JP6316184B2 - 偏光レンズの製造方法 - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2012年8月2日出願の日本特願2012−172255号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
本発明は、偏光レンズおよびその製造方法に関するものであり、詳しくは、レンズ内部に偏光フィルムを挟み込んで成形された偏光レンズおよびその製造方法に関する。
従来、水面などにより反射された所定の偏光方向の光を遮断する偏光プラスチックレンズが知られている(例えば、下記文献参照、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される)。
文献1:特開2007−316595号公報または英語ファミリーメンバーUS2009/091825A1
文献2:特表2007−523768号公報または英語ファミリーメンバーUS2007/098999A1および米国特許第7,767,304号
文献1、2に記載の偏光レンズは、レンズ内部に偏光フィルムが埋設された偏光レンズであって、偏光フィルムの周囲に硬化性組成物を注入してから加熱し、硬化することによって製造される(以下、注型重合法またはキャスティング法ともいう)。
上記製造方法により作製された偏光レンズにおいては、レンズが変形することにより非点収差(astigmatism)が生じることがあった。これは、製造工程中の加熱により、レンズ内部に埋設された偏光フィルムが変形し、この変形の影響を受け、レンズ表面形状が変化することによるものである。非点収差が生じた眼鏡レンズを通して物体を観察する眼鏡装用者は、非点収差に起因する装用感不良(像のぼやけ等)を感じることとなる。そのため、良好な装用感を有する眼鏡レンズを提供するためには、非点収差を防止ないし低減すべきである。
本発明の一態様は、レンズ内部に偏光フィルムが埋設された偏光レンズの変形を抑制することにより、非点収差の少ない偏光レンズを得るための手段を提供する。
本発明の一態様は、
偏光フィルムを曲面状に変形させる曲面加工を行うこと、
曲面加工された偏光フィルムを105℃以上150℃未満の加熱温度で加熱する加熱処理を行うこと、
加熱処理後の偏光フィルムと、該偏光フィルムを間隔をもって挟み込むように対向配置された上型モールドおよび下型モールドと、上型モールドと下型モールドとの間隔を閉塞するシール部材と、により、内部に偏光フィルムが配置されたキャビティを有する成形型を組み付けること、
前記キャビティに硬化性組成物を注入すること、
前記硬化性組成物を硬化させることにより内部に偏光フィルムが配置された偏光レンズを得ること、ならびに、
得られた偏光レンズを離型すること、
を含む偏光レンズの製造方法、
に関する。
上述の文献1、2には、レンズ内部に偏光フィルムが埋設された偏光レンズを得るために成形型内部に偏光フィルムを配置する前、偏光フィルムを曲面加工することの開示がある。さらに文献1には、偏光フィルムを加熱して曲面加工を行うことが、文献2には、偏光フィルムを所定温度で乾燥させることが、記載されている。しかし、これら文献には、曲面加工後の偏光フィルムを加熱すべきとの記載はない。
これに対し、上記製造方法では、曲面加工後の偏光フィルムを、成形型内部に配置する前に、105℃以上150℃未満の加熱温度で加熱する。このように加熱することで、曲面加工された偏光フィルムは、成形型内部に配置される前に予め変形(収縮)し、その後の工程では、レンズ表面形状を変形させるような収縮を起こさないか、または収縮の程度は小さいと考えられる。このことが、上記製造方法により、収差の少ない偏光レンズの提供が可能となる理由であると、本発明者らは推察している。なお本発明において、上型モールドとは、眼鏡レンズの物体側の面を形成するための成形面を有するモールドをいい、通常、成形面は、凸面を形成すべく凹面である。一方、下型モールドとは、眼鏡レンズの眼球側の面を形成するための成形面を有するモールドをいい、通常、成形面は、凹面を形成すべく凸面である。また、レンズの「物体側の面」とは、レンズを構成する面のうち、レンズを眼鏡として装用した場合に視認される対象側となる面をいう。レンズの「眼球側の面」とは、レンズを構成する面のうち、レンズを眼鏡として装用した場合に装用者の眼球側となる面をいう。
一態様では、上記製造方法は、曲面加工前の偏光フィルムを湿潤させることを含む。
一態様では、上記製造方法では、曲面加工前の偏光フィルムを、加熱下で湿潤させ、次いで冷却した後に曲面加工を行う。
一態様では、上記冷却は、湿潤させた偏光フィルムを室温に放置することにより行われる。
一態様では、上記製造方法は、上述の成形型の組み付けにおいて、上型モールドのキャビティ側内面と偏光フィルムとの距離の最小値が0.3mm以上0.7mm以下となるように偏光フィルムを配置することを含む。
上記のように組み付けた成形型を用いて得られた偏光レンズは、
物体側の面を有する第一のレンズ基材と、
眼球側の面を有する第二のレンズ基材と、
第一のレンズ基材と第二のレンズ基材との間に位置し、かつ物体側の面との距離の最小値が0.3mm以上0.7mm以下である偏光フィルムと、
を含むものとなる。
このような構成の偏光レンズは、セミフィニシュドレンズとして有用である。以下、この点について更に説明する。
眼鏡レンズは、通常、フィニシュドレンズとセミフィニシュドレンズとに大別される。フィニシュドレンズは、レンズ物体側の屈折面(通常、凸面)および眼球側の屈折面(通常、凹面)が、ともに処方レンズ度数を満足する鏡面の光学面であるレンズであり、光学面の曲面加工を必要としないレンズを意味する。なおフィニシュドレンズには、眼鏡フレームに合わせて玉型加工したレンズと玉型加工前のレンズが含まれるものとする。
一方、セミフィニシュドレンズ(以下、セミレンズともいう)は、通常、一方の面が凸面であり他方の面が凹面であるメニスカス形状を有しているが、視力補正機能を有しないレンズであり、レンズ凸面のみが鏡面加工された光学面を有し、凹面は未加工面である。レンズ製造者側が、レンズ処方度数に対応させて、凹面側を表面加工(研削加工、切削加工、研磨加工を含む。)して視力補正機能を有するレンズを作りだすことができるように、加工により除去される取り代を残したレンズ厚の設計となっている。本発明では、以上説明したフィニシュドレンズおよびセミレンズを、眼鏡レンズと定義する。すなわち眼鏡レンズには、光学的に処方度数を充足する視力補正機能を有するレンズであるフィニシュドレンズと、光学的に処方度数を充足する視力補正機能を有するレンズとなるように加工されるセミレンズが包含される。
上述の、レンズ内部に偏光フィルムが埋設された偏光レンズがセミレンズである場合、偏光フィルムが露出ないし除去されないように加工するための取り代の最大値は、偏光フィルムと凹面(眼球側の屈折面とすべく表面加工される面)との距離によって定まることとなり、偏光フィルムが凹面に近いほど、取り代は小さくなり、したがって表面加工後に得られるレンズは厚くなってしまう。一般に、偏光フィルムを備えていない通常のフィニシュドレンズの厚さは、最も薄い箇所で1.1mm程度であるところ、物体側の面からの距離の最小値が0.7mm以下の偏光レンズ(セミレンズ)によれば、加工限界まで表面加工を行うことを想定すれば、最も薄い箇所の厚さが1.1mm程度の眼鏡レンズを、凹面を表面加工することにより提供することができる。また一方で、物体側の面と偏光フィルムとの距離の最小値を0.3mm以上とすれば、製造時に、眼球側の面の形成は容易である。
以上の通り、物体側の面を有する第一のレンズ基材と、眼球側の面を有する第二のレンズ基材と、第一のレンズ基材と第二のレンズ基材との間に位置し、かつ物体側の面との距離の最小値が0.3mm以上0.7mm以下である偏光フィルムと、を含む偏光レンズは、レンズ内部に偏光フィルムを含む偏光レンズ(フィニシュドレンズ)を得るためのセミレンズとして、有用である。
一態様では、上記製造方法は、上記成形型の組み付けにおいて、上型モールドのキャビティ側内面の周縁部と偏光フィルムの周縁部とを2点以上で接着剤により接着することを含む。
以下、この点について更に説明する。
レンズ内部に偏光フィルムが埋設された偏光レンズを注型重合法により製造するにあたり、上述の文献1、2に記載の方法では、成形型のキャビティを塞ぐ部材としてガスケットを使用し、ガスケットに設けられた載置部により偏光フィルムを位置決め保持している。しかしながら、上記方法では、偏光フィルムの厚みや形状差(曲面精度)に関係なく、ガスケットの設計および製造精度で偏光フィルムの保持位置が決まってしまう。その結果、成形後の偏光フィルムの位置がばらついてしまう。そのため、当該ばらつきを考慮した厚さにレンズを成形する必要があり、通常の眼鏡レンズ(偏光フィルムを備えていない眼鏡レンズ)よりも厚みのあるレンズになってしまうことがある。これに対し、上記の接着剤により上型モールドと偏光フィルムを接着する方法によれば、接着剤塗布量(接着剤柱の高さ)によって、上型モールド内面と偏光フィルムとの距離、即ち注型重合後に得られるレンズにおける物体側の面と偏光フィルムとの距離、を自由に設定することができる。これにより、ガスケットを用いる方法において生じる上記の課題を解決することが可能となる。
一態様では、上記シール部材は、粘着剤層を有するテープである。
