まず、本実施例に係るトルクコンバータ及び自動変速装置が適用される車両の概略構成について、図1を用いて説明する。図1は、車両の概略構成を示す模式図である。
本実施例に係る車両1には、駆動輪9を駆動するための原動機として内燃機関5が搭載されている。内燃機関5は、図示しない燃料噴射装置、点火装置、及びスロットル弁装置を備えており、これら装置は、自動変速装置10と共に、電子制御装置80(以下、ECUと記す)により制御される。これによりECU80は、内燃機関5が発生する機械的動力を調整することが可能となっている。内燃機関5が発生した機械的動力は、クランク軸6から出力される。なお、内燃機関5には、クランク軸6の回転角位置(以下、クランク角と記す)を検出する図示しないクランク角センサが設けられており、クランク角に係る信号をECU80に送出している。
また、車両1には、運転者のアクセル操作量を検出するアクセルポジションセンサ(図示せず)が設けられており、検出したアクセル操作量に係る信号をECU80に送出している。また、駆動輪9を含む車輪の近傍には、車両1の速度(以下、車速と記す)を検出する車速センサが設けられており、車速に係る信号をECU80に送出している。
また、車両1には、運転者により選択された走行レンジを検出するシフトポジションセンサ(図示せず)が設けられている。走行レンジには、主に駐車時に用いられ変速機50を機械的にロックして駆動輪9が回転しない状態にするPレンジと、変速機50に後進の変速段を選択させて車両1の後進走行を可能にするRレンジと、変速機50を中立状態すなわち原動機からの機械的動力を駆動輪9に伝達させない状態にするNレンジと、変速機50に前進の変速段を選択させて車両1の前進走行を可能にするDレンジなどがある。シフトポジションセンサは、運転者により選択された走行レンジに係る信号をECU80に送出している。
また、車両1には、内燃機関5(原動機)からの機械的動力を駆動輪9に伝達する動力伝達装置として、回転速度を変速してトルクを変化させる自動変速装置10と、自動変速装置10からの機械的動力を左右の駆動軸9dに分配する差動装置8が設けられている。自動変速装置10は、主にトルクコンバータ20と、変速機50から構成されている。トルクコンバータ20の各クラッチC1〜C3と変速機50の各ブレーキBR,B1〜B6の動作は、ECU80により制御される。本実施例において、ECU80は、自動変速装置10に含まれている。自動変速装置10の詳細については後述する。原動機としての内燃機関5のクランク軸6には、自動変速装置10の入力軸12、すなわちトルクコンバータ20の入力軸12が結合されている。
一方、自動変速装置10の出力軸60、すなわち変速機50の出力軸60には、変速機50からの機械的動力を差動装置8に伝達する推進軸7が結合されている。推進軸7に結合されたドライブピニオンギア8dには、差動装置8のリングギア8rが噛み合っている。内燃機関5からの機械的動力は、自動変速装置10により回転速度とトルクを変化させて差動装置8に伝達され、差動装置8により左右の駆動軸9dに分配されて駆動輪9を駆動することとなる。
次に、本実施例に係るトルクコンバータ及び自動変速装置の構成について、図2を用いて説明する。図2は、自動変速装置の構成を示す模式図である。
自動変速装置10は、図2に示すように、クラッチC1〜C3を備えたトルクコンバータ20と、ブレーキBR,B1〜B5を備えた変速機50から構成されている。トルクコンバータ20と変速機50は、2つの伝達軸すなわち第1伝達軸31と第2伝達軸32で結合されている。入力軸12からの機械的動力は、第1伝達軸31又は第2伝達軸32により変速機50に伝達される。
変速機50は、前進に第1速ギア段41から第6速ギア段46までの6つの変速段41〜46を有し、且つ後進に1つの変速段40を有している。前進の第1速ギア段41〜第6速ギア段46は、それぞれ単一式の遊星歯車機構で構成されており、後進の変速段40(以下、後進ギア段と記す)は、ダブルピニオン式の遊星歯車機構で構成されている。すなわち、変速機50は、7組の遊星歯車機構を有している。変速機50において、各変速段40〜46に対応する遊星歯車機構は、その軸心が一致するよう一列を成して構成されている。
各変速段40〜46のプラネタリピニオンギア40i,40e,41p〜46pを、それぞれ支持するキャリア40c〜46c(以下、単に「キャリア」と記す)は、互いに結合されている。加えて、各キャリア40c〜46cは、自動変速装置10の出力軸60に結合されている。つまり、各変速段40〜46のキャリアは、自動変速装置10の出力軸60と一体に回転することとなる。
第1速ギア段41、第3速ギア段43、第5速ギア段45、及び後進ギア段40のサンギア41s,43s,45s,40sは、第1伝達軸31に結合されている。つまり、第1速ギア段41、第3速ギア段43、第5速ギア段45、及び後進ギア段40は、原動機が出力した機械的動力を第1伝達軸31から受けることが可能となっている。一方、第2速ギア段42、第4速ギア段44、及び第6速ギア段46のサンギア42s,44s,46sは、第2伝達軸32に結合されており、原動機からの機械的動力を、第2伝達軸32から受けることが可能となっている。
