所定の印刷範囲に、印字を行う。
次に、テープ把持部921は、図12に示すように、テープTの先端部を把持した状態で回転を始める。このとき、送り出しローラ対920によるテープTの送り出しは継続している。テープ把持部921は、テープTの先端を下方へ移動させるように、即ち、図12において反時計回りに回転する。
テープ把持部921が略一回転すると、図13に示すように、テープ輪Lが作成される。こうして、テープ把持部921が略一回転することにより作成されるテープ輪Lを「小テープ輪L1」と称する。テープ把持部921が把持するテープTの先端部は、小テープ輪L1の上部に位置しており、小テープ輪L1は、テープ把持部921の下方に作成される。また、小テープ輪L1は、送り出しローラ対920よりも低い位置に作成されている。
小テープ輪L1が形成されると、テープ把持部921の回転が停止する一方で、送り出しローラ対920によるテープTの送り出しは継続される。その結果、小テープ輪L1は、徐々に大きくなっていく。ここで、テープ把持部921が把持するテープTの先端部は、小テープ輪L1の上部に位置し、送り出しローラ対920からのテープTは小テープ輪L1の上部から供給されるので、小テープ輪L1は、下方へ膨らんでいく。テープ把持部921の下方にはガイド部925が配置されているので、テープ輪Lはやがてガイド部925と接触し、ガイド部925によりテープ輪Lの形状が規定される。最終的に送り出しローラ対920からのテープTの送り出し量が所定量に達したときには、図14に示すように、ガイド部925により略長方形状に形成されたテープ輪Lが作成される。このテープ輪Lを「大テープ輪L2」と称する。大テープ輪L2は、下ガイド部926、第1側方ガイド部927及び第2側方ガイド部928に接触し、略長方形状に形成されている。それに加えて、大テープ輪L2は、第1〜第4コーナーガイド部929a〜929dに接触しており、これにより、角部が湾曲した長方形状に形成されている。
尚、制御部120は、送り出しローラ対920からのテープTの送り出し量が前記所定量になったときに第2テープセンサ9211がテープTを検知していることをもって、大テープ輪L2が作成されたことを検知する。制御部120は、テープTの送り出し量を、第1テープセンサ9210がテープTの先端を検出してからの送り出しローラ対920のステッピングモータの駆動量に基づいて求める。制御部120は、送り出しローラ対920からのテープTの送り出し量が前記所定量になったにもかかわらず、第2テープセンサ9211がテープTを検知していないときには、テープ輪Lの一部が内側へ撓んで、テープ輪Lがガイド部925に沿った適切な形状(即ち、大テープ輪L2)になっていない可能性がある。そこで、制御部120は、送り出しローラ対920からのテープTの送り出し量が前記所定量になったときに第2テープセンサ9211がテープTを検知していないときには、テープTを所定の引き戻し量だけ引き戻した後、再びテープTを、全送り出し量が前記所定量になるまで送り出す。そして、制御部120は、第2テープセンサ9211がテープTを検知するか否かを確認する。第2テープセンサ9211がテープTを検知していない場合には、制御部120は、前述のテープTの引き戻し及び送り出し並びにテープ検知の確認を繰り返す。
第2テープセンサ9211は、第4コーナーガイド部929dに案内されるテープTを検知するように構成されている。つまり、第2テープセンサ9211は、大テープ輪L2の中へ紙幣Bが搬送された場合に該紙幣Bよりも上方の所定の位置におけるテープTの有無を検知する。テープ輪Lの一部が内側に撓むとすれば、テープTの自重によりテープ輪Lの上部が撓む可能性が高い。つまり、第2テープセンサ9211を前述の位置に配置することによって、テープ輪Lの撓みを精度良く検知することができる。
この大テープ輪L2の作成は、図9,10に示すように、第2搬送部8が紙幣Bを結束スタッカ4から結束部9まで搬送する処理と並行して行われる。通常は(即ち、大テープ輪L2が一度のテープTの送り出しで作成された場合には)、紙幣Bが第2位置へ搬送されたときには大テープ輪L2の作成が完了している。
−テープの巻き付け−
図15に、紙幣Bの厚み方向を向いて見たときの、紙幣Bが大テープ輪L2へ搬送されて、紙幣BにテープTが巻き付けられるまで各部の動作説明図を示す。図15において、(A)は、紙幣Bが大テープ輪L2へ搬送される直前の状態であり、(B)は、紙幣Bが大テープ輪L2へ搬送された状態であり、(C)は、紙幣BにテープTが巻き付けられた状態である。図16に、クランプ部94が紙幣Bを押圧したときのガイド部925の状態を示す。
