JP6312815B2 - セルロースエステル組成物及びその製造方法 - Google Patents

セルロースエステル組成物及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、繊維、フィルム(偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルム、カラーフィルタ、写真フィルム等)などのプラスチック用途、塗料、化粧品、パーソナルケア製品などとして有用なセルロースエステル組成物と、その製造方法に関する。
液晶表示装置の偏光板保護フィルム材料としてセルローストリアセテート(TAC)が使用されている。しかしながら、TACは、偏光板との貼り合わせに有利である適度な親水性を有しているがゆえに吸湿性が高い。そのため、外部などの過酷環境での使用において偏光板が吸湿して膨脹、変形し、機能が損なわれることが課題となっている。これまで、TACに疎水性添加剤を加えて耐水性を高めることや、高疎水性の添加剤と相溶化するセルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)などが検討されているが、いずれにおいても耐水性は不十分である。
TACよりも疎水性の高いセルロース誘導体として、長鎖脂肪酸でエステル化したセルロースアセテート(具体的にはセルロースアセテートステアレートなど)が知られている。例えば、特許文献1には、セルロースに酢酸とラウリン酸等の長鎖脂肪酸とをジシクロヘキシルカルボジイミドおよびトシル酸塩存在下で反応させ、得られた生成物を水で沈殿させた後、メタノールでソックスレー抽出して、セルロースアセテート長鎖脂肪酸アシレートを得たことが報告されている。また、特許文献2では、セルロースアセテートにドデカノイルクロライド等の長鎖脂肪酸クロライドを反応させ、得られた生成物をメタノールで沈殿させた後、メタノールで洗浄して、セルロースアセテート長鎖脂肪酸アシレートを得ている。さらに、特許文献3及び4では、セルロースアセテートに、トリフルオロ酢酸とステアリン酸から生成される混合酸無水物を反応させ、得られた生成物をメタノールで沈殿させ、さらにメタノールで洗浄することによりセルロースアセテートステアレートを得ている。
特開2006−249221号公報 特開2008−248208号公報 特表2008−513480号公報 特表2009−507926号公報
しかしながら、発明者らが上記先行文献2〜4に記載の方法に従ってセルロースアセテートステアレート(CASt)を製造したところ、NMRで分析される置換度は3.2以上となった。先行文献に記載の後処理(洗浄)方法では、原料由来のステアリン酸が不純物として製品に残留しているためである。CAStのNMRで分析される置換度が3をかなり超過することは、特許文献3、4にも記載されている(特許文献3の例7、特許文献4の例7及び例23)。また、発明者らが検討したところ、セルロースアセテート長鎖脂肪酸エステルの精製に、メタノールやエタノールによる洗浄、或いはソックスレー抽出は、精製操作として不十分であり、これらの方法では、製品であるセルロースアセテート長鎖脂肪酸エステル中に0.1重量%以上もの長鎖脂肪酸が残留することが判明した。このような長鎖脂肪酸が残留しているセルロースアセテート長鎖脂肪酸エステルをフィルムにすると、不純物がブリードアウトして粉がふき、光学用途には使用できない。また、先行文献記載の洗浄方法では色味がきつく残り、例えば化粧品分野での使用に問題があった。
従って、本発明の目的は、耐水性が高く、しかも製膜した際に表面に不純物がブリードアウトしないフィルムを得ることができるセルロースエステル組成物と、その効率のよい製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記特性に加えて、さらに色相に優れたフィルムを得ることができるセルロースエステル組成物と、その効率のよい製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、セルロースアセテート長鎖脂肪酸エステルの粗製品を洗浄溶媒とともに加熱した後、該洗浄溶媒を分離除去するか、又はセルロースアセテート長鎖脂肪酸エステルの粗製品を良溶媒に溶解させた後、沈殿させることにより、セルロースアセテート長鎖脂肪酸エステル製品中の長鎖脂肪酸含有量を0.1重量%未満にできること、こうして得られたセルロースアセテート長鎖脂肪酸エステル製品は色相に優れるとともに、これを製膜した場合には、表面に粉ふきのないフィルムが得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、さらに検討を加えて完成したものである。
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)セルロースの水酸基の水素原子がアセチル基及び炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基で置換されているセルロース混合脂肪酸エステルを含み、前記炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基に対応する飽和脂肪酸の含有量が前記セルロース混合脂肪酸エステルに対して0.1重量%未満であることを特徴とするセルロースエステル組成物。
(2)前記飽和脂肪族アシル基が炭素数12〜26の飽和脂肪族アシル基である上記(1)記載のセルロースエステル組成物。
(3)前記飽和脂肪族アシル基が炭素数12〜18の飽和脂肪族アシル基である上記(1)記載のセルロースエステル組成物。
(4)前記セルロース混合脂肪酸エステルがセルロースアセテートステアレートである上記(1)記載のセルロースエステル組成物。
(5)光学フィルム用である上記(1)〜(4)の何れかに記載のセルロースエステル組成物。
(6)上記(1)〜(4)の何れかに記載のセルロースエステル組成物を製造する方法であって、セルロースの水酸基の水素原子がアセチル基及び炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基で置換されているセルロース混合脂肪酸エステルの粗製品を洗浄溶媒とともに加熱する工程、及び、セルロース混合脂肪酸エステルと前記洗浄溶媒とを分離する工程を含むセルロースエステル組成物の製造方法。
(7)前記洗浄溶媒として、SP値が16〜17.5MPa1/2の溶媒を用いる上記(6)記載のセルロースエステル組成物の製造方法。
(8)前記洗浄溶媒として、(i)脂環式炭化水素、(ii)飽和脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素との混合溶媒、(iii)飽和脂肪族炭化水素と炭素数3〜6のケトンとの混合溶媒からなる群より選択された少なくとも1種の溶媒を用いる上記(6)記載のセルロースエステル組成物の製造方法。
(9)上記(1)〜(4)の何れかに記載のセルロースエステル組成物を製造する方法であって、セルロースの水酸基の水素原子がアセチル基及び炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基で置換されているセルロース混合脂肪酸エステルの粗製品を良溶媒に溶解させる工程、前記工程で得られた溶液を冷却及び/又は濃縮することによりセルロース混合脂肪酸エステルを沈殿させる工程、及び、沈殿したセルロース混合脂肪酸エステルと前記良溶媒とを分離する工程を含むセルロースエステル組成物の製造方法。
(10)前記良溶媒として、SP値が22〜23.5MPa1/2の溶媒を用いる上記(9)記載のセルロースエステル組成物の製造方法。
