JP6477127B2 - 銅合金棒および銅合金部材 - Google Patents
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Description
そのようなCu−Ni−Zn合金として、例えば、JIS C 7541には、Cu(60.0〜64.0mass%)、Ni(16.5〜19.5mass%)、Pb(0.8〜1.8mass%)、Zn(残部)等を含有する快削洋白が規定されている。
また、特許文献1には、Al(5〜9mass%)、Ni(1〜4mass%)、In(0.005〜0.3mass%)の他に、Mn(0.1〜0.5mass%)、Co(0.001〜0.01mass%)、Be(0.0025〜0.2mass%)、Ti(0.001〜0.01mass%)、Cr(0.05〜0.2mass%)、Si(0.001〜0.5mass%)、Zn(0.005〜0.5mass%)、Sn(0.003〜0.4mass%)のうち1種又は2種を含有し、残部Cuと不可避不純物からなるアルミ銅合金が開示されている。
本発明の第1の態様である銅合金棒は、30.0〜42.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、0.01〜11.0mass%のNiと、0.01〜1.5mass%のSnとを含有し、さらに、0.01〜1.2mass%のAl、0.01〜1.2mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、Znの含有量[Zn]mass%と、Pbの含有量[Pb]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Alの含有量[Al]mass%と、Mnの含有量[Mn]mass%と、Asの含有量[As]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Sbの含有量[Sb]mass%との間に、33.0≦[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]≦38.0の関係を有し、かつ3.3≦0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]≦4.8の関係を有しており、α相マトリックスにおけるβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%との間に1.5≦(β)+(γ)≦14.0の関係を有するとともに、任意の断面においてβ相の長手方向に垂直な方向の直線上を横切るβ相の数密度が9〜29個/mmである金属組織を有する。
組成指数f2=0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]
なお、上述の組成とされた第1の実施形態である銅合金棒を第1発明合金棒と称する。
なお、上述の組成とされた第2の実施形態である銅合金棒を第2発明合金棒と称する。
まず、本発明の銅合金棒(第1、2発明合金棒)の必須元素であるZn、Pb、Ni、Snの含有量について説明する。
Znは、本発明の銅合金棒において、Sn、Niとの共添加により、色調を黄銅色から少し黄味を帯びた銀白色とさせると共に、耐変色性、抗菌性(殺菌性)を高め、引張強度、耐力等の機械的強度を向上させる重要な元素である。Znを30.0mass%以上、より好ましくは、33.0mass%以上含有させることにより、上述の作用効果を得られる。一方、Znを42.0mass%を超えて含有させても含有量に見合った効果を得られず、β相がより多く残存し易くなり、強度は向上するものの冷間加工性、耐衝撃性、耐食性、抗菌性(殺菌性)が低下してしまう。したがって、Znの含有量は42.0mass%以下とし、好ましくは38.0mass%以下とする。このように、Znの含有量は、30.0mass%以上42.0mass%以下の範囲内とし、特にNiの含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下のとき、Znの含有量を33.0mass%以上38.0mass%以下とすることが好ましい。