成形型のキャビティを塞ぐ部材としてテープを用いる場合、上記したガスケットのように偏光フィルム設置部を設けることは困難であるため、偏光レンズを注型重合法により製造する際には、ガスケットを用いることが通常であった。これに対し、上記した接着剤により上型モールドと偏光フィルムとを接着する方法によれば、偏光フィルムを位置決め保持する載置部を有するガスケットを使用せずに、成形型のキャビティ内部に偏光フィルムを位置決め保持することができる。したがって、偏光フィルムを注型重合法により製造するにあたり、簡易かつ安価な部材であるテープを使用することが可能となる。
一態様では、上記製造方法では、上記曲面加工を、凸面型の上に偏光フィルムを配置した状態で押圧し凸面形状を偏光フィルムに転写することにより行う。
一態様では、上記加熱処理は、上記押圧後の偏光フィルムを凸面型上から除去せずに、該凸面型上で行われる。
一態様では、上記加熱温度は120℃以上150℃未満である。
一態様では、上記製造方法は、離型した偏光レンズ上に熱硬化性組成物を塗布し、次いで加熱することにより硬化被膜を形成することを更に含む。
本発明の更なる態様は、
物体側の面を有する第一のレンズ基材と、
眼球側の面を有する第二のレンズ基材と、
第一のレンズ基材と第二のレンズ基材との間に位置し、かつ物体側の面との距離の最小値が0.3mm以上0.7mm以下である偏光フィルムと、
を含み、
物体側の面の幾何学中心位置における最大曲率半径Rmaxと最小曲率半径Rminとの差(Rmax−Rmin)が、4mm未満である偏光レンズ、
に関する。
以下、上記偏光レンズについて、更に説明する。
上記偏光レンズは、好ましくはセミレンズであって、物体側の面と偏光フィルムとの距離の最小値が0.3mm以上0.7mm以下であることについては、上述した通りである。このように、偏光フィルムが、物体側の面に比較的近い位置に配置されている偏光レンズでは、偏光フィルムの変形によって物体側の面が変形しやすい傾向が強いが、そのような変形は、上述の非点収差の原因となる。これに対し本発明によれば、先に記載した通り、偏光フィルムの変形に起因して物体側の面の表面形状が変化することを防ぐことができる。変形がないことの指標としては、上記の物体側の面の幾何学中心位置における最大曲率半径Rmaxと最小曲率半径Rminとの差(Rmax−Rmin)を用いることができ、その値が4mm未満であれば、非点収差による装用不良を眼鏡装用者が感じることのない(または感じることの少ない)眼鏡レンズと言える。本発明の一態様にかかる偏光レンズは、そのような良好な装用感を有する眼鏡レンズとして使用可能なものである。
本発明の更なる態様は、
偏光フィルムと、該偏光フィルムを間隔をもって挟み込むように対向配置された上型モールドおよび下型モールドと、上型モールドと下型モールドとの間隔を閉塞するシール部材と、により、内部に偏光フィルムが配置されたキャビティを有する成形型を組み付けること、ここで前記偏光フィルムの最大径は、上型モールドのキャビティ側内面の最大径と同じまたは最大径より小さく、かつ上型モールドのキャビティ側内面の周縁部と偏光フィルムの周縁部とを2点以上で接着剤により接着し、
前記キャビティに硬化性組成物を注入すること、
前記硬化性組成物を加熱硬化させることにより内部に偏光フィルムが配置された偏光レンズを得ること、ならびに、
得られた偏光レンズを離型すること、
を含む偏光レンズの製造方法、
に関する。
上記のように成形型を組み付けることにより、硬化性組成物(以下、「レンズモノマー」とも記載するが、モノマーだけではなく、オリゴマー、プレポリマー等の各種硬化性成分を含むことができる。)をキャビティに注入すると、キャビティ内では偏光フィルムの両側にレンズモノマーが回り込むようになるため、キャビティ内へのレンズモノマーの注入を、円滑に行うことができる。
一態様では、上記接着剤は、柱状に固化され、所定の高さを備え偏光フィルムを支持する。
一態様では、上記シール部材は、粘着剤層を有するテープである。
以上説明した各態様の一態様では、硬化性組成物は、チオウレタン系またチオエポキシ系樹脂である。
他の一態様では、上記接着剤は、眼鏡フレームへのレンズ枠入れ時に除去される位置に配置されている。
本発明によれば、レンズ内部に偏光フィルムが配置された偏光レンズであって、物体側の面の変形の少ない偏光レンズを提供することができる。こうして提供される偏光レンズは、セミレンズとして有用なものである。
本発明の一実施形態に係る偏光レンズの断面図。 本発明の一実施形態に係る偏光レンズの製造方法のフローチャート。 (A)(B)本発明の一実施形態に係る偏光レンズに用いられる偏光フィルムの断面図。 (A)(B)(C)本発明の一実施形態に係る偏光フィルムの曲面加工を示す図。 本発明の一実施形態に係る上型モールド16と下型モールド18と偏光フィルムとの関係を説明する図。 本発明の一実施形態に係る上型モールド16に接着剤が配設された図で、(a)は平面図、(b)はA−A’断面図。 本発明の一実施形態に係る上型モールド16に接着剤を形成する方法を説明すする図。 本発明の一実施形態に係る接着剤吐出装置。 本発明の一実施形態に係るモールド成形鋳型の組み付けを説明する図。 本発明の一実施形態に係るモールド成形鋳型へのモノマーの注入を説明する図。
本発明の一態様は、
偏光フィルムを曲面状に変形させる曲面加工を行うこと、
曲面加工された偏光フィルムを105℃以上150℃未満の加熱温度で加熱する加熱処理を行うこと、
加熱処理後の偏光フィルムと、該偏光フィルムを間隔をもって挟み込むように対向配置された上型モールドおよび下型モールドと、上型モールドと下型モールドとの間隔を閉塞するシール部材と、により、内部に偏光フィルムが配置されたキャビティを有する成形型を組み付けること、
前記キャビティに硬化性組成物を注入すること、
前記硬化性組成物を硬化させることにより内部に偏光フィルムが配置された偏光レンズを得ること、ならびに、
得られた偏光レンズを離型すること、
を含む偏光レンズの製造方法、
に関する。
以下、上記製造方法について、更に詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る偏光レンズの断面図である。
図1(A)に示すように、本実施形態の偏光レンズ100は、メニスカス形状を有するプラスチックレンズであり、第1のレンズ要素部110と、第2のレンズ要素部120と、その両レンズ要素部の間に、曲面加工された偏光フィルム14と、から構成されている。第1のレンズ要素部110は、偏光フィルム14に対してレンズ100aの物体側(凸面側)に設けられ、第2のレンズ要素部120は、レンズ100の眼球側(凹面側)に設けられている。また、第1のレンズ要素部110および第2のレンズ要素部120は、ともにメニスカス形状を有しており、第1のレンズ要素部110において、凸面側がレンズ100の凸面部となっており、凹面側が偏光フィルム14に当接する面となっている。同様に、第2のレンズ要素部120において、凹面側がレンズ100の凹面部であり、凹面側が偏光フィルム14に当接する面となっている。
偏光レンズ100内部に埋設される偏光フィルム14としては、例えば、市販のヨウ素系偏光フィルムをプレス成形によって所定の曲率に曲面加工してレンズ形状に対応させて、外形が円形にカットされた偏光フィルムを使用することができる。曲面加工の詳細については、後述する。
図1(B)、図1(C)に示すように、レンズ100a、100bのレンズ凸面側111と偏光フィルム14との距離の最小値は、上述の通り、好ましくは、0.3mm以上0.7mm以下となるとなるように設計することが好ましい。
図1(B)に示されるレンズ100aは、ベースカーブが2D(ディオプター)、偏光フィルム14の曲率が3Dで、処方度数がマイナス度数の単焦点レンズである。マイナス度数のレンズの場合は中心から外周に向かう方向に従って、レンズ厚が厚くなり、プラス度数のレンズの場合はこの逆である。
図1(B)のレンズ100aにおいては、レンズ凸面側111の中心の頂点Tが偏光フィルム14との距離W1が最も小さい点であり、頂点Tと偏光フィルム14との距離が、0.3mm以上0.7mm以下となっている。
頂点Tは、球面設計の場合では幾何学中心であり、また、光学中心である。
図1(C)に示されるレンズ100bは、ベースカーブが10D、偏光フィルム14の曲率が8Dで処方度数がプラス度数の単焦点レンズである。
偏光フィルム14とレンズ頂点との距離W1が最も小さい領域であり、外周部と偏光フィルム14との距離が、0.3mm以上0.7mm以下である。
図1に示すような、偏光フィルムを2枚のレンズ基材で挟み込むタイプの偏光レンズでは、第1のレンズ要素部110のレンズ凸面側111の屈折面の設計は回転対称面であることが好ましく、特に球面であることが好ましい。モールド製造や偏光フィルムの曲面創成が容易になるからである。
本実施形態によれば、屈折率が1.60以上の高屈折レンズモノマーを使用し、偏光フィルムとレンズ凸面カーブとの差を2D以内に設定すれば、レンズ凸面と偏光フィルムとの距離であるクリアランスHの最小値を、0.3mm以上0.7mm以下に設定することができ、その結果として、最小レンズ厚が1.1mmの偏光レンズを得ることができる。
上記製造方法は、偏光レンズを、注型重合法(キャスティング法)を用いて製造する。キャスティング法は、上型モールドと、下型モールドと、上下のモールド間の距離を調整し、レンズ厚を決定するシール部材とにより形成されるキャビティ内で、レンズモノマーを重合硬化させた後、離型してレンズを取り出す成形法である。
上下モールドは母型とも呼ばれ、それらの材料としては、ガラス、セラミック、金属、樹脂等を使用することができる。通常、化学強化したガラスが使用される。
上型モールドは、通常、キャビティ側に配置される内面(成形面)が凹面であって、この凹面の面形状が転写されることにより、重合硬化により得られるレンズの凸面の屈折面が形成される。上型モールドの成形面は、上型モールドがガラスモールドの場合、通常、荒摺り、砂かけ、研磨等の鏡面加工された面となっている。
