次に、この発明を図面を参照して具体的に説明する。この発明で制御の対象とする車両の駆動系統および制御系統を図1に示してある。この図1に示す車両Veは、エンジン1と、そのエンジン1の出力側に連結されてエンジン1が出力する動力を駆動輪2へ伝達する自動変速機3とを備えている。具体的には、エンジン1の出力軸1a側に、トルクコンバータ4を介して自動変速機3の入力軸3aが連結されている。そして、その自動変速機3の出力軸3bと一体に連結されたプロペラシャフト5に、デファレンシャルギヤ6およびドライブシャフト7を介して、駆動輪2が動力伝達可能に連結されている。なお、上記のように、図1では、プロペラシャフト5を介してエンジン1と駆動輪2(すなわち後輪)とが連結された構成例、すなわち車両Veが後輪駆動車である例を示しているが、この発明で制御の対象とする車両Veは、前輪駆動車であってもよく、あるいは四輪駆動車であってもよい。
エンジン1は、車両Veにおける駆動力源であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなど、燃料を燃焼させて動力を出力する内燃機関である。この図1では、スロットル開度を電気的に制御することが可能な電子制御式のスロットルバルブや、燃料噴射量を電気的に制御することが可能な電子制御式の燃料噴射装置を備えているガソリンエンジンを搭載した例を示している。したがって、このエンジン1は、所定の負荷に対して回転数を電気的に制御することにより、燃費が最も良好な状態で運転することが可能な構成となっている。
自動変速機3は、エンジン1が出力するトルクを変速して駆動輪2へ伝達する伝動装置であり、この図1には、遊星歯車機構を用いた有段式の変速機(AT)の例を示してある。その構成は公知のATと同様であり、複数の遊星歯車機構(図示せず)、および、それら複数の遊星歯車機構における異なる回転要素同士を連結して一体回転させるクラッチと所定の回転要素の回転を止めて固定するブレーキとから構成されるクラッチ機構8を備えている。
自動変速機3の具体的な構成の一例を図2に示してある。この図2に示す自動変速機3は、前進段6速および後進段1速を設定することが可能な変速機である。具体的には、この自動変速機3は、シングルピニオン型の遊星歯車機構21、ラビニヨ型の遊星歯車機構22、および、上述したクラッチ機構8によって構成されている。
シングルピニオン型の遊星歯車機構21は、サンギヤ21s、リングギヤ21r、ピニオンギヤ21p、および、キャリア21cを備えている。サンギヤ21sは、自動変速機3の入力軸3aと一体回転するように連結されている。リングギヤ21rは、内歯歯車として形成されていて、サンギヤ21sと同心円上に配置されている。また、このリングギヤ21rには、係合することによりリングギヤ21rの回転を止めて固定するブレーキB3が設けられている。ピニオンギヤ21pは、サンギヤ21sとリングギヤ21rとの間で、それらサンギヤ21sおよびリングギヤ21rの両方に噛み合うように配置されている。そして、キャリア21cは、ピニオンギヤ21pを自転可能にかつ公転可能に保持するように構成されている。また、このキャリア21cは、後述するラビニヨ型の遊星歯車機構22の第2サンギヤ22sbに一体回転するように連結されている。さらに、このキャリア21cには、係合することによりキャリア21cの回転を止めて固定するブレーキB1が設けられている。
ラビニヨ型の遊星歯車機構22は、シングルピニオン型の遊星歯車機構とダブルピニオン型の遊星歯車機構とを組み合わせて構成した複合遊星歯車機構である。具体的には、このラビニヨ型の遊星歯車機構22は、シングルピニオン型の遊星歯車機構を構成する部材として、第1サンギヤ22sa、リングギヤ22r、第1ピニオンギヤ22pa、および、キャリア22cを備えている。そして、ダブルピニオン型の遊星歯車機構を構成する部材として、第2サンギヤ22sb、上記のシングルピニオン型の遊星歯車機構と共用のリングギヤ22r、上記のシングルピニオン型の遊星歯車機構と共用の第1ピニオンギヤ22pa、第2ピニオンギヤ22pb、および、上記のシングルピニオン型の遊星歯車機構と共用のキャリア22cを備えている。
第1サンギヤ22saは、中空状に形成されていて、入力軸3aの外周部分に入力軸3aと相対回転が可能なように配置されている。リングギヤ22rは、内歯歯車として形成されていて、第1サンギヤ22saと同心円上に配置されている。また、このリングギヤ22rには、係合することによりリングギヤ22rの回転を止めて固定するブレーキB2が設けられている。さらに、このリングギヤ22rには、回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチF1が設けられている。第1ピニオンギヤ22paは、第1サンギヤ22saとリングギヤ22rとの間で、それら第1サンギヤ22saおよびリングギヤ22rの両方に噛み合うように配置されている。また、この第1ピニオンギヤ22paは、軸線方向に長く延長させたロングピニオンギヤとして形成されていて、上記の第1サンギヤ22saおよびリングギヤ22rと共に、第2ピニオンギヤ22pbとも同時に噛み合うように構成されている。そして、キャリア22cは、上記の第1ピニオンギヤ22paおよび第2ピニオンギヤ22pbをそれぞれ自転可能にかつ公転可能に保持するように構成されている。また、このキャリア22cは、自動変速機3の出力軸3bに一体回転するように連結されている。