Pbは、本発明の銅合金棒において、せん断加工や研磨等における加工性、被削性を向上させる効果がある元素である。ここで、Pbを0.0005mass%以上含有させることにより上述の作用効果を得られるが、0.30mass%を超えて含有させると、熱間加工性が低下してしまう。また、Pbは有害物質であるので、含有量を最小限に留めるのが望ましい。そこで、Pbの含有量は、0.0005mass%以上0.30mass%以下の範囲内とし、好ましくは0.005mass%以上0.1mass%以下とする。
Niは、本発明の銅合金棒において、耐変色性、機械的強度を確保する上で重要な元素であって、少なくとも0.01mass%以上の含有量で上記効果が発揮される。一方、Niを11.0mass%を超えて含有させても、他の元素との関係を鑑みても耐変色性はわずかに向上するものの上記効果は飽和し、却って熱間押出性、熱間鍛造性が低下し、さらに抗菌性や色調も損なわれる。また、Niは過多であるとアレルギー(Niアレルギー)の原因にも成り得る。そこで、Niを添加する場合には、Niの含有量を0.01mass%以上11.0mass%以下の範囲内とし、特に耐変色性をほとんど損なうことなく、さらに高い抗菌性(殺菌性)を確保するためには、好ましくは1.0mass%以上5.0mass%以下であり、最適には1.5mass%以上4.0mass%以下とする。
Snは、本発明の銅合金棒において、耐変色性、機械的強度を向上させる効果を有する元素である。ここで、Snを0.01mass%以上含有させることにより、上述の作用効果を得られる。一方、Snを1.5mass%を超えて含有させると含有量に見合った効果を得られず、鋳造時に固相線温度と液相線温度が広がってしまい濃度偏析を招き易くなり、熱間加工性、冷間加工性が低下してしまう。それに加え、γ相の量が多くなり、抗菌性、耐食性も低下してしまう。そこで、Snを添加する場合には、Snの含有量を0.01mass%以上1.5mass%以下の範囲内とする。特に、Niの含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下のとき、Snの含有量は、好ましくは、0.1mass%以上であって、最適には、0.2mass%以上とし、Snの含有量の上限を、好ましくは1.2mass%、最適には1.0mass%とする。特に、0.7×[Ni]+[Sn]の値が1.2以上3.5以下である時、優れた耐変色性と抗菌性を備えることができる。
Alは、上述の銅合金において、鋳造時の湯流れ性(鋳造性)、耐変色性、強度を向上させる効果を有する元素である。ここで、Alを0.01mass%以上含有させることにより上述の作用効果を得られる。一方、Alを1.2mass%を超えて含有させても含有量に見合った効果を得られず、強固な酸化皮膜が形成されるので、抗菌性(殺菌性)が阻害される。そこで、Alを添加する場合には、Alの含有量を0.01mass%以上1.2mass%以下の範囲内とする。なお、AlをSnと共添加することにより、抗菌性(殺菌性)を低下させることなく、良好な耐変色性を得ることができる。Alの含有量は、好ましくは0.1mass%以上1.1mass%以下であり、最適には0.9mass%以下である。また、Niの含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下のとき、NiとAlの相互作用の観点から、Alの含有量の上限は、好ましくは0.5mass%以下であり、最適には0.3mass%以下である。
Mnは、上述の銅合金棒の色調面でNiとの共添加で効果を発揮し、白色性を強め、耐変色性を向上させる元素であり、Ni代替元素としての役割を果たす。また、Mnの添加は、強度、耐摩耗性、曲げ加工性を向上させる効果もある。ここで、Mnを0.01mass%以上含有させることにより上述の作用効果を得られる。一方、Mnの含有量が1.2mass%を超えると含有量に見合った効果を得られず、熱間加工性が低下し、抗菌性(殺菌性)が低下してしまう。そこで、Mnを添加する場合には、Mnの含有量を0.01mass%以上1.2mass%以下の範囲内とし、好ましくは0.1mass%以上0.9mass%以下とする。特に、Niの含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下のときの上限は、好ましくは0.5mass%以下、最適には0.3mass%以下である。
