以下、図面を参照して、本開示の検出素子について詳細に説明する。なお、本開示の検出素子は以下の実施形態に限定されることはなく、種々の変形を行ない実施することが可能である。全ての実施形態においては、同じ構成要素には同一符号を付して説明する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上、実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、例えば、第1部材と第2部材との上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。また、以下の説明で基板の第1面及び第2面は基板の特定の面を指すものではなく、基板の表面方向又は裏面方向を特定するもので、つまり基板に対する上下方向を特定するための名称である。
(本件発明に至る経緯)
特許文献1に開示されているような放射線検出器(以下「従来の放射線検出器」という。)においては、貫通孔の内部に設けられた絶縁層と貫通電極との界面において水素及び水分が発生してしまうことが分かった。例えば特許文献1の図2及び図3に示すようにビア導電層の上端部が基板の上方に突出した構造の場合、これらの水素及び水分は、基板表面付近におけるビア導電層の屈曲部によって移動が規制されるため、外部に放出されずに貫通孔内部に充満してしまう。上記の水素及び水分の発生による貫通孔内部の内圧が許容量を超えると、貫通孔及び貫通電極が破壊されてしまうことが判明した。
上記の問題を解決するために、特許文献1の図6に示すように貫通電極と絶縁層との界面に接するように絶縁性の樹脂層を形成することが効果的であることが判明した。しかし、特許文献1の図6では、上記のように十分な電界強度が確保できない、又は電界の乱れが発生してしまうなどの問題が生じてしまうことがあった。そこで、本発明者は、上述したような現象を鋭意検討した結果、本願発明に至った。
〈第1実施形態〉
本実施形態に係る本開示の放射線検出装置100のピクセル電極部101の概略構成図を図1に示す。実施形態に係る本開示の放射線検出装置100は、ピクセル電極部101、接続端子部109(109a及び109b)、ドリフト電極110、及びチャンバ111を有している。ピクセル電極部101及び接続端子部109(109a及び109b)を含めて検出素子190ともいう。
[放射線検出装置100の構成]
本実施形態に係る本開示の放射線検出装置100のピクセル電極部101は、基板102、カソード電極104、アノード電極106、アノード電極パターン108、及び貫通電極112を有している。
カソード電極104は、基板102の表面(第1面128)上に複数配置されている。カソード電極104は、複数の開口部105を有している。カソード電極104は、ストリップ状に形成されているので、カソードストリップ電極ともいう。
アノード電極106は、カソード電極104の複数の開口部105のそれぞれにおいて露出されている。
貫通電極112は、基板102の表面から裏面(第1面128の反対側の第2面129)に設けられた貫通孔に配置されている。本実施形態においては、基板102の表面側において貫通電極112はアノード電極106に接続され、基板102の裏面側において貫通電極112はアノード電極パターン108に接続されている。
1つのカソード電極104に設けられた複数の開口部105に配置されている複数のアノード電極106は、貫通電極112を介して複数のアノード電極パターン108にそれぞれ接続されている。アノード電極パターン108は、複数のアノード電極106が配置された位置から接続端子部109aが配置された位置まで延びている。カソード電極104が延在する方向とアノード電極パターン108が延在する方向とは、概略直交している。アノード電極106はカソード電極104とアノード電極パターン108とが交差する位置に設けられている。
換言すると、アノード電極106はカソード電極104が延在する方向及びアノード電極パターン108が延在する方向に沿ってマトリクス状に配置されている、ということもできる。さらに換言すると、放射線検出装置100には、アノード電極106とカソード電極104の一部とを含む「ピクセル」が複数配置されているということもできる。ここで、本実施形態では、カソード電極104とアノード電極パターン108とが概略直交している構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、カソード電極104とアノード電極パターン108とが傾斜して交差してもよい。
なお、本実施形態においては、アノード電極106、アノード電極パターン108、及び貫通電極112はそれぞれ別個に設けられ、それぞれが電気的に接続されている形態について説明しているが、これに限定されない。例えば、アノード電極106、アノード電極パターン108、及び貫通電極112の一部又は全部が一体形成されていてもよい。アノード電極パターン108は、ストリップ状に形成されているので、アノードストリップパターンともいう。
アノード電極106を第1電極、カソード電極104を第2電極、アノード電極パターン108を第3電極という場合がある。
接続端子部109aは、ビア126を通ってアノード電極パターン108に接続されている。なお、本実施形態においては、接続端子部109aとビア126とは別々に形成された構成を例示するが、この構成に限定されない。例えば、接続端子部109aとビア126とが一体形成されていてもよい。また、本実施形態においては、アノード電極パターン108とビア126とは、別々に形成された構成を例示するが、この構成に限定されない。例えば、アノード電極パターン108とビア126とが一体形成されていてもよい。
接続端子部109bは、カソード電極104が延在して配置された電極104aを有している。
カソード電極104とアノード電極106との間には電圧が印加され、電場が形成される。
放射線検出装置100はマトリクス状に配置された複数のアノード電極106に対向して配置されたドリフト電極110と、複数のアノード電極106及びドリフト電極110を内部に格納するチャンバ111とを有する。カソード電極104はGNDに接続されている。ドリフト電極110とカソード電極104との間には、電圧が印加され、電場が形成される。チャンバ111の内部には「アルゴンやキセノンなどの希ガス」と、「エタン、メタンなど、常温で気体のアルカン、もしくは二酸化炭素を含む消光作用を有するガス(クエンチングガス)」との混合ガスが封入されている。なお、チャンバ111の内部にはこれらのガスが単体で封入されていてもよく、二種類以上の混合ガスが封入されていてもよい。
[放射線検出装置100の動作]
ここで、本実施形態に係る本開示の放射線検出装置100の動作原理を図2に示す。本実施形態に係る本開示の放射線検出装置100においては、ドリフト電極110とカソード電極104との間に発生させた電場の影響により、入射する放射線とチャンバ111内に存在する気体との相互作用により電子雲が形成される。この電子雲の各電子はピクセル電極部101へ引き寄せられる。このとき、引き寄せられた電子は気体と衝突し、気体を電離させる。さらに電離された電子は雪崩的に増殖しながら、電子群としてアノード電極106に引き寄せられる。このようにしてアノード電極106で収集された電子群は、電気信号として読み出すことができる程度にまで増加する。そして、この電気信号はアノード電極パターン108を通して接続端子部109aから外部に読み出される。一方、カソード電極104には電子群に誘導された正電荷が引き寄せられる。カソード電極104で収集された正電荷に起因する電気信号は接続端子部109bから外部に読み出される。これらの電気信号を時系列に計測することにより、荷電粒子の飛跡を測定することができる。
