以下、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る遠心振子ダンパ付きパワートレイン10(以下、単に「パワートレイン10」という。)の構成を示す骨子図である。図1に示すように、このパワートレイン10は、エンジン1と、該エンジン1の駆動力を駆動輪2に伝達する自動変速機3の変速機構3aと、エンジン1の出力軸1aと自動変速機3の入力軸3bとの間を連絡するねじりダンパ機構4と、自動変速機3の入力軸3bに連絡された遠心振子ダンパ機構5と、を備える。
自動変速機3は、複数の摩擦締結要素を選択的に締結することによって変速比を段階的に切り替える変速機構3aを備えた有段変速機である。なお、自動変速機3は、変速比を連続的に変化させる変速機構を備えた無段の自動変速機(CVT)であってもよい。また、ねじりダンパ機構4に対して、代替的又は付加的にトルクコンバータが設けられていてもよい。
ねじりダンパ機構4は、出力軸1aに並列に連絡された第1ばね部材4a及び第2ばね部材4bを備える。これにより、出力軸1aの回転がばね部材4a、4bを介して入力軸3b側に伝達されるようになっている。なお、本実施形態の「入力軸3b」は、請求項1における「動力伝達軸」に相当する。
遠心振子ダンパ機構5は、入力軸3bの回転を増速する増速機構である遊星歯車セット12と、該遊星歯車セット12を介して入力軸3bに連絡された遠心振子ダンパ13と、入力軸3bから遊星歯車セット12への動力伝達を断接可能な断接機構であるクラッチ機構14と、を備える。なお、クラッチ機構14は、遊星歯車セット12と遠心振子ダンパ13との間に設けられてもよい。
遊星歯車セット12は、シングルピニオンタイプであり、回転要素として、サンギヤ21と、リングギヤ23と、サンギヤ21及びリングギヤ23に噛み合うピニオン22を支持するピニオンキャリヤ24(以下、単に「キャリヤ24」と略記する。)と、を有する。
そして、この遊星歯車セット12のキャリヤ24には入力軸3bがクラッチ機構14を介して連絡されると共に、サンギヤ21には遠心振子ダンパ13が連絡されている。また、リングギヤ23には変速機ケース3dが連結されることでその回転が制止されている。
遠心振子ダンパ13は、遊星歯車セット12のサンギヤ21に連結された図示しない支持部材と、該支持部材にその軸心から所定半径の円周上の点を中心として揺動可能に支持された質量体である図示しない振子と、を備えている。遠心振子ダンパ13は、トルク変動によって振子が揺動すれば、振子に作用する遠心力を受ける支持部材に周方向の分力が発生し、この分力が支持部材のトルク変動を抑制する反トルクとして働く結果、入力軸3bのねじり振動を吸収できるように構成されている。
クラッチ機構14は、図示しないクラッチハブ及びクラッチドラムと、該クラッチハブ及びクラッチドラムに交互に係合された図示しない複数の摩擦板と、該摩擦板を押圧する図示しないピストンと、を備えている。クラッチ機構14は、ピストンの背面側に設けられた油圧室に供給する締結用油圧を制御することによって、締結度合いが変化する、すなわち締結、解放又はスリップ状態に切り替わるように構成されている。
ここで、上述のパワートレイン10の作用について説明する。
まず、エンジン1が駆動されると、その動力はねじりダンパ機構4に伝達され、このとき、エンジン1のトルク変動は、ねじりダンパ機構4によってある程度は吸収される。このねじりダンパ機構4に伝達された動力の一部は、更に変速機構3aの入力軸3bから遠心振子ダンパ機構5に伝達される。遠心振子ダンパ機構5のクラッチ機構14が締結されると、このクラッチ機構14を介して入力軸3bから遊星歯車セット12へ動力が伝達される。このとき、遊星歯車セット12のリングギヤ23の回転が変速機ケース3dによって制止されているので、入力軸3bと連結されたキャリヤ24の回転に伴って、サンギヤ21が回転する。サンギヤ21の回転は、キャリヤ24の回転に対して、サンギヤ21に対するキャリヤ24の歯数比に応じて増速される。遠心振子ダンパ13は、増速されたサンギヤ21の回転数で駆動される。このとき、ねじりダンパ機構4で吸収しきれなかったトルク変動が遠心振子ダンパ13で吸収される。