Asは、上述の銅合金棒において、α相マトリックスの耐食性を向上させる効果を有する元素である。ここで、Asを0.005mass%以上含有させることにより、上述の作用効果を得られる。一方、Asの含有量が0.07mass%を超えると含有量に見合った効果を得られないだけでなく、Asは有害物質であるので、含有量を最小限に留めることが望ましい。そこで、Asを添加する場合には、Asの含有量を0.005mass%以上0.07mass%以下の範囲内とする。なお、Asは毒性が強いことから、0.05mass%以下とすることが好ましい。
PもAsと同様に、上述の銅合金棒において、α相マトリックスの耐食性を向上させる働きがあり、鋳造時の湯流れ性(鋳造性)を向上させる効果を有する元素である。ここで、Pを0.005mass%以上含有させることにより、上述の作用効果を得られる。一方、Pの含有量が0.07mass%を超えると含有量に見合った効果を得られず、素材製造時の熱間加工性および冷間加工性に悪影響を及ぼしてしまう。そこで、Pを添加する場合には、Pの含有量を0.005mass%以上0.07mass%以下の範囲内とし、より好ましくは0.01mass%以上0.04mass%以下とする。
SbもPと同様に、上述の銅合金棒において、α相マトリックスの耐食性を向上させる作用効果を有する元素である。ここで、Sbを0.005mass%以上含有させることにより上述の作用効果を得られる。一方、Sbの含有量が0.07mass%を超えると含有量に見合った効果を得られないだけでなく、Sbは有害物質であるので、含有量を最小限に留めるのが望ましい。そこで、Sbを添加する場合には、Sbの含有量を0.005mass%以上0.07mass%以下の範囲内とする。なおSbは毒性が強いことから、0.05mass%以下とすることが好ましい。
Cuは、上述の元素の残余成分であり(ただし、不可避不純物を除く)、これら主要元素のバランスとして含まれる。Cuは、銅合金としての引張強度、耐力等の機械的強度を向上させると共に、抗菌性(殺菌性)等の特性を確保する上で重要な元素である。残余成分であるが、各種特性を発揮するためのCuの含有量は、48.0mass%以上69.0mass%以下であり、好ましくは49.0mass%以上68.0mass%以下である。特に、Niの含有量が1.5mass%以上4.0mass%以下のとき、最適には、58.0mass%以上64.0mass%以下である。
また、不可避的不純物としては、Fe、Co、Cr、Ag、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Re、Ru、Os、Se、Te、Rh、Ir、Pd、Pt、Au、Cd、Ga、In、Li、Ge、Tl、Bi、S、O、C、Be、N、H、Hg、B、および希土類等が挙げられる。これらの不可避不純物は、総量で0.5mass%以下であることが望ましい。
ここで、本発明の銅合金棒において、熱間加工性、被削性、耐変色性、抗菌性(殺菌性)といった様々な特性を同時に満足するためには、組成指数f1=[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]が、33.0≦f1≦38.0の関係式を満たすことが重要である。なお、上述の式において、Ni、Sn、Al、Mnについては、それぞれの含有量が0.01mass%より少ない場合は、特性への影響が少ないことから、それぞれ[Ni]、[Sn]、[Al]、[Mn]の値をそれぞれ0として計算する。また、As、P、Sbについては、その含有量が0.005mass%より少ない場合は、特性への影響が少ないことから、[As]、[P]、[Sb]の値をそれぞれ0として計算する。また、Pbについては、その含有量が0.0005mass%より少ない場合は、特性への影響が少ないことから、[Pb]の値を0として計算する。さらに、添加されていない元素については、含有量を0として計算する。また、不可避的に含まれる不純物については、合計の不純物量が0.5mass%より少ない場合は、組成指数f1およびその関係式にほとんど影響を与えない。合計の不可避不純物量が0.5mass%を超える場合は、下記の好ましい範囲を満たしていればよい。
