JP7138940B2 - セルロースエステル樹脂用改質剤、セルロースエステル樹脂組成物及び光学用フィルム - Google Patents

セルロースエステル樹脂用改質剤、セルロースエステル樹脂組成物及び光学用フィルム Download PDF

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Description

本発明はセルロースエステル樹脂用改質剤、セルロースエステル樹脂組成物及び光学用フィルムに関する。
従来、セルロースエステル樹脂は、その強靭性及び透明性から写真用支持体として使用されてきた。セルロースエステル樹脂は、光学的に透明性が高いだけでなく、光学的に等方性が高いことから、近年では、液晶ディスプレイのように偏光を取り扱う装置用の光学材料として利用されており、偏光子の保護フィルム、斜め方向からの見た表示を良化する光学補償フィルム等の支持体として用いられている。
液晶ディスプレイ用の部材である偏光板に用いられる偏光子の保護フィルムとして、前記セルロースエステル樹脂からなるフィルムを使用した場合、該セルロースエステルフィルムは、湿気などの水分の浸入を十分に防止することができないため、偏光子の劣化、偏光子と保護フィルムとの間が剥離する等の問題があった。そのため、従来は、セルロースエステル樹脂に、トリフェニルホスフェート等の可塑剤を添加し、耐透湿性を付与したフィルムを偏光子保護フィルムとして使用していた。
近年、液晶ディスプレイの薄型化に対する要求が高くなっている。液晶ディスプレイの薄型化に伴い、偏光子保護フィルムの薄膜化が検討されている。前記可塑剤とセルロースエステル樹脂とを含有する偏光子保護フィルムの膜厚を要求レベルにまで薄くした場合、耐透湿性が著しく低下するという問題があった。さらに、光学用フィルムの性質として、弾性率が高いことも求められている。
セルロースエステル樹脂用改質剤として、特定のポリエステル化合物と3価以上の芳香族多価カルボン酸エステルとを組み合わせて用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、(1)セルロースエステルに10質量%添加したときにセルロースエステルの弾性率が5~20%上昇するポリエステル化合物と、(2)セルロースエステルに10質量%添加したときにセルロースエステルの弾性率が5~20%低下する3価以上の芳香族多価カルボン酸エステル化合物とを特定量含有する、セルロースエステルを主成分とする位相差板が記載されている。このように、芳香族多価カルボン酸エステル化合物を単独で改質剤としてセルロースエステルに添加すると、得られるフィルムの弾性率が低下するため、特許文献1では、芳香族多価カルボン酸エステル化合物を他の種類の改質剤と組み合わせて使用している。
セルロースエステル樹脂に優れた耐透湿性及び弾性率の両方を付与することができる、芳香族多価カルボン酸エステル化合物からなる改質剤は、現在まで見出されていなかった。
特開2007-3679号公報
本発明は、セルロースエステル樹脂に優れた耐透湿性及び弾性率を付与することができる改質剤を提供することを主な目的とする。本発明はさらに、該改質剤を含むセルロースエステル樹脂組成物、及び該樹脂組成物から作られた耐透湿性及び弾性率に優れた光学用セルロースエステル樹脂フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らがセルロースエステル樹脂に優れた耐透湿性及び弾性率を付与することができる改質剤を開発すべく鋭意検討した結果、末端を芳香族モノアルコールで封止した特定の芳香族多価カルボン酸エステル化合物をセルロースエステル樹脂用改質剤として用いることで、上記課題を解決できることを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
即ち、本発明は、下記項1~項7に示すセルロースエステル樹脂用改質剤、セルロースエステル樹脂組成物及び光学用フィルムに係る。
項1.
下記式(1)で表される芳香族多価カルボン酸エステル化合物を含む、セルロースエステル樹脂用改質剤。
Figure 0007138940000001
[式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立して、炭素数1以上6以下の直鎖のアルキレン基である。R’は、炭素数1以上4以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。mは0以上3以下の整数であり、nは1以上4以下の整数である。但し、mとnとの合計は4以下である。]
項2.
前記式(1)において、nが1又は2である、上記項1に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
項3.
前記式(1)において、nが1である、上記項2に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
項4.
前記式(1)において、mが0である、上記項1~3のいずれか一項に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
項5.