第2サンギヤ22sbは、上記の第1サンギヤ22saと同様、中空状に形成されていて、入力軸3aの外周部分に入力軸3aと相対回転が可能なように配置されている。また、この第2サンギヤ22sbは、上述したシングルプラネタリ型の遊星歯車機構21のキャリア21cに一体回転するように連結されている。第2ピニオンギヤ22pbは、第2サンギヤ22sbと上記の第1ピニオンギヤ22paとの間で、それら第2サンギヤ22sbおよび第1ピニオンギヤ22paの両方に噛み合うように配置されている。そして、この第2ピニオンギヤ22pbは、上記のキャリア22cよって、上記の第1ピニオンギヤ22paと共に、自転可能にかつ公転可能に保持されている。
そして、上述したシングルプラネタリ型の遊星歯車機構21のサンギヤ21sと、上記のラビニヨ型の遊星歯車機構22の第1サンギヤ22saとの間に、それらサンギヤ21sと第1サンギヤ22saとを、選択的に一体回転するように連結するクラッチC1が設けられている。また、上述したシングルプラネタリ型の遊星歯車機構21のサンギヤ21sと、上記のラビニヨ型の遊星歯車機構22のリングギヤ22rとの間に、それらサンギヤ21sとリングギヤ22rとを、選択的に一体回転するように連結するクラッチC2が設けられている。したがって、これらクラッチC1ならびにクラッチC2、および、上記のブレーキB1、ブレーキB2、ならびにブレーキB3によって、この発明におけるクラッチ機構8が構成されている。
上記の自動変速機3で各変速段を設定する際の各クラッチC1,C2および各ブレーキB1,B2,B3のそれぞれの係合状態を、図3の作動表を示してある。なお、この図3の作動表における「○」は、各クラッチC1,C2もしくは各ブレーキB1,B2,B3を係合させる状態を示し、「(○)」は、エンジンブレーキを作用させるために係合させる状態を示している。したがって、自動変速機3における各クラッチC1,C2および各ブレーキB1,B2,B3を、この図3の作動表の通りに係合もしくは開放させることにより、前進6段ならびに後進1段、およびニュートラルを設定することができる。
具体的には、この自動変速機3における前進段の第1速(1st)は、クラッチC1を係合させて、ワンウェイクラッチF1が係合することにより設定される。なお、ワンウェイクラッチF1は、リングギヤ22rの逆回転(エンジン1の回転とは反対方向の回転)を阻止するように係合しているので、これとは反対方向のトルクがリングギヤ22rに作用するとワンウェイクラッチF1は開放する。この場合は、リングギヤ22rに反力が作用しないことから、エンジンブレーキ力が生じない状態になる。そのため、エンジンブレーキを作用させる場合には、ブレーキB2を係合させるようになっている。
また、前進段の第2速(2nd)は、クラッチC1およびブレーキB1を共に係合させることにより設定される。また、前進段の第3速(3rd)は、クラッチC1およびブレーキB3を共に係合させることにより設定される。また、前進段の第4速(4th)は、クラッチC1およびクラッチC2を共に係合させることにより設定される。なお、この第4速は、上記のようにクラッチC1とクラッチC2とが同時に係合されて、シングルピニオン型の遊星歯車機構21のサンギヤ21sすなわち入力軸3aと、ラビニヨ型の遊星歯車機構22の第1サンギヤ22saと、ラビニヨ型の遊星歯車機構22のリングギヤ22rとが一体に回転する状態である。すなわち、ラビニヨ型の遊星歯車機構22の全体が一体となって回転し、その結果、自動変速機3の入力軸3aと出力軸3bとが同一の回転数で回転する状態である。したがって、この第4速が、変速比が1となるいわゆる直結段となっている。また、前進段の第5速(5th)は、クラッチC2およびブレーキB3を共に係合させることにより設定される。そして、前進段の第6速(6th)は、クラッチC2およびブレーキB1を共に係合させることにより設定される。一方、後進段(R)は、ブレーキB2およびブレーキB3を共に係合させることにより設定される。
そして、各クラッチC1,C2および各ブレーキB1,B2,B3を全て開放させることにより、この自動変速機3におけるニュートラル(N)の状態が設定される。なお、上記のように、この図2,図3で示す自動変速機3では、前進段および後進段の各変速段は必ず2つの係合装置が共に係合されることによって設定されるようになっている。したがって、各変速段を設定するための2つの係合装置のいずれか一方を開放させることにより、ニュートラルの状態を設定することができる。例えば、前進段の第1速から第4速は、いずれも、少なくともクラッチC1を開放させることにより設定される。また、前進段の第5速から第6速は、いずれも、少なくともクラッチC2を係合させることにより設定される。したがって、前進段の第1速から第4速のいずれかが設定されている場合は、いずれの場合もクラッチC1を開放させることにより、ニュートラルの状態を設定することができる。また、前進段の第5速から第6速のいずれかが設定されている場合は、いずれの場合もクラッチC2を開放させることにより、ニュートラルの状態を設定することができる。一方、後進段が設定されている場合は、ブレーキB2もしくはブレーキB3の少なくともいずれか一方を開放させることにより、ニュートラルの状態を設定することができる。