(11)前記良溶媒として、(i)炭素数3〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコール、(ii)芳香族炭化水素と炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとの混合溶媒、(iii)炭素数3〜6のケトンと炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとの混合溶媒、(iv)飽和脂肪族炭化水素と炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとの混合溶媒からなる群より選択された少なくとも1種の溶媒を用いる請求項9記載のセルロースエステル組成物の製造方法。
本発明のセルロースエステル組成物は、セルロースの酢酸と長鎖脂肪酸とのエステルを含むため、耐水性が高く、しかも原料に由来する長鎖脂肪酸の含有量が非常に少ないため、フィルム製膜した際に、フィルム表面に該長鎖脂肪酸がブリードアウトして粉ふきを生じない。また、本発明のセルロースエステル組成物の製造方法によれば、原料に由来する長鎖脂肪酸の含有量が非常に少なく、高純度でしかも色相に優れるセルロースエステル組成物を効率よく製造できる。上記セルロースエステル組成物は、繊維、フィルム(偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルム、カラーフィルタ、写真フィルム等)などのプラスチック用途、塗料、化粧品、パーソナルケア製品など幅広い用途に利用でき、特に、偏光板保護フィルム等の光学フィルム用として有用である。また、セルロースアセテート長鎖脂肪酸エステルには、消化を受けにくく、安定なまま腸まで到達するという性質がある。この特徴を生かし、高純度の物質の要求される医薬品や食品分野においても本発明のセルロースエステル組成物を利用できる。
[セルロースエステル組成物]
本発明のセルロースエステル組成物は、セルロースの水酸基の水素原子がアセチル基及び炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基で置換されているセルロース混合脂肪酸エステル(セルロースアセテートC6-26飽和脂肪族アシレート)(以下、単に「セルロース混合脂肪酸エステル」という場合がある)を含み、前記炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基に対応する飽和脂肪酸(炭素数6〜26の飽和脂肪酸)の含有量が前記セルロース混合脂肪酸エステルに対して0.1重量%未満である。このような長鎖飽和脂肪酸含有量の極めて少ないセルロースアセテート長鎖脂肪酸エステル組成物を製膜してフィルム化すると、表面に粉ふき等がみられず、また着色の少ない色相に優れたフィルムを得ることができる。
なお、前記炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基に対応する飽和脂肪酸とは、セルロース混合脂肪酸エステル中に導入されている炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基[RCO−基(Rは炭素数5〜25のアルキル基を示す)]のカルボニル炭素原子に式上で水酸基(−OH)を結合させて形成される飽和脂肪酸[RCOOH(Rは前記に同じ)]を意味する。セルロース混合脂肪酸エステル中には、炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基が1種のみ導入されていてもよく、また2種以上導入されていてもよい。セルロース混合脂肪酸エステル中に2種以上の炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基が導入されている場合の前記飽和脂肪酸の含有量は、導入された炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基に対応する飽和脂肪酸の総含有量である。
炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基としては、直鎖状又は分岐鎖状の何れであってもよく、例えば、カプロイル基(ヘキサノイル基)、エナントイル基(ヘプタノイル基)、カプリロイル基(オクタノイル基)、ペラルゴイル基(ノナノイル基)、カプリノイル基(デカノイル基)、ウンデカノイル基、ラウロイル基、トリデカノイル基、ミリストイル基、ペンタデカノイル基、パルミトイル基、ヘプタデカノイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基、ノナデカノイル基、イコサノイル基、ヘンイコサノイル基、ドコサノイル基などが挙げられる。
前記セルロース混合脂肪酸エステル(セルロースアセテートC6-26飽和脂肪族アシレート)としては、例えば、セルロースアセテートヘキサノエート、セルロースアセテートヘプタノエート、セルロースアセテートオクタノエート、セルロースアセテートノナノエート、セルロースアセテートデカノエート、セルロースアセテートウンデカノエート、セルロースアセテートラウレート、セルロースアセテートトリデカノエート、セルロースアセテートミリスチレート、セルロースアセテートペンタデカノエート、セルロースアセテートパルミテート、セルロースアセテートヘプタデカノエート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートイソステアレート、セルロースアセテートノナデカノエート、セルロースアセテートイコサノエート、セルロースアセテートヘンイコサノエート、セルロースアセテートドコサノエートなどが挙げられる。
これらの中でも、耐水性の観点から、セルロースアセテートラウレート、セルロースアセテートミリスチレート、セルロースアセテートパルミテート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートイソステアレート、セルロースアセテートイコサノエート、セルロースアセテートヘンイコサノエート、セルロースアセテートドコサノエート等のセルロースアセテートC12-26飽和脂肪族アシレートが好ましく、セルロースアセテートラウレート、セルロースアセテートミリスチレート、セルロースアセテートパルミテート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートイソステアレート等のセルロースアセテートC12-18飽和脂肪族アシレートがより好ましく、セルロースアセテートステアレートが特に好ましい。
不純物としての前記飽和脂肪酸は、前記セルロース混合脂肪酸エステルが有する炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基に対応する脂肪酸であり、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコサン酸、ベヘン酸などが例示される。
前記炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基に対応する炭素数6〜26の飽和脂肪酸の含有量は、前記セルロース混合脂肪酸エステルに対して0.1重量%未満であるが、より好ましくは800重量ppm以下であり、さらに好ましくは500重量ppm以下である。前記炭素数6〜26の飽和脂肪酸の含有量は、少なければ少ないほどよいが、下限は、通常、前記セルロース混合脂肪酸エステルに対して、40重量ppm程度である。