一方、下型モールドは、通常、成形面が凸面であって、この凸面の面形状が転写されることにより、重合硬化により得られるレンズの凹面の屈折面が形成される。下型モールドにも、通常、上述の上型モールドと同様の加工が施される。
シール部材としては、ガスケット、片面に接着剤層を有するテープ(以下、「粘着テープ」という)を使用することができる。ガスケットを使用する場合には、通常、バネ等の弾性体からなるクランプ部材で上下モールドを挟持して固定することが一般的である。ただし、ガスケット形状により固定方法は異なるため、これに限定されるものではない。一方、粘着テープの場合には、通常、クランプ部材は必要とされない。従って、クランプ部材の使用は、任意に選択できる。
粘着テープの基材として、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリスチレン、ABSなどのポリスチレン系、ポリイミド、アセテート、紙、布、金属などを使用することができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンを用いることが望ましい。また、粘着テープは、テープ状でもよく、リボン状でもよく、それをモールド周囲に巻回できるものであればよい。粘着テープの厚さは、通常、200μm未満であることが好ましい。一方、粘着テープの厚さは、特に限定されるものではなく、成形型を組み立てた際、座屈が起こらない程度の厚さであればよい。
粘着テープの粘着剤としては、シリコーン系、アクリル系、天然ゴム系等が使用できる。硬化性組成物への溶け出し、耐熱性等の性能の観点からは、粘着成分として、シリコーンゴム成分およびシリコーンレジン成分を含有するシリコーン系粘着剤が望ましい。また、上下モールドに粘着テープを巻き付けてキャビティを形成する場合は、例えば、以下の測定機構と駆動機構とを備えたモールド鋳型組立装置を使用することにより、精度よく、成形型の組み付けを行うことができる。
この装置は、
各成形型の非成形面を保持する保持手段と、
あらかじめ定めた基準位置に対する各成形型成形面の中心部の高さを計測する測定手段と、
各成形型の中心を同一軸に合わせ込む移送手段と、
成形型外周部の成形面間隔を計測する測定手段と、
前記の測定手段によって計測された値と計測した位置から上下モールドの成形面における中心の間隔が所定の間隔になるまでの各モールドの移送量の合計とを比較する判定手段と、
上下モールドの成形面における中心の間隔が所定の間隔になるよう各モールドを移動する移送手段と、
粘着テープを上下モールド外周面に巻き付けキャビティを形成する粘着テープ巻き付け手段と、
を有する構成となっている。
また、粘着テープを使用した成形型の組み付けについては、眼鏡用プラスチックレンズの注型重合法に用いられている各種の組み付け方法を採用することができる。それらについては、例えば、特開2001−330806号公報、その全記載は、ここに特に開示として援用される、を参照できる。
先に記載した通り、ガスケットを用いる注型重合法では、ガスケットに設けられた載置部により偏光フィルムの位置決め保持を行う。これに対し、上型モールドの内面と、偏光フィルムとを、2点以上、接着剤により接着する方法は、得られるレンズにおける物体側の面と偏光フィルムとの距離を自由に設定することができる。また、この方法によれば、シール部材としてテープを使用しつつ、レンズ内部の所望の位置に偏光フィルムが配置された偏光レンズを得ることができる。
上記の接着剤による方法では、偏光フィルム表面と上型モールドの内面とが接触せず、所定の間隔(以下、「クリアランス」という。)を保ちながら、偏光フィルムが保持される。接着剤は、好ましくは、柱状(円柱、立方体等)または塊状に、好ましくは柱状に、上型モールドの内面の周縁部上、または偏光フィルム表面の周縁部上に、載せられる。接着剤を帯状に、上型モールドの周縁部全周または偏光フィルム表面の周縁部全周に載せることはない。そのように接着剤を載せてしまうと、成形型内で、上型モールドと偏光フィルムとの間に、硬化性組成物を注入することができないからである。
次に、本発明の一態様にかかる偏光レンズの製造方法の具体的実施形態について、図面を参照し、説明する。
図2は、本実施形態にかかる偏光レンズの製造工程の概要を示すフローチャートであり、偏光フィルムを曲面加工する工程、上下のガラスモールドに偏光フィルムを組みこんで成形型(成形鋳型)を組み付ける工程、その鋳型のキャビティー内にレンズモノマー注入する工程、鋳型に充填されたレンズモノマーを加熱・重合する工程、前記重合工程により硬化、成形されたレンズを鋳型から離型する工程、を含む。また、セミレンズを製造する場合には、離型後のレンズの凹面(眼球側の面)を、処方にあわせて表面加工(研削(荒摺り、砂掛け)、切削、研磨の少なくとも1つの処理)を行う。
その後、眼鏡を作製する前には、任意に、表面処理(コーティング等)が行われる。更に、こうして得られた眼鏡レンズは、所望のフレーム形状に縁摺りし、枠入れする工程等が、適宜付加される。
(偏光フィルム)
図3は、偏光フィルム14の断面図である。
偏光フィルム14は、偏光機能を発現するものであれば特に限定されないが、図3(A)または図3(B)に示すように、ポリビニルアルコール(PVA)からなる樹脂層を備える単層(図3(A))または多層(図3(B))のフィルムであることが好ましい。PVAは、透明性、耐熱性、染色剤であるヨウ素または二色性染料との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れるため、フィルム材料として好ましい。
多層の偏光フィルム14は、PVAにヨウ素を含浸させものをフィルム状に成形して一軸方向に延伸した樹脂層を形成後、当該樹脂層の片面または図3(B)に示すように両面にトリアセチルセルロース(TAC)を保護層として積層することにより得ることができる。
偏光フィルム14の厚さは、フィルムの曲面加工が可能であれば、特に限定されるものではない。例えば、通常の市販のフィルムであれば、10μm〜500μm程度が好ましい。厚さが10μm以上であれば、剛性が強く、取り扱いが容易であり、500μm以下であれば、フィルムの曲面加工が容易だからである。
(偏光フィルムの曲面加工)
偏光フィルムは、好ましくは、上型モールドの成形面(通常、凹面)形状に対応させて曲面加工する。
偏光フィルムの曲面加工は、フィルム形状を、所望の曲面形状にすることができる方法であれば、いずれの方法を採用することもできる。好ましい方法としては、プレス成形法が挙げられる。例えば、凸面型の上に偏光フィルムを配置した状態で押圧することにより、凸面形状を偏光フィルムに転写し、曲面形状の偏光フィルムとすることができる。例えば、温度調整手段(ヒ−ター、冷却媒体等)と加圧手段とを備え、雄型と雌型とが一対となった成形型(母型)を有するプレス成形装置に、平面シートの偏光フィルムを挟み込んで、押圧して、偏光フィルムを成形型面の形状に曲面加工する。偏光フィルムは通常、薄い樹脂製の平面のシートである。雄型、雌型としては、成形面が球面のものを用いることが好ましい。成形面が球面であって複雑な形状でないので、特別なプレス装置を必要とせず、通常のプレス成形装置を使用することにより、容易にカービングができるからである。
図4(A)は、雄型部の曲面加工台を示す図で、符号10は平面状のフィルム部材、符号60は曲面加工台である。曲面加工台60は、耐熱性を有するセラミック製の加工基台部60aと球面のガラス型である母型部61(61a,61b)とから構成されている。図中、母型部61を二つ示してあるが、左右眼の眼鏡レンズ用として構成されたもので、単数でも複数でもよい。
母型部61の湾曲面の曲率は、製造されるレンズ100(図1参照)の凸面側屈折面のベースカーブに応じて設定されている。例えば、ベースカーブが大きいほど母型部61の湾曲面の曲率を大きくしてもよい。湾曲面の曲率は、レンズ100のベースカーブと同じ曲率に形成されていても、セミフィニシュドレンズの場合は凹面の研削/研磨が可能な範囲でプラスチックレンズ100のベースカーブと異なっていてもよい。また、処方レンズが累進レンズや非球面レンズなど、球面以外の面形状を有する場合には、湾曲面はフィニシュドレンズの面形状に合わせた面形状としてもよい。本実施形態では、ベースカーブの大きさを数段階に区分し、各段階に対して異なる曲率の湾曲面を設定する。即ち、通常、眼鏡レンズの一つの設計アイテムでは、製作度数範囲がプラス度数(遠視用)からマイナス度数(近視用)まで設定されているので、その度数範囲に対応するためにベースカーブが、少なくとも5種類以上ある。このようなレンズアイテムのオーダーに対応しようとするためである。
この雄型の母型部に一軸延伸したPVA製フィルムを長方形形状にカットした平板状のフィルム部材10を載置させ、図示しない雌型の母型部を有するプレス手段で、例えば室温(20〜25℃程度)にてプレスすることで、湾曲面12(12a、12b)形状を偏光フィルムに転写し、偏光フィルム14(14a、14b)の曲面加工が行われる(図4(B)、(C)参照)。
以上説明した曲面加工を行う前には、偏光フィルムを湿潤させることが好ましい。これにより、母型部への形状転写性が向上するからである。湿潤処理は、例えば、恒湿高温装置に偏光フィルムを所定時間放置する、水をミスト状にして偏光フィルムに噴霧する、等の方法で行うことができるが、含水率を高めることができれば、方法は特に限定されるものではない。湿潤は、通常、50〜90℃程度の加熱雰囲気中で行われる。