また、本実施形態おけるパワートレイン10には、エンジン1の出力軸1aの回転数を検出するエンジン回転数センサ101と、変速機構3aの入力軸3bの回転数を検出する変速機構入力軸回転数センサ102(以下、「変速機構入力軸回転数」を単に「入力軸回転数」という。)と、変速機構3aの出力軸3cの回転数を検出する車速センサ103と、遠心振子ダンパ13の回転数を検出する振子回転数センサ104と、がそれぞれ設けられている。これら回転数センサ101〜104として、例えば、ピックアップコイル型、ホール素子型、磁気抵抗素子型等の磁気センサを用いることができる。
更に、上述のように構成されるパワートレイン10には、エンジン1、自動変速機3及び遠心振子ダンパ機構5のクラッチ機構14等、パワートレイン10に関係する構成を総合的に制御するコントロールユニット100(図1には図示しない)が設けられている。なお、コントロールユニット100は、マイクロコンピュータを主要部として構成されている。
次に、図2を参照しながら、コントロールユニット100によって構成されたパワートレイン10の制御システムについて説明する。
図2は、パワートレイン10の制御システム図である。図2に示すように、コントロールユニット100には、エンジン回転数センサ101、入力軸回転数センサ102、車速センサ103、振子回転数センサ104、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ105、シフトレバーの操作位置を検出するレンジセンサ106等からの信号が入力されるように構成されている。
また、コントロールユニット100は、上述の各種センサ等からの入力信号に基づき、エンジン1に対して制御信号を出力するエンジン制御部110と、変速指令に基づいて自動変速機3に変速比を変更する制御信号を出力する変速制御部120と、変速制御部120による変速制御を抑制する変速抑制部130と、断接指令に基づいてクラッチ機構14に締結度合いを制御する制御信号を出力する断接制御部140と、を備える。
エンジン制御部110は、エンジン1の燃料噴射制御、点火制御等を行うことができる。
変速制御部120は、車速センサ103、アクセル開度センサ105等からの入力信号に基づいて、変速機構3aの変速段(変速比)を変更する変速制御を行う。すなわち、変速制御部120は、現在の車速、アクセル開度から図示しない変速マップに従って決定された所望の変速段に変更する変速指令を出力し、この変速指令に基づいて変速機構3aを所望の変速段に変更する制御を行う。
断接制御部130は、エンジン回転数センサ101からの入力信号に基づいて、図3に示された制御マップに従って断接指令を出力し、クラッチ機構14を接続状態又は切断状態に切り替える断接制御を行う。
すなわち、断接制御部130は、エンジン回転数がN1以下の低速域又はN2(N2>N1)以上の高速域ではクラッチ機構14を切断状態で維持し、エンジン回転数がN1からN2までの中速域ではクラッチ機構14を接続状態に維持するように制御を行う。また、断接制御部130は、エンジン回転数が低速域から中速域まで上昇中に回転数N1に達した時、又は高速域から中速域まで下降中に回転数N2に達した時、クラッチ機構14を切断状態から接続状態に切り替える接続指令を出力し、この接続指令に基づいてクラッチ機構14を切断状態から接続状態に切り替えるように制御を行う。更に、断接制御部130は、エンジン回転数が中速域から低速域まで下降中に回転数N1に達した時、又は中速域から高速域まで上昇中に回転数N2に達した時、クラッチ機構14を接続状態から切断状態に切り替える切断指令を出力し、この切断指令に基づいてクラッチ機構14を切断状態から接続状態に切り替えるように制御を行う。
ここで、エンジン回転数N1には、アイドリング回転よりも高い回転数が設定されている。また、エンジン回転数N2には、エンジンが過回転(オーバレブ)となる回転数よりも低く、増速機構によって増速された遠心振子ダンパが著しく高速回転となってその信頼性に影響を及ぼす懸念のある回転数が設定されている。なお、クラッチ機構14が摩擦クラッチである場合、クラッチ機構14の接続とは「締結」を意味し、切断とは「解放」を意味する。
