JP7365304B2 - 抗菌性部材及び抗菌性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、抗菌性部材及び抗菌性物品に関するものであり、特に、抗菌性(あるいは抗ウィルス性)を有する銅合金及びそれを用いた物品に関する。
従来より、ステンレス鋼は、良好な外観性(銀白色;色合いの経時変化がない)及び耐食性(防錆)を有し、素材強度と部品形状への加工性とのバランスが良好である。そのため、家電製品、住居、病院、ホテル等の金属部品としてステンレス鋼が多用されている。
しかしながら、ステンレス鋼は抗菌性を有しない。一方、純銅や銅合金には抗菌性があることが知られているが、外観の変化(耐変色性)や強度がステンレス鋼に比べ劣ることがあり、今まで銅合金が採用される用途は限定的であった。
特許文献1(特開2016-183381号公報)には、耐変色性及び抗菌性に優れた銅合金棒として、30.0~42.0質量%のZn、0.0005~0.30質量%のPb、0.01~11.0質量%のNi、及び0.01~1.5質量%のSnを含有し、さらに、0.01~1.2質量%のAl、0.01~1.2質量%のMn、0.005~0.07質量%のAs、0.005~0.07質量%のP、及び0.005~0.07質量%のSbのうちいずれか1種以上を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなるものが開示されている。この銅合金棒は、質量%で、Zn含有量[Zn]、Pb含有量[Pb]、Sn含有量[Sn]、Ni含有量[Ni]、Al含有量[Al]、Mn含有量[Mn]、As含有量[As]、P含有量[P]及びSb含有量[Sb]の間に、f1=[Zn]-0.5×[Pb]+3.6×[Sn]-0.4×[Ni]+2.4×[Al]-0.5×[Mn]+0.5×[As]+2.0×[P]+2.5×[Sb]、及びf2=0.05×[Zn]+3.0×exp(-1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]とした場合に、33.0≦f1≦38.0及び3.3≦f2≦4.8の関係を有するものである。この文献には、手すり、ドアノブ、ドアハンドル等の用途が開示される一方、耐変色性と抗菌性とを両立させるためには、単純に黄銅にNi、Sn、Al等を含有させるだけでは不十分であることが教示されている。
特開2016-183381号公報
最近の抗菌性物品に対するニーズの高まりに伴い、硬質かつ高強度の材料でありながら抗菌性を有する材料がより一層求められている。
本発明者は、今般、抗菌性部材をCu-Ni-Sn合金で構成することにより、ステンレス鋼並みの強度及び加工性のバランスと、良好な耐変色性(あるいは耐食性)を有しながらも、抗菌性(あるいは抗ウィルス性)に優れた抗菌性部材及びそれを用いた物品を提供できるとの知見を得た。
本発明の目的は、ステンレス鋼並みの強度及び加工性のバランスと、良好な耐変色性(あるいは耐食性)を有しながらも、抗菌性(あるいは抗ウィルス性)に優れた抗菌性部材及びそれを用いた物品を提供することにある。
本発明によれば、以下の態様が提供される。
[項1]Cu-Ni-Sn合金で構成される、抗菌性部材。
[項2]前記Cu-Ni-Sn合金が、Ni:8.5~22.0重量%、Sn:4.5~8.0重量%、Mn:0~0.5重量%、及びFe:0~0.5重量%を含み、残部がCu及び不可避不純物である、項1に記載の抗菌性部材。
[項3]前記Cu-Ni-Sn合金が、JIS Z2241に準拠して測定される引張強さが800MPa以上である、項1又は2に記載の抗菌性部材。
[項4]人体との接触が想定される物品に用いられる、項1~3のいずれか一項に記載の抗菌性部材。