本発明において、好ましいセルロースエステル組成物は、前記セルロース混合脂肪酸エステルにおける飽和脂肪族アシル基が炭素数12〜26の飽和脂肪族アシル基である組成物(この場合、前記飽和脂肪酸は炭素数12〜26の飽和脂肪酸である)であり、より好ましいセルロースエステル組成物は、前記セルロース混合脂肪酸エステルにおける飽和脂肪族アシル基が炭素数12〜18の飽和脂肪族アシル基である組成物(この場合、前記飽和脂肪酸は炭素数12〜18の飽和脂肪酸である)であり、さらに好ましいセルロースエステル組成物は、前記セルロース混合脂肪酸エステルがセルロースアセテートステアレートである組成物(この場合、前記飽和脂肪酸はステアリン酸である)である。
前記セルロース混合脂肪酸エステル(セルロースアセテートC6-26飽和脂肪族アシレート)において、アセチル基の置換度は、例えば0.5〜2.9、好ましくは0.6〜2.8、さらに好ましくは0.8〜2.7である。また、炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基の置換度は、例えば0.1〜2.5、好ましくは0.2〜2.4、さらに好ましくは0.3〜2.3である。さらに、アセチル基と炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基の総置換度は、例えば2.0以上、好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.3以上、特に好ましくは2.5以上である。アセチル基の置換度及び炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基の置換度を上記の範囲とすることにより、酢酸セルロースの本来有する特性を保持しつつ、耐水性をより向上させることができる。
前記セルロース混合脂肪酸エステルの粘度平均重合度は、特に限定されないが、例えば50〜800、好ましくは60〜600である。粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻、第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。なお、溶媒はセルロース混合脂肪酸エステルの置換度などに応じて選択できる。例えば、メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶媒にセルロース混合脂肪酸エステルを溶解し、所定の濃度c(2.00g/L)の溶液を調製し、この溶液をオストワルド粘度計に注入し、25℃で粘度計の刻線間を溶液が通過する時間t(秒)を測定する。一方、前記混合溶媒単独についても上記と同様にして通過時間t0(秒)を測定し、下記式に従って、粘度平均重合度を算出できる。
ηrel=t/t0
[η]=(ln ηrel)/c
DP=[η]/(6×10-4
(式中、tは溶液の通過時間(秒)、t0は溶媒の通過時間(秒)、cは溶液のセルロース混合脂肪酸エステル濃度(g/L)、ηrelは相対粘度、[η]は極限粘度、DPは平均重合度を示す)。
前記セルロース混合脂肪酸エステルのTgは、アセチル基及び炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基の置換度によっても異なるが、例えば60〜180℃である。また、前記セルロース混合脂肪酸エステルの透湿度(JIS Z0208に準拠;40℃、90%RHの条件)は、アセチル基及び炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基の置換度によっても異なるが、例えば300〜2000(g/m2・24hr)である。さらに、前記セルロース混合脂肪酸エステルの黄色度(YI)は、例えば10以下、好ましくは8以下、さらに好ましくは7以下である。黄色度(YI)の下限は、例えば1.5である。なお、黄色度(YI)は、塩化物イオンの残存量が多いと高くなる傾向となる。
本発明のセルロースエステル組成物において、前記セルロース混合脂肪酸エステル(セルロースアセテートC6-26飽和脂肪族アシレート)の含有量は、組成物中の樹脂分全体に対して、例えば、50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
本発明のセルロースエステル組成物は、上記のように、耐水性に優れるとともに、フィルム化した場合、フィルム表面に不純物(飽和脂肪酸)がブリードアウトしない。また、高純度で色相にも優れる。このため、繊維;偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルム、カラーフィルタ等の光学フィルムや、写真フィルムなどのフィルム;塗料;化粧品;パーソナルケア製品;医薬品;食品などに使用できる。
[セルロースエステル組成物の製造方法]
<方法A>
上記本発明のセルロースエステル組成物は、例えば、セルロースの水酸基の水素原子がアセチル基及び炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基で置換されているセルロース混合脂肪酸エステルの粗製品(粗生成物)を洗浄溶媒とともに加熱する工程、及び、前記工程後、セルロース混合脂肪酸エステルと前記洗浄溶媒とを分離する工程を経ることにより製造できる。以下、この方法を「方法A」と称する場合がある。
方法Aにおいて、セルロースの水酸基の水素原子がアセチル基及び炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基で置換されているセルロース混合脂肪酸エステルの粗製品としては、特に限定されず、例えば、公知の合成法により合成された粗セルロースアセテートC6-26飽和脂肪族アシレートを用いることができる。例えば、種々の合成法により得られた反応液(ドープ)をメタノール中に投入して得られる沈殿を濾過等により分離したものや、この沈殿物をメタノールや水を用いて洗浄したものなどを使用できる。なお、前記セルロース混合脂肪酸エステルの粗製品は、乾燥品だけでなく、少量の溶媒を含む湿ケーキであってもよい。本発明では、前記セルロース混合脂肪酸エステルの粗製品として、前記炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基に対応する飽和脂肪酸(炭素数6〜26の飽和脂肪酸)の含有量が前記セルロース混合脂肪酸エステルに対して0.1重量%以上のものを使用することができる。従来、炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基に対応する飽和脂肪酸の含有量がセルロース混合脂肪酸エステルに対して0.1重量%未満であるセルロース混合脂肪酸エステルは得られていない。
なお、セルロースの水酸基の水素原子がアセチル基及び炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基で置換されているセルロース混合脂肪酸エステルの合成法には、(1)酢酸セルロースに、ピリジン等の塩基の存在下、炭素数6〜26の飽和脂肪酸ハライドを反応させる方法、(2)酢酸セルロースに、炭素数6〜26の飽和脂肪酸とトリフルオロ酢酸などのハロ酢酸から生成される混合酸無水物を反応させる方法、(3)酢酸セルロースに、炭素数6〜26の飽和脂肪酸の無水物を反応させる方法、(4)酢酸セルロースに、スルホン酸塩の存在下、炭素数6〜26の飽和脂肪酸を反応させる方法、(5)酢酸セルロースに、脱水縮合剤の存在下、炭素数6〜26の飽和脂肪酸とを反応させる方法、(6)セルロースに、無水酢酸と、炭素数6〜26の飽和脂肪酸の無水物とを反応させる方法、(7)セルロースに、酢酸、炭素数6〜26の飽和脂肪酸とトリフルオロ酢酸などのハロ酢酸から生成される混合酸無水物を反応させる方法、(8)セルロースに、脱水縮合剤の存在下、酢酸と炭素数6〜26の飽和脂肪酸とを反応させる方法などがある。本発明では、上記の何れの方法で合成されたセルロース混合脂肪酸エステルも用いることができるが、着色度、重合度等の品質上の観点から、上記(1)の方法で合成されたセルロース混合脂肪酸エステルを精製の対象とすることが好ましい。