湿潤させた偏光フィルムは、吸水した水の多くがフィルムに保持された状態で曲面加工するために、冷却することが好ましい。例えば、恒湿高温装置から取り出した偏光フィルムを、そのまま室温(20〜25℃程度)に放置することで、偏光フィルムを冷却することができる。
そして本発明の一態様にかかる製造方法では、曲面加工後の偏光フィルムを、曲面加工された偏光フィルムを105℃以上150℃未満の加熱温度で加熱する。なお本発明において、加熱温度とは、加熱処理を行う雰囲気の温度をいうものとする。前述の通り、曲面加工された偏光フィルムを、成形型内に配置する前に加熱することにより、偏光フィルムの変形を防ぐことができ、その結果、偏光レンズの表面、特に、物体側表面が変形することを防ぐことができる。ここで、加熱温度を105℃以上とすることで、変形を良好に防ぐことができ、150℃未満とすることで、偏光フィルムに変色や歪みが発生することを防ぐことができる。加熱温度は、好ましくは120℃以上、また好ましくは130℃以下である。上記の加熱処理は、大気中で行うことができる。
加熱方法としては、種々の方法が採用できるが、一実施態様では、上記温度に加熱した熱風循環式オーブンに偏光フィルムを載置し、熱風を当てる方式を用いることができる。加熱時間としては、特に制限はなく、偏光フィルムが十分に収縮するまで加熱すればよい。
偏光フィルムは、曲面加工を行った型から外して加熱処理を施してもよく、型上に配置した状態で加熱処理を行ってもよい。好ましい一態様では、図4に示すようにフィルム部材10を曲面加工したら、ガラス型60とフィルム部材10とを分離せずに、そのまま加熱を行う。すなわち、曲面加工された偏光フィルム(フィルム部材10)を、ガラス型60の曲面61で保持して加熱する。1軸延伸された偏光フィルムは方向によって収縮の程度が異なるので、湾曲面12の形状が、設定した形状から変化してしまう場合がある。これに対し、ガラス型60の曲面61で保持すれば、フィルム部材10をガラス型60の曲面61の形状に沿って収縮させることができるので、ガラス型60を用いずに加熱する場合よりも、湾曲面12の曲率や形状をより精度良く成形できる。また、曲面加工に用いた型とは別の凸面型上に偏光フィルムを配置して加熱処理を行ってもよい。すなわち、曲面加工されたフィルム部材10をガラス型60から分離し、別途、用意された加熱用のガラス型60に載置し直してもよい。加工の効率および精度の確保のためには、曲面加工に使用したガラス型60を加熱に使用することが好ましい。
次に、図4(C)に示すように、フィルム部材を上型モールド16に保持させるために、前記モールド形状に対応させて各々の曲面部61aの周囲のフィルム部材10を残しながら図の破線Kに沿ってフィルム部材をカットする。カットされた偏光フィルムはフランジ部を備えている。一実施態様では、図6(詳細は後述する。)に示すように、上型モールド16はレンズフランジに平面形状のフランジ16aを有している。このフランジ部は、偏光フィルムを上型モールドに保持しやすいように形成されたものであるただし、フランジ部は必須ではなく、フランジ部がなくても、偏光フィルムを保持可能である。
次に曲面加工された偏光フィルム14を上型モールド16に保持させ、上型モールド構成体を形成する工程について説明する。
図5は、上型モールド16と偏光フィルムと下型モールド18との形状の比較を説明する図である。
図5に示す態様では、偏光フィルム14直径(内径)は、上型モールド16および下型モールド18の内径よりも、約2mm小さくなっている。これにより、後述するモノマー注入工程において、上型モールド16と下型モールド18間のキャビティにレンズモノマー注入する場合に、偏光フィルム14の両側にモノマーが回り込むことができるようになり、キャビティへのモノマーの注入をスムーズに行うことができる。ただし、キャビティへの注入方法は多様にあるので、必ずしも偏光フィルムの内径が、モールド内径より小さくなくてもよい。キヤビティーを形成する場合、シール部材で側面をシールする時に邪魔にならなければよい。
図6は、上型モールド16に偏光フィルムを保持するための接着剤からなる保持部材20が形成された状態を示す図であり、図6(a)は平面図、図6(b)はA−A’線の断面図である。
図6(a)において、上型モールド16の内面のフランジ部16aに90°間隔で4カ所に、偏光フィルムを保持するための保持部材20a、20b、20c、20dが配設されている。保持部材は接着剤であり、一定の高さを形成するように接着剤が柱状)接着剤柱)に形成されている。この保持部材20a、20b、20c、20dは、偏光フィルムを接着、支持するためのもので、偏光フィルムがこれら保持部材に載置されたとき、偏光フィルムが上型モールド16の内面に接触しないように、所定のクリアランス(間隔)を維持しながら偏光フィルムを保持できるように接着剤柱の高さおよび位置が制御されている。また、図中、符号300は偏光レンズを枠入れする眼鏡フレームの玉型形状を示すもので、保持部材20は、枠入れ加工後はカットされるようになっている。
次に、上型モールド16に接着剤を形成する方法について説明する。
図7は、上型モールド16に接着剤を塗布する方法を示す図であり、図8は、接着剤を塗布する吐出装置22を示す図である。以下、図7および図6に基づいて接着剤を塗布する吐出装置22の概略を説明する。
吐出装置22は、図示しないモーター装置が内蔵された本体24と、本体24から上方に突出する回転軸26と、回転軸26の上端に配設されたターンテーブル28と、を備えている。ターンテーブル28の上面には、上型モールド16の外面部16bのフランジの近傍に当接し、上型モールド16を支持する可撓性のあるリング状の固定パッド30がセットされている(図には側面が示されている)。リング状の固定パッド30を使用する理由は、上型モールド16の固定手段を外面部16bの光透過面になるべく接触させないためである。
本体24から上方に延出されるロッド32には、スライダー34を介してシリンジ36が装着されている。シリンジ36は、図示しない本体24内のディスペンサー装置による空圧制御によって、先端のニードル38から粘性の接着剤Pを所定の吐出量、吐出できるようになっている。
接着剤Pとしては、紫外線硬化性樹脂(紫外線硬化性組成物)を用いることが好ましい。紫外線硬化性組成物は、周知のように紫外線の光エネルギーに反応して液体から固体に化学的に変化する特性を有する。紫外線硬化性組成物としては、プレポリマー、モノマー等の紫外線硬化性成分と光重合開始剤を含み、任意に公知の添加剤を含む組成物を用いることができる。紫外線硬化性組成物としては、特に種類は限定されず、レンズモノマーの種類に応じて適切なものを選択することが好ましい。プラスチックレンズの製造に用いられる各種モノマーとの反応性に乏しい点で、好ましいものとしては、紫外線硬化性エポキシ樹脂を例示することができる。
次に、吐出装置22による接着剤20の塗布方法の概要について説明する。
上型モールド16を位置決めした後、上型モールド16に接着剤を塗布する。図7および図8に示すように、ターンテーブル28の固定パッド30上に上型モールド16を載置し、シリンジ36の位置を適宜調整して、ニードル38を上型モールド16の内面部16aのフランジに対向する位置に配置する。そして、吐出装置22を駆動させる。つまりターンテーブル28を回転させて上型モールド16を周方向に回転させ、予め位置決めされた上型モールド16の塗布位置にニードル38の下方が到達したところで、ディスペンサー装置を駆動させてニードル38の先端から内面部16aのフランジに接着剤を吐出させる。接着剤の設置箇所(接着位置)は、上型モールド内面または偏光フィルム表面の周縁部であって、通常、レンズが眼鏡フレームに枠入れ加工される際、カットされる領域とする。従って、レンズに成形された場合にレンズ周縁部の外周端部に近い程好ましく、5mm以内であることがより好ましい。また、偏光フィルムを水平に支持させるためには、支持点(接着剤の設置箇所)の数は、対向する位置に所定の間隔により、2点以上、好ましくは4点以上とする。支持点が多いほど安定的に偏光フィルムを保持できるが、少ないほど接着剤間からレンズモノマーがキャビティ内に円滑に流入する。また、偏光フィルムを水平に支持するためには、各設置箇所の接着剤は同量とし、高さを同じにする。
接着剤の高さは、接着材の吐出量を制御することにより、接着位置に、ほぼ同じ高さに形成する。偏光フィルムを水平に保持するためには、各箇所の接着剤の高さは同じであることが好ましい。また、接着剤20の高さは、予め設定された偏光フィルム14と上型モールド16との間隔を基準に調整されている。ここで、例えば、接着剤の収縮代とモールドおよび偏光フィルムの製造の製造誤差、接着面の広さ等の要因を考慮した調整を加えてもよい。例えば、接着剤の高さはクリアランスよりも少し高く設定され、接着剤柱を少しつぶすようにして偏光フィルムを当接させ、接着させることもできる。
図9および図10は、成形型の組み付けを説明する図である。
図9(A)に示すように、偏光フィルム14の凸面部に上型モールド16を接近させ、予め設定されている所定の距離(保持部材20の高さ以下の距離)となるまで近づけて偏光フィルム14に保持部材20を水平に載置させ、接触させる。
そして、その後、紫外線照射装置40から紫外線を保持部材20に照射し、保持部材20を固化させる。これにより、偏光フィルム14と上型モールド16とが接着され、上型モールド16に偏光フィルム14が保持された上型モールド構成体16cが形成される。
本実施形態では、上型モールド16と偏光フィルムとのクリアランスの精度を高めるために以下の方法を実施した。