このように変速機50が有する複数の変速段40〜46は、サンギアが第1伝達軸31に結合されている第1群の変速段51と、第2伝達軸32に結合されている第2群の変速段52の、いずれかに区分することができる。本実施例において、第1群の変速段51は、第1速ギア段41、第3速ギア段43、第5速ギア段45、及び後進ギア段40という奇数段で構成されており、一方、第2群の変速段52は、第2速ギア段42、第4速ギア段44、第6速ギア段46という偶数段で構成されている。
変速機50の各変速段40〜46には、それぞれリングギア40r〜46rの回転を止めるためのブレーキBR,B1〜B6が設けられている。各ブレーキBR,B1〜B6は、これを係合状態にすることで、それぞれリングギア40r〜46rと変速機50のハウジング(図示せず)を係合させて、リングギア40r〜46rの回転を止めることができる。第1群の変速段51、例えば第1速ギア段41は、対応するブレーキB1を係合状態にしてリングギア41rの回転を止めることで、第1伝達軸31からサンギア41sに受けた機械的動力を、回転速度を減速してトルクを増大させてキャリア41cから出力軸60に伝達することができる。
一方、第2群の変速段52のうち、例えば、第2速ギア段42は、対応するブレーキB2を係合状態にしてリングギア42rの回転を止めることで、第2伝達軸32からサンギア42sに受けた機械的動力を、キャリア42cから出力軸60に伝達することが可能となっている。内燃機関5からの機械的動力は、後述するトルクコンバータ20を介して、第1伝達軸31又は第2伝達軸32に伝達される。
本実施例に係るトルクコンバータ20は、ポンプインペラ22とタービンランナ24とステータ26から構成されている流体伝動装置であり、ポンプインペラ22は、入力軸12に結合されており、ステータ26は、ワンウェイクラッチ27を介してトルクコンバータ20のハウジング(図示せず)に結合されている。トルクコンバータ20のタービンランナ24は、後述する第3クラッチC3を介して第1伝達軸31に機械的動力を伝達可能に構成されている。
トルクコンバータ20には、入力軸12と第1伝達軸31との間に介在して、ポンプインペラ22が結合された入力軸12と第1伝達軸31とを係合させる係合要素として、第1クラッチC1が設けられている。第1クラッチC1を係合状態にして入力軸12と第1伝達軸31を係合させることで、入力軸12が受けた内燃機関5からの機械的動力を、ポンプインペラ22とタービンランナ24の間にある自動変速装置10用のフルード(以下、単に「フルード」と記す)を介することなく直接的に、第1伝達軸31に伝達することが可能となっている。入力軸12から第1伝達軸31に伝達された機械的動力は、第1群の変速段51のうちブレーキが係合状態にある変速段に伝達されることとなる。
また、トルクコンバータ20には、入力軸12と第2伝達軸32との間に介在して、ポンプインペラ22が結合された入力軸12と第2伝達軸32とを係合させる係合要素として、第2クラッチC2が設けられている。第2クラッチC2を係合状態にして入力軸12と第2伝達軸32を係合させることで、入力軸12が受けた内燃機関5からの機械的動力を、ポンプインペラ22とタービンランナ24の間にあるフルードを介することなく直接的に、第2伝達軸32に伝達することが可能となっている。入力軸12から第2伝達軸32に伝達された機械的動力は、第2群の変速段52のうちブレーキが係合状態にある変速段に伝達されることとなる。
また、トルクコンバータ20には、タービンランナ24と第1伝達軸31との間に介在して、タービンランナ24と第1伝達軸31を係合させる係合要素として、第3クラッチC3が設けられている。上述の第1クラッチC1を解放状態にすると共に第3クラッチC3を係合状態にしてタービンランナ24と第1伝達軸31を係合させることで、入力軸12が受けた内燃機関5からの機械的動力を、ポンプインペラ22とタービンランナ24の間にあるフルードを介してトルク変動を減衰して、第1伝達軸31に伝達することが可能となっている。
このとき、トルクコンバータ20の速度比(第1伝達軸31の回転速度/入力軸12の回転速度)が所定のカップリングポイント以下の領域(トルクコンバータ20領域)にある場合、トルクコンバータ20は、入力軸12が受けた機械的動力を、回転速度を減速しトルクを増大して、第1伝達軸31に伝達することができる。
このように第3クラッチC3は、タービンランナ24からの機械的動力を第1伝達軸31に伝達する動力伝達手段として機能することとなる。なお、タービンランナ24と第1伝達軸31は、第3クラッチC3を介さずに、直接的に結合することで動力伝達手段を構成するものとしても良い。
トルクコンバータ20は、第3クラッチC3を係合状態にすると共に、第1クラッチC1を解放状態にすることで、入力軸12からポンプインペラ22に伝達された機械的動力を、タービンランナ24で受けて、タービンランナ24から第1伝達軸31に伝達することができる。また、トルクコンバータ20は、第3クラッチC3を係合状態にすると共に、第2クラッチC2を解放状態にすることで、入力軸12からポンプインペラ22に伝達された機械的動力を、タービンランナ24で受けて、タービンランナ24から第2伝達軸32に伝達することができる。