さらに、上述の銅合金棒において、特に耐変色性と抗菌性(殺菌性)という相反する特性を同時に持たせるには、組成指数f1の値が上記の関係式を満たすことに加え、Zn、Ni、Sn、Alの含有量のバランスを調整することが非常に重要である。すなわち、組成指数f2=0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]が、3.3≦f2≦4.8を満たす必要がある。なお、この組成指数f2において、Ni、Sn、Alについては、それぞれの含有量が0.01mass%より少ない場合は、特性への影響が少ないことから、exp(−1/[Ni])、[Sn]、[Al]の値をそれぞれ0として計算する。組成指数f2が3.3未満では、耐変色性に問題が生じ、f2が4.8を超えると、耐変色性が向上する一方で、抗菌性(殺菌性)が損なわれる。
本発明の銅合金棒は、ベースが30.0〜42.0mass%のZnとCuとからなる黄銅合金であるが、ベースの黄銅より遥かに耐変色性に優れながら、かつ黄銅と少なくとも同等以上の、抗菌性(殺菌性)を有する銅合金棒である。また、長期間の使用を想定した場合においても、抗菌性が低下せずに持続する合金棒である。
α相マトリックス中に硬質で脆いβ相やγ相が所定量を超えて存在すれば、耐食性、耐変色性に悪影響を与える。β相は、Cu−Zn合金においてCu−Znの2元平衡状態図から見るとZn量が32.5mass%以上のとき材料温度が高温になると出現する。高温状態でβ相が出現するが、材料が冷却される段階でβ相からα相に変態し、β相は減少する。またZn量が39mass%以上になると常温でもβ相が消滅せずに存在する。ただし、一般的な製造方法で製造すると非平衡状態となり、平衡状態図の通りとならずβ相の残存するZn量が低濃度側へシフトする。γ相は、高温で出現したβ相が共析反応によりα相とγ相に変態することにより発生する。
表1、2に示す所定の成分に調整した原料を溝型低周波誘導加熱炉にて溶解し、直径240mm、長さ700mmの棒状鋳塊を作成し、その鋳塊を所定の温度T1(℃)に加熱し、3000トン押出機により直径22.5mmの丸棒の押出材を作製した。なお、押出後の冷却は空冷にて行った。
表1、2に示す所定の成分に調整した原料を溝型低周波誘導加熱炉にて溶解し、直径240mm、長さ700mmの棒状鋳塊を作成し、その鋳塊を所定の温度T1(℃)に加熱し、3000トン押出機により6.5mm×30mm(R=1)のブスバー形状の押出材を作製した。なお、押出後の冷却は空冷にて行った。
製造工程P1により作製した直径22.5mmの丸棒を長さ50mmに切断し、炉中で所定の温度T2(℃)に加熱し、50mm×50mm×8mm厚の形状に平鍛造した。なお、鍛造後の冷却は空冷にて行った。
製造工程P1により作製した直径22.5mmの丸棒を長さ240mmに切断し、炉中で所定の温度T2(℃)に加熱し、図1に示すグリップの形状に熱間鍛造した。なお、鍛造後の冷却は空冷にて行った。なお、図1は、図1の左右方向をX方向、上下方向をY方向とした場合に、互いに直交するXY平面上(グリップの取付面に直交する面上)で見たときのグリップの側面図である。
上記製造工程P1〜P4における所定の温度T1、T2について、熱間押出直前の温度T1、熱間鍛造直前の温度T2をそれぞれ表1に示す。組成指数f1の値に基づき、各サンプルごとに熱間押出温度および熱間鍛造温度を変更している。
製造工程P1で作製した丸棒押出材の押出方向と平行な断面について、α相マトリクスにおけるβ相とγ相の占める面積率を測定した。具体的には、株式会社ニコンインストルメンツカンパニー製倒立金属顕微鏡(ECLIPSE MA200)を使って倍率500倍で組織写真を撮影し、画像解析ソフト(Winroof2013)を使って、α相マトリックスにおけるβ相およびγ相をそれぞれ二値化し、β相とγ相の占める面積率を測定した。β相とγ相の面積率は、それぞれの部位について任意の3箇所(1箇所の大きさは221μm×277μm)を測定して平均値をデータとしている。
製造工程P1で作製した丸棒押出材の押出方向に沿った断面について、β相の数密度は、株式会社ニコンインストルメンツカンパニー製倒立金属顕微鏡(ECLIPSE MA200)を使って倍率200倍で組織写真(553μm×692μm)をβ相の長手方向を写真の長手方向に合わせて3枚撮影し、その組織写真中の任意のβ相の長手方向に対し垂直な方向に、等間隔(138μm間隔)に3本の線を引き、それぞれの引いた線を横切るβ相の数の3枚の写真における平均値を求め、得られたβ相の数の平均値を、引いた線がβ相上を横切る長さ(写真の短手方向の長さである553μm)で除することにより数密度を測定した。
