本発明は、一導電型単結晶シリコン基板の第一主面側に、逆導電型シリコン系薄膜層、第一透明電極層をこの順に有し、前記一導電型単結晶シリコン基板の第二主面側に、一導電型シリコン系薄膜層、第二透明電極層、裏面電極層をこの順に有する前記結晶シリコン太陽電池仕掛品を複数に割断することにより作製される結晶シリコン太陽電池の製造方法に関し、逆導電型シリコン系薄膜層上に第一透明電極層を形成する第一透明電極層形成工程と、前記第二主面側の面のほぼ全面に、銅を有する裏面電極層を形成する裏面電極層形成工程を含む。また第一透明電極層形成工程及び裏面電極層形成工程後に、結晶シリコン太陽電池仕掛品を複数に割断する基板割断工程を有する。前記基板割断工程は、前記第一主面側から前記一導電型単結晶シリコン基板の少なくとも一部が露出するようにレーザー光を照射するレーザー照射工程を有する。
また本発明の結晶シリコン太陽電池は、一導電型単結晶シリコン基板2の第一主面側に、逆導電型シリコン系薄膜層5、第一透明電極層6をこの順に有している。また結晶シリコン太陽電池1は、第一透明電極層6の第一主面側に、さらに集電極15を有していることが好ましい。前記一導電型単結晶シリコン基板2の第二主面側に、一導電型シリコン系薄膜層8、第二透明電極層10、銅を有する裏面電極層11をこの順に有する。裏面電極層11は、銅を主成分とすることが好ましい。裏面電極層は、第二主面のほぼ全面に形成され、前記一導電型単結晶シリコン基板の外周部側面の一部に第一主面から第二主面に達する割断領域を有する。割断領域は、第一主面側から第二主面側に向かって延びる第一領域を有し、当該第一領域は、第一主面側から、少なくとも一導電型単結晶シリコン基板まで至っており、第一領域は、表面にレーザー痕が形成されている。さらに、一導電型単結晶シリコン基板2と逆導電型シリコン系薄膜層5の間には、第一真性シリコン系薄膜層3を有することが好ましく、シリコン基板2と一導電型シリコン系薄膜層8の間には、第二真性シリコン系薄膜層7を有することが好ましい。さらに、裏面電極層11の第二主面側(裏面側)には、図示しない保護層を有していてもよい。
以下において本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお本発明の各図において、厚さや長さなどの寸法関係については図面の明瞭化と簡略化のため適宜変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。
以下、本発明の第1実施形態に係る結晶シリコン太陽電池1について説明する。 また、第一実施形態の結晶シリコン太陽電池1は、図1に示されるように、テクスチャ構造(凹凸構造)を形成しているので、以下の説明においては、特に断りがない限り、膜厚は、一導電型単結晶シリコン基板2(以下、単に「シリコン基板2」ともいう)上におけるテクスチャ斜面に対して垂直方向における膜厚を意味する。勿論、シリコン基板2が平滑な場合には、主面に対して直交する方向の厚みである。以下の説明においては、第一主面を光入射面ともいい、第二主面を裏面ともいう。
また、本発明において「主成分とする」とは、その材料を重量比で50%(パーセント)より多く含むことを意味し、70%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。更に、「ほぼ全面に形成されている」とは、基準面の90パーセント以上が覆われていることを意味する。その中でも、90パーセント以上が覆われていることが好ましく、95パーセント以上が覆われていることがより好ましく、100パーセントすなわち全面が覆われていることが特に好ましい。また「結晶シリコン太陽電池仕掛品」とは、結晶シリコン太陽電池を割断する前の状態を意味する。
[太陽電池]
以下、結晶シリコン太陽電池1の各層の構成について説明する。まず、結晶シリコン太陽電池1の骨格を形成する一導電型単結晶シリコン基板2について説明する。
シリコン基板2は、一導電型単結晶シリコン基板によって形成されている。ここで、一般的に単結晶シリコン基板には、シリコン原子に電子を導入するための原子(例えばリン)を含有させたn型と、シリコン原子に正孔を導入する原子(例えばホウ素)を含有させたp型がある。ここでいう「一導電型」とは、n型又はp型のどちらか一方であることをいう。つまり、基板1は、n型又はp型のどちらか一方の単結晶シリコン基板である。本実施形態の基板1は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。
シリコン基板2は、表面及び裏面にテクスチャ構造を有している。すなわち、シリコン基板2を基体として形成される光電変換部27もテクスチャ構造を備える。そのため、結晶シリコン太陽電池1は、入射した光を光電変換部27に閉じ込めることができ、発電効率が高い。更には、シリコン基板2は側面にもテクスチャ構造を有していても良い。
シリコン系薄膜層3,5,7,8の製膜方法としては、プラズマCVD法が好ましい。導電型シリコン系薄膜層8,5は、一導電型又は逆導電型のシリコン系薄膜層である。ここでいう「逆導電型」とは、「一導電型」と異なる導電型であることをいう。例えば、「一導電型」がn型である場合には、「逆導電型」はp型である。本実施形態では、導電型シリコン系薄膜層5は、逆導電型シリコン系薄膜層であり、導電型シリコン系薄膜層8は、一導電型シリコン系薄膜層である。シリコン系薄膜層は、シリコン系薄膜層であれば特に限定されないが、非晶質シリコン系薄膜層を用いることが好ましい。
本実施形態では、導電型シリコン系薄膜層5は、p型非晶質シリコン系薄膜層であり、導電型シリコン系薄膜層8は、n型非晶質シリコン系薄膜層を採用している。真性シリコン系薄膜層3,7としては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンが好ましい。
また、裏面側の一導電型シリコン系薄膜層8は、裏面電極層11の一部又は全部として用いる金属が一導電型単結晶シリコン基板2内に拡散することを防ぐ役割も担う。すなわち、本実施形態の結晶シリコン太陽電池1は、第二透明電極層10により、裏面電極層11として用いる金属がシリコン基板2へ拡散することを防止できる。さらに、結晶シリコン太陽電池1は、第二透明電極層10が薄い領域や一部存在しない領域があった場合などにおいても、上記一導電型シリコン系薄膜層8により、更なる拡散防止の効果が期待できる。