[ピクセル電極部101及び接続端子部109aの構成]
次に、本実施形態に係る本開示の放射線検出装置100に用いられる検出素子190の一部の平面図及び断面図をそれぞれ図3及び図4に示す。図3には、ピクセル電極部101及び接続端子部109aの平面図を示し、図4には、図3のA−A’線におけるピクセル電極部101及び接続端子部109aの断面図を示している。
図3に示すように、カソード電極104とアノード電極パターン108とは互いに交差している。カソード電極104には開口部105が設けられている。アノード電極106は開口部105に配置されている。カソード電極104はアノード電極106から離隔されている。つまり、カソード電極104とアノード電極106とは絶縁されている。ここで、図3では、カソード電極104とアノード電極106との距離がアノード電極106を基準として全方向において一定である構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、アノード電極106を基準としてある一定の方向において、他の方向よりもカソード電極104とアノード電極106との距離が近くてもよい。このようにすることで、上記の一定の方向において検出感度を高めることができる。また、図3では、カソード電極104がアノード電極106を囲んでいる構成を例示したが、カソード電極104の一部が開放されていてもよい。
また、上述したように、カソード電極104とアノード電極パターン108とが傾斜して交差していてもよい。例えば、垂直方向に延在するカソード電極104に対して、アノード電極パターン108が概略水平方向に延在し、カソード電極104とアノード電極パターン108との交差部においてアノード電極パターン108が水平方向に対して傾斜していてもよい。
図4に示すように、検出素子190のピクセル電極部101は、基板102、絶縁層130、貫通電極112、絶縁性の樹脂層140、142、アノード電極106(第1電極)、カソード電極104(第2電極)、及びアノード電極パターン108(第3電極)を有する。
基板102には貫通孔103が設けられている。絶縁層130は貫通孔103の内部及び基板102の表面(第1面128)及び裏面(第2面129)に設けられている。貫通電極112は貫通孔103において絶縁層130より貫通孔103の内側に配置されている。図4では、貫通電極112が貫通孔103の内部を充填するように配置された構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、貫通電極112が貫通孔103の側壁のみに配置され、貫通電極112の内部に空洞が設けられていてもよい。また、図4では、基板102の表面及び裏面にも絶縁層130が形成された構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、基板102の表面及び裏面には絶縁層130が形成されず、貫通孔103の側壁部分のみに絶縁層130が形成されていてもよい。
ここで、貫通孔103の内部における絶縁層130の厚さは0.1μm以上35μm以下である。ここで、上記絶縁層130の厚さは1μm以上30μm以下であることが好ましい。さらに、上記絶縁層130の厚さは15μm以上25μm以下であることがより好ましい。上記絶縁層130の厚さが上記の下限未満の場合、基板102内にリーク電流が発生してしまい、信号検出のために十分な電圧をアノード電極106に印加できなくなってしまう。また、上記絶縁層130の厚さが上記の上限を超える場合、貫通孔の開口端が塞がってしまいアノードが形成できない。
樹脂層140は基板102の表面側に配置されている。また、樹脂層142は基板102の裏面側に配置されている。具体的には、樹脂層140及び樹脂層142は、それぞれ基板102の表面側及び裏面側に形成された絶縁層130及び貫通電極112に接して配置されている。樹脂層140には基板102の表面側において貫通電極112と接し、貫通電極112の一部を露出する開口部141が設けられている。樹脂層142には基板102の裏面側において貫通電極112と接し、貫通電極112の一部を露出する開口部143が設けられている。アノード電極106は、貫通電極112及び樹脂層140の上方に配置され、開口部141を通って貫通電極112に接続されている。
カソード電極104は、樹脂層140の上方において、アノード電極106から離隔して配置されている。ここで、樹脂層140の上方に配置されたアノード電極106の高さ及びカソード電極104の高さは概略同一である。アノード電極パターン108は、基板102の裏面側に配置されている。具体的には、アノード電極パターン108は貫通電極112及び樹脂層142の下方に配置され、開口部143を通って貫通電極112に接続されている。アノード電極パターン108は隣接する貫通電極112を連結し、ビア126を通って接続端子部109aに接続されている。
接続端子部109aは、第1金属層120、第2金属層122、及び第3金属層124を有している。ここで、第1金属層120は、外部装置との接続端子として機能する。したがって、外部装置に備えられた接続端子と良好な電気的接続を確保する目的で配置される。第2金属層122は第1金属層120と第3金属層124との間で各々の金属原子が拡散して混合することを抑制するバリア層として機能する。したがって、第2金属層122は第1金属層120及び第3金属層124の各々に用いられる材料の拡散を抑制することができる材料を用いることができる。第3金属層124はカソード電極104及びアノード電極106と同様の材料を用いることができる。第3金属層124は、カソード電極104及びアノード電極106と同一の層、つまり同一工程で形成することができ、カソード電極104及びアノード電極106と概略同一の高さで形成されていてもよい。
[ピクセル電極部101及び接続端子部109aの各部材の材質]
図4に示すピクセル電極部101及び接続端子部109aに含まれる各部材の材料について詳細に説明する。
基板102としては、シリコン基板を使用することができる。また、シリコン基板の他にも、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、樹脂基板などの絶縁基板、炭化シリコン基板、化合物半導体基板などの半導体基板を使用することができる。また、これらが積層されたものであってもよい。基板102として絶縁基板を用いる場合は絶縁層130を省略することができる。
基板102の厚さは、特に制限はないが、例えば、100μm以上800μm以下の厚さの基板を用いることができる。基板102の厚さは、より好ましくは、200μm以上400μm以下であるとよい。上記の基板の厚さの下限よりも基板が薄くなると、基板のたわみが大きくなる。その影響で、製造過程におけるハンドリングが困難になるとともに、基板上に形成する薄膜等の内部応力により基板が反ってしまう。また、上記の基板の厚さの上限よりも基板が厚くなると貫通孔の形成工程が長くなる。その影響で、製造工程が長期化し、製造コストも上昇してしまう。