第2搬送部8は、前述の如く、図9、10に示すように、紙幣Bを前記第2位置まで搬送した後(図15(A)参照)、該紙幣Bを第2水平方向へ移動させ、大テープ輪L2の中へ進入させる。第2搬送部8は、図15(B)に示すように、紙幣Bを第2水平方向の所定の第3位置まで移動させる。この第3位置は、図例では、第2水平方向においてテープTが紙幣Bの長手方向略中央に一致する位置である。但し、第3位置は、紙幣Bのサイズと、指定された結束位置とに応じて適宜変更される。
紙幣Bが第3位置まで搬送されると共に、把持ユニット81が、紙幣の結束予定部分(後の処理でテープTが巻き付けられる部分)以外の部分を把持し直した後に、クランプ部94が紙幣Bを集積方向へ、即ち、上下方向へ両側から押圧する。詳しくは、クランプ部94の下クランプ部943,944が上方へ移動する。このとき、可動上クランプ部942は、クランプ位置に位置している。最終的に、下クランプ部943,944は紙幣Bを上クランプ部941,942へ押し付ける。上クランプ部941,942及び下クランプ部943,944は、紙幣Bの長手方向において、紙幣Bの結束予定部分の両側を上下方向から挟持する。こうして、紙幣Bは、上クランプ部941,942と下クランプ部943,944とで上下方向から圧縮される。上昇する下クランプ部943,944は、上クランプ部941,942及び下クランプ部943,944が紙幣Bを所定の厚みまで圧縮する位置で停止する。
また、下クランプ部943,944は、下ガイド部926と一体的に構成されているので、下ガイド部926も下クランプ部943,944の上昇に伴って上方へ移動する。このとき、テープリールモータ9111及びテープ送りモータ9212を戻し方向に駆動することにより、下ガイド部926の上昇に連動して、テープTを引き戻す。その結果、図16に示すように、下ガイド部926の上昇に伴って、テープ輪Lが小さくなる。それに加えて、第2側方ガイド部928も、下ガイド部926の上昇に連動して上昇する。これにより、テープ輪Lが変形できるスペースを確保することができる。つまり、下ガイド部926の上昇が、テープ輪Lが小さくなる速度に対して速すぎる場合には、テープ輪Lがガイド部925からはみ出すように変形する。このとき、第2側方ガイド部928は、テープ輪Lの側方から退避しているので、テープ輪Lは、もともと第2側方ガイド部928が位置していたスペースの方へ膨らむことができる。これにより、テープTが折れ曲がることを防止することができる。
ここで、可動上クランプ部942の第1当接部942aと第2当接部942bとの間には、第3当接部942cが設けられ、第3当接部942cは、第1及び第2当接部942a,942bよりも低い位置に位置している。また、固定上クランプ部941の第1当接部941aと第2当接部941bとの間には、テープ把持部921のベース部922(つまり、ベース板922a)が配置され、ベース部922は、第1及び第2当接部941a,941bよりも低い位置に位置している。一方、下クランプ部943,944においては、第1当接部943aと第2当接部943bとの間、及び、第1当接部944aと第2当接部944bとの間には下方に窪んだスペースが形成されている。そのため、クランプ部94により押圧された紙幣Bは、短手方向の略中央部が下方に凹んだ形状となっている。
下ガイド部926の上昇は、下クランプ部943,944の上昇と共に停止する。一方、テープリールモータ9111及びテープ送りモータ9212によるテープTの引き戻しは、下ガイド部926の上昇が停止した後も継続される。最終的に、図15(C)に示すように、テープTが紙幣Bに巻き付けられる。ここで、前述の如く、テープTは、紙幣Bに巻き付けられる直前まで下ガイド部926により幅方向の位置が規制されている。そのため、テープTは、紙幣の結束予定部分に正確に巻き付けられる。
−テープの接合、切断及び押印−
続いて、ヒータ95がテープT同士を接合すると共に、カッタ96がテープTを切断する。それに加えて、押印部98がテープTに押印する。図17に、テープTの接合、切断及び押印の説明図を示す。
テープTの紙幣Bへの巻き付けが完了すると、ヒータ95とカッタ96とは一緒に下降する。このとき、第1及び第2テープ押え991,992も、ヒータ95及びカッタ96と共に下降する。