[項5]前記人体との接触が想定される物品が、手すり、ドアノブ、ドアハンドル、レバーハンドル、ポール、机、椅子、棚、ナースカート取手の部材、ベッドサイドレール、グリップ、筆記具、包交車、台車、食事等搬送台車、カート、机、椅子、キー材、医療用器具、バルブハンドル、屋内電気スイッチ、機械装置のボタン、洋食器、楽器、腕時計のケース、携帯の筐体、眼鏡フレーム、取手、公園遊具、スポーツジムトレーニング機器、ドアオープナー、腕時計バンド、ダンベル、ファスナー、チャーム、及び名刺入れからなる群から選択される少なくとも1種である、項1~4のいずれか一項に記載の抗菌性部材。
[項6]前記Cu-Ni-Sn合金が、繊維状又は布帛状である、項1~5のいずれか一項に記載の抗菌性部材。
[項7]マスク、手袋、つり手カバー、白衣、空気清浄機のフィルター、インソール、及びスポーツウェアからなる群から選択される少なくとも1種の物品に用いられる、項6に記載の抗菌性部材。
[項8]項1~7のいずれか一項に記載の抗菌性部材を含み、手すり、ドアノブ、ドアハンドル、レバーハンドル、ポール、机、椅子、棚、ナースカート取手の部材、ベッドサイドレール、グリップ、筆記具、包交車、台車、食事等搬送台車、カート、机、椅子、キー材、医療用器具、バルブハンドル、屋内電気スイッチ、機械装置のボタン、洋食器、楽器、腕時計のケース、携帯の筐体、眼鏡フレーム、取手、公園遊具、スポーツジムトレーニング機器、ドアオープナー、腕時計バンド、ダンベル、ファスナー、チャーム、名刺入れ、マスク、手袋、つり手カバー、白衣、空気清浄機のフィルター、インソール、及びスポーツウェアからなる群から選択される少なくとも1種である、抗菌性物品。
例1の耐変色性試験において、人工汗中への浸漬前後のCu-Ni-Sn合金サンプルを撮影した写真である。 例2の耐変色性試験において、人工汗中への浸漬前後のステンレス鋼サンプルを撮影した写真である。 例3の耐変色性試験において、人工汗中への浸漬前後の純銅サンプルを撮影した写真である。
抗菌性部材
本発明の抗菌性部材は、Cu-Ni-Sn合金で構成される。このように抗菌性部材をCu-Ni-Sn合金で構成することにより、ステンレス鋼並みの強度及び加工性のバランスと、良好な耐変色性(あるいは耐食性)を有しながらも、抗菌性(あるいは抗ウィルス性)に優れた抗菌性部材及びそれを用いた物品を提供することができる。前述したとおり、純銅や銅合金には抗菌性があることが知られているが、外観の変化(耐変色性)や強度がステンレス鋼に比べ劣ることがあり、今まで銅合金が採用される用途は限定的であった。すなわち、硬質かつ高強度の材料でありながら抗菌性を有する材料が求められていた。このような実情が本発明によれば好都合に解消される。
本発明による抗菌性部材を構成するCu-Ni-Sn合金は、好ましくは、Ni:8.5~22.0重量%、Sn:4.5~8.0重量%、Mn:0~0.5重量%、及びFe:0~0.5重量%を含み、残部がCu及び不可避不純物である。なお、Mn及びFeは任意成分である。このような組成範囲内であると、ステンレス鋼並みの強度及び加工性のバランスと、良好な耐変色性(あるいは耐食性)のみならず、優れた抗菌性(あるいは抗ウィルス性)をより効果的に実現することができる。Cu-Ni-Sn合金の具体例としては、(i)Ni:20.0~22.0重量%、Sn:4.5~5.7重量%、Mn:0~0.5重量%、及びFe:0~0.5重量%、残部がCu及び不可避不純物からなるCu-Ni-Sn合金(GMX215(日本碍子株式会社製))、並びにNi:8.5~9.5重量%、Sn:5.5~6.5重量%、Mn:0~0.5重量%、及びFe:0~0.5重量%、残部がCu及び不可避不純物からなるCu-Ni-Sn合金(GMX96(日本碍子株式会社製))が挙げられる。