上記の自動変速機3における各クラッチC1,C2および各ブレーキB1,B2,B3などのクラッチ機構8や、トルクコンバータ4のロックアップクラッチ(図示せず)等の動作を制御するための油圧制御装置9が設けられている。この油圧制御装置9は、オイルポンプやアキュムレータ(いずれも図示せず)などを油圧発生源として、自動変速機3のクラッチ機構8やオイル供給部位、およびトルクコンバータ4のロックアップクラッチ等に、それぞれ、所定の油圧回路を介して接続されている。したがって、この油圧制御装置9によって供給および排出される油圧に基づいて、自動変速機3の変速制御、およびロックアップクラッチの係合および開放制御などがそれぞれ実行されるようになっている。
そして、上記で説明したようなエンジン1の運転状態や、自動変速機3におけるクラッチ機構8の係合および開放の状態を制御するための電子制御装置(ECU)10が設けられている。この電子制御装置10は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータや予め記憶しているデータに基づいて演算を行って制御指令信号を出力するように構成されている。具体的には、この電子制御装置10には、車両Veの各車輪の回転数を検出する車輪速センサ11、アクセルペダルの踏み込み角もしくは踏み込み量を検出するアクセルセンサ(アクセルスイッチ)12、ブレーキペダルの踏み込み角もしくは踏み込み量を検出するブレーキセンサ(ブレーキスイッチ)13、自動変速機3のシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ14、エンジン1の出力軸1aの回転数を検出するエンジン回転数センサ15、自動変速機3における各回転要素の回転数を検出するギヤ回転数センサ16、自動変速機3のクラッチ機構8に対して給排する油圧を検出する係合圧センサ17、および、エンジン1ならびに自動変速機3内のオイルの温度を検出する油温センサ18などの各種センサからの検出信号が入力されるようになっている。これに対して、電子制御装置10からは、エンジン1の運転状態を制御する信号、および、油圧制御装置9を介して自動変速機3におけるクラッチ機構8やロックアップクラッチの係合ならびに開放の状態を制御する信号などが出力されるように構成されている。
この発明では、上記のように構成された車両Veを制御の対象として、車両Veの燃費を向上させるために、走行中にクラッチ機構8を開放して車両Veを惰性走行させるいわゆる惰行制御を実行することができる。この発明における惰行制御とは、車両Veが所定の車速以上で走行している際に、例えばアクセルペダルの踏み込み量が0もしくは所定の操作量以下に戻された場合に、クラッチ機構8を開放して、すなわち自動変速機3でニュートラルの状態を設定して、エンジン1と駆動輪2との間の動力伝達経路を遮断する制御である。
上記のような惰行制御が実行されると、車両Veは、走行中にエンジン1と駆動輪2との間の動力伝達が遮断される。そのため、車両Veの駆動輪2には、エンジン1のポンピングロスや引き摺りトルクなどに起因する制動トルクが伝達されない状態になる。すなわち、車両Veにはいわゆるエンジンブレーキが掛からない状態になる。したがって、上記のような惰行制御を実行することにより、車両Veがその慣性エネルギーによって惰性走行し得る距離が長くなり、その結果、車両Veの単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなる。すなわち、車両Veの燃費が向上する。
なお、上記のような惰行制御を実行する際に、クラッチ機構8を開放するとともに、エンジン1の燃焼運転も停止することにより、車両Veの燃費を一層向上させることができる。ただし、エンジン1の燃焼運転を停止する場合は、オイルポンプやエアーコンディショナ用のコンプレッサなどの補機、および油圧式のパワーステアリングやブレーキ装置などを駆動するための動力源が失われることになる。そのため、エンジン1を停止させた際に対応する代替の動力源(例えば電動モータ)や油圧アキュムレータなどを別途用意する必要がある。これに対して、車両を惰性走行させる際にエンジン1を停止させない惰行制御では、その制御の実行中に上記のような補機やパワーステアリングあるいはブレーキ装置などの動力源が失われることがないので、特に新たな装置を設ける必要がない。そのため、従来の構成の車両を対象にして、惰行制御を容易に実行することができる。
前述したように、自動変速機3を搭載した車両Veを制御対象とした場合には、例えば自動変速機3の変速制御の実行中に惰行制御の実行判断が成立してクラッチ機構8の開放制御を実行する場合や、あるいはクラッチ機構8の開放制御の実行中に自動変速機3の変速制御の実行判断が成立した場合など、惰行制御におけるクラッチ機構8の開放制御と自動変速機3の変速制御とが重畳して実行される状況においては、従来の制御技術では自動変速機3の変速制御を適切に実行できない場合がある。そこで、この発明に係る制御装置は、変速制御の実行中に惰行制御の実行判断が成立した場合、あるいはクラッチ機構8の開放制御の実行中に変速制御の実行判断が成立した場合には、その際の変速の状況に応じて、クラッチ機構8の開放制御および自動変速機3の変速制御の実行タイミングを適宜に設定して実行するように構成されている。
