JP5484634B2 - 鍛造性、耐応力腐食割れ性及び耐脱亜鉛腐食性に優れた銅基合金 - Google Patents
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Description
しかも、これらの製品には耐応力腐食割れ性及び耐脱亜鉛腐食性に優れた材料であることが不可欠である。
本発明は、かかる傾向および要請に応えるべくなされたもので、工業的に満足しうる被削性及び強度を有し、且つ優れた鍛造性、耐応力腐食割れ性及び耐脱亜鉛腐食性を有する銅基合金の提供を目的とする。
また、本発明に係る銅基合金は特許文献1の発明とは相違し、Si、Ni等を添加する必要がない。
鍛造用黄銅材において、熱間加工時の延性を確保するには、β相の出現が不可欠であるが、鍛造後の金属組織中にα相の他にβ相が混在すると、このβ相を起点に脱亜鉛腐食が発生しやすい。
また、金属組織中に硬くて脆いγ相が出現すると機械的性質の伸びが低下し、結晶粒界に偏析物が多くなると応力腐食割れが出現しやすい。
また、γ相はα相に比較して脱亜鉛腐食が発生しやすい。
Cu成分は、63%(以下全て質量%)を超えると、熱間加工時の変形抵抗が大きくなりすぎ、61%を下回ると、耐脱亜鉛腐食性が低下する。
Sbとの併用でSn単独で得られないとされる耐応力腐食割れが改善する。
本願成分系においてSn成分が1.8%未満では鍛造性が劣り、2.8%を超えると脆くなる。
従って、Fe成分は、0.1%以下、好ましくは、0.05%以下、さらに望ましくは、0.02%以下である。
また、本発明にて、Ni及びSi成分も不純物である。
Ni成分は、0.02%以下が好ましく、Si成分は、0.01%以下が好ましい。
有効に作用するには少なくとも0.05%の添加が必要である。
しかし、Sbは銅合金を非常に脆くさせるので、0.10%が限界であると推定していたが、追加実験により上限は0.25%であることが判明した。
本願発明に係る銅基合金は、鍛造後に室温まで自然冷却するとα相の他にγ相が析出し、約5%以下のβ相が残っている金属組織になっている。
詳細については後述するが、ISO法に準拠して脱亜鉛腐食試験を実施したところ、図5に金属組織写真例を示すようにγ相が脱亜鉛していることが分かった。
そこで、銅合金中の添加成分がα相とγ相でどのような局部的濃度になっているかEPMA分析したところ、Sbはα相よりもγ相に多く存在し、このSbの添加量を増加させるとγ相におけるSbの濃度が高くなり、γ相の脱亜鉛腐食を抑える効果が確認できた。
このことからSb成分は、0.05〜0.25%の範囲がよいことが明らかになった。
また、好ましくはSb成分は0.06%以上、さらに好ましくは0.09%以上で0.25%以下がよい。
これまでにも脱亜鉛腐食の原因の1つにγ相の偏析があると言われており、従来はγ相を小さく分散させる検討は提案されていたようですが、本発明のようにγ相中のSb濃度を高くする方策はなかった。
Pの適正添加量は0.04〜0.15%となる。
また、熱間加工性が悪くなるので0.45%以下が望ましい。
従ってSe成分を添加する場合は、0.02〜0.45%の範囲が好ましい。
図1の表中、発明合金と表示した欄の成分は本発明の実施例に該当し、比較例と表現したもののうち、No.21〜23及びNo.25,26は、合金成分のうち1つ以上の成分が本発明の範囲から外れ、No.24は市販材からサンプリングしたものである。
<評価試験>
(1)鍛造試験
上記で得られた銅基合金材を長さ22mmに切断し、図6に示す試験方法にて鍛造性を評価した。
図6にてアプセット率(%)={(22−h)/22}×100の値が大きい方が厳しい試験方法となる。
本発明においては、鍛造の難しい製品を念頭においているので、アプセット率60〜90%にて鍛造性を評価した。
鍛造温度は700,750,800℃の3条件とした。
鍛造機はメカニカルプレス250トンを使用した。
評価としては、アプセット率80%で、上記3種類の温度の中で最も鍛造性の良い温度での品物を選び、割れが生じていないものを○、部分的に割れが認められたものを△、全体に割れが見られたものを×とした。
図9(a)に示した写真は、発明合金No.1の例で、(b)は比較例No.22の例を示し、鍛造温度800℃で、上からアプセット率:70%、80%、90%である。
(2)応力腐食割試験
外径が22mmの銅基合金材を長さ78mmに切断し、熱間鍛造を行なって図7(a)に示す形状に仕上げた。
めねじ部の外径が25mmで内側のネジは1/2インチのテーパーめねじとした。
これに図7(b)に示すようなシールテープを巻いた1/2インチテーパーおねじの継手を60N・mのトルクでねじ込み、アンモニア濃度14%のアンモニア水を入れたデシケータ内に24時間放置し、試験を行なった。
図8に試験状態を示す。
24時間経過後にデシケータ内から各供試材を取り出して希硝酸で洗浄した後に、目視確認により割れ有無の評価を行なった。
割れの発生がないものを「○」、割れの発生が認められたものを「×」とした。
(3)耐脱亜鉛腐食試験