Cu-Ni-Sn合金による上記有利な効果(特に耐変色性及び抗菌性)は予想外の効果である。というのも、前述のとおり、特許文献1には、耐変色性と抗菌性とを両立させるためには、単純に黄銅にNi、Sn、Al等を含有させるだけでは不十分であることが記載されているからである。実際、特許文献1には、下記式:
f2=0.05×[Zn]+3.0×exp(-1/[Ni])+0.7×[Sn]+1.8×[Al]
(ただし、[Zn]等の括弧付の元素記号は当該元素の含有量(質量%)を示す)で規定される組成指数f2が3.3≦f2≦4.8の関係を満たす必要があり、f2が3.3未満では耐変色性に問題があり、f2が4.8を超えると耐変色性は向上するが、抗菌性が損なわれることが記載されている。
これに対して、本発明の好ましい態様による各種Cu-Ni-Sn合金を特許文献1の組成指数f2の関係式に当てはめると、以下の表:
Figure 0007365304000001
に示されるように、f2は全て4.8を超えるものの(すなわち、特許文献1に記載される3.3≦f2≦4.8の範囲外)、高い抗菌性を示す。なお、CuNi21Snの方がCuNiSnより耐食性が高い。
本発明に用いられるCu-Ni-Sn合金は、JIS Z2241:2011に準拠して測定される引張強さが800MPa以上であるのが好ましく、より好ましくは835~1200MPaである。また、Cu-Ni-Sn合金は、JIS Z2241:2011に準拠して測定される破断伸びが2~25%であるのが好ましい。
Cu-Ni-Sn合金は熱処理硬化型の銅合金であり、熱処理前は物品への加工性に富む一方、熱処理後は各種銅合金の中でもベリリウム銅合金(ステンレス鋼並みの強度を有する)に次ぐ強度を有する。また、Cu-Ni-Sn合金の耐変色性は、ベリリウム銅合金の耐変色性よりも優れており、変色防止のための表面被覆を必要としない抗菌性部材を得ることができる。上述のとおり、本発明者による最近の調査及び研究によりCu-Ni-Sn合金には優れた抗菌性が備わっていることが分かっているため、本発明のCu-Ni-Sn合金で構成される抗菌性部材は、それ自体を表面被覆することなく、製品に適用した際も優れた抗菌性を発揮できる。上述した各種金属の特徴を以下の表に示す。
Figure 0007365304000002
上記表から分かるように、Cu-Ni-Sn合金は、抗菌性、耐変色性、並びに強度及び加工性のバランスを兼ね備えている点で、ステンレス鋼及び純銅よりも有利であり、それ故、様々な用途においてステンレス鋼や純銅には無いメリットをもたらす。例えば、純銅に対するメリットとしては、Cu-Ni-Sn合金は高強度であることが挙げられる。したがって、Cu-Ni-Sn合金を細線に加工して剛性を低下させることができる。そこで、Cu-Ni-Sn合金で銅繊維を作製して、マスク、衣類、タオル等の繊維製品にした場合、純銅製の繊維製品と比べて、フィット感を向上することができる。一方、ステンレス鋼に対するメリットとしては、Cu-Ni-Sn合金は抗菌性を有することが挙げられる。このため、Cu-Ni-Sn合金を、従来ステンレス鋼が使用されていたマットレス用コイルスプリングに使用することで、抗菌性を付与したマットレスを提供することができる。