前記式(1)において、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1以上3以下の直鎖のアルキレン基である、上記項1~4のいずれか一項に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
項6.
上記項1~5のいずれか一項に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤を含む、セルロースエステル樹脂組成物。
項7.
上記項6に記載のセルロースエステル樹脂組成物を含む、光学用フィルム。
本発明によれば、セルロースエステル樹脂に優れた耐透湿性及び弾性率を付与することができる改質剤を提供することができる。本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤をセルロースエステル樹脂に添加することにより、該改質剤及びセルロースエステル樹脂を含有するセルロースエステル樹脂組成物で作られたフィルムに優れた耐透湿性及び弾性率を付与することができる。
本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤、セルロースエステル樹脂組成物及び光学用フィルムについて説明する。
1.セルロースエステル樹脂用改質剤
本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤は、下記式(1):
Figure 0007138940000002
[式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立して、炭素数1以上6以下の直鎖のアルキレン基である。R’は、炭素数1以上4以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。mは0以上3以下の整数であり、nは1以上4以下の整数である。但し、mとnとの合計は4以下である。]
で表される芳香族多価カルボン酸エステル化合物を含む。
<芳香族多価カルボン酸エステル化合物>
前記式(1)で表される芳香族多価カルボン酸エステル化合物(以下、「芳香族多価カルボン酸エステル化合物」、又は単に「エステル化合物」という場合もある)は、3価以上の芳香族多価カルボン酸とフェノキシ基を有するアルキルアルコールとの反応生成物である。すなわち、前記エステル化合物は、芳香族多価カルボン酸に含まれるカルボキシル基とフェノキシ基を有するアルキルアルコールの水酸基とを反応させて得られる、エステル結合を有する化合物である。前記エステル化合物は、芳香族多価カルボン酸に含まれるすべてのカルボキシル基がフェノキシ基を有するアルキルアルコールによって封止された構造を有する。
本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤が前記エステル化合物を含むことにより、該改質剤及びセルロースエステル樹脂を含有するセルロースエステル樹脂組成物から得られる光学用フィルムの弾性率及び耐透湿性を格段に向上させることができる。
上記式(1)のR、R、及びRで示される炭素数1以上6以下の直鎖のアルキレン基として、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、及びヘキサメチレンが挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上3以下の直鎖のアルキレン基(メチレン、エチレン、及びトリメチレン)が好ましく、エチレンがより好ましい。R、R、及びRは同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
上記式(1)のR’で示される炭素数1以上4以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基として、メチル、エチル、n-プロピル、及びn-ブチル、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、及びtert-ブチルが挙げられる。
上記式(1)において、nは1以上4以下の整数である。nが1である場合、上記式(1)で表される化合物は、3個のカルボン酸エステル基を有する。nが2である場合、上記式(1)で表される化合物は、4個のカルボン酸エステル基を有する。nが3である場合、上記式(1)で表される化合物は、5個のカルボン酸エステル基を有する。nが4である場合、上記式(1)で表される化合物は、6個のカルボン酸エステル基を有する。
上記式(1)において、mは0以上3以下の整数である。但し、mとnとの合計は4以下である。よって、nが1である場合、mは0以上3以下の整数であることができる。すなわち、nが1である場合、上記式(1)で表される化合物は、0個、1個、2個、又は3個のR’を有することができる。nが2である場合、mは0以上2以下の整数であることができる。すなわち、nが2である場合、上記式(1)で表される化合物は、0個、1個、又は2個のR’を有することができる。nが3である場合、mは0以上1以下の整数であることができる。すなわち、nが3である場合、上記式(1)で表される化合物は、0個、又は1個のR’を有することができる。nが4である場合、mは0である。すなわち、nが4である場合、上記式(1)で表される化合物は、R’を有さない。
nは、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。上記式(1)において、nが1である化合物は、芳香族トリカルボン酸エステルであり、トリメシン酸エステル(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸エステル)、トリメリット酸エステル(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸エステル)等が好ましい。上記式(1)において、nが2である化合物は、芳香族テトラカルボン酸エステルであり、ピロメリット酸エステル(ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸エステル)、ベンゼン-1,2,3,5-テトラカルボン酸エステル等が好ましい。式(1)で表される化合物として、芳香族トリカルボン酸エステルがより好ましく、トリメリット酸エステルが特に好ましい。