更に、本実施形態では、エンジン1は、減筒運転又は全筒運転が可能な多気筒エンジンであり、エンジン制御部110は、走行状況に応じてエンジン1の燃焼させる気筒数を切り替える気筒数制御を行うことができる。すなわち、図3に示すように、エンジン制御部110は、エンジン回転数が上述のクラッチ機構14が接続状態にある中速域に含まれる減筒運転領域にあるときは、エンジン1を減筒運転させる一方で、エンジン回転数がこの減筒運転領域外にあるときは、エンジン1を全筒運転させるように気筒数制御を行う。
したがって、例えば、変速機構3aのダウンシフトによってエンジン回転数が低速域から中速域へ上昇して回転数N1に達した後、減筒運転領域に入る際、又は、変速機構3aのアップシフトによってエンジン回転数が高速域から中速域へ下降して回転数N2に達した後、減筒運転領域に入る際、クラッチ機構14が接続状態に切り替えられた後に、エンジン1は全筒運転から減筒運転へ切り替えられる。また、変速機構3aのダウンシフト又はアップシフトによってエンジン回転数が高速域に向かって上昇又は低速域に向かって下降して減筒運転領域内から減筒運転領域外に入る際、エンジン1は減筒運転から全筒運転へ切り替えられた後に、クラッチ機構14が切断状態に切り替えられる。そのため、減筒運転時にエンジン1で発生するトルク変動を、クラッチ機構14を介して入力軸9と連結された遠心振子ダンパ13によって確実に抑制することができる。
断接抑制部140は、前述の断接制御部130に設けられており、断接指令の出力から断接完了までの期間と変速指令の出力から変速完了までの期間とが少なくとも一部で互いに重なるとき、変速制御部120による変速制御を実行すると共に、断接制御部130による断接制御を抑制するように構成されている。ここでいう、断接制御の「抑制」には、断接制御自体を禁止する場合、クラッチ機構14を接続状態又は切断状態からスリップ状態に切り替える場合等が含まれる。
したがって、断接制御部130及び断接抑制部140によって制御されるクラッチ機構14は、通常は、制御マップに従って接続状態又は切断状態に切り替えられるが、断接指令の出力から断接完了までの期間と変速指令の出力から変速完了までの期間とが少なくとも一部で互いに重なる場合には、接続状態又は切断状態がそのまま維持されるか、接続状態又は切断状態からスリップ状態に切り替えられる。
なお、上述の変速指令又は断接指令の出力とは、条件成立等によってコントロールユニット100内で変速指令又は断接指令が生成されることを意味し、変速制御部120又は断接制御部130から自動変速機3やクラッチ機構14等の外部へ出力されるものではない。
(パワートレインの制御方法)
パワートレイン10は、コントロールユニット100によって、例えば、図4に示すフローチャートに従って制御される。
まず、図4に示すように、ステップS1では、各種センサから出力された信号を読み込み、次のステップS2では、断接制御部140から断接指令が出力されているか否かを判定する。
ステップS2において断接指令が出力されていると判定されると、ステップS3では、読み込まれた信号に基づいて、変速制御部120から変速指令が出力されているか否かを判定する。
ステップS3において変速指令が出力されていると判定されると、ステップS4では、変速抑制部130によって変速抑制が開始され、変速指令を無視する或いは断接完了まで変速制御の開始を待たせることにより、断接制御部140による断接制御が実行されると共に、変速制御部120による変速制御が抑制される。
次に、ステップS5では、断接制御が完了したか否かが判定される。ステップS5において断接制御が完了したと判定されると、次のステップS6では、変速抑制部130によって変速抑制が終了され、無視されていた変速指令に基づいて或いは断接完了まで開始を待たせていた変速制御部120による変速制御の実行が開始される。
一方で、ステップS3において、変速指令が出力されていないと判定されると、次のステップS7では、断接制御部140による断接制御のみが実行される。
また、一方で、ステップS2において断接指令が出力されていないと判定されると、次にステップS8で、変速指令が出力されているか否かを判定する。ステップS8において変速指令が出力されていると判定されると、次のステップS9で、断接完了を待たずに、変速制御部120による変速制御が実行される。