本発明の抗菌性部材の用途は、少なくとも抗菌性(あるいは抗ウィルス性)を備えることが望まれる様々な用途に用いられる。したがって、本発明の抗菌性部材は、人体との接触が想定される物品に用いられるのが好ましい。人体との接触が想定される物品の例としては、手すり(一般的な手すりのみならず体重計の持ち手や電車内の握り棒も包含する)、ドアノブ、ドアハンドル、レバーハンドル、ポール、机、椅子、棚、ナースカート取手の部材、ベッドサイドレール、グリップ、筆記具、包交車、台車、食事等搬送台車、カート、机、椅子、キー材、医療用器具、バルブハンドル、屋内電気スイッチ、機械装置のボタン、洋食器、楽器、腕時計のケース、携帯の筐体、眼鏡フレーム、取手、公園遊具、スポーツジムトレーニング機器(例えば筋力トレーニング器具)、ドアオープナー、腕時計バンド、ダンベル、ファスナー、チャーム、及び名刺入れが挙げられる。
Cu-Ni-Sn合金は、繊維状又は布帛状であってもよい。すなわち、Cu-Ni-Sn合金を線材ないし繊維としてもよく、この線材ないし繊維を用いて布帛としてもよい。これにより抗菌性を有したマスクや白衣等といった衛生用又は医療用繊維製品を製作してもよい。線材は、例えば引き抜き加工により作ることができる。繊維状又は布帛状である抗菌性部材の用途の好ましい例としては、マスク、手袋、つり手カバー、白衣、空気清浄機のフィルター、インソール、及びスポーツウェアが挙げられる。
したがって、本発明の好ましい態様によれば、Cu-Ni-Sn合金で構成される抗菌性部材を含み、手すり、ドアノブ、ドアハンドル、レバーハンドル、ポール、机、椅子、棚、ナースカート取手の部材、ベッドサイドレール、グリップ、筆記具、包交車、台車、食事等搬送台車、カート、机、椅子、キー材、医療用器具、バルブハンドル、屋内電気スイッチ、機械装置のボタン、洋食器、楽器、腕時計のケース、携帯の筐体、眼鏡フレーム、取手、公園遊具、スポーツジムトレーニング機器、ドアオープナー、腕時計バンド、ダンベル、ファスナー、チャーム、名刺入れ、マスク、手袋、つり手カバー、白衣、空気清浄機のフィルター、インソール、及びスポーツウェアからなる群から選択される少なくとも1種である抗菌性物品が提供される。
もっとも、本発明の抗菌性部材は、人体との接触の有無を問わず、上述した例以外にも、抗菌性が望まれる様々な用途ないし物品に用いることができる。そのような例としては、コイルスプリング、エアコンフィルター、窓枠、水筒(例えばその内壁)、シューキーパー、花瓶(藻の発生を抑制するため)、剣山(生け花用)、じょうろ、船底(藻や貝の付着を抑制するため)、農業用プラウ、杭、釘、有刺線、ハサミ(特にその刃)、メスや包丁等の刃物(特にその刃)、おろし金、トレー、食品や薬品の製造設備、及びノズルヘッドが挙げられる。また、シンク、ゴミ箱、石鹸置き等にも本発明の抗菌性部材を用いることができ、このような用途においては防臭効果が期待される。このように、本発明の抗菌性部材は、人体との接触が想定されない用途ないし物品に用いられてもよい。
本発明の抗菌性部材は、めっき、コーティング等の形態で所望の物品に適用されてもよい。したがって、抗菌性を有しない物品の表面に対して、発明の抗菌性部材をめっき、コーティング等により適用することにより、抗菌性を当該物品に付与し、その結果、抗菌性物品を提供することができる。
製造方法
本発明の抗菌性部材又は物品の製造方法は、所望の特性が得られるかぎり特に限定されず、公知の手法が採用可能である。商業的に入手可能なCu-Ni-Sn合金に適宜加工ないし処理を施して抗菌性物品を製造してもよいし、原料の溶解及び鋳造から所定の工程を経て抗菌性物品を製造してもよい。後者の好ましい例として、(1)溶解及び鋳造、(2)均質化及び溶体化、(3)塑性加工、(4)物品形状への加工、及び(5)時効処理を経て、抗菌性部材又は物品を製造する方法を以下に説明する。
(1)溶解及び鋳造
Cu-Ni-Sn合金の原料を溶解して鋳型に鋳込み、所望の形状に成型する。Cu-Ni-Sn合金の溶解温度は、使用するCu-Ni-Sn合金の融点に応じて適宜決定すればよいが、典型的には1000~1400℃、より典型的には1200~1400℃である。