方法Aにおいて、洗浄溶媒としては、SP値(溶解度パラメーター)(25℃)が16〜17.5MPa1/2の範囲にある溶媒が好ましい。洗浄溶媒のSP値がこの範囲にあると、上記セルロース混合脂肪酸エステルが洗浄溶媒によって膨潤し、該洗浄溶媒がセルロース混合脂肪酸エステルの内部に浸透して、不純物である飽和脂肪酸を効率よく抽出する。洗浄溶媒のSP値が16MPa1/2未満であると、セルロース混合脂肪酸エステルはほとんど膨潤せず、セルロース混合脂肪酸エステル中の飽和脂肪酸を抽出することが困難となる。また、洗浄溶媒のSP値が17.5MPa1/2を超えると、セルロース混合脂肪酸エステルが膨潤しすぎてゼリー状となったり、部分的に溶解してしまったりするので、セルロース混合脂肪酸エステルと洗浄溶媒とを分離することが困難となる。洗浄溶媒のSP値は、より好ましくは、16〜17MPa1/2の範囲である。
SP値としては、Allan F. M. Barton. Chem. Rev., 1975, 75(6), pp731−753に記載されている値を採用できる。Hansen法で計算された代表的な溶媒のSP値(単位:MPa1/2)を以下に示す。ブタン:14.1、ヘキサン:14.9、ジエチルエーテル:15.8、シクロヘキサン:16.8、メチルイソブチルケトン:17.0、酢酸ブチル:17.4、四塩化炭素:17.8、o−キシレン:18.0、酢酸エチル:18.1、トルエン:18.2、ベンゼン:18.6、シクロヘキサン:18.8、クロロホルム:19.0、メチルエチルケトン:19.0、テトラヒドロフラン19.4、ベンゾニトリル:19.9,アセトン:19.9、塩化メチレン:20.3、1−オクタノール:21.0、モルホリン:21.5、ピリジン:21.8、シクロヘキサノール:22.4、ニトロメタン:22.7、n−ブタノール:23.1、イソプロピルアルコール:23.5、アセトニトリル:24.4、N,N−ジメチルホルムアミド:24.9、エタノール:26.5、ジメチルスルホキシド:26.7、エチレンカーボネート:29.3、メタノール:29.6、ホルムアミド:36.7。
溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶媒を2種以上組み合わせる場合は、その混合溶媒のSP値が上記範囲に入るように選択する。混合溶媒のSP値(SPmix)は、下記式(1)により計算で求めることができる。式(1)において、SP1は第1の溶媒のSP値、SP2は第2の溶媒のSP値、SP3は第3の溶媒のSP値、SPnは第nの溶媒のSP値、v1は第1の溶媒の体積分率、v2は第2の溶媒の体積分率、v3は第3の溶媒の体積分率、vnは第nの溶媒の体積分率である。SPmixはn個の溶媒からなる混合溶媒のSP値である。
SPmix=SP1×v1+SP2×v2+SP3×v3+・・・+SPn×vn (1)
また、方法Aにおいて、洗浄溶媒として、(i)脂環式炭化水素、(ii)飽和脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素との混合溶媒、(iii)飽和脂肪族炭化水素と炭素数3〜6のケトンとの混合溶媒からなる群より選択された少なくとも1種の溶媒を用いることもできる。このような溶媒を用いると、上記セルロース混合脂肪酸エステルが該洗浄溶媒によって膨潤し、該洗浄溶媒がセルロース混合脂肪酸エステルの内部に浸透して、不純物である前記飽和脂肪酸を効率よく抽出する。この洗浄溶媒において、(i)、(ii)及び(iii)からなる群より選択された少なくとも1種の溶媒の、使用する洗浄溶媒全体に占める割合は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
前記(i)における脂環式炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサンなどの炭素数5〜10程度の脂環式炭化水素(脂環にC1-4のアルキル基等の置換基が1〜6個程度結合していてもよい)が挙げられる。
前記(ii)における飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン等の炭素数5〜10の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。
前記(ii)における芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン等の炭素数6〜10程度の芳香族炭化水素(芳香環にC1-4のアルキル基等の置換基が1〜6個程度結合していてもよい)が挙げられる。
前記(ii)の溶媒において、飽和脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素の割合は、例えば、前者/後者(重量比)=20/80〜80/20であり、好ましくは30/70〜70/30、より好ましくは35/65〜65/35である。
前記(iii)の溶媒における飽和脂肪族炭化水素としては、前記(ii)における飽和脂肪族炭化水素と同様のものが挙げられる。前記(iii)の溶媒における炭素数3〜6のケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルt-ブチルケトン、シクロヘキサノンなどの鎖状又は環状ケトンが挙げられる。
前記(iii)の溶媒において、飽和脂肪族炭化水素と炭素数3〜6のケトンの割合は、組み合わせる溶媒の種類によっても異なるが、例えば、前者/後者(重量比)=5/95〜95/5であり、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは15/85〜85/15である。
方法Aにおいて、前記セルロース混合脂肪酸エステルの粗製品を洗浄溶媒とともに加熱する工程での加熱温度は、例えば40℃以上、好ましくは50℃以上である。加熱温度の上限は、例えば、150℃(或いは100℃)である。温度が低すぎると、セルロース混合脂肪酸エステルが膨潤しにくくなり、不純物である飽和脂肪酸の除去効率が低下しやすくなる。
加熱工程の後、膨潤したセルロース混合脂肪酸エステルと前記洗浄溶媒とを分離する(分離工程)。このとき、洗浄溶媒中には前記飽和脂肪酸が溶解している。分離は、濾過、遠心分離、プレス機による脱液等の慣用の固液分離手段を用いることができる。分離する際の温度は、セルロース混合脂肪酸エステルの膨潤状態を維持できる温度であればよく、例えば40℃以上、好ましくは50℃以上である。分離する際の温度の上限は、例えば、150℃(或いは100℃)である。分離する際の温度が低すぎると、飽和脂肪酸が再びセルロース混合脂肪酸エステル中に取り込まれたり、飽和脂肪酸が析出しやすくなる。
濾過等により分離した湿状態のセルロース混合脂肪酸エステルは、必要に応じて溶媒置換を行った後、乾燥することにより、飽和脂肪酸含有量の極めて少ない、色相にも優れた高純度のセルロース混合脂肪酸エステルを得ることができる。なお、上記の加熱−固液分離の操作は2回以上行ってもよい。
<方法B>
上記本発明のセルロースエステル組成物は、また、前記セルロース混合脂肪酸エステルの粗製品(粗生成物)を良溶媒に溶解させる工程、前記工程で得られた溶液を冷却及び/又は濃縮することによりセルロース混合脂肪酸エステルを沈殿させる工程、及び、沈殿したセルロース混合脂肪酸エステルと前記良溶媒とを分離する工程を経ることにより製造することもできる。以下、この方法を「方法B」と称する場合がある。なお、「沈殿」には、再沈殿、晶析、再結晶も含まれる。