この場合におけるパワートレイン10の具体的動作について、図5、図6に示すタイムチャートを参照しながら説明する。
図5は、変速制御中に接続指令が出力された場合の例を示す図である。図5に示すように、時刻0において、クラッチ機構14が切断状態であり、変速機構3aが変速制御の実行中ではなく、入力軸回転数が上昇中に、時刻t1において、変速制御部120から変速機構3aをアップシフトさせる変速指令が出力され、該変速指令に基づいて変速機構3aの変速制御が実行開始される。次に、時刻t2において、クラッチ機構14を切断状態から接続状態に切り替える接続指令が出力されるのに伴い、変速抑制部130による変速抑制も開始される。断接制御の実行中は変速機構3aの変速制御が抑制されているため、変速機構3aは変速動作を停止する。次に、時刻t3において、クラッチ機構14の接続制御が完了するのに伴い、変速抑制が終了するため、変速機構3aの変速制御が再開され、時刻t5において変速制御が完了する。
なお、図5に破線で比較例として示すように、時刻t2において変速制御が継続して実行された場合、断接制御と変速制御が重なった際に変速制御の影響によってクラッチ機構14の断接が遅れることで、時刻t3より遅い時刻t4において接続制御が完了するため、断接時間が長期化する。そのため、例えば、変速制御によってトルク変動が大きくなる場合には、断接時間の長期化によって遠心振子ダンパ13の制振機能が働くまでに時間がかかるため、振動や騒音が発生するおそれがある。
したがって、アップシフトさせる変速制御の実行中に接続指令が出力された場合、上述のように変速抑制を行うことで、変速制御の影響による断接時間の長期化を防止することができる。なお、ダウンシフトさせる変速制御の実行中に接続指令が出力された場合にも同様に変速抑制を行うことで、上述の効果を得ることができる。
また、図6は、断接制御中に変速指令が出力された場合の例を示す図である。図6に示すように、時刻0において、クラッチ機構14が接続状態であり、変速機構3aが変速制御の実行中ではなく、入力軸回転数が下降中に、時刻t11において、断接制御部140からクラッチ機構14を切断する切断指令が出力され、該切断指令に基づいてクラッチ機構14の切断制御が実行開始される。次に、クラッチ機構14の切断制御中の時刻t12において、変速制御部120から変速機構3aをダウンシフトさせる変速指令が出力されるのに伴い、変速抑制部130による変速抑制も開始される。切断制御の実行中は変速機構3aの変速が抑制されているため、変速機構3aの変速制御が停止されている。次に、時刻t13において、クラッチ機構14の切断制御が完了するのに伴い、変速抑制が終了するため、変速機構3aの変速制御が実行開始され、時刻t15において、変速制御が完了する。
なお、図6に破線で比較例として示すように、時刻t12において、変速機構3aの変速制御が実行開始された場合、変速制御の影響によってクラッチ機構14の断接が遅れることで、時刻t13より遅い時刻t14において変速制御が完了するため、クラッチ機構14の切断時間が長期化する。そのため、図5で説明した具体例と同様に、振動や騒音が発生するおそれがある。
したがって、ダウンシフトさせる変速制御の実行中に切断指令が出力された場合、上述のように変速抑制を行うことで、変速制御の影響による断接時間の長期化を防止することができる。なお、アップシフトさせる変速制御の実行中に切断指令が出力された場合にも、同様に変速抑制を行うことで上述の効果を得ることができる。
(第2の実施形態)
次に、図7を参照しながら、第2の実施形態に係るパワートレイン10を制御するコントロールユニット100の制御方法について説明する。なお、以下の説明では、上述の第1の実施形態の制御方法と共通するステップについては、説明を省略する。
図7のフローチャートは、上述の図4のフローチャートとは、ステップS18以降の工程が異なる。すなわち、ステップS12において断接指令が出力されていないと判定され、次にステップS18において変速指令が出力されていると判定されると、次にステップS19では、クラッチ機構14が接続状態であるか否かが判定される。