その制御の一例を図4のフローチャートに示してある。このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図4のフローチャートにおいて、先ず、惰行制御におけるクラッチ開放制御が実行中であるか否かが判断される(ステップS1)。クラッチ開放制御が実行中であることにより、このステップS1で肯定的に判断された場合は、ステップS2へ進む。そして、変速判断があるか否かが判断される。すなわち、車速に基づいて、自動変速機3で現在設定されている変速段を他の変速段に変速する必要があるか否かが判断される。
例えば、車両Veが惰行制御の実行中にほぼ一定の車速で惰性走行していることから、未だ変速判断がないことにより、このステップS2で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、例えば、惰行制御の実行中に、自動変速機3でダウンシフトが必要になる程度に車速が低下した場合、あるいは自動変速機3でアップシフトが必要になる程度に車速が増加した場合などのように、変速判断があったことにより、ステップS2で肯定的に判断された場合には、ステップS3へ進む。そして、この場合の変速が、直結段よりも1速以上高速段側の変速段から直結段以下の低速段側の変速段へのダウンシフトであるか否か、もしくは、直結段以下の低速段側の変速段から直結段よりも1速以上高速段側へのアップシフトであるか否かが判断される。具体的には、この図2,図3で示す自動変速機3の場合、直結段である前進第4速よりも1速以上高速段側すなわち前進第5速もしくは前進第6速から前進第4速以下の変速段へのダウンシフトであるか否か、もしくは、前進第4速以下の変速段から前進第5速もしくは前進第6速へのアップシフトであるか否かが判断される。
現在の変速が、例えば、前進第5速もしくは前進第6速から前進第4速以下の変速段へのダウンシフト、および、前進第4速以下の変速段から前進第5速もしくは前進第6速へのアップシフトのいずれでもないことにより、このステップS3で否定的に判断された場合は、ステップS4へ進む。そして、その場合の変速指示が出力され、その後、速やかに変速制御が実行される。
この場合の具体例として、前進第4速から前進第3速へのダウンシフトの例を、図5のタイムチャートに示してある。図5において、時刻t11で惰行制御の開始指令が出力されことに伴い、クラッチC1のクラッチ開放制御が開始される。クラッチC1のクラッチ開放制御が実行され、その後、時刻t12で、変速制御の開始指令が出力され、前進第4速から前進第3速へのダウンシフトのための変速制御が直ちに実行される。そして、時刻t13で、クラッチC1の係合圧が所定の油圧以下になることによりクラッチC1の開放判定が成立すると、クラッチC2とブレーキB3との係合および開放状態が即座に切り替えられる。なお、クラッチC1は、クラッチ開放制御が実行された後には、復帰に備えて所定の一定油圧を作用させた状態で待機させられている。
また、図6のタイムチャートには、前進第3速から前進第4速へのアップシフトの例を示してある。図6において、時刻t21で惰行制御の開始指令が出力されことに伴い、クラッチC1のクラッチ開放制御が開始される。クラッチC1のクラッチ開放制御が実行され、その後、時刻t22で、変速制御の開始指令が出力され、前進第3速から前進第4速へのアップシフトのための変速制御が直ちに実行される。そして、時刻t23で、クラッチC1の係合圧が所定の油圧以下になることによりクラッチC1の開放判定が成立すると、ブレーキB3とクラッチC2との係合および開放状態が即座に切り替えられる。なお、クラッチC1は、クラッチ開放制御が実行された後には、復帰に備えて所定の一定油圧を作用させた状態で待機させられている。
上記のように、惰行制御の実行に伴うクラッチ機構8のクラッチ開放制御中に変速指示が出力されると、その変速が、直結段よりも1速以上高速段側の変速段から直結段以下の低速段側の変速段へのダウンシフト、および、直結段以下の低速段側の変速段から直結段よりも1速以上高速段側の変速段へのアップシフトのいずれでもない場合には、直ちに変速制御が実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、現在の変速が、例えば、前進第5速もしくは前進第6速から前進第4速以下の変速段へのダウンシフトである、もしくは、前進第4速以下の変速段から前進第5速もしくは前進第6速へのアップシフトであることにより、ステップS3で肯定的に判断された場合には、ステップS5へ進む。そして、変速指示の出力が禁止され、変速制御の実行が遅延させられる。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。これは、この時点においては変速制御の実行を禁止し、後述するように惰行制御におけるクラッチ開放制御が終了した後に、変速制御を実行するための制御である。具体的には、後述するステップS6で、惰行制御におけるクラッチ開放制御が終了した時点であることにより肯定的に判断された場合には、ステップS11へ進み、上記のステップS5で禁止されていた変速指示が出力される。すなわち、遅延させられていた変速制御が、惰行制御におけるクラッチ開放制御が終了した後に実行される。そしてその後、ステップS7へ進む。この場合、ステップS7では否定的に判断されることになるため、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