上記のように裏面電極層11の一部として使用する金属の結晶シリコン基板への拡散をより抑制する観点から、一導電型シリコン系薄膜層8の厚みをある程度厚くすることが好ましい。この場合、一導電型シリコン系薄膜層8の厚みは、上記したBSF効果を得ることを総合して、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、30nm以上が特に好ましい。一方、一導電型シリコン系薄膜層8の厚みの上限は、特に制限されないが、製造コスト低減の観点から、100nm以下が好ましく、70nm以下がより好ましく、50nm以下が特に好ましい。
一導電型シリコン系薄膜層8の厚みの範囲は、上記した範囲でもよいが、下記の観点からは、真性シリコン系薄膜層3,7(実質的に真性なi型シリコン系薄膜層)、逆導電型シリコン系薄膜層5(p型シリコン系薄膜層)、及び一導電型シリコン系薄膜層8(n型シリコン系薄膜層)の厚みは、それぞれ3nm以上20nm以下の範囲が好ましい。この範囲内であれば、シリコン基板2のテクスチャ構造(凹凸構造)の寸法(μmオーダー)と比較して遥かに小さい。そのため、積層方向外側に位置する逆導電型シリコン系薄膜層5(p型シリコン系薄膜層)、及び一導電型シリコン系薄膜層8(n型シリコン系薄膜層)の表面形状は、図1で示されるようにシリコン基板2の表面形状と概ね同じ形状となる。すなわち、シリコン基板2の表面形状を追随して、これらの積層体の表面は、テクスチャ構造(凹凸構造)を取ることが可能である。
結晶シリコン太陽電池1の光電変換部27は、図1のように導電型シリコン系薄膜層5,8上の外側に、透明電極層6,10を備えている。第一透明電極層6及び第二透明電極層10は、それぞれ導電性酸化物を主成分とする層である。導電性酸化物としては、例えば、酸化亜鉛や酸化インジウム、酸化錫を単独又は混合して用いることができるが、導電性、光学特性、及び長期信頼性の観点から、酸化インジウムを含んだインジウム系酸化物が好ましく、中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものがより好ましく用いられる。
透明電極層6,10は、単層で用いても良いし、複数の層からなる積層構造でもよい。さらに透明電極層6,10には、それぞれドーピング剤を添加することができる。例えば、透明電極層6,10として、酸化亜鉛を用いた場合のドーピング剤には、アルミニウムやガリウム、ホウ素、ケイ素、炭素などが挙げられる。透明電極層6,10として、酸化インジウムを用いた場合のドーピング剤には、亜鉛や錫、チタン、タングステン、モリブデン、ケイ素などが挙げられる。透明電極層6,10として酸化錫を用いた場合のドーピング剤には、フッ素などが挙げられる。
上記したように、図1に示される第一透明電極層6及び第二透明電極層10の一方、もしくは両方の透明電極層6,10にドーピング剤を添加することができるが、第一透明電極層6(光入射側透明電極層)に添加することが好ましい。これは、光入射側に形成される集電極15は一般的に櫛形であることから、第一透明電極層6で生じうる抵抗損を抑制できるためである。
光入射側に位置する第一透明電極層6の膜厚は、透明性と導電性、及びセルの光反射低減の観点から、10nm以上140nm以下であることが好ましく、集電極15へのキャリア輸送と、反射防止膜としての光閉じ込め効果の両方の役割をもつ。
一方で、裏面側に位置する第二透明電極層10は、裏面反射の増加の効果のみならず、裏面電極層に使用される金属、特に裏面電極層11の一部たる銅のシリコン基板2への拡散予防という点で重要である。上記金属の拡散防止という観点では、第二透明電極層10の厚みは5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることがさらに好ましい。光吸収の抑制、すなわち長波長光の吸収による電流(Jsc)の低下を抑制する観点からは、第二透明電極層10の厚みは180nm以下であることが好ましく、150nm以下がより好ましく、110nm以下がさらに好ましく、90nm以下であることが最も好ましい。
第二透明電極層10の膜厚を上記範囲にすることにより、「裏面電極層」として使用される金属の拡散を防止できる。また、後述のように、裏面電極層として、第二透明電極層側から、第一導電層と銅を有する第二導電層を有する場合、第一導電層により銅の拡散が抑制されるため、第一導電層が形成される場合は、第二透明電極層10の厚みは5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることがさらに好ましい。光吸収の抑制、すなわち長波長光の吸収による電流(Jsc)の低下を抑制する観点からは、第二透明電極層10の厚みは150nm以下であることが好ましく、130nm以下がより好ましく、110nm以下がさらに好ましく、90nm以下であることが最も好ましい。
透明電極層6,10の製膜方法としては、特に限定されないが、スパッタリング法などの物理気相堆積法や有機金属化合物と酸素又は水との反応を利用した化学気相堆積(MOCVD)法などが好ましい。いずれの製膜方法でも熱やプラズマ放電によるエネルギーを利用することもできる。透明電極層6,10作製時の基板温度は、適宜設定すればよいが、シリコン系薄膜層3,5,7,8として、いずれかに非晶質シリコン系薄膜を用いた場合、200℃以下が好ましい。200℃(摂氏200度)以下で作製することにより、非晶質シリコン層からの水素の脱離、それに伴うケイ素原子へのダングリングボンド(Dangling Bond)の発生を抑制でき、結果として変換効率を向上させることができるからである。
上記したように、第二透明電極層10の上には、裏面電極層11が形成されている。ここで、本実施形態の結晶シリコン太陽電池1は、基板のサイズにも大きく依存するが、一般的には250nm以上のものが使用されている。特に集光型太陽電池の場合は、集光することで発電する電流密度が増加する為、より厚膜のものが好ましい。このため、直列抵抗によるロスをより低減させる観点から、結晶シリコン太陽電池1の裏面全面に形成された裏面電極層11の膜厚は、一般的に厚くなる。
したがって、本実施形態の結晶シリコン太陽電池1は、裏面電極層11として使用する金属材料の量が多くなる。そのため、コストを抑制させる観点から、裏面電極層11として、一部又は全部に銀と同程度の電気伝導率を有し、かつ材料費の安価である銅を用いることが好ましく、この場合、膜厚が厚い場合であっても、銀単体を使用する場合に比べて、低コストで裏面電極層11を形成できる。このため、裏面電極11は銅を有することが好ましく、特に銅を主成分とすることが好ましい。