これら第1〜第3クラッチC1,C2,C3は、ポンプインペラ22、タービンランナ24を収容しフルードが充填されている図示しないハウジング内に設けられている。このため、第1〜第3クラッチC1,C2,C3は、常時フルードに曝されており、係合動作により発熱しても当該フルードにより冷却されることとなる。また、第1〜第3クラッチC1,C2,C3は、自動変速装置10において、トルクコンバータ20に対して、入力軸12の軸方向の内燃機関5側に設けられている。これにより、自動変速装置10の入力軸12の慣性モーメントを極力小さなものにしている。
このように構成されたトルクコンバータ20は、第2クラッチC2を係合状態にすると共に、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を解放状態にすることで、入力軸12から受けた機械的動力を、そのまま第2伝達軸32に出力することができる。これにより、自動変速装置10は、第2伝達軸32にサンギアが噛み合う第2群の変速段52、すなわち第2速ギア段42、第4速ギア段44、第6速ギア段46のうち、いずれかの変速段を用いて、入力軸12からの回転を変速して出力軸60に出力することが可能となる。この場合、トルクコンバータ20のポンプインペラ22とタービンランナ24を介することがないので、入力軸12から出力軸60に伝達される機械的動力に損失が生じることを極力抑制することができる。
また、トルクコンバータ20は、第1クラッチC1を係合状態にすると共に第2クラッチC2を解放状態にすることで、入力軸12から受けた機械的動力を、そのまま第1伝達軸31に出力することができる。これにより、自動変速装置10は、第1伝達軸31にサンギアが噛み合う第1群の変速段51、すなわち第1速ギア段41、第3速ギア段43、第5速ギア段45、後進ギア段40のうち、いずれかの変速段を用いて、入力軸12からの回転を変速して出力軸60に出力することが可能となる。この場合も、トルクコンバータ20のポンプインペラ22とタービンランナ24を介することがなく、入力軸12から出力軸60に伝達される機械的動力に損失が生じることを抑制することができる。
また、トルクコンバータ20は、第3クラッチC3を係合状態にすると共に、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を解放状態にすることで、入力軸12から受けた機械的動力を、ポンプインペラ22とタービンランナ24を介して第1伝達軸31に出力することができる。これにより、自動変速装置10は、第1群の変速段51、すなわち第1速ギア段41、第3速ギア段43、第5速ギア段45、及び後進ギア段40のうちいずれかの変速段を用いて、入力軸12からの回転を変速して出力軸60に出力することが可能となる。この場合、入力軸12からの機械的動力を、ポンプインペラ22とタービンランナ24の間でトルク変動を減衰して出力軸60に伝達することができる。このため、特に、第1速ギア段41及び後進ギア段40を用いて車両1を発進させる場合に有用である。また、ポンプインペラ22とタービンランナ24の間でトルクが増大するため、第3速ギア段43及び第5速ギア段45を用いて車両1を加速させる場合にも有用である。
以上のように構成された車両1において、自動変速装置10を制御する制御手段であるECU80は、内燃機関5に設けられたクランク角センサからのクランク角に係る信号と、アクセルポジションセンサからのアクセル操作量に係る信号と、シフトポジションセンサからの走行レンジに係る信号と、車速センサからの車速に係る信号とを受けている。ECU80は、検出されたクランク角から内燃機関5のクランク軸6の回転速度(以下、機関回転速度と記す)を算出しており、内燃機関5が発生する出力を調整する。これと共に、ECU80は、検出されたアクセル操作量、検出された車速、選択された走行レンジ、及び所定のシフトスケジュールに基づいて、自動変速装置10で変速に用いる変速段を選択する。
ECU80は、選択した変速段に基づいて、自動変速装置10のトルクコンバータ20と変速機50の動作を制御する。例えば、運転者によりDレンジが選択された場合、ECU80は、アクセル操作量、車速、及びシフトスケジュールに基づいて、前進の変速段(第1速ギア段〜第6速ギア段)のうちいずれかの変速段を選択し、この変速段で変速されるよう、トルクコンバータ20に設けられた各クラッチC1〜C3の係合状態と、変速機50において変速段に対応して設けられた各ブレーキBR,B1〜B6の係合状態を制御する。
このようにしてECU80は、内燃機関5が発生する出力、変速機50の変速比、及びトルクコンバータ20におけるポンプインペラ22とタービンランナ24の間における滑りを協調制御することで、自動変速装置10が出力軸60から出力する駆動トルク、すなわち駆動輪9が発生する駆動力を調整することが可能となっている。なお、本実施例において、制御手段としてのECU80は、自動変速装置10に含まれている。
次に、本実施例に係る自動変速装置の変速動作について、図1、図3及び図4−1〜図4−3を用いて、ECUの制御及び車両の動作と併せて説明する。図3は、各変速段が選択された場合のクラッチ及びブレーキの作動状態を示す図である。図4−1は、自動変速装置の構成を示す模式図であり、第1速ギア段が選択されている場合の動力伝達経路を説明する図である。図4−2は、第2速ギア段が選択されている場合の動力伝達を説明する図である。図4−3は、第3速ギア段が選択されている場合の動力伝達を説明する図である。
