JP6304915B1 - 黄銅合金熱間加工品及び黄銅合金熱間加工品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2016年5月25日に、日本に出願された特願2016−104136号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
しかし、これらの黄銅合金材料は、金属組織がα相とβ相からなり、耐食性が悪いβ相が多く含まれるため、水栓機器などの水道水と接触するような腐食環境下で使用されると、脱亜鉛腐食が容易に発生し、経年腐食により漏水などの不具合を生じることになる。
一方、特許文献2に開示された銅基合金は、Snが含まれていないことから、実質的な耐脱亜鉛腐食性が劣り、Pを多く含む場合は鋳造時に割れを生じるなどの製造上の問題もある。
60.5≦[Cu]+0.5×[Pb]−2×[Sn]−2×[Sb]+[Ni]≦64.0、
0.03≦[Sb]/[Sn]≦0.12、
0.3≦[Ni]/[Sb]≦3.5、
を満足し、金属組織が、α相マトリックスであり、Pb粒子を含み、β相の面積率とγ相の面積率の合計の面積率が0%以上、5%以下であり、β相又はγ相の各々の長辺の長さが100μm以下であることを特徴とする。
60.7≦[Cu]+0.5×[Pb]−2×[Sn]−2×[Sb]+[Ni]≦63.6、
0.035≦[Sb]/[Sn]≦0.10、
0.4≦[Ni]/[Sb]≦3.5、
を満足し、金属組織が、α相マトリックスであり、Pb粒子を含み、β相の面積率とγ相の面積率の合計の面積率が0%以上、5%以下であり、β相又はγ相の各々の長辺の長さが100μm以下であることを特徴とする。
本実施形態である黄銅合金熱間加工品は、給水栓金具、継手、バルブ等の水道用器具として用いられるものである。また、本実施形態である黄銅合金熱間加工品は、黄銅合金熱間押出棒又は黄銅合金熱間鍛造品である。
そして、本実施形態では、この含有量の表示方法を用いて、以下のように、複数の組成関係式を規定している。
組成関係式f1=[Cu]+0.5×[Pb]−2×[Sn]−2×[Sb]+[Ni]
組成関係式f2=[Sb]/[Sn]
組成関係式f3=[Ni]/[Sb]
また、β相又はγ相の各々の長辺の長さが100μm以下とされている。
Cuは、本発明合金を構成する主要元素であり、Sn、Pb、Znとの関係に大きく影響されるが、本発明合金の熱間加工材である、熱間押出材、および熱間鍛造品において、優れた耐食性、耐脱亜鉛腐食性を有するために、Cuは61.5mass%以上必要であり、好ましくは62.0mass%以上である。一方、Cuの含有量が64.5mass%を超えると、熱間での加工時、すなわち、熱間押出および熱間鍛造時の変形抵抗を下げるβ相等の占める割合が低くなる。このため、熱間での変形抵抗が大きくなり、適切な熱間加工をするための熱間加工温度が上がる。また熱間加工性である熱間押出性、熱間鍛造性が悪くなるだけでなく、切削性も悪くなり、強度も低くなり、耐食性も飽和する。このため、Cuの含有量の上限は64.5mass%以下であり、好ましくは64.0mass%以下である。
Pbは、切削性(被削性)を向上させるために含有される。そのためには、Pbは0.6mass%以上必要である。好ましくは0.7mass%以上であり、特に切削性が求められる場合には1.0mass%以上である。Pbの含有量が多くなるにしたがって切削性が向上する。一方、Pbが2.0mass%を超えて含有されると、水への溶出量が多くなり、環境負荷が大きくなるおそれがあるため、Pbの含有量の上限は2.0mass%以下とする。
なお、Pbは、銅合金の母相中にほとんど固溶しないため、Pb粒子として存在することになる。Pb粒子の大きさおよび分布は、切削性(被削性)に大きく影響し、またPbの溶出量にも影響を与える。切削性(被削性)の向上のためには、Pb粒子の大きさが小さく、均一かつ高密度で分布していることが望まれる。一方、Pbの溶出量に関しては、接触する水道水などの水溶液と接触するPb粒子の面積が多いほど、溶出量が多くなるため、切削性(被削性)と相反するPb粒子の大きさおよび分布となる。従って、本発明合金に必要である切削性(被削性)と溶出量が問題とならないようにバランスさせるには、Pb粒子の大きさと分布のそれぞれに適正な範囲がある。切削性(被削性)のためにはPb粒子の平均粒子径は0.2μm以上、3μm以下であることが必要である。Pb粒子の平均粒子径が3μmを超えると、切削時にPb粒子が切削面に引き伸ばされるが、そのPbの面積が増大する。このため、結果として水道水と接触するPbの面積が大きくなりPbの溶出量が増加する。平均粒子径が0.2μm未満では、粒子が小さく、切削性の向上のためのチップブレーカーとしての役割を果たさなくなる。
Pb粒子の分布は、断面積100μm2当たりのPb粒子の存在個数(密度)で示す。Pb粒子の分布(密度)が0.002個/100μm2以上、0.06個/100μm2以下であれば、切削性(被削性)に寄与する。Pb粒子の分布が0.002個/100μm2未満では、Pb粒子の存在が低く、チップブレーカーとしての役割を果たさず、被削性指数が小さくなってしまう(75%未満)。