また、基板102としてシリコン基板を用いる場合、抵抗率が0.01Ωcm以上20000Ωcm以下の範囲の材料を用いることができる。特に、高電圧が印加される貫通電極112と基板102との間に寄生容量が生成されにくくするために、不純物混入量が少ない高抵抗シリコン基板を用いることができる。高抵抗シリコン基板を用いる場合は、抵抗率が100Ωcm以上20000Ωcm以下の範囲の材料を用いることができる。
絶縁層130としては、熱酸化膜(酸化シリコン膜)を用いることができる。熱酸化膜として、金属等の汚染による影響を小さくするために塩酸を添加した酸素雰囲気で熱酸化を行ってもよい。また、絶縁層130として、熱酸化膜の他に、以下に示すような無機絶縁層、有機絶縁層、又は無機絶縁層と有機絶縁層との積層構造を用いることができる。
無機絶縁層としては、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、シリコンカーバイト(SiC)、窒化シリコンカーバイト(SiCN)、炭素添加シリコンオキサイド(SiCO)などを用いることができる。これらの無機絶縁層は、化学蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)又は物理蒸着法(Physical Vapor Deposition:PVD法)で形成することができる。PVD法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、めっき法、及び分子線エピタキシー法などを用いることができる。また、CVD法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、触媒CVD法(Cat(Catalytic)−CVD法又はホットワイヤCVD法)などと用いることができる。ここで、絶縁層130として、上記の無機絶縁層を単層で使用してもよく、積層で使用してもよい。
有機絶縁層としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール、シアネート樹脂、アラミド、ポリオレフィン、ポリエステル、BTレジン、FR−4、FR−5、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルポリサルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミドなどを用いることができる。また、上記の樹脂に、ガラス、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ等、無機フィラーを併用して用いてもよい。これらの有機絶縁層は、塗布法又は蒸着法で形成することができる。
貫通電極112としては、例えば銅(Cu)を用いることができる。また、Cu以外にも金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等の金属またはこれらを用いた合金などから選択された材料を用いることができる。
樹脂層140、142としては、上記の有機絶縁層と同様の材料を用いることができる。ここで、樹脂層140、142としてガスを透過しやすい部材を用いることができる。例えば、内部に気泡を含有するポーラスな材料を用いてもよい。
カソード電極104、アノード電極106、アノード電極パターン108、及び第3金属層124としては、上記の貫通電極112と同様の材料を用いることができる。また、それ以外にも、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)あるいはこれらの合金などを使用することができる。ここで、カソード電極104、アノード電極106、及び第3金属層124は同一工程(つまり、同一層)で形成することができる。ただし、カソード電極104、アノード電極106、及び第3金属層124の一部又は全部をそれぞれ異なる工程で形成してもよい。
第1金属層120としては、Au、Ag、Ptなどの材料を用いることができる。第2金属層としては、Ni、Pd、Ti、Ta、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)などの材料を用いることができる。第2金属層122としては、拡散係数が第1金属層120及び第3金属層124よりも小さい材料を用いることができる。例えば、第1金属層にAuを用い、第3金属層及びビア126としてCuを用いた場合、第2金属層としてNiを用いることで、第1金属層120上に外部回路へ接続されるボンディングワイヤが接続されるとき、第1金属層120のAuが第3金属層124及びビア126のCuに拡散してボンディングを阻害することを抑制し、ボンディングに必要な硬度を確保する役割を有している。
上記を考慮すると、第1金属層120、第2金属層122、第3金属層124、及びピクセル電極(カソード電極104及びアノード電極106)は、それぞれ、以下の条件(1)〜(3)を満たす金属材料を用いることができる。
第3金属層124=ピクセル電極を構成する材料 ・・・(1)
第1金属層120の融点<第3金属層124の融点<第2金属層122の融点 ・・・(2)
第1金属層120のイオン化傾向<第3金属層124のイオン化傾向<第2金属層のイオン化傾向(酸化されやすい) ・・・(3)
本実施形態においては、接続端子部109aに配置された第1金属層120にはAuを用い、カソード電極104及びアノード電極106には、Auよりも融点の高いCu(酸化銅でもよい)を用いている。Auの融点は1064℃であるのに対して、CuO(酸化銅)の融点は1326℃である。本実施形態においては、カソード電極104とアノード電極106を構成するCuは、ワイヤーボンディング後の封止樹脂の熱処理により酸化されて表面が酸化銅となる。よって、接続端子部109aの第1金属層120の金属材料よりも融点が高い金属材料によってピクセル電極(カソード電極104及びアノード電極106)を形成することで、カソード電極104とアノード電極106との間に放電が発生したときの金属の飛散を防止することができる。本実施形態においては、酸化銅の酸化被膜厚さは10nm以下であることが好ましい。
このような構成をとることにより、カソード電極104とアノード電極106との間に高電圧を印加する放射線検出装置100の動作中において、放電が発生することによる金属の飛散を防止し、カソード電極104とアノード電極106とが導通してしまうという不具合を防止することができる。
[樹脂層140の開口端の形状について]
図5は、本開示の一実施形態に係る検出素子の一部のA−A’断面図において、貫通電極及びアノード電極の拡大図である。図5に示す樹脂層140は、感光性樹脂を用いた樹脂層140の断面形状である。感光性樹脂を用いた場合、樹脂層140の開口端付近における上端部の形状(図5の矢印で示す領域)はラウンド形状になる。また、開口部141における樹脂層140の側壁は上方に向かって径が広がるテーパ形状である。