なお、図3において、「○」は、クラッチ及びブレーキの係合状態を示しており、「×」は、クラッチ及びブレーキの解放状態を示している。また、「(○)」は、係合要素が係合しているが、当該係合が入力軸からの出力軸への動力伝達に関係していないことを示しており、「△」は、車両の運転状態によっては係合状態にする場合があるものを示している。また、図4−1〜図4−3において、自動変速装置の模式図に上書きされた太線は、入力軸から出力軸に至る動力伝達経路を示しており、太字破線は、回転は伝達されているが、入力軸から出力軸への動力伝達に関係のない経路を示している。
図3及び図4−1に示すように、運転者によりDレンジが選択されて、且つECU80により第1速ギア段41が選択された場合、自動変速装置10のECU80は、変速機50の各ブレーキBR,B1〜B6のうち、ブレーキB1とB2を係合状態にする共に、その他のブレーキを解放状態にする。これと共に、自動変速装置10のECU80は、トルクコンバータ20の第1クラッチC1及び第2クラッチC2を解放状態にすると共に第3クラッチC3を係合状態にする。
このようにしてECU80が第1速ギア段41を選択した場合、自動変速装置10は、入力軸12が受けた内燃機関5からの機械的動力を、トルクコンバータ20のポンプインペラ22、ステータ26、及びタービンランナ24の間にあるフルードを介して第1伝達軸31に伝達させている。このように、ポンプインペラ22からの機械的動力を、フルードを介してタービンランナ24が受ける動力伝達状態を、以下の説明において「トルクコンバータ状態」と記す。第1伝達軸31に伝達された機械的動力は、サンギア41sから第1速ギア段41に伝達されてキャリア41cを回転駆動する。第1速ギア段41のキャリア41cに伝達された機械的動力は、第2速ギア段42のキャリア42cを介して出力軸60から駆動輪9に向けて出力される。
このようにして自動変速装置10は、トルクコンバータ状態で、入力軸12がうけた機械的動力を第1速ギア段41に伝達するため、内燃機関5のクランク軸6から入力軸12に伝達されるトルクに変動があっても、これをトルクコンバータ20で吸収して、第1変速段から出力軸60に伝達することができる。この結果、第1速ギア段41での車両発進時に、駆動輪9に回転変動が生じること、すなわち車両1の推進加速度に変動が生じることを抑制することが可能となる。
また、ECU80がRレンジすなわち後進ギア段40を選択した場合、自動変速装置10は、ブレーキBRを係合状態にする。加えて、第1速ギア段41が選択された場合と同様に、トルクコンバータ20の第1クラッチC1及び第2クラッチC2を解放状態にすると共に、第3クラッチC3を係合状態にすることで、入力軸12からの機械的動力をトルクコンバータ状態で第1伝達軸31に伝達させる。第1伝達軸31に伝達された機械的動力は、サンギア40sから後進ギア段40のプラネタリピニオンギア40i,40eに伝達されて、キャリア40cを第1伝達軸31とは逆向きに回転駆動する。後進ギア段40のキャリア40cに伝達された機械的動力は、出力軸60から駆動輪9に向けて出力されることなる。これにより、第1速ギア段41と同様に、入力軸12から入力された機械的動力にトルク変動があっても、トルクコンバータ20で吸収して出力軸60から出力することができる。
また、ECU80が第1速ギア段41を選択した場合、自動変速装置10は、ブレーキB2を係合状態にしてリングギア42rの回転を止めているので、図4−1に破線で示すように、キャリア42cの回転により、プラネタリピニオンギア42pと、これに噛み合うサンギア42sすなわち第2伝達軸32を、出力軸60への動力伝達とは関係なく回転(空転)させている。第2伝達軸32には、第2クラッチC2が結合されており、自動変速装置10は、第2伝達軸32を空転させることで、第1速ギア段41から第2速ギア段42への変速時における第2クラッチC2の係合動作に備えている。
そして、ECU80により第1速ギア段41から第2速ギア段42への変速が選択されると、自動変速装置10は、第1クラッチC1を解放しながら第2クラッチC2を係合していくことで、第1クラッチC1と第2クラッチC2の掴み替える動作、いわゆる「クラッチ・トウ・クラッチ」を行う。この動作により、自動変速装置10は、入力軸12からの動力伝達経路を、徐々に第1伝達軸31から第2伝達軸32に移していき、第2速ギア段42への変速が完了することとなる。このようにして自動変速装置10は、第1速ギア段41から第2速ギア段42への変速時において、入力軸12から出力軸60への動力伝達に途切れが生じることなく、変速することができる。
第2速ギア段42への変速動作が完了したとき、自動変速装置10は、図4−2に示すように、変速機50の各ブレーキBR,B1〜B6のうち、ブレーキB2とB3を係合状態にする共に、その他のブレーキBR,B1,B4,B5,B6を解放状態にしている。これと共に、自動変速装置10は、トルクコンバータ20の第1クラッチC1及び第3クラッチC3を解放状態にすると共に第2クラッチC2を係合状態にしている。