また、Pb粒子の分布は、切削性(被削性)の観点からすると、多い方が有利であるが、Pbの溶出の観点からは少ない方が良い。Pb粒子は切削時に刃具と接触した場合、その時に生じた熱によって一部溶解するなど、刃具の動く方向に引き伸ばされることにより、実質的に切削表面の広範囲に存在することとなる。従って、Pb粒子の分布が多いと、必然的に切削後の表面に存在するPbは多くなり、Pbの溶出量が必然的に大きくなる。JIS S3200−7(水道用器具―浸出性能試験方法)によりPbの浸出量(溶出量)を測定すると、容量補正を行っても0.007mg/Lを十分超えるのは、Pb粒子の平均粒径が3μmを超え、また粒子の分布が0.06個/100μm2を超える場合である。なお、鉛浸出量(溶出量)の0.007mg/Lは、厚生労働省令第一五号に記載の末端給水栓における浸出液に係る基準の上限(主要な部材を銅合金を用いた場合)であり、この基準を超える材料は、末端給水栓として用いることが出来なくなる。
従って、Pb粒子の分布(密度)の上限としては、溶出量(浸出量)に問題が生じない0.06個/100μm2以下とする。
以上のことから、Pb粒子の平均粒子径は0.2〜3μmであり、分布については0.002〜0.06個/100μm2となる。
Snは、Cu、Znとの関係に大きく影響されるが、銅合金にとって過酷な水質での耐食性、特に耐脱亜鉛腐食性を向上させる。さらに、Snは、熱間加工すなわち、熱間押出時、および熱間鍛造時の熱間での変形抵抗を低くする。これらを達成するためには、Snは、0.55mass%以上必要であり、好ましくは0.60mass%以上であり、より好ましくは0.65mass%以上である。一方、Snが1.0mass%を超えて含有されると、γ相、或いはβ相の占める割合が多くなり、却って耐食性が問題になる。このため、Snの含有量の上限は、1.0mass%以下であり、好ましくは0.95mass%以下である。
Sbは、銅合金にとって過酷な水質での耐食性、特に耐脱亜鉛腐食性を向上させる働きがあり、SnおよびNiの共添加のもと、より一層その効果を発揮する。優れた耐食性を発揮するためには、Sbは0.02mass%以上必要であり、好ましくは0.03mass%以上であり、より好ましくは0.035mass%以上である。一方、Sbは0.08mass%を超えて含有しても、その効果は飽和するだけでなく、熱間での加工性に悪影響を及ぼし、冷間での加工性も悪くなる。このため、Sbの含有量の上限は、0.08mass%以下であり、好ましくは0.07mass%以下であり、より好ましくは0.065mass%以下である。
Niは、Sn、Sbとの共添加の下、銅合金にとって過酷な水質での耐食性、耐脱亜鉛腐食性を向上させ、特にSbの効果を最大限に発揮させる働きがある。優れた耐食性を発揮するためには、Niは0.02mass%以上必要であり、好ましくは0.025mass%以上である。一方、Niを0.10mass%を超えて含有すると、過酷な水質下でNiの溶出量が増えるおそれがある。このため、Niの含有量の上限は0.10mass%以下であり、好ましくは0.095mass%以下である。
Pbを含有した銅合金は、リサイクル、コストの点から切削切屑や廃棄製品が主要原料として使われる。切削切屑には、例えば、工具摩耗等によりFe等の数種の元素が混入する。廃棄製品には、Crなどのめっきが施されていることがある。それらが原料として使われるため、不可避不純物は、他の銅合金より多く混入する。たとえば、不純物として扱われるFeの量に関しては、JIS H 3250で規定される約3mass%のPbを含有する銅合金(C3604)、約4mass%のPbを含有する銅合金(C3605)では、0.5mass%まで許容されている。
したがって、本発明合金においては、特性に重大な影響を及ぼさないことが前提で、Fe、Cr、Mn、Alなどの不可避不純物は、合計で1.0mass%まで許容される。
PはSbと同様に銅合金の耐食性を向上させる働きがある。しかし、少量でもPが混入すると、鋳塊作成時に表面あるいは内部に割れが生じやすく、また、熱間加工中に材料表面に割れが生じやすくなる。Cu、Pb、Sn、Niの含有量にもよるが、例えばPの含有量が0.02mass%を超えると、鋳塊作成時の問題や熱間加工時の問題が生じるため、Pが混入したとしてもその上限値を0.02mass%以下とすることが好ましい。
優れた耐食性を発揮するためには、また、良好な熱間加工性を確保するためには、Cu、Sn、Ni等の各元素の含有量の範囲を規定するだけでは不十分である。Cuの含有量を[Cu]mass%、Pbの含有量を[Pb]mass%、Snの含有量を[Sn]mass%、Sbの含有量を[Sb]mass%およびNiの含有量を[Ni]mass%とすると、組成関係式f1=[Cu]+0.5×[Pb]−2×[Sn]−2×[Sb]+[Ni]の値が60.5未満であると、良好な耐食性が得られない。さらに熱間加工(熱間押出、熱間鍛造)後の工程で、熱処理を施しても優れた耐食性が発揮できない。