ここで、樹脂層140の開口上端の径とは、樹脂層140の開口部141において、図5の2つの矢印で示した箇所間の距離を意味する。図5の矢印が指す位置は、樹脂層140の開口端付近のラウンド形状において、傾斜の変動率が最も高い位置に相当する。つまり、開口端付近のラウンド形状において、最も曲率半径が小さい位置を樹脂層140の開口上端という。ここで、開口上端を樹脂層140の開口部141の上部ということもできる。一方で、樹脂層140の開口端付近において、貫通電極112と接する箇所を樹脂層140の開口下端という。上記では、樹脂層140として感光性樹脂を用いて、開口端付近がラウンド形状である構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、樹脂層140をフォトリソグラフィ及びドライエッチングによって形成し、樹脂層140の開口上端の形状がラウンド形状でなくてもよい。
図5に示すように、樹脂層140の開口下端は貫通電極112の径よりも小さい。つまり、貫通電極112と樹脂層140とが接する領域において、樹脂層140の開口部141の径は貫通電極112の径よりも小さい。この形状により、樹脂層140の下面の一部が貫通電極112の上面の一部と接する。また、図5に示すように、アノード電極106の径は樹脂層140の開口上端の径よりも大きい。また、図5では、アノード電極106の径は貫通電極112の径よりも大きい構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、貫通電極112の径がアノード電極106の径よりも大きくてもよい。
以上のように、第1実施形態に係る放射線検出装置によると、貫通電極112が樹脂層140と接しているため、絶縁層130と貫通電極112との界面において発生した水素及び水分は樹脂層140及び142を通って外部に放出される。その結果、貫通孔103及び貫通電極112が破壊されることを抑制できる。また、アノード電極106を樹脂層140の上方に突出した形状で配置されることで、十分な電界を確保することができ、また、電界の乱れを抑制することができる。
また、貫通電極112と樹脂層140とが接する領域において、開口部141の開口径が貫通電極112の径よりも小さいことで、貫通電極112の外周に沿って樹脂層140が配置されるため、絶縁層130と貫通電極112との界面において発生した水素及び水分を効率よく外部に放出することができる。また、貫通孔103内部における絶縁層130の厚さが0.1μm以上35μm以下であることで、貫通電極112と基板102との間の寄生容量を抑制することができ、基板102内部で電場が形成されにくくすることができる。これによって、ピクセル電極部101近傍に電場が集中しやすくなるため、増幅率を向上させることができるという効果が得られる。この効果は、貫通孔103内部における絶縁層130の厚さが1μm以上30μm以下のときにより顕著であり、絶縁層130の厚さが15μm以上25μm以下のときにさらに顕著である。また、アノード電極106の径が樹脂層140の開口上端の径よりも大きいことで、アノード電極106の上端部の形状を制御しやすくなるという効果が得られる。例えば、アノード電極106近傍の電場をより集中させるために、アノード電極106の上端部を尖らせることができる。
[検出素子の製造方法]
図6〜図15を用いて、本開示の第1実施形態に係る検出素子の製造方法を説明する。図6〜図15において、図4に示す要素と同じ要素には同一の符号を付した。ここで、シリコン基板を使用して検出素子を作製する製造方法について説明する。
図6は、本開示の一実施形態に係る検出素子の製造方法において、基板に貫通孔を形成する工程を示す図である。基板102に貫通孔103を形成する方法としては、フォトリソグラフィを用いたウェットエッチング又はドライエッチング、レーザ照射による昇華又はアブレーション、レーザ照射による変質層形成及びウェットエッチング、サンドブラスト方式などの方法を用いることができる。
図7は、本開示の一実施形態に係る検出素子の製造方法において、基板及び貫通孔に絶縁層を形成する工程を示す図である。図7に示すように、貫通孔103が形成された基板102に対して絶縁層130を形成する。絶縁層130は少なくとも貫通孔103の内部領域に形成すればよく、基板102の表面又は裏面には必ずしも形成されている必要はない。基板102としてシリコン基板を用いた場合、絶縁層130は基板102の熱酸化によって得ることができる。基板102の熱酸化は、酸素ガス雰囲気で熱処理してもよく、酸素ガスに塩素を添加した雰囲気で熱処理してもよい。
絶縁層130は、上記の熱酸化の他にもCVD法によって形成することもできる。絶縁層130をCVD法によって形成する場合、貫通孔103の内部にも絶縁層130をカバレッジ良く成膜することができる成膜方法が好ましい。例えば、絶縁層130を熱CVD法の一つであるLP−CVD(Low Pressure CVD)法によって形成することができる。LP−CVD法では、ガス分子の平均自由行程が長いため、ガス分子が拡散しやすい。したがって、絶縁層130がカバレッジ良く成膜される。又は、基板に有底孔を形成し、有底孔の内部に絶縁層を形成し、有底孔の底側から有底孔の底部に達するまで基板を薄板化し、薄板化した裏面側から絶縁層を形成してもよい。
図8は、本開示の一実施形態に係る検出素子の製造方法において、貫通孔に貫通電極を充填する工程を示す図である。図8に示すように、貫通電極112を貫通孔103内部に充填させる。貫通電極112の充填は電解めっき法や無電解めっき法を用いることができる。ここでは詳細な説明は省略するが、貫通孔103の一方の開口端にシード層を形成し、シード層上にめっき層を成長させて貫通孔103の一方の開口端を塞ぐまでめっき層を成長させる、いわゆる蓋めっきを形成する。そして、当該蓋めっきから貫通孔103の他方の開口端に向けてめっき層を成長させることで貫通孔103を充填する貫通電極112を形成することができる。
図9は、本開示の一実施形態に係る検出素子の製造方法において、基板の表面に絶縁性の樹脂層を形成する工程を示す図である。図9に示すように、基板102の表面側において、開口部141が設けられた樹脂層140を絶縁層130上及び貫通電極112上に形成する。ここで、樹脂層140は絶縁層130及び貫通電極112を覆うように基板102全面に形成され、貫通電極112の一部を露出する位置に開口部141が設けられる。開口部141は傾斜面が上方を向いたテーパ形状に形成する。樹脂層140は、例えば塗布法を用いて形成することができる。また、樹脂層140は、単層で形成してもよく、又は積層で形成してもよい。
図10は、本開示の一実施形態に係る検出素子の製造方法において、樹脂層上及び貫通電極上にシード層を形成する工程を示す図である。図10に示すように、樹脂層140上及び開口部141の底部で露出された貫通電極112上に、後にカソード電極104、アノード電極106、及び第3金属層124の一部となるシード層325を形成する。シード層325は、PVD法又はCVD法等により形成することができる。シード層325に使用する材料は、後にシード層325上に形成するめっき層326と同じ材質を選択することができる。シード層325は、後の工程でめっき層326を形成する際に、電解めっき法におけるシードとして用いられる。ここで、シード層325は、好ましくは20nm以上1μm以下の膜厚で形成するとよい。また、シード層325は、より好ましくは100nm以上300nm以下の膜厚で形成するとよい。