このようにしてECU80が第2速ギア段42を選択した場合、自動変速装置10は、入力軸12から受けた機械的動力を、トルクコンバータ20のポンプインペラ22とタービンランナ24を介することなく直接的に、第2伝達軸32に伝達させており、いわゆるロックアップ状態にしている。第2伝達軸32に伝達された機械的動力は、サンギア42sから第2速ギア段42に伝達されて、キャリア42cを回転駆動する。第2速ギア段42のキャリア42cに伝達された機械的動力は、出力軸60から駆動輪9に向けて出力される。
このようにして自動変速装置10は、第2速ギア段42を選択した場合、ロックアップ状態で、入力軸12が受けた機械的動力をそのまま第2速ギア段42に伝達するため、入力軸12から出力軸60に伝達される機械的動力に損失が生じることを極力抑制することができる。
なお、ECU80が第2速ギア段42を選択した場合、自動変速装置10は、ブレーキB3を係合状態にしてリングギア43rの回転を止めているので、図4−2に破線で示すように、キャリア43cの回転により、プラネタリピニオンギア43pと、これに噛み合うサンギア43sすなわち第1伝達軸31を、出力軸60への動力伝達とは関係なく空転させており、第3速ギア段43への変速時における第1クラッチC1の係合動作に備えている。
このようにECU80が第2群の変速段52を選択した場合、自動変速装置10は、第3クラッチC3を解放状態にしており、タービンランナ24と第1伝達軸31の動力伝達が遮断されているので、第1伝達軸31は、タービンランナ24を回転駆動してしまうことがなく、タービンランナ24が第1伝達軸31により、ポンプインペラ22以上の回転速度で連れ回されることを防止している。
そして、ECU80により第2速ギア段42から第3速ギア段43への変速が選択されると、自動変速装置10は、第2クラッチC2と第1クラッチC1の掴み替え動作を行い、入力軸12からの動力伝達経路を第2伝達軸32から第1伝達軸31に移していき、第3速ギア段43への変速が完了することとなる。このようにして自動変速装置10は、第3速ギア段43への変速時においても、入力軸12から出力軸60への動力伝達に途切れが生じることを防止している。
第3速ギア段43への変速動作が完了したとき、自動変速装置10は、図4−3に示すように、変速機50の各ブレーキBR,B1〜B6のうち、ブレーキB3とB4を係合状態にする共に、その他のブレーキBR,B1,B2,B5,B6を解放状態にしている。これと共に、自動変速装置10は、トルクコンバータ20の第2クラッチC2及び第3クラッチC3を解放状態にすると共に、第1クラッチC1を係合状態にしている。
このようにしてECU80が第3速ギア段43を選択した場合、自動変速装置10は、入力軸12からの機械的動力をロックアップ状態で、第1伝達軸31に伝達させる。第1伝達軸31から第3速ギア段43に伝達された機械的動力は、第3速ギア段43で変速されて、キャリア43cから出力軸60に伝達される。なお、第3速ギア段43が選択されている場合、ブレーキB4を係合状態にして第4速ギア段44のリングギア44rの回転を止めているため、プラネタリピニオンギア44pが回転して、これに噛み合うサンギア44sすなわち第2伝達軸32を空転させており、第4速ギア段44への変速時における第2クラッチC2の係合動作に備えている。
そして、ECU80が第4速ギア段44以上のギア段を選択した場合、自動変速装置10は、図3に示すように、選択された変速段に対応するブレーキを係合状態にすることで、入力軸12が受けた機械的動力を選択された変速段に伝達し、これを変速して出力軸60から出力する。これと共に、一段高速(ハイギア)側の変速段に対応するブレーキを係合状態にしており、変速時に第1クラッチC1と第2クラッチC2を交互に掴み替えることで、一段高速側の変速段にアップシフトすることが可能となっている。
このように本実施例に係る自動変速装置10は、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を掴みかえるだけで変速できるように、選択された変速段に対応するブレーキに加えて、一段高速側の変速段に対応するブレーキを係合状態にすることで、アップシフトに備えている。なお、最高速段である第6速ギア段46が選択された場合は、一段低速(ローギア)側の変速段である第5速ギア段45に対応するブレーキB5を係合状態にすることで、ダウンシフトに備えることとなる。
選択されている変速段から、一段低速(ローギア)側の変速段にダウンシフトする場合、自動変速装置10は、選択されている変速段から一段高速側の変速段に対応するブレーキを解放状態にすると共に、選択されている変速段から一段低速側の変速段に対応するブレーキを係合状態にする。それて、変速時に第1クラッチC1と第2クラッチC2を交互に掴み替えることで、一段低速側の変速段にダウンシフトすることができる。
このように本実施例に係る自動変速装置10においては、第1速ギア段41又は後進ギア段40、すなわち最低速段が選択された場合、自動変速装置10は、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を解放状態にすることで、入力軸12から第1伝達軸31にロックアップ状態で伝達されることを解除し、入力軸12から第1伝達軸31にトルクコンバータ状態で機械的動力を伝達することで、第1速ギア段41又は後進ギア段40に伝達されるトルクの変動を減衰している。これにより、車両発進時における車両1の推進加速度の変動を抑制することが可能となる。