上記した内容を踏まえた裏面電極層11の厚みは、250nm以上が好ましく、300nm以上がより好ましく、500nm以上が特に好ましい。また、裏面電極層11の厚みは、1500nm以下が好ましく、1200nm以下がより好ましく、1000nm以下が特に好ましい。しかし、裏面電極層の膜厚は、太陽電池セルのサイズや、モジュールにおける太陽電池セルの接続方法等に大きく依存する為、それぞれの形態に最適の膜厚があり、上記膜厚範囲に限定されるものではない。
裏面電極層11の製造方法としては、スパッタ法や真空蒸着法などの物理気相堆積法やスクリーン印刷法、めっき法などの手法が適用可能であるが、スパッタ法や真空蒸着法などが好ましい。裏面電極層11は、直列抵抗を十分に低下させる観点から、第二透明電極層10上のほぼ全面に形成されていることが好ましく、全面に形成されていることがより好ましい。
また、上記したように、本実施形態の透明電極層6,10は、スパッタ法により形成されるため、透明電極層6,10を形成した後に連続して製膜することが好ましい。特に光入射面側の第一透明電極層6を形成後、裏面側の第二透明電極層10と裏面電極層11をこの順に形成することがより好ましい。
本実施形態では、裏面電極層11は銅を有しているが、例えば、裏面電極層11は二層以上の層から形成されても良く、第二透明電極層側から不図示の第一導電層、Cuを有する第二導電層から構成されていても良い。Cuを有する第二導電層よりも一導電型単結晶シリコン基板2側に、より一導電型単結晶シリコン基板2への拡散速度の遅い第一導電層を用いることで、Cuの一導電型単結晶シリコン基板2への拡散を抑制することができる。
すなわち、Cuを有する層が第二透明電極層10と接して形成されている場合でも、第二透明電極層10の膜厚を調整することによって、銅の拡散を防止できるが、Cuを有する層よりも一導電型単結晶シリコン基板2側に、より一導電型単結晶シリコン基板2への拡散速度の遅い第一導電層を導入することにより、銅の拡散をさらに防止できる。また、第二透明電極層10が上記した膜厚の範囲ではなく薄い場合であっても、銅の拡散を防止することができる。なお、裏面電極層として2層以上のものを用いる場合、少なくとも1層がほぼ全面に形成されていればよいが、上述のように銅を有する層と第二透明電極層の間に第一導電層を有する場合、第一導電層は、裏面側のほぼ全面に形成されていることが好ましく、全面に形成されていることがより好ましい。
第一導電層としてはCuよりも熱拡散速度が遅く、また第二透明電極層との接触抵抗が低い材料であれば何でもよいが、AgやAuのようなCuよりもより反射率の高い金属材料を用いれば、裏面の反射率を増大することができ、短絡電流の増大も期待できる。第一導電層の膜厚は8nm以上が好ましく、この場合、裏面反射による電流の増加が期待できる。中でも、第二透明電極層の第二主面側の表面をより完全に被覆し、反射率や信頼性を向上させる観点から、第一導電層の膜厚は、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上がさらに好ましい。またコスト低減の観点から、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、70nm以下がさらに好ましく、60nm以下が特に好ましい。
裏面電極層11は、本実施形態の機能(例えば、銅によるシリコン基板2への拡散を防止機能)を損なわない限り、Cuを有する層以外に、更に、別の導電層を有していても良い。中でも、裏面電極層11上には、裏面電極層11の表面(すなわち裏面電極層11の第二透明電極層10に対して反対側の面)を覆うように導電層(保護層)が形成されている方が好ましい。保護層を形成することにより、後述の熱処理工程を行った場合も、裏面電極層11の変質が低減される。保護層により、銅が熱処理工程において裏面電極層11の表面を伝わって拡散することを抑制することができ、これにより、端部から銅がシリコン基板2内に拡散していくことを防ぐことができる。特に集光型太陽電池のように小面積の太陽電池セルを使用する場合は、端部の影響が大きいため、より効果があると考えられる。保護層としては、導電性材料であってもよいし、絶縁性材料であってもよい。
保護層に適用し得る導電性材料としては、裏面電極層11の拡散を抑制する観点から、シリコン基板2中の熱拡散速度が、裏面電極層11の熱拡散速度よりも遅い材料が好ましい。例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、銀(Ag)が挙げられる。中でも、裏面電極層11の第二導電層13の硫化や酸化を抑制する観点から、TiやSn、Niがより好ましい。
保護層は、裏面電極層11の拡散を抑制する観点では、緻密な膜であることが好ましい。膜厚に関しては、特に制限されることはないが、膜厚は500nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。また、裏面電極層11の拡散をより抑制できる観点からは、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。緻密な膜を形成する観点から、保護層は、スパッタ法やめっき法で形成することが好ましい。
光入射側の第一透明電極層6上には、上記したように集電極15が形成されている。集電極15としては、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法、めっき法等の公知技術によって作製できるが、生産性の観点からAgペーストを用いたスクリーン印刷法や、銅を用いためっき法等が好ましいが、Alなどの他の材料を用いても良い。
続いて、結晶シリコン太陽電池1の外形形状について説明する。
結晶シリコン太陽電池1は、図2(a)、図2(b)のように平面視略方形状の板状である結晶シリコン太陽電池仕掛品1−2を割断することで得られる。図2(a)の例では、一つの結晶シリコン太陽電池仕掛品1−2から4つの結晶シリコン太陽電池1を製造する場合の例である。また図2(b)の様に割断しても良い。また、図2(b)の場合、台形部分を使用しても良い。
図2(a)のA領域のように、結晶シリコン太陽電池1の面方向の少なくとも一部の端部近傍には、図3のようなに割断領域30が形成されている。割断領域30は、結晶シリコン太陽電池仕掛品1−2をレーザー光を利用して割断した場合に形成される領域である。また、図2(a)、図2(b)では、第一透明電極層6を結晶シリコン太陽電池仕掛品の外周部に形成しないことで、表裏電極の絶縁処理を行っており、このような場合は、結晶シリコン太陽電池1の外周部における一部の辺(例えば2辺)にレーザー照射部分に割断領域30が形成され、その他の辺ではレーザー照射領域は存在しない。この場合、前記その他の辺においては、端部側面においてテクスチャ構造が形成されていても良い。 また、割断領域30は、シリコン基板2の第一主面から第二主面に達しており、少なくともシリコン基板2までレーザー痕を有する領域である。