方法Bにおいて、前記セルロース混合脂肪酸エステルの粗製品としては、前記方法Aと同様のものを使用できる。また、前記セルロース混合脂肪酸エステルの合成法も特に制限はなく、前記方法Aと同様、何れの方法で合成されたセルロース混合脂肪酸エステルも使用できるが、前記と同様の観点から、上記(1)の方法で合成されたセルロース混合脂肪酸エステルを精製の対象とすることが好ましい。
方法Bにおいて、前記良溶媒としては、SP値(溶解度パラメーター)(25℃)が22〜23.5MPa1/2の範囲にある溶媒が好ましい。このような溶媒を用いることにより、前記セルロース混合脂肪酸エステルが容易に該溶媒に溶解するとともに、冷却等により容易に沈殿するので、セルロース混合脂肪酸エステル中の飽和脂肪酸を効率よく除去できる。SP値が22MPa1/2未満の溶媒では、セルロース混合脂肪酸エステルが溶解しやすいため、冷却や濃縮等によりセルロース混合脂肪酸エステルの沈殿物を形成させることが困難となる。また、SP値が23.5MPa1/2を超える溶媒では、加熱攪拌等の一般的な溶解方法ではセルロース混合脂肪酸エステルを溶解させることが困難である。溶媒のSP値については前記と同様である。溶媒は1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。溶媒を2種以上組み合わせる場合は、その混合溶媒のSP値が上記範囲に入るように選択する。
また、方法Bにおいて、良溶媒として、(i)炭素数3〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコール、(ii)芳香族炭化水素と炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとの混合溶媒、(iii)炭素数3〜6のケトンと炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとの混合溶媒、(iv)飽和脂肪族炭化水素と炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとの混合溶媒からなる群より選択された少なくとも1種の溶媒を用いる請求項9記載のセルロースエステル組成物の製造方法からなる群より選択された少なくとも1種の溶媒を用いることもできる。このような溶媒を用いることにより、前記セルロース混合脂肪酸エステル中の飽和脂肪酸を効率よく除去することができる。この良溶媒において、(i)、(ii)、(iii)及び(iv)からなる群より選択された少なくとも1種の溶媒の、使用する洗浄溶媒全体に占める割合は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
前記(i)における炭素数3〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとしては、例えば、2−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。
前記(ii)における芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン等の炭素数6〜10程度の芳香族炭化水素(芳香環にC1-4のアルキル基等の置換基が1〜6個程度結合していてもよい)が挙げられる。炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとしては、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。
前記(ii)の溶媒において、芳香族炭化水素と炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールの割合は、組み合わせる溶媒の種類によっても異なるが、例えば、前者/後者(重量比)=5/95〜95/5であり、好ましくは8/92〜50/50、より好ましくは10/90〜30/70である。
前記(iii)における炭素数3〜6のケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルt-ブチルケトン、シクロヘキサノンなどの鎖状又は環状ケトンが挙げられる。前記(iii)における炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとしては、上記(ii)における炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールと同様なものが挙げられる。
前記(iii)の溶媒において、炭素数3〜6のケトンと炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールの割合は、組み合わせる溶媒の種類によっても異なるが、例えば、前者/後者(重量比)=2/98〜90/10であり、好ましくは4/96〜50/50、より好ましくは5/95〜30/70である。
前記(iv)における飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン等の炭素数5〜10の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。前記(iv)における炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとしては、上記(ii)における炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールと同様なものが挙げられる。
前記(iv)の溶媒において、飽和脂肪族炭化水素と炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールの割合は、組み合わせる溶媒の種類によっても異なるが、例えば、前者/後者(重量比)=10/90〜90/10であり、好ましくは15/85〜70/30、より好ましくは20/80〜60/40である。
方法Bにおいて、セルロース混合脂肪酸エステルの粗製品を良溶媒に溶解させる際の温度(溶解温度)は、セルロース混合脂肪酸エステルが良溶媒に溶解する温度であればよく、例えば、20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。上記温度の上限は、例えば、150℃(或いは100℃)である。温度が低すぎると、セルロース混合脂肪酸エステルが良溶媒に溶解しにくくなる。
上記溶解工程の後、得られた溶液を冷却及び/又は濃縮することによりセルロース混合脂肪酸エステルを沈殿させる(沈殿工程)。冷却する際の温度は、前記溶解温度より低く、セルロース混合脂肪酸エステルが沈殿(又は晶析)する温度であればよく、例えば、40℃未満、好ましくは35℃以下である。上記温度の下限は、例えば0℃(或いは10℃)程度である。前記濃縮は、例えば減圧下で、溶媒を適当量蒸発させることにより行うことができる。
沈殿工程の後、沈殿したセルロース混合脂肪酸エステルと前記良溶媒とを分離する(分離工程)。このとき、良溶媒中には前記飽和脂肪酸が溶解している。分離は、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離手段を用いることができる。分離する際の温度は、上記沈殿工程の温度と同様である。
濾過等により分離した湿状態のセルロース混合脂肪酸エステルは、必要に応じて溶媒置換を行った後、乾燥することにより、飽和脂肪酸含有量の極めて少ない、色相にも優れた高純度のセルロース混合脂肪酸エステルを得ることができる。なお、上記の溶解−沈殿−固液分離の操作は2回以上行ってもよい。