mは0であることが好ましい。すなわち、式(1)で表される化合物は、芳香環(ベンゼン)にカルボン酸エステル基以外の置換基を有しないことが好ましい。
前記エステル化合物として、上記式(1)において、R、R、及びRがそれぞれメチレンであり、nが1であり、mが0である化合物、R、R、及びRがそれぞれエチレンであり、nが1であり、mが0である化合物、R、R、及びRがそれぞれトリメチレンであり、nが1であり、mが0である化合物、R、R、及びRがそれぞれメチレンであり、nが2であり、mが0である化合物、R、R、及びRがそれぞれエチレンであり、nが2であり、mが0である化合物、R、R、及びRがそれぞれトリメチレンであり、nが2であり、mが0である化合物等が好ましく、R、R、及びRがそれぞれエチレンであり、nが1であり、mが0である化合物、及びR、R、及びRがそれぞれエチレンであり、nが2であり、mが0である化合物がより好ましい。
前記エステル化合物の具体例として、トリメリット酸トリ(フェノキシメチル)、トリメリット酸トリ(2-フェノキシエチル)、トリメリット酸トリ(3-フェノキシプロピル)、トリメシン酸トリ(フェノキシメチル)、トリメシン酸トリ(2-フェノキシエチル)、トリメシン酸トリ(3-フェノキシプロピル)、ピロメリット酸テトラ(フェノキシメチル)、ピロメリット酸テトラ(2-フェノキシエチル)、ピロメリット酸テトラ(3-フェノキシプロピル)、ベンゼン-1,2,3,5-テトラカルボン酸テトラ(フェノキシメチル)、ベンゼン-1,2,3,5-テトラカルボン酸テトラ(2-フェノキシエチル)、ベンゼン-1,2,3,5-テトラカルボン酸テトラ(3-フェノキシプロピル)等が挙げられる。これらの化合物の中で、トリメリット酸トリ(2-フェノキシエチル)、トリメシン酸トリ(2-フェノキシエチル)、及びピロメリット酸テトラ(2-フェノキシエチル)が好ましく、トリメリット酸トリ(2-フェノキシエチル)及びトリメシン酸トリ(2-フェノキシエチル)がより好ましく、トリメリット酸トリ(2-フェノキシエチル)が特に好ましい。
前記エステル化合物の酸価は、芳香族多価カルボン酸とフェノキシ基を有するアルキルアルコールとが反応した際に生成し得るポリエステルに存在するカルボキシル基のうち、前記フェノキシ基を有するアルキルアルコールによって封止されていないカルボキシル基に由来するものである。フィルムに優れた耐透湿性及び弾性率を付与するうえで、前記セルロースエステル樹脂用改質剤中に含まれる、カルボキシル基を有するポリエステルの含有量は極力少ないことが好ましい。よって、酸価として最も好ましい値は0であるが、酸価がある場合でも、以下に示す範囲であれば、本発明の効果を充分に示すことができる。酸価がある場合の上限としては、3mgKOH/g以下が好ましく、1mgKOH/g以下がより好ましく、0.7mgKOH/g以下が特に好ましい。酸価がある場合の下限としては、0.005mgKOH/g程度が好ましい。
<エステル化合物の製造方法>
前記エステル化合物は、前記芳香族多価カルボン酸又はその無水物と前記フェノキシ基を有するアルキルアルコールとを反応させることにより得ることができる。エステル化反応の温度、時間等の条件は特に限定されず、適宜設定することができる。具体的には、前記芳香族多価カルボン酸又はその無水物と前記フェノキシ基を有するアルキルアルコールを、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば100~250℃の温度範囲内で、5~25時間程度、周知慣用の方法でエステル化反応させることによって前記エステル化合物を製造することができる。
前記芳香族多価カルボン酸及び芳香族多価カルボン酸無水物としては、3価の芳香族カルボン酸(芳香族トリカルボン酸)、4価の芳香族カルボン酸(芳香族テトラカルボン酸)、5価の芳香族カルボン酸(芳香族ペンタカルボン酸)、及び6価の芳香族カルボン酸(芳香族ヘキサカルボン酸)、及びこれらの無水物が挙げられる。3価の芳香族カルボン酸及びその無水物として、トリメシン酸(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸)、トリメリット酸(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸)、トリメリット酸無水物(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物)等が挙げられる。4価の芳香族カルボン酸及びその無水物として、ピロメリット酸(ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸)、ピロメリット酸無水物(ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸無水物)、ベンゼン-1,2,3,5-テトラカルボン酸等が挙げられる。5価の芳香族カルボン酸として、ベンゼンペンタカルボン酸が挙げられる。6価の芳香族カルボン酸として、メリト酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)が挙げられる。