この場合の具体例として、前進第5速から前進第4速へのダウンシフトの例を、図7のタイムチャートに示してある。図7において、時刻t31で惰行制御の開始指令が出力されことに伴い、クラッチC2のクラッチ開放制御が開始される。クラッチC2のクラッチ開放制御が実行され、その後、時刻t32で変速判断が成立するが、この場合は変速指示の出力が禁止されているため、直ちには変速は実行されない。そして、クラッチC2のクラッチ開放制御の終了が判定される時刻t33で、変速指示が出力され、“即切り替え”による前進第5速から前進第4速へのダウンシフトが実行される。具体的には、ブレーキB3が開放させられるとともに、クラッチC1が復帰に備えて所定の一定油圧を作用させた状態で待機させられる。なお、ここで“即切り替え”とは、自動変速機3で変速のために所定の係合装置の係合圧を制御する際に、係合ショックを抑制するために油圧を徐々に変化させる油圧の徐変制御を実行せずに、直ちに所定の係合装置を作動させて変速を行うことである。
また、図8のタイムチャートには、前進第4速から前進第5速へのアップシフトの例を示してある。図8において、時刻t41で惰行制御の開始指令が出力されことに伴い、クラッチC1のクラッチ開放制御が開始される。クラッチC1のクラッチ開放制御が実行され、その後、時刻t42で変速判断が成立するが、この場合も変速指示の出力が禁止されているため、直ちには変速は実行されない。そして、クラッチC1のクラッチ開放制御の終了が判定される時刻t43で、変速指示が出力され、“即切り替え”による前進第4速から前進第5速へのアップシフトが実行される。具体的には、クラッチC2がクラッチ開放制御されて復帰に備えて所定の一定油圧を作用させた状態で待機させられるとともに、ブレーキB3が係合させられる。
上記のように、惰行制御の実行に伴うクラッチ機構8のクラッチ開放制御中に変速指示が出力されると、その際の変速が、直結段よりも1速以上高速段側の変速段から直結段以下の低速段側の変速段へのダウンシフト、または、直結段以下の低速段側の変速段から直結段よりも1速以上高速段側へのアップシフトのいずれかである場合には、クラッチ機構8のクラッチ開放制御が終了するまで、変速制御の実行が遅延させられる。そして、その変速制御が遅延させられた後に実行されると。その後、このルーチンを一旦終了する。
一方、惰行制御におけるクラッチ開放制御が実行中ではないことにより、前述のステップS1で否定的に判断された場合には、ステップS6へ進む。そして、その惰行制御におけるクラッチ開放制御が終了した時点であるか否かが判断される。
惰行制御におけるクラッチ開放制御が終了した時点でないこと、すなわち、未だ惰行制御におけるクラッチ開放制御が実行されていないことにより、ステップS6で否定的に判断された場合には、ステップS7へ進む。そして、惰行制御の開始条件(もしくは実行条件)が成立したか否かが判断される。未だ惰行制御の開始条件が成立していないことにより、このステップS7で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、惰行制御の開始条件が成立したことにより、ステップS7で肯定的に判断された場合には、ステップS8へ進む。そして、変速中であるか否か、すなわち、自動変速機3の変速制御が実行中であるか否かが判断される。
変速中ではないこと、すなわち、自動変速機3の変速制御が実行中ではないこと、もしくは、自動変速機3の変速制御が終了したことにより、このステップS8で否定的に判断された場合は、ステップS9へ進む。そして、惰行制御におけるクラッチ開放制御が実行される。すなわち、この場合は、特に変速制御との兼ね合い等を考慮することなく、通常通りに惰行制御におけるクラッチ開放制御が実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、変速中であること、すなわち、自動変速機3で変速制御が実行されていることにより、ステップS8で肯定的に判断された場合には、ステップS10へ進む。そして、この場合の変速が、直結段よりも1速以上高速段側の変速段から直結段以下の低速段側の変速段へのダウンシフトであるか否か、または、直結段未満の低速段側の変速段から直結段よりも1速以上高速段側の変速段へのアップシフトであるか否かが判断される。具体的には、この図2,図3で示す自動変速機3の場合、直結段である前進第4速よりも1速以上高速段側すなわち前進第5速もしくは前進第6速から前進第4速以下の変速段へのダウンシフトであるか否か、または、前進第4速未満の変速段から前進第5速もしくは前進第6速へのアップシフトであるか否かが判断される。