図11は、本開示の一実施形態に係る検出素子の製造方法において、シード層上にレジストを形成し、レジストから露出された領域にめっき層を形成する工程を示す図である。図11に示すように、シード層325上にフォトレジストを塗布した後に、露光及び現像を行うことによりレジストパターン329を形成し、シード層325に通電して電解めっき法を行い、レジストパターン329から露出したシード層325上に、図4に示すカソード電極104、アノード電極106、及び第3金属層124のパターンが形成される領域にめっき層326を形成する。
図12は、本開示の一実施形態に係る検出素子の製造方法において、レジストを除去する工程を示す図である。図12に示すように、めっき層326を形成した後に、レジストパターン329を構成するフォトレジストを有機溶媒により除去する。なお、フォトレジストの除去には、有機溶媒を用いる代わりに、酸素プラズマによるアッシングを用いることもできる。
図13は、本開示の一実施形態に係る検出素子の製造方法において、アノード電極及びカソード電極を形成する工程を示す図である。図13に示すように、レジストパターン329によって覆われ、めっき層326が形成されなかった領域のシード層325を除去(エッチング)することで、カソード電極104、アノード電極106、及び第3金属層124を互いに電気的に分離する。シード層325のエッチングによって、めっき層326の表面もエッチングされて薄膜化するため、この薄膜化の影響を考慮してめっき層326の膜厚を設定することが好ましい。この工程におけるエッチングとしては、ウェットエッチングやドライエッチングを使用することができる。この工程によって、図4に示すカソード電極104、アノード電極106、及び第3金属層124を形成することができる。なお、カソード電極104、アノード電極106、及び第3金属層124は、シード層325及びめっき層326の二層で形成されているが、図13では一体として形成された構造を例示した。
図14は、本開示の一実施形態に係る検出素子の製造方法において、配線端子部を形成する工程を示す図である。図14に示すように、第3金属層124上に第2金属層122及び第1金属層120を形成することで接続端子部109aを形成する。第2金属層122及び第1金属層120は、第3金属層124に通電する電解めっき法によって、第3金属層124上に選択的に形成することができる。ただし、全面に第2金属層122及び第1金属層120を形成するための金属層を成膜し、接続端子部109aに対応する領域をフォトレジストで覆い、その他の領域をエッチングすることで第2金属層122及び第1金属層120を形成してもよい。
図15は、本開示の一実施形態に係る検出素子の製造方法において、基板の裏面にアノード電極パターンを形成する工程を示す図である。図15に示すように、基板102の裏面側に図9〜図13に示す工程と同様の方法で樹脂層142及びアノード電極パターン108を形成する。上記の製造方法によって、図4に示す放射線検出装置100の構造を得ることができる。
図16は、本開示の一実施形態に係る検出素子の製造方法において、ワイヤーボンディング工程を示す図である。図16に示すように、図15の検出素子190を接着層330を介してフレーム340に固定し、第1金属層120とフレーム340とをボンディングワイヤ132によって接続する。
〈第2実施形態〉
本開示の第2実施形態に係る検出素子の構造について、図17を参照しながら詳細に説明する。なお、第2実施形態に係る放射線検出装置100Aに用いられる検出素子190Aにおいて、図5に示した検出素子190と同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図17は、本開示の一実施形態に係る検出素子の一部の断面図において、貫通電極及びアノード電極の拡大図である。図17に示す放射線検出装置100Aの検出素子190Aは、図5に示す放射線検出装置100の検出素子190と類似しているが、放射線検出装置100Aの検出素子190Aは基板102Aと貫通電極112Aとの間に第1絶縁層134A及び第2絶縁層136Aが配置されている点において放射線検出装置100の検出素子190と相違する。ここで、第1絶縁層134Aは貫通孔103Aの内部に配置され、第2絶縁層136Aは第1絶縁層134Aより貫通孔103Aの内側に配置される。
第1絶縁層134Aは第2絶縁層136Aよりも誘電率が低い材料を用いることができる。また、第1絶縁層134Aは第2絶縁層136Aよりも厚膜で形成する。第2絶縁層136Aは第1絶縁層134Aに比べて貫通電極112Aの材料に含まれる原子の拡散係数が小さい材料を用いることができる。例えば、第1絶縁層134Aとしては、例えば酸化シリコン層を用いることができる。また、第2絶縁層136Aとしては、例えば窒化シリコン層を用いることができる。第1絶縁層134Aの厚さは10nm以上35μm以下とすることができる。また、第2絶縁層136Aの厚さは10nm以上10μm以下とすることができる。
以上のように、基板102Aと貫通電極112Aとの間に上記の第1絶縁層134A及び第2絶縁層136Aを配置することで、貫通電極112Aと基板102Aとの間の寄生容量を抑制しつつ、貫通電極112Aの材料に含まれる原子が基板102Aに拡散することを抑制することができる。その結果、拡散した貫通電極112の原子に起因する貫通電極112Aから基板102Aへのリーク電流の発生を抑制することができる。
〈第3実施形態〉
本開示の第3実施形態に係る検出素子の構造について、図18を参照しながら詳細に説明する。なお、第3実施形態に係る放射線検出装置100Bに用いられる検出素子190Bにおいて、図5に示した検出素子190と同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図18は、本開示の一実施形態に係る検出素子の一部の断面図において、貫通電極及びアノード電極の拡大図である。図18に示す放射線検出装置100Bの検出素子190Bは、図5に示す放射線検出装置100の検出素子190と類似しているが、放射線検出装置100Bの検出素子190Bは基板102Bと貫通電極112Bとの間に第1絶縁層134B、第2絶縁層136B、第3絶縁層138B、及び第4絶縁層139Bが配置されている点において放射線検出装置100の検出素子190と相違する。ここで、第1絶縁層134Bは貫通孔103Bの内部に配置され、第2絶縁層136Bは第1絶縁層134Bより貫通孔103Bの内側に配置され、第3絶縁層138Bは第2絶縁層136Bより貫通孔103Bの内側に配置され、第4絶縁層139Bは第3絶縁層138Bより貫通孔103Bの内側に配置される。
第1絶縁層134B及び第3絶縁層138Bとしては、圧縮応力を有する絶縁層を用いることができる。一方、第2絶縁層136B及び第4絶縁層139Bとしては、引っ張り応力を有する絶縁層を用いることができる。つまり、図18に示す検出素子190Bにおいて、貫通孔103Bの内部には引っ張り応力を有する複数の層と圧縮応力を有する複数の層とが交互に積層されている。
ここで、第1絶縁層134B及び第3絶縁層138Bによる圧縮応力と、第2絶縁層136B及び第4絶縁層139Bによる引っ張り応力との差が25MPa以下になるように、上記の膜厚を調整することが好ましい。また、図18では、引っ張り応力を有する層(第2絶縁層136B及び第4絶縁層139B)と圧縮応力を有する層(第1絶縁層134B及び第3絶縁層138B)とが同じ層数だけ積層された構造を例示したが、この構造に限定されない。例えば、引っ張り応力を有する層の数と圧縮応力を有する層の数とが異なっていてもよい。