よって、組成関係式f1の下限は、60.5以上であり、好ましくは60.7以上、より好ましくは61.0以上である。
一方、組成関係式f1=[Cu]+0.5×[Pb]−2×[Sn]−2×[Sb]+[Ni]の値が64.0を超えると、熱間での変形抵抗が高くなり、また、熱間での変形能が悪くなり、良好な熱間加工性、すなわち、熱間押出性、熱間鍛造性が確保できない。例えば、熱間加工温度や設備能力にもよるが、良好な熱間加工性とは、熱間押出については、押出棒の表面に割れが無く、実用上多く使用される最小の寸法、φ12mmに押し出すことが可能かどうかである。熱間鍛造については、鍛造品の表面に割れが生じず、薄肉鍛造まで可能かどうかである。
よって、組成関係式f1の上限は、64.0以下であり、好ましくは63.6以下であり、より好ましくは63.0以下である。
単に、Sb、Snが所定量で含有されているだけでは、特に優れた耐食性、耐脱亜鉛腐食性は得られない。Sn、Sbの両元素はともに、600℃以上の高温で安定なβ相に、マトリックスのα相より、多く固溶する。或は、Sn、Sbは、475℃以下、特に450℃以下の低温側で安定なγ相に、マトリックスのα相より、多く固溶する。マトリックスのα相と、β相および/またはγ相との比率にもよるが、本発明合金の組成であれば、β相中に固溶するSn、Sbの量は、α相中に固溶するSn、Sbの量より、概ね2〜7倍多い。またγ相中に固溶するSn、Sbの量は、α相中に固溶する量より、概ね7〜15倍多く固溶する。まず、マトリックスのα相の耐食性を優れたものにするためには、SbとSnの存在比が重要であり、SbとSnが前記の組成範囲であることが前提である。組成関係式f2=[Sb]/[Sn]が、0.03≦f2≦0.12であるとき、SnとSbの共添加の効果が一層顕著なものとなり、α相の耐食性が最も向上する。好ましくは、組成関係式f2の下限は0.035以上であり、組成関係式f2の上限は0.10以下である。
475℃以下あるいは450℃以下の温度になると、β相がα相に変化するとき、β相に固溶するSn、Sb濃度が一層高くなることによりγ相は生成する。0.03≦f2≦0.12の時、α相とγ相の結晶粒界、相境界、およびγ相自体の耐食性が一段と向上する。
高温の変形能に関し、組成関係式f2=[Sb]/[Sn]が0.12を超えると、Snに比べ、Sbの量が過剰となり、α相、およびβ相の熱間での変形能が低下し、熱間加工性を悪くする。
組成関係式f2=[Sb]/[Sn]と同様に、NiとSbの関係も重要である。Niの存在によって、マトリックスのα相、γ相の耐食性に対して、Sbの効果が一層高められ、β相の耐食性に対しても高められる。特に、高温で安定であるβ相から、α相に変化するときの結晶粒界、相境界、および低温側でβ相からγ相とα相に変化するときの相境界、およびγ相の耐食性を向上させる。それらの効果を発揮するには、組成関係式f3=[Ni]/[Sb]の値が0.3以上であり、好ましくは0.4以上である。上限は、本発明合金のNi組成範囲では特に制約する必要はないが、前記効果が飽和することを鑑みて、組成関係式f3=[Ni]/[Sb]の値を3.5以下とする。
良好な熱間加工性を確保するためには、熱間加工温度で、β相が存在することが必須要件である。高温の加熱温度、或いは加工温度で生成するβ相は、温度低下と共にα相、或いはγ相に変化する。製造プロセスにもよるが、本発明合金の組成であっても、耐食性に問題のあるβ相が残留し、γ相が生成することがある。前記のSn、Sb、Niを、組成関係式f2=[Sb]/[Sn]、および組成関係式f3=[Ni]/[Sb]が適正になるように含有させることにより、β相、γ相の耐食性を向上させているので、一般的な水質では問題とはならないが、過酷な環境下では十分とは言えない。
まず、上述の成分組成とされた鋳塊を準備し、この鋳塊に対して熱間加工(熱間押出し、熱間鍛造)を行う。さらに、本実施形態では、熱間加工後に熱処理を実施してもよい。
この熱間加工においては、670℃以上820℃以下の温度で熱間押出または熱間鍛造し、620℃から450℃の温度領域を、2℃/分以上200℃/分以下の平均冷却速度で冷却することが好ましい。熱間加工した材料は最終的に100℃以下とし、多くは室温まで冷却される。
熱間加工温度(熱間押出温度および熱間鍛造温度)が高すぎると、表面に微細な割れが生じる。このため、熱間加工温度(熱間押出温度および熱間鍛造温度)は820℃以下としており、好ましくは800℃以下である。
一方、熱間加工温度(熱間押出温度および熱間鍛造温度)が低すぎると、変形抵抗が高くなる。加工設備能力にもよるが、例えば、サイズの小さな細棒(直径12mm以下)を製造するとき、押出が困難となったり、押出ができても、加工中の温度低下により押出しきれない部分が生じ、鋳塊から製品の重量比である歩留まりが悪くなったりするおそれがある。また、加工度の高い鍛造品では、十分に材料が充填されず成形できないおそれがある。
特に熱間押出棒は、鋳塊からの押出によって得られる。熱間押出棒の金属組織は、押出方向と平行に並び、伸長しやすい状況にある。