ステップS19においてクラッチ機構14が接続状態であると判定されると、次のステップS20では、振子回転数が上限以上又は下限未満となる変速指令であるか否かが判定される。ステップS20において振子回転数が上限以上又は下限未満となる変速指令であると判定されると、次のステップS21では、断接制御部140からクラッチ機構14の切断指令が出力され、次のステップS22では、変速制御の抑制が開始され、変速機構3aの変速制御が抑制されると共に、クラッチ機構14の切断制御が実行される。次に、ステップS23では、クラッチ機構14の切断制御が完了すると、ステップS24では、変速抑制が終了し、変速機構3aの変速制御が実行される。
ここで、上述の振子回転数の上限は、遠心力によって遠心振子ダンパ13の信頼性が低下しない最高回転数に設定されており、振子回転数の下限は、振子の動作不安定によって遠心振子ダンパ13において異音が発生しない最低回転数に設定されている。
一方で、ステップS19において、クラッチ機構14が接続状態ではない、すなわち切断状態であると判定されると、ステップS25では、クラッチ機構14の接続制御が実行される。また、ステップS20において、振子回転数が上限以上又は下限未満となる変速指令ではない、すなわち振子回転数が下限以上かつ上限未満となる変速指令であると判定されると、上述のステップS25が実行される。
この場合におけるパワートレイン10の具体的動作について、図8、図9に示すタイムチャートを参照しながら説明する。
図8は、変速制御中に振子回転数が下限未満となる変速指令が出力された場合の例を示す図である。図8に示すように、時刻0において、クラッチ機構14が接続状態であり、変速機構3aが変速制御の実行中ではなく、入力軸回転数が上昇中に、時刻t21において、変速制御部120から変速機構3aをアップシフトさせる変速指令であって変速制御中に振子回転数が下限未満となる変速指令が出力されるのに伴い、断接制御部140からクラッチ機構14を接続状態から切断状態に切り替える切断指令が出力されると共に、変速抑制部130による変速抑制も開始される。この切断指令に基づいてクラッチ機構14の切断制御が実行開始されるが、切断制御中は変速制御が抑制されているため、変速機構3aの変速制御は停止している。次に、時刻t22において、クラッチ機構14の切断制御が完了するのに伴い、変速抑制が終了するため、変速機構3aの変速制御が実行開始され、時刻t25において、変速制御が完了する。
なお、図8に破線で比較例として示すように、時刻t21において、変速指令に基づいて変速機構3aの変速制御が実行開始された場合、振子回転数が下限となる時刻t23においてクラッチ機構14の切断制御が実行開始されるが、変速制御の影響によってクラッチ機構14の断接が遅れることで、時刻t24において切断制御が完了するため、クラッチ機構14の切断時間が長期化する。そのため、遠心振子ダンパ13の回転数が異音を発生する回転数以下に低下し、遠心振子ダンパ13で異音が発生するおそれがある。
したがって、振子回転数が上限以上又は下限未満となる変速指令が出力された場合、上述のように変速制御を実行する前に変速抑制して断接制御を行うことで、遠心振子ダンパ13での異音の発生を防止することができる。
また、図9は、変速制御中に遠心振子ダンパ13の信頼性が低下する回転数となる変速指令が出力された場合の例を示す図である。図9に示すように、時刻0において、クラッチ機構14が接続状態であり、変速機構3aが変速制御の実行中ではなく、入力軸回転数が上昇中に、時刻t31において、変速制御部120から変速機構3aをダウンシフトさせる変速指令であって変速制御中に振子回転数が上限以上となる変速指令が出力されるのに伴い、断接制御部140からクラッチ機構14を接続状態から切断状態に切り替える切断指令が出力されると共に、変速抑制部130による変速抑制も開始される。この切断指令に基づいてクラッチ機構14の切断制御が実行開始されるが、切断制御中は変速制御が抑制されているため、変速機構3aの変速制御は停止している。次に、時刻t32において、クラッチ機構14の切断制御が完了するのに伴い、変速抑制が終了するため、変速機構3aの変速制御が実行開始され、時刻t35において、変速制御が完了する。