P1工程で作製した熱間押出後のφ22.5mmの丸棒押出材をJIS Z 2201に規定された金属材料引張試験片の4号試験片(棒材:径14mm、標点間距離50mm)に加工した。また、P4工程で得られたグリップの形状のサンプルをJIS Z 2201に規定される金属材料引張試験片の13B号試験片(板材:並行部の幅12.5mm、厚さ3mm、標点間距離50mm)に加工し、100kN万能試験機(島津製作所製AG−X)により引張試験を実施した。引張試験により引張強度、0.2%耐力を測定した。なお、本発明の実施形態および実施例において「耐力」とは、JIS Z 2241に規定される0.2%耐力を意味し、すなわち、JIS Z 2241の金属材料引張試験方法に記載されるオフセット法により得られた永久伸びが0.2%のときの耐力を意味する。
耐変色性試験は、P2工程で作製したブスバー押出材とP3工程で作製した平鍛造材とを用いて試験を行った。平鍛造材およびブスバー押出材の最大面積の取れる表面を♯1200のエミリー紙により研磨した後、耐変色性試験を行った。耐変色性試験の方法は、恒温恒湿槽(楠本化成株式会社HIFLEX FX2050)を用いて温度60℃、相対湿度95%の雰囲気中に各サンプルを暴露した。試験時間は12時間とし、試験後に試料を取り出し、暴露前後の材料の表面色を分光測色計によりL*a*b*を測定し、色差を算出し評価した。表5〜8において、耐食性評価として色差の値が「A」:0〜4.9、「B」:5〜9.9、「C」:10以上とした。色差は試験前後でのそれぞれの測定値の違いを表し、その値が大きいほど試験前後の色調が異なる。すなわち、色差が小さいほど色調の変化が少なく、したがって耐変色性が優れることになる。色差が10以上では目視で十分に変色していることが確認でき、耐変色性が劣ると判断出来る。
抗菌性(殺菌性)は、P2工程で得られたブスバー押出材、P3工程で得られた平鍛造材で最も面積の取れる部分の中心部をそれぞれ25mm四角に切り出した試料を用いて行った。試験方法はJIS Z 2801に規定される試験方法を参考にした方法により評価した。試験に用いた細菌は黄色ぶどう球菌(菌株の保存番号:ATCC6538)とし、JIS Z 2801の第5.6.a項で規定される方法に基づき35±1℃で前培養をした黄色ぶどう球菌を1/500NBを用いて希釈し、黄色ぶどう球菌を1.0×106個/mlに調整した液を試験菌液とした。試験方法は、所定のサイズに加工した試料を滅菌したシャーレに置き、前述の試験菌液(黄色ぶどう球菌:1.0×106個/ml)0.045mlを滴下し、φ15mmのフィルムをかぶせてシャーレの蓋を閉じた。そのシャーレを35±1℃、相対湿度95%の雰囲気で10分間培養(接種時間:10分)する。培養した試験菌液をSCDLP培地10mlにより洗い出し、洗い出し菌液を得る。洗い出し菌液を、リン酸緩衝生理食塩水を用いて10倍ずつに希釈し、その菌液に標準寒天培地を加え、35±1℃、48時間培養し、集落数(コロニー数)が30以上となる場合にその集落数を計測し、生菌数(cfu/ml)を求めた。接種時の菌数(抗菌性試験開始時の菌数(cfu/ml))を基準とし、それぞれのサンプルの生菌数と比較した。その結果を表5〜8に、「A」:10%未満、「B」:10〜33%未満、「C」:33%以上として評価した。「A」以上(すなわち、接種時の生菌数に対し評価サンプルの生菌数が1/3未満となる)の評価を得たサンプルは抗菌性(殺菌性)が優れると判断した。
P2工程で得られたブスバー押出材およびP3工程で得られた平鍛造材の耐変色性試験を実施した後の、表面がある程度変色した試料を用いて、抗菌性試験を行った。抗菌性試験の方法は上述の抗菌性試験方法と同じである。抗菌性(殺菌性)の評価は、耐変色性試験後の試料で実施した生菌率CHが、耐変色試験をしていない試料の生菌率C0に対して、CH≦1.10×C0の場合を「A」、1.10×C0<CH≦1.25×C0の場合を「B」、CH>1.25×C0の場合を「C」とした。すなわち、銅合金が変色すると抗菌性能が低下することが懸念され、前記の高温高湿下の過酷な耐変色性試験により、本発明合金(合金No.1〜24)においても少しの変色は認められ、表面の極表層部は酸化物等が生成されていることが予測された。そのような多少変色した試料においても、試験前の清浄な表面を有する試料と比べ、評価A、少なくとも評価Bであれば、抗菌性能は損なわれないと判断した。