一方、熱間鍛造品は、鋳塊から押出によって得られた熱間押出材を素材として熱間鍛造して得られる。熱間鍛造では製品の形状によって、熱間鍛造中に金型の中でさまざまな方向に材料が塑性変形して流れるが、基本的に材料の流れに沿った金属組織となる。熱間押出材を加熱して熱間鍛造するが、鍛造の金型に沿った形状に塑性変形し、加熱された熱間押出棒の金属組織が破壊されるため、一般的には素材である熱間押出材よりも結晶粒が大きくなることはほとんどない。
Pb粒子は上述のように銅合金にはほとんど固溶しないため、金属のPb粒子として存在し、結晶粒内および結晶粒界に関係なく、存在する。従って熱間加工中あるいは後述する熱処理中で、Pbの融点である327℃以上にある場合、Pbは液体の状態にある。熱間加工の温度、金属組織の流れおよび冷却速度によってPb粒子の大きさ(平均結晶粒径)および分布(存在個数の密度)も変化する。これは後述する熱処理でも同じである。
熱間加工後に熱処理を行う場合には、熱処理温度を470℃以上560℃以下とし、熱処理温度での保持時間を1分以上8時間以下とすることが好ましい。
より耐食性を高めるためには、熱処理が有効な手段である。しかしながら、熱処理温度が560℃を超えると、β相の減少(β相からα相への相変化)に関して効果がなく、寧ろβ相が増えることがあり、耐食性に問題が生じる。このため、熱処理温度の上限は560℃以下であり、好ましくは550℃以下である。一方、熱処理温度が470℃未満の温度で熱処理すると、β相は減少するが、γ相が増し、場合によっては、耐食性が悪くなることがある。このため、熱処理温度の下限は470℃以上であり、好ましくは490℃以上である。
なお、熱間鍛造は、熱間押出材(鍛造素材)に対して施されるが、鍛造される棒材に熱処理を施しても鍛造性に大きな影響は与えない。これは熱間鍛造の前に鍛造素材を加熱するため、熱処理の履歴もクリアされるためである。ただし、熱処理をするためにはコストがかかることから、一般的には、熱間鍛造する黄銅合金は、押出のまま(熱処理を施さない)の材料が用いられることが多い。
また、以下、評価結果において、符号“◎”は“優(excellent)”を意味し、符号“○”は“良(good)”を意味する。符号“△”は“可(fair)”を意味し、符号“×”は“不良(poor)”を意味し、符号“××”は“非常に悪く、不良(very poor)”を意味する。
なお、表1に示す組成のビレットは、商用の溶解炉及び鋳造機を用いて製造されたものである。具体的には、低周波誘導炉で所定の成分になるように銅合金溶湯を溶製し、半連続鋳造機により、直径240mmのビレットを製造した。
表2及び表3に示す組成のビレットは、実験室の小規模な溶解設備で製造されたものである。具体的には、小型の高周波溶解炉で所定の成分になるように銅合金溶湯を溶製し、金型に鋳込み、直径100mm×長さ125mmのビレットを製造した。
表1に示す組成のビレットを直径240mm×長さ750mmに切断し、2750トンの間接押出機により、直径12mmに押し出した。なお、押出前に誘導加熱炉によりビレットを加熱し、表4に記載された押出温度とした。
押出後の棒材の620℃から450℃の温度領域の冷却速度は表4に示す条件とした。なお、ビレットおよび押出後の棒材の温度は、放射温度計を用いて測定した。
また、熱間押出工程後の押出品に対して、表4に示す条件で熱処理を実施した。
表1に示す組成のビレットを直径240mm×長さ750mmに切断し、2750トンの間接押出機により、直径20mmに押し出した。なお、押出前に誘導加熱炉によりビレットを加熱し、表5に記載された押出温度とした。押出後の棒材の620℃から450℃の温度領域の冷却速度は表5に示す条件とした。なお、棒材は室温(20℃)まで冷却した。
得られた熱間押出材を直径20mm×長さ30mmの円柱状に切断してサンプルを採取した。このサンプルを表5に示す温度まで加熱し、200トンのフリクションプレスで、円柱状のサンプルを立てて、高さ30mmから12mm(加工率60%)まで自由鍛造した。鍛造材の620℃から450℃の温度領域の冷却速度は表5に示す条件とした。この熱間鍛造品も室温(20℃)まで冷却した。
上記の熱間押出材を作製する際に用いられ、表1に示す組成の直径240mmのビレットから一部を切断し、次いで、その表面を切削加工し、直径95mm×長さ120mmとした。これをラボ押出材1を作製するためのビレットとして用いた。これをマッフル炉により表6に示す温度にまで加熱し、200トンの直接押出機により、直径20mmの熱間押出棒を得た。
押出後の棒材の620℃から450℃の温度領域の冷却速度は表6に示す条件とした。押出棒は室温(20℃)まで冷却した。
また、熱間押出工程後の押出品に対して、表6に示す条件で熱処理を実施した。
表2及び表3に示す組成のビレットの表面を切削加工し、直径95mm×長さ120mmとした。これをマッフル炉により表7及び表8に示す温度にまで加熱し、200トンの直接押出機により、直径20mmの熱間押出棒を得た。