(2)均質化及び溶体化処理
得られた鋳造品には均質化及び溶体化処理が施されるのが好ましい。これにより鋳造時の成分ばらつきの均一化と、添加元素の十分な固溶を行うことができる。均質化及び溶体化処理は、鋳造品を、融点直下の温度で所定時間保持し、その後急冷することにより行えばよい。このときの保持温度は、使用するCu-Ni-Sn合金の融点に応じて適宜決定すればよいが、典型的には750~1000℃、より典型的には800~900℃である。上記温度での保持時間は5分~6時間が好ましく、より好ましくは30分~6時間である。
(3)塑性加工
必要に応じて、均質化及び溶体化された鋳造品に塑性加工を施してもよい。塑性加工により素材形状に予め加工を施しておくことで、次の工程(物品形状への加工)での生産効率を高めることができる。塑性加工の例としては、鍛造、圧延、引抜き、押出し等が挙げられる。なお、この塑性加工は、省略してもよい。
(4)物品形状への加工
得られた鋳造品又は塑性加工品に対して、プレス加工、フォーミング加工、絞り加工、マシニング加工、切削加工等の加工を施して、目的とする物品形状にするのが好ましい。
(5)時効処理
得られた物品には時効処理が施されるのが好ましい。時効処理により硬度及び強度を十分に高めることができる。時効処理は、物品を、所定の時効処理温度で所定時間保持して析出物を形成させることにより行えばよい。時効処理温度は、典型的には250~600℃、より典型的には300~550℃である。上記温度での保持時間は30分~8時間が好ましく、より好ましくは3~6時間である。
(6)変形態様
鋳物を金属物品として用いる場合は、上記製法において、塑性加工(工程(3))及び物品形状への加工(工程(4))を省略し、時効処理(工程(5))の後に仕上げ加工を施せば、同等のものが得られる。
(7)まとめ
上記(1)~(6)で説明した方法によれば、ステンレス鋼並みの強度及び加工性のバランスと、良好な耐変色性(あるいは耐食性)を有しながらも、抗菌性(あるいは抗ウィルス性)に優れた、所望の形状の抗菌性部材又は物品を製造することができる。したがって、抗菌性部材をドアノブ、手摺、携帯の筐体、眼鏡フレーム等の様々な用途に適用して抗菌性物品を製造することができる。また、この抗菌性部材又は物品は耐変色性に優れるとともに耐腐食性も高いため、屋外への設置も可能となる。さらに、強度と物品形状への加工性とのバランスに優れており、薄肉化により軽い取手を作ることができる。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例1
(1)抗菌性部材の作製
Ni:20.0~22.0重量%、Sn:4.5~5.7重量%、Mn:0.5重量%以下、Fe:0.5重量%以下、残部:CuからなるCu-Ni-Sn合金をもたらす原料を用意した。この合金組成は、GMX215(日本碍子株式会社製)に相当する組成である。この原料を1200~1400℃で溶解して成型した(溶解及び鋳造)。得られた鋳造品を、Cu-Ni-Sn合金の融点直下の温度で1時間保持し、その後急冷した(均質化及び溶体化処理)。こうして均質化及び溶体化された鋳造品に対して、圧延等の加工を施した(塑性加工)。得られた塑性加工品に対して、プレス加工により眼鏡フレームや板の形状に加工した(物品形状への加工)。また、このプレス加工により耐変色試験用の板状サンプルも別途作製した。得られた物品を300~500℃で2時間保持して析出物を形成させた(時効処理)。こうして、Cu-Ni-Sn合金で構成される抗菌性部材(眼鏡フレーム及び板状の合金サンプル)を得た。
(2)評価