以上のように、貫通孔103Bの内部に引っ張り応力を有する複数の層と圧縮応力を有する複数の層とが交互に積層されていることで、基板102Bの反りを抑制することができる。
〈第4実施形態〉
本開示の第4実施形態に係る検出素子の構造について、図19を参照しながら詳細に説明する。なお、第4実施形態に係る放射線検出装置100Cに用いられる検出素子190Cにおいて、図4に示した検出素子190と同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図19は、本開示の一実施形態に係る検出素子の一部の断面図である。図19に示す放射線検出装置100Cの検出素子190Cは、図4に示す放射線検出装置100の検出素子190と類似しているが、放射線検出装置100Cの検出素子190Cは、アノード電極106Cの径が絶縁層140Cの開口上端の径と概略同一である点において、放射線検出装置100の検出素子190と相違する。
以上のように、アノード電極106Cの径が絶縁層140Cの開口上端の径と概略同一であることで、アノード電極106Cの表面積を小さくすることができ、より高い電界を発生させることができる。
〈第5実施形態〉
本開示の第5実施形態に係る検出素子の構造について、図20を参照しながら詳細に説明する。なお、第5実施形態に係る放射線検出装置100Dに用いられる検出素子190Dにおいて、図4に示した検出素子190と同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図20は、本開示の一実施形態に係る検出素子の一部の断面図である。図20に示す放射線検出装置100Dの検出素子190Dは、図4に示す放射線検出装置100の検出素子190と類似しているが、放射線検出装置100Dの検出素子190Dはアノード電極が第1アノード電極160D及び第2アノード電極162Dによって構成されており、第2アノード電極162Dの径が絶縁層140Dの開口上端の径よりも小さい点において、放射線検出装置100の検出素子190と相違する。図20では、異なる層の第1アノード電極160D及び第2アノード電極162Dによってアノード電極が構成された例を示したが、放射線検出装置100の検出素子と同様に1つの層で第1アノード電極160D及び第2アノード電極162Dの両形状が構成されていてもよい。つまり、第1アノード電極160Dと第2アノード電極162Dとが連続した同一材料であってもよい。
図20に示す第1アノード電極160D及び第2アノード電極162Dは、まず樹脂層140に設けられた開口部141の内部に第1アノード電極160Dを充填し、樹脂層140の表面と第1アノード電極160Dの表面とが同一平面になるように表面処理を行い、その上に第2アノード電極162Dを形成することで得ることができる。
以上のように、アノード電極106Dの径が絶縁層140Dの開口上端の径よりも小さいことで、第1アノード電極160Dの上端部と第2アノード電極162Dの上端部とのそれぞれがエッヂ(角部)を有するため、貫通電極112と基板102との間の寄生容量を抑制することができ、基板102内部で電場が形成されにくくすることができる。これによって、ピクセル電極部101近傍に電場が集中しやすくなるため、増幅率を向上させることができる。
〈第6実施形態〉
本開示の第6実施形態に係る検出素子の構造について、図21〜図26を参照しながら詳細に説明する。なお、第6実施形態に係る放射線検出装置100Eに用いられる検出素子190Eにおいて、図5に示した検出素子190と同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図21は、本開示の一実施形態に係る検出素子の一部の平面図及び断面図である。図21の(A)は、検出素子190Eの平面図である。図21の(B)は、図21の(A)のA−A’線における検出素子190Eの断面図である。
図21に示すように、検出素子190Eは、基板102E、絶縁層130E、貫通電極112E、カソード電極104E、アノード電極106E、第1絶縁性樹脂層114E、アノード電極パターン108E、及び第2絶縁性樹脂層116Eを含む。
基板102Eには、貫通孔103Eが設けられている。本実施形態では貫通孔103Eの口径は50μmである。基板102EとしてSi基板が用いられている。Si基板の厚さは、400μm程度が好ましい。Si基板は高抵抗であるほど好ましく、10kΩcm程度以上であることが好ましい。貫通孔103Eは、基板102Eに円柱状に抉られた形状を有している。
絶縁層130Eは、基板102Eの第1面128E、第2面129E、及び貫通孔103Eの側壁に配置されている。絶縁層130EとしてSiO2が用いられている。SiO2は熱酸化によって形成される。絶縁層130Eは複数の絶縁層が積層された構造であってもよい。例えば、上記の熱酸化によって形成されたSiO2上にCVD法によってSiO2が形成されてもよい。更に、必要に応じてSiO2上にCVD法によってSiNが形成されてもよい。また、必要に応じてスパッタ法によるTiNとCVD法によるSiO2とが積層されてもよい。
貫通電極112Eは、前記絶縁層130Eより貫通孔103Eの内側に配置されている。貫通電極112Eは貫通孔103Eを充填していない。つまり、貫通電極112Eには、貫通孔103Eの内部を貫通する間隙107Eが設けられている。
第1絶縁性樹脂層114Eには、開口部114Eaが設けられている。開口部114Eaは、基板102Eの第1面128E側において、貫通電極112Eを露出する。
アノード電極106Eは、第1面128Eにおいて、絶縁層130Eの上方に配置されている。アノード電極106Eは、第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaに囲まれている。アノード電極106Eは、貫通電極112Eに接続されている。
カソード電極104Eは、第1絶縁性樹脂層114Eの上方に配置されている。カソード電極104Eには開口部104Ebが設けられている。カソード電極104Eの開口部104Ebの端部は、第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部を囲んでいる。つまり、カソード電極104Eは、アノード電極106Eから隔離している。
ここで、平面視においてアノード電極106Eの端部及びカソード電極104Eの開口部104Ebの端部を最短距離で結ぶ線分(図21の線分S1に相当する)において、当該線分S1の長さL2に対するアノード電極106Eから第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部までの長さL1の比が1/3以上2/3以下であればよい。
以上のような構成によって、カソード電極104E及びアノード電極106E近傍に高電場が形成されるため、高い増幅率が得られる。
ここで、製造工程における第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaのパターニングは、アノード電極106E及びカソード電極104Eのパターニングに対してずれる場合がある。このずれによって、例えば、第1絶縁性樹脂層114Eがアノード電極106Eの一部を覆ってしまったり、第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部がカソード電極104Eに覆われてしまう場合がある。これらの場合、本実施形態に係る検出素子が奏する効果を得ることができない。