ISO法に準拠して、試験材を75±3℃のCuCl2・2H2Oの12.7g/l溶液に24時間浸漬し、脱亜鉛腐食深さを測定し、以下の基準により評価した。
脱亜鉛深さ100μm以下のものは合格(○)、脱亜鉛深さが100μmを超えるものは不合格(×)とした。
(4)機械的性質
図1に示すような各種合金組成の鋳塊(外径60mm、長さ80mmの円柱形状)を熱間(600〜620℃)で外径10mmの丸棒状に押出加工し、その後、常温まで空冷することによって銅基合金材を得た。
これを平行部の径が7mm、標点距離は25ミリになるように機械加工して引っ張り試験を行ない、0.2%耐力、引張強さ、破断伸びを測定した。
ここで、引張強さが370N/mm2以上、破断伸びが15%以上を判定基準とした。
両方を満足する場合を◎、1項目を満足する場合を○、両方とも満足できない場合を×と判定した。
本発明に係る実施例のNo.1〜10は、Pb:1.3〜2.0%,Sn:1.8〜2.8%,Sb:0.05〜0.25%,P:0.04〜0.15%の範囲であるので、鍛造性、耐応力腐食割れ性、耐脱亜鉛腐食性及び機械的性質のいずれにおいても実用上、問題がなかった。
発明合金No.6〜No.10は追加的に試作評価したものである。
合金No.6は、Pb成分量が1.97%,Sb成分量が0.22%であったが、図2の表に示すように鍛造性、耐応力腐食割れ性、耐脱亜鉛腐食性及び機械的性質のいずれの品質も基準をクリアーしていた。
合金No.7〜No.10は、Sbの量を順次増加させたものである。
合金No.10は、Sb:0.144%添加のものよりやや脆くなり、機械的性質がやや低下したものの、その他の特性には変化がなかった。
銅合金組織中のSbの挙動については、後述する。
これに対して、比較例No.21はSb成分が0.01%と本発明の範囲、0.05%より少ないので耐応力腐食割れ性が特に劣っていた。
比較例No.22はCu:63.1%と63.0%を超え、Pbも2.09%と2.0%を超えているので特に鍛造性が劣っていた。
比較例No.23はPbが本発明の範囲を超え、Snが本発明の範囲以下なので鍛造性、耐応力腐食割れ性が特に劣っていた。
比較例No.24の市販材は本発明合金より、機械的性質以外の全ての品質項目で劣っていた。
比較例No.25は、Pbが本発明の範囲を超えているので鍛造性がやや劣っていた。
比較例No.26は、Pbが本発明の範囲を超え、SnとSbが本発明の範囲以下なので、鍛造性と耐応力腐食割れ性が劣っていた。
図3の表に示した成分の合金組成の鋳塊(外径60mm、長さ80mmの円柱形状)を熱間(600〜630℃)で外径17ミリの丸棒状に押出加工し、その後、常温まで空冷することによって銅基合金材を得た。
押出加工における熱間条件は、鍛造に近い。
一方、金属組織は押出方向に析出物が細長くなる。
よって、押出加工材の方が鍛造材よりも脱亜鉛腐食試験条件が過酷である。
そこで、最も脱亜鉛しやすい方向である押出方向に垂直な面を暴露面として、ISO法に準拠して、試験材を75±3℃のCuCl2・2H2Oの12.7g/L溶液に24時間浸漬し、最大脱亜鉛深さ(単位:μm)を求めた。
Sbの添加量が高くなるにつれて耐脱亜鉛腐食性は良くなるが、0.15%以上になると改善効果に変化が見られない。
そこで、機械的特性を考慮して上限を0.25%とした。
Sbの添加量を多くすることで耐脱亜鉛腐食性がよくなる理由を調査すべく、EPMAによる微小部分の定量分析を実施し、その結果を図4に示す。
Sbの添加量を増すと、α相中のSb量に変化は見られないがγ相中のSbが増えている。
このことから、γ相中にSbが移動し、脱亜鉛腐食を抑えていることがわかった。
しかし、γ相中のSbが0.9%を超えると効果は変わらないようである。
また、γ相中のSb成分量に着目すると、γ相中のSb成分量は0.6〜1.3%の範囲が好ましいことになる。
Claims (3)
- 質量%において、Cu:61.0〜63.0%、Pb:1.3〜2.0%、Sn:1.8〜2.8%、Sb:0.05〜0.25%、P:0.04〜0.15%で残部がZnと不純物からなり、熱間加工後の金属組織γ相中のSb成分濃度がα相中の当該濃度より高くなり、鍛造性、耐応力腐食割れ及び耐脱亜鉛腐食性に優れたことを特徴とする銅基合金。
- 質量%において、Cu:61.0〜63.0%、Pb:1.3〜2.0%、Sn:1.8〜2.8%、Sb:0.05〜0.25%、P:0.04〜0.15%、更に、Te:0.01〜0.45%、Se:0.02〜0.45%のうち、少なくとも1種の元素を含有し、残部がZnと不純物からなり、熱間加工後の金属組織γ相中のSb成分濃度がα相中の当該濃度より高くなり、鍛造性、耐応力腐食割れ性及び耐脱亜鉛腐食性に優れたことを特徴とする銅基合金。
- 銅基合金に添加した際のSb:0.05〜0.25%よりもγ相中のSb濃度の方が高くなっていることを特徴とする請求項1又は2記載の銅基合金。
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