本実施形態の結晶シリコン太陽電池1は、ヘテロ接合型太陽電池であるから、割断領域30は、一導電型単結晶シリコン基板2が露出するように形成される。第一主面側の少なくとも第一透明電極層6と、第二主面側の少なくとも第二透明電極層10及び裏面電極層11が付着していないことに加えて、第一主面側の逆導電型シリコン系薄膜層5や第二主面側の一導電型シリコン系薄膜層8も付着していないことが好ましい。更には、割断領域30はパッシベーションの効果を高めるため、絶縁層で覆われていることが特に好ましい。特に、露出したシリコン基板2を絶縁層で覆うことにより、裏面電極層として使用される金属や、モジュール化した際の湿分の浸入などをより防止することができる。
絶縁領域30は、図3のように、端部側(端面側)から順に、第二領域32と第一領域31(傾斜領域)から形成されている。第一領域31は、レーザー光によって形成された壁面が形成された壁面形成部である。第一領域31は、第一主面の直交方向に対してやや傾斜した方向に延びている。すなわち、第一主面から第二主面に向かって、外側に下り傾斜している。第一領域31は、表面が比較的滑らかになっており、レーザー光によって溶けたレーザー痕が形成されている。
第二領域32(側面)は、結晶シリコン太陽電池1の端面を形成する端面形成部である。すなわち、結晶シリコン太陽電池1の外側側面を形成する部位である。第二領域32は、第二主面に対してほぼ直交方向に延びており、第二主面(結晶シリコン太陽電池1の第二主面側)から少なくとも裏面電極層11まで至っている。すなわち、結晶シリコン太陽電池1の第二主面側から、裏面電極層11まで至っていれば良く、例えば、第二透明電極層10にも至っていても良い。また、第二領域32の表面粗さ(算術平均表面粗さ)は、第一領域31の表面粗さ(算術平均表面粗さ)と異なっている。
上記したように、第一主面側の第一領域31は、傾斜面を形成しており、第一領域31と連続し、第二主面に至る第二領域32はほぼ直交方向に延びている。そのため、結晶シリコン太陽電池1の第一主面の面積は、第二主面の面積よりも小さい。
[結晶シリコン太陽電池の製造方法]
続いて、結晶シリコン太陽電池1の製造方法について説明する。まず初めに、以下のようにして太陽電池仕掛品1−2を作製する。該仕掛品は、上述した図1などに示す、結晶シリコン太陽電池と同様の層構成を有する。結晶シリコン太陽電池仕掛品1−2は、図示しないプラズマCVD装置やスパッタ装置などの製膜装置によって製膜し、図示しないレーザースクライブ装置等を使用して形状加工されて製造される。
まず、光電変換部27を形成する光電変換部形成工程を行う。あらかじめ結晶シリコン太陽電池仕掛品のシリコン基板2に加工を施し、テクスチャ構造を形成する。このとき、シリコン基板2の表裏面は、凹凸が形成されている。
その後、プラズマCVD装置等の製膜装置にこのテクスチャ構造を備えたシリコン基板2を設置し、第一主面上にシリコン系薄膜層3,5を製膜することが好ましい。また、別途工程により、シリコン基板2の第二主面側の表面上にシリコン系薄膜層7,8を製膜する。
このとき、シリコン系薄膜層3,5,7,8の形成条件としては、基板温度100℃〜300℃、圧力20Pa〜2600Pa、高周波パワー密度0.004W/cm2〜0.8W/cm2が好ましく用いられる。シリコン系薄膜層7,8の形成に使用する原料ガスとしては、SiH4、Si2H6等のシリコン含有ガス又は、それらのガスとH2(水素ガス)を混合したものが用いられる。シリコン系薄膜層3,5の形成に使用する原料ガスとしては、SiH4、Si2H6等のシリコン含有ガス、又は、それらのガスとH2(水素ガス)を混合したものが用いられる。
上記では第一主面側のシリコン系薄膜から形成した例を記したが、形成の順番は、第二主面側のシリコン系薄膜7、8を形成後に、第一主面側のシリコン系薄膜3、5を形成しても良い。また。第一主面側のシリコン系薄膜3、第二主面側のシリコン系薄膜7、を形成後に第一主面側のシリコン系薄膜5、第二主面側のシリコン系薄膜8を形成しても良い。これらの様に、製膜順番はどのような順番であっても良い。
シリコン系薄膜層3,5,7,8の形成が終了し、光電変換部27が形成した後、製膜された基板をスパッタ装置に移動し、透明電極層形成工程を行う。すなわち、光入射面側の逆導電型シリコン系薄膜層5上に第一透明電極層6を形成し(第一透明電極層形成工程)、続いて、裏面側の一導電型シリコン系薄膜層8上に第二透明電極層10を形成する(第二透明電極層形成工程)。このとき、スパッタ装置の製膜面積は、基板面積と比べて、同じか、やや大きく設定している。
透明電極層形成工程の後、連続して、第二主面側の表面の第二透明電極層10のほぼ全面に、Cuを有する裏面電極層11を形成する(裏面電極層形成工程)。具体的には、第二主面側の表面の第二透明電極層10のほぼ全面に裏面電極層11を形成する(第一導電層形成工程)。この点について説明すると、裏面電極層11を形成しない領域、すなわち、裏面電極層非形成領域においては、第二透明電極層10のみが形成されており、通常この部分におけるシート抵抗は、裏面電極層形成領域(裏面電極層11を形成する領域)におけるシート抵抗より大きくなる。よって、裏面電極層11を全面に形成した場合、シート抵抗の低下による曲率因子の向上が期待できる。
以上のようにして太陽電池仕掛品1−2が作製される。
ところで、本実施形態の結晶シリコン太陽電池仕掛品を製造する場合、上記したように、光入射面側の第一透明電極層6を形成した後に連続して、裏面側の第二透明電極層10を形成している。そして、本実施形態のように第一透明電極層6の製膜面積や第二透明電極層10の製膜面積が、シリコン基板2の面積よりも大きい場合には、表面(光入射面)もしくは裏面のシリコン系薄膜層5,8や透明電極層6,10が他面に回りこむ。本実施形態では、第一透明電極層6は、第一主面側から第二主面側に跨がって形成されている。第二透明電極層10は、第二主面側から第一主面側に跨がって形成されている。すなわち、第一主面側及び第二主面側において、第一透明電極層6と第二透明電極層10が重畳した部位が存在する。
このように、表面(光入射面)もしくは裏面のシリコン系薄膜層5,8や透明電極層6,10が他面に回りこむことにより生じる将来的な電気的短絡を防止するため、絶縁領域を形成するための絶縁処理工程が必要である。ここで、絶縁領域とは、結晶シリコン太陽電池1を駆動したときに、生じる可能性がある第一主面側の少なくとも第一透明電極層6と、第二主面側の少なくとも第二透明電極層10及び裏面電極層11との短絡が除去された領域である。シリコン基板2の第一主面側の少なくとも第一透明電極層6並びに/又は第二主面側の少なくとも第二透明電極層10と裏面電極層11を構成する成分が除去され、当該成分が付着していない領域である。