押出後の棒材の620℃から450℃の温度領域の冷却速度は表7及び表8に示す条件とした。押出棒は室温(20℃)まで冷却した。
また、熱間押出工程後の押出品に対して、表7及び表8に示す条件で熱処理を実施した。
表2及び表3に示す組成のビレットの表面を切削加工し、直径95mm×長さ120mmとした。これをマッフル炉により表9及び表10に示す温度にまで加熱し、200トンの直接押出機により、直径20mmの熱間押出棒を得た。
押出後の棒材の620℃から450℃の温度領域の冷却速度は表9及び表10に示す条件とした。押出棒は室温(20℃)まで冷却した。
得られた熱間押出材を、直径20mm×長さ30mmの円柱状に切断してサンプルを採取した。このサンプルを表9及び表10に示す温度まで加熱し、200トンのフリクションプレスで、円柱状のサンプルを立てて、高さ30mmから12mm(加工率60%)まで自由鍛造した。鍛造材の620℃から450℃の温度領域の冷却速度は表9及び表10に示す条件とした。なお、熱間鍛造品は室温(20℃)まで冷却した。
また、熱間鍛造工程後の鍛造品に対して、表9及び表10に示す条件で熱処理を実施した。
熱間押出材においては、直径12mmで押し切れない部分を残すことなく押し出しできたものを「○」とし、押し切れない部分があったものを「×」とし、熱間押出材の表面に割れが認められたものを「××」と評価した。なお、商用で実際に行われている押出工程では、鋳塊(ビレット)すべてを棒材に押出すことはない。全てを押出すると鋳塊末端部分となる押出材の後端部には欠陥が生じることとなり製品にならない。このため、鋳塊末端部分の一定量を残して押出工程を実施した。その残す部分の長さを50mmとし、量産機の押出能力で50mmを超える鋳塊が残ってしまった場合を「×」と評価した。
ラボ押出材においては、直径20mmの熱間押出棒で押出長さが200mm以上のものを「○」と評価し、200mm未満のものを「×」と評価し、熱間押出材の表面に割れが認められたものを「××」と評価した。
鍛造荷重が100トン以下で鍛造できたものを「○」と評価し、鍛造荷重が100トンを超えた場合を「×」と評価し、熱間鍛造材の表面に割れが認められたものを「××」と評価した。鍛造性としては「○」評価が必要である。鍛造荷重が100トンを超えると、能力の小さな鍛造機で鍛造が困難になり、また複雑な形状の鍛造品が成形できない可能性もあるため、熱間鍛造性としては「×」の評価とした。
金属組織は、熱間押出材については、図1に示すように、押出方向と平行方向に直径Dの1/4部分(表面から直径Dの1/4の箇所である、φ20mm材であれば表面から5mmの部分、φ12mm材であれば表面から3mmの部分)の断面ミクロ組織を観察した。
熱間鍛造材については、図2に示すように、中心部から8mm外側の部分について直径方向に切断した横断面で、表面から厚みの1/4である3mmの箇所の断面ミクロ組織を観察した。なお、熱間鍛造では高さ30mmから12mmまで自由鍛造した場合、直径約32mmの円盤形状となる。
この観察試料を3vol%過酸化水素水と3vol%アンモニア水の混合エッチング液でエッチングし、金属顕微鏡(株式会社ニコン製EPIPHOTO300)を用いて倍率200倍で金属組織を観察した。
Pb粒子の大きさおよび分布(密度)の測定は以下の方法で行った。Pb粒子の大きさについては、Pb粒子が細かい場合もあり、金属顕微鏡を用い倍率1000倍で金属組織を撮影し、その金属組織を195mm×243mmに拡大した(実質倍率は1775倍)。その測定視野の任意の重なりの無い3視野(75mm×100mm:実質的な評価面積0.06mm2)において、Pb粒子部分を色分けし、その色分けした面積を画像処理ソフトを用いて測定し、それぞれのPb粒子の面積から平均粒子径を測定した。詳細には、Pb粒子が円であると仮定し、おのおの測定された面積からPb粒子の直径を粒子径として求めた。そして、観察された全てのPb粒子の粒子径の平均値を求め、平均粒子径とした。また、Pb粒子の分布(密度)は、以下のように測定した。Pb粒子の平均粒子径を求めた3視野において、Pb粒子の個数をカウントした。測定した箇所全体に対するPb粒子の個数を求めて100μm2(10μm×10μm)当たりの個数を計算した。そして、その3箇所の平均値を求め、分布(密度)とした。
β相およびγ相は、α相よりも耐食性が劣る。Sn,Sb,Niの適正な添加によって耐食性は強化されるが、過酷な条件ではβ相およびγ相に脱亜鉛腐食が発生する可能性があり、耐食性の観点から、それらの相が連続していない、つまり長手方向の長さが短い方が良く、100μm以下とすることが望ましい。
脱亜鉛腐食試験としてISO6509−1(Corrosion of metalsand alloys−Determination of dezincification resistance of copper alloys with zinc−Part1:Test method)に記載の脱亜鉛腐食試験により各黄銅合金材の脱亜鉛腐食性を評価した。つまり、75℃に保持した1vol%塩化第2銅水溶液に断面ミクロ組織を観察した面を暴露し(暴露面積を1cm2としてマスキング)、24時間浸漬した。次いで、暴露面と垂直方向から断面ミクロ組織を観察し、暴露面全体で最も脱亜鉛腐食が深い部分である最大脱亜鉛腐食深さを測定した。