なお、図9に破線で比較例として示すように、時刻t31において、変速指令に基づいて変速機構3aの変速制御が実行開始された場合、振子回転数が上限となる時刻t33においてクラッチ機構14の切断制御が実行開始されるが、変速制御の影響によってクラッチ機構14の断接が遅れることで、時刻t34において切断制御が完了するため、クラッチ機構14の切断時間が長期化する。そのため、遠心振子ダンパ13の回転数が上昇して振子回転数が上限を超えることで、遠心振子ダンパ13の信頼性が低下するおそれがある。
したがって、変速制御中に遠心振子ダンパ13の信頼性が低下する回転数となる変速指令が出力された場合、上述のように変速制御が実行される前に変速抑制して断接制御を行うことで、遠心振子ダンパ13の信頼性の低下を防止することができる。
(第3の実施形態)
次に、図10を参照しながら、第3の実施形態に係るパワートレイン10を制御するコントロールユニット100の制御方法について説明する。なお、以下の説明では、上述の第2の実施形態の制御方法と共通するステップについては、説明を省略する。
図10のフローチャートは、上述の図7のフローチャートとは、ステップS38以降の工程が異なる。すなわち、ステップS32において断接指令が出力されていないと判定され、次にステップS38において変速指令が出力されていると判定されると、次にステップS39では、クラッチ機構14が切断状態であるか否かが判定される。
ステップS39においてクラッチ機構14が切断状態であると判定されると、次のステップS40では、減筒運転への移行を伴う変速指令であるか否かが判定される。ステップS40において減筒運転への移行を伴う変速指令であると判定されると、次のステップS41では、断接制御部140からクラッチ機構14の接続指令が出力され、次のステップS42では、変速制御の抑制が開始され、変速機構3aの変速制御が抑制されると共に、クラッチ機構14の接続制御が実行される。次に、ステップS43では、クラッチ機構14の接続制御が完了すると、ステップS44では、変速抑制が終了し、変速機構3aの変速制御が実行される。
一方で、ステップS39において、クラッチ機構14が切断状態ではない、すなわち接続状態であると判定されると、ステップS45では、クラッチ機構14の切断制御が実行される。また、ステップS40において、減筒運転への移行を伴う変速指令ではないと判定されると、上述のステップS45が実行される。
この場合におけるパワートレイン10の具体的動作について、図11に示すタイムチャートを参照しながら説明する。
図11は、減筒運転への移行を伴う変速指令が出力された場合の例を示す図である。図11に示すように、時刻0において、クラッチ機構14が切断状態であり、変速機構3aが変速制御の実行中ではなく、入力軸回転数が上昇中に、時刻t41において、変速制御部120から減筒運転への移行を伴う変速指令が出力されるのに伴い、断接制御部140からクラッチ機構14を切断状態から接続状態に切り替える接続指令が出力されると共に、変速抑制部130による変速抑制も開始される。この接続指令に基づいてクラッチ機構14の接続制御が実行開始されるが、接続制御中は変速制御が抑制されているため、変速機構3aの変速制御は停止している。次に、時刻t42において、クラッチ機構14の接続制御が完了するのに伴い、変速抑制が終了するため、変速機構3aの変速制御が実行開始され、時刻t44において、変速制御が完了する。
なお、図11に破線で比較例として示すように、時刻t41において、変速指令に基づいて変速機構3aの変速制御が実行開始された場合、エンジン回転数が減筒運転を開始する回転数となる時刻t43においてクラッチ機構14の接続制御が実行開始されるが、クラッチ機構14の接続制御が完了する時刻t44までは入力軸9から遠心振子ダンパ13へ動力が全て伝達されないので、遠心振子ダンパ13の制振機能が十分に働かない。そのため、エンジン1が発生するトルク変動によって振動、騒音が発生するおそれがある。