現在の変速が、例えば、前進第5速もしくは前進第6速から前進第4速以下の変速段へのダウンシフト、および、前進第4速未満の変速段から前進第5速もしくは前進第6速へのアップシフトのいずれでもないことにより、このステップS10で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、現在の変速が、例えば、前進第5速もしくは前進第6速から前進第4速以下の変速段へのダウンシフトである、または、前進第4速未満の変速段から前進第5速もしくは前進第6速へのアップシフトであることにより、このステップS10で肯定的に判断された場合は、前述のステップS9へ進む。そして、従前と同様に、惰行制御におけるクラッチ開放制御が実行される。すなわち、この場合は上記のような変速制御の実行中に、惰行制御が開始される。
この場合の具体例として、前進第5速から前進第4速へのダウンシフトの例を、図9のタイムチャートに示してある。図9において、時刻t51で変速制御の開始指令が出力され、この場合の変速制御が開始される。具体的には、ブレーキB3の係合圧が、一旦、即座に排圧される。その後、ブレーキB3は、半係合状態となる所定の油圧を作用させた状態に維持された後に、係合圧が徐々に低下させられる。一方、クラッチC1は、前進第4速を形成するために係合圧が増大させられるが、その変速制御の途中の時刻t52で、惰行制御におけるクラッチ開放制御が実行されることにより、完全に係合状態にされることなく、惰行制御を実行するためにほぼ開放状態で維持されることになる。そして、その後の惰行制御からの復帰に備えて所定の一定油圧を作用させた状態で待機させられている。
上記のようにクラッチC1は、本来は前進第4速を形成するために係合される係合装置であるが、この場合は、惰行制御の開始条件が成立しているため、惰行制御におけるクラッチ開放制御によって開放されることになる。したがって、この場合に仮にクラッチC1を変速制御のために係合させると、図9のタイムチャートにおいて破線で示すように、クラッチC1は、係合のために一旦係合圧が増大させられるものの、その後のクラッチ開放制御によって直ぐに再び開放させられることになる。このようなクラッチC1の一時的な係合および開放の動作は、結果的に無駄な仕事となる。そこで、この発明では、上記のような直結段よりも1速以上高速段側の変速段から直結段以下の低速段側の変速段へのダウンシフト、または、直結段未満の低速段側の変速段から直結段よりも1速以上高速段側へのアップシフトの実行中に、惰行制御の開始判断が成立した場合には、惰行制御の実行を許可し、直ちにクラッチ開放制御を開始するように構成されている。そのため、変速制御とクラッチ開放制御との両方で制御の対象となる係合装置(図9の例ではクラッチC1)が、短時間の内に係合と開放とが連続して実行されるような無駄な仕事の発生を抑制することができる。
また、図10のタイムチャートには、前進第3速から前進第5速へのアップシフトの例を示してある。図10において、時刻t61で変速制御の開始指令が出力され、この場合の変速制御が開始される。具体的には、クラッチC1の係合圧が、一旦、即座に排圧される。その後、クラッチC1は、半係合状態となる所定の油圧を作用させた状態に維持された後に、係合圧が徐々に低下させられる。一方、クラッチC2は、前進第5速を形成するために係合圧が増大させられるが、その変速制御の途中の時刻t62で、惰行制御におけるクラッチ開放制御が実行されることにより、完全に係合状態にされることなく、惰行制御を実行するためにほぼ開放状態で維持されることになる。そして、その後の惰行制御からの復帰に備えて所定の一定油圧を作用させた状態で待機させられている。
この場合も前述の図9の例と同様に、クラッチC2は、本来は前進第3速を形成するために係合される係合装置であるが、この場合は、惰行制御の開始条件が成立しているため、惰行制御におけるクラッチ開放制御によって開放されることになる。したがって、この場合に仮にクラッチC2を変速制御のために係合させると、図10のタイムチャートにおいて破線で示すように、クラッチC2は、係合のために一旦係合圧が増大させられるものの、その後のクラッチ開放制御によって直ぐに再び開放させられることになる。すなわち、クラッチC2で無駄な仕事が行われることになる。そこで、この発明では、上記のような直結段よりも1速以上高速段側の変速段から直結段以下の低速段側の変速段へのダウンシフト、または、直結段未満の低速段側の変速段から直結段よりも1速以上高速段側へのアップシフトの実行中に、惰行制御の開始判断が成立した場合には、惰行制御の実行を許可し、直ちにクラッチ開放制御を開始するように構成されている。そのため、変速制御とクラッチ開放制御との両方で制御の対象となる係合装置(図10の例ではクラッチC2)が、短時間の内に係合と開放とが連続して実行されるような無駄な仕事の発生を抑制することができる。
上記のように、変速制御の実行中に惰行制御の開始が判断されると、その際の変速が、直結段よりも1速以上高速段側の変速段から直結段以下の低速段側の変速段へのダウンシフト、または、直結段未満の低速段側の変速段から直結段よりも1速以上高速段側の変速段へのアップシフトのいずれかである場合には、変速制御の途中であっても、その変速制御の終了を待つことなく、惰行制御におけるクラッチ開放制御が実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、現在の変速が、例えば、前進第4速から前進第4速未満の変速段へのダウンシフトである、または、前進第4速未満の変速段から前進第4速へのアップシフトであることにより、ステップS10で否定的に判断された場合には、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。その後、このルーチンが再び開始され、前述のステップS8で否定的に判断されるまで、上記の制御が繰り返し実行される。すなわち、この場合は、上記のような変速制御が終了した後に、惰行制御が開始される。