上記本発明の製造方法により高純度のセルロース混合脂肪酸エステルが得られる。製品中の前記飽和脂肪酸含有量は、セルロース混合脂肪酸エステルに対して0.1重量%未満(より好ましくは800重量ppm以下、さらに好ましくは500重量ppm以下)となる。また、上記高純度セルロース混合脂肪酸エステルの黄色度(YI)は、例えば10以下、好ましくは8以下、さらに好ましくは7以下である。黄色度(YI)の下限は、例えば1.5である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、セルロース混合脂肪酸エステルの粘度平均重合度は、前記の方法[溶媒:メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)]により求めた。
(実施例1)
攪拌機、冷却管を備えた3L丸底フラスコに、ピリジン1600gを入れ、攪拌を開始した。(株)ダイセル製の酢酸セルロース(商品名「L−50」、アセチル置換度2.44;105℃で2時間乾燥し、水分量を0.5重量%以下としたもの)を275g(1.04mol)加え、シリコーン油浴で60℃まで昇温し、溶解するまで攪拌した。攪拌を継続しながら、ステアリン酸クロリド[東京化成工業(株)製]360g(1.19mol)を滴下ロートから60分かけて滴下した後、80℃に昇温し、4時間攪拌を継続した。得られた反応混合物を室温まで冷却し、攪拌しながらメタノール10kgを加え、沈殿を形成させた。沈殿物を吸引ろ過により集め、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキにシクロヘキサン(洗浄溶媒)(SP値:16.8MPa1/2)5200gを加え、60℃で1時間攪拌することにより洗浄し、脱液した。このシクロヘキサンによる洗浄操作をさらに3回繰り返した後、エタノール、水の順番で溶媒置換を行った。80℃の熱風乾燥機で15時間乾燥させ、白色〜薄黄色の固体として、セルロースアセテートステアレート370gを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は180であった。
(実施例2)
実施例1において、洗浄溶媒であるシクロヘキサンをヘキサン−トルエン=1:1(重量比)の混合溶媒(SP値:16.3MPa1/2)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、セルロースアセテートステアレートを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は180であった。
(実施例3)
実施例1において、洗浄溶媒であるシクロヘキサンをヘキサン−アセトン=3:1(重量比)の混合溶媒(SP値:16.0MPa1/2)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、セルロースアセテートステアレートを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は180であった。
(実施例4)
実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキにトルエン−イソプロピルアルコール=1:5(重量比)の混合溶媒(良溶媒)(SP値:22.7MPa1/2)5200gを加え、70℃で溶解するまで攪拌した。30℃まで冷却し、析出してきた固形分を吸引ろ過により集めた。この溶解−再沈殿をさらに3回繰り返した後、エタノール、水の順番で溶媒置換を行った。80℃の熱風乾燥機で15時間乾燥させ、白色〜薄黄色の固体として、セルロースアセテートステアレート370gを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は180であった。
(実施例5)
実施例4において、良溶媒であるトルエン−イソプロピルアルコール=1:5(重量比)の混合溶媒をアセトン:イソプロピルアルコール=1:10(重量比)の混合溶媒(SP値:23.2MPa1/2)に変更した以外は実施例4と同様の操作を行い、セルロースアセテートステアレートを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は180であった。
(実施例6)
実施例1において、原料の酢酸セルロースをアセチル置換度2.56の酢酸セルロース280g(1.04mol)に変更し、ステアリン酸クロリドの使用量を285g(0.94mol)に変更した以外は実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキを用い、実施例1と同様の洗浄操作を行い、セルロースアセテートステアレートを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は200であった。
(実施例7)
実施例1において、原料の酢酸セルロースをアセチル置換度2.24の酢酸セルロース267g(1.04mol)に変更し、ステアリン酸クロリドの使用量を476g(1.57mol)に変更した以外は実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキを用い、実施例1と同様の洗浄操作を行い、セルロースアセテートステアレートを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は160であった。
(実施例8)
実施例1において、原料の酢酸セルロースをアセチル置換度1.75の酢酸セルロース245g(1.04mol)に変更し、ステアリン酸クロリドの使用量を765g(2.52mol)に変更した以外は実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキにアセトン:イソプロピルアルコール=1:10(重量比)の混合溶媒(良溶媒)(SP値:23.2MPa1/2)5200gを加え、70℃で溶解するまで攪拌した。30℃まで冷却し、析出してきた固形分を吸引ろ過により集めた。この溶解−再沈殿をさらに3回繰り返した後、エタノール、水の順番で溶媒置換を行った。80℃の熱風乾燥機で15時間乾燥させ、白色〜薄黄色の固体として、セルロースアセテートステアレート370gを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は120であった。
(実施例9)
実施例1において、原料の酢酸セルロースをアセチル置換度0.85の酢酸セルロース206g(1.04mol)に変更し、ピリジン1600gをピリジン1000gとN,N−ジメチルアセトアミド600gの混合溶媒に変更した。また、ステアリン酸クロリドを1300g(4.29mol)に変更した。それ以外は実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキにヘキサン:エタノール=1:2(重量比)の混合溶媒(良溶媒)(SP値:22.1MPa1/2)5200gを加え、70℃で溶解するまで攪拌した。30℃まで冷却し、析出してきた固形分を吸引ろ過により集めた。この溶解−再沈殿をさらに3回繰り返した後、エタノール、水の順番で溶媒置換を行った。80℃の熱風乾燥機で15時間乾燥させ、白色〜薄黄色の固体として、セルロースアセテートステアレート370gを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は90であった。
(実施例10)
実施例1において、原料の酢酸セルロースをアセチル置換度2.24の酢酸セルロース267g(1.04mol)に変更し、ステアリン酸クロライドの使用量を141g(0.466mol)に変更した以外は実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキを用い、実施例1と同様の洗浄操作を行い、セルロースアセテートステアレートを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は160であった。