そこで、第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部は、アノード電極106Eの端部及びカソード電極104Eの開口部104Ebの端部の中間付近に位置するよう設計しておくことが好ましい。
よって、第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部は、より好ましくは、平面視においてアノード電極106Eの端部及びカソード電極104Eの開口部104Ebの端部を最短距離で結ぶ線分S1において、線分S1の長さL2に対するアノード電極106Eから第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部までの長さL1の比が3/8以上5/8以下であればよい。
以上のようなによって、カソード電極104E及びアノード電極106E近傍に高電場が形成されるため、高い増幅率が得られる。更に、十分な設計マージンが確保される。
図21に示す本実施形態に係る検出素子190Eでは、平面視においてアノード電極106Eの端部及びカソード電極104Eの開口部104Ebの端部を最短距離で結ぶ線分S1において、当該線分S1の長さL2に対するアノード電極106Eから第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部までの長さL1の比が1/2である態様を示した。
本実施形態において、アノード電極106Eは円形である。アノード電極106Eの半径はR1である。本実施形態において、R1は30μmである。なお、貫通孔103Eも円形であり、アノード電極106Eは貫通孔103Eの同心円である。
本実施形態において、アノード電極106Eの材料として、銅(Cu)が用いられる。Cuの厚さは、2μm以上30μm以下程度が好ましい。
本実施形態において、カソード電極104Eの開口部104Ebは、アノード電極106Eの同心円である。開口部104Ebの半径はR2である。本実施形態において、R2は125μmである。
本実施形態において、カソード電極104の材料として、銅(Cu)が用いられる。Cuの厚さは、2μm以上30μm以下程度が好ましい。
第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部は、カソード電極104E及びアノード電極106Eの中心から(2R1+R2)/3以上(R1+2R2)/3以下の位置に配置されることが好ましい。
以上のような構成によって、カソード電極104E及びアノード電極106E近傍に高電場が形成されるため、高い増幅率が得られる。
第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部が、貫通孔103Eの中心から(R1+2R2)/3を超えて位置すると、絶縁層130Eの露出面積が増えるため、絶縁層130Eを通して放電が起きやすくなる。それによって絶縁層130Eが破壊されやすくなってしまう場合がある。
第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部が、貫通孔103Eの中心から(2R1+R2)/3未満に位置すると、カソード電極104E及びアノード電極106E近傍の電場が弱くなってしまい、十分な増幅率を得ることができなくなってしまう場合がある。
本実施形態において、第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部は、カソード電極104E及びアノード電極106Eの中心から(R1+R2)/2の位置に配置されている。つまり、第1絶縁性樹脂層114Eの開口部114Eaの端部は、カソード電極104Eの開口部104Ebの端部とアノード電極106Eの端部との中間に位置し、カソード電極104E及びアノード電極106E中心から77.5μmの位置に配置されている。
本実施形態において、第1絶縁性樹脂層114Eとして、ポリイミドが用いられている。ポリイミドの膜厚は、100μm以下であることが好ましい。
絶縁層130Eの厚さは、1μm以上50μm以下であることが好ましい。絶縁層130Eの厚さは平面視における貫通孔103Eの大きさに応じて適宜選択することができる。例えば、絶縁層130Eの厚さの上限値は、絶縁層130Eによって貫通孔103Eが塞がれない厚さに制限すればよい。
このような構成によって、アノード電極106Eと基板102Eとの間に形成される寄生容量が小さく抑えられる。これによって、カソード電極104E及びアノード電極106E近傍に電場が集中し易くなり、増幅率が向上する。
絶縁層130Eの厚さが上記の範囲よりも薄いと、アノード電極106Eと基板102Eとの間に形成される寄生容量が大きくなり、カソード電極104E及びアノード電極106E近傍に高電場が形成されにくくなってしまう場合がある。
絶縁層130Eの厚さが上記の範囲よりも厚いと、貫通孔103Eが塞がってしまいアノードが形成できなくなってしまう場合がある。
絶縁層は、引っ張り応力を有する複数の層と圧縮応力を有する複数の層とが交互に積層されてもよい。
このような構成によって、基板102の反りが抑制される。
アノード電極パターン108Eは、第1面128Eと反対の第2面129E側において、絶縁層130E上に配置されている。アノード電極パターン108Eは貫通電極112Eに接続されている。第2絶縁性樹脂層116Eは、第2面129E側において、アノード電極パターン108E上に配置され、貫通孔103Eを閉塞している。
このような構成によって、検出素子190Eをマウント用の基板にマウントする際に、マウント用の樹脂が第2面129E側から貫通孔103E内に侵入し、第1面128E側に到達してしまうことを防止することができる。
以上、本実施形態に係る検出素子の構成について説明した。本実施形態に係る検出素子によれば、カソード電極104E及びアノード電極106E近傍に高電場が形成されるため、高い増幅率が得られる。
次に、本実施形態に係る検出素子の製造方法について詳細に説明する。図22〜図26は、本実施形態に係る検出素子の製造方法を説明する平面図及び断面図である。
図22に示すように、Siからなる基板の第1面128E側からDeep RIE(Reactive Ion Etching)を行い、第1面128Eから第2面129Eまで貫通する貫通孔103Eを形成する。次いで、酸素雰囲気中で熱処理を行うことで、図23に示すように、基板102Eの表面にSiO2から成る絶縁層130Eを形成する。絶縁層130Eは、基板102Eの第1面128E、第2面129E、および貫通孔103Eの内壁に形成される。
次いで、図24に示すように、基板102Eの第1面128Eに例えば感光性のポリイミドなどからなる絶縁性樹脂層113Eを形成する。
次いで、図25に示すように、絶縁性樹脂層113Eに対してフォトリソグラフィーを行うことにより、基板102Eの第1面128E上に、開口部114Eaが設けられた第1絶縁性樹脂層114Eを形成する。
次いで、図26に示すように、基板102Eの第1面128E、第2面129E、及び貫通孔103Eの内壁に対してシード層を形成する。シード層は、無電解めっき、スパッタリング法、蒸着法のいずれか、又はそれらの組み合わせによって形成することができる。シード層を形成した後、当該シード層に通電してめっき処理を行い、シード層上にめっき層326Eを形成する。なお、図26では、説明の便宜上シード層を省略し、めっき層326Eのみを示した。