なお、ECU80が第1速ギア段41又は後進ギア段40を選択した場合、自動変速装置10は、第3クラッチC3を係合状態にするに加えて、さらに第1クラッチC1を「半係合状態」にするものとしても良い。入力軸12から第1伝達軸31への動力伝達を、トルクコンバータ状態に比べて、ポンプインペラ22とタービンランナ24との間のおける滑りが抑制された、いわゆるスリップロックアップ状態にすることができる。これにより、トルク変動をある程度吸収しつつ、入力軸12から出力軸60に伝達される機械的動力の伝達効率を向上させることが可能となる。
なお、ECU80が第1速ギア段41又は後進ギア段40を選択した場合、自動変速装置10は、第1クラッチC1を完全に係合状態にしても良い。入力軸12からの機械的動力をロックアップ状態で第1伝達軸31から第1速ギア段41又は後進ギア段40に伝達することができる。このような動作は、トルクコンバータ20のフルードが高温であり、入力軸12からの機械的動力をトルクコンバータ状態で第1伝達軸31に伝達させたくない場合において、特に有用である。
また、ECU80が偶数段(第2群の変速段)である第2速ギア段42、第4速ギア段44、又は第6速ギア段46を選択した場合、自動変速装置10は、第1クラッチC1を解放状態にすると共に第2クラッチC2を係合状態にすることで、入力軸12からの機械的動力をロックアップ状態で第2伝達軸32に伝達する。入力軸12と第2伝達軸32との間における動力伝達の損失を抑制することができ、車両燃費を抑制することが可能となる。
これと同様に、ECU80が第1速ギア段41及び後進ギア段40以外の奇数段(第1群の変速段)、すなわち第3速ギア段43及び第5速ギア段45を選択した場合は、第1クラッチC1を係合状態にすると共に第2クラッチC2を解放状態にすることで、入力軸12からの機械的動力を、ロックアップ状態で第1伝達軸31に伝達することができる。偶数段が選択された場合と同様に、入力軸12と第1伝達軸31との間における動力伝達の損失を抑制することができる。
なお、ECU80が偶数段から最低速段以外の奇数段(第3速ギア段43及び第5速ギア段45)にダウンシフトする場合、第2クラッチC2を解放状態にすると共に、第1クラッチC1に替えて第3クラッチC3を係合状態にするものとしても良い。なお、このとき第1クラッチC1は解放状態に制御されている。自動変速装置10は、ダウンシフト直後に、入力軸12からの機械的動力を、トルクコンバータ状態で第1伝達軸31に伝達することで、内燃機関5からの機械的動力を、トルクを増大させて奇数段に伝達することができる。このような動作は、奇数段にダウンシフトして車両1を加速させる場合に有用である。
なお、Dレンジ(第1〜第6速ギア段41〜46)が選択されており、且つECU80が車速が略ゼロである即ち車両停止中と判定した場合には、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を解放状態にするものとしても良い。第1クラッチC1及び第3クラッチC3を解放状態にすることで、入力軸12からの機械的動力が第1伝達軸31及び第2伝達軸32に伝達されることがなく、加えて、第3クラッチC3を解放状態にすることで、入力軸12と共に回転するポンプインペラ22に、タービンランナ24が従動して連れ回ることとなる。これにより、内燃機関5のアイドリング回転速度を維持するのに必要なトルクを低減し、アイドリング作動時の燃費を低減することができる。
また、ECU80が偶数段(第2群の変速段52)を選択した場合で、且つ自動変速装置10の冷間時すなわちフルードが低温であると判定した場合には、第2クラッチC2を係合状態にすると共に、第3クラッチC3を係合状態にするものとしても良い。第3クラッチC3を係合状態にすることで、入力軸12により回転駆動されるポンプインペラ22と、第1伝達軸31に従動するタービンランナ24との間に速度差を設けることができ、この間で入力軸12からの機械的動力を熱に変換することができる。この熱によりフルードの温度を上昇させることができる。
以上に説明したように本実施例に係る自動変速装置10は、複数の変速段40〜46を有する自動変速装置10であって、入力軸12からの機械的動力を、第1速ギア段41及び後進ギア段40を含む第1群の変速段51に伝達可能な第1伝達軸31と、入力軸12からの機械的動力を、第1群の変速段51以外の変速段で構成される第2群の変速段52に伝達可能な第2伝達軸32と、入力軸12と第1伝達軸31を係合可能な第1クラッチC1と、入力軸12と第2伝達軸32を係合可能な第2クラッチC2と、ポンプインペラ22が入力軸12に結合されておりタービンランナ24が第1伝達軸31に係合可能に構成されているトルクコンバータ20を備えている。