まず、使用する上型モールド16の内面側(凹面側)の中心高さと使用する曲面加工が施された偏光フィルム14の中心の高さを計測する。
偏光フィルム14の高さ測定では、偏光フィルム14が軟質であるため、非接触タイプのセンサー(例えば、キーエンス社製CCD透過型デジタルレーザーセンサーIGシリーズ)を用いて、偏光フィルム14の下面側の水平基準位置から球面の頂点までの高さを測定する。
上型モールド16の高さ測定では、測定圧等の形状変形の影響がないので、接触式の測定プローブ(例えば、ミツトヨ製デジマチックインジケーター543シリーズ)を使用して偏光フィルムと同様の基準位置から球面の上型モールド16の頂点の高さを測定する。
次に、前記測定された上型モールド16と偏光フィルム14との中心高さに基づき、予め設定されている上型モールド16の凹面側16aと偏光フィルム14との間隔(クリアランス)になるまで、上型モールド16を上方から平行移動させて偏光フィルム14に保持部材20である接着剤柱に接触させ、接着させ、支持させる。
そして、紫外線照射装置40を駆動させて照射灯44先端から紫外線を接着剤20に照射し、接着剤20を固化させる。
なお、紫外線硬化性組成物の硬化処理は、通常、短時間(数秒〜数十秒)の紫外線照射で済むため、製造サイクルへの影響を抑えることができる。一例として、例えば、500mWで15秒間、紫外線を照射する。なお、紫外線照射量が不足すると判断される場合には、適宜ターンテーブル28を回転させて紫外線照射装置40による紫外線の照射を、形成させた保持部材20に継続して行うことも可能である。
また、レンズモノマーの種類によっては、後述する加熱・硬化等によるモノマーの収縮または膨張は無視できる程度である。その場合には、前記クリアランスHの値の設定に、モノマーの収縮や膨張を考慮しなくてよい。一方、レンズモノマーによっては、後述する加熱・硬化等によるモノマーの収縮または膨張するものもあるため、そのようなレンズモノマーを使用する場合には、モノマーの収縮や膨張を考慮し、クリアランスHの値を設定してもよい。
以上により、偏光フィルムを上型モールド16に保持した上型モールド構成体16cが組み付けられる。
なお、偏光フィルム14を上型モールド16に配置した後に加熱してもよいが、上型モールド16に配置する前に加熱することが好ましい。上型モールド16に配置した後に加熱する場合には、保持部材20によって固定された偏光フィルム14の形状が、収縮によって変化する場合がある。そのため、偏光フィルム14の形状の変化を考慮して、偏光フィルム14の成形(曲面加工やカット)を行うべきである。
次に、成形型48の組み付け工程について説明する。以下では、偏光フィルム14を介在させて組み立てられた上型モールド16および下型モールド18と粘着テープ46との状態を、成形型48という。
上型モールド16構成体と下型モールド18とのテープを使用した成形型組み付けは、前述の通りであり、例えば、特開2001−330806号公報を参照できる。
粘着テープを使用した成形型の組み付け方法の概要を説明すると、図9(A)に示すように、偏光フィルム14の凸面(上型モールド16に対して向かい合う面)に上型モールド16を接近させる。または、固定台51に保持された偏光フィルム14を、固定パッド52に保持された上型モールド16に接近させる。
次に、上型モールド16の内面部16aと偏光フィルム14とを所定の距離(接着剤20の高さ以下の距離)となるまで近づけて偏光フィルム14に保持部材20を接触させる。なお符号18aは、下型モールド18の内面部である。
その後、紫外線照射装置40を駆動させて照射灯44先端から紫外線を保持部材20に照射し、接着剤20を固化させる。これにより、偏光フィルム14と上型モールド16とが接着され、上型モールド16への偏光フィルム14の配置が完了する。
次に、上型モールド16と下型モールド18との距離が所定のキャビティを形成するように、下型モールド18を、偏光フィルム14の凹面側に対向して配置させる。キャビティの形成では、レンズモノマーの重合収縮等の材質特性を考慮し、結果として、レンズ設計に基づく所定のレンズ厚が充足されるように設定する。
そして、図9(B)に示すように、上型モールド16および下型モールド18を、所定の距離を保持した状態で、上型モールド16型および下型モールド18の側面に、片面に接着剤層を有する粘着テープ46を全周にわたり、かつ、1周より少し多く巻き付ける。この際、上型モールド16および下型モールド18は、固定パッド52にセットされている。固定パッド52は、図示しないモーター装置から突出する回転軸54により回転駆動される。
粘着テープ46の材質は、レンズモノマーと反応してレンズに曇りを生じさせたり、重合を阻害するものでないことが好ましい。使いやすさや経済性等の観点から、プラスチックの粘着テープを使用することが好ましい。例えば、粘着テープの基材としてはポリプロピレン製のものとポリエチレンテレフタレート製のものを、粘着剤としてはアクリル系、天然ゴム系、シリコーン系のものを各々組み合わせて用意する。なお、粘着テープ46には、モノマーを注入するための注入孔(図示せず)を設けてもよい。
次に、図10に示すように、組み立てられたモールド成形鋳型48に、調合されたレンズモノマーを注入する。レンズモノマーについては、後述する。注入孔より注入器を用いて、上型モールド16および下型モールド18と粘着テープ46とで形成されたキャビティ50内に、キャビティ50内に気泡が残らないようにモノマーを充填する。上型モールド16と偏光フィルム14との間、および下型モールド18と偏光フィルム14との間にモノマーを注入する。上型モールド16と偏光フィルム14との間(キャビティ50a)、および下型モールド18と偏光フィルム14との間(キャビティ50b)にそれぞれモノマーを注入してもよいが、上述したように、上型および下型のモールド16、18の内径よりも小さい偏光フィルム14を用いることで、一方のモールドの側から他方のモールドの側にモノマーを回りこませることができる。
レンズモノマーとしては、特に限定されず、プラスチックレンズの製造に通常使用される各種のモノマーを用いることができる。例えば、分子中にベンゼン環、ナフタレン環、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合を有するものなどが使用できる。また、硫黄、ハロゲン元素を含む化合物も使用でき、特に核ハロゲン置換芳香環を有する化合物も使用でき、特に核ハロゲン置換芳香環を有する化合物に好適である。上記官能基を有する単量体を1種または2種以上用いることにより、レンズモノマーを製造できる。例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリル(イソ)フタレート、ジベンジルイタコネート、ジベンジルフマレート、クロロスチレン、核ハロゲン置換スチレン、核ハロゲン置換フェニル(メタ)アクリレート、核ハロゲン置換ベンジル(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールA 誘導体の(ジ)(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールA誘導体のジアリルカーボネート、ジオルトクロロベンジルイタコネート、ジオルトクロロベンジルフマレート、ジエチレングリコールビス(オルトクロロベンジル)フマレート、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの多官能イソシアネートの反応物、核ハロゲン置換フェノール誘導体のモノヒドロキシアクリレートと多官能イソシアネートの反応物、核ハロゲン置換ビフェニル誘導体のモノヒドロキシアクリレートと多官能イソシアネートの反応物、キシレンジイソシアネートと多官能メルカプタンの反応物、グリシジルメタクリレートと多官能メタクリレートの反応物等、およびこれらの混合物が挙げられる。
本発明の一態様にかかる偏光レンズは、例えば屈折率が1.50以上であり、好ましくは屈折率が1.60以上である。また、屈折率は、例えば1.74以下である。なお特記しない限り、本発明における屈折率とは、屈折率nDをいうものとする。内部に偏光フィルムを含まない通常の眼鏡レンズと同等のレンズ厚を有する眼鏡用偏光レンズを得るためには、これらの中でも、1.60チオウレタン系樹脂およびチオエポキシ系樹脂が好ましい。審美性のよい薄いレンズ厚のレンズを得るには、高屈折率レンズ材料からなる屈折率が1.60以上の透明なプラスチック製であることが好ましい。その場合は下記のようなモノマーの調合を行うことが好ましい。
(1)1.60チオウレタン(屈折率が1.60のチオウレタンのモノマー)
プラスチックレンズ原料として、ノルボルネンジイソシアネートを50g、ペンタエリスリトールテトラキス(3―メルカプトプロピオネート)を主成分とするポリチオール化合物を24g、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオールを主成分とするポリチオール化合物を26gを混合し、十分に撹拌を行う。
そこに紫外線吸収剤として商標名「SEESORB709」(シプロ化成工業製)を2.5g、内部離型剤として商標名「MR用内部離型剤」(三井化学社製)を0.1g添加し、混合した後、十分に撹拌して、完全に分散または溶解させたプラスチックレンズ原料中に、触媒としてジブチル錫ジクロライドを250ppm添加し、室温で十分に撹拌して均一な液体の組成物とし、ついで5mmHgに減圧して攪拌しながら30分間脱気を行う。
(2)1.67チオウレタン(屈折率が1.67のチオウレタン基材のモノマー)