最大脱亜鉛腐食深さが100μm未満であれば、耐脱亜鉛腐食性があると判断されるため、「△」以上の評価であれば、耐食性(耐脱亜鉛腐食性)があると言える。
さらに過酷な腐食環境での試験として、水道水に次亜塩素酸ナトリウムを適宜添加し、炭酸ガスを吹き込み、残留塩素濃度30ppm、pH6.8に調整して試験液を作製した。ISO6509試験と同じ方法で暴露面を調整した試験片を作製した。液温40℃の試験液に試験片を浸漬した。8週間後に試験片を取り出し、ISO6509試験と同じ方法で最大脱亜鉛腐食深さを測定した。
浸漬試験では、明確な耐脱亜鉛腐食性があると判断される基準はないが、ISO6509試験と同じく最大脱亜鉛腐食深さが100μm未満であれば、耐脱亜鉛腐食性があると判断した。
いずれの脱亜鉛腐食試験においても最大脱亜鉛腐食深さが小さい方が耐食性は良好であることは言うまでもない。
直径20mmの熱間押出材(熱処理なし)を用意した。直径3.5mmのストレートドリルにより、回転数1250rpm、送り速度0.17mm/revとして、熱間押出材(棒材)の中心部に深さ10mmの穴をあけた。そのときのドリルに掛かるトルクとスラストの抵抗値を測定し、トルクとスラストの2乗平均平方根である切削抵抗値を求めた。JIS H3250 C3604の切削抵抗値を基準とし、以下の式で被削性指数を求め、その値で被削性を評価した。
被削性指数(%)=(各黄銅合金材の切削抵抗値)/(C3604の切削抵抗値)×100
被削性指数が90%以上を「◎」と評価し、被削性指数が75%以上90%未満を「○」と評価し、被削性指数が75%未満を「×」と評価した。
被削性指数は75%以上であれば、C3604と大きな遜色なく工業的に切削が可能である。
また、直径20mm、高さ30mmの棒材を高さ12mmまで鍛造し、熱間鍛造材(熱処理なし)を用意した。直径3.5mmのストレートドリルにより、直径20mmの熱間押出材の場合と同じ条件で試験を行い、熱間鍛造材の被削性を評価した。
各種の試験結果を表11〜表24に示す。
Cuの含有量が61.7mass%とされた合金No.S40(試験No.T40、T70)及びCuの含有量が61.8mass%とされた合金No.S52(試験No.T52、T82)においては、押出性に問題はないが、押出材においてβ相率が3〜4%、β相とγ相の合計(β+γ)が5%と高く、β相又はγ相の最大長さも90〜95μmと比較的長い。耐食性(耐亜鉛腐食性)としては、押出材、鍛造材およびそれぞれの熱処理材においても△評価であり、実用上問題ないが、その他の本発明合金に比べてやや耐食性は低い。
Cuの含有量が64.7mass%とされた合金No.S136(試験No.T136)においては、押出不可(押出し切れない部分があり、実験室押出材では押出長さが200mm未満)であり、量産に対して問題がある。ただしβ相、γ相は少なく耐食性は良好である。
Pbの含有量が2.15mass%とされた合金No.S145(試験No.T145)においては、その他成分が範囲内にあり、熱間加工性、耐食性および被削性は問題ない。しかし、Pbが多いと水への溶出量が多くなるおそれがあり、溶出量を低減するための処理などが必要となる。この材料はPb粒子の平均粒子径が3.0μm、分布(密度)が0.06個/100μm2を超えており、上記のごとくPbの溶出量が多くなる。
Pbの含有量が本発明の範囲内であれば、被削性評価が「◎」あるいは「○」となり、優れている。被削性は、Pbだけでなく組織にも影響するため、Pbの含有量だけでは評価できないが、評価が「◎」となるのは適正範囲内で多く含むサンプルである。
Pb粒子の平均粒径および分布(密度)は熱間加工(熱間押出、熱間鍛造)の条件や熱処理の条件によって若干影響している。合金No.S5において、熱処理温度が580℃と高い場合(試験No.T5−2)、Pbの平均粒子径は溶出量に問題が生じる3μmを超えている。また、合金No.S1のラボ押出材の熱間押出温度が850℃と高い場合(試験No.T21−3)も、Pbの平均粒子径は3μmを超える。合金No.S37、S44およびS45において、熱間鍛造温度が840℃以上と高い場合(試験No.T67−3、T74−2、T75−3)、表面割れが生じ、熱間加工性については問題があり、その後の熱処理等の調査は行わなかった。さらに同じ合金において熱間鍛造温度が670℃未満の低い場合(試験No.T67−5、T74−3、T75−5)も、変形抵抗が高く熱間鍛造時の荷重が100tを超え、その後の熱処理などについては調査を行わなかった。これらの合金についてPb粒子の平均粒子径および分布についてのみ調査した。その結果、合金No.S37では850℃で熱間鍛造した場合(試験No.T67−3)、Pb平均粒子径は3μmを超えた。またNo.S44およびS45において熱間鍛造温度が840℃の場合(試験No.T74−2、T75−3)、Pbの分布は0.001個/100μm2となり、切削性(被削性)が悪かった。また、合金No.S44において熱間鍛造温度が650℃と低い場合(試験No.T74−3)、Pbの平均粒子径が0.1μmとなり、これも切削性(被削性)が悪かった。これらのPbの平均粒子径および分布が適性範囲から外れた場合には切削性あるいはPbの溶出に問題が生じることになる。それらが適正範囲にある場合には切削性(被削性)評価に問題なく、優れている。