(実施例11)
実施例1において、原料の酢酸セルロースをアセチル置換度2.24の酢酸セルロース267g(1.04mol)に変更し、ステアリン酸クロライドの使用量を247g(0.815mol)に変更した以外は実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキを用い、実施例1と同様の洗浄操作を行い、セルロースアセテートステアレートを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は160であった。
(実施例12)
実施例1において、ステアリン酸クロリドをラウリン酸クロリド(東京化成工業(株))260g(1.19mol)に変更した以外は実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートラウレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキを用い、実施例3と同様の洗浄操作を行い、セルロースアセテートラウレートを得た。得られたセルロースアセテートラウレートの粘度平均重合度は180であった。
(実施例13)
実施例1において、ステアリン酸クロリドをミリスチン酸クロリド(東京化成工業(株))294g(1.19mol)に変更した以外は実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートミリスチレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキを用い、実施例3と同様の洗浄操作を行い、セルロースアセテートミリスチレートを得た。得られたセルロースアセテートミリスチレートの粘度平均重合度は180であった。
(実施例14)
実施例1において、ステアリン酸クロリドをパルミチン酸クロリド (東京化成工業(株))327g(1.19mol)に変更した以外は実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートパルミテートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキを用い、実施例3と同様の洗浄操作を行い、セルロースアセテートパルミテートを得た。得られたセルロースアセテートパルミテートの粘度平均重合度は180であった。
(比較例1)
実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキにエタノール(SP値:26.5MPa1/2)5200gを加え、60℃で1時間攪拌することにより洗浄し、脱液した。エタノール洗浄操作をさらに4回繰り返した。水で溶媒置換を行った後、80℃で15時間乾燥させ、薄黄色の固体としてセルロースアセテートステアレートを370g得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は180であった。
(比較例2)
特開2008−248208号公報の合成例10の再現実験を行い、セルロースアセテートステアレートを得た。洗浄用メタノール(SP値:29.6MPa1/2)の使用量は、洗浄1回当たり7500gとした。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は150であった。
(比較例3)
実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキに純水6000gを加え60℃で1時間攪拌して洗浄し、吸引ろ過により脱液した。この純水洗浄操作を2回繰り返した。続いて、メタノール(SP値:29.6MPa1/2)で24時間ソックスレー抽出を行った後、60℃で10時間、真空乾燥を行い。セルロースアセテートステアレートを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は180であった。
(比較例4)
特開2006−249221号公報のセルロースエステルc6の合成例の再現実験を行い、セルロースアセテートステアレートを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は160であった。
(比較例5)
特表2009−507926号公報の例7(実施例)の再現実験を行い、セルロースアセテートステアレートを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は80であった。
(比較例6)
特表2009−507926号公報の例23(実施例)の再現実験を行い、セルロースアセテートステアレートを得た。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は120であった。
(比較例7)
比較例1で得られたステアリン酸を1500ppm含有するセルロースアセテートステアレートを、特許第4853089号明細書に記載の方法で洗浄した。
比較例1から得られたセルロースアセテートステアレート100gを500gの水、コータミンD86P(花王(株)製)0.8gとレオドールSP−S10V(花王(株)製)0.2gで洗浄したところ、ステアリン酸含有量は1200ppmとなった。。得られたセルロースアセテートステアレートの粘度平均重合度は180であった。
(比較例8)
実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。得られたウエットケーキに酢酸エチル(SP値:18.1MPa1/2)5200gを加え、50℃に加熱攪拌すると均一なドープとなり、50℃においてセルロースアセテートステアレートを洗浄溶媒から分離できなかった。
(比較例9)
実施例1と同様にして、粗セルロースアセテートステアレートのウエットケーキを得た。得られたウエットケーキにトルエン(SP値:18.2MPa1/2)5200gを加え、50℃に加熱攪拌するとゲル状態となり、50℃においてセルロースアセテートステアレートを洗浄溶媒から分離できなかった。これを室温まで冷却してもゲル状態であり、回収することも不可能であった。
[評価試験]
実施例及び比較例で得られたセルロース混合脂肪酸エステルについて、以下の分析、評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1において、「置換基1」の欄には、第1の置換基(置換基1;アセチル基)に対応する脂肪酸を、「置換基2」の欄には、第2の置換基(置換基2;炭素数6〜26の飽和脂肪族アシル基)に対応する脂肪酸を記載した。
(1)製膜方法
一般的なソルベントキャスト法でフィルムを作製した。実施例及び比較例で得られた各セルロース混合脂肪酸エステル1重量部を、81重量部の塩化メチレンと9重量部のメタノールの混合溶媒に溶解させ、ドープを調製した。ガラス板上にドープを流し、バーコーターで流延した。40℃で30分乾燥させ、ガラス板からフィルムを剥離し、80℃でさらに30分乾燥させ、厚さ25μmのフィルムを得た。
(2)置換度の分析(1H−NMR測定)
装置:JEOL JNM ECA−500
温度:30℃
溶媒:CDCl3
試料濃度:0.8wt%
計算:
脂肪族エステル置換度(DSfa)=7γ/mαまたは7ε/3α
アセチル置換度(DSac)=7(β−2×DSfa)/3α
α:5.5〜3.2ppmの積分値
β:2.5〜1.75ppmの積分値
γ:1.4〜1.0ppmの積分値
ε:0.97〜0.79ppmの積分値
m:長鎖脂肪酸Cn2n+1CO2Hにおいて、m=2(n−3)