プラスチックレンズ原料として、m−キシレンジイソシアネートを50.6g、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン49.4gを混合し、十分に撹拌を行った。なお、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンに代えて、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンまたは5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを用いてもよい。
そこに紫外線吸収剤として商標名「SEESORB701」(シプロ化成工業製)を1.2g、内部離型剤として商標名「MR用内部離型剤」(三井化学社製)を0.1g添加し、混合した後、十分に撹拌して、完全に分散または溶解させたプラスチックレンズ原料中に、触媒としてジブチル錫ジクロライドを100ppm添加し、室温で十分に撹拌して均一液とし、その組成物を5mmHgに減圧して攪拌しながら30分間脱気を行う。
(3)1.74チオエポキシ(屈折率が1.74のチオエポキシ基材のモノマー)
プラスチックレンズ原料として、ビス−(2,3エピチオプロピル)ジスルフィドを90.0g、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン10.0gを混合し、十分に撹拌を行った。なお、ビス−(2,3エピチオプロピル)ジスルフィドを90.0g、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンに代えて、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンまたは5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを用いてもよい。
そこに紫外線吸収剤として商標名「SEESORB701」(シプロ化成工業製)を1.2g添加し、十分に撹拌して、完全に溶解させた。その後、触媒としてN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを0.10g混合し、室温で十分に撹拌して均一液とし、その組成物を5mmHgに減圧して攪拌しながら30分間脱気を行う。
その後、レンズモノマーを充填した成形型48を加熱炉に入れて加熱することにより、熱硬化性のレンズモノマーを硬化させることができる。ここで、加熱条件は、レンズモノマーの種類により決定することができ、好ましくは0〜150℃、より好ましくは10〜130℃であり、好ましくは5〜50時間、より好ましくは10〜25時間かけて昇温し、重合硬化を行う。例えば、30℃で7時間保持し、その後30〜120℃まで10時間かけて昇温する。
加熱処理が終了すると、モノマーが固化して成形型48内に偏光フィルム14が埋設されたレンズが成形される。成形型48を加熱炉より取り出し、粘着テープ46を剥離し、上型モールド16および下型モールド18からレンズを離型させて、図1に示すレンズ100を得ることができる。
得られたレンズがセミフィニシュドレンズの場合には、その後、レンズ100の凹面121をカーブジェネレーターおよび研磨装置にて研削/研磨加工して、処方度数に合致した視力補正用眼鏡レンズを得ることができる。
上記加工後の眼鏡レンズには、さらに、耐衝撃、耐摩耗、反射防止、撥水処理等の目的で、プライマー、ハードコート、反射防止膜、撥水処理等の表面処理がそれぞれ、受注に応じて行われる。
ハードコート層は、プラスチックレンズに耐擦傷性を付与することができる。また、一般的にプラスチックレンズに対する反射防止層の密着性は良くないため、プラスチックレンズと反射防止層の間に介在させて反射防止層の密着性を良好にして剥離を防止する働きを、ハードコート層が担うこともできる。
ハードコート層の形成方法としては、硬化性組成物をプラスチックレンズの表面に塗布し、塗膜を硬化させる方法が一般的である。硬化処理は、硬化性組成物の種類に応じて、加熱、光照射等により行われる。一態様では、離型後の偏光レンズ上に熱硬化性組成物を塗布し、次いで加熱することにより硬化被膜(ハードコート層)を形成することができる。また、プラスチックレンズが熱可塑性樹脂である場合、熱硬化型よりも紫外線などの電磁波や電子ビームなどの電離放射線で硬化するものが好ましく用いられる。このような硬化性組成物としては、例えば、紫外線の照射によりシラノール基を生成するシリコーン化合物とシラノール基と縮合反応するハロゲン原子やアミノ基等の反応基を有するオルガノポリシロキサンとを主成分とする光硬化性シリコーン組成物;三菱レイヨン(株)製のUK−6074などのアクリル系紫外線硬化型モノマー組成物;SiO2、TiO2などの粒径1nm以上100nm以下の無機微粒子を、ビニル基、アリル基、アクリル基またはメタクリル基などの重合性基とメトキシ基などの加水分解性基とを有するシラン化合物やシランカップリング剤中に分散させた無機微粒子含有熱硬化性組成物などが挙げられる。
塗膜の形成方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、フロー法、ドクターブレード法などを採用することができ、例えば、40〜200℃の温度で数分から数時間加熱乾燥することにより、被膜を形成する。また、塗膜を形成する前に、密着性を向上させるため、レンズ表面を、コロナ放電やマイクロ波などの高電圧放電などで表面処理をすることが好ましい。その後、形成した塗膜を熱、紫外線、電子ビームなどで硬化させてハードコート層を形成することができる。
反射防止層は、無機被膜、有機被膜の単層または多層で構成される。無機被膜の材質としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti23、Ti25、Al23、Ta25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、MgF2、WO3などの無機物が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。プラスチックレンズの場合は、低温で真空蒸着が可能なSiO2、ZrO2、TiO2、Ta25が好ましい。また、多層膜構成とした場合は、最表層はSiO2とすることが好ましい。このように最表層がSiO2である反射防止層の表面上に本発明にかかる防汚膜を形成すれば、得られる光学物品における防汚膜の耐久性をより向上させることができる。
このような無機被膜の多層膜の一例としては、例えば、合計光学的膜厚がλ/4のZrO2層とSiO2層、光学的膜厚がλ/2のZrO2層、および光学的膜厚がλ/4のSiO2層をレンズ側から順次積層した4層構造を例示することができる。ここで、λは設計波長であり、通常520nmが用いられる。
また、無機被膜の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法などを採用することができる。
以上の方法により、レンズ内部に偏光フィルムが埋設された偏光レンズであって、レンズ表面の、好ましくは物体側の面の変形の少ない偏光レンズを得ることができる。先に記載した通り、物体側の面の幾何学中心位置における最大曲率半径Rmaxと最小曲率半径Rminとの差(Rmax−Rmin)が4mm未満となるように、変形を抑制することが、本発明の一態様によれば可能である。中でも、物体側の面と偏光レンズとの距離の最小値が0.7mm以下と、偏光フィルムが物体側の面に比較的近く、偏光フィルムの変形の影響を受け物体側の面が変形しやすいレンズにおいて、(Rmax−Rmin)が4mm未満を実現することができる。例えば、一般的に用いられている屈折率が1.60〜1.74のレンズ(その一例として、屈折率1.67のチオウレタン系のレンズ等が挙げられる。)の場合、物体側の面のベースカーブが約5.25D以下のレンズにおいて、(Rmax−Rmin)が4mm未満であれば、非点収差AS<0.17を実現することができる。なお、ベースカーブとは、周知のように、面屈折力をディオプター(D)で表現したものであり、曲率半径(R:単位mm)、ディオプター(D)、屈折率(n)との関係は、D=1000(n−1)/Rで表される。また、本発明の一態様にかかる製造方法によれば、上記ベースカーブを有するレンズに限らず各種形状のレンズにおいて、物体側の面と偏光フィルムとの距離の最小値が0.7mm以下と、偏光フィルムが物体側の面に比較的近く、偏光フィルムの変形の影響を受け物体側の面が変形しやすい場合でも、変形を防ぐことができる。
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし本発明は、実施例に示す態様に限定されるものではない。
<実施例1>
1.偏光フィルムの湿潤処理、曲面加工、その後の加熱処理
市販のPVA製二色染料系の偏光フィルム14を、恒湿高温装置内に配置し湿潤処理し、曲面加工開始時の含水率が約4%となるよう湿潤させた。湿潤させた偏光フィルムを、室温(20〜25℃)に2分程度放置した後、図4に基づき説明した前述の方法により曲面加工した。曲面加工も、同様に室温で行った。
次いで、曲面加工した偏光フィルムを、市販の熱風循環式オーブンを用い、120℃で30分間加熱した。加熱は、ガラス型60を用いずに行った。加熱後、図6〜図8に基づき説明した前述の方法により、上型内面周縁部の4ヶ所に接着剤柱を設けて上型モールド構成体を作製した。その後、図9に基づき説明した前述の方法により、偏光フィルム14を介在させて、上型モールド16および下型モールド18と粘着テープ46とで、成形型48を組み立てた。上型モールド16および下型モールド18の表面形状は球面とし、内径は80mm、曲率半径は130.4mmとした。