耐食性試験は、P3工程で得られた平鍛造材とP2工程で得られたブスバー押出材を用いて試験を行った。
試験方法はISO 6509:1981(Corrosion of metals and alloys determination of dezincification resistance of brass)で規定される脱亜鉛腐食試験により評価した。耐変色性試験と同様に、加工した平鍛造材の最大面積の取れる表面の中心部が暴露するように切り出し、その表面を♯1200のエミリー紙により研磨し、暴露表面が1cm2になるように耐熱樹脂性のテープでマスクキングを施し、試験液に24時間暴露した。試験液として75℃に加温した1%第2塩化銅水溶液を用いた。その24時間保持したサンプルを暴露表面から垂直方向の金属組織を観察し、脱亜鉛腐食の最も進行している部分の深さ(最大脱亜鉛腐食深さ)を測定した。その最大脱亜鉛腐食深さが200μm以下のものを「A」、200μmを超えるものを「C」として表5〜8に記載した。
P1工程で得られた熱間押出後のφ22.5mmの丸棒押出材からφ20mmの棒状の切削用試験片を採取し、無潤滑で外周切削を行い、切屑を採取し、切屑厚みを測定した。外周をφ20mmからφ18mm(片側1mm切削)まで切削し、切削速度を150m/min、送りを0.2mm/rev、チップを三菱マテリアル製 TNGG 160404R(材質UTi20T)、切削距離を9.4mとして外周切削を行った。切屑厚みが350μm未満を「A」、350〜420μmを「B」、420μm超過を「C」として評価した。
P4工程における熱間鍛造、すなわちP1工程で得られた熱間押出後のφ22.5mmの丸棒押出材を長さ240mmに切断し、炉中で所定の温度T2(℃)まで加熱し、グリップの形状に熱間鍛造した際の、グリップの面割れの有無、成型後の寸法で評価した。図1にグリップの横断面図を示す。面割れ、耳割れの外見上の欠陥または、成型不良(欠肉)、寸法精度の出ていない等のいずれかの不具合のあるものをC、外観上の欠陥、成型不良が認められず、寸法精度の出ている良好なものをAとして評価した。寸法精度は、図1に示す矢印A、Bの部分の厚みの目標値をそれぞれ11.5mm、12.5mmとして、当該厚みが目標値に対し−0.2mm〜+0.5mmの範囲に入っているか否かで判断した。すなわち、矢印A、Bの部分の厚みがそれぞれ11.3〜12.0mm、12.3〜13.0mmの範囲に入っていれば寸法精度が出ていると判断した。ここで、矢印A、Bの部分の厚みとは、矢印A、B部分の前記Y方向の寸法を意味している。また、図1の矢印A、Bの部分は、それぞれ、グリップの長手方向(X方向)の全長240mmに対して、X方向における左端からX方向に沿って53〜56mmの部分、右端から81〜84mmの部分である。これらの部分における厚み(Y方向寸法)が上記範囲に入っていれば寸法精度が出ていると判断した。
第1発明合金棒に相当する合金No.1〜22、すなわち、30.0〜42.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、0.01〜11.0mass%のNiと、0.01〜1.5mass%のSnとを含有し、さらに、0.01〜1.2mass%のAl、0.01〜1.2mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、33.0≦f1≦38.0、かつf2≦4.8の関係を有しており、α相マトリックスにおけるβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%との間に1.5≦(β)+(γ)≦14.0の関係を有するとともに、任意の断面においてβ相の長手方向に垂直な方向の直線上を横切るβ相の数密度が9〜29個/mmである金属組織を有する銅合金棒は、熱間押出性、熱間鍛造性、被削性および機械的性質(引張強度、0.2%耐力)に優れ、耐食性、耐変色性、抗菌性および殺菌性に優れた銅合金となった。