それによって、図17に示すように、先ず第1テープ押え991がベース部922の第1凹溝922cに嵌まり、第1凹溝922cの底壁との間でテープTを挟持する。それと共に、第2テープ押え992が、可動部923との間でテープTを挟持する。このとき、ヒータ95による溶着とカッタ96による切断は行われていない。
続いて、図示は省略するが、ヒータ95は、テープTの先端部と一周したテープTとが重なり合った部分とをテープ把持部921のベース部922と共に挟み込む。詳しくは、ヒータ95は、ベース部922のうち第1凹溝922cと第2凹溝922dとの間の部分でテープTを挟持する。ヒータ95は、重なり合ったテープT同士を熱によって溶着させる。
さらに、押印部98は、ヒータ95による溶着及びカッタ96による切断と並行して、テープTに押印を行う。押印部98は、下ガイド部926と共に上昇しており、テープTの溶着及び切断時には紙幣Bの直下に位置している。送り出しローラ対920によりテープTを引き戻してテープTを紙幣Bに巻き付けた後、押印部98は、スタンプ981を上昇させる。スタンプ981は、紙幣Bに巻き付けられたテープTに当接し、該テープTに押印する。
ここで、押印部98は、テープTの幅方向位置を規制する下ガイド部926と一体的に構成されているので、スタンプ981は、テープTに対して位置決めされている。詳しくは、下ガイド部926の底壁926bの貫通孔926dを貫通し、側壁926a,926aの間においてテープTに押印する。紙幣Bの下面に巻き付けられたテープTは、側壁926a,926aによりテープ幅方向の位置が規制されているので、スタンプ981が、側壁926a,926aの間を通って上昇した先にはテープTが位置している。こうして、スタンプ981は、テープTからはみ出すことなく押印する。
また、テープTの長手方向において、スタンプ981が押印する部分に印刷部97により印字された文字又は符号が位置していたとしても、スタンプ981が押印する部分と印刷部97が印字する位と部分とはテープ幅方向にずれているため、スタンプ981による印字と印刷部97による印字とが重なり合うことはない。
−紙幣の排出−
テープTにより結束された結束紙幣Bは、第2搬送部8及び第3搬送部10により投出部11まで搬送される。つまり、詳細な図示は省略するが、テープTの接合、切断及び押印が完了すると、把持ユニット81が結束紙幣Bを把持する。続いて、下クランプ部943,944が下降して、クランプ部94による押圧が解除される。それに加えて、可動上クランプ部942が上昇する。その後、第2搬送部8は、結束紙幣Bを第2水平方向へ、紙幣を大テープ輪L2へ搬送したときとは反対側へ所定量だけ搬送する。
次に、把持ユニット81は、結束紙幣Bの把持を解除する。代わりに、第3搬送部10が結束紙幣Bを把持する。そうして、第3搬送部10が、結束紙幣Bを第1水平方向へ投出部11に向かって搬送する。最終的に、結束紙幣Bは、第3搬送部10により投出部11へ押し出される。
投出部11へ押し出された結束紙幣は、投出部11を介して筐体12の外部へ投出される。
〈紙幣処理装置の筐体の構造〉
このように構成された紙幣処理装置100は、メンテナンスや集積された紙幣の回収等の作業をするにあたってオペレータを作業箇所へ誘導する機能を有している。メンテナンスの例としては、紙幣の詰まりやテープTの詰まりを解消したり、印刷部97のインクリボン等の消耗部品を交換したり、押印部98にインクを補充したりすること等が挙げられる。紙幣の回収の例としては、結束スタッカ4からの紙幣の回収、非結束スタッカ5からの紙幣の回収、リジェクトスタッカ6からの紙幣の回収等が挙げられる。また、後述の通り、紙幣の集積不良や集積崩れにより、紙幣の結束動作を中止すべきエラーが発生したときの復帰作業も、メンテナンスの例として挙げることができる。
紙幣処理装置100においては、筐体12のいくつかの部分が開閉可能に構成されており、紙幣処理装置100内部のメンテナンスを行うことができるように構成されている。
具体的には、図1に示すように、筐体12の第2側面124のうち略下半分には、下部カバー131が設けられている。下部カバー131には、非結束スタッカ5の第2取出口53及びタッチパネル17が設けられている。下部カバー131は、第1側面123と対向する第3側面125と第2側面124との稜部において上下方向に延びる軸回りに回動可能に構成されている。下部カバー131を開くことによって、第1処理部126が露出する。