得られた抗菌性部材に対して以下の評価を行った。
<抗菌性>
JIS Z 2801:2010「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」に準拠して黄色ぶどう球菌及び大腸菌の各々に対する抗菌性の評価を行い、3時間の培養後及び24時間の培養後における生菌数を測定した。また、合金材料とガラス板の生菌数の対数差から抗菌活性値を算出した。したがって、抗菌活性値は生菌の変化量を、生菌数は絶対値をそれぞれ表している。JIS Z 2801:2010によれば、抗菌活性値が2.0以上で「抗菌効果があり」と判断される。結果は表3に示されるとおりであった。
<耐変色性>
変色の評価規格がJISには存在しないため、代わりに「欧州規格EN1811 ニッケル溶出試験」の評価方法を参考に耐変色性の評価を合金サンプルに対して行った。具体的には、EN1811では本来、以下に示すI及びII:
I:恒温装置内でサンプルを人工汗中に1週間浸漬、及び
II:人工汗中にどれくらいニッケルが溶出しているかを定量
の順に評価を行うが、耐変色性の評価は手順Iを参考に、恒温装置内でサンプルを人工汗中に4時間浸漬し、浸漬の前後でサンプル表面の色合いを比較することにより行った。そして、以下の基準により耐変色性を評価した。結果は表3及び図1に示されるとおりであった。
‐良好:浸漬前後でサンプル表面に目立った色合いの変化は観察されなかった。
‐劣る:浸漬前後のサンプル表面に目立った色合いの変化が観察された。
<強度及び加工性>
強度と加工性(材料の延性ないし伸び)を評価すべく、JIS Z2241:2011「金属材料引張試験方法」に準拠して、合金サンプルに対して引張強さ及び破断伸びを測定した。結果は表3に示されるとおりであった。
例2(比較)
Cu-Ni-Sn合金の代わりに、ステンレス鋼(JIS SUS304)のサンプルを用いたこと以外、例1と同様にして評価を行った。結果は表3及び図2に示されるとおりであった。
例3(比較)
Cu-Ni-Sn合金の代わりに、純銅(JIS C1100)のサンプルを用いたこと以外、例1と同様にして評価を行った。結果は表3及び図3に示されるとおりであった。
Figure 0007365304000003
上記結果から、例1で評価したCu-Ni-Sn合金で構成される抗菌性部材は、ステンレス鋼並みの強度及び加工性のバランスと、良好な耐変色性(あるいは耐食性)を有しながらも、抗菌性にも優れることが分かる。また、Cu-Ni-Sn合金が抗菌性を有する事実から、Cu-Ni-Sn合金が抗ウィルス性をも有することが期待される。

Claims (4)

  1. 繊維状又は布帛状のCu-Ni-Sn合金で構成される、抗菌性部材であって、
    前記Cu-Ni-Sn合金が、Ni:8.5~22.0重量%、Sn:4.5~8.0重量%、Mn:0~0.5重量%、及びFe:0~0.5重量%を含み、残部がCu及び不可避不純物であり、
    マスク、手袋、つり手カバー、白衣、インソール、及びスポーツウェアからなる群から選択される少なくとも1種の物品に用いられる、抗菌性部材
  2. 前記Cu-Ni-Sn合金、JIS Z2241に準拠して測定される引張強さが800MPa以上である、請求項に記載の抗菌性部材。
  3. 人体との接触が想定される物品に用いられる、請求項1又は2に記載の抗菌性部材。
  4. 請求項1~のいずれか一項に記載の抗菌性部材を含み、マスク、手袋、つり手カバー、白衣、インソール、及びスポーツウェアからなる群から選択される少なくとも1種である、抗菌性物品。
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