ここで、「付着していない領域」とは、当該層を構成する材料元素が全く検出されない領域に限定されるものではなく、材料の付着量が周辺の「形成部」と比較して著しく少なく、当該層自体が有する特性(電気的特性、光学特性、機械的特性等)が発現しない領域も、「付着していない領域」に包含される。つまり、材料の付着量が少なすぎて層として機能していないものを含有する場合も含む。
そこで、結晶シリコン太陽電池仕掛品の外周部における絶縁処理を行う(絶縁処理工程)。絶縁処理は、第一透明電極層形成時、又は/および、第二透明電極層及び裏面電極層形成時にマスク製膜を行うことで基板端部に付着しないようにしても良いし、第一透明電極層形成工程及び、裏面電極層形成工程後に、第一透明電極層又は/及び、裏面電極層の一部をエッチング等により除去することにより行ってもよい。また、外周部付近における第一透明電極層又は/及び、裏面電極層をプラズマ処理やアニール処理により高抵抗化することで行っても良い。このような場合、基板端部表面には、テクスチャ構造が残っていることが好ましい。また、機械的な割断や、後述の基板割断工程と同様にレーザー照射により絶縁処理を実施しても良いし、光入射側からレーザーを照射して有底溝を形成するだけでもよい。これらの絶縁処理工程は、結晶シリコン太陽電池仕掛品の基板割断工程の前に行っても良いし、後に行っても良い。
ここで、レーザーを照射することにより、結晶シリコン太陽電池の端部にダメージが与えられ、太陽電池特性の低下に繋がることが知られており、特に集光型太陽電池は、太陽電池セルの面積が小さく、端部ダメージの影響が大きくなると考えられる。従って結晶シリコン太陽電池の全周に亘ってレーザー処理を施しても良いが、少しでもレーザー照射によるダメージを有する領域は少ない方が良いため、結晶シリコン太陽電池1の外周部の全周の内、少なくとも一部は、割断領域が形成されていないことが好ましく、結晶シリコン太陽電池仕掛品の外周部における絶縁処理は、レーザー照射を伴わない方法により成されることが好ましい。
ところで、集光型太陽電池の様な基板の割断を伴う結晶シリコン太陽電池の場合、図2に示されているように結晶シリコン太陽電池仕掛品1−2をレーザー光によって割断し結晶シリコン太陽電池1を製造する(基板割断工程)。この際、前述の様に、裏面電極層にCu成分が含まれている場合、裏面側からのレーザー照射による基板割断工程において、Cuのシリコン基板への拡散が起きるという問題がある。この問題を解決する為、本実施形態の結晶シリコン太陽電池1の製造方法における基板割断工程は、レーザー光を第一主面側から照射する工程を有する(レーザー照射工程)。レーザー光のビーム形状は、特に限定されない。例えば、いわゆるガウシアンビームやトップハットビーム(Top-Hat Beam)でもよい。本実施形態では、レーザー光は、ガウシアンビームである。
ここで、レーザー光を光入射面側から照射することの利点について説明する。上記したように本実施形態では、裏面電極層11の最表面に銅(Cu)を有する裏面電極層11がほぼ全面に形成されている。したがって、レーザー光を裏面側から照射した場合は、図12に示されるように、レーザー光により、溶解又は蒸発した銅(Cu)が吹き飛ばされ、加工した結晶シリコン太陽電池1の端部に付着する(図12中の斜線部)。そして、時間の経過とともに端部からCuがシリコン基板2内に拡散していくことが考えられる。すなわち、レーザー光により形成される折り割溝20の内側壁面に溶解又は蒸発した銅(Cu)が付着し、時間の経過や発電等とともにCuが内側壁面からシリコン基板2内に拡散していくおそれがある。特に集光型太陽電池の場合は、通常の太陽電池に比べ高温での動作環境となり、更に小面積であることから端部の影響が大きく、端部からの銅の拡散の影響は顕著となると考えられる。
このように、裏面電極層11を構成する銅(Cu)が、レーザー光によって、シリコン基板2内に拡散した場合、再結合中心として働くため、特に解放電圧や短絡電流の低下をもたらす。これは、どのような金属を裏面電極層11に用いた場合においても一般的に言えることであり、一般的に裏面電極層として使用される銀(Ag)やアルミニウム(Al)などについても拡散が生じうる。しかしながら、銅(Cu)はシリコンへの熱拡散速度が非常に速いため、特に顕著である。したがって、裏面電極層11の銅(Cu)がシリコン基板2へ拡散すると、太陽電池特性が低下すると考えられる。
一方、本実施形態のように、レーザー光を結晶シリコン太陽電池仕掛品1−2の光入射面側から照射する場合は、図4(a)に示されているように、そもそもレーザー光が裏面電極層11に至らないし、至ったとしても、レーザー光により吹き飛ばされる銅(Cu)は、裏面電極層11よりもレーザー照射側(光入射側)に位置する結晶シリコン太陽電池1端部(折り割溝20の内側壁面)に付着することはほとんどない。そのため、端部(折り割溝20の内側壁面)からの銅のシリコン基板2内への拡散を防止することが可能となる。
また、レーザー光を結晶シリコン太陽電池1の光入射面から照射することにより、受光面側の集電極15に対して対称な位置をレーザーで加工することができる。これにより裏面からレーザーを照射した場合に比べ、端部からの距離が概ね均等な位置に集電極15を配置することができ、集電極15の位置ズレによる電気抵抗ロスを最小に抑えることができ、量産時において曲率因子を安定的に高い値に保つことができる。以上のような観点から、本実施形態では、レーザー光を光入射面側から照射している。
また、レーザー照射工程において形成される折り割溝20は、図4(a)のように、有底溝であり、溝の深さ方向(第一主面側から第二主面側)に進むにつれて漸次的に溝幅が狭くなっている。言い換えると、溝の深さ方向(第一主面側から第二主面側)に進むにつれて内側壁面の距離が近接していく。すなわち、折り割溝20の断面形状は、テーパー状となっている。
製造方法の説明に戻ると、図4(b)レーザー照射工程で折り割溝20が形成された基板を折り割溝20に沿って外力を加えて折り曲げて割る(折り割工程)。このとき、折り割溝20の溝幅が広がる方向に割り、折り割溝20の内側壁面と異なる方向の面(折り割面21)が形成され、結晶シリコン太陽電池1の端面を形成する割断領域30となる。この折り割面21は、折り割溝20の内側壁面に対して異なる傾斜角度で傾斜しており、基板を水平面においたときの水平面に対する傾斜角度が大きくなっている。具体的には、折り割面21は、水平面に対してほぼ直交方向に延びている。このとき、前記した折り割溝20の内側壁面は、第一領域31を形成し、折り割面21は、第二領域32を形成している。このとき、外力を加える方法は特に限定されない。人力によって外力を加えて折り割してもよいし、機械を用いて折り割してもよい。また、機械を用いる場合には、手動でおこなってもよいし、自動で行っても良い。