上面121のうち第1側面123側の略半分と、第2側面124の略上半分であって且つ第1側面123側の略半分とには、結束部カバー132が設けられている。結束部カバー132は、第1側面123の方へスライド可能に構成されている。結束部カバー132をスライドさせることによって、結束部9が露出する。
上面121のうち第3側面125側の部分には、リールカバー133が設けられている。リールカバー133は、上面121と第3側面125との稜部において水平方向に延びる軸回りに回動可能に構成されている。リールカバー133を開くことによって、テープリール911が露出する。
〈エラー発生時の復帰方法〉
図8等に示すように、紙幣を結束スタッカ4において集積している際に紙幣がずれて集積されてしまうような集積不良や、図9、10及び15に示すように、結束スタッカ4から結束部9まで紙幣Bを搬送している最中に集積が崩れてしまうような集積崩れ等が生じたときには、紙幣の結束動作をそのまま継続することができず、結束動作を中止しなければならない。尚、このような集積不良等に伴うエラーは、各種のセンサによって検出することが可能である。
結束動作を中止すべきエラーが発生したときには、制御部120は、紙幣処理装置100を停止する。そして、オペレータに対し、エラーから復帰を促す。具体的には、タッチパネル17に表示をすることによって、エラー発生の原因となった紙幣を、紙幣処理装置100の筐体12内から取り出させる。オペレータは、タッチパネル17の表示内容を参照しながら、例えば結束部カバー132を開けて、結束部9の付近を露出させることにより、紙幣を筐体12の外に取り出す。
エラーの発生により結束動作を中止したときであって、その結束動作に先立って行われたテープTに印刷を行っていたときには、テープTにおける印刷箇所は、次の結束動作の際に利用することができないため、当該箇所を廃棄する必要がある。オペレータは、エラー発生時の復帰作業として、前述した紙幣の取り出しと共に、テープTの所定箇所の廃棄も行われなければならない。
この紙幣処理装置100は、エラー発生時のテープTに関する復帰作業を容易にする観点から、テープTの引き戻しを行うように構成されている。具体的に、エラーの発生を検知したタイミングが、テープTを紙幣に巻き付けて接合する前のタイミングでかつ、テープの切断を行う前のタイミングのときには、制御部120は先ず、テープ把持部921を開いて、把持していたテープTの先端を解放する。前述したように、テープ把持部921は、回転シャフト924をモータによって回転駆動することで、開状態と閉状態とを切り替えることが可能である。尚、エラーの発生を検出したタイミングで、テープ把持部921がテープTの先端を把持していないときには、テープ把持部921は開状態のままになる。また、テープTの接合及びテープTの切断が既に行われていた場合は、後述するテープTの引き戻しはできない。
次いで、制御部120は、テープリールモータ9111及びテープ送りモータ9212を駆動し、テープTをテープリール911側に引き戻す。テープTの先端が解放されているため、テープリールモータ9111及びテープ送りモータ9212を戻し方向に駆動することにより、テープTをスムースに引き戻すことが可能である。また、前述したように、結束部9のテープ輪作成部92は、テープ把持部921を一回転させて小テープ輪L1を作成した後、テープTを送り出すことで、テープ輪を大きくして、大テープ輪L2にしている。従って、図11〜14から明らかなように、テープTの途中に折れ曲がり等は生じておらず、このこともまた、テープTの引き戻しをスムースにする。
テープリールモータ9111及びテープ送りモータ9212は、テープTの先端が、テープリール911に到達するまでテープTの引き戻しを継続する。こうして、テープリール911から引き出していたテープTを一旦、全てテープリール911に巻き戻す。尚、前述の通り、テープ輪Lの作成中は、テープの送り出し量を制御しているため、エラーの検出時点において、テープリール911から引き出しているテープTの長さは 既知である。制御部120は、そのテープ長さTに基づいて、テープTの引き戻し制御を行う。