この場合の具体例として、前進第4速から前進第3速へのダウンシフトの例を、図11のタイムチャートに示してある。図11において、時刻t71で変速制御の開始指令が出力され、前進第4速から前進第3速へのダウンシフトが実行される。具体的には、クラッチC2の係合圧が、一旦、即座に排圧される。その後、クラッチC2は、半係合状態となる所定の油圧を作用させた状態に維持された後に、係合圧が徐々に低下させられる。一方、ブレーキB3は、前進第3速を形成するために、一旦、即座に係合圧が増大させられ、その後、係合圧が徐々に増大させられる。
そして、上記のような変速制御の途中の時刻t72で、惰行制御におけるクラッチ開放制御の開始指令が出力されると、この場合、クラッチ開放制御は直ちには実行されず、上記の変速制御の終了が判定された時刻t73で、惰行制御におけるクラッチ開放制御が開始される。具体的には、クラッチC1が開放制御されて、クラッチC1の係合圧が排圧される。その後、クラッチC1は、惰行制御からの復帰に備えて所定の一定油圧を作用させた状態で待機させられている。
また、図12のタイムチャートには、前進3速から前進4速へのアップシフトの例を示してある。図12において、時刻t81で変速制御の開始指令が出力され、前進第3速から前進第4速へのアップシフトが実行される。具体的には、ブレーキB3の係合圧が、一旦、即座に排圧される。その後、ブレーキB3は、半係合状態となる所定の油圧を作用させた状態に維持された後に、係合圧が徐々に低下させられる。一方、クラッチC2は、前進第4速を形成するために、一旦、即座に係合圧が増大させられ、その後、係合圧が徐々に増大させられる。
そして、上記のような変速制御の途中の時刻t82で、惰行制御におけるクラッチ開放制御の開始指令が出力されると、この場合も、クラッチ開放制御は直ちには実行されず、上記の変速制御の終了が判定された時刻t83で、惰行制御におけるクラッチ開放制御が開始される。具体的には、クラッチC1が開放制御されて、クラッチC1の係合圧が排圧される。その後、クラッチC1は、惰行制御からの復帰に備えて所定の一定油圧を作用させた状態で待機させられている。
上記のように、この発明では、上記のような直結段よりも1速以上高速段側の変速段から直結段以下の低速段側の変速段へのダウンシフト以外、および、直結段未満の低速段側の変速段から直結段よりも1速以上高速段側へのアップシフト以外の変速制御の実行中に、惰行制御の開始判断が成立した場合には、その場合の変速制御が終了するのを待った後に、惰行制御におけるクラッチ開放制御を開始するように構成されている。そのため、惰行制御におけるクラッチ開放制御と自動変速機3の変速制御とが重畳して実行される状況を回避することができる。
そして、惰行制御におけるクラッチ開放制御が終了した時点であることにより、前述のステップS6で肯定的に判断された場合は、ステップS11へ進む。そして、前述のステップS5で禁止されていた変速指示が出力される。すなわち、遅延させられていた変速制御が、惰行制御におけるクラッチ開放制御が終了した後に実行される。そしてその後、ステップS7へ進む。この場合、ステップS7では否定的に判断されることになるため、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
なお、この発明で制御の対象とする車両Veに搭載される自動変速機3は、上述した図2,図3で示した構成のもの以外に、例えば、次の図13,図14に示すような前進段8速の自動変速機を制御対象にすることもできる。その構成を簡単に説明すると、この図13に示す自動変速機3は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構31、ラビニヨ型の遊星歯車機構32、ワンウェイクラッチF10、および、この発明におけるクラッチ機構8を形成するクラッチC10、クラッチC20、クラッチ30、クラッチC40、ブレーキB10、ならびにブレーキB20によって構成されている。そして、それら各クラッチC10,C20,C30,C40、および各ブレーキB10,B20の係合および開放状態をそれぞれ制御することにより、前進段8速および後進段1速を設定することが可能なように構
成されている。
図13に示す構成の自動変速機3で各変速段を設定する際の各クラッチC10,C20,C30,C40および各ブレーキB10,B20のそれぞれの係合状態を、図14の作動表を示してある。したがって、図13に示す構成の自動変速機3における各クラッチC10,C20,C30,C40および各ブレーキB10,B20を、この図14の作動表の通りに係合もしくは開放させることにより、前進8段ならびに後進1段、およびニュートラルを設定することができる。