2.注型重合法によるレンズの成形、離型
プラスチックレンズ原料として、m−キシレンジイソシアネートを50.6g、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン49.4gを混合し、十分に撹拌を行った。
そこに紫外線吸収剤として商標名「SEESORB701」(シプロ化成工業製)を1.2g、内部離型剤として商標名「MR用内部離型剤」(三井化学社製)を0.1g添加し、混合した後、十分に撹拌して、完全に分散または溶解させたプラスチックレンズ原料中に、触媒としてジブチル錫ジクロライドを100ppm添加し、室温で十分に撹拌して均一液とし、その組成物を5mmHgに減圧して攪拌しながら30分間脱気を行い、レンズモノマーを作製した。
作製したレンズモノマーを、成形型48に注入した。上型モールド、下型モールドの内径よりも直径の小さい偏光フィルムを用いたため、レンズモノマーの注入を円滑に行うことができた。
その後、成形型を加熱炉に配置し、30℃で7時間保持し、その後30〜120℃まで10時間かけて昇温し、加熱硬化を行った。
加熱硬化後、成形型48を加熱炉より取り出し、粘着テープ46を剥離し、上型モールド16および下型モールド18からレンズを離型させて、図1に示すレンズ100(セミフィニッシュレンズ)を得た。得られたレンズの屈折率nDは、1.67である。
3.眼球側表面の研削/研磨加工
得られたレンズ100の凹面121をカーブジェネレーターおよび研磨装置にて研削/研磨加工して、処方度数に合致した視力補正用眼鏡レンズを得た。
4.表面処理
(ハードコート成膜)
ハードコート層を形成するための塗布液(コーティング液)を次のように調製した。
(1)塗布液の調製
パーフルオロヘキサン500g、IPA分散酸化珪素ゾル(固形分濃度30重量% 触媒化成工業(株)製オスカル1432)350gを混合した後、フルオロアルキルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8233)25g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン220g、テトラエトキシシラン25gを混合した。この混合液に0.05N塩酸水溶液90gを撹拌しながら滴下を行い4時間撹拌後一昼夜熟成させた。この液に過塩素酸マグネシウム2.6g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「FZ−2110」)0.2gおよびフェノール系酸化防止剤(川口化学工業(株)製、商品名「アンテージクリスタル」)0.5gを添加し4時間撹拌後一昼夜熟成させて塗布液とした。
(2)塗布および硬化
このようにして得られた塗液で、アルカリ処理を施したレンズに浸漬法にて塗布を行った。引き上げ速度は、26cm/minとした。塗布後80℃で20分間風乾した後130℃で120分間焼成を行った。このようにして得られた硬化被膜の厚みは約2μmであった。
(反射防止膜)
前記レンズに、レンズ基材から大気に向かって順に、SiO2、ZrO2、SiO2、ZrO2、SiO2の5層からなる反射防止多層膜を真空蒸着法にて形成を行った。
蒸着装置は、電子ビーム蒸着装置であり、真空容器と、排気装置と、ガス供給装置とを備えている。真空容器は、ハードコート層が形成(成膜)されたレンズが載置されるレンズ支持台と、レンズ支持台にセットされたレンズを加熱するための基材加熱用ヒーターと、熱電子を発生するフィラメントとを備えている。
この蒸着装置では、電子銃により蒸発源(るつぼ)にセットされた蒸着材料に熱電子を照射し蒸発させて、レンズに上記材料を蒸着する。
各層の光学的膜厚は、最初のSiO2層、次のZrO2とSiO2の等価膜層および次のZrO2層、最上層のSiO2層がそれぞれλ/4となる様に形成した。なお、設計波長λは520nmとした。
<レンズの光学性能の評価>
表面処理前であって離型後のレンズ100(円形のアンカットの状態)のレンズ変形を評価するために、以下の項目により、光学性能の評価を行った。尚、目視による検査は、レンズ検査業務3年以上の検査者により実施した。評価結果は表1に示す通りであった。
(1)形状変形
レンズ100の凸面幾何学中心位置(=光学中心)での最大曲率半径(mm)(Rmax)と最小曲率半径(mm)(Rmin)を曲率半径測定装置「FOCOVISON」(Automation&Robotics社製)で測定した。
最大曲率半径(mm)と最小曲率半径(mm)との曲率差(Rmax−Rmin)をレンズの変形(非点収差)の指標とし、以下の通り評価した。なお、レンズ100の凸面は球面設計であり、凸面幾何学中心とは、レンズ100を平面視でみた円の中心を通る垂線とレンズ凸面側111との交点である。
曲率差が、0以上3mm未満:○(合格)、3mm以上4mm未満:△(やや変形がみられるが眼鏡装用上、支障なし、4mm以上:×(実用上、支障あり)
(2)偏光フィルム14の変色
レンズ100中の偏光フィルム14の変色の有無を目視にて確認した。
変色なし:○
色相が変わらない程度の変色が見られる:△
色相が明らかに異なる変色が見られる:×
(3)偏光フィルム14の歪み
レンズ100中の偏光フィルム14の歪み(面形状の変形)を目視(レンズ検査業務3年以上の検査者)にて確認した。
全く歪みが見られない:○
レンズの周縁部の一部に歪みが見られるが眼鏡装用上問題なし:△
一見して歪みが見られる:×
・総合評価
レンズ100の変形、偏光フィルム14の変色、偏光フィルム14の歪みのいずれにも×判定がないものを○、×判定が1つでもあるものを×とした。全ての評価項目が○であるものを◎とした。
<実施例2〜5および比較例1〜4>
表1に示す条件で、曲面加工した偏光フィルム14の加熱を行った点以外は、実施例1と同様にしてレンズ100を作製した。なお、比較例1では、偏光フィルムを加熱しないで用いた。
<実施例6、7および比較例5、6>
実施例1において、市販のPVA製二色染料系偏光フィルム14の代わりに、TAC製保護膜をPVA製二色染料系偏光フィルムの両面に持つ市販の偏光フィルム(TPT)を用い、表1の条件で偏光フィルムの加熱を行った以外は実施例1と同様にしてレンズ100を作製した。
<実施例8>
曲面加工に使用した曲面加工台60で偏光フィルム14を保持して加熱を行った以外は、実施例2と同様にしてレンズ100を作製した。
表1に示すように、曲面加工した偏光フィルム14を105℃で加熱した実施例4では、曲率半径差(Rmax−Rmin)は3.5mmであった。また、偏光フィルム14を140℃で加熱した実施例5および7においては、色相が変わらない程度の変色が見られたが、いずれの実施例で得られたレンズも偏光レンズとして実用上、支障なく使用できるものであった。
また、120℃〜130℃で加熱することで、レンズの変形や偏光フィルム14の変色がより少ない、光学性能および外観がより優れたレンズ100が得られることがわかった。TPTを偏光フィルム14として使用した実施例6、7も同様の結果であったので、PVAフィルムに限らず他のフィルムにおいても、同様の条件で加熱した偏光フィルムを使用することで、レンズの形状変形を抑制できることがわかった。なおPVAフィルムは安価であるので、PVAフィルムを用いることで、より安価に、レンズ100を提供することができる。
これに対して、比較例1〜3および比較例5では、曲率半径差(Rmax−Rmin)は4mm以上であり、レンズに大きな形状変形が生じている。比較例1〜3および比較例5は、いずれも、加熱温度が105℃未満であり、レンズ基材用の重合可能な組成物注入前の偏光フィルムの収縮が十分でなかったと考えられる。これにより、加熱硬化時に偏光フィルムが収縮し、レンズに変形が生じたと考えられる。
また、比較例4および比較例6では、偏光フィルムを150℃で加熱したため、レンズの変形は抑制できたが、偏光フィルムが変質し、変色が生じた。
曲面加工台60を使用しなかった実施例1〜7では偏光フィルム14の形状にわずかながら歪みが生じたのに対し、曲面加工台60を使用した実施例8では歪みが抑制されたより優れた光学性能を有するレンズ100が得られた。
したがって、曲面加工台60で偏光フィルム14を保持して加熱することで、偏光フィルム14の形状変形及び歪みを好適に抑制でき、より外観の良好なレンズ100を得られることがわかった。
以上の結果から、本発明の一態様によれば、非点収差の原因となるレンズ表面形状の変形の少ない偏光レンズの提供が可能になることが確認された。上記実施例で得た偏光レンズの物体側の面と偏光フィルムとの距離の最小値は、0.3mm以上0.7mm以下であり、偏光フィルムが物体側の面と比較的近い位置に配置されている。本発明の一態様によれば、このような偏光レンズにおいて、物体側の面の変形を抑制することができる。
また、曲面加工されたフィルム部材10を、曲面加工に用いた曲面加工台60で保持して加熱するので、フィルム部材10の曲面部61aの形状が設定した形状から変化することを抑制できる。したがって、より外観の良好なレンズ100を製造できる。
また、偏光フィルム14として一般的であるPVAの偏光フィルムを用いた。PVAフィルムは安価であるので、より安価に収差の少ないレンズ100を提供することができる。
(クリアランスに関する検討)
下記表2に示すサンプル1−1〜1−12、サンプル2−1〜2−5は、表2に示す製造条件を採用した点以外、実施例1の工程1.〜3.を実施して得られた、レンズ内部に偏光フィルムが埋設された偏光レンズである。以下、このレンズを、完成品レンズとも呼ぶ。