本実施形態による結晶シリコン太陽電池1における割断領域30のSEM画像を、図8に示す。割断領域30は、図8から読み取れるように、光入射面側から裏面側にかけて第一領域31が下り傾斜しており、第一領域31に連続する第二領域32がほぼ直交方向に延びている。一方、比較例として、第二主面側からレーザーを照射して有底溝を形成し、その後、外力を加えることで折り割りを実施した結晶シリコン太陽電池のSEM画像を図9に示す。この場合、絶縁領域30は、図9から読み取れるように、光入射面側から裏面側にかけて第二領域32がほぼ直交方向に延びており、第二領域32に連続する第一領域31が下り傾斜している。また、本実施形態、及び比較例において、レーザー照射によって形成される第一領域31と、折り割によって形成される第二領域32とで明らかな表面構造の違いが見られた。
ここで、第一主面側からレーザーを照射した場合、第一主面側に存在するpn接合部がレーザー光によりダメージを受け、リーク電流が発生するという問題がある。このリーク電流を軽減するために、割断領域30を形成した後(割断処理工程後)に熱処理を行う(熱処理工程)ことが好ましい。すなわち、折り割りを行った基板を熱処理装置に入れ、所定の温度に加熱し、アニールすることが好ましい。
このとき、割断領域30を加熱する温度(アニール温度)は、リーク電流(Leakage Current)を抑制する観点から、150℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましい。一方、結晶シリコン太陽電池1は、導電型シリコン系薄膜層5,8や透明電極層6,10を有する。そのため、これらの層の変質に伴う、開放電圧(Voc)や曲線因子(FF)の低下をより抑制できる観点から、熱処理温度は250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、特に210℃以下であることが特に好ましい。
熱処理工程における雰囲気や処理圧力は、大気圧、減圧雰囲気、真空中、加圧雰囲気のいずれで実施してもよい。ただし、上述のような裏面電極層11上に保護層を形成しない場合は、裏面電極層11の変質(例えば、酸化)などをより抑制できる観点から、減圧雰囲気や真空中、酸化性ガスを低減した雰囲気で実施することが好ましい。ここでいう「大気中」とは、大気雰囲気の組成、圧力を特に制御することなく熱処理工程を実施することを意味する。なお、熱処理工程において、機密性の高い設備を用いた場合、加熱により設備内に封止された大気が熱膨張し、装置内の圧力が大気圧よりも高くなり得るが、このときも大気圧中とみなすものとする。
また、上述のように、光入射面側の集電極15として、例えば、樹脂ペーストを含有する導電性ペースト等を用いる場合、一般的に、まず150℃程度で乾燥させた後、別途樹脂ペーストを170℃〜210℃程度で硬化している。この際、前記熱処理工程において前記集電極15の硬化を行うことが好ましい。なお、集電極15は、絶縁処理工程前に形成しても良いし、絶縁処理工程後に形成しても良い。集電極15を形成する前に絶縁処理工程を行うことが好ましい。
このように、熱処理工程を行うことにより絶縁領域30でのリーク電流を抑制することができる。例えば、第一主面側からレーザー照射により一導電型単結晶シリコン基板2と逆導電型シリコン系薄膜層5に跨がるpn接合部への溝形成を行う際に生じうる、pn接合部へのダメージをより抑制することが可能となる。
以上が、本実施形態の結晶シリコン太陽電池1の製造方法の主な手順である。
上記した説明では、結晶シリコン太陽電池1の単体について説明したが、実用に供するに際しては、複数の結晶シリコン太陽電池1を適宜組み合わせて、モジュール化される。そこで、本実施形態の結晶シリコン太陽電池1を用いた太陽電池モジュール40の製造方法について、図5に基づいて説明する。
まず、上記した製造方法によって形成した結晶シリコン太陽電池1の集電極15に配線部材41を接続する。そして、配線部材41の他の部位を他の結晶シリコン太陽電池(本実施形態の結晶シリコン太陽電池1を含む)に接続する。こうすることによって、複数の結晶シリコン太陽電池が電気的に直列接続又は並列接続される。なお、配線部材は、タブ等の公知のインターコネクタである。また、複数の結晶シリコン太陽電池の接続の仕方はタブによる接続だけに限定されない。例えば、導電性材料を用いることで、タブ線なしで直接隣り合うセル同士の裏面と表面を接続しても良い。このように隣り合うセル同士を、導電性材料を介して直接貼り合わせる場合、必ず太陽電池セルが重ね合わさり、下側の太陽電池セルに影となる部分が作られる。この場合、この影となる部分に割断領域を配置することで、レーザーによるダメージ部分を含む領域を不活性化させ、再結合を抑制することが可能になると考えられる。
その後、これらの結晶シリコン太陽電池をガラス基板42とバックシート43で挟みガラス基板42(第一封止部材)とバックシート43(第二封止部材)の間を図示しない液体状又は固体状の封止材等で充填し、封止する。
以上のようにして、複数の結晶シリコン太陽電池が封止され、本実施形態の太陽電池モジュール40が形成される。
以上のように、本実施形態の結晶シリコン太陽電池1の製造方法によれば、高効率で信頼性の高い結晶シリコン太陽電池を作製することが可能となる。また低コストで生産性に優れた結晶シリコン太陽電池を作製することが可能となる。
続いて、第2実施形態における結晶シリコン太陽電池50について説明する。なお、第1実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。第2実施形態の結晶シリコン太陽電池50は、第1実施形態の結晶シリコン太陽電池1と基板割断工程が異なり、レーザー光を照射する工程のみで基板割断処理を行う。
結晶シリコン太陽電池50の割断領域51は、図6のように第一領域52(傾斜領域)から形成されている。第一領域52は、第1実施形態の第一領域31と同様、レーザー光によって形成される部位である。第一領域52は、表面がレーザー痕で形成されており、第一主面の直交方向に対してやや傾斜した方向に延びている。すなわち、第一主面から第二主面に向かって、外側に下り傾斜している。ただし、傾斜の傾きはレーザーの照射条件にも依存するため、必ずしも前述のように、第一主面から第二主面に向かって、外側に下り傾斜していなくても良い。なお、ここでいう「傾斜」とは、面全体として傾斜を表す。すなわち傾斜面は、必ずしも平滑である必要はなく、多少の凹凸があってもよい。