その後、めっき層326Eに対してフォトリソグラフィーを行ってパターニングをすることで、図21に示したカソード電極104E及びアノード電極106Eを形成する。そして、基板102Eの第2面129Eに例えば感光性のポリイミドなどからなる第2絶縁性樹脂層116Eを形成することで本実施形態に係る検出素子190Eを得ることができる。
<第7実施形態>
本開示の第7実施形態に係る検出素子の構成について、図27を参照しながら詳細に説明する。図27は、本開示の一実施形態に係る検出素子の一部の平面図及び断面図である。図27の(A)は、検出素子190Fの平面図である。図27の(B)は、図27の(A)のA−A’線における検出素子190Fの断面図である。
本実施形態に係る検出素子190Fと第6実施形態に係る検出素子190Eとを比較すると、検出素子190Fの基板102Fの第2面129F側の構造が検出素子190Eの基板102Eの第2面129E側の構造とは異なっている。
つまり、第1面128F側において、基板102Fは、基板102F側から絶縁層130F、第1絶縁性樹脂層114F、カソード電極104Fの順で積層された領域を有している。これに対し、第2面129F側において、基板102Fは、基板102F側から、絶縁層130F、第2絶縁性樹脂層116F、アノード電極パターン108Fの順で積層された領域を有している。
このような構成によって、基板102Fの反りを抑制することができる。
また、本実施形態に係る検出素子190Fは、基板102Fの第1面128F側の空間と第2面129F側の空間とが間隙107Fを通って連続している。
このような構成によって、貫通孔103F内に異物が侵入しても、当該異物を容易に貫通孔103F内から取り除くことができる。
<第8実施形態>
本開示の第8実施形態に係る検出素子の構成について、図28を参照しながら詳細に説明する。図28は、本開示の一実施形態に係る検出素子の一部の平面図及び断面図である。図28の(A)は、検出素子190Gの平面図である。図28の(B)は、図28の(A)のA−A’線における検出素子190Gの断面図である。
本実施形態に係る検出素子190Gと、第6実施形態に係る検出素子190Eとを比較すると、検出素子190Gのアノード電極106Gの構造が検出素子190Eのアノード電極106Eの構造とは異なっている。
図28の(B)に示すように、アノード電極106Gは貫通電極112Gから上方に突出した形状である。つまり、アノード電極106Gは図28の(A)の平面視において貫通電極112Gと略同じ領域に配置されている。換言すると、アノード電極106Gの半径であるR1は、貫通電極112Gの半径に等しい。
このような構成によって、アノード電極106Gの面積が小さくなる。これによって、アノード電極106G近傍に電界が集中するため、高電場が形成され易くなる。したがって、高い増幅率が得られる。
<第9実施形態>
本開示の第9実施形態に係る検出素子の構成について、図29を参照しながら詳細に説明する。図29は、本開示の一実施形態に係る検出素子の一部の平面図及び断面図である。図29の(A)は、検出素子190Hの平面図である。図29の(B)は、図29の(A)のA−A’線における検出素子190Hの断面図である。
本実施形態に係る検出素子190Hと、第6実施形態に係る検出素子190Eとを比較すると、検出素子190Hは、貫通孔103Hの内部が樹脂118Hで充填されている点において、検出素子190Eと異なっている。樹脂118Hは絶縁性であってもよく、導電性であってもよい。なお、貫通孔103Hの内部を充填する材料は、樹脂に限られず、銀(Ag)や銅(Cu)等の導電ペーストであってもよい。
このような構成によって、検出素子190Hの製造工程中に貫通孔103H内部に異物が侵入してしまうことを防止することができる。
<第10実施形態>
本開示の第10実施形態に係る放射線検出装置の構成について、図30を参照しながら詳細に説明する。図30は、本開示の一実施形態に係る検出素子の一部の平面図及び断面図である。図30の(A)は、検出素子190Jの平面図である。図30の(B)は、図30の(A)のA−A’線における検出素子190Jの断面図である。
本実施形態に係る検出素子190Jと、第9実施形態に係る検出素子190Hとを比較すると、検出素子190Jは、貫通孔103J内に間隙107Jが設けられてる点において検出素子190Hと異なっている。
本実施形態に係る検出素子190Jにおいて、間隙107Jの両端部が樹脂118Jによって閉塞されている。つまり、間隙107Jは貫通電極112J及び樹脂118Jによって囲まれている。
このような構成によって、検出素子190Jの製造工程中に貫通孔103J内部に異物が侵入してしまうことを防止することができる。また、貫通孔103Jの第1面128J及び第2面129J付近に樹脂118Jを形成すればよく、貫通孔103Jを樹脂118Jで充填する必要はないため、樹脂材料の使用量を抑制することができる。
<第11実施形態>
本開示の第11実施形態に係る検出素子の構成について、図31を参照しながら詳細に説明する。図31は、本開示の一実施形態に係る検出素子の一部の平面図及び断面図である。図31の(A)は、検出素子190Kの平面図である。図31の(B)には、図31の(A)のA−A’線における検出素子190Kの断面図である。
本実施形態に係る検出素子190Kと、第6実施形態に係る検出素子190Eとを比較すると、検出素子190Kの第1絶縁性樹脂層114Kの断面形状が検出素子190Eの第1絶縁性樹脂層114Eの断面形状と異なっている。
本実施形態に係る検出素子190Kにおいては、第1絶縁性樹脂層114Kの開口部114Kaは、基板から離れるにしたがって径が大きくなるテーパ形状を有する。換言すると、開口部114Kaにおける第1絶縁性樹脂層114Kの側壁は傾斜しており、当該側壁の斜面は上方を向いている。開口部114Kaにおける第1絶縁性樹脂層114Kの側壁と基板102Kの第1面128Kとのなす角はθである。
このような構成によって、カソード電極104K及びアノード電極106K近傍に電界が集中するため、高電場が形成され易くなる。したがって、高い増幅率が得られる。
開口部114Kaにおける第1絶縁性樹脂層114Kの傾斜面の傾斜角θは、20°以上80°以下であることが好ましい。
〈第12実施形態〉
本実施形態においては、本開示の放射線検出装置の別の例について説明する。第12実施形態の検出素子190Lは、第1〜第11実施形態の検出素子と同様の構成を有しているので、同様の構成については改めて説明はしない。なお、放射線検出装置は容器モジュールとも呼ばれる。
図32に、本実施形態に係る本開示の放射線検出装置150Lの断面斜視図を示す。本実施形態に係る本開示の放射線検出装置150Lは、第1〜第11実施形態と同様、ピクセル電極部101L、接続端子部109L、ドリフト電極110L及びチャンバ111Lを有している。また、本実施形態に係る本開示の放射線検出装置150Lにおいては、ドリフトケージ152La及び152Lbが設けられている。ドリフトケージ152La及び152Lbは、ドリフト電極110Lとピクセル電極部101Lとの間の電界分布を均一化するために設けられている。ここで、本実施形態に係る本開示の放射線検出装置を容器モジュールという。