3価以上の芳香族多価カルボン酸及びその無水物として、トリメシン酸(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸)、トリメリット酸(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸)、トリメリット酸無水物(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物)、ピロメリット酸(ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸)、及びピロメリット酸無水物(ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸無水物)が好ましく、トリメシン酸(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸)、トリメリット酸(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸)、及びトリメリット酸無水物(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物)がより好ましく、トリメリット酸及びトリメリット酸無水物(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物)が特に好ましい。
前記フェノキシ基を有するアルキルアルコールは、アルキレングリコールモノフェニルエーテルともいう。前記フェノキシ基を有するアルキルアルコールとして、フェノキシメタノール、2-フェノキシエタノール(エチレングリコールモノフェニルエーテル)、3-フェノキシプロパノール(プロピレングリコールモノフェニルエーテル)、4-フェノキシブタノール(ブチレングリコールモノフェニルエーテル)等が挙げられ、2-フェノキシエタノールが好ましい。
前記エステル化触媒としては、周期表2族、3族、4族、12族、13族、及び14族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属又は有機金属化合物が挙げられる。具体的には、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、ゲルマニウム等の金属;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシド(テトラブチルチタネート)、チタンオキシアセチルアセトナート等のチタンアルコキサイド類;オクタン酸スズ、2-エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、四塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、四塩化ハフニウム、四塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等の金属化合物などが挙げられる。反応性、取扱いやすさ、エステル化反応により得られたエステル化合物の保存安定性等の面から、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート等のチタンアルコキサイド類が好ましい。
前記エステル化触媒は、前記芳香族多価カルボン酸及び前記フェノキシ基を有するアルキルアルコールの合計量100質量部に対して0.001~0.05質量部程度使用することが好ましい。
本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤は、前記エステル化合物を含むものであり、前記エステル化合物からなることが好ましい。なお、本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤として、上記製造方法で得られた生成物を精製することなくそのまま使用することも可能である。この場合、前記エステル化合物だけでなく、それ以外の不純物(上述の芳香族多価カルボン酸とフェノキシ基を有するアルキルアルコールとが反応した際に生成し得る、カルボキシル基が前記フェノキシ基を有するアルキルアルコールによって封止されていないポリエステル、及び未反応物として残存し得る、フェノキシ基を有するアルキルアルコール等)が含まれるが、改質剤の作用を特に阻害するものではない。
2.セルロースエステル樹脂組成物
本発明のセルロースエステル樹脂組成物は、セルロースエステル樹脂及び前記セルロースエステル樹脂用改質剤を含む樹脂組成物である。本発明のセルロースエステル樹脂組成物は、セルロースエステル樹脂100質量部に対して前記セルロースエステル樹脂用改質剤を3~30質量部程度含むことが好ましく、4~25質量部程度含むことがより好ましく、5~20質量部程度含むことが特に好ましい。上記範囲の組成の樹脂組成物であれば弾性率及び耐透湿性に優れたフィルムを作成することができる。
前記セルロースエステル樹脂は、主としてセルロースアセテートからなるセルロ-スの混合脂肪酸エステル(セルロースアシレート)である。セルロースアシレートの原料のセルロースとしては、特に限定はなく、例えば、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。最も一般的なセルロ-スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ-スをアセチル基及び他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)又はそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。また、セルロースアシレートとしては、例えば、L-20、L-30、L-50、L-70、LT-35、LT-55(株式会社ダイセル製)、CA-394-60LF (イーストマン・ケミカル・カンパニー製)などの市販品を使用することもできる。