したがって、減筒運転への移行を伴う変速指令が出力された変速指令が出力された場合、上述のように変速制御が実行される前に変速抑制して断接制御を行うことで、減筒運転開始時からエンジン1のトルク変動による振動、騒音の発生を抑制することができる。
以上の構成により、第1の実施形態によれば、断接制御部140による断接制御中は、変速制御部120による変速制御を抑制する。そのため、遠心振子ダンパ13の過回転を防止するために所定のエンジン回転数でクラッチ機構14の切断指令が出力され、これと相前後してエンジン回転数が上昇する変速指令が出力されたとき、クラッチ機構14の切断制御が変速制御に先行して実行されるので、遠心振子ダンパ13が過回転となる前にクラッチ機構14を切断することができる。したがって、過回転によって遠心振子ダンパ13の信頼性が低下するのを防止することができる。
また、第1の実施形態によれば、遠心振子ダンパ13の異音発生を防止するために所定のエンジン回転数でクラッチ機構14の切断指令が出力され、これと相前後してエンジン回転数が低下する変速指令が出力されたとき、クラッチ機構14の切断制御が変速制御に先行して実行されるので、振子に作用する遠心力が小さくなり過ぎる前にクラッチ機構14を切断することができる。したがって、エンジン1が発生するトルク変動によって振子が揺動して周辺部材と接触し、異音が発生を抑制することができる。
更に、第1の実施形態によれば、パワートレイン10が減筒運転可能な多気筒エンジン1を備え、減筒運転時にクラッチ機構14が接続される場合、エンジン1が減筒運転領域に入る前乃至減筒運転領域に入って間もなくクラッチ機構14を接続することができるので、遠心振子ダンパ13が機能しない期間を短縮することができる。したがって、エンジン1が発生するトルク変動によって振動、騒音が発生を抑制することができる。
また、第2の実施形態によれば、入力軸9と遠心振子ダンパ13との間に遊星歯車セット12を備え、変速抑制部130は、変速制御の実行によって遠心振子ダンパ13の回転数が許容上限値以上となるときに変速制御部120による変速制御を抑制するので、遠心振子ダンパ13の回転数が許容上限値以上となる前に確実にクラッチ機構14を切断することができ、高速回転によって遠心振子ダンパ13の信頼性が低下するのを防止することができる。
また、第2の実施形態によれば、変速抑制部130は、変速制御の実行によって遠心振子ダンパ13の回転数が許容下限値未満となるときに変速制御部120による変速制御を抑制するので、遠心振子ダンパ13の回転数が許容下限値未満となる前に確実にクラッチ機構14が切断され、遠心振子ダンパ13での異音発生を抑制することができる。
また、第3の実施形態によれば、エンジン1は減筒運転が可能であり、変速抑制部130がエンジン1の全筒運転から減筒運転への移行に伴って変速指令が出力されたときに変速制御部120による変速制御を抑制するので、エンジン1が全筒運転から減筒運転へ移行される前に断接制御が実行され、減筒運転開始時から遠心振子ダンパ13によって振動、騒音が発生を抑制することができる。
本発明は、例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
例えば、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる(例えば、第2の実施形態と第3の実施形態の組み合わせ等の)実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本実施形態では、断接機構としてクラッチ機構14を用いた例について記載したが、これに限定されず、例えば、遊星歯車セット12のリングギヤ23と変速機ケース3d間にブレーキ機構を断接機構として設けてもよい。
また、本実施形態では、駆動源として内燃機関からなるエンジン1を用いた例について記載したが、これに限定されず、例えば、エンジンに発電機を付設し、この発電機によって発電を行うと共に、加速時に発電機をモータとして利用してエンジンをアシストするように構成された所謂ハイブリッドエンジンを用いてもよい。
更に、本実施形態では、トルコンレスの自動変速機3を搭載したパワートレインについて記載したが、これに限定されず、トルクコンバータを備えた自動変速機を搭載したものであってもよい。