Snの含有量が1.10mass%とされた合金No.S142(試験No.T142)においては、γ相率が多くなり、β相とγ相の合計(β+γ)が5%を超える。そのため耐食性が悪く、熱処理をしても耐食性は悪いままである。
一方、Snの含有量が多いとγ相が多くなる傾向にあるが、本発明の範囲内であれば問題ない。Snの含有量が0.96mass%とされた合金No.S49(試験No.T49、T79)では、熱間押出材あるいは熱間鍛造材のγ相が多めであり、耐食性評価も△が多かった。
このように、Snの含有量によって耐食性は改善されるが、適正範囲を超えると金属組織にγ相が多くなり耐食性が逆に悪くなる。
Niの含有量が0.021mass%とされた合金No.S41(試験No.T41、T71)は、組成関係式f3=[Ni]/[Sb]も低めであるが、耐食性の評価では△が多く、特に浸漬試験の評価が△であり、耐食性がある材料ではあるものの本発明合金の中ではやや劣る結果となった。
Niの含有量が0.11mass%と本発明の範囲よりも高い合金No.S146(試験No.T146)では、熱間押出性や耐食性には問題が無いが、水に対してNiの溶出量が多くなるため好ましくない。その他の元素の含有量や組成関係式にもよるが、Niの含有量が多くなると耐食性評価も○が多くなり、耐食性が良好となる。
Sbの含有量が0.024mass%とされた合金No.S34(試験No.T34、T64)及びSbの含有量が0.028mass%とされた合金No.S43(試験No.T43、T73)においては、耐食性評価が△が多く、耐食性には実用上問題がないが、Sbが耐食性に影響していることが分かる。
一方、Sbの含有量が0.085mass%とされた合金No.S139(試験No.T139)においては、Sbの含有量が多いため耐食性は良好であるが、熱間押出時に割れが生じるなど熱間加工性が悪い。Sbが本発明の範囲内であれば、他の添加元素の含有量あるいは組成関係式にも影響されるが、耐食性は良くなる。
Pの含有量が0.02mass%以下である合金No.S5(試験No.T5−1〜11、T15)では、鋳造性、熱間加工性(押出性、鍛造性)に問題はなかった。一方、Pの含有量が0.026mass%である合金No.S7(試験No.T7、T17)では、熱間加工(熱間押出、熱間鍛造)時に割れが生じた。
組成関係式f1が60.63とされた合金No.S56(試験No.T56、T86)においては、ややβ、γ相が多めであるが耐食性評価は△であった。
組成関係式f1が64.09とされた合金No.S135(試験No.T135)においては、β相、γ相も少なく、耐食性も良好であるが、押出時に割れが発生するなど熱間加工性に問題がある。
組成関係式f1の数値が適正範囲内にあれば、その他の元素などにも影響されるが、耐食性の評価が良好になる傾向にある。以上、組成関係式f1は、熱間加工性および耐食性に関係し、適正範囲内にあることが本発明合金にとっては重要である。
一方、組成関係式f2が0.132とされた合金No.S134(試験No.T134)では、耐食性は良好であるが、熱間押出時に割れが発生するなど熱間加工性に問題が生じる。
組成関係式f2が0.11とされた合金No.S42(試験No.T42、T72)、組成関係式f2が0.105とされた合金No.S55(試験No.T55、T85)では、耐食性も比較的良好であり、熱処理を行うことで耐食性評価が○以上となり問題ない。しかし、押出先端部分の表面は開口した割れは認められなかったが、凹凸が存在し、割れが発生する限界に近い兆候が見られた。
その他、組成関係式f2が適正な範囲内にあれば、熱間加工性あるいは耐食性も良好である。もちろん、組成関係式f2は上述のように熱間加工性や耐食性に大きく関与するが、その他の組成関係式および添加元素によってそれぞれの特性が影響される。
組成関係式f3が0.38とされた合金No.S54(試験No.T54、T84)では、浸漬試験の耐食性がいずれの△と評価は低めではあるものの、耐食性があると判断できるレベルであった。組成関係式f3が適正な範囲内であれば、その他の元素の含有量や他の組成関係式にも影響されるが、良好な耐食性を示す。
熱間加工(熱間押出、熱間鍛造)時の温度条件が840℃や850℃と高温である場合には、押出材では割れが発生し、鍛造品では表面割れが生じるなど高温での変形能が悪くなる。また、試験No.T21−3やT67−3のように熱間加工時の温度が高い条件ではPbの平均粒子径が大きくなり、Pbの溶出量も増加することになり悪影響を及ぼす。