本発明のセルロースエステル樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲において、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては上記以外のポリエステル系改質剤、可塑剤、防湿剤、レタデーション発現剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、無機微粒子、染料などの添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、通常使用されている公知のものを用いることができる。
3.光学用フィルム
本発明の光学用フィルムは、前記セルロースエステル樹脂組成物を含むフィルムである。
本発明の光学用フィルムは、前記セルロースエステル樹脂組成物をフィルム状に成形することにより得られる。成形方法としては、例えば、前記セルロースエステル樹脂組成物を押出機等で溶融混練し、Tダイ等を用いることでフィルム状に成形する方法が挙げられる。また、前記セルロースエステル樹脂組成物を有機溶剤中に均一に溶解、混合して得られた樹脂溶液を支持体上に流延し乾燥させる溶液流延法での成形によっても得られる。溶液流延法の場合、成形途中でのフィルム中の前記セルロースエステル樹脂の配向を抑制することができるため、得られるフィルムは、実質的に光学等方性を示す。この光学等方性を示すフィルムは、光学フィルムとして液晶ディスプレイ等の部材として使用することができ、偏光板保護フィルム又は光学補償フィルム(IPS駆動方式の液晶ディスプレイ用)として有用である。また、前記フィルムは、VA駆動方式又はTN駆動方式の液晶ディスプレイ用の光学補償フィルムのように、光学異方性を示すフィルムとしても用いてもよい。
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
<測定方法>
(a)芳香族多価カルボン酸エステル化合物の酸価
三角フラスコにTHF/エタノール=5/1(質量比)の溶媒を60g入れる。そこにフェノールフタレインを指示薬として加え0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液で微紅色が確認されるまで滴定する。この中に任意の量の試料を秤取し、完全に溶解させた後、0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液で微紅色が確認されるまで滴定する。滴定結果より、以下の計算式にて酸価を求める。
Figure 0007138940000003
(b)フィルムの透湿度
試験片及び操作はJIS Z0218に準拠する。
但し、促進試験として温度条件は50℃とし、試験開始1時間目と3時間目とのカップの質量差を12倍した値を透湿度(g/m/24hr)とした。
(c)フィルムの弾性率
JIS K7127に準拠する。
使用機器:AUTOGRAPH AG-1(SHIMADZU製)
<使用原料>
セルロースエステル樹脂:株式会社ダイセル製 LT-35(酢酸セルロース)
リン酸エステル系可塑剤1:トリフェニルホスフェート
リン酸エステル系可塑剤2:ビフェニリルジフェニルホスフェート
芳香族多価カルボン酸エステル化合物A:後述する合成例1で合成した、芳香族多価カルボン酸エステル化合物
芳香族多価カルボン酸エステル化合物B:トリメリット酸トリメチル
芳香族多価カルボン酸エステル化合物C:トリメリット酸トリ-n-ブチル
芳香族多価カルボン酸エステル化合物D:トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)
芳香族多価カルボン酸エステル化合物E:エチルフタリルエチルグリコラート
<芳香族多価カルボン酸エステル化合物Aの合成>
合成例1
撹拌機、温度計、及び精留装置を備え付けた500mlのガラス製4つ口丸底フラスコに、芳香族多価カルボン酸無水物として無水トリメリット酸115g(0.6mol)、フェノキシ基を有するアルキルアルコールとして2-フェノキシエタノール323g(2.3mol)、並びに触媒としてテトラブチルチタネート0.02gを仕込んだ後、200℃まで常圧で10時間かけて昇温し、その後200℃を4時間維持した。反応中、流出してくるガスは精留装置を通して凝縮させ、反応で生成する水とその他の溶媒とに分けて、水は回収し、その他の溶媒はフラスコ内に戻した。その後、精留装置を外して、ト字管を取り付け、さらにそこに、冷却管、アダプター、100mLナスフラスコの順に器具を取り付け、再び200℃まで常圧で4時間かけて昇温し、200℃を維持したまま圧力を8kPaまで6.5時間かけて下げた。この間、反応で生成してくる水及び過剰の2-フェノキシエタノールはナスフラスコに回収した。その後、200℃で2kPaまで2.5時間かけて減圧し、過剰の2-フェノキシエタノールを回収した。その後、水蒸気発生装置を丸底フラスコに取り付け、140℃、2kPaまで0.5時間かけて昇温した後、フラスコ内質量の2分の1の量の水蒸気を2時間かけて吹き込んだ。その結果、酸価0.2mgKOH/gである、下記式の化合物が主成分である高粘稠液体338gが得られた。
Figure 0007138940000004
<フィルムの作成及び評価>
実施例1
塩化メチレン30.6g、メタノール4.3g及びブタノール1.1gの混合溶媒に、セルロースエステル樹脂4g、及び、セルロースエステル樹脂用改質剤として合成例1で製造した芳香族多価カルボン酸エステル化合物A 0.48gを溶解した。得られた溶液を、卓上コーター(TC-3:三井電気精機製)にて、アプリケータースリット幅0.6mm、コーティング速度10mm/sec、コーティング距離255mmの条件でガラス板に塗布した後、50℃にて0.5時間、その後100℃にて2時間乾燥させることで、厚さ46μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び弾性率を前記方法で測定し、得られた結果を表1に示す。
比較例1