そうして、テープTが全て、テープリール911に引き戻されれば、制御部120は、タッチパネル17を通じて、リールカバー133を開けて、テープTの不要箇所を切断及び廃棄することをオペレータに促す表示を行う。オペレータは、この表示を見て、リールカバー133を開けて、テープTの先端を、筐体12の外に引き出す。テープリール911は、筐体12の上面に臨んで上方に開放するように構成されているため、作業がし易い。オペレータは、テープTの先端側にある印刷箇所が廃棄できるように、少なくとも印刷終了箇所でテープTを切断することになる。
テープTの切断が終了すれば、テープTを再びセットする。これは、例えば新たなテープリール911に交換した場合に行うテープセット作業と同様の作業(例えば、テープTの先端を一対の駆動ローラ間に挟み込ませる)を行えばよい。
こうして、エラーからの復帰作業が全て完了すれば、オペレータは、例えばタッチパネル17の操作を通じて、復帰完了を入力する。復帰完了を入力する代わりに、開けていた結束部カラー132やリールカバー133が全て閉められたことを検知し、その検知信号を復帰完了の入力としてもよい。また、オペレータによる復帰完了の入力がされかつ、カバーが全て閉められたことを、復帰完了の入力としてもよい。制御部120は、その完了信号を受けて、紙幣処理装置100の動作を再開することになる。
このように、前記の構成の紙幣処理装置100では、結束動作を中止すべきエラーが発生したときには、テープ把持部921が、テープTの把持を解放すると共に、テープリールモータ9111及びテープ送りモータ9212がテープTの引き戻しを行う。このことにより、テープTは、結束部9から引き戻されて、最終的には、全てテープリール911に引き戻される。その結果、オペレータは、テープの先端側の不要部分を切断して廃棄することを、容易に行うことができる。つまり、オペレータの復帰作業の作業性が高まる。
特に前記の構成の結束部9は、大テープ輪L2を作成するように構成されており、エラーの発生により、結束動作が中止したときに、結束部9の付近に存在するテープTの長さが比較的長くなる場合がある。このような場合に、テープTの引き戻しを行って、結束部9の付近からテープTを引き戻すことは、オペレータの作業性を大幅に向上させる。
ここで、前記の構成では、テープTの先端がテープリール911に到達するまで、テープTの引き戻しを行っているが、これに限らず、テープTの先端が、例えばテープ搬送経路の所定位置となるまでテープTの引き戻しを行うようにしてもよい。ここでの所定位置は、例えば結束部カバー132を開けたときに、筐体12外に解放される位置としてもよい。こうすることで、オペレータは、結束部カバー132を開けたときには、テープTの先端を視認することが可能になる。筐体12内におけるテープTの状態が把握できるから、オペレータは、例えばテープTを筐体12から引き出してテープTの所定箇所を切断したり、また、テープTを筐体12内に配置した状態のままテープTの所定箇所を切断したり、することが可能になる。つまり、テープTを引き戻す量は、適宜設定することが可能である。
また、前記の構成では、テープTの先端を基準にして、その引き戻しを制御しているが、テープTにおいて不要な箇所は、印刷箇所であるため、テープTにおける印刷終了箇所を基準にして、テープTの引き戻しを制御するようにしてもよい。具体的には、テープTにおける印刷終了箇所がテープリール911に到達するまで、テープTの引き戻しを行ってもよい。また、前述の通り、テープTにおける印刷終了箇所が、テープ搬送路における所定位置(例えば結束部カバー132を開けたときに、筐体12外に解放される位置)となるまで、テープTの引き戻しを行うようにしてもよい。これらの構成であっても、オペレータは、テープTの不要箇所を切断して廃棄する作業を容易に行うことが可能になる。
尚、ここに開示する技術は、前述したように、大テープ輪L2を作成した後に、紙幣Bをその大テープ輪L2に挿入して、テープTを紙幣に巻き付ける構成の結束部9に適用するだけでなく、これ以外の構成の結束部に対しても適用可能である。例えば、前述した特許文献1に記載されているように、テープの先端を把持したテープ把持部を、旋回アームによって一回転させることで、紙幣にテープを巻き付ける構成の結束部に適用することも可能である。但し、テープ把持部は、任意の位置で、テープの先端を解放可能に構成されている必要がある。
また、ここに開示する技術は、紙幣処理装置100に適用するだけでなく、紙葉類の結束を行う紙葉類結束装置に広く適用することが可能である。