第2実施形態での基板割断工程では、図7に示されるように、レーザー照射において、第一主面側からレーザー光を照射し、シリコン基板2を超えて裏面電極層11まで厚み方向に貫通させて形成する。すなわち、第1実施形態のレーザー照射工程とレーザー光による除去領域が異なり、レーザー照射工程において、複数に完全に分断する。
つまり、基板割断工程において、第一主面側から第二主面側に達するようにレーザー光を照射する(レーザー照射工程)。このとき、形成される溝53は、貫通溝となっており、溝53の内側側面によって、第一領域52が形成される。言い換えると、レーザー光が照射された基板には、第一主面から第二主面に達するレーザー痕が形成される。なお、溝53の形成場所等は、第一実施形態と折り割溝20と同様である。
第2実施形態による結晶シリコン太陽電池50における割断領域51のSEM画像を、図10に示す。第2実施形態の結晶シリコン太陽電池では、割断領域51が図10から読み取れるように、光入射面側から裏面側にかけて第一領域52が下り傾斜している。また、第2実施形態の結晶シリコン太陽電池では、光入射面側からの亀裂が多かった。一方、比較例として、レーザーを第二主面側から入射した以外は、第2実施形態と同様に形成した結晶シリコン太陽電池の割断領域のSEM画像を図11に示す。この場合、絶縁領域51が図11から読み取れるように、光入射面側から裏面側にかけて第一領域52が上り傾斜している。また、比較例2の結晶シリコン太陽電池では、裏面側からの亀裂が多かった。
第2実施形態の結晶シリコン太陽電池50の製造方法によれば、基板割断工程のレーザー照射工程において基板を複数の太陽電池に割断するため、割折り工程を省略することができる。そのため、工程の簡略化が可能である。
上記した実施形態では、結晶シリコン太陽電池1を用いて太陽電池モジュール40を形成する方法の一例について説明したが、実用に供するに際しては、他の方法により、複数の結晶シリコン太陽電池1を適宜組み合わせて、適宜の方法によりモジュール化されてもよい。例えば、集電極15にタブ等のインターコネクタを介してバスバーが接続されることによって、複数の結晶シリコン太陽電池1が直列又は並列に接続され、封止剤及びガラス板により封止されることによりモジュール化を行うこともできる。
以上の構成を備えることによって、太陽電池の変換効率を向上させること可能としている。
上記した実施形態では、結晶シリコン太陽電池1の集電極15に配線部材41を接続し、配線部材41の他の部位を他の結晶シリコン太陽電池に接続していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、配線部材41の他の接続先は、外部回路であってもよい。
また、第2実施形態で作製した結晶シリコン太陽電池を用いて、第1実施形態の説明で記述したのと同様な方法により、太陽電池モジュールを作製することができる。また、第1、第2実施形態により作製した結晶シリコン太陽電池を用いた太陽電池モジュールを集光型太陽電池モジュールとして使用することができる。集光型太陽電池モジュールにミラーやレンズ等によって集光した光を照射し、集光型太陽電池システムとして使用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例の結晶シリコン太陽電池は、ヘテロ接合太陽電池であり、一導電型単結晶シリコン基板2であるn型結晶シリコン基板の両面にそれぞれ凹凸構造を備えている。n型結晶シリコン基板の光入射面には、i型非晶質シリコン層(第一真性シリコン系薄膜層3)/p型非晶質シリコン層(逆導電型シリコン系薄膜層5)/酸化インジウム層(第一透明電極層6)が製膜されている。酸化インジウム層の上には集電極15が形成されている。
一方、n型結晶シリコン基板の裏面側にはi型非晶質シリコン層(第二真性シリコン系薄膜層7)/n型非晶質シリコン層(一導電型シリコン系薄膜層8)/n型微結晶シリコン層(一導電型シリコン系薄膜層8)/酸化インジウム層(第二透明電極層10)/銅層(裏面電極層11)が製膜されている。銅層の上には集電極が形成されている。すなわち、一導電型シリコン系薄膜層8をn型非晶質シリコン層とn型微結晶シリコン層の2層構造とした。
この構造を備える実施例1の結晶シリコン太陽電池を以下のようにして製造した。
まず、以下のようにして結晶シリコン太陽電池仕掛品を作製した。
入射面の面方位が(100)で、厚みが200μmで5インチサイズ角のn型結晶シリコン基板(一導電型単結晶シリコン基板2)を、2重量%のHF水溶液に3分間浸漬し、表面の酸化シリコン膜を除去し、超純水によるリンスを2回行った。次に70℃に保持した5/15重量%のKOH(水酸化カリウム水溶液)/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬し、n型結晶シリコン基板の表面をエッチングすることで凹凸構造を形成した。超純水によるリンスを2回行い、温風により乾燥させた。
エッチングが終了したn型結晶シリコン基板をCVD装置へ導入し、入射面にi型非晶質シリコン層(第一真性シリコン系薄膜層3)を3nm製膜した。製膜した薄膜の膜厚は、ガラス基板上に同条件にて製膜した場合の膜厚を分光エリプソメトリーにて測定し、製膜速度を求め、同じ製膜速度にて製膜されていると仮定して算出した。
i型非晶質シリコン層の製膜条件は、基板温度が170℃、圧力120Pa、SiH4/H2流量比が3/10、投入パワー密度が0.011W/cm2であった。i型非晶質シリコン層の上にp型非晶質シリコン層を4nm製膜した。p型非晶質シリコン層の製膜条件は、基板温度が170℃、圧力60Pa、SiH4/B2H6流量比が1/3、投入パワー密度が0.01W/cm2であった。ここで、B2H6ガスはB2H6濃度を5000ppmまでH2で希釈したガスを用いた。次に、裏面側にi型非晶質シリコン層(第二真性シリコン系薄膜層7)を6nm製膜した。i型非晶質シリコン層の製膜条件は、基板温度が170℃、圧力120Pa、SiH4/H2流量比が3/10、投入パワー密度が0.011W/cm2であった。
i型非晶質シリコン層上にn型非晶質シリコン層(一導電型シリコン系薄膜層8)を4nm製膜した。n型非晶質シリコン層の製膜条件は基板温度が170℃、圧力60Pa、SiH4/PH3流量比が1/2、投入パワー密度が0.01W/cm2であった。ここで、PH3ガスはPH3濃度を5000ppmまでH2で希釈したガスを用いた。n型非晶質シリコン層上にn型微結晶シリコン層(一導電型シリコン系薄膜層8)を6nm製膜した。n型微結晶シリコン層の製膜条件は基板温度が170℃、圧力800Pa、SiH4/PH3/H2流量比が1/5/180、投入パワー密度が0.08W/cm2であった。