実施例及び比較例で得られた各セルロース混合脂肪酸エステルについて、上記の条件で1H−NMR測定を行い、置換度を算出した。この置換度計算方法では、脂肪酸残留量が多くなれば、脂肪族アシル基置換度が大きくなり、トータル置換度は3を超える。1H−NMRでは、残留脂肪酸とセルロース結合脂肪酸は、同一ケミカルシフトに観測されるため、それらを区別することはできないからである。上記の計算式のステアロイル等の積分値に残留ステアリン酸等由来の積分値も含まれている。
(3)置換度の分析(滴定法)
ASTMD817−96に基づき、実施例及び比較例で得られた各セルロース混合脂肪酸エステルをアルカリでけん化し、遊離酸量を滴定することにより、酢酸と脂肪酸のトータル置換度を求めることができる。さらに、特開2006−249221号公報に記載の方法で、脂肪酸と酢酸比率を求めることができる。この方法でも、残留脂肪酸とセルロース結合脂肪酸を区別することはできない。
(4)不純物量(飽和脂肪酸量)の分析(ガスクロマトグラフィー)
実施例及び比較例で得られた各セルロース混合脂肪酸エステル5gをシクロヘキサン100mLで8時間ソックスレー抽出を行った。抽出中は、ソックスレー抽出器の固体試料部分を50℃に加温した状態を保った。抽出後、シクロヘキサンを留去し、シクロヘキサンで10mLにメスアップした。これをガスクロマトグラフィーにより分析し、飽和脂肪酸濃度を求めた。なお、上述の方法ですべての飽和脂肪酸が抽出されることは、以下に記載の方法で事前に確認した。すなわち、抽出を開始して2時間おきに抽出溶媒を新しいシクロヘキサンに取り替え、抽出液をガスクロマトグラフィーにより分析し、6時間経過以降には、飽和脂肪酸が検出されないことを確認した。
装置:Hewlett−Packard製 HP6890
カラム:InertCap FFAP (内径0.25mm、膜厚0.25μm、長さ15m)
カラム温度:100℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温し、250℃で30分保持した。
キャリアガス:ヘリウム 50kPa
インジェクション:温度 250℃、スプリット比1:50
検出器:FID、温度250℃
注入量:0.5μL
(5)ブリードアウト試験(粉ふき)
上記製膜方法で得られたフィルム試料を幅手方向50mm×長手方向150mmのサイズに断裁し、23℃、55%RHの恒温恒湿槽に24時間保管した後、サンプルを40℃、90%RHの恒温恒湿槽に保管した。2日後、14日後の時点での、フィルムの表面を観察し、以下の基準に従ってブリードアウト性を評価した。
◎:14日後でもフィルム表面に粉体が発生していない
○:2日後でもフィルム表面に粉体が発生していない
△:2日後に、フィルム表面に若干の粉体がみられる
×:2日後に、フィルム表面に多量の粉体が見られる
(6)透湿度
上記製膜方法で得られたフィルム試料について、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に記載の方法で試験を行った。条件は、40℃、90%RHである。
(7)Tg測定
実施例及び比較例で得られた各セルロース混合脂肪酸エステルについて、以下に記載の装置、条件で測定を行った。
測定装置 :示差走査熱量計(「DSC−Q2000」、ティー・エイ・インスツルメント社製)
雰 囲 気 :窒素
温度範囲 :0℃〜250℃(1st)、0℃〜280℃(2nd)
昇温速度 :20℃/min
(8)色相
色相をJIS K7373を参考に、以下に記載の方法で測定した。
実施例及び比較例で得られた各セルロース混合脂肪酸エステルの試料をジクロロメタン/メタノール=9/1(重量比)混合溶液に溶解させ、5重量%溶液を調製した。この溶液をガラスセル(45L×45W×10D)に流し込み、黄色度(YI)を測定した。
測定装置:日本電色工業社製、「Spectro Color Meter SQ2000」
Figure 0006312815
本発明のセルロースエステル組成物は、耐水性が高く、しかも原料に由来する長鎖脂肪酸の含有量が非常に少ないため、フィルム製膜した際に、フィルム表面に粉ふきが生じない。また、高純度で色相に優れる。このため、繊維、フィルムなどのプラスチック用途、塗料、化粧品、パーソナルケア製品などに利用でき、特に、偏光板保護フィルム等の光学フィルム用として有用である。

Claims (7)

  1. セルロースの水酸基の水素原子がアセチル基及び炭素数12〜18の飽和脂肪族アシル基で置換されており、アセチル基の置換度が0.8〜2.7であり、アセチル基と炭素数12〜18の飽和脂肪族アシル基の総置換度が2.5以上であるセルロース混合脂肪酸エステルを含み、前記炭素数12〜18の飽和脂肪族アシル基に対応する飽和脂肪酸の含有量が前記セルロース混合脂肪酸エステルに対して0.1重量%未満であることを特徴とするセルロースエステル組成物。
  2. 前記セルロース混合脂肪酸エステルがセルロースアセテートステアレートである請求項1記載のセルロースエステル組成物。
  3. 光学フィルム用である請求項1又は2に記載のセルロースエステル組成物。
  4. 請求項1又は2に記載のセルロースエステル組成物を製造する方法であって、セルロースの水酸基の水素原子がアセチル基及び炭素数12〜18の飽和脂肪族アシル基で置換されており、アセチル基の置換度が0.8〜2.7であり、アセチル基と炭素数12〜18の飽和脂肪族アシル基の総置換度が2.5以上であるセルロース混合脂肪酸エステルの粗製品をHansen法で計算されたSP値が16〜17.5MPa 1/2 洗浄溶媒とともに加熱する工程、及び、セルロース混合脂肪酸エステルと前記洗浄溶媒とを分離する工程を含むセルロースエステル組成物の製造方法。
  5. 前記洗浄溶媒として、(i)脂環式炭化水素、(ii)飽和脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素との混合溶媒、(iii)飽和脂肪族炭化水素と炭素数3〜6のケトンとの混合溶媒からなる群より選択された少なくとも1種の溶媒を用いる請求項記載のセルロースエステル組成物の製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載のセルロースエステル組成物を製造する方法であって、セルロースの水酸基の水素原子がアセチル基及び炭素数12〜18の飽和脂肪族アシル基で置換されており、アセチル基の置換度が0.8〜2.7であり、アセチル基と炭素数12〜18の飽和脂肪族アシル基の総置換度が2.5以上であるセルロース混合脂肪酸エステルの粗製品をHansen法で計算されたSP値が22〜23.5MPa 1/2 良溶媒に溶解させる工程、前記工程で得られた溶液を冷却及び/又は濃縮することによりセルロース混合脂肪酸エステルを沈殿させる工程、及び、沈殿したセルロース混合脂肪酸エステルと前記良溶媒とを分離する工程を含むセルロースエステル組成物の製造方法。
  7. 前記良溶媒として、(i)炭素数3〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコール、(ii)芳香族炭化水素と炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとの混合溶媒、(iii)炭素数3〜6のケトンと炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとの混合溶媒、(iv)飽和脂肪族炭化水素と炭素数2〜6の脂肪族又は脂環式1価アルコールとの混合溶媒からなる群より選択された少なくとも1種の溶媒を用いる請求項記載のセルロースエステル組成物の製造方法。
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