具体的には、この図13に示す構成の自動変速機3における前進段の第1速(1st)は、クラッチC10を係合させて、ワンウェイクラッチF10が係合することにより設定される。なお、エンジンブレーキを作用させる場合には、ブレーキB20を係合させるようになっている。また、前進段の第2速(2nd)は、クラッチC10およびブレーキB10を共に係合させることにより設定される。また、前進段の第3速(3rd)は、クラッチC10およびクラッチC30を共に係合させることにより設定される。また、前進段の第4速(4th)は、クラッチC10およびクラッチC40を共に係合させることにより設定される。また、前進段の第5速(5th)は、クラッチC10およびクラッチC20を共に係合させることにより設定される。なお、この第5速は、上記のようにクラッチC10とクラッチC20とが同時に係合されて、ダブルピニオン型の遊星歯車機構31およびラビニヨ型の遊星歯車機構22の全体が一体となって回転し、その結果、自動変速機3の入力軸3aと出力軸3bとが同一の回転数で回転する状態である。したがって、この第5速が、変速比が1となるいわゆる直結段となっている。また、前進段の第6速(6th)は、クラッチC20およびクラッチC40を共に係合させることにより設定される。また、前進段の第7速(7th)は、クラッチC20およびクラッチC30を共に係合させることにより設定される。そして、前進段の第8速(8th)は、クラッチC20およびブレーキB10を共に係合させることにより設定される。一方、後進段(R)は、クラッチC40およびブレーキB20を共に係合させることにより設定される。
そして、各クラッチC10,C20,C30,C40および各ブレーキB10,B20を全て開放させることにより、この図13に示す構成の自動変速機3におけるニュートラル(N)の状態が設定される。なお、上記のように、この図13,図14で示す自動変速機3では、前進段および後進段の各変速段は必ず2つの係合装置が共に係合されることによって設定されるようになっている。したがって、各変速段を設定するための2つの係合装置のいずれか一方を開放させることにより、ニュートラルの状態を設定することができる。例えば、前進段の第1速から第5速は、いずれも、少なくともクラッチC10を係合させることにより設定される。また、前進段の第6速から第8速は、いずれも、少なくともクラッチC20を係合させることによりニュートラルの状態が設定される。したがって、前進段の第1速から第5速のいずれかが設定されている場合は、いずれの場合もクラッチC10を開放させることにより、ニュートラルの状態を設定することができる。また、前進段の第6速から第8速のいずれかが設定されている場合は、いずれの場合もクラッチC20を開放させることにより、ニュートラルの状態を設定することができる。一方、後進段が設定されている場合は、クラッチC40もしくはブレーキB20の少なくともいずれか一方を開放させることにより、ニュートラルの状態を設定することができる。
以上のように、この発明に係る車両の制御装置によれば、車両Veの走行中にアクセル操作量が0もしくは所定の操作量以下に戻されると、エンジン1がアイドリング状態で運転されるとともに、自動変速機3がニュートラル状態にされてエンジン1と駆動輪2との間の動力伝達経路が遮断される。すなわち、惰行制御が実行され、車両Veが惰性走行させられる。その結果、エンジン1に負荷が掛からない状態での車両Veの走行距離を伸ばすことができ、運動エネルギを有効に活用して車両Veの燃費を向上させることができる。
そして、この発明に係る車両の制御装置では、自動変速機3において変速制御が実行されている際に、惰行制御の実行条件が成立した場合には、自動変速機3の変速制御が終了するのを待って、惰行制御が開始される。そのため、惰行制御におけるクラッチ開放制御と自動変速機3の変速制御とが重畳して実行されることを回避でき、その結果、惰行制御および自動変速機の変速制御を適切に実行することができる。
また、変速制御により開放状態から係合状態に制御される係合装置と、惰行制御におけるクラッチ開放制御により開放状態に制御される係合装置とが同一のものである場合には、変速制御が終了するのを待つことなく、直ちにクラッチ開放制御が実行される。そのため、変速制御とクラッチ開放制御とにより、同一の係合装置が短時間の内に係合させられた後に直ぐに開放されるような無駄な仕事が行われることを回避もしくは抑制することができる。
そして、惰行制御におけるクラッチ開放制御の実行中に変速の判断が成立した場合には、直ちに変速制御が実行される、すなわち、クラッチ開放制御と変速制御とが同時に実行される。そのため、クラッチ開放制御と変速制御とが分かれて実行されることにより係合装置の制御時間が増長してしまうことを回避もしくは抑制することができる。
上記のようにクラッチ開放制御と変速制御とを同時に実行する場合、クラッチ機構が開放されていることにより、変速制御を通常とおり適切に実行できないケースがある。それに対しては、例えば惰行制御におけるクラッチ開放制御により開放状態に制御中の係合装置と、変速制御により係合状態から開放状態に制御される係合装置とが同一のものである場合には、クラッチ開放制御が終了するのを待って、変速制御が実行される。そのため、クラッチ開放制御と自動変速機の変速制御とが重畳して実行されることを回避でき、その結果、惰行制御および自動変速機の変速制御を適切に実行することができる。