n型微結晶シリコン層を形成したn型結晶シリコン基板をスパッタ装置に導入し、光入射側に、ITO(第一透明電極層6)を70nm製膜した。この際、メタルマスクを用いてシリコン基板2の外周部の全周に亘って、基板端より幅0.5mmのITO非形成部を作製し、外周部における絶縁処理とした。
引き続き、裏面のn型微結晶シリコン層上に、スパッタ装置を用いてITO(第二透明電極層10)とCu(裏面電極層11)を、それぞれ60nm、250nm製膜した。ITOの表面形状は平坦であり、ITOのスパッタターゲットには、インジウム酸化物と酸化錫の焼結体を使用した。酸化錫の混合比は5wt%とした。
更に、第一透明電極層6上に銀ペースト(第二導電層13)をスクリーン印刷し、櫛形電極を形成し、集電極15とした。
以上の様にして作製した結晶シリコン太陽電池仕掛品をレーザー加工装置に移動させて、レーザー光によって結晶シリコン基板の光入射側に図2で示されているようにシリコン基板2を4分割するように十字に溝を形成した。レーザー光としては第三高調波(波長355nm)を用い、ウェハの3分の1程度まで切れ込みを入れてから、手で溝に沿って折り割った。この際、レーザー光は上記したように太陽電池の光入射面から行い、櫛形の集電極15に対してズレのない位置をダイシング(Dicing)した。最後に、190度で1時間アニール処理を行った(熱処理工程)。
以上のようにして、結晶シリコン太陽電池を作製した。この場合、4辺の内、2辺がレーザー痕のある割断領域であり、残りの2辺は端部側面にテクスチャ構造が確認された。4分割した結晶シリコン太陽電池の内の一つを、AM1.5のスペクトル分布を有するソーラーシミュレータを用いて、25℃の下で擬似太陽光を100mW/cm2のエネルギー密度で照射して太陽電池特性の測定を行った。
更に、当結晶シリコン太陽電池を1枚含むミニモジュールを作製し、このミニモジュールを温度85度、湿度85%の環境下に1000時間放置する環境試験を実施した。ミニモジュールの構造は、バックシート/封止材/配線部材接続済み結晶シリコン太陽電池/封止材/ガラスであり、結晶シリコン太陽電池に貼り付けた配線部材を介して外部の測定器と接続し、前記のソーラーシミュレータを用いて太陽電池特性の測定を行った。
環境試験前後で、太陽電池出力を比較し、保持率=(環境試験後出力)÷(環境試験前出力)×100≧94.0(%)を満たせば合格と判定した。
(比較例1)
レーザーの照射方向を裏面側(裏面電極層11側)から行った以外は、実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
(参考例1)
レーザーの照射方向を裏面側(裏面電極層11側)から行った点と、裏面電極層11としてCuの代わりにAgをスパッタで250nm製膜した点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
(参考例2)
裏面電極層11として、Cuの代わりにAgをスパッタで250nm製膜した以外は、実施例1と同様にして太陽電池セルを作製した。
(実施例2)
実施例1の作製方法において、割折り工程を行わずに、レーザー照射工程のみシリコン基板2の割断を行った。
(比較例2)
レーザーの照射方向を裏面側(裏面電極層11側)から行った以外は、実施例2と同様にして太陽電池セルを作製した。
上記実施例及び比較例、参考例の太陽電池セルの光電変換特性及び、環境試験後の特性の保持率を、各々表1〜表2に示す。
まず、割折り工程を行った実施例1、比較例1、参考例1,2について、表1,表2に基づいて考察を行う。表1に示されているように、全ての例について環境試験前の初期のデータを比較すると、レーザー照射を光入射面側(集電極15側)から行った実施例1及び参考例2では、裏面側(裏面電極層11側)から行った比較例1、及び、参考例1に対して、FFの値が若干低下していることが分かる。これは、レーザー照射により、光入射面側に存在するpn接合にダメージを与えているためであり、リーク電流によるFFの低下と考えられる。
次に表2より、環境試験後のデータを比較すると、裏面電極層11として銅(Cu)を用いており、かつレーザーを裏面側から照射している比較例1において、Vocが著しく低下していることが分かる。これは、レーザー照射時にシリコン基板2の端部に付着した銅(Cu)が、環境試験により徐々にシリコン基板2内に拡散していき、再結合中心を形成することで、Vocの低下を引き起こしたためと考えられる。これにより、環境試験後の変換効率の保持率は比較例1のみ94%を下回り不合格となった。一方、環境試験後の実施例1の結果から分かるように、裏面電極層11としてAgを用いた場合と略同等の変換効率を示している。
以上の結果から、裏面電極層11がCuを有する場合において、レーザーダイシングの照射方向を光入射面側からとすることで、環境試験後の太陽電池特性の低下を抑制でき、裏面電極層としてAgを用いた場合と略同等な太陽電池を低コストで作製できることが分かった。
続いて、割折り工程を行わず、レーザー照射工程のみで外周部を切除した実施例2、比較例2について、考察を行う。表1に示されているように、全ての例について環境試験前の初期のデータを比較すると、レーザー照射を光入射面側(集電極15側)から行った実施例2でと、裏面側(裏面電極層11側)から行った比較例2は、ほぼ同等のFFの値を示しており、また、実施例1と比較しても同等のFFの値となっている。これは、レーザー照射により、光入射面側に存在するpn接合にダメージを与えているためであり、リーク電流によるFFの低下と考えられる。
次に表2より、環境試験後のデータを比較すると、裏面電極層11として銅(Cu)を用いており、かつレーザーを裏面側から照射している比較例2において、Vocが著しく低下していることが分かる。これは、レーザー照射時にシリコン基板2の端部に付着した銅(Cu)が、環境試験により徐々にシリコン基板2内に拡散していき、再結合中心を形成することで、Vocの低下を引き起こしたためと考えられる。これにより、環境試験後の変換効率の保持率は、比較例2が94%(パーセント)を下回り不合格となった。一方、環境試験後の実施例2の結果は、94%を上回った。
以上説明したように、本発明の結晶シリコン太陽電池を用いることにより、信頼性の高い高出力の太陽電池セルを低コストで提供することが可能となる。