反対に、熱間加工(熱間押出、熱間鍛造)時の温度条件が640℃や650℃と低温である場合には、押出が不可(実験室押出材で押出長さが200mm未満となる)あるいは鍛造で鍛造荷重が大きくなるなど高温での材料の変形抵抗が高くなり、熱間加工性が低くなる。試験No.T21−5の熱間押出温度が640℃と低い場合、Pbはその粒径も小さく、さらに分布が0.06個/100μm2を超えることになり、この場合はPbの溶出量に問題が生じることになる。このように熱間加工(熱間押出、熱間鍛造)時の温度条件は熱間加工時の加工性だけでなく、Pbの粒径、分布にも影響する。
一方、上述の冷却速度が2℃/分よりも小さい場合は実施していないが、例えば1℃/分とすれば冷却時間が170分となり、量産性に支障をきたすなど問題がある。
熱間押出材および熱間鍛造品の熱処理の条件が560℃を超える場合には、β相が多く、また最大長さも長くなり、耐食性が悪い。
熱間押出材および熱間鍛造品の熱処理の条件が470℃未満の場合には、他条件よりもγ相が多くなり、最大長さも長く、耐食性が悪くなる。
保持時間は1分未満の条件では押出ままと同じであり、熱処理の効果が見られない。一方、8時間(480分)を超えても8時間以内での条件と大きな差はなく、熱処理のためのコストがかかるだけとなる。
Claims (8)
- Cu:61.5mass%以上64.5mass%以下、Pb:0.6mass%以上2.0mass%以下、Sn:0.55mass%以上1.0mass%以下、Sb:0.02mass%以上0.08mass%以下、Ni:0.02mass%以上0.10mass%以下、を含み、残部がZn及び不可避不純物からなり、不可避不純物であるPの含有量が0.02mass%以下とされ、
Cuの含有量を[Cu]mass%、Pbの含有量を[Pb]mass%、Snの含有量を[Sn]mass%、Sbの含有量を[Sb]mass%、Niの含有量を[Ni]mass%とした場合に、
60.5≦[Cu]+0.5×[Pb]−2×[Sn]−2×[Sb]+[Ni]≦64.0、
0.03≦[Sb]/[Sn]≦0.12、
0.3≦[Ni]/[Sb]≦3.5、
を満足し、
金属組織が、α相マトリックスであり、Pb粒子を含み、β相の面積率とγ相の面積率の合計の面積率が0%以上、5%以下であり、β相又はγ相の各々の長辺の長さが100μm以下であることを特徴とする黄銅合金熱間加工品。 - Cu:62.0mass%以上64.0mass%以下、Pb:0.7mass%以上2.0mass%以下、Sn:0.60mass%以上0.95mass%以下、Sb:0.03mass%以上0.07mass%以下、Ni:0.025mass%以上0.095mass%以下、を含み、残部がZn及び不可避不純物からなり、不可避不純物であるPの含有量が0.02mass%以下とされ、
Cuの含有量を[Cu]mass%、Pbの含有量を[Pb]mass%、Snの含有量を[Sn]mass%、Sbの含有量を[Sb]mass%、Niの含有量を[Ni]mass%とした場合に、
60.7≦[Cu]+0.5×[Pb]−2×[Sn]−2×[Sb]+[Ni]≦63.6、
0.035≦[Sb]/[Sn]≦0.10、
0.4≦[Ni]/[Sb]≦3.5、
を満足し、
金属組織が、α相マトリックスであり、Pb粒子を含み、β相の面積率とγ相の面積率の合計の面積率が0%以上、5%以下であり、β相又はγ相の各々の長辺の長さが100μm以下であることを特徴とする黄銅合金熱間加工品。 - 前記Pb粒子の平均粒径が0.2μm以上、3μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の黄銅合金熱間加工品。
- 前記Pb粒子の分布が0.002個/100μm2以上、0.06個/100μm2以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の黄銅合金熱間加工品。
- 前記Pb粒子の平均粒径が0.2μm以上、3μm以下であり、かつPb粒子の分布が0.002個/100μm2以上、0.06個/100μm2以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の黄銅合金熱間加工品。
- 水道用器具として使用されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の黄銅合金熱間加工品。
- 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の黄銅合金熱間加工品を製造する黄銅合金熱間加工品の製造方法であって、
670℃以上820℃以下の温度で熱間加工し、620℃から450℃までの温度領域を、200℃/分以下の平均冷却速度で冷却することを特徴とする黄銅合金熱間加工品の製造方法。 - 前記熱間加工後に、470℃以上560℃以下の温度で、1分以上8時間以下の保持する熱処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の黄銅合金熱間加工品の製造方法。
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