表2中、Hは、成形型内での上型モールド内面と偏光フィルムとの距離の最小値(以下、単にクリアランスHという。)、W1はプラスチックレンズ(セミフィニシュドレンズ)における物体側の面と偏光フィルムとの距離の最小値(以下単に距離W1という。)、Wは工程3.後に得られたレンズの厚さの最小値(以下単に厚さWという。)である。SFとは、セミフィニシュドレンズの略である。また、レンズのベースカーブは、物体側の面のベースカーブである。クリアランスが最小となる位置は、ベースカーブが6D未満の場合にはセミフィニシュドレンズの中心部(頂点Tの位置)、ベースカーブが6D以上ではセミフィニシュドレンズの外周部であったので、それぞれのサンプルについて、当該位置においてクリアランスHを設定した。作製された偏光レンズにおいて、眼球側の面と偏光フィルムとの距離が最小となった位置は、クリアランスHを設定した位置と同じ位置であった。各サンプルについて、10個のレンズを作製した。なお、一部のサンプルにおいて、レンズのベースカーブに応じて偏光フィルムの曲率を変更しているが、全てのサンプルにおいて同じ曲率の偏光フィルムを使用することも可能である。
表2中、サンプル1−5は、偏光フィルムとしてTPTフィルムを用いた例であり、サンプル1−6は、偏光フィルムとしてPETフィルムを用いた例である。
また、表2中、1.60チオウレタンとは、レンズ基材が、屈折率1.60のチオウレタン系レンズであったことを示し、1.67チオウレタンとは、レンズ基材が、屈折率1.67のチオウレタン系レンズであったことを示し、1.74チオエポキシとは、レンズ基材が、屈折率1.74のチオエポキシ系レンズであったことを示す。
表2中、サンプル2−5は、接着剤により偏光フィルムを上型モールド内面と接着する代わりに、ガスケットに設けられた挿入溝に偏光フィルムを挿し込んで保持した点以外は、サンプル1−1と同様にして得られたレンズである。
サンプル1−1、1−2では、クリアランスHを0.3mm以上0.7mm以下としたところ、距離W1が0.3mm以上0.7mm以下である偏光レンズが得られた。そして、レンズの眼球側の面を表面加工することにより、偏光フィルムを傷つけることなく、いずれも厚さWが1.1mmの完成品レンズが得られた。
レンズ基材を変更したサンプル1−3、1−4、偏光フィルムの材料を変更したサンプル1−5、1−6、レンズのベースカーブを変更したサンプル1−7〜1− 12においても、同様に厚さWが1.1mmの完成品レンズが得られた。ここで、距離W1が0.3mmのプラスチックレンズ(サンプル1−2および1−8)は、厚さWが0.6mmから0.7mm程度になるまで表面加工により除去ではあるが、厚さWを1.1mm未満とすると完成品レンズの強度が不足する場合があるため、1.1mmで表面加工を終了している。
これに対して、サンプル2−1および2−3では、クリアランスHを0.2mmとしたため、モノマーの注入工程において、第一のモールドと偏光フィルムとの間にモノマーを均一に流れこませることができなかった。
また、サンプル2−2および2−4では、クリアランスHを0.8mmとしたため、処方面の加工限界により、完成品レンズの厚さW1が1.2mmとなり、偏光フィルムを内部に含まない通常の眼鏡レンズよりも厚くなった。
サンプル2−5では、プラスチックレンズをガスケットを用いて製造したので、偏光フィルムの曲面精度がばらつき、製造した10個のプラスチックレンズの間で、距離W1に0.5mmから1.2mmの範囲でばらつきが生じた。その結果、偏光フィルムを傷つけてしまう可能性があったため、厚さWが0.3mmから0.4mmとなるまで表面加工することはできず、完成品レンズの厚さWは1.6mmと、偏光フィルムを内部に含まない通常の眼鏡レンズよりも厚くなった。
以上の結果から、物体側の面と偏光フィルムとの距離の最小値が0.3mm以上0.7mm以下となるように、好ましくはテープと接着剤を用いて成形型を組み付けることにより、内部に偏光フィルムが埋設したセミフィニシュドレンズであって、眼球側の面を表面加工により薄型の眼鏡レンズの提供が可能な偏光レンズが得られることが確認できる。
また、サンプル1−1は、レンズのベースカーブ(凸面側の屈折面のベースカーブ)は4(D)で、偏光フィルムの曲率は3(D)であり、偏光フィルムの曲率のほうが1(D)浅くなっている。また、レンズ頂点と対応する偏光フィルムの位置での間隔は0.7mmに設定され、レンズ成形後、レンズ凹面は切削・研磨されており、レンズの中心部でのレンズ厚は1.1mmなっている。
サンプル1−7は、レンズのベースカーブが2(D)で、偏光フィルムの曲率は3(D)であり、偏光フィルムの曲率のほうが1(D)深くなっている。また、レンズ頂点と対応する偏光フィルムの位置での間隔は0.7mmに設定され、レンズ成形後、レンズ凹面は切削・研磨されており、レンズの中心部でのレンズ厚は1.1mmとなっている。
サンプル1−9は、レンズのベースカーブが6(D)で、偏光フィルムの曲率は4(D)で、偏光フィルムの曲率のほうが2(D)浅くなっている。また、レンズ頂点と対応する偏光フィルムの位置での間隔は0.7mmに設定され、レンズ成形後、レンズ凹面は切削・研磨されており、レンズの周縁部でのレンズ厚は1.1mmになっている。
サンプル1−10は、レンズのベースカーブが8(D)で、偏光フィルムの曲率は6(D)であり、偏光フィルムの曲率のほうが2(D)浅くなっている。
サンプル1−12は、レンズのベースカーブが10(D)で、偏光フィルムの曲率は8(D)であり、偏光フィルムの曲率のほうが2(D)浅くなっている。
その他のサンプルについては、表2に示す通りである。
表2に示すように、屈折率が1.60以上の高屈折レンズ基材を使用し、偏光フィルムとレンズ凸面カーブとの差を2D以内に設定することにより、上型モールド内面と偏光フィルムとの距離の最小値を0.3mm以上0.7mm以下に容易に設定することができ、こうして得られたセミフィニシュドレンズの眼球側の面を表面加工することにより、最小レンズ厚が1.1mmのレンズを得ることができる。
本発明は、眼鏡レンズの製造分野において有用である。

Claims (10)

  1. 偏光フィルムを、加熱で湿潤させ、次いで冷却すること、
    冷却後の偏光フィルムを曲面状に変形させる曲面加工を行うこと、
    曲面加工された偏光フィルムを105℃以上150℃未満の加熱温度で加熱する加熱処理を行うこと、
    加熱処理後の偏光フィルムと、該偏光フィルムを間隔をもって挟み込むように対向配置された上型モールドおよび下型モールドと、上型モールドと下型モールドとの間隔を閉塞するシール部材と、により、内部に偏光フィルムが配置されたキャビティを有する成形型を組み付けること、
    前記キャビティに硬化性組成物を注入すること、
    前記硬化性組成物を硬化させることにより内部に偏光フィルムが配置された偏光レンズを得ること、ならびに、
    得られた偏光レンズを離型すること、
    を含む偏光レンズの製造方法。
  2. 前記冷却を、湿潤させた偏光フィルムを室温に放置することにより行う請求項1に記載の偏光レンズの製造方法。
  3. 前記成形型の組み付けにおいて、上型モールドのキャビティ側内面と偏光フィルムとの距離の最小値が0.3mm以上0.7mm以下となるように偏光フィルムを配置することを含む請求項1または2に記載の偏光レンズの製造方法。
  4. 前記成形型の組み付けにおいて、上型モールドのキャビティ側内面の周縁部と偏光フィルムの周縁部とを2点以上で接着剤により接着することを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光レンズの製造方法。
  5. 偏光フィルムを曲面状に変形させる曲面加工を行うこと、
    曲面加工された偏光フィルムを105℃以上150℃未満の加熱温度で加熱する加熱処理を行うこと、
    加熱処理後の偏光フィルムと、該偏光フィルムを間隔をもって挟み込むように対向配置された上型モールドおよび下型モールドと、上型モールドと下型モールドとの間隔を閉塞するシール部材と、により、内部に偏光フィルムが配置されたキャビティを有する成形型を組み付けること、
    前記キャビティに硬化性組成物を注入すること、
    前記硬化性組成物を硬化させることにより内部に偏光フィルムが配置された偏光レンズを得ること、ならびに、
    得られた偏光レンズを離型すること、
    を含み、
    前記成形型の組み付けにおいて、上型モールドのキャビティ側内面の周縁部と偏光フィルムの周縁部とを2点以上で接着剤により接着することを更に含む偏光レンズの製造方法。
  6. 前記シール部材は、粘着剤層を有するテープである請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光レンズの製造方法。
  7. 前記曲面加工を、凸面型の上に偏光フィルムを配置した状態で押圧し凸面形状を偏光フィルムに転写することにより行う請求項1〜6のいずれか1項に記載の偏光レンズの製造方法。
  8. 前記加熱処理を、前記押圧後の偏光フィルムを凸面型上から除去せずに、該凸面型上で行う請求項7に記載の偏光レンズの製造方法。
  9. 前記加熱温度は120℃以上150℃未満である請求項1〜8のいずれか1項に記載の偏光レンズの製造方法。
  10. 離型した偏光レンズ上に熱硬化性組成物を塗布し、次いで加熱することにより硬化被膜を形成することを更に含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の偏光レンズの製造方法。
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