第1クラッチC1と第2のクラッチC2を掴み替えることにより、変速時に入力軸12から出力軸60への動力伝達に途切れが生じることを抑制することができ、ECU80が第1速ギア段41又は後進ギア段40を選択した場合、第1クラッチC1を解放状態にして、入力軸12からの機械的動力を、トルクコンバータ20を介して第1伝達軸31に伝達することで、入力軸12に伝達されるトルクに変動があっても、これをトルクコンバータ20で吸収して、第1速ギア段41又は後進ギア段40に伝達することができる。この結果、第1速ギア段41又は後進ギア段40を用いての車両発進時に、駆動輪9に回転変動が生じること、すなわち車両1の推進加速度に変動が生じることを抑制することが可能となる。
また、本実施例に係る自動変速装置10は、ECU80が第2速ギア段42以上の変速段を選択した場合、変速段に対応する第1クラッチC1又は第2クラッチC2を係合状態にすることで、入力軸12からの機械的動力を、トルクコンバータ20を介さずに直接、第1又は第2伝達軸32に伝達するものとしたので、入力軸12と、第1伝達軸31又は第2伝達軸32との間における動力伝達の損失を抑制することができ、この結果、車両燃費を抑制することが可能となる。
また、本実施例に係る自動変速装置10は、タービンランナ24と第1伝達軸31を係合可能な第3クラッチC3を備えており、ECU80が第2群の変速段52を選択した場合、第3クラッチC3を解放状態にするものとした。これにより、選択した変速段の隣り合う変速段すなわち第1群の変速段51への変速に備えるために、第1群の変速段51のブレーキを係合する等して第1伝達軸31を空転させるときに、第1伝達軸31とタービンランナ24の間における動力伝達が遮断されているので、第1伝達軸31は、タービンランナ24を回転駆動することがなく、タービンランナ24が第1伝達軸31により、ポンプインペラ22以上の回転速度で連れ回されてしまうことを防止することができる。
また、本実施例に係るトルクコンバータ20は、第1速ギア段41と後進ギア段40を含む第1群の変速段51に機械的動力を伝達する第1伝達軸31と、ポンプインペラ22とを係合可能な第1クラッチC1と、第1群の変速段51以外の変速段で構成される第2群の変速段52に機械的動力を伝達する第2伝達軸32と、ポンプインペラ22とを係合可能な第2クラッチC2と、タービンランナ24からの機械的動力を第1伝達軸31に伝達する動力伝達手段と、を備えている。
第1速ギア段41又は後進ギア段40が選択された場合、第1クラッチC1を解放状態にして、ポンプインペラ22からの機械的動力をタービンランナ24で受けて、動力伝達手段が第1伝達軸31に伝達することで、ポンプインペラ22からの機械的動力を、ポンプインペラ22とタービンランナ24の間でトルク変動を減衰して第1伝達軸31に伝達することができる。この結果、入力軸12からの機械的動力を、トルク変動を減衰して第1速ギア段41及び後進ギア段40に伝達させることができる。
また、本実施例に係るトルクコンバータ20において、動力伝達手段は、タービンランナ24と第1伝達軸31を係合可能な第3クラッチC3であり、第2群の変速段52が選択された場合、第3クラッチC3を解放状態にするものとしたので、選択された変速段の隣り合う変速段すなわち第1群の変速段51への変速に備えるため第1伝達軸31を空転させるときに、第1伝達軸31とタービンランナ24の間における動力伝達が遮断されているので、第1伝達軸31は、タービンランナ24を回転駆動することがなく、タービンランナ24が第1伝達軸31により、ポンプインペラ22以上の回転速度で連れ回されてしまうことを防止することができる。
本実施例に係る自動変速装置の構成について、図6を用いて説明する。図6は、自動変速装置の構成を示す模式図である。本実施例に係る自動変速装置は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータと、ダブルクラッチ式の変速機とを有しており、変速機における2つの入力軸である第1の伝達軸及び第2の伝達軸が、それぞれ対応して設けられた第1のクラッチ及び第2のクラッチを介してトルクコンバータのタービンランナと係合可能となっている点で、実施例1とは異なり、以下に詳細を説明する。なお、実施例1と略共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
自動変速装置10Cは、ロックアップクラッチC4を備えるトルクコンバータ20Cと、ダブルクラッチ式の変速機50Cから構成されている。入力軸12からトルクコンバータ20Cが受けた機械的動力は、タービンランナ24に結合された中間伝達軸34と、第1のクラッチC5又は第2のクラッチC6を介して、変速機50Cの第1の伝達軸35又は第2の伝達軸に伝達され、いずれかの変速段で変速されて、出力軸60から出力される。
トルクコンバータ20Cは、ポンプインペラ22が、原動機からの機械的動力を受ける入力軸12に結合されており、タービンランナ24が、変速機50Cに向けて機械的動力を伝達する中間伝達軸34に結合されている。さらにトルクコンバータ20Cには、入力軸12に結合されたポンプインペラ22と、中間伝達軸34に結合されたタービンランナ24とを係合させることが可能なロックアップクラッチC4が設けられている。