Claims (4)
- 30.0〜42.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、0.01〜11.0mass%のNiと、0.01〜1.5mass%のSnとを含有し、
さらに、0.01〜1.2mass%のAl、0.01〜1.2mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、
残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、
Znの含有量[Zn]mass%と、Pbの含有量[Pb]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Alの含有量[Al]mass%と、Mnの含有量[Mn]mass%と、Asの含有量[As]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Sbの含有量[Sb]mass%との間に、33.0≦[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]≦38.0の関係を有し、かつ3.3≦0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]≦4.8の関係を有しており、
α相マトリックスにおけるβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%との間に1.5≦(β)+(γ)≦14.0の関係を有するとともに、
任意の断面においてβ相の長手方向に垂直な方向の直線上を横切るβ相の数密度が9〜29個/mmである金属組織を有することを特徴とする銅合金棒。 - 33.0〜38.0mass%のZnと、0.0005〜0.30mass%のPbと、1.5〜4.0mass%のNiと、0.1〜1.2mass%のSnとを含有し、
さらに、0.01〜0.5mass%のAl、0.01〜0.5mass%のMn、0.005〜0.07mass%のAs、0.005〜0.07mass%のP、0.005〜0.07mass%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、
残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金棒であって、
Znの含有量[Zn]mass%と、Pbの含有量[Pb]mass%と、Snの含有量[Sn]mass%と、Niの含有量[Ni]mass%と、Alの含有量[Al]mass%と、Mnの含有量[Mn]mass%と、Asの含有量[As]mass%と、Pの含有量[P]mass%と、Sbの含有量[Sb]mass%との間に、34.0≦[Zn]−0.5×[Pb]+3.6×[Sn]−0.4×[Ni]+2.4×[Al]−0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]≦38.0の関係を有し、かつ3.6≦0.05×[Zn]+3.0×exp(−1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]≦4.5の関係を有しており、
α相マトリックスにおけるβ相の面積率(β)%とγ相の面積率(γ)%との間に1.5≦(β)+(γ)≦14.0の関係を有するとともに、
任意の断面においてβ相の長手方向に垂直な方向の直線上を横切るβ相の数密度が9〜29個/mmである金属組織を有することを特徴とする銅合金棒。 - 請求項1または2に記載の銅合金棒を熱間鍛造して形成された熱間鍛造材によって構成されたことを特徴とする銅合金部材。
- 手すり、ドアノブ、ドアハンドル、レバーハンドル、ポール、机、椅子、棚、ナースカート取手の部材、ベッドサイドレール、グリップ、筆記具、包交車、台車、食事等搬送台車、カート、机や椅子の構成材、キー材、医療用器具の部材、バルブハンドル、屋内電気スイッチ、機械装置のボタン、洋食器、および楽器として使用されることを特徴とする請求項3に記載の銅合金部材。
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