芳香族多価カルボン酸エステル化合物Aの代わりに、芳香族多価カルボン酸エステル化合物Bをセルロースエステル樹脂用改質剤として用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ46μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び弾性率を前記方法で測定し、得られた結果を表1に記す。
比較例2
芳香族多価カルボン酸エステル化合物Aの代わりに、芳香族多価カルボン酸エステル化合物Cをセルロースエステル樹脂用改質剤として用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ47μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び弾性率を前記方法で測定し、得られた結果を表1に記す。
比較例3
芳香族多価カルボン酸エステル化合物Aの代わりに、芳香族多価カルボン酸エステル化合物Dをセルロースエステル樹脂用改質剤として用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ45μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び弾性率を前記方法で測定し、得られた結果を表1に記す。
比較例4
芳香族多価カルボン酸エステル化合物Aの代わりに、リン酸エステル系可塑剤1を0.32gと、リン酸エステル系可塑剤2を0.16g用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ45μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び弾性率を前記方法で測定し、得られた結果を表1に記す。
比較例5
芳香族多価カルボン酸エステル化合物Aの代わりに、リン酸エステル系可塑剤1を0.32gと、芳香族多価カルボン酸エステル化合物Eを0.16g用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ45μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び弾性率を前記方法で測定し、得られた結果を表1に記す。
比較例6
改質剤を添加しなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ45μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度及び弾性率を前記方法で測定し、得られた結果を表1に記す。
Figure 0007138940000005
Figure 0007138940000006
実施例1と比較例6との比較により、本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤を添加したフィルムは、該改質剤を添加していないフィルムに比べて、弾性率が高く透湿度が低いことがわかる。実施例1と比較例4及び5との比較により、本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤を含むフィルムは、従来用いられていたリン酸エステル系可塑剤を含むフィルムと比べても透湿度がさらに低く、耐透湿性が改善されていることがわかる。さらに、実施例1と比較例1~3のフィルムとの比較により、本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤(末端にフェノキシ基を有する芳香族多価カルボン酸エステル化合物)を含むフィルムは、末端がアルキル基であってフェノキシ基を有さない改質剤を含むフィルムと比べて、弾性率が高く透湿度が低い。これらのことから、本発明の組成の芳香族多価カルボン酸エステル化合物をセルロースエステル樹脂用改質剤として含むことで、フィルムの弾性率を上げ、透湿性を低くすることができることがわかる。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表される芳香族多価カルボン酸エステル化合物を含む、セルロースエステル樹脂用改質剤。
    Figure 0007138940000007
    [式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立して、炭素数1以上6以下の直鎖のアルキレン基である。R’は、炭素数1以上4以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。mは0以上3以下の整数であり、nは1以上4以下の整数である。但し、mとnとの合計は4以下である。]
  2. 前記式(1)において、nが1又は2である、請求項1に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
  3. 前記式(1)において、nが1である、請求項2に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
  4. 前記式(1)において、mが0である、請求項1~3のいずれか一項に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
  5. 前記式(1)において、R、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1以上3以下の直鎖のアルキレン基である、請求項1~4のいずれか一項に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載のセルロースエステル樹脂用改質剤を含む、セルロースエステル樹脂組成物。
  7. 請求項6に記載のセルロースエステル樹脂組成物を含む、光学用フィルム。
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