ロックアップクラッチC4を係合状態にすることで、トルクコンバータ20Cは、ポンプインペラ22とタービンランナ24が一体に回転し、自動変速装置10Cの入力軸12が受けた機械的動力を、回転速度やトルクを変えることなく、即ちロックアップ状態で、中間伝達軸34に伝達することができる。一方、ロックアップクラッチC4を解放状態にすることで、入力軸12からの機械的動力は、ポンプインペラ22とタービンランナ24との間でトルク変動を減衰しトルクを増大して、即ちトルクコンバータ状態で、中間伝達軸34に伝達することができる。
変速機50Cは、第1群の変速段51である奇数段(第1速ギア段41、第3速ギア段43、第5速ギア段45、及び後進ギア段40)のサンギア41s,43s,45s,40sが、第1の伝達軸35に結合されており、一方、第2群の変速段52である偶数段(第2速ギア段42、第4速ギア段44、及び第6速ギア段46)のサンギア42s,44s,46sが、第2の伝達軸36に結合されている。
変速機50Cには、タービンランナ24に結合された中間伝達軸34と第1の伝達軸35との間に介在して、タービンランナ24と第1の伝達軸35とを係合させる係合要素としての第1のクラッチC5が設けられている。変速機50Cには、中間伝達軸34と第2の伝達軸36との間に介在して、タービンランナ24と第2伝達軸32Bを係合させる係合要素としての第2のクラッチC6が設けられている。
第1のクラッチC5を係合状態にすると共に第2のクラッチC6を解放状態にすることで、変速機50Cは、タービンランナ24すなわち中間伝達軸34からの機械的動力を、第1群の変速段51(奇数段)のいずれかの変速段に伝達することができる。一方、第1のクラッチC5を解放状態にすると共に第2のクラッチC6を係合状態にすることで、変速機50Cは、中間伝達軸34からの機械的動力を、第2群の変速段52(偶数段)に伝達することができる。各変速段40〜46で変速されてトルクが変化した機械的動力は、自動変速装置10Cの出力軸60に伝達される。
このように構成された自動変速装置10Cは、ECU80がロックアップクラッチC4を解放状態にして、第1のクラッチC5を係合状態にすると共に第2クラッチC2を解放状態にすることで、入力軸12からの機械的動力を、トルクコンバータ状態で、第1群の変速段51(奇数段)いずれかの変速段に伝達し、変速して出力軸60から出力することが可能となっている。また、ECU80がロックアップクラッチC4の解放状態はそのままに、第1のクラッチC5を解放状態にすると共に第2のクラッチC6を係合状態にすることで、入力軸12から機械的動力を、ロックアップ状態で第2群の変速段52(偶数段)のいずれかの変速段に伝達して、変速して出力軸60から出力することが可能となっている。
また、自動変速装置10Cは、ECU80が第1のクラッチC5の係合動作と共に第2のクラッチC6の解放動作を行う、即ち第1のクラッチC5と第2のクラッチC6を掴み替える動作を行うことで、入力軸12から出力軸60への動力伝達に途切れが生じることなく変速を行うことが可能となっている。さらに、自動変速装置10Cは、ECU80がロックアップクラッチC4を係合状態にすることで、入力軸12からの機械的動力を、動力損失を生じさせることなく、そのまま変速段に伝達して出力軸60から出力することが可能となっている。
以上に説明したように本実施例に係る自動変速装置10Cは、入力軸12に結合されたポンプインペラ22とタービンランナ24とを係合可能なロックアップクラッチC4を備えるトルクコンバータ20Cと、タービンランナ24からの機械的動力を、第1速ギア段41及び後進ギア段40を含む第1群の変速段51に伝達可能な第1の伝達軸35と、タービンランナ24からの機械的動力を、第1群の変速段51以外の変速段で構成される第2群の変速段52に伝達可能な第2伝達軸と、タービンランナ24と第1の伝達軸35とを係合可能な第1のクラッチC5と、タービンランナ24と第2の伝達軸36を係合可能な第2クラッチC6とを有している。
第1の伝達軸35及び第2の伝達軸36が、それぞれ対応して設けられた第1のクラッチC5及び第2のクラッチC6を介してタービンランナ24と係合可能となっているので、ECU80がロックアップクラッチC4を解放状態にすることで、入力軸12からの機械的動力を、全ての変速段40〜46にトルクコンバータ状態で伝達することができる。第1のクラッチC5と第2のクラッチC6を掴み替えることで、変速時に入力軸12から出力軸60への動力伝達に途切れが生じることを抑制しつつ、車両発進時を含む全ての走行状態において、全ての変速段40〜46に伝達されるトルクの変動を抑制することができる。
なお、上述した各実施例において、自動変速装置は、原動機として内燃機関が設けられた車両に搭載されるものとしたが、原動機は内燃機関に限定されるものではない。原動機として、電動機やモータジェネレータ等の回転電機を用いる構成としても良い。
また、上述した各実施例において、自動変速装置の変速機は、複数組の遊星歯車機構を配列して構成されるものとしたが、変速機の態様は、遊星歯車式に限定されるものではない。第1速ギア段及び後進ギア段を含む第1群の変速段に機械的動力を伝達する第1の伝達軸と、第1群の変速段以外の変速段で構成される第2群の変速段に機械的動力を伝達する第2の伝達軸を有する変速機であれば、本発明を適用することができ、例えば、平行歯車式の変速機を備える自動変速装